説明

鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置

【課題】側扉戸閉機に加わる荷重を再現し、側扉戸閉機及び側扉周辺部の車両構造の最適化を図る。
【解決手段】側扉周辺部の車両構造を模した開口枠体22に、側扉戸閉機14及び側扉12を設置し、開口枠体22に固定された荷重付与手段によって、側扉戸閉機14に加わる荷重を再現する。そして、側扉戸閉機14に駆動される側扉12に、側扉12の開閉時及び全閉状態においては常に、側扉12と接触する横圧付与装置24によって、側扉12を介して側扉戸閉機14に荷重を付与するものである。又、荷重付与手段には側扉戸閉機固定具26及びドアレール固定具28が含まれ、それらの形状を調整して、側扉周辺部の車両構造に生ずる撓みを再現し、側扉戸閉機14に荷重を加えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両10の側扉の駆動手段として、従来から、図7に示されるように、側扉12の上方に電動式の側扉戸閉機14が設けられている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−228248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、図7(a)(b)に示される様に、鉄道車両10の側扉12には、車両の挙動や車内混雑の影響により、車両幅方向に外側に向かって横圧Fが加わり、側扉戸閉機14も横圧Fの影響を受けることとなる。又、図8(a)に示されるように、鉄道車両10は、乗客の荷重を受けて車体に撓みが生じ、図8(b)に示されるように、側扉戸閉機14も車体の撓みの影響を受け、側扉12の開閉動作に影響を受けることとなる。
【0005】
実際の車両では、上記横圧Fや車体の撓みを十分に考慮して、側扉12の強度や側扉戸閉機14の開閉駆動力が適切に設定されているが、このような、側扉戸閉機14の動作を阻害する外力を実験的に付与して強度解析を行うことで、より適切な設計を行うことが望まれている。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、側扉戸閉機に加わる荷重を再現し、側扉戸閉機及び側扉周辺部の車両構造の最適化に寄与することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。又、各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではない。よって、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0007】
(1)側扉周辺部の車両構造を模した開口枠体と、該開口枠体に側扉戸閉機及び側扉が設置された状態で前記側扉戸閉機に加わる荷重を再現するための、前記開口枠体に固定された荷重付与手段とを含む鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置(請求項1)。
本項に記載の鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置は、側扉周辺部の車両構造を模した開口枠体に、側扉戸閉機及び側扉を設置し、開口枠体に固定された荷重付与手段によって、側扉戸閉機に加わる荷重を再現するものである。
【0008】
(2)上記(1)項において、前記荷重付与手段には、前記側扉戸閉機に駆動される側扉に、側扉の開閉時及び全閉状態においては常に側扉と接触する、横圧付与装置が含まれる鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置(請求項2)。
本項に記載の鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置は、前記側扉戸閉機に駆動される側扉に、側扉の開閉時及び全閉状態においては常に側扉と接触する横圧付与装置によって、側扉を介して側扉戸閉機に荷重を付与するものである。
【0009】
(3)上記(2)項において、前記横圧付与装置は、前記開口枠体に、前記側扉の外側から前記側扉の表面に向かって離間接近自在に保持された可動ロッドと、該可動ロッドを前記側扉の外側方向へと付勢する力を調整する荷重調整手段と、前記側扉の外側面に、前記側扉の開閉方向へと延びるように固定される引き込みレールと、前記可動ロッドの先端部に設けられ、前記側扉の開閉動作に応じて前記引き込みレールの端部から前記引き込みレールに係合離脱し、前記引き込みレールとの係合状態において前記側扉を外側方向へと付勢する接触子とを備える鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置(請求項3)。
本項に記載の鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置は、横圧付与装置の、開口枠体に、側扉の外側から側扉の表面に向かって離間接近自在に保持された可動ロッドの先端部に設けられた接触子を、側扉の外側面に記側扉の開閉方向へと延びるように固定される引き込みレールに対し、側扉の開閉動作に応じて引き込みレールの端部から引き込みレールに係合離脱させるものである。これによって、横圧付与装置は、側扉戸閉機に駆動される側扉に、側扉の開閉時及び全閉状態においては常に接触するものである。この際、荷重調整手段によって、可動ロッドによる、側扉の外側方向へと付勢する力を調整する。そして、側扉の開閉時及び全閉状態においては常に側扉に対し、車両幅方向に外側に向かって横圧を付与するものである。
