説明

鋳造補助装置

【課題】 鋳造前処理の作業中に、その作業を停止することなく、次の処理サイクルの処理条件を変更することができ、ひいていは鋳造作業効率を向上することができる鋳造補助装置を提供する。
【解決手段】 鋳造装置1における型開きされた固定金型1a及び/又は可動金型1bの表面に、所定の処理条件データに基づく鋳造前処理を、自動的に繰り返し施すようにした鋳造補助装置において、前記処理条件データを再入力するための入力装置23を備え、該入力装置23に処理条件データが再入力された場合に、元の処理条件データを再入力された処理条件データに置き換えて、次のサイクルの前記鋳造前処理を行うようにしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカスト鋳造において、固定金型および可動金型におけるキャビティ面や湯道等への離型剤の塗布、同キャビティ面や湯道等へのエアブロー等、型締め前の鋳造前処理を施す鋳造補助装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の関連発明としては、ダイカストマシン等の鋳造装置のキャビティ面に液体離型剤を塗布する作業や、該液体離型剤をエアブローにより乾燥させて、キャビティ面に離型剤の膜を形成する作業等の鋳造前処理を、スプレーロボット等の鋳造補助装置により行うようにしたものがある(例えば特許文献1参照)。この種の鋳造補助装置は、シーケンサーや制御回路等に予め記憶された動作プログラムにより、所定の動作を行うように制御されている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
従来の鋳造補助装置の制御では、液体離型剤の噴霧や、エアーブロー、ノズルの移動等の一連の鋳造前処理動作が動作プログラムにより決められており、その鋳造前処理動作を、例えば図5のフローチャートに示すように、繰り返し行うようにしていた。一方、鋳造装置は、前記鋳造前処理動作が1サイクル行われる毎に、金型から鋳造された製品を取り出すように制御されていた。
したがって、従来の鋳造補助装置において、ノズルの移動速度や、液体離型剤の噴霧時間、エアブローの時間等、処理条件を変更する場合には、前記動作プログラムを一旦停止し、そのプログラム上の数値を変更する必要があった。そのため、前記鋳造前処理動作や、鋳造装置の動作を一旦停止する必要があり、鋳造作業効率が低下してしまう要因となっていた。
【特許文献1】特開2002−35913号公報
【特許文献2】特開平9−314304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来事情に鑑みてなされたものであり、その課題とする処は、鋳造前処理の作業中に、その作業を停止することなく、次の処理サイクルの処理条件を変更することができ、ひいていは鋳造作業効率を向上することができる鋳造補助装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために第一の発明は、鋳造装置における型開きされた固定金型及び/又は可動金型の表面に、所定の処理条件データに基づく鋳造前処理を、自動的に繰り返し施すようにした鋳造補助装置において、前記処理条件データを再入力するための入力装置を備え、該入力装置に処理条件データが再入力された場合に、元の処理条件データを再入力された処理条件データに置き換えて、次のサイクルの前記鋳造前処理を行うようにしたことを特徴とする。
【0006】
また、第二の発明は、上記鋳造前処理には、固定金型及び/又は可動金型の表面に離型剤を吹き付ける離型剤吹付工程と、固定金型及び/又は可動金型の表面をエアブローするエアブロー工程とが含まれていることを特徴とする。
【0007】
また、第三の発明は、上記処理条件データには、上記離型剤吹付工程および上記エアブロー工程の各々の時間データと、上記離型剤吹付工程および上記エアブロー工程の各々の動作速度データとが含まれていることを特徴とする。
【0008】
