説明

鉄道車両用台車

【課題】板バネに万が一の損傷等が生じても横ばりを適切に支持できるようにして、板バネ台車の信頼性を向上させる。
【解決手段】板バネ台車1は、鉄道車両の車体11を支持するための横ばり4と、横ばり4を挟んで車両長手方向の前方及び後方において車幅方向に沿って配置された前後一対の車軸5と、車軸5の車幅方向両側に設けられて、車軸5を回転自在に支持する軸受7と、軸受7を収容する軸箱8と、横ばり4の車幅方向両端部4aを支持した状態で車両長手方向に延びて、その車両長手方向両端部30cが軸箱8に支持された板バネ30と、横ばり4の車幅方向の端部4aが板バネ30の所定の弾性変形範囲を超えて下方に変位したときに、横ばり4の端部4aを支持する予備支持機構50とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側ばりを省いた鉄道車両用台車に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の車体の床下には、車体を支持してレール上を走行するための台車が設けられており、この台車では、輪軸を支持する軸受が収容された軸箱が台車枠に対して上下方向に変位可能となるように軸箱支持装置により支持されている。例えば、特許文献1には、軸箱支持装置が提案されており、台車枠が、横方向に延びる横ばりと、その横ばりの両端部から前後方向に延びた左右一対の側ばりとを備え、軸箱支持装置は、軸箱とその上方にある側ばりとの間に介装されたコイルバネからなる軸バネを備えている。
【0003】
また、特許文献2には、台車枠のうち側ばりの部分を省いた台車が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2799078号公報
【特許文献2】特開昭55−47950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のような台車では、横ばり及び側ばりからなる台車枠が大重量の鋼材を互いに溶接するなどして製作されているため、台車枠の重量が大きくなると共に、鋼材コストや組立コストが高くなるという問題がある。
【0006】
これに対して、特許文献2の台車では、台車枠の横ばりと軸箱とが互いに一定距離を保つように支持機構部材により接続されると共に、横ばりの横方向両端部に板バネの前後方向中央部が保持固定され、その板バネの前後方向両端部が軸箱の下部に設けたバネ受け内に挿入されている。
【0007】
しかしながら、特許文献2の台車の場合、万が一にも左右いずれか一方の板バネが折れるなどして損傷すると、その板バネが設計通りの支持機能を発揮せず、横ばりの横方向の一端部が想定以上に下方に移動してしまうこととなる。板バネを多数設け、一部の板バネが損傷しても残りの板バネで十分な支持機能を担保することも考えられるが、板バネのバネ定数を設計要求に合わせる必要があるため、板バネを多数設けることができない場合も多い。
【0008】
そこで本発明は、板バネに万が一の損傷等が生じても横ばりを適切に支持できるようにして、板バネ台車の信頼性を向上させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る鉄道車両用台車は、鉄道車両の車体を支持するための横ばりと、前記横ばりを挟んで車両長手方向の前方及び後方において車幅方向に沿って配置された前後一対の車軸と、前記車軸の車幅方向両側に設けられて、前記車軸を回転自在に支持する軸受と、前記軸受を収容する軸箱と、前記横ばりの車幅方向両端部を支持した状態で車両長手方向に延びて、その車両長手方向両端部が前記軸箱に支持された板バネと、前記横ばりの車幅方向両端部のうち少なくとも一方の端部が前記板バネの所定の弾性変形範囲を超えて下方に変位したときに、前記横ばりの前記端部を支持する予備支持機構と、を備えている。
【0010】
前記構成によれば、板バネに万が一の損傷等が生じ、横ばりの横方向の端部が板バネの所定の弾性変形範囲を超えて下方に変位したときには、予備支持機構が横ばりの端部を支持するので、要求される支持機能を予備支持機構によって担保することが可能となる。したがって、板バネに万が一の損傷等が生じても横ばりを適切に支持でき、板バネ台車の信頼性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、板バネに万が一の損傷等が生じても横ばりを適切に支持でき、板バネ台車の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係る鉄道車両用台車を表した斜視図である。
