説明

鉄道車両の高さ調整装置

【課題】車高検知レバーの動きが角度センサに的確に伝達される鉄道車両の高さ調整装置を提供する。
【解決手段】空気バネに加圧空気を給排することにより車体の高さを調整するとともに、車高検知レバー71の動きを角度センサ70に伝える鉄道車両の高さ調整装置1であって、車高検知レバー71の回動をピストン4の往復動に変換するロータ30と、このロータ30の回転を角度センサ70に伝達するロッド40と、ケーシング(カバー20)に対してロータ30を回転可能に支持するロータ用ラジアル軸受21と、ケーシング(ボディ10)に対してロッド40を回転可能に支持するロッド用ラジアル軸受22とを備え、ロータ30及びロッド40をロータ用ラジアル軸受21とロッド用ラジアル軸受22とによって両持ち支持する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体を支持する空気バネに加圧空気を給排することにより車体の高さを調整する鉄道車両の高さ調整装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の鉄道車両の高さ調整装置として、図4に示すものがある(特許文献1参照)。
【0003】
これについて説明すると、鉄道車両の車体と台車枠との間に空気バネが設けられており、図4に示す高さ調整装置1は、車体を台車に対して一定の高さに保つように空気バネに対する加圧空気の給排を制御するものである。
【0004】
高さ調整装置1は、そのケーシング73に回転軸74が設けられ、台車に対する車体の高さが変わると、この変位がコネクティングロッド72、車高検知レバー71を介して回転軸74に伝えられる。
【0005】
ケーシング73には、空気バネに連通する空気バネ通路と、空気圧源に連通する給気通路と、大気側に連通する排気口とがそれぞれ接続されており、これらを開閉するバルブが収容されている。このバルブは回転軸74に連動して空気バネ通路に対して給気通路と排気口を選択的に連通し、台車に対する車体の高さを一定に保つ。
【0006】
回転軸74はケーシング73から突出する部位を有し、その先端部に角度センサ70に連結される。車両に設けられるコントローラは、角度センサ70の信号に基づいて台車に対する車体の高さを検出し、これに応じて電磁弁を作動させて空気バネに対する加圧空気の給排を制御するようになっている。
【特許文献1】特開2002−104182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来の鉄道車両の高さ調整装置1にあっては、回転軸74のケーシング73から突出する部位が角度センサ70に連結される構造のため、回転軸74は、曲げ応力が働き、円滑に回転作動することができず、車高検知レバー71の動きが角度センサ70に的確に伝達されないという問題点があった。
【0008】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、車高検知レバーの動きが角度センサに的確に伝達される鉄道車両の高さ調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、車体の高さ変化に応じて回動する車高検知レバーに連動して車体を支持する空気バネに加圧空気を給排することにより車体の高さを調整するとともに、車高検知レバーの動きを角度センサに伝える鉄道車両の高さ調整装置であって、空気バネに対して加圧空気を給排するバルブと、このバルブを開閉駆動するピストンと、車高検知レバーの回動をピストンの往復動に変換するロータと、このロータの回転を角度センサに伝達するロッドと、ケーシングに対してロータを回転可能に支持するロータ用ラジアル軸受と、ケーシングに対してロッドを回転可能に支持するロッド用ラジアル軸受とを備え、ロータ及びロッドをロータ用ラジアル軸受とロッド用ラジアル軸受とによって両持ち支持することを特徴とするものとした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、ロータ及びロッドがロータ用ラジアル軸受とロッド用ラジアル軸受とによって両持ち支持されることによってロッドの曲げ応力が低減され、ロータ及びロッドは円滑に回転作動することができ、車高検知レバーの回動がロータを介してピストンの往復動に的確に変換されるとともに、ロッドを介して角度センサに的確に伝達され、性能の向上がはかれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0012】
鉄道車両の車体と台車枠との間に空気バネが設けられており、図1〜3に示す高さ調整装置1は、車体を台車に対して一定の高さに保つように空気バネに対する加圧空気の給排を制御するものである。
【0013】
高さ調整装置1は、そのケーシングとしてボディ10とカバー20とを備え、ボディ10が車体側に固定して取付けられる。
【0014】
カバー20はロータ30を挿通させるボス部28と、ボディ10に締結されるフランジ部29とを有し、カバー20は3本のボルト8を介してボディ10に締結される。
【0015】
カバー20にはロータ30を挿通させる穴25が形成され、この穴25にはロータ用ラジアル軸受21が介装される。円柱状のロータ30はロータ用ラジアル軸受21を介してカバー20に回転可能に支持される。
【0016】
