説明

鋳片に付着した溶断ノロの除去方法および除去装置

【課題】縦型連続鋳造され且つ垂直姿勢で溶断された鋳片ごとにおける上端面側の周面または側面に付着した溶断ノロを、水平姿勢にした鋳片から確実且つ容易に除去できる溶断ノロの除去方法および除去装置を提供する。
【解決手段】縦型連続鋳造され、垂直方向で且つ軸方向に沿って降下する過程で水平方向に沿った溶断により、得られた切端面c1に隣接する周面crの一部に溶断に伴う溶断ノロ7が付着した鋳片Cを水平状の姿勢に定置する第1ステップS1と、水平状の姿勢とされた鋳片Cにおける切断面c1および該切断面c1に隣接する周面crの2箇所以上の位置に対し、タッチセンサ19を用いて該鋳片Cの位置を測定する第2ステップS2と、鋳片Cに付着した溶断ノロ7に対し、爪状部28を該鋳片Cの周面crおよび軸方向に沿って移動させて、該溶断ノロ7を除去する第4ステップS4と、を含む、鋳片Cに付着した溶断ノロ7の除去方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦型連続鋳造され、垂下する過程でガス溶断(切断)などにより、所定長さに切断された鋳片(連鋳片)の周面または側面に上記ガス溶断時などに付着した溶断ノロの除去方法および除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、縦型連続鋳造により鋳造された鋼の鋳造材は、鋳型から下方に垂下する過程で、水平向きの溶断トーチから噴射される酸素やアセチレンガスなどによって、一定長さの鋳片にガス溶断される。この場合、係る鋳片の溶断された上端面における上記溶断トーチの位置と反対側の周面または側面には、上記溶断に伴う溶断ノロが付着し、当該鋳片の品質を損なう要因となっている。
上記溶断ノロの付着を防ぐため、例えば、垂下する鋳造材を挟んだ前記溶断トーチの反対側に火口を水平向きで対向して配置し、該火口に設けた複数の噴射孔から酸素と水との混合流体を上記鋳造材に対して噴出させ、且つ係る火口を溶断トーチとほぼ同期して横向きで且つ平行に移動することにより、鋳片の側面に付着した溶断ノロを除去する方法および除去装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、特許文献1に記載された前記溶断ノロを除去する方法および除去装置では、垂直方向に沿って垂下する鋳造材を水平にガス溶断する際に、係る鋳造材を挟んだ溶断トーチの反対側に特殊な噴射孔を内部に設けた火口を、前記溶断トーチとほぼ同期させつつ水平方向で且つ平行に移動させるため、上記火口を配置するスペースや該火口を保持して移動する手段を、縦型連続鋳造設備の直下における限られた空間に配設せざるを得ない、という問題があった。
一方、ガス溶断された垂直姿勢の鋳片を縦型連続鋳造設備から外部に搬送し、前記設備から離れた場所で、該鋳片を水平姿勢にして溶断ノロを除去する方式も考えられる。しかし、係る方式の場合、鋳片で1次溶断された端面の微妙な位置ズレにより、溶断ノロを除去するための2次溶断の位置がズレたり、鋼種ごとに応じた溶断ノロの付着強度などに細かく対応し難くなる、という問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−125331号公報(第1〜6頁、図1〜5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、背景技術において説明した問題点を解決し、縦型連続鋳造され且つ垂直姿勢で溶断(切断)された鋳片(連鋳片)ごとにおける上端面付近の周面または側面に付着した溶断ノロを、水平姿勢にした当該鋳片から確実で且つ容易に除去できる溶断ノロの除去方法および除去装置を提供する、ことを課題とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0006】