【図2】図1に示す台車の平面図である。
【図3】図1に示す台車の側面図である。
【図4】図1に示す連結機構の受け座及びその近傍を表した斜視図である。
【図5】図2のV−V線断面における横ばりと板バネと予備支持部材とを表した要部断面図である。
【図6】図2のVI−VI線断面図である。
【図7】図3に示す台車における板バネと軸箱の支持部材とを表した要部側面図である。
【図8】図7に示す軸箱へのカバーの取り付けを説明する要部背面図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る台車の図5相当の図面である。
【図10】本発明の第3実施形態に係る台車の側面図である。
【図11】図10に示す板バネ台車の要部拡大図である。
【図12】本発明の第4実施形態に係る台車の側面図である。
【図13】本発明の第5実施形態に係る台車の一部断面化した要部側面図である。
【図14】本発明の第6実施形態に係る台車の側面図である。
【図15】本発明の第7実施形態に係る台車の側面図である。
【図16】本発明の第8実施形態に係る台車の側面図である。
【図17】図16に示す台車の要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る鉄道車両用台車1を表した斜視図である。図2は、図1に示す台車1の平面図である。図3は、図1に示す台車1の側面図である。図4は、図1に示す連結機構16の受け座21,21及びその近傍を表した斜視図である。図1乃至3に示すように、鉄道車両用台車1は、二次サスペンションとなる空気バネ2を介して車体11を支持するための台車枠3として車幅方向(以下、横方向ともいう)に延びる横ばり4を備えているが、横ばり4の横方向両端部から車両長手方向(以下、前後方向ともいう)に延びる側ばりを備えていない。横ばり4の前方及び後方には、横方向に沿って前後一対の車軸5が配置されており、車軸5の横方向両側には車輪6が固定されている。車軸5の横方向両端部には、車輪6よりも横方向外側にて車軸5を回転自在に支持する軸受7が設けられ、その軸受7は軸箱8に収容されている。横ばり4には、電動機9が取り付けられており、その電動機9の出力軸には、車軸5に動力を伝達する減速ギヤが収容されたギヤボックス10が接続されている。なお、横ばり4には、車輪6の回転を制動するためのブレーキ装置(図示せず)も設けられている。
【0015】
横ばり4は、横方向に延びる金属からなる一対の角パイプ12と、それら角パイプ12を接続する金属からなる接続板13,14とを有し、接続板13,14は、角パイプ12に対してボルト結合等により固定されている。横ばり4の横方向両端部4aには、筒状の接続板14が間隔をあけて一対設けられており、それらの上面に空気バネ台座15が設置されている。横ばり4の横方向両端部4aは、連結機構16によって軸箱8に連結されている。連結機構16は、軸箱8から一体的に前後方向に沿って延びた軸ばり17を備えている。軸ばり17の端部には、内周面が円筒形状で横方向両側が開口する筒状部18が設けられている。筒状部18の内部空間には、ゴムブッシュ(図示せず)を介して心棒20が挿通されている。
【0016】
図1及び4に示すように、横ばり4の横方向両端部4aには、連結機構16を構成する一対の受け座21,22が前後方向に突出して設けられている。一対の受け座21,22は、その上端部が上連結板23によって連結されており、その上連結板23がボルト24によって角パイプ12に固定されている。また、受け座21,22は、その下端部の突出先端側が下連結板28によって互いに連結されている。受け座21,22には、下方に向けて開口する嵌入溝25が形成されている。嵌入溝25には、心棒20の横方向両端部が下方から嵌入されている。その状態で、嵌入溝25の下側開口を閉鎖するように蓋部材26がボルト(図示せず)により下方から受け座21,22に固定され、心棒20が蓋部材26によって下方から支持されている。
【0017】
横ばり4と軸箱8との間には、前後方向に延びた板バネ30が架け渡されており、板バネ30の前後方向中央部30aが横ばり4の横方向両端部4aを支持し、板バネ30の前後方向両端部30cが軸箱8に支持されている。即ち、板バネ30が、一次サスペンションの機能と従来の側ばりの機能とを兼ねている。軸箱8の上端部にはバネ座31が取り付けられており、板バネ30の前後方向両端部30cはバネ座31によって下方から支持されている。板バネ30の前後方向中央部30aは、横ばり4の下方に潜り込むように配置されており、横ばり4の横方向両端部4aに設けた当接部材33(図5参照)が上方から載せられている。