【0010】
(4)上記(3)項において、前記可動ロッドが、前記開口枠体の開口を横切るように固定された梁に、前記側扉の開閉方向へと並んで複数配置されている鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置(請求項4)。
本項に記載の鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置は、開口枠体の開口を横切るように固定された梁に、側扉の開閉方向へと並んで複数配置された可動ロッドが、側扉の外側面に側扉の開閉方向へと延びるように固定される引き込みレールに対し、側扉の開閉動作に応じて引き込みレールの端部から、引き込みレールに順次係合離脱する。この、引き込みレールに対する複数の可動ロッドの係合離脱の結果、側扉の開閉時及び全閉状態においては常に側扉に対し、車両幅方向に外側に向かって横圧を付与するものとなる。
【0011】
(5)上記(3)、(4)項において、前記接触子はローラであり、前記引き込みレールは、前記側扉を車両幅方向外側に向かって前記ローラが当接するためのガイド面を有する断面L字状をなしている鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置。
本項に記載の鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置は、可動ロッドのローラが、断面L字状の引き込みレールのガイド面に当接して、側扉を車両幅方向に外側に向かって引き込み、かつ、引き込みレールのガイド面をローラが回転することで、側扉の開閉を円滑に行うものである。
【0012】
(6)上記(5)項において、前記引き込みレールの側扉開方向端部には、側扉の閉時に前記ローラを前記ガイド面へと引き込むためのスロープ面が形成されている鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置。
本項に記載の鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置は、引き込みレールの側扉開方向端部に形成されたスロープ面によって、側扉の閉時に、側扉の動作と共にローラを引き込みレールへと案内し、自動的にローラと引き込みレールとの当接状態を回復するものである。又、側扉の開時にも、側扉の動作と共にローラは引き込みレール端部のスロープ面から円滑に開放されるものである。
【0013】
(7)上記(1)から(6)項において、前記荷重付与手段には、前記開口枠体のかもい部に対し側扉戸閉機を固定するための、側扉戸閉機固定具が含まれる鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置(請求項5)。
本項に記載の鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置は、側扉戸閉機固定具を介して、側扉戸閉機を開口枠体のかもい部に対し固定するものである。そして、側扉戸閉機固定具の形状を調整して、側扉周辺部の車両構造に生ずる撓みを再現し、側扉戸閉機に荷重を加えるものである。
【0014】
(8)上記(7)項において、前記側扉戸閉機固定具の、前記側扉戸閉機との密着面が、前記開口枠体のかもい部との密着面に対して傾斜していることを特徴とする請求項5記載の鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置(請求項6)。
本項に記載の鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置は、側扉戸閉機固定具の、側扉戸閉機との密着面が、開口枠体のかもい部との密着面に対して傾斜していることから、側扉周辺部の車両構造に生ずる撓みを、側扉戸閉機固定具の傾きにより再現し、側扉戸閉機に荷重を加えるものである。
【0015】
(9)上記(7)項において、前記側扉戸閉機固定具は、前記かもい部に固定される調整座と、該調整座に対して着脱自在かつ前記側扉戸閉機に固定される取付座とからなる鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置(請求項7)。
本項に記載の鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置は、調整座及び取付座を介して、側扉戸閉機を開口枠体のかもい部に対し固定するものである。そして、調整座又は取付座の形状を調整して、側扉周辺部の車両構造に生ずる撓みを再現し、側扉戸閉機に荷重を加えると共に、側扉戸閉機固定具を、かもい部に固定される調整座と側扉戸閉機に固定される取付座とに分割することで、取付作業の容易化を図るものである。
【0016】
(10)上記(9)項において、前記かもい部に固定される調整座及び前記側扉戸閉機に固定される取付座の密着面の一方が、前記開口枠体のかもい部の、前記調整座の取付面に対して傾斜している鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置(請求項8)。