本発明は、1次溶断後に搬送されて水平姿勢となった鋳片の端面付近を、多関節ロボットの先端側に取り付けたセンサで検知し、該センシングの結果に基づいて2次溶断や溶断ノロの引き剥がしを行う、ことに着想して成されたものである。
即ち、本発明による鋳片に付着した溶断ノロの除去方法(請求項1)は、縦型連続鋳造され、垂直方向で且つ軸方向に沿って降下する過程で水平方向に沿った溶断により、得られた切端面に隣接する周面または側面の一部に前記溶断に伴う溶断ノロが付着した鋳片を、水平状の姿勢に定置する第1ステップと、水平状の姿勢とされた上記鋳片における前記切断面および該切断面に隣接する周面または側面の2箇所以上の位置に対し、センサを用いて当該鋳片の位置を測定する第2ステップと、上記鋳片に付着した溶断ノロに対し、爪状部を該鋳片の周面または側面の軸方向に沿って移動させて、該溶断ノロを除去する第4ステップと、を含む、ことを特徴とする。
【0007】
これによれば、前記1次溶断による切断面とこれに隣接する周面または側面に付着した溶断ノロとを一端面側に有する鋳片は、第1ステップにおいて、連続鋳造設備の直下から搬出され、垂直姿勢から水平状の姿勢に定置され、第2ステップにおいて、前記センサによる上記端面とこれに隣接する周面または側面との2箇所以上に対するセンシングにより、測定され端面の位置が許容範囲にあるか否かを測定され後、第4ステップにおいて、上記周面または側面に付着した溶断ノロが、該周面または側面の軸方向に沿って移動する前記爪状部によって、強制的に引き剥がすようにして除去される。従って、連続鋳造設備の直下における狭いスペースによる制約を受けずに、水平状の姿勢にした鋳片から溶断ノロを確実で且つ容易に除去することが可能となる。
【0008】
尚、前記鋳片は、断面が円形または各コーナにアールを付けた角形状を呈し、円形断面では、円柱形の周面を有し、角形状の断面では、4つの側面を有する。
また、前記第1ステップでは、垂直姿勢で降下する鋳片ごとの上端面に隣接する周面または側面の一部に1次溶断に伴うノロが付着している。係る1次溶断された該鋳片は、軸ほうこうに対して90度回転されるか、一旦斜め姿勢にされ、更に斜め上方に引き上げられた後、水平状の姿勢に定置される。この間において、鋳片は、軸方向に沿った移動と、径方向に沿った旋回または移動を経ている。
また、前記「水平状」とは、水平な姿勢の他に、該水平に準じた姿勢も含む。
更に、前記溶断には、ガス切断、アーク切断、およびプラズマ切断が含まれる。
また、前記センサは、接触式のタッチセンサやリミットスイッチ、あるいは非接触式の光電管またはレーザなどの光センサや、各種の磁気センサが含まれる。
加えて、前記爪状部は、前記溶断ノロを引っ掻くか、該溶断ノロに押し当てられることで、該ノロを鋳片の周面または側面から剥離して除去するものである。
【0009】
また、本発明には、前記第2ステップと第4ステップとの間に、水平状の姿勢とされた前記鋳片の周面または側面の上方から該鋳片の上記切断面に向かって斜め下向きに配置した溶断トーチにより、前記溶断ノロの溶着部に対し、溶断を施す第3ステップを更に有する、鋳片に付着した溶断ノロの除去方法(請求項2)も含まれる。
これによれば、鋼種によって鋳片の本体と溶断ノロとの溶着部が靱性ないし強度を有する場合でも、当該鋳片の端面の外周辺に沿った溶断ノロの溶着部を、該端面に向かって斜め下向きに新たな溶断(2次溶断)を施す第3ステップを行うことで、溶断ノロを前記第4ステップによって確実に鋳片から除去できる。しかも、当該鋳片の周面または側面の損傷を最小限に抑えることも可能となる。
【0010】