また、第四の発明は、上記処理条件データを所定の変数領域に確保するとともに、その記憶されたデータに基づいて制御指令を発する制御部と、該制御部からの制御指令に応じて鋳造前処理動作を行うスプレーロボットとを備え、前記制御部は、上記入力装置からの信号により処理条件データが再入力されたか否かを判断し、処理条件データが再入力されていたことを条件に、前記変数記憶領域に記憶された元の処理条件データを再入力された処理条件データに置き換え、その置き換えられた処理条件データに基づく制御指令を、次のサイクルの鋳造前処理を行う際に、前記スプレーロボットに発することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような作用効果を奏する。
本発明によれば、鋳造前処理の作業中に処理条件を変更したい場合、その処理条件データを入力装置に入力すれば、次のサイクルの鋳造前処理から、再入力された処理条件データに基づき鋳造前処理が行われる。
したがって、処理条件を変更する場合であっても、進行中の処理プログラムを停止したり、進行中の鋳造前処理や鋳造装置の動作を停止したりなどする必要がなく、鋳造作業を連続的に継続することができ、ひいては、その作業効率を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
この鋳造補助装置Aは、液体離型剤やエアー等を噴出するように構成されたスプレーロボット10と、該スプレーロボット10に対し電気配線された制御盤20とからなり、鋳造装置1における型開きされた固定金型1a及び可動金型1bや図示しない湯道等の表面に、所定の処理条件データに基づく一連の鋳造前処理を、自動的に繰り返し施すように構成されている。
【0011】
スプレーロボット10は、リンク接続された複数のアーム11や、該アーム先端のノズル12,12等を備え、複数のアーム11の揺動および回動により、両ノズル12,12を上下前後左右に自在に移動するとともに、各ノズル12から液体離型剤やエアーを噴出するように構成されている。
このスプレーロボット10は、後述する制御盤20からの制御指令により、ノズルの動作方向および動作速度や、液体離型剤を噴出している時間(スプレー時間)、エアーを噴出している時間等が制御されている。そして、このスプレーロボット10は、固定金型1a及び可動金型1bの表面に対し離型剤を吹き付ける離型剤吹付工程や、固定金型1a及び可動金型1bの表面をエアブローするエアブロー工程等、所定の工程を行うように動作する。
【0012】
制御盤20は、略箱状のケース20a内に、ロボットコントローラー21や、該ロボットコントローラー21に対し処理条件データを入出力するデータ入出力制御部22等を備え、同ケース20aの表面に、処理条件データを入力するための入力装置23や、各種のスイッチ24(例えば、運転スイッチや、停止スイッチ、手動/自動切換えスイッチ等)を配設している。
【0013】
ロボットコントローラー21は、入出力装置や、中央処理装置(CPU)、記憶装置等を備え、記憶されたプログラムに基づき演算処理されたデータを入出力する装置であり、例えば、所謂マイコンやプログラマブルコントローラ等により構成されている。
このロボットコントローラー21の記憶装置には、各種の処理条件データを記憶するための変数領域が確保されている。前記処理条件データとは、離型剤吹付工程およびエアブロー工程の各々の時間データ(スプレー時間)や、離型剤吹付工程およびエアブロー工程の各々におけるノズル12の動作速度データ等、鋳造前処理を行うために必要な条件となるデータである。
そして、このロボットコントローラー21は、予め記憶されたプログラムに基づき、スプレーロボット10からフィードバックされた各種信号や、鋳造装置1の状態を示す信号、データ入出力制御部22から入力された処理条件データ等を演算処理し、スプレーロボット10へ動作指令信号を出力したり、鋳造装置1の制御回路へスプレーロボット10の状態を示す信号を出力したり等する。
【0014】
また、データ入出力制御部22は、本実施の形態の好ましい一例によればプログラマブルコントローラであり、入力装置23に対し入力操作された処理条件データを適宜データ形式に変換してロボットコントローラー21へ転送したり、ロボットコントローラー21から受信した処理条件データを適宜データ形式に変換して入力装置23に表示したり、あるいは、ケース20a表面の複数のスイッチ24から入力された信号を適宜データ形式に変換してロボットコントローラー21へ送信したり等の処理を行う。
なお、このデータ入出力制御部22は、上記ロボットコントローラー21と略同様に、入出力装置や、中央処理装置(CPU)、記憶装置等を備え、入力データを演算処理して出力する装置であればよく、例えば所謂マイコンや、その他の電子回路等に置換することも可能である。