本項に記載の鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置は、かもい部に固定される調整座及び前記側扉戸閉機に固定される取付座の密着面の一方が、開口枠体のかもい部の、調整座の取付面に対して傾斜していることから、側扉周辺部の車両構造に生ずる撓みを、調整座及び取付座の傾きにより再現し、側扉戸閉機に荷重を加えるものである。
【0017】
(11)上記(7)から(10)項において、前記側扉戸閉機固定具が、前記かもい部及び前記側扉戸閉機の長手方向に、複数配置されている鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置(請求項9)。
本項に記載の鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置は、かもい部及び側扉戸閉機の長手方向に複数配置されている、側扉戸閉機固定具の各々の形状を調整して、側扉周辺部の車両構造に生ずる撓みを、側扉戸閉機の全体にわたり再現し、側扉戸閉機に荷重を加えるものである。
【0018】
(12)上記(1)から(11)項において、前記荷重付与手段には、前記側扉戸閉機と共に使用されるドアレールを、前記開口枠体のしきい部に対し固定するための、ドアレール固定具が含まれる鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置(請求項10)。
本項に記載の鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置は、ドアレール固定具を介して、ドアレールを開口枠体のしきい部に対し固定するものである。そして、ドアレール固定具の形状を調整して、側扉周辺部の車両構造に生ずる撓みを再現し、ドアレールに加わる荷重も考慮して、側扉戸閉機に荷重を加えるものである。
【0019】
(13)上記(12)項において、前記ドアレール固定具の、前記ドアレールとの密着面が、前記開口枠体のしきい部との密着面に対して傾斜している鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置(請求項11)。
本項に記載の鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置は、ドアレール固定具の、ドアレールとの密着面が、開口枠体のしきい部との密着面に対して傾斜していることから、側扉周辺部の車両構造に生ずる撓みを、ドアレール固定具の傾きにより再現し、側扉戸閉機に荷重を加えるものである。
【0020】
(14)上記(13)項において、前記ドアレール固定具が、前記しきい部に固定される取付座と、該取付座に対して着脱自在かつ前記ドアレールに固定される調整座とからなる鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置(請求項12)。
本項に記載の鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置は、取付座及び調整座を介して、ドアレールを開口枠体のしきい部に対し固定するものである。そして、取付座又は調整座の形状を調整して、側扉周辺部の車両構造に生ずる撓みを再現し、ドアレールに加わる荷重も考慮して、側扉戸閉機に荷重を加えると共に、ドアレール固定具を、しきい部に固定される取付座と側扉戸閉機に固定される調整座に分割することで、取付作業の容易化を図るものである。
【0021】
(15)上記(14)項において、前記しきい部に固定される取付座及び前記ドアレールに固定される調整座の密着面の一方が、前記開口枠体のしきい部の、前記取付座の取付面に対して傾斜している鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置(請求項13)。
本項に記載の鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置は、しきい部に固定される取付座及びドアレールに固定される調整座の密着面の一方が、開口枠体のしきい部の、取付座の取付面に対して傾斜していることから、側扉周辺部の車両構造に生ずる撓みを、取付座及び調整座の傾きにより再現し、ドアレールに荷重を加えるものである。
【0022】
(16)上記(12)から(15)項において、ドアレール固定具が、前記しきい部及び前記ドアレールの長手方向に、複数配置されている鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置(請求項14)。
本項に記載の鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置は、しきい部及びドアレールの長手方向に複数配置されている、ドアレール固定具の各々の形状を調整して、側扉周辺部の車両構造に生ずる撓みを、ドアレールの全体にわたり再現し、ドアレールに荷重を加えるものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明はこのように構成したので、側扉戸閉機に加わる荷重を再現することが可能となり、側扉戸閉機及び側扉周辺部の車両構造の最適化に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態に係る鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置を示す模式図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図2】図1に示される荷重試験装置の、横圧付与装置を示すものであり、(a)は平面図、(b)は(a)の要部拡大図である。