一方、本発明による鋳片に付着した溶断ノロの除去装置(請求項3)は、縦型連続鋳造され、垂直方向で且つ軸方向に沿って降下する過程で水平方向に沿った溶断により、得られた鋳片の切端面に隣接する周面または側面の一部に前記溶断に伴って付着した溶断ノロを除去する装置であって、少なくとも3つ以上の軸受(関節)を含む多関節ロボットと、該ロボットの先端部に取り付けられ、水平状の姿勢とされた上記鋳片の切断面および該切断面に隣接する周面または側面の2箇所以上の位置に対し、接触または接近するセンサ、上記鋳片の周面または側面の上方から該鋳片の切断面に向かって斜め下向きで且つ上記ノロの溶着部に対し、溶断を施すように配置された溶断トーチ、および、上記鋳片の周面または側面の軸方向に沿って移動可能に取り付けられた爪状部と、を含んでいる、ことを特徴とする。
【0011】
これによれば、前記縦型連続鋳造設備から離れた位置において配置した多関節ロボットによって、水平状の姿勢に定置された前記鋳片の端面やこれと隣接する周面などの位置をセンシング(検知)し、更に、上記鋳片に付着した溶断ノロの溶着部を2次溶断し、係る溶断ノロを鋳片から引き剥がすように除去することを、予め設定したプログラムなどによって、自動的且つ確実に行うことができる。
また、縦型連続鋳造した際の鋳造履歴によって、前記2次溶断を行わずに溶断ノロの除去が可能な鋼種である鋳片の場合には、前記第2ステップのセンシングの後で直ちに第4ステップの溶断ノロの除去を行うように、前記ロボットに対して電気的に接続されたコンピュータなどの制御手段と連動させることも可能である。
尚、前記多関節ロボットは、少なくとも3個以上の軸受(関節)を、ベース部と先端部との間に位置する複数のアーム間に有するものである。
【0012】
また、本発明には、前記溶断トーチは、前記多関節ロボットによって、前記鋳片の切断面と周面または側面とのコーナ部に沿って、円弧状または直線状に走査される、鋳片に付着した溶断ノロの除去装置(請求項4)も含まれる。
これによれば、鋼種によって鋳片の本体と溶断ノロとの溶着部が靱性ないし強度を有する場合に、係る鋳片の切断面と周面または側面とのコーナ部に沿って、溶断トーチが前記多関節ロボットによって、断面円形の鋳片における円柱形の周面である場合には円弧(カーブ)状にして、断面が角形状の鋳片における何れかの側面である場合には該側面と平行な直線状に走査される。従って、溶断ノロを鋳片の周面または側面に溶着している該溶断ノロの溶着部を確実に溶断できるので、第4ステップによる溶断ノロの除去を容易且つ確実に行うことができる。
【0013】
更に、本発明には、前記爪状部は、前記鋳片の軸方向と平行な方向および直交する方向に沿って、緩衝されつつ移動可能にして前記多関節ロボットの先端部に取り付けられている、鋳片に付着した溶断ノロの除去装置(請求項5)も含まれる。
これによれば、前記2次溶断された溶断ノロを、鋳片の周面あるいは側面から除去する際に、爪状部が鋳片の軸方向および径方向の一方または双方に沿った衝撃を受けても、係る衝撃を緩和しつつ移動可能とされている。従って、例えば、溶着部の一部が不用意に残留していた場合でも、溶断ノロを鋳片の周面あるいは側面から確実に除去することが可能となる。
尚、前記爪状部は、例えば、コイルバネや流体圧シリンダなどを介して、衝撃を緩和(緩衝)するように前記多関節ロボットの先端部に取り付けられている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による溶断ノロの除去方法における第1ステップを示す概略図。
【図2】水平状に定置された一形態の鋳片の一端面側を示す斜視図。
【図3】本発明による溶断ノロの除去装置に用いる多関節ロボットの概略図。
【図4】上記多関節ロボットにおける先端部を示す部分断面を含む概略図。
【図5】前記溶断ノロの除去方法における第2ステップを示す概略図。
【図6】上記第2ステップを異なる側面視の角度で示す概略図。
【図7】前記溶断ノロの除去方法における第3ステップを示す概略図。
【図8】上記第3ステップを異なる側面視の角度で示す概略図。
【図9】前記溶断ノロの除去方法における第4ステップを示す概略図。
【図10】水平状に定置された異なる形態の鋳片の一端面側を示す斜視図。
【図11】上記鋳片に対する前記除去方法における第2ステップを示す概略図。
【図12】上記鋳片に対する前記除去方法における第3ステップを示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下において、本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明による溶断ノロの除去方法における第1ステップS1を示す概略図、図2は、水平状の姿勢に定置された鋳片Cの一端面c1側を示す斜視図である。
図1の左上側に示すように、内部に溶鋼Lを注湯され且つ図示しないクレーンにより、鋳型1の真上に配置された取り鍋4の底部から注下された溶鋼Lは、全体が円筒形状を呈し、且つリング状の水冷部2を内蔵する鋳型1の内側のキャビティ3において、外周側から順次凝固しつつ当該鋳型1の下側へ垂下して、円柱形の鋳造材Mとなり、周囲から冷却水wを噴射されつつ複数のピンチローラ5によって垂直方向で且つ軸方向に沿って降下している。
係る過程において、水平向きに配置された溶断トーチ6から、酸素やアセチレンガスを吹き付ける1次(ガス)溶断を行って、上記鋳造材Mを局部的に溶融することにより、所定長さの鋳片Cが順次得られる。該鋳片Cは、溶断された一端面(上端面)c1と他端面(下端面)c2と円柱形の周面crとを有している。このうち、一端面c1側における前記トーチ6の位置と径方向で反対側の周面crには、上記1次溶断に伴って溶融された鋳造材Mの一部が再凝固して溶着した溶断ノロ7が湾曲し且つ膜状にして付着している。
【0016】
図2に示すように、溶断ノロ7は、鋳片Cの一端面c1に隣接する周面crの一部に、該一端面crの外形に沿った円弧状の溶着部8と、周面crに被さっている覆い部9とを備えている。尚、鋳片Cの他端面c2には、前回の溶断時に下側で先行した鋳片cの上側に位置していたので、溶断ノロ7は付着していない。
図1中のカーブした実線の矢印で示すように、垂直姿勢で溶断されて得られた鋳片Cは、他端面c2側を中心として垂直方向に沿って90度旋回されることで、水平ないし水平状の姿勢となる。係る姿勢で軸方向R2に沿って搬送される。
あるいは、図1中のカーブした一点鎖線の矢印で示すように、垂直姿勢で溶断されて得られた鋳片Cは、他端面c2側を中心に約30〜40度旋回されて一旦斜め姿勢とされ、該斜め姿勢の軸方向に沿って斜め上方に引き上げられた後、更に、下向きに旋回されることによっても、水平ないし水平状の姿勢となる。係る姿勢で軸方向R1に沿って搬送される(第1ステップS1の前段)。
【0017】
前記軸方向R1,R2に沿って搬送され、途中では適宜径方向に沿って搬送された鋳片Cは、図3に示すように、左右(前後)一対のシフタsのフック部sfに水平ないし水平状の姿勢で、その一端面c1が多関節ロボット10に接近した位置で定置される(第1ステップS1の後段)。
尚、上記ロボット10およびその先端部18に取り付けられた後述するセンサ19や溶断トーチ20などは、本発明における溶断ノロの除去装置を構成している。
図3に示すように、上記多関節ロボット10は、図示しないフロアに固定されたベース部11、水平回転する第1軸受(関節)j1、水平旋回可能なU型部12、垂直旋回する第2軸受j2、その上方に接続された第1アーム14、上記U型部12の後端部と第1アーム14の下端部との間に接続された流体圧シリンダ13、第1アーム14の先端に取り付けられ且つ垂直旋回する第3軸受j3、該軸受j3に基部が垂直旋回可能に接続された第2アーム15、第3アーム16、係るアーム15,16間を接続し且つ両アーム15,16を円周方向に沿って相対回転させる第4軸受j4、第3アーム16の先端に取り付けられ且つ垂直旋回する第5軸受j5、および該軸受j5に対し水平旋回可能な第6軸受j6を介して水平回転可能に取り付けられた基部17を含み且つ側面視がほぼクランク形状の先端部18を備えている。
【0018】
図3,図4に示すように、先端部18の下面には、垂直なタッチ(接触式)センサ19と、斜め下向きに火口を向けた溶断トーチ20とが取り付けられている。一方、先端部18の上面には、L型材21の水平部22が固定され、該L型材21には、基部を入れ子式に支持された水平材23が垂直方向の一定範囲で移動可能に支持されている。係る水平材23の上(外側)には、支持筒27と、該支持筒27を貫通し且つ水平移動可能に支持された水平軸26と、該水平軸26の一端部から外側に突設された鈎形の爪状部28とが取り付けられている。上記L型材21の水平部22と水平材23との間は、連結棒24とガイドピン25とが垂直方向の一定範囲で移動可能で且つ抜け出し不能に配置され、このうち連結棒24には、コイルバネb1が伸長状態で巻き付けられている。また、水平軸26の他端部に設けた太径部と支持筒27との間には、コイルバネb2が伸長状態で巻き付けられている。上記コイルバネb1,b2によって、図4中で示すX方向およびY方向に沿った外力による爪状部28への衝撃を緩衝することができる。
尚、前記先端部18の下面や上面は、多関節ロボット10の各軸受j1〜j6を旋回させることで、後述するように、互いに位置が入れ替わって、爪状部28が下向きの姿勢となり、前記センサ19が上向きで且つ前記溶断トーチ20が斜め上向きの姿勢となることも可能である。
【0019】
ここで、本発明による前記溶断ノロ7の除去方法の第2ステップS2以降の各ステップ(S2〜S4)について説明する。
先ず、図5の左側に示すように、前記シフタsによって多関節ロボット10の直前の位置に定置された鋳片Cの一端面c1に向かって、上記ロボット10の先端側に位置する先端部18の下面に垂直に取り付けられたタッチセンサ19を接近させる。そして、図5の右側に示すように、該センサ19の先端側を接触させて傾斜させ、係る傾斜の度合いを予め設定されたしきい値と比較して所定の範囲にあるか否かにより、上記一端面c1の位置が所要の位置にあるか否かが判断される。
上記タッチセンサ19の水平移動は、前記多関節ロボット10に含まれる前記軸受j2,j3,j5の垂直回転および第1〜第3アーム14〜16の旋回などによって行われる。また、上記タッチセンサ19の接触位置は、鋳片Cの一端面c1における一定の範囲に予め設定されている。
【0020】
次に、図6の左側に示すように、鋳片Cの一端面c1に隣接する周面crに向かって、タッチセンサ19を接近させ、図5の右側に示すように、該センサ19の先端側を接触させて傾斜させ、その傾斜程度により上記周面crの位置を前記同様に判定する。該センサ19の水平移動は、前記多関節ロボット10に含まれる軸受j1,j6の水平回転および第1〜第3アーム14〜16の旋回などによって行われる。また、上記センサ19の接触位置は、鋳片Cの周面crにおける一定の範囲に予め設定されている(第2ステップS2)。
そして、前記センサ19が鋳片Cの一端面c1および周面crと接触した位置が所定の範囲内にあったか否かが前記ロボット10に内蔵ないし接続されたパソコンなどの制御手段(図示せず)で判別され、上記範囲内である場合には、係る鋳片Cについて、次の第3ステップS3あるいは第4ステップS4が行われる。
尚、前記センサ19の接触した位置が前記しきい値で区分された範囲から外れていた場合には、想定位置と測定位置とのズレ分に応じた動作を補正した上で、係る鋳片Cの位置を一対の前記シフタsと共に修正して再度第2ステップS2を行うか、あるいは、係る鋳片Cを本除去ライン外に搬出する措置が取られる。
【0021】
次いで、図7中における一点鎖線の矢印で示すように、鋳片Cの周面crに付着した溶断ノロ7のうち、該ノロ7における一端面c1側に沿った溶着部8に対し、前記多関節ロボット10の先端部18の下面から、昇降可能なロッド20aを下降させ、該ロッド20aの下端に取り付けた溶断トーチ20の火口を斜め下向きにして向け、該火口から酸素やアセチレンガスなどを吹き付ける2次溶断を行う(第3ステップS3)。この際、溶断トーチ20は、図8の左側、中央、および右側の順序で示すように、その火口が溶断ノロ7の溶着部8および一端面c1の外形に沿うように円弧形の軌跡となるように走査される。この間において、前記ロボット10の軸受j2〜j6の回転や、第1〜第3アーム14〜16の旋回、および基部17の移動などの併用が行われる。
【0022】
その結果、溶着部8が溶断されて消失するため、溶断ノロ7は、鋳片Cの周面crにほぼ添接されただけの状態となる。
そして、図9に示すように、前記多関節ロボット10の軸受j4を垂直方向に沿って180度回転させ、先端部18も同様に上下逆となるよう回転させて、水平軸26および鈎状の爪状部28を下側とした後、同図中の一点鎖線で示すように、前記軸受j2,j3,j5を回転させることなどにより、上記爪状部28の刃先片を鋳片Cの周面crに接触させ且つ該鋳片Cの軸方向に沿って移動させる。その結果、図9中の二点鎖線の矢印で示すように、2次溶断された溶断部8aを含む溶断ノロ7は、鋳片Cの周面crから引き剥がされる(第4ステップS4)。
【0023】
この際、溶断ノロ7に覆われていた部位の鋳片Cの周面crは、上記溶断部8aを除いて、ほぼ当初の曲面形状になる。更に、前記コイルバネb1,b2によって、上記爪状部28に対する鋳片Cの軸方向および径方向の少なくとも一方に沿った衝撃を緩和することも可能である。
尚、鋼種によっては、溶断ノロ7の溶着部8における靱性ないし接合強度が低いために、前記第3ステップS3による2次溶断を省略し、第2ステップS2から直に第4ステップS4に移行して溶断ノロ7の除去を行うことも可能である。
【0024】
以上において説明した鋳片Cに付着した溶断ノロ7の除去方法によれば、溶断ノロ7を一端面c1付近に有する鋳片Cは、第1ステップS1で、連続鋳造設備の直下から搬出され、垂直姿勢から水平状の姿勢に定置され、第2ステップS2で、前記センサ19による一端面c1とこれに隣接する周面crとの2箇所以上に対するセンシングにより、測定され端面c1の位置が許容範囲か否かが測定される。更に、第3ステップS3で溶断ノロ7の溶着部8を2次溶断された後、第4ステップS4で、上記周面crに付着した溶断ノロ7を前記爪状部28によって、強制的に引き剥がすようにして除去される。従って、連続鋳造設備の直下における狭いスペースによる制約を受けずに、水平状の姿勢にした鋳片Cから溶断ノロ7を確実で且つ容易に除去することが可能となる。
【0025】
一方、本発明による溶断ノロ7の除去装置(10,18〜20)によれば、前記縦型連続鋳造設備から離れた位置において配置した多関節ロボット10によって、水平状の姿勢に定置された前記鋳片Cの一端面c1やこれと隣接する周面crの位置をセンシングし、上記鋳片Cに付着した溶断ノロ7の溶着部8を2次溶断し、係る溶断ノロ7を鋳片Cから引き剥がすように除去することを、予め制御手段で設定したプログラムなどにより、自動的且つ確実に行うことができる。
しかも、前記溶断トーチ20が、前記多関節ロボット10によって、前記鋳片Cの切断面c1と周面crとのコーナ部に沿って、円弧状に走査されるので、溶断ノロ7を鋳片Cの周面crに溶着している溶着部8を確実に溶断できるため、前記第4ステップS4による溶断ノロ7の除去を確実に行うことができる。
【0026】
更に、前記爪状部28が、前記鋳片Cの軸方向と平行な方向および直交する方向に沿って、緩衝されつつ移動可能にして前記多関節ロボット10の先端部18に取り付けられているため、該爪状部28が鋳片Cの軸方向および径方向の少なくとも一方に沿った衝撃を受けても、係る衝撃を緩和しつつ移動可能である。
従って、例えば、溶着部8の一部が不用意に残留していた場合でも、係る溶着部8を含む溶断ノロ7を鋳片Cの周面crから確実に除去することができる。
【0027】
図10は、前記鋳片Cとは異なる形態の鋳片C′の一端面c1付近を示す斜視図である。該鋳片C′は、前記鋳型1のキャビティ3で鋳込まれた際に、断面が角形状で且つ各コーナにアールが付され、且つ四辺の側面csを有するように凝固したものである。図10に示すように、前記溶断トーチ6によって溶断された切断面(一端面)c1に隣接する一辺の側面csには、直線状の溶着部8を介して溶断ノロ7が平らな膜状にして付着している。係る鋳片C′も、前記同様の回転、傾動、および搬送経路を経て、上記溶断ノロ7が上側となる水平状の姿勢に定置される(第1ステップS1)。
【0028】
次に、図11の左側に示すように、前記ロボット10の先端部18に垂直に取り付けられたタッチセンサ19を、上記鋳片C′の径方向に沿って該鋳片C′の側面csに接近させ、図11の右側に示すように、上記センサ19の先端側を接触させて傾け、係る傾きの程度を前記同様に検知することにより、当該鋳片C′の径方向の位置を検出する。この操作の前後において、前記図5で示したのと同様に、上記センサ19の先端側を上記鋳片C′の一端面c1に対し軸方向に沿って接近させた後、接触させて傾け、前記同様にして該鋳片C′における一端面c1の軸方向の位置を検出している(第2ステップS2)。
【0029】
次いで、前記第2ステップS2で所定範囲の位置にあった前記鋳片C′の溶断ノロ7の溶着部8に対して、図12の左側と右側に示すように、前記ロボット10の先端部18に火口を斜め下向きとした溶断トーチ20から酸素やアセチレンガスを一点鎖線の矢印のように噴射し、且つ該トーチ20を図12の左側から右側に向かって直線状に走査して、上記溶着部8を溶断した(第3ステップS3)。
更に、前記同様に爪状部28を上記鋳片C′の側面csの軸方向に沿って移動させることで、上記溶断ノロ7を該鋳片C′の側面csから引き剥がして除去した(第4ステップS4:図示せず)。尚、前記と同様に、鋼種によっては、前記第2ステップS2の後で、直ちに上記第4ステップS4を行うことも可能である。
【0030】
以上のような鋳片C′に付着した溶断ノロ7の除去方法によれば、前記同様の第1ステップS1の後に行う第2ステップS2で、前記センサ19による一端面c1とこれに隣接する側面csとに対するセンシングにより、測定され端面c1の位置が許容範囲か否かが測定され、第3ステップS3で溶断トーチ20の直線状に走査により溶断ノロ7の溶着部8を2次溶断した後、第4ステップS4で、上記側面csに付着した溶断ノロ7を前記爪状部28により強制的に引き剥がして除去することができる。一方、前記鋳片C′に付着した溶断ノロ7の除去装置によれば、前記ロボット10によって、水平状の姿勢に定置された前記鋳片Cの一端面c1やこれと隣接する側面csの位置をセンシングし、上記鋳片C′に付着した溶断ノロ7の溶着部8を直線状に走査する溶断トーチ20により2次溶断し、係る溶断ノロ7を前記爪状部28で鋳片Cから引き剥がして除去することができる。
【0031】
本発明は、以上において説明した各形態に限定されるものではない。
例えば、前記鋳片は、断面が五角形以上の正多角形あるいは変形多角形を呈するものとしたり、各種の鋼材のほか、銅や銅合金からなるものであっても良い。
また、前記タッチセンサに替えて、リミットスイッチや、非接触式の光電管や、レーザなどの光センサ、あるいは各種の磁気センサを用いても良い。
更に、前記ガス溶断に替えて、アーク切断またはプラズマ切断を用いても良い。
加えて、前記第1〜第4ステップS1〜S4は、例えば、前記鋳片C,C′の温度が約700℃〜200℃である高温の環境であっても行うことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明によれば、縦型連続鋳造され且つ垂直姿勢で溶断された鋳片ごとにおける上端面付近の周面または側面に付着した溶断ノロを、水平状の姿勢にした鋳片から確実で且つ容易に除去できる溶断ノロの除去方法と除去装置とを提供できるようになる。
【符号の説明】
【0033】
7……………溶断ノロ
8……………溶着部
10…………多関節ロボット
18…………先端部
19…………タッチセンサ(センサ)
20…………溶断トーチ
28…………爪状部
C,C′………鋳片
c1…………一端面(切断面)
cr…………周面
cs…………側面
S1〜S4…第1〜第4ステップ
j1〜j6…軸受

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦型連続鋳造され、垂直方向で且つ軸方向に沿って降下する過程で水平方向に沿った溶断により、得られた切端面に隣接する周面または側面の一部に前記溶断に伴う溶断ノロが付着した鋳片を、水平状の姿勢に定置する第1ステップと、
水平状の姿勢とされた上記鋳片における上記切断面および該切断面に隣接する周面または側面の2箇所以上の位置に対し、センサを用いて当該鋳片の位置を測定する第2ステップと、
上記鋳片に付着した溶断ノロに対し、爪状部を該鋳片の周面または側面の軸方向に沿って移動させて、該溶断ノロを除去する第4ステップと、を含む、
ことを特徴とする鋳片に付着した溶断ノロの除去方法。
【請求項2】
前記第2ステップと第4ステップとの間に、水平状の姿勢とされた前記鋳片の周面または側面の上方から該鋳片の上記切断面に向かって斜め下向きに配置した溶断トーチにより、前記溶断ノロの溶着部に対し、溶断を施す第3ステップを更に有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の鋳片に付着した溶断ノロの除去方法。
【請求項3】
縦型連続鋳造され、垂直方向で且つ軸方向に沿って降下する過程で水平方向に沿った溶断により、得られた鋳片の切端面に隣接する周面または側面の一部に前記溶断に伴って付着した溶断ノロを除去する装置であって、
少なくとも3つ以上の軸受を含む多関節ロボットと、
上記ロボットの先端部に取り付けられ、水平状の姿勢とされた上記鋳片の切断面および該切断面に隣接する周面または側面の2箇所以上の位置に対し、接触または接近するセンサ、上記鋳片の周面または側面の上方から該鋳片の切断面に向かって斜め下向きで且つ上記ノロの溶着部に対し、溶断を施すように配置された溶断トーチ、および、上記鋳片の周面または側面の軸方向に沿って移動可能に取り付けられた爪状部と、を含んでいる、
ことを特徴とする鋳片に付着した溶断ノロの除去装置。
【請求項4】
前記溶断トーチは、前記多関節ロボットによって、前記鋳片の切断面と周面または側面とのコーナ部に沿って、円弧状または直線状に走査される、
ことを特徴とする請求項3に記載の鋳片に付着した溶断ノロの除去装置。
【請求項5】
前記爪状部は、前記鋳片の軸方向と平行な方向および直交する方向に沿って、緩衝されつつ移動可能にして前記多関節ロボットの先端部に取り付けられている、
ことを特徴とする請求項3または4に記載の鋳片に付着した溶断ノロの除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−27883(P2013−27883A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163888(P2011−163888)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000003713)大同特殊鋼株式会社 (916)