説明

錠剤取出し器具

【課題】 PTP包装体のポケット部内の錠剤を操作性よく容易に取り出すことができたり、錠剤の押出し時の動作音を認識することができたりするなど、利便性の高い錠剤取出し器具を提供することをその目的としている。
【解決手段】 錠剤取出し器具10は、ポケット部5を押圧して錠剤を押し出す押圧突起15と、押圧突起15に対向して設けられ、ポケット部5から押し出された錠剤を取出し口19に向かって滑らせる滑走部17と、を備える。滑走部17は、PTP包装体1をセットする基体12に設けられる。音発生部84は、錠剤の押出し時に音を発生させる。押圧突起15を下面に有する操作板14は、その先端側の上面64aが略円形に形成され、少なくとも親指よりも大きな面積を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PTP(Press Through Packaging)包装体のポケット部内に収容された錠剤を取り出すための錠剤取出し器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医薬品の分野では、薬剤を封入したカプセルや錠剤(以下、これらを総称して錠剤という。)は、PTP包装体のポケット部に収容されて提供されている。服用時に、ポケット部を指先で押圧し、金属薄膜を破ることで中身の錠剤を押し出して取り出すことができる。しかし、リウマチ患者など手の不自由な人や老齢者等にとっては、錠剤を取り出すことは必ずしも容易ではない。
【0003】
このような事情に鑑み、各種の錠剤取出し器具が提供されている(特許文献1ないし7参照。)。例えば、特許文献1に記載の錠剤取出し器具は、セットしたポケット部を押圧する押圧突起と、押圧突起の下方に設けられ、押し出された錠剤を受ける引出し箱と、を有している。この錠剤取出し器具では、押圧突起を下向きに保持する操作板を回動操作することで、押圧突起により錠剤が引出し箱に押し出される。
【特許文献1】特開平9−313574号公報(第2頁および第1図)
【特許文献2】特開平3−688号公報(第1図)
【特許文献3】特開2001−9007号公報(第1図)
【特許文献4】実開昭61−154944号公報(第1図)
【特許文献5】実用新案登録第3015128号(第1図)
【特許文献6】実用新案登録第3045701号(第1図)
【特許文献7】実用新案登録第3054841号(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来の構造では、錠剤を引出し箱の取出し口から取り出すために、これをいったん手前に引き出して取出し口を開放する必要がある上、再び引出し箱を元の位置に挿入する必要がある。このため、錠剤の取出し作業が煩雑であった。また、手の不自由の人等が引出し箱を操作することを考えると、引出し箱はある程度大きいことが望ましいが、錠剤に対して錠剤取出し器具が大型化してしまうおそれがある。
【0005】
また、従来の錠剤取出し器具では、錠剤の押出し時に確実に作動したかどうかを確認し難かった。さらに、例えば特許文献2ないし6に記載のホッチキス型の錠剤取出し器具では、グリップ操作することで錠剤を取り出すことができるが、押圧する部分の形状や面積などを考慮したものでなかった。このため、指が不自由な人等にとっては使い勝手が悪く、さらなる改良が求められていた。
【0006】
本発明は、錠剤を容易に取り出すことができる利便性の高い錠剤取出し器具を提供することをその目的としている。
他の本発明は、錠剤の押出し時に動作を認識することができる利便性の高い錠剤取出し器具を提供することをその目的としている。
他の本発明は、錠剤を取り出すのに使い易くて、利便性の高い錠剤取出し器具を提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の錠剤取出し器具は、PTP包装体のポケット部内に収容された錠剤を取り出すための錠剤取出し器具であって、ポケット部を押圧し、ポケット部から錠剤を押し出す押圧部と、押圧部に対向して設けられ、ポケット部から押し出された錠剤を取出し口に向かって滑らせる滑走部と、を備えたものである。
