説明

鉄道車両用パンタグラフ

【課題】雪などによる上げ動作が不能の事態であっても、1つの空気シリンダで最低作用高さまで強制的に上昇させることが出来るパンタグラフを提供する。
【解決手段】空気シリンダ1のピストンロッド1bが押し出されてパンタグラフを下降させる機構において、ピストンロッド1bのヘッド部1cとパンタグラフ主軸6のテコ部5を締結するリンク2を設け、空気シリンダ1の引込側に空気が供給された時の引込力をパンタグラフの主軸6に伝達でき、リンク2の片側の取付穴を長穴形状とすることにより、通常の集電性能に支障がなく、また、パンタグラフの最低作用高さ以上に引込力が作用しないようにシリンダ1の位置を構成した。この空気シリンダ1を用いれば、各部への着雪があっても、パンタグラフを上昇させることが出来、また、空気シリンダ1が1つで構成される。保守要員が除雪作業等を行うことなく、折畳み状態から素早く押上げ動作が行われるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用パンタグラフに関するものである。
【背景技術】
【0002】
パンタグラフは、電車等が基地に留置されている場合には下げられて折り畳まれた状態にあり、各枠組や集電舟等の上に降り積もった雪によって上げ動作が不能となる事態が発生する。
【0003】
従来、パンタグラフは保守要員により除雪作業が行われており、電車等の屋根に登っての雪降ろしや、常設の融雪装置により行われている。屋根に登っての除雪作業は、転落や感電の危険があるとともに、結氷化した積雪の排除が困難である。
融雪装置による除雪作業は、電車等を移動させる必要があるとともに限られた場所に設置されているために何処でも手軽に行い得ない。
【0004】
従来のパンタグラフには、それ自体に除雪装置や融雪装置が備えられていないために、各枠組や集電舟等に付着した雪を排除することができない。このため、電車等が留置箇所から出庫出来ず、ダイヤの遅れを生じさせていた。
【0005】
従来のパンタグラフには、最低作用高さまでパンタグラフを強制的に上昇させる専用の空気シリンダを装備したものがあるが、パンタグラフを降下させる空気シリンダと上昇させる空気シリンダの2個必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許公開平9−182204
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、パンタグラフの基本構成を変更せず、雪などによる上げ動作が不能の事態であっても、1つの空気シリンダで最低作用高さまで強制的に上昇させることが出来るパンタグラフを提供することを目的に提案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明によれば、パンタグラフの折畳み時に上昇防止用の鈎を作動させる鈎用空気シリンダを有し、該パンタグラフを下降させるロッド押出式の空気シリンダのヘッド部と前記パンタグラフの主軸のテコ部を有する鉄道車両用パンタグラフにおいて、該ヘッド部と該テコ部を連結するリンクを設け、該リンクの一方が前記ヘッドに貫設固定されたピンと回動支持され、前記リンクの他方が前記テコ部に貫設固定されたピンと長穴内摺動自由支持されることを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明によれば、請求項1において、前記鈎用空気シリンダの空気供給を分岐し、前記ロッド押出式の空気シリンダの排気側に供給することを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明によれば、請求項1、請求項2において、前記リンクの長穴内摺動自由支持の長穴端部と前記テコ部に貫設固定されたピンとが密接状態とし、引込み時の前記ロッド押し出し式の空気シリンダのストロークエンド位置に達するときと、前記テコ部が最低作用高さ位置(11)に達するときとが一致することを特徴とする。
【0011】
すなわち、シリンダのピストンロッドが押し出されてパンタグラフを下降させる機構において、ピストンロッドのヘッド部とパンタグラフ主軸のテコ部を締結するリンクを設け、シリンダの引込側に空気が供給された時の引込力をパンタグラフの主軸に伝達し、雪などによる上げ動作が不能の事態であっても、最低作用高さまでパンタグラフを上昇させることができ、また、リンクの片側の取付穴を長穴形状とすることにより、通常の上昇下降動作に支障がないように構成する。
【発明の効果】
【0012】
上記の空気シリンダを用いれば、各部への着雪があっても、パンタグラフを上昇させることが出来、また、空気シリンダが1つで構成される。
【0013】