【0018】
板バネ30のうち前後方向中央部30aと前後方向両端部30cとの間の延在部30bは、側面視で前後方向中央部30aに向けて下方に傾斜している。即ち、板バネ30の前後方向中央部30aは、板バネ30の前後方向両端部30cよりも下方に位置している。板バネ30の延在部30bの一部は、連結機構16と隙間をあけた状態を保ちながら側面視で連結機構16と重なる位置に配置されている。具体的には、板バネ30の延在部30bの一部は、一対の受け座21,22で挟まれた空間27において、上連結板23の下方かつ下連結板28の上方を通過し、板バネ30の前後方向中央部30aが横ばり4の下方かつ後述する第1予備支持部材29の上方の空間に位置している。
【0019】
図5は、図2のV−V線断面における横ばり4と板バネ30と第1予備支持部材29を表した要部断面図である。図6は、図2のVI−VI線断面図である。図5及び6に示すように、横ばり4の横方向両端部4aには、一対の角パイプ12の下面に固定された金属(例えば、一般鋼材)からなる固定板32と、その固定板32の下面に固定された剛体(例えば、金属や繊維強化樹脂等)からなる当接部材33とが設けられており、その当接部材33が板バネ30の下面を支持しない状態で板バネ30の前後方向中央部30aに上方から載せられて自由接触している。換言すれば、当接部材33は、板バネ30を上下方向に固定しない状態で板バネ30の上面に接触している。
【0020】
板バネ30の前後方向両端部30cは、横ばり4の当接部材33の下面である接触面33aよりも高い位置にある。当接部材33の板バネ30との接触面33aは、側面視で下方に向けて凸となる略円弧形状を呈している。側面視において、当接部材33の接触面33aの曲率は、台車1が車体11を支持していない状態で、板バネ30の当接部材33と接触する部分の曲率よりも大きくなるよう設定されている。また、台車1が車体11を支持した状態では、車体11からの下方荷重によって横ばり4が下方に沈むように板バネ30が弾性変形し、板バネ30の当接部材33と接触する部分の曲率は増加するが、空車時には、当接部材33の接触面33aの曲率が板バネ30の当接部材33と接触する部分の曲率よりも大きい状態が保たれる(図5の実線)。そして、車体11に乗車する人数が増えて横ばり4に対する下方荷重が増加していくと、板バネ30の当接部材33と接触する部分の曲率が増加していく(図5の破線)。
【0021】
板バネ30は、繊維強化樹脂(例えば、CFRPやGFRP)からなる下層部35と、下層部35よりも薄い金属(例えば、一般鋼材)からなる上層部36とを備えた二層構造である。言い換えると、板バネ30は、繊維強化樹脂からなる板バネ本体部分(下層部35)の上面側を金属(上層部36)で一体的に被覆してなるものである。板バネ30の延在部30bは、前後方向における端部側から中央部側に向けて徐々に肉厚Tが大きくなるよう形成されている。当接部材33の接触面33aと板バネ30の上面との接触箇所には、遊びをもって上下方向に嵌合する嵌合部である凹凸嵌合構造が設けられている。具体的には、当接部材33の接触面33aの中央部分に上方に窪んだ凹部33bが形成され、板バネ30の上層部36の上面に凹部33bと遊びをもって嵌合する凸部36aが形成されている。
【0022】
横ばり4には、当接部材33の横方向両側にて下方に突出する一対のガイド側壁39が互いに距離をあけて設けられており、それらガイド側壁39の間に板バネ30が隙間をあけて配置されている。また、一対のガイド側壁39は、板バネ30の前後方向の中心から見て前側と後側との両方において横方向に延びた円柱状の第1予備支持部材29によって互いに連結されている。これら第1予備支持部材29は、前後対称に設けられており、板バネ30が折れるなどして損傷したときに、横ばり4の端部4aの当接部材33との間で板バネ30を挟持して横ばり4の端部4aを支持する予備支持機構50を構成する。
【0023】
第1予備支持部材29は、横ばり4の端部4aに平面視で重なる位置にて板バネ30の下方に配置されている。前後一対の第1予備支持部材29の間の距離L1は、横ばり4の端部4aの当接部材33の前後方向長さL2よりも短い。第1予備支持部材29は、板バネ30が損傷しておらず、横ばり4の端部4aが板バネ30の所定の弾性変形範囲内で正常に上下方向に変位しているときには、板バネ30から離隔して、横ばり4の端部4aを支持していない。即ち、板バネ30が、車体11への乗車率が0%である空車時における変形状態(図5の実線)と、車体11への乗車率が100%である満車時における変形状態(図5の破線)との間で弾性変形することで、横ばり4が軸箱8に対して上下方向に相対変位している間は、第1予備支持部材29は板バネ30から離れて接触しない位置に設けられている。