【0008】
この構成によれば、ポケット部内の錠剤は、押圧部によってポケット部から押し出されると、滑走部に落下する。滑走部上の錠剤は、滑走部を滑って取出し口に向かう。これにより、従来のように引出し箱の操作等をすることなく、取出し口から容易に錠剤を取り出すことが可能となる。また、例えば引出し箱を設けてなくて済むため、小型化に供することができるなど、設計の自由度も高めることができる。
【0009】
この場合、滑走部は、始端側から終端側に向かって下り勾配を有する滑走面と、滑走面の両側に立設され、滑走面に沿って延在する一対の側面と、を有することが、好ましい。
【0010】
この構成によれば、錠剤を滑走面の下り勾配に倣って滑らせることができる。また、滑走面の両側に一対の側面があるため、滑走面から錠剤が外れることを阻止し得る。これにより、錠剤を取出し口に向かって適切に案内することができる。なお、滑走面は、錠剤が滑り易いように所定の処理を施されていてもよい。
【0011】
この場合、滑走面の終端に連なる凹面を有し、凹面上の錠剤に人が前記取出し口を介してアクセス可能な受け皿部を更に備え、凹面は、滑走面に連なる上流部位と反対側の下流部位が、上流部位よりも高位となるように湾曲してなることが、好ましい。
【0012】
この構成によれば、滑走面を滑ってきた錠剤を受け皿部の凹面でとどめておくことが可能となる。これにより、錠剤がその滑走の勢いで取出し口から飛び出してしまうことを適切に防止することができる。特に、凹面は、滑走面に連なる上流部位と反対側の下流部位が、上流部位よりも高位となるように湾曲しているため、取出し口からの錠剤の飛び出しをより一層適切に防止することができる。また、人は取出し口を介して凹面上にとどまった錠剤にアクセスすることができるため、その利便性も高めることができる。なお、滑走面と凹面とは、一体で構成してもよいし、別体で構成してもよい。また、凹面で錠剤がとどまり易いように、錠剤を減速させるような処理を凹面に施してもよい。
【0013】
同様に、人が取出し口を介してアクセス可能な受け皿部を更に備え、受け皿部は、滑走面の終端に連なる凹面であって、当該凹面上の錠剤に人が前記取出し口を介してアクセス可能な凹面と、凹面の両側に立設され、凹面に沿って延在すると共に一対の側面に連なる一対の側壁面と、を有し、一対の側壁面は、それらの間で取出し口を画定していることが、好ましい。
【0014】
この構成によれば、特に、一対の側壁面により、上記の滑走部の一対の側面と同様に、凹面から錠剤が外れることを阻止することができる。また、一対の側壁面の間に取出し口を設けることができる。
【0015】
この場合、一対の側壁面は、少なくとも一本の指の幅分、離間していることが、好ましい。
【0016】
この構成によれば、一対の側壁面の間に指を挿入して、凹面上の錠剤を取り出すことができ、利便性を好適に高めることができる。
【0017】
これらの場合、一対の側壁面は、それらの間の凹面の上方が開口していることが、好ましい。
【0018】
この構成によれば、凹面上から錠剤をつまむように取り出す場合など、一対の側壁面の間に指を挿入するのに十分なスペースを確保することができる。これにより、利便性をより一層向上することができる。
【0019】
これらの場合、一対の側壁面は、服用時に取出し口に人の口をあてがわれる部位が面取りされていることが、好ましい。
【0020】
この構成によれば、人が口を取出し口にあてがって錠剤を服用することができ、利便性を向上することができる。また、口があてがわれる一対の側壁面の部位が面取りされているため、口を直接付けて服用する場合の安全性を適切に高めることができる。
【0021】
また、上記の場合、滑走部の終端に設けられ、錠剤を受容する受け皿部を更に備え、受け皿部は、これに受容された錠剤に対し、人が取出し口を介してアクセス可能に構成されていることが、好ましい。
【0022】