保守要員が車体の屋根に登って除雪作業等を行うことなく、折畳み状態から素早く押上げ動作が行われるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の空気シリンダおよび主軸テコ部を示した説明図である。
【図2】本発明の空気回路を示した説明図である。
【図3】従来のパンタグラフの空気シリンダ及び主軸テコ部を示した説明図である。
【図4】本発明の空気シリンダおよび主軸テコ部を示した説明図である。
【図5】本発明の空気シリンダおよび主軸テコ部を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の実施例の構成を示す図である。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明のパンタグラフ集電時の空気シリンダおよび主軸テコ部を示す図である。2のリンクの片側は、1bのピストンロッドの先端に取り付けられた1cのヘッドに7のリンク取り付けピンによって回転自在に支持され、もう片側は、長穴部に4のローラ取り付けピンで支持されている。集電時、5のテコは最低から最高まで揺動回転するが、4のローラ取り付けピンは、2のリンクの長穴部を移動するため、集電性能に影響を与えない。
【0017】
図2は、本発明の空気回路図を示す。空気シリンダの引込側に空気を供給させるために、カギシリンダに供給される空気配管を途中で分岐させ、急速排気弁と逆止弁を追加した。
【0018】
図3は、従来のパンタグラフ突放時の空気シリンダおよび主軸テコ部を示す図である。8の空気配管からパンタグラフ降下用の空気が供給されると、1aのピストンが前進し、1bのピストンロッドの先端に取り付けられた1cのヘッドが、5のテコの先端に4のローラ取り付けピンに回転自在で支持された3のローラを押すことにより、パンタグラフを折り畳み状態にする。
【0019】
図4は、パンタグラフが雪などにより上げ動作が不能となった時の空気シリンダおよび主軸テコ部を示す図である。8aの空気配管からパンタグラフ上昇用の空気が供給されると、1aのピストンが後退し、1bのピストンロッドの先端に取り付けられた1cのヘッドが2のリンクを介して主軸を回転させ、パンタグラフを強制的に上昇させる。
【0020】
図5は、パンタグラフが折畳状態から最低作用高さまで強制的に上昇させられた時の空気シリンダおよび主軸テコ部を示す図である。1aのピストンが後退し、空気シリンダのストロークエンドまで達する時と、パンタグラフの最低作用高さ時の5のテコ位置を合わせることにより、最低作用高さ以上に空気シリンダの引込力が伝達しないようにした。
【符号の説明】
【0021】
1 空気シリンダ
1a ピストン
1b ピストンロッド
1c ヘッド
2 リンク
3 ローラ
4 ローラ取り付けピン
5 テコ
6 主軸
7 リンク取り付けピン
8 パンタ下げ用空気配管
8a パンタ上げ用空気配管
9 台枠
10 折畳み高さ位置
11 最低作用高さ位置
12 最高作用高さ位置
13 突放し高さ位置
14 鈎用空気シリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンタグラフの折畳み時に上昇防止用の鈎を作動させる鈎用空気シリンダを有し、該パンタグラフを下降させるロッド押出式の空気シリンダのヘッド部と前記パンタグラフの主軸のてこ部を有する鉄道車両用パンタグラフにおいて、該ヘッド部と該てこ部を連結するリンクを設け、該リンクの一方が前記ヘッドに貫設固定されたピンと回動支持され、前記リンクの他方が前記てこ部に貫設固定されたピンと長穴内摺動自由支持されることを特徴とする鉄道車両用パンタグラフ。
【請求項2】
前記鈎用空気シリンダの空気供給を分岐し、前記ロッド押出式の空気シリンダの排気側に供給することを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用パンタグラフ。
【請求項3】
前記リンクの長穴内摺動自由支持の長穴端部と前記てこ部に貫設固定されたピンとが密接状態とし、引込み時の前記ロッド押し出し式の空気シリンダのストロークエンド位置に達するときと、前記てこ部が最低作用高さ位置(11)に達するときとが一致することを特徴とする請求項1、2記載の鉄道車両用パンタグラフ。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−9515(P2013−9515A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140485(P2011−140485)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000003115)東洋電機製造株式会社 (380)
【Fターム(参考)】