【0024】
仮に、板バネ30の前後方向の中心付近が折れるなどの損傷によって板バネ30の前後方向中央部30aが当接部材33の下面に沿わなくなる異常が生じた場合には、板バネ30の前後方向中央部30a(板バネ30の横ばり4と平面視で重なる部分)は、正常な弾性変形範囲を超えて傾斜し、横ばり4からの下方荷重により予備支持部材29と当接部材33の前後方向端縁との間で上下方向に挟むように位置決めされる(図5の一点鎖線)。
【0025】
即ち、板バネ30が前記弾性変形範囲を超えて傾斜したときに、横ばり4の車幅方向端部の当接部材33が板バネ30の上面を支持し、第1予備支持部材29が板バネ30の下面を支持する。これにより、第1予備支持部材29が、板バネ30を介して横ばり4の端部4aを支持することとなる。
【0026】
また、板バネ30が前後方向中央部30a以外の部分で折れるなどの損傷があった場合にも、第1予備支持部材29がその板バネ30の残された長い方の部分を介して横ばり4の端部4aを支持する。例えば、板バネ30の前側の延在部30bで折れが生じた場合には、その折れ部分より後側の部分が、正常な弾性変形範囲を超えて傾斜し、横ばり4からの下方荷重により第1予備支持部材29と当接部材33との間で上下方向に挟むように位置決めされる。これにより、予備支持部材29が、板バネ30の折れ部分より後側の部分を介して横ばり4の端部4aを支持することとなる。
【0027】
なお、図5では、損傷した板バネ30を当接部材33の前後方向の端縁と第1予備支持部材29との間で挟むように位置決めしているが、角パイプ12の前後方向の端縁と第1予備支持部材29との間で挟むように位置決めしてもよい。また、予備支持部材29が板バネ30を介して横ばり4の一端部4aを支持した状態では、その横ばり4の一端部4aが通常よりも若干下方に変位することとなるが、その対応する空気バネ2の膨張量を増加させることで車体11の高さや姿勢を修正することができる。
【0028】
図7は、図3に示す台車1における板バネ30と軸箱8のバネ座31とを表した要部側面図である。図8は、図7に示す軸箱8へのカバー47の取り付けを説明する要部背面図である。図7及び8に示すように、軸箱8の上端部にはバネ座31が載せられている。バネ座31には、その中央に穴部31aが形成されており、その穴部31aに軸箱8の上に設けた凸部8aが嵌合されている。バネ座31は、下から順に、ゴム板41、金属板42及びゴム板43が互いに接着された状態で積層されてなる。板バネ30の前後方向両端部30cは、バネ座31に上方から載せられて自由接触している。換言すれば、板バネ30の前後方向両端部30cは、バネ座31に対して上下方向に固定されない状態でバネ座31の上面に接触している。バネ座31の接触面33a(上面)と板バネ30の下面との接触箇所には、遊びをもって上下方向に嵌合する嵌合部である凹凸嵌合構造が設けられている。具体的には、板バネ30の前後方向両端部30cに下層部35から下方に一体的に突出する凸部35aが形成され、その凸部35aがバネ座31の穴部31aに遊びをもって嵌合されている。
【0029】
図8に示すように、軸箱8には、板バネ30の前後方向両端部30cの上方を隙間Sをあけた状態で覆う断面逆U形状のカバー47が設けられる(図1〜3及び7には図示せず)。カバー47は、上壁部47aと、上壁部47aの横方向両端部から下方に垂下する側壁部47bとを有し、側壁部47bの下端部がネジ等の固定具48により軸箱8に固定されている。カバー47の上壁部47aと板バネ30との間の隙間Sは、板バネ30とバネ座31との間の凹凸嵌合構造及びバネ座31と軸箱8との間の凹凸嵌合構造において嵌合状態が保たれるように設定されている。具体的には、その隙間Sの高さH2は、凸部8a,35aの高さH1よりも小さく設定されている。
【0030】
以上に説明した構成によれば、板バネ30に万が一の損傷等が生じ、横ばり4の横方向の端部4aが板バネ30の所定の弾性変形範囲を超えて下方に変位したときには、予備支持部材29が、板バネ30を横ばり4の端部4aとの間で上下方向に挟むように位置決めして横ばり4の端部4aを支持するので、要求される支持機能を第1予備支持部材29によって担保することが可能となる。したがって、台車1の板バネ30に万が一の損傷等が生じても横ばり4を適切に支持でき、台車1の信頼性を向上させることができる。