カバー20の穴25にはロータ用ラジアル軸受21と並んでシール23が介装され、塵埃や水等の侵入を防止するようになっている。
【0017】
ロータ30のカバー20から突出する一端には四角ヘッド32が軸方向に延び、この四角ヘッド32には車高検知レバー71が連結される。
【0018】
車高検知レバー71の回動先端部は図示しないコネクティングロッドを介して台車側に連結されている。
【0019】
これにより、台車に対する車体の高さが変わると、この変位がコネクティングロッド、車高検知レバー71を介してロータ30に伝えられてロータ30が回転するようになっている。
【0020】
ロータ30の他端にはアーム31が径方向に延び、このアーム31にピン3が結合される。
【0021】
ボディ10には、ピストン4が摺動可能に収容される。このピストン4にはピン3に係合する溝状のスリット5が形成される。
【0022】
これにより、台車に対する車体の高さが変わってロータ30が回転すると、このロータ30の回転がピン3を介してピストン4に伝えられてピストン4が軸方向に摺動するようになっている。
【0023】
図示しないが、ボディ10には、空気バネに連通する空気バネ通路と、空気圧源に連通する給気通路と、大気側に連通する排気口とがそれぞれ接続されており、これらを開閉するバルブが収容されている。このバルブはピストン4に連動して以下のように開閉作動し、台車に対する車体の高さを一定に保つ。
【0024】
車体が所定の高さ範囲にある場合に、ピストン4は中立位置にあり、バルブは空気バネ通路を遮断する。これにより、車体の高さが維持される。
【0025】
車体が所定範囲より低くなった場合に、ピストン4が一方向に移動して中立位置から外れるのに伴って、バルブは空気バネ通路を給気通路に連通して、空気バネに加圧空気を供給する。これにより、車体の高さが増やされる。
【0026】
車体が所定範囲より高くなった場合に、ピストン4が他方向に移動して中立位置から外れるのに伴って、バルブは空気バネ通路を排気口に連通して大気に開放し、空気バネから空気が抜かれる。これにより、車体の高さが減らされる。
【0027】
図1において、70は角度センサであり、この角度センサ70はロータ30の回転角度を検出するポテンショメータであり、ロータ30の回転角度に応じた電圧信号を図示しないコントローラに出力する。コントローラはロータ30の角度センサ70の電圧信号に基づいて台車に対する車体の高さを検出し、これに応じて各種の制御を行う。
【0028】
角度センサ70はボディ10に対して車高検知レバー71と反対側に配置され、角度センサ70の本体はボディ10と並んで車体側に固定して取付けられる。
【0029】
高さ調整装置1は、ロータ30の回転を角度センサ70に伝達するロッド40を備える。このロッド40はロータ30の回転中心線O30上に配置され、その基端部41がロータ30に結合され、その先端部42が角度センサ70に結合される。
【0030】
ロータ30とロッド40とは一体形成される。ロッド40はロータ30の端部から円柱状に突出するように切削加工によって形成される。これにより、ロータ30及びロッド40は高い寸法精度が得られる。
【0031】
ロッド40の先端部42には、切り欠き43が形成され、この切り欠き43を介して図示しない角度センサ70の可動部が連結される。
【0032】
ボディ10にはロッド40を挿通させる穴11が形成され、この穴11にはロッド用ラジアル軸受22が介装され、ロッド40はこのロッド用ラジアル軸受22を介してボディ10に回転可能に支持される。
【0033】
こうして、ロータ30及びロッド40はロータ用ラジアル軸受21とロッド用ラジアル軸受22とによって両持ち支持される。
【0034】
ロータ30及びロッド40はロータ用ラジアル軸受21とロッド用ラジアル軸受22との間にアーム31が配置される。アーム31はロータ用ラジアル軸受21とロッド用ラジアル軸受22とによって両持ち支持される。
【0035】
ロータ用ラジアル軸受21とロッド用ラジアル軸受22は、それぞれ円筒状の軸受ブッシュが用いられるが、これに限らず転がり軸受等を用いてもよい。
【0036】
ボディ10の穴11にはロッド用ラジアル軸受22と並んでシール24が介装され、塵埃や水等の侵入を防止するようになっている。
【0037】
ボディ10は、ピストン4を収容する円筒状のシリンダ部14と、ロッド用ラジアル軸受22が介装されるボス部13とを有する。ボス部13はシリンダ部14に連接して形成され、ロッド用ラジアル軸受22はボス部13のシリンダ部14に連接する部位19から角度センサ70側(図中右側)に延びるように配置される。こうして、ロッド用ラジアル軸受22がロータ用ラジアル軸受21から離されることにより、ロータ30及びロッド40の支持剛性が高められる。
【0038】
アーム31はロータ30の端部からその全周に渡って環状に突出する。アーム31の一方の端面31aとカバー20の内壁面20aとの間に円盤状のスラスト軸受35が介装される。アーム31の他方の端面31bとボディ10の内壁面20bとの間に円盤状のスラスト軸受26が介装される。ロータ30及びロッド40はスラスト軸受25とスラスト軸受26とによってスラスト荷重が支持される。
【0039】