この構成によれば、上記同様に、滑走部を滑ってきた錠剤を受け皿部でとどめておくことが可能となる。これにより、錠剤がその滑走の勢いで取出し口から飛び出してしまうことを適切に防止することができると共に、その利便性も高めることができる。
【0023】
これらの場合、押圧部に対向して設けられ、ポケット部を押圧部に臨ませた状態でPTP包装体をセットする基体を更に備え、滑走部は、基体に設けられていることが、好ましい。
【0024】
この構成によれば、PTP包装体を基体でセットすることができるため、安定してポケット部から錠剤を押し出すことができる。また、基体を有効に利用して、これに滑走部を設けることができる。
【0025】
本発明の他の錠剤取出し器具は、PTP包装体のポケット部内に収容された錠剤を取り出すための錠剤取出し器具であって、ポケット部を押圧し、ポケット部から錠剤を押し出す押圧部と、押圧部に対向して設けられ、ポケット部を押圧部に臨ませた状態でPTP包装体をセットする基体と、ポケット部に対する押圧部の押圧動作に起因して、錠剤の押出し時に押圧部と基体との間で音を発生する音発生部と、を備えたものである。
【0026】
この構成によれば、基体にセットされたPTP包装体のポケット部に対し、押圧部が押圧動作すると、ポケット部から錠剤が押し出されると共に、その時に押圧部と基体との間で音が発生する。これにより、錠剤の押出し時に、錠剤取出し器具が確実に作動したかどうかを聴覚で確認することができ、ユーザの利便性を高めることができる。
【0027】
この場合、押圧部は、ポケット部に接触する押圧突起と、押圧突起を下面に有すると共に押圧動作の際に操作される操作板と、を備え、音発生部は、操作板の下面に設けられた引掛り部と、基体に設けられ、錠剤の押出し時に引掛り部に引っ掛る引掛り受け部と、で構成されていることが、好ましい。
【0028】
この構成によれば、押圧動作の際に操作板が操作されることで、操作板の下面の押圧突起がポケット部を押圧する。そして、錠剤の押出し時に、操作板の下面の引掛り部が基体の引掛り受け部に引掛り受け部に引っ掛って、音が発生する。このように、押圧部および基体に設けた簡単な構造により、押圧動作に起因した音を適切に発生させることができる。
【0029】
この場合、基体は、操作板をその下面を介して上方に付勢する片持ちの板ばねを有しており、引掛り受け部は、板ばねの自由端からなることが、好ましい。
【0030】
この構成によれば、操作板は、押圧動作の際に板ばねの付勢力に抗して下方に操作され、押出し時に板ばねの自由端が引掛り部に引っ掛って音が発生する。操作板は、押出し後には、板ばねの付勢力によって元の位置に復帰し得る。このように、錠剤の取出し後に操作板を元の位置に復帰させ得る板ばねを有効に活用して、押出し時に音を適切に発生させることができる。
【0031】
この場合、操作板は、先端側の下面に押圧突起を有すると共に基部側を中心に基体に対して回動可能に構成され、操作板は、板ばねから離間して板ばねを上方に開放するように、基部側を中心に回動可能に構成されていることが、好ましい。
【0032】
この構成によれば、操作板が回動操作されることで押圧突起がポケット部を押圧することになるため、ポケット部は押圧される向きを僅かに移行される。これにより、ポケット部への押圧方向を一方向のみとする場合に比べて、ポケット部から錠剤が押し出され易くなる。また、操作板は、板ばねを上方に開放するように回動することができるため、ユーザが板ばねまわりの構造を視認可能となるなど、その利便性を高め得る。
【0033】
本発明の他の錠剤取出し器具は、PTP包装体のポケット部内に収容された錠剤を取り出すための錠剤取出し器具であって、ポケット部を押圧し、ポケット部から錠剤を押し出す押圧部と、押圧部に対向して設けられ、ポケット部を押圧部に臨ませた状態でPTP包装体をセットする基体と、を備え、押圧部は、ポケット部に接触する押圧突起と、先端側の下面に押圧突起を有し且つ基部側を中心に基体に対して回動可能に構成され、押圧動作の際に回動操作される操作板と、を備え、操作板の先端側の上面は、略円形に形成され、少なくとも親指よりも大きな面積を有しているものである。