【0031】
また、第1予備支持部材29は、横ばり4の端部4aが板バネ30の通常の弾性変形範囲内で上下方向に変位しているときには、板バネ30に対して隙間をあけており、横ばり4の端部4aを支持していない。よって、板バネ30のバネ定数の設計が容易になるとともに、板バネが通常の弾性変形状態にあるときに第1予備支持部材29に板バネ30からの負荷が掛からず、第1予備支持部材29の疲労を防止することができる。また、第1予備支持部材29は、バネ30の前後方向の中心から見て前側と後側との両方に設けられているため、板バネ30の長さ方向のいずれの部分で損傷が生じても、予備支持部材29が板バネ30を介して横ばり4の端部4aを支持することができる。
【0032】
また、予備支持機構50が連結機構16とは別に設けられているため、板バネ30に万が一の損傷等が生じたときに横ばり4からの下方荷重が連結機構16に過剰に伝達されることがなく、連結機構16への過負荷を防止することができる。また、軸箱8には、板バネ30の前後方向両端部30cの上面と隙間Sをあけて板バネ30の前後方向両端部30cの上方を覆うカバー47が設けられ、その隙間Sが板バネ30とバネ座31との間の凹凸嵌合構造の嵌合状態を保つように設定されているので、板バネ30に万が一の損傷が発生しても、板バネ30の脱落を防止することができる。
【0033】
(第2実施形態)
図9は、本発明の第2実施形態に係る台車101の図5相当の図面である。図9に示すように、本実施形態の予備支持部材129は、横ばり4の端部4aに平面視で重なる位置にて板バネ30の下方に配置された板状部材である。予備支持部材129は、板バネ30と隙間をあけた状態で板バネ30の下面に沿って湾曲している。予備支持部材129の前後方向長さは、横ばり4の端部4aの当接部材33の前後方向長さよりも短い。予備支持部材129は、板バネ30が損傷しておらず、横ばり4の端部4aが板バネ30の所定の弾性変形範囲内で正常に上下方向に変位しているときには、板バネ30から離隔して、横ばり4の端部4aを支持していない。
【0034】
以上の構成によれば、第1実施形態の場合と同様にして、板バネ30に万が一の損傷等が生じ、横ばり4の横方向の端部4aが板バネ30の所定の弾性変形範囲を超えて下方に変位したときには、予備支持部材129が、板バネ30を横ばり4の端部4aとの間で上下方向に挟むように位置決めして横ばり4の端部4aを支持するので、要求される支持機能を予備支持部材129によって担保することが可能となる。なお、他の構成は前述した第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0035】
(第3実施形態)
図10は、本発明の第3実施形態に係る台車201の側面図である。図11は、図10に示す台車201の要部拡大図である。図10及び11に示すように、軸箱8には、前後方向から見て略U形状の受枠212が下方に向けて垂設されている。前後の受枠212の間にはロッド211が架け渡されている。ロッド211は、ロッド本体部211aと、そのロッド本体部211aの前後方向の両端部211bとを有し、両端部211bの外周面にはネジが形成されている。受枠212の内部空間に挿通されたロッド211の端部211bには、受枠212の前後方向両側においてナットであるストッパ213,214が螺着されている。ストッパ213,214は、受枠212の内部空間を通過できない大きさであり、受枠212に対して前後方向に所定の隙間をあけて配置されている。このようにして、ロッド211、受枠212及びストッパ213,214が、予備支持機構210を構成している。
【0036】
以上の構成によれば、横ばり4の端部4aが板バネ30の通常の弾性変形範囲を超えて下方に変位すると、その変位が連結機構16を介して軸箱8に伝達されて軸箱8が車軸回り(ピッチ方向)に回転する。その際、受枠212が傾斜してストッパ213,214に点A,Bで干渉し(図11の破線)、軸箱8の車軸回りの回転角度を所定角度範囲内に規制する。このように、板バネ30に万が一の損傷等が生じても、ストッパ213,214は、軸箱8を回り止めすることで連結機構16を介して横ばり4の端部4aを支持することができる。なお、他の構成は前述した第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0037】
(第4実施形態)