【0015】
入力装置23は、タッチパネルを備えた周知の入出力装置であり、ロボットコントローラー21からデータ入出力制御部22を介して入力された処理条件データをタッチパネルに表示するとともに、同タッチパネルに対し入力操作された処理条件データをデータ入出力制御部22を介してロボットコントローラー21へ送信する。
【0016】
前記タッチパネルには、例えば、図3に示すスプレー時間設定画面や、図4に示す動作速度設定画面などが表示されるようになっている。
スプレー時間設定画面は、ロボットコントローラー21に記憶されたスプレー時間データ(詳細には離型剤吹付工程およびエアブロー工程の各々の時間データ)を表示したり、該データを変更操作するための画面であり、図中「−」や「+」の表示は、スプレー時間を変更するためのボタンである。
また、動作速度設定画面は、ロボットコントローラー21に記憶された動作速度データ(詳細にはノズル12の動作速度のデータ)を表示したり、該データを変更操作するための画面であり、図中「−」や「+」の表示は、スプレー時間を変更するためのボタンである。
【0017】
次に、上記構成の鋳造補助装置Aについて、その動作を図2に示すフローチャートに沿って詳細に説明する。
図2に示すフローチャートは、上記ロボットコントローラー21における所定の記憶領域に記憶されたプログラムフローチャートの概要を示している。
【0018】
先ず、図中ステップ1では、処理条件データの再入力が行われたか否かを判断し、再入力が行われている場合には次のステップ2へ処理を移行し、そうでない場合には、後述するステップ3へ処理をジャンプする。
すなわち、このステップ1では、操作者による入力装置23への入力操作が行われたか否かを、入力装置23からデータ入出力制御部22を介してロボットコントローラー21へ入力される所定の信号により判断し、その判断に応じて、処理を上記のように振り分けるようにしている。
【0019】
次のステップ2では、元の処理条件データを再入力された処理条件データに置き換える処理が行われる。
より詳細に説明すれば、ロボットコントローラー21の記憶装置には所定の変数領域が確保されており、この変数領域には、予め処理条件データの初期値が記憶されている。この初期値は、標準的なスプレー時間や動作速度データを示す値である。
そして、上記ステップ1で入力装置23に対し処理条件データの再入力があったと判断した場合には、その再入力された処理条件データをデータ入出力制御部22を介して受信する。そして、前記変数領域に記憶された元の処理条件データが、再入力された処理条件データに書き換えられる。
更に、以降、処理条件データの再入力があった場合も、前記変数領域に記憶された処理条件データが、最新の処理条件データに書き換えられる。
【0020】
また、ステップ3では、鋳造装置側の準備が完了しているか否かが判断され、準備が完了している場合には、次のステップ4へ処理を移行し、そうでない場合には、上記ステップ1へ処理が戻される。
すなわち、このステップ3では、鋳造装置1が型開きされているか否かや、鋳造装置1から鋳造された製品が取り出されているか否か等、鋳造装置側でスプレーロボット10を受け入れる準備が完了しているか否かを、鋳造装置1に適宜配設されたセンサー等からの信号により判断し、その判断に応じて、次の処理を上記のように振り分けるようにしている。
【0021】
そして、ステップ4では、スプレーロボット10が最新の処理条件データ(スプレー時間データや動作速度データ等)に基づき一連の鋳造前処理動作を行うように、スプレーロボット10へ操作指令信号が発せられる。
なお、図示例では詳細なフローチャートを省略しているが、ステップ4における鋳造前処理動作には、ノズル12を所定方向へ動作させながら固定金型1a及び可動金型1bをエアブローする動作や、同ノズル12を所定方向へ動作させながら固定金型1a及び可動金型1bに液体離型剤を吹き付ける動作等、鋳造装置1による鋳造が行われる前段階の各種処理を含んでいる
そして、前記ステップ4の後、ロボットコントローラー21による処理は、上述したステップ1へ戻される。
【0022】
一方、鋳造装置1は、ロボットコントローラー21からの信号により、スプレーロボット10による一連の鋳造前処理動作が完了したことを認識すると、固定金型1a及び可動金型1bの型締めや、キャビティへの溶湯の注入等、所定の鋳造動作を順次に行う。