【0034】
この構成によれば、基体にセットされたPTP包装体のポケット部に対し、操作板を回動操作することで、操作板の先端側の下面の押圧突起がポケット部を押圧し、ポケット部から錠剤が押し出される。上記同様に、ポケット部は、押圧突起によって押圧される向きを僅かに移行されるため、ポケット部から錠剤を円滑に押し出すことができる。また、押圧突起がある操作板の先端側の上面は略円形に形成されているため、この部分が例えば四角形の場合に比べて、ユーザとの接触性(操作性)を高めることができる。さらに、この部分の面積が少なくとも親指よりも大きいため、ユーザとの接触性をより一層高めることができる。例えば、ユーザは、指のみならず、手のひら、手の甲、腕や肘で、操作板の先端側の上面を接触性良く押圧することが可能となる。
【0035】
この場合、操作板は、平面視、基体の領域に包含されることが、好ましい。
【0036】
この構成によれば、操作板から基体の領域外に突出することがないため、運搬時や保管時など錠剤取出し器具の取扱い性を高めることができる。
【0037】
この場合、操作板の先端側の略円形に形成された上面は、平面視、基体の領域の中央部に位置することが、好ましい。
【0038】
この構成によれば、ユーザとの接触点となる操作板の上面の部分が基体の領域の中央部に位置するため、この部分が基体の領域の端にある場合に比べて、操作板を回動操作する際の錠剤取出し器具の安定性を高めることができる。
【0039】
これらの場合、押圧動作の際に、押圧突起がポケット部に位置決めされるように、操作板の回動を案内するガイド機構を、更に備えたことが、好ましい。
【0040】
この構成によれば、回動操作される操作板は、ガイド機構によって案内されるため、ぶれることなく又はぶれたとしてもそれを軌道修正される。これにより、例えば手の不自由な人等によって操作板が回動操作されたとしても、押圧突起がポケット部に確実に位置決めされるため、ポケット部から錠剤を確実に且つ良好に押し出すことができる。
【0041】
この場合、ガイド機構は、操作板に設けられたガイド部と、基体に設けられ、ガイド部を案内するガイド受け部と、で構成されていることが、好ましい。
【0042】
この構成によれば、操作板および基体を有効に活用して、ガイド機構を設けることができる。
【0043】
この場合、ガイド部は、操作板の下面に垂設された一対のガイド片を有し、ガイド受け部は、基体の上面に立設され、一対のガイド片を相対的に挟持する一対のガイド受け片を有することが、好ましい。
【0044】
この構成によれば、一対のガイド受け片の各内面で一対のガイド片の各外面を案内することで、または一対のガイド受け片の各外面で一対のガイド片の各内面を案内することで、操作板の回動が案内される。
【0045】
これらの場合、操作板は、基体に突き当たって操作板の回動を規制する規制部を有し、規制部は、押圧突起が錠剤を押出し可能な押出し位置よりも下方に移動することを阻止することが、好ましい。
【0046】
この構成によれば、錠剤を押出し後に押圧突起がポケット部を更に押圧することが、規制部によって阻止される。これにより、押圧突起がポケット部を押し込むように必要以上に押圧しないで済み、PTP包装体の損傷等を好適に防止することができる。また、ユーザは、操作板の回動操作が規制されることで、錠剤を押し出せたことを体感することが可能となる。
【0047】
これらの場合、基体は、PTP包装体を載置する上面と、上面と間隙を存して設けられ、ポケット部を押圧部に臨ませた状態で挟持する挟持部と、を有し、上面は、挟持部の対応する位置に、錠剤が通過可能な開口を有することが、好ましい。
【0048】
この構成によれば、PTP包装体を基体の上面に載置し且つポケット部を挟持部で挟持した状態で押圧部を押圧動作することができるため、押圧時のポケット部の位置ずれを好適に防止される。これにより、ポケット部から錠剤を円滑に押し出すことができる。また、基体の上面は挟持部に対応して開口を有するため、ポケット部から押し出した錠剤を基体の上面の開口に落下させることができる。
