説明

鋳型の通気検査方法および通気検査装置

【課題】鋳型の局所的な通気不良を検出して通気不良部を特定することができる。
【解決手段】送風を加熱する熱源3と、生成された温風を通気性の上型1に流通させる送風室2と、上型1に近接して設けられ、当該上型1を流通した後の温風を流通させる金網体4と、当該金網体4の表面温度分布を検出するサーモグラフィー6とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特に減圧ないし真空精密鋳造に使用する鋳型の通気状態を検査する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
精密鋳造において例えば、チャンバー内に通気性を有する鋳型の上型を保持させ、下型の吸湯口を取鍋内の溶湯中に浸漬させた状態でチャンバー内を減圧して溶融金属を鋳型キャビティー内に吸引注湯するようにしたものがある。この際に、特に中子を設けた複雑な形状のキャビティ内に溶融金属を良好に充填させるためには上型の通気性が十分確保されている必要がある。
【0003】
特許文献1には、鋳型の通気度測定方法が示されており、ここでは、鋳型の外部から鋳型内に気体を送給して鋳型入り側の圧力を一定に制御し、このときの気体の流量から鋳型の通気度を求めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−85386
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の方法では、鋳型全体の通気度の良否は判定できるものの、例えば一つの鋳型で製品の複数個取りを行っている場合等には鋳型の局所的な通気不良を検出して不良部分を特定する必要がある。
【0006】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、鋳型の局所的な通気不良を検出して通気不良部を特定することができる鋳型の通気検査方法および通気検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本第1発明に係る通気検査方法は、通気性の鋳型に温風を流通させた後、当該温風を、気体流通孔を多数形成した板状金属体に流通させて、当該金属体に生じる温度分布より前記鋳型の通気不良部分を検出することを特徴としている。
【0008】
本第1発明において、鋳型の通気性が全体として良好に確保されている場合には、温風が鋳型を均一に流通して金属体が均一に加熱され、この結果、金属体の温度分布は一様になる。これに対して、鋳型に部分的な通気不良があると、この通気不良部で温風の流通量が減るため当該通気不良部に対応する金属体部分では温度が低くなって、金属体の温度分布は一様にならない。したがって、金属体の温度分布から鋳型の局所的な通気不良部を容易に特定することができる。ここで、鋳型の温度分布を直接測定しようとしても、熱容量が大きい等のために温度分布が生じ難い。これに対して、金属体は流通する温風量に応じた温度分布を生じるから、通気不良部を確実に特定することができる。
【0009】
本第2発明では、前記金属体として金網体を使用する。本第2発明においては、気体流通孔を多数形成した板状金属体を、金網体によって容易に実現することができる。
【0010】
本第3発明に係る通気検査装置は、温風を生成する手段(3)と、生成された温風を通気性の鋳型(1)に流通させる温風流通手段(2)と、前記鋳型(1)に近接して設けられ、当該鋳型(1)を流通した後の温風を流通させる気体流通孔を多数形成した金属体(4)と、当該金属体(4)の表面温度分布を検出する温度分布検出手段(6)とを備える。本第3発明によっても本第1発明と同様の作用効果が得られる。
【0011】
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、鋳型の局所的な通気不良を確実に検出して通気不良部を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態を示す通気検査装置の概略側面図である。
【図2】金網体の平面図である。
【図3】通気不良を生じている場合の通気検査装置の概略側面図である。
【図4】通気不良を生じている場合の金網体の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
なお、以下に説明する実施形態はあくまで一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が行う種々の設計的改良も本発明の範囲に含まれる。
【0015】
図1には本発明を実施する装置の概略構成を示す。図1において、精密鋳造鋳型の上型1が、下型との衝合開口を下方に向けて配置されて、温風流通手段としての送風室2の上方開口を閉鎖するようにこれに覆着されている。上型1はシリカやアルミナの微粉末からなる公知の多孔体で通気性を有するものである。上記送風室2にはブロア21が内設されており、また送風室2には送風を加熱するための温風生成手段たるヒータ等の熱源3が付設されている。上型1の上面に近い上方位置には金属体としての金網体4が配設されている。金網体4は本実施形態では上型1の平面視に倣った円形の板体である(図2)。上型1および金網体4を覆って架台5が設けられ、当該架台5に、下方の金網体4に向けて温度分布検出手段としてのサーモグラフィー6が設置されている。
【0016】
一例として、上型1の外径が650mmである場合、送風室2から上型1へ供給される温風の風圧は20〜25kPa程度、温風温度は100℃程度とする。上型1を通過した温風の温度は80℃程度となり、この温風を受けて金網体4が加熱されて温度分布を生じる。
【0017】
金網体4としては、上型1を通過した温風が滞留することなく上方へスムーズに抜けるような開口率を有し、かつサーモグラフィー6のカメラの分解能に近い網目を有するものであることが好ましい。一例としては、カメラ画素数を640×480(ピクセル)として1.3mm角の網目で、線径が0.01〜1.0mmの銅線金網を使用し、開口率を30〜70%とする。
【0018】
このような構成において、上型1の通気性が全体として良好に確保されている場合には、温風が上型1を均一に流通して(図1の矢印)金網体4が均一に加熱され、この結果、サーモグラフィー6で検出される金網体4の温度分布は一様になる。これに対して、上型1に部分的な通気不良があると、この通気不良部11(図3)で温風の流通量が減るため(図3の矢印)当該通気不良部11に対応する金網体部分41では温度が低くなって、金網体4の温度分布は一様にならない。これを図4に示し、温度が低い金網体部分41を細線で示している。このようにして、金網体4の温度分布から上型1の局所的な通気不良部11を容易に特定することができる。
【0019】
なお、本実施形態において、正常な通気特性を有する上型について金網体の温度分布を測定したものをマスタ画像として記憶し、検査すべき上型について測定された金網体の温度分布画像を、上記マスタ画像と比較してその差によって局所的な通気不良部を検出するようにすればさらに正確に通気不良部を特定することができる。
【0020】
また、上記実施形態では金網体を使用したが、これに限られるものではなく、例えば多数の気体流通孔を形成した板状金属体を使用することができる。上記実施形態では上型内に圧空を供給してこれを上型の通孔に流通させるようにしたがたが、上型内の空気を外部の負圧により吸引して温風を通孔に流通させる構造としても良い。
【符号の説明】
【0021】
1…上型(鋳型)、2…送風室(温風流通手段)、3…熱源(温風生成手段)、4…金網体(金属体)、6…サーモグラフィー(温度分布検出手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性の鋳型に温風を流通させた後、当該温風を、気体流通孔を多数形成した金属体に流通させて、当該金属体に生じる温度分布より前記鋳型の通気不良部分を検出することを特徴とする鋳型の通気検査方法。
【請求項2】
前記金属体として金網体を使用した請求項1に記載の鋳型の通気検査方法。
【請求項3】
熱風を生成する手段と、生成された温風を通気性の鋳型に流通させる温風流通手段と、前記鋳型に近接して設けられ、当該鋳型を流通した後の温風を流通させる気体流通孔を多数形成した金属体と、当該金属体の表面温度分布を検出する温度分布検出手段とを備える鋳型の通気検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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