【図3】図2に示される横圧付与装置の側面図であり、(a)は可動ロッドのローラと引き込みレールとの非当接状態を、(b)は同当接状態を示すものである。
【図4】図1に示される荷重試験装置の、側扉戸閉機固定具を示すものであり、(a)は正面図、(b)は(a)のB−B断面拡大図である。
【図5】図4に示される側扉戸閉機固定具の単体図であり、(a)は、かもい部に固定される調整座を示す三面図、(b)は、側扉戸閉機に固定される取付座の平面図及び側面図、(c)は(a)に示された調整座の形状例を示す拡大図である。
【図6】図1に示される荷重試験装置の、ドアレール固定具を示すものであり、(a)は平面図、(b)は(a)のC−C断面図である。
【図7】鉄道車両の車体を模式的に示すものであり、(a)は側面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図8】(a)は鉄道車両の車体に撓みが生じた状態を示す模式図、(b)は側扉戸閉機が車体の撓みの影響を受ける様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態を添付図面に基づいて説明する。ここで、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については、同一符号で示し、詳しい説明を省略する。
本発明の実施の形態に係る鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置20は、図1に示されるように、鉄道車両の、側扉周辺部の車両構造を模した開口枠体22と、開口枠体22に側扉戸閉機14及び側扉12が設置された状態で、側扉戸閉機14に加わる荷重を再現するための、開口枠体22に固定された荷重付与手段(24、26、28)とを含むものである。
【0026】
開口枠体22は、鉄道車両の側扉周辺部の車両構造を模したものであり、実際の車両構造に倣って、側扉戸閉機14を固定するかもい部22aと、ドアレール16を固定するしきい部22bとが含まれるものであり。そして、鋼材を適宜組み合わせることで、必要な強度が確保されている。
【0027】
荷重付与手段には、側扉戸閉機14に駆動される側扉12に、側扉12の開閉時及び全閉状態においては常に側扉12と接触する、横圧付与装置24が含まれている。横圧付与装置24は、図2、図3に示されるように、開口枠体22の開口を横切るように固定された梁22cに、側扉12の開閉方向へと並んで複数配置され、かつ、側扉12の外側から側扉12の表面に向かって離間接近自在に保持された可動ロッド30を備えている。
また、可動ロッド30を側扉12の外側方向へと付勢する力を調整する荷重調整手段32を備えている。図示の例では、荷重調整手段32は、コイルばね32aと、コイルばね32aを貫通して可動ロッド30に固定された調整ねじ32bと、調整ねじ32bに螺合するナット32cとを含み、ナット32cを回転させることにより、コイルばね32aを伸縮させて、前記付勢力の調整を行うことができる。
なお、荷重調整手段32の、可動ロッド30を側扉12の外側方向へと付勢する力を調整する付勢手段として、コイルばね32aに換えて(或いは併用して)、エアシリンダ、油圧シリンダ、電動アクチュエータ等を、適宜用いることも可能である。
【0028】
又、横圧付与装置24は、側扉12の外側面に、側扉12の開閉方向へと延びるように固定される引き込みレール34を備え、更に、可動ロッド30の先端部は、側扉12の開閉動作に応じて引き込みレール34の端部(34b)から引き込みレール34に係合離脱する、接触子としてのローラ36を備えている。引き込みレール34は、側扉12を車両幅方向外側に向かってローラ36が当接するためのガイド面34aを有する断面L字状をなし、引き込みレール34の側扉開方向端部には、側扉12の閉時にローラ36をガイド面34aへと引き込むための、スロープ面34bが形成されている。
【0029】
そして、可動ロッド30のローラ36が、断面L字状の引き込みレール34のガイド面34aに当接して、側扉12を車両幅方向に外側に向かって引き込み、かつ、引き込みレール34のガイド面34aをローラ36が回転することで、側扉12の開閉が円滑に行われる。又、引き込みレール34の側扉開方向端部に形成されたスロープ面34bによって、側扉12の閉時に、側扉12の動作と共にローラ36を引き込みレール34へと案内し、自動的にローラ36と引き込みレール34との当接状態を回復するものである。又、側扉12の開時にも、側扉12の動作と共にローラ36は引き込みレール34端部のスロープ面34bから、円滑に開放される。
なお、図示の例では、両開きの側扉12の各ドアパネルに対し、上下二段に各10本づつ可動ロッド30が配置されているが、この本数及び配置については、必要に応じ適宜調整するものである。又、接触子は、上述のごとき機能を奏するものであればローラ36に限られず、例えば、低摩擦のスライドブロックであっても良い。又、引き込みレール34の形状も、接触子が当接することで、側扉12を車両幅方向外側に向かって引き込むことが可能な形状(接触子が引き込みレール34を介して側扉12に当接する形状)であれば、断面L字状に限定されるものではない。
【0030】
又、荷重付与手段には、開口枠体22のかもい部22aに対し側扉戸閉機14を固定するための側扉戸閉機固定具26が含まれている。図4に示されるように、側扉戸閉機固定具26は、かもい部22a及び側扉戸閉機14の長手方向に複数配置されており、かもい部22aに固定される調整座40と、調整座40に対して着脱自在かつ側扉戸閉機14に固定される取付座42とからなるものである。図5(a)に示されるように、調整座40は、一定の厚みの平板からなるベース部40aと、ベース部40aに固定され、取付座42との密着面を構成するスペーサ40bとからなっている。一方、取付座42は、調整座40のスペーサ40bに密着する、延べ板状の部品であり、図示の例では、調整座40と共にかもい部22aに対してねじ止めされるものである。
又、図示の例では、スペーサ40bの取付座42との密着面が、ベース40aに対して所定の角度θで傾斜している。スペーサ40bの取付座42との密着面の、ベース40aに対する傾斜角度及び傾斜方向は、車体に生じ得る撓みを考慮して、適宜、二次元ないし三次元方向の傾斜が与えられるものである。そして、ベース部40aの厚みは一定であることから、スペーサ40bの取付座42との密着面は、かもい部22aに固定された状態で、かもい部22aの調整座取付面に対して傾斜することとなる。
なお、図示の例では、側扉戸閉機固定具26は、6個使用されているが、その数及びレイアウトは、必要に応じ適宜調整されるものである。更に、図示は省略するが、側扉戸閉機固定具26に、調整座40と取付座42とを一体にした、一体構造を採用することとしても良い。
【0031】
更に、荷重付与手段には、側扉戸閉機14と共に使用されるドアレール16を、開口枠体22のしきい部22bに対し固定するための、ドアレール固定具28が含まれる。ドアレール固定具28は、図6に示されるように、しきい部22b及びドアレール16の長手方向に、複数配置されており、しきい部22bに固定される取付座44と、取付座44に対して着脱自在かつドアレール16に固定される調整座46とからなるものである。
取付座44は延べ板状の部品であり、一定の深さの溝部44aが形成されている。又、調整座46は、取付座44の溝部44aに密着する、延べ板状の部品であり、ドアレール16を嵌め込むための溝部46aが形成されている。
そして、図示は省略するが、側扉戸閉機固定具26と同様に、取付座44及び調整座46の、互いの密着面の一方が、開口枠体22のしきい部22bの調整座取付面に対して、傾斜している。又、図示の例では、調整座46は、取付座44に対してねじ止めされ、ドアレール16は、調整座46にねじ止めされている。
又、側扉戸閉機固定具26の場合と同様に、取付座44及び調整座46の、互いの密着面の傾斜角度及び傾斜方向は、車体に生じ得る撓みを考慮して、適宜、二次元ないし三次元方向の傾斜が与えられるものである。更に、図示は省略するが、ドアレール固定具28に、取付座44と調整座46とを一体にした一体構造を採用することとしても良い。
なお、図示の例では、ドアレール固定具28は、5個使用されているが、その数及びレイアウトは、必要に応じ適宜調整されるものである。
【0032】
上記構成をなす、本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。まず、本発明の実施の形態に係る鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置20は、側扉周辺部の車両構造を模した開口枠体22に、側扉戸閉機14及び側扉12を設置し、開口枠体22に固定された荷重付与手段24、26、28によって、側扉戸閉機14に加わる荷重を再現することができるものであり、結果、側扉戸閉機14及び側扉12の周辺部の、車両構造の最適化に寄与するものとなる。
具体的には、側扉戸閉機14に駆動される側扉12に、側扉12の開閉時及び全閉状態においては常に、側扉12と接触する横圧付与装置24によって、側扉12を介して側扉戸閉機14に荷重を付与するものである。
【0033】
横圧付与装置24は、開口枠体22に、側扉12の外側から側扉12の表面に向かって離間接近自在に保持された可動ロッド30の先端部に設けられた接触子36を、側扉12の外側面に側扉12の開閉方向へと延びるように固定される引き込みレール34に対し、側扉12の開閉動作に応じて、引き込みレール34の端部から引き込みレール34に係合離脱させるものである。これによって、横圧付与装置24は、側扉戸閉機14に駆動される側扉12に対し、側扉12の開閉時及び全閉状態においては常に、接触することとなる。この際、荷重調整手段32によって、可動ロッド30による、側扉12の外側方向へと付勢する力を自在に調整することも可能である。そして、側扉12の開閉時及び全閉状態においては常に、側扉12に対し、車両幅方向に外側に向かって横圧を付与することが可能となる。
【0034】