図12は、本発明の第4実施形態に係る台車301の側面図である。図12に示すように、横ばり4から一体的に前後一対のブラケット311が垂下されている。ブラケット311の下端部には、軸箱8側に向けて延びるロッド312の基端部が支軸313を介して上下揺動自在に接続されている。ロッド312には、その軸箱8側の先端部312bの外周面にネジが形成されている。軸箱8には前後方向から見て略U形状の受枠314が垂設されており、その受枠314の内部空間にはロッド312の先端部312bが挿通されている。ロッド312の先端部312bには、受枠314の前後方向両側においてナットであるストッパ315,316が螺着されている。ストッパ315,316は、受枠314の内部空間を通過できない大きさであり、受枠314に対して前後方向に所定の隙間をあけて配置されている。このようにして、ブラケット311、ロッド312、支軸313、受枠314及びストッパ315,316が、予備支持機構310を構成している。
【0038】
以上の構成によれば、第3実施形態と同様にして、横ばり4の端部4aが板バネ30の通常の弾性変形範囲を超えて下方に変位して軸箱8が車軸回りに回転すると、受枠314が傾斜してストッパ315,316に干渉し、軸箱8の車軸回りの回転角度を所定角度範囲内に規制する。よって、板バネ30に万が一の損傷等が生じても、ストッパ315,316は、軸箱8を回り止めすることで連結機構16を介して横ばり4の端部4aを支持することができる。なお、他の構成は前述した第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0039】
(第5実施形態)
図13は、本発明の第5実施形態に係る台車401の一部断面化した要部側面図である。図13に示すように、台車401の連結機構416は、軸箱8から一体的に前後方向に沿って延びた軸ばり417を備えている。軸ばり417の先端側には、内周面が円筒形状で横方向両側が開口する筒状部418が設けられている。筒状部418の内部空間には、ゴムブッシュ419を介して心棒420が挿通されている。さらに、軸ばり417は、筒状部418から軸箱8とは反対側に向けて突出したオーバーハング部440を一体的に有している。オーバーハング部440の下方には、前後方向から見て略U形状のストッパ441が横ばり4と一体的に設けられている。ストッパ441は、オーバーハング部440に対して所定の隙間をあけて配置されている。このようにして、オーバーハング部440及びストッパ441が、予備支持機構410を構成している。
【0040】
横ばり4の端部4aが板バネ30の通常の弾性変形範囲を超えて下方に変位して軸箱8が車軸回りに回転すると、オーバーハング部440が傾斜してストッパ441に干渉し、軸箱8の車軸回りの回転角度を所定角度範囲内に規制する。よって、板バネ30に万が一の損傷等が生じても、ストッパ441は、軸箱8を回り止めすることで連結機構416を介して横ばり4の端部4aを支持することができる。なお、他の構成は前述した第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0041】
(第6実施形態)
図14は、本発明の第6実施形態に係る台車501の側面図である。図14に示すように、横ばり4の端部4aの下方で前後方向に延びるように前方の軸箱8と後方の軸箱8との間にストッパとしてのフープ513が架け渡されている。具体的には、軸箱8には下方に向けて左右一対のブラケット511が垂設されており、これらブラケット511の間にピン512がその軸線方向を車幅方向に向けた状態で架け渡されている。前後のピン512の間には、無端帯状体であるフープ513が少し弛んだ状態で架け渡されている。フープ513は、たとえば繊維強化樹脂等からなる。板バネ30が通常の弾性変形状態にあるときには、フープ513は少し弛んでいるために横ばり4からの荷重を実質的には負担しない。このようにして、ブラケット511、ピン512及びフープ513が、予備支持機構510を構成している。
【0042】
横ばり4の端部4aが板バネ30の通常の弾性変形範囲を超えて下方に変位して軸箱8が車軸回りに大きく回転しようとすると、それにより前後のピン512の間の距離が拡がるが、ピン512からフープ513にテンションが掛かった段階でその拡がりがフープ513により規制される。つまり、フープ513により軸箱8の車軸回りの回転角度が所定角度範囲内に規制される。よって、板バネ30に万が一の損傷等が生じても、フープ513がストッパとなって軸箱8を回り止めすることで横ばり4の端部4aを間接的に支持することができる。
【0043】
(第7実施形態)