【0049】
この場合、挟持部は、略U字状に形成されており、その略U字状の二つの先端部には、拡開された誘込み部が設けられていることが、好ましい。
【0050】
この構成によれば、U字状の挟持部の開放側(二つの先端側)からポケット部を挿入して、ポケット部を挟持部のU字状の部分で挟持することができる。挟持部の二つの先端部に誘込み部が設けられているため、ポケット部を挟持部に適切に挿入することができると共に、ややサイズの大きいポケット部も挟持部に適切に挿入して、これに挟持させることができる。
【0051】
これらの場合、挟持部は、略U字状に形成されており、その略U字状の基部には、切り込まれた切込み部が設けられていることが、好ましい。
【0052】
この構成によれば、切込み部があるために、挟持部の二つの先端部は弾力的に拡開することが可能となる。これにより、ポケット部が挟持部よりも大きいサイズであったとしても、挟持部でポケット部を適切に挟持することができる。
【0053】
これらの場合、挟持部は、略U字状に形成されており、その略U字状の下面は、先端部側から基部側にかけて斜め下方に傾斜していることが、好ましい。
【0054】
この構成によれば、PTP包装体を基体の上面にセットする際に、挟持部に対しポケット部を水平方向から挟持させる場合のみならず、挟持部に対しポケット部を斜め上方から挟持させ易くなる。これにより、ユーザの利便性を好適に高めることができる。
【0055】
これらの場合、基体は、上面の前記開口の下方に設けられ、錠剤を取出し口に向かって滑らせる滑走部を更に有していることが、好ましい。
【0056】
この構成によれば、ポケット部から押し出されて基体の上面の開口を通過した錠剤は、滑走部に落下してここを滑って取出し口に向かう。これにより、基体を有効に利用してこれに滑走部を設けることができると共に、従来のように引出し箱の操作等をすることなく、取出し口から容易に錠剤を取り出すことが可能となる。また、例えば引出し箱を設けてなくて済むため小型化に供することができる。
【発明の効果】
【0057】
本発明の錠剤取出し器具によれば、ポケット部から押し出された錠剤が滑走部を滑って取出し口に向かうため、錠剤を容易に取り出すことができ、その利便性を高めることができる。
【0058】
本発明の他の錠剤取出し器具によれば、ポケット部からの錠剤の押出し時に音が発生するため、その時の動作を認識することができ、その利便性を高めることができる。
【0059】
本発明の他の錠剤取出し器具によれば、ユーザとの接触点となる操作板の部位が好適な形状および面積を具備するため、錠剤を取出し易く、その利便性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態に係る錠剤取出し器具について説明する。この錠剤取出し器具は、ユーザの操作性を高め、PTP包装体のポケット部内から錠剤(カプセルを含む)を押出す時に音を発生させたり、押出し後の錠剤を取出し口まで滑らしたりするなど、ユーザの利便性を高めたものである。以下では、先ずPTP包装体について簡単に説明し、その後、錠剤取出し器具について詳細に説明する。
【0061】
図1に示すように、PTP包装体1は、包装本体となる成形材薄膜2と、成形材薄膜2に積層されたシート状の蓋材3と、で構成されている。成形材薄膜2は、錠剤を収容する複数のポケット部5を有し、各ポケット部5の開口側は、単一の蓋材3によって閉塞されている。成形材薄膜2は、ポリプロピレンやポリ塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂により形成されている。なお、透明または半透明の材質を使用することによって、ポケット部5内の錠剤を外部から視認できるようにしてもよい。また、図1では、一つの錠剤のみが破線で表されている。
【0062】