又、開口枠体22の開口を横切るように固定された梁22cに、側扉12の開閉方向へと並んで複数配置された可動ロッド30が、側扉12の外側面に側扉12の開閉方向へと延びるように固定される引き込みレール34に対し、側扉12の開閉動作に応じて引き込みレール34の端部34bから、引き込みレール34に順次係合離脱することとなる。この、引き込みレール34に対する複数の可動ロッド30の係合離脱の結果、側扉12の開閉時及び全閉状態においては常に、側扉12に対し、車両幅方向に外側に向かって横圧を付与することが可能となる。
【0035】
又、可動ロッド30のローラ36が、断面L字状の引き込みレール34のガイド面34aに当接して、側扉12を車両幅方向に外側に向かって引き込み、かつ、引き込みレール34のガイド面34aをローラ36が回転することで、側扉12の開閉を円滑に行うことができ、車両の挙動や車内混雑の影響により、車両幅方向に外側に向かって側扉12に加わる横圧を、正確に再現することが可能となる。
しかも、引き込みレール34の側扉開方向端部に形成されたスロープ面34bによって、側扉12の閉時に、側扉12の動作と共にローラ36を引き込みレール34へと案内し、自動的にローラ36と引き込みレール34との当接状態を回復するものである。又、側扉12の開時にも、側扉12の動作と共にローラ36は引き込みレール34端部のスロープ面34bから円滑に開放され、側扉12の開閉を円滑に行うことができるものとなっている。
【0036】
又、荷重付与手段には、開口枠体22のかもい部22aに対し側扉戸閉機14を固定するための側扉戸閉機固定具26が含まれ、側扉戸閉機固定具26の調整座40及び取付座42を介して、側扉戸閉機14を開口枠体22のかもい部22aに対し固定することができる。そして、調整座40又は取付座42の形状を調整して、側扉周辺部の車両構造に生ずる撓みを再現し、側扉戸閉機14に荷重を加えることができる。
又、調整座40及び取付座42の密着面の一方が、開口枠体22のかもい部22aの、調整座40の取付面に対して傾斜していることから、側扉周辺部の車両構造に生ずる撓みを、調整座40及び取付座42の傾きにより再現し、側扉戸閉機14に荷重を加えることができる。
しかも、側扉戸閉機固定具26が、かもい部22a及び側扉戸閉機14の長手方向に複数配置されている、側扉戸閉機固定具26の各々の形状を調整して、側扉周辺部の車両構造に生ずる撓みを、側扉戸閉機14の全体にわたり再現し、側扉戸閉機14に荷重を加えることが可能となる。
【0037】
なお、側扉戸閉機固定具26を、調整座40と取付座42とを一体にした一体構造としても良い。この場合には、側扉戸閉機固定具26の、側扉戸閉機14との密着面を、開口枠体22のかもい部22aとの密着面に対して傾斜させることで、側扉周辺部の車両構造に生ずる撓みを、側扉戸閉機固定具26の傾きにより再現し、側扉戸閉機14に荷重を加えることができる。
【0038】
又、荷重付与手段には、側扉戸閉機14と共に使用されるドアレール16を、開口枠体22のしきい部22bに対し固定するための、ドアレール固定具28が含まれるものである。ドアレール固定具28は、取付座44及び調整座46を介して、ドアレール16を開口枠体22のしきい部22bに対し固定するものである。そして、取付座44又は調整座46の形状を調整して、側扉周辺部の車両構造に生ずる撓みを再現し、ドアレール16に加わる荷重も考慮して、側扉戸閉機14に荷重を加えることができる。
【0039】
又、取付座44及び調整座46の密着面の一方が、開口枠体22のしきい部22bの取付座44の取付面に対して傾斜していることから、側扉周辺部の車両構造に生ずる撓みを、取付座44及び調整座46の傾きにより再現し、ドアレール16に荷重を加えることができる。
しかも、しきい部22b及びドアレール16の長手方向に複数配置されている、ドアレール固定具28の各々の形状を調整して、側扉周辺部の車両構造に生ずる撓みを、ドアレール16の全体にわたり再現し、ドアレール16に荷重を加えることが可能となる。
【0040】
又、ドアレール固定具28を、取付座44と調整座46とを一体にした一体構造としても良い。この場合には、ドアレール固定具28の、ドアレール16との密着面を、開口枠体22のしきい部22bとの密着面に対して傾斜させることで、側扉周辺部の車両構造に生ずる撓みを、ドアレール固定具28の傾きにより再現し、側扉戸閉機14に荷重を加えることができる。
本発明の実施の形態に係る荷重試験装置20は、上記荷重付与手段24、26、28の相乗効果によって、側扉戸閉機14に加わる荷重をより正確に再現することができるものであり、結果、側扉戸閉機14及び側扉12の周辺部の、車両構造の最適化に寄与するものとなることは理解されるであろう。
【符号の説明】
【0041】
10:鉄道車両、12:側扉、14:側扉戸閉機、16:ドアレール、20:鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置、22:開口枠体、22a:かもい部、22b:しきい部、24:横圧付与装置、26:側扉戸閉機固定具、28:ドアレール固定具、30:可動ロッド、32:荷重調整手段、34:引き込みレール、34a:ガイド面、34b:スロープ面、36:ローラ、 40、44:調整座、 42、46:取付座

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側扉周辺部の車両構造を模した開口枠体と、該開口枠体に側扉戸閉機及び側扉が設置された状態で前記側扉戸閉機に加わる荷重を再現するための、前記開口枠体に固定された荷重付与手段とを含むことを特徴とする鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置。
【請求項2】
前記荷重付与手段には、前記側扉戸閉機に駆動される側扉に、側扉の開閉時及び全閉状態においては常に側扉と接触する、横圧付与装置が含まれることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置。
【請求項3】
前記横圧付与装置は、前記開口枠体に、前記側扉の外側から前記側扉の表面に向かって離間接近自在に保持された可動ロッドと、
該可動ロッドを前記側扉の外側方向へと付勢する力を調整する荷重調整手段と、
前記側扉の外側面に、前記側扉の開閉方向へと延びるように固定される引き込みレールと、
前記可動ロッドの先端部に設けられ、前記側扉の開閉動作に応じて前記引き込みレールの端部から前記引き込みレールに係合離脱し、前記引き込みレールとの係合状態において前記側扉を外側方向へと付勢する接触子とを備えることを特徴とする請求項2記載の鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置。
【請求項4】
前記可動ロッドが、前記開口枠体の開口を横切るように固定された梁に、前記側扉の開閉方向へと並んで複数配置されていることを特徴とする請求項3記載の鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置。
【請求項5】
前記荷重付与手段には、前記開口枠体のかもい部に対し側扉戸閉機を固定するための、側扉戸閉機固定具が含まれることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置。
【請求項6】
前記側扉戸閉機固定具の、前記側扉戸閉機との密着面が、前記開口枠体のかもい部との密着面に対して傾斜していることを特徴とする請求項5記載の鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置。
【請求項7】
前記側扉戸閉機固定具は、前記かもい部に固定される調整座と、該調整座に対して着脱自在かつ前記側扉戸閉機に固定される取付座とからなることを特徴とする請求項5項記載の鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置。
【請求項8】
前記かもい部に固定される調整座及び前記側扉戸閉機に固定される取付座の密着面の一方が、前記開口枠体のかもい部の、前記調整座の取付面に対して傾斜していることを特徴とする請求項7記載の鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置。
【請求項9】
前記側扉戸閉機固定具が、前記かもい部及び前記側扉戸閉機の長手方向に、複数配置されていることを特徴とする請求項5から8のいずれか1項記載の鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置。
【請求項10】
前記荷重付与手段には、前記側扉戸閉機と共に使用されるドアレールを、前記開口枠体のしきい部に対し固定するための、ドアレール固定具が含まれることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項記載の鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置。
【請求項11】
前記ドアレール固定具の、前記ドアレールとの密着面が、前記開口枠体のしきい部との密着面に対して傾斜していることを特徴とする請求項10記載の鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置。
【請求項12】
前記ドアレール固定具が、前記しきい部に固定される取付座と、該取付座に対して着脱自在かつ前記ドアレールに固定される調整座とからなることを特徴とする請求項10項記載の鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置。
【請求項13】
前記しきい部に固定される取付座及び前記ドアレールに固定される調整座の密着面の一方が、前記開口枠体のしきい部の、前記取付座の取付面に対して傾斜していることを特徴とする請求項12記載の鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置。
【請求項14】
ドアレール固定具が、前記しきい部及び前記ドアレールの長手方向に、複数配置されていることを特徴とする請求項10から13のいずれか1項記載の鉄道車両用側扉戸閉機の荷重試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−126212(P2012−126212A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278249(P2010−278249)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(000003377)東急車輛製造株式会社 (332)