本実施の形態では、車体の高さ変化に応じて回動する車高検知レバー71に連動して車体を支持する空気バネに加圧空気を給排することにより車体の高さを調整するとともに、車高検知レバー71の動きを角度センサ70に伝える鉄道車両の高さ調整装置1であって、空気バネに対して加圧空気を給排するバルブと、このバルブを開閉駆動するピストン4と、車高検知レバー71の回動をピストン4の往復動に変換するロータ30と、このロータ30の回転を角度センサ70に伝達するロッド40と、ケーシング(カバー20)に対してロータ30を回転可能に支持するロータ用ラジアル軸受21と、ケーシング(ボディ10)に対してロッド40を回転可能に支持するロッド用ラジアル軸受22とを備え、ロータ30及びロッド40をロータ用ラジアル軸受21とロッド用ラジアル軸受22とによって両持ち支持する構成とした。
【0040】
上記構成に基づき、ロータ30及びロッド40がロータ用ラジアル軸受21とロッド用ラジアル軸受22とによって両持ち支持されることによってロッド40の曲げ応力が低減され、ロータ30及びロッド40は円滑に回転作動することができ、車高検知レバー71の回動がロータ30を介してピストン4の往復動に的確に変換されるとともに、ロッド40を介して角度センサ70に的確に伝達され、性能の向上がはかれる。
【0041】
本実施の形態では、ロータ30はその径方向に突出するアーム31を有し、このアーム31が揺動する動きに追従してピストン4が往復動し、アーム31をロータ用ラジアル軸受21とロッド用ラジアル軸受22との間に配置する構成とした。
【0042】
上記構成に基づき、アーム31はロータ用ラジアル軸受21とロッド用ラジアル軸受22とによって両持ち支持されることによってその支持剛性が高められるため、その動きがピストン4の往復動に的確に変換され、性能の向上がはかれる。
【0043】
本実施の形態では、ロータ30及びロッド40を一体形成する構成とした。
【0044】
上記構成に基づき、ロータ30及びロッド40はその寸法精度が高められることによってロータ用ラジアル軸受21とロッド用ラジアル軸受22とを介して円滑に回転作動することができ、車両から入力される振動に対する耐久性が確保される。
【0045】
なお、これに限らず、ロータ30及びロッド40を別体で形成し、両者を互いに螺合するねじ部を介して結合することも可能である。しかし、この場合、車両の振動が角度センサ70を介してロッド40に入力されるため、ロータ30及びロッド40を結合するねじ部に緩み等が生じる心配がある。
【0046】
本実施の形態では、ケーシング(カバー20、ボディ10)とロータ30及びロッド40との間を密封するシール23、24を設ける構成とした。
【0047】
上記構成に基づき、ケーシング(カバー20、ボディ10)内に塵埃や水等が侵入することが防止され、メンテナンスが容易になる。
【0048】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態を示す高さ調整装置の断面図。
【図2】同じく平面図。
【図3】同じく正面図。
【図4】従来例を示す高さ調整装置の斜視図。
【符号の説明】
【0050】
1 高さ調整装置
4 ピストン
10 ボディ
20 カバー
21 ロータ用ラジアル軸受
22 ロッド用ラジアル軸受
23 シール
24 シール
30 ロータ
31 アーム
40 ロッド
70 角度センサ
71 車高検知レバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の高さ変化に応じて回動する車高検知レバーに連動して車体を支持する空気バネに加圧空気を給排することにより車体の高さを調整するとともに、車高検知レバーの動きを角度センサに伝える鉄道車両の高さ調整装置であって、
前記空気バネに対して加圧空気を給排するバルブと、
このバルブを開閉駆動するピストンと、
前記車高検知レバーの回動をピストンの往復動に変換するロータと、
このロータの回転を前記角度センサに伝達するロッドと、
ケーシングに対して前記ロータを回転可能に支持するロータ用ラジアル軸受と、
ケーシングに対して前記ロッドを回転可能に支持するロッド用ラジアル軸受とを備え、
前記ロータ及び前記ロッドを前記ロータ用ラジアル軸受と前記ロッド用ラジアル軸受とによって両持ち支持することを特徴とする鉄道車両の高さ調整装置。
【請求項2】
前記ロータはその径方向に突出するアームを有し、
このアームが揺動する動きに追従して前記ピストンが往復動し、
前記アームを前記ロータ用ラジアル軸受と前記ロッド用ラジアル軸受との間に配置することを特徴とする請求項1に記載の鉄道車両の高さ調整装置。
【請求項3】
前記ロータ及び前記ロッドを一体形成することを特徴とする請求項1または2に記載の鉄道車両の高さ調整装置。
【請求項4】
前記ケーシングと前記ロータ及び前記ロッドとの間を密封するシールを設けることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の鉄道車両の高さ調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−202777(P2009−202777A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−48256(P2008−48256)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)