ポケット部5は、有底の略円筒状に形成され、錠剤を横置き姿勢で収容可能な所定の深さを有している。ポケット部5の上面は、平坦に又は上方に僅かに湾曲して形成されている。蓋材3は、アルミニウムや樹脂などにより形成されている。蓋材3は、成形材薄膜2に熱溶着され、錠剤をポケット部5内に密封している。ポケット部5の上面を重力方向に押圧することで、ポケット部5に対応する蓋材3の部分が破れ、ポケット部5から錠剤を取り出すことが可能となる。
【0063】
一般に、複数のポケット部5は、一つのPTP包装体1において整然配列されており、ポケット部5単位又はポケット部5が並ぶその列単位で分割可能に構成されている。例えば、図1に示すように、複数のポケット部5は、切欠きライン7を挟んで二つの列を構成するように並んでいる。切欠きライン7は、成形材薄膜2のポケット部5側の表面が深さ方向の途中まで切り込まれることで構成されている。なお、この切欠きライン7に直交する別の切欠きライン7を複数設けることで、ポケット部5が個々に分割可能となる。
【0064】
図2および図3に示すように、錠剤取出し器具10は、ポケット部5を上側にした状態でPTP包装体1をセットする。錠剤取出し器具10は、PTP包装体1を載置可能な上面11を有する基体12と、基体12の上部に設けられてポケット部5を挟持する挟持部13と、基体12の後部を中心に回動可能に構成された操作板14と、操作板14に下向きに設けられてポケット部5に接触可能な押圧突起15と、操作板14の回動を案内するガイド機構16と、挟持部13の下方の基体12に設けられて錠剤を滑らせる滑走部17と、滑走部17の終端に設けられて錠剤を受容する受け皿部18と、受け皿部18に臨む取出し口19と、を有している。錠剤取出し器具10は、例えばポリプロピレンにより一体成形され、左右対称の構成となっている。
【0065】
基体12は、所定の高さを有しており、平面視、全体として略卵形に形成されている。例えば、基体12は、パーソナルコンピュータを操作するマウス程度のサイズで形成されている。基体12は、その前後中心線上に、挟持部13、滑走部17および受け皿部18を有しており、挟持部13は、基体12の上面11と間隙を存してこれに平行に設けられている。一方、滑走部17および受け皿部18は、基体12の上面11を下方に窪ませた凹部に設けられている。
【0066】
基体12の上面11は、平坦面で形成され、PTP包装体1の蓋材3側を水平に載置する。上面11は、挟持部13、滑走部17および受け皿部18に対応する位置がブリッジ部21を挟んで縦長に開口しており、この開口部22まわりのブリッジ部21を含む上面11の部位でPTP包装体1を載置する。
【0067】
ブリッジ部21は、基体12の上面11が兼ねており、所定の幅を有している。ブリッジ部21は、挟持部13の直下ではなく、挟持部13の前方に位置している。より詳細には、PTP包装体1が錠剤取出し器具10にセットされた際に、ブリッジ部21は、PTP包装体1の切欠きライン7に沿って且つ蓋材3を挟んで切欠きライン7の近傍に臨むように、上面11に設けられている。また、ブリッジ部21は、挟持部13側の中央部が円弧に湾曲して形成されており、この円弧の曲率中心は挟持部13側に位置している。ブリッジ部21を設けることにより、ポケット部5から錠剤を適切に押し出すことができる。
【0068】
具体的には、ブリッジ部21が存在しない場合には、PTP包装体1はその左右を基体12に両持ち支持されるだけとなる。このため、錠剤の押出し時には、PTP包装体1が開口部22の下方に大きく撓むなど、安定性を欠く。ブリッジ部21がPTP包装体1に臨む位置が、切欠きライン7よりも挟持部13側に近づきすぎると、錠剤を押し出し難くなる一方、逆に切欠きライン7よりも遠ざかりすぎると、押出し対象外のポケット部5に悪影響をおよぼすおそれがある。このような事情に鑑みて、ブリッジ部21がPTP包装体1に臨む位置は、切欠きライン7の近傍に設定されている。
【0069】