図15は、本発明の第7実施形態に係る台車601の側面図である。図15に示すように、横ばり4の端部4aの下方で前後方向に延びるように前方の軸箱8と後方の軸箱8との間に第2予備支持部材としてのフープ613が架け渡されている。具体的には、軸箱8には下方に向けてブラケット611が垂設されており、このブラケット611には回転自在にプーリ612が設けられている。前後のプーリ612の間にはフープ613が少しだけ余長をもって架け渡されている。フープ613は、たとえば繊維強化樹脂等からなる。フープ613の前後方向中央部の直上には、横ばり4から一体的に垂下された被支持部614が配置されている。
【0044】
板バネ30が通常の弾性変形状態にあるときには、被支持部614とフープ613との間には隙間が形成されている、又は、非支持部614が軽く接触する程度である。フープ613は余長をもってプーリ612に架け渡されているので、被支持部614がフープ613に軽く接触しても、フープ613は被支持部614を実質的には支持しない。このようにして、ブラケット611、プーリ612、フープ613及び被支持部614が、予備支持機構610を構成している。
【0045】
以上の構成によれば、横ばり4の端部4aが板バネ30の通常の弾性変形範囲を超えて下方に変位したときには、横ばり4とともに降下する被支持部614がフープ613の前後方向中央部によって下方から受け止められ、フープ613の張力によって被支持部614が支持される。よって、板バネ30に万が一の損傷等が生じても、フープ613が横ばり4の端部4aを支持することができる。
【0046】
(第8実施形態)
図16は、本発明の第8実施形態に係る台車701の側面図である。図17は、図16に示す台車701の要部斜視図である。図16及び17に示すように、横ばり4の端部4aの下方で前後方向に延びるように前方の軸箱8と後方の軸箱8との間にストッパとしての棒材713が架け渡されている。具体的には、軸箱8には下方に向けて筒状の挿通枠711が垂設されており、その挿通枠711に前後に延びる角パイプ状の棒材713が挿通されている。そして、挿通枠711には、棒材713を上下から挟むように弾性材714,715(例えば、ゴム)が挿入されている。これにより、板バネ30が通常の弾性変形状態にあるときには、棒材713が挿通枠711に干渉しない範囲で軸箱8が車軸回りに回転しうる。このようにして、挿通枠711、弾性材714,715及び棒材713が、予備支持機構710を構成している。
【0047】
横ばり4の端部4aが板バネ30の通常の弾性変形範囲を超えて下方に変位して軸箱8が車軸回りに大きく回転しようとすると、挿通枠711が傾斜して弾性体714,715を介して棒材713に干渉し、軸箱8の車軸回りの回転角度が所定角度範囲内に規制される。よって、板バネ30に万が一の損傷等が生じても、棒材713がストッパとなって軸箱8を回り止めすることで横ばり4の端部4aを間接的に支持することができる。
【0048】
また、棒材713には、周辺機器の取付部713a,713b,713cが設けられている。例えば、集電器716、トリップコック717及び排障器718(除雪器)の少なくとも1つが棒材713に取り付けられる。このとき、棒材713を角パイプ状とすることで、例えば丸パイプ状等とする場合に比べ、棒材713での周辺機器の取付部713a,713b,713cの形成が容易になる。なお、周辺機器の棒材713への取り付け方は、種々の固定方法が利用可能であり、例えば、ボルト固定を用いる場合には、取付部713a,713b,713cはボルト孔とすればよい。
【0049】
集電器716は、第三軌条方式の集電装置として用いられるもので、集電線が長くなるのを防止すべく台車701の前後方向中央部に配置されている。トリップコック717は、保安装置の一部であり、台車701の進行方向前左側に配置されている。車両に対して外部から停止信号が出されているときには車両進行方向の線路脇にあるトレインストッパが立ち上がるが、万が一、車両が停止位置を超えて進行してしまった場合に、車両側のトリップコック717が地上側のトレインストッパに当たって、非常ブレーキを掛けることになる。排障器718(除雪器)は、前方からの障害物または積もった雪を排除するためのものであり、棒材713の先端部に取り付けられている。
【0050】
なお、本発明は前述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲でその構成を変更、追加、又は削除することができる。前述した各実施形態は互いに任意に組み合わせてもよく、例えば1つの実施形態中の一部の構成又は方法を他の実施形態に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上のように、本発明に係る鉄道車両用台車は、台車の板バネに万が一の損傷等が生じても横ばりを適切に支持でき、台車の信頼性を向上させることができる優れた効果を有し、この効果の意義を発揮できる鉄道車両に広く適用すると有益である。
【符号の説明】
【0052】
1,101,201,301,401,501,601,701 台車
4 横ばり
5 車軸
7 軸受
8 軸箱
11 車体
16 連結機構
29,129 予備支持部材
30 板バネ
31 バネ座
47 カバー
50,210,310,410,510,610,710 予備支持機構
213,214,315,316,441 ストッパ
513,613 フープ
713 棒材(ストッパ)
716 集電器(周辺機器)
717 トリップコック(周辺機器)
718 排障器(周辺機器)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の車体を支持するための横ばりと、
前記横ばりを挟んで車両長手方向の前方及び後方において車幅方向に沿って配置された前後一対の車軸と、
前記車軸の車幅方向両側に設けられて、前記車軸を回転自在に支持する軸受と、
前記軸受を収容する軸箱と、
前記横ばりの車幅方向両端部を支持した状態で車両長手方向に延びて、その車両長手方向両端部が前記軸箱に支持された板バネと、
前記横ばりの横方向両端部のうち少なくとも一方の端部が前記板バネの所定の弾性変形範囲を超えて下方に変位したときに、前記横ばりの前記端部を支持する予備支持機構と、を備えている、鉄道車両用台車。
【請求項2】
前記予備支持機構は、前記横ばりの車幅方向端部が前記板バネの前記弾性変形範囲内で上下方向に変位しているときには、前記横ばりの前記車幅方向端部に接触しない位置に設けられる、請求項1に記載の鉄道車両用台車。
【請求項3】
前記予備支持機構は、前記横ばりと一体的に設けられて、前記横ばりの車幅方向端部に平面視で重なる位置にて前記板バネの下方に配置された第1予備支持部材を有し、
前記板バネが前記弾性変形範囲を超えて傾斜したときに、前記横ばりの前記車幅方向端部が前記板バネの上面を支持し、前記第1予備支持部材が前記板バネの下面を支持する、請求項1又は2に記載の鉄道車両用台車。
【請求項4】
前記横ばりに前記軸箱を連結する連結機構をさらに備え、
前記予備支持機構は、前記軸箱の車軸回りの回転角度を所定角度範囲内に規制するストッパを有し、
前記ストッパは、前記横ばりの前記車幅方向端部が前記板バネの前記弾性変形範囲を超えて下方に変位して前記軸箱が車軸回りに回転したときに、前記軸箱を回り止めして、前記連結機構を介して前記横ばりの前記車幅方向端部を支持する、請求項1又は2に記載の鉄道車両用台車。
【請求項5】
前記予備支持機構は、車両長手方向前方の前記軸箱と車両長手方向後方の前記軸箱との間に架け渡されて、前記横ばりの前記端部の下方で車両長手方向に延びる第2予備支持部材を有し、
前記予備支持部材は、前記横ばりの前記端部が前記板バネの前記弾性変形範囲を超えて下方に変位したときに、前記横ばりの前記端部を下方から支持する、請求項1又は2に記載の鉄道車両用台車。
【請求項6】
前記軸箱には、その上端部に前記板バネの前後方向両端部を支持するバネ座が設けられ、前記板バネの車両長手方向両端部は、前記バネ座に上方から載せられて前記バネ座の上面に接触しており、
前記板バネの前後方向両端部の下面と前記バネ座の上面との接触箇所には、遊びをもって上下方向に嵌合する嵌合部が設けられており、
前記軸箱には、前記嵌合部の嵌合状態が保たれる範囲で前記板バネの上面と隙間をあけて前記板バネの車両長手方向両端部の上方を覆うカバーが設けられている、請求項1乃至5のいずれかに記載の鉄道車両用台車。
【請求項7】
前記予備支持機構は、車両長手方向に延びる棒材を有し、
前記棒材には、周辺機器の取付部が設けられている、請求項1乃至6のいずれかに記載の鉄道車両用台車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−35536(P2013−35536A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−76652(P2012−76652)
【出願日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)