【0023】
而して、上記鋳造装置1によれば、スプレーロボット10による鋳造前処理動作中や、鋳造装置1による鋳造動作中等、如何なる動作段階においても、入力装置23に対する処理条件データの再入力を行うことができ、その再入力が行われれば、次のサイクルの鋳造前処理から、再入力された処理条件データに基づき、一連の鋳造前処理を行うことができる。
したがって、処理条件を変更する場合であっても、進行中の上記プログラムを停止したり、動作中のスプレーロボット10や鋳造装置1を停止したりなどする必要がなく、鋳造作業を連続的に継続することができる。
【0024】
なお、詳細説明を省略するが、本実施の形態の好ましい一例によれば、ノズル12からエアーや離型剤の噴出圧力も、入力装置23のタッチパネル操作により変更することが可能となっており、この変更は、上記ロボットコントローラー21以外の制御回路により、前記タッチパネル操作の時点で行われるようになっている。
【0025】
また、上記実施の形態によれば、データ入出力制御部22とロボットコントローラー21の二つの制御回路により入力装置23による入出力やスプレーロボット10への動作指令などを制御するようにしているが、これらデータ入出力制御部22およびロボットコントローラー21を一つの制御回路により構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の鋳造補助装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】同鋳造補助装置の制御フローチャートである。
【図3】入力装置における時間データの設定画面の一例を示す。
【図4】入力装置における動作速度設定画面の一例を示す。
【図5】従来の鋳造補助装置の制御フローチャートである。
【符号の説明】
【0027】
1:鋳造装置
1a:固定金型
1b:可動金型
10:スプレーロボット
20:制御盤
21:ロボットコントローラー
22:データ入出力制御部
23:入力装置
A:鋳造補助装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造装置における型開きされた固定金型及び/又は可動金型の表面に、所定の処理条件データに基づく鋳造前処理を、自動的に繰り返し施すようにした鋳造補助装置において、
前記処理条件データを再入力するための入力装置を備え、
該入力装置に処理条件データが再入力された場合に、元の処理条件データを再入力された処理条件データに置き換えて、次のサイクルの前記鋳造前処理を行うようにしたことを特徴とする鋳造補助装置。
【請求項2】
上記鋳造前処理には、固定金型及び/又は可動金型の表面に離型剤を吹き付ける離型剤吹付工程と、固定金型及び/又は可動金型の表面をエアブローするエアブロー工程とが含まれていることを特徴とする請求項1記載の鋳造補助装置。
【請求項3】
上記処理条件データには、上記離型剤吹付工程および上記エアブロー工程の各々の時間データと、上記離型剤吹付工程および上記エアブロー工程の各々の動作速度データとが含まれていることを特徴とする請求項2記載の鋳造補助装置。
【請求項4】
上記処理条件データを所定の変数領域に確保するとともに、その記憶されたデータに基づいて制御指令を発する制御部と、該制御部からの制御指令に応じて鋳造前処理動作を行うスプレーロボットとを備え、
前記制御部は、上記入力装置からの信号により処理条件データが再入力されたか否かを判断し、処理条件データが再入力されていたことを条件に、前記変数記憶領域に記憶された元の処理条件データを再入力された処理条件データに置き換え、その置き換えられた処理条件データに基づく制御指令を、次のサイクルの鋳造前処理を行う際に、前記スプレーロボットに発することを特徴とする請求項1乃至3何れか1項記載の鋳造補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−14976(P2007−14976A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−197398(P2005−197398)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【出願人】(000005256)株式会社アーレスティ (44)
【Fターム(参考)】