なお、ポケット部5単位で分割されたPTP包装体1について考慮すると、開口部22はPTP包装体1が落下しない程度の開口で構成され、ブリッジ部21はPTP包装体1の縁部を支持可能に構成されることが好ましい。こうすることで、一個のポケット部5からなる分割されたPTP包装体1も、錠剤取出し器具10に適切に供することができる。
【0070】
図2ないし図5に示すように、基体12の上面11に連なる周面24は、外側に膨らむように湾曲した左右の各側面31,31と、鉛直な後面32と、取出し口19側の前面33と、で構成されている。上面11と左右の各側面31,31とを連ねる部分は、面取りされている。後面32は、操作板14が上面11から離間するように回動した場合に、操作板14が突き当たるようになっており、操作板14の回動端位置を規制する。前面33は、その上側部分33aに取出し口19を有している。そして、前面33の下側部分33bは、人が口を取出し口19に直接付けて錠剤を服用する場合に、下唇があてがわれる部位として機能する。
【0071】
基体12は、卓上に載置可能な下面を有するが、この下面は、基体12の周面24の下端面を連ねて構成されている。ユーザは、基体12をテーブルなどに置いて錠剤取出し器具10を使用することができるし、基体12を掌の上に置いた状態でも錠剤取出し器具10を使用することができる。基体12の内部は、軽量化を考慮して空洞に構成されると共に、強度を考慮して複数の横隔壁35が設けられている(図6参照)。なお、基体12については、塩化ビニルで構成してもよい。
【0072】
挟持部13は、図2ないし図6に示すように、基体12の中央部に位置している。挟持部13の下方には開口部22があり、開口部22の下方には滑走部17が位置している。挟持部13の上方には、押圧突起15が位置している。挟持部13は、ポケット部5を滑走部17および押圧突起15に臨ませた状態で、ポケット部5の周壁を挟持する。
【0073】
挟持部13は、全体として略U字状に形成されており、基体12の上面11に平行に延在している。挟持部13の略U字状の二つの先端部には、拡開された誘込み部41が設けられている。また、挟持部13の略U字状の基部の中央部には、切り込まれた切込み部42が設けられている。挟持部13にポケット部5をセットする場合には、ポケット部5を挟持部13の略U字状の基部に突き当てるようにしてセットする。
【0074】
挟持部13は、その先端側が切込み部42によって弾力的に拡開するように構成されている。これにより、挟持部13は、サイズの異なるポケット部5を適切に挟持することができる。なお、挟持部13は、これよりもサイズの大きいポケット部5を挟持する際に、真円に近づくように僅かに拡開することが好ましい。誘込み部41は、挟持部13のサイズよりも大きいサイズのポケット部5がセットされる場合に、ポケット部5が挟持部13の開放側(先端側)から適切に挿入できるように機能する。このため、挟持部13は、サイズの大きいポケット部5をセットし易くなっている。
【0075】
挟持部13は、その基部側を基体12に片持ちのアーム44によって支持されている。アーム44は、基体12の上面11と間隙を存して平行に延在し、開口部22の上方に位置している。基体12の上面11とアーム44(および挟持部13)との間隙は、これらの間にPTP包装体1を差込み可能な程度に設定されている。
【0076】
挟持部13の下面は、先端部側から基部側にかけて斜め下方に傾斜して形成され、アーム44の水平な下面に連なっている。このように、挟持部13の下面を傾斜させることで、基体12の上面11に対し斜め上方からPTP包装体1を差し込む際に、ポケット部5を挟持部13に挟持させ易くすることができる。また、挟持部13の下面の傾斜は、基部側を先端側に比べて厚肉にすることで形成しているため、基部側の強度を確保することができる。
【0077】
操作板14および押圧突起15は、ポケット部5を重力方向に押圧してポケット部5から錠剤を押し出す押圧部を構成している。この押圧部は、上述のように、基体12や滑走部17などに対向している。押圧突起15は、外観視棒状の形状からなり、操作板14の下面61から垂下するように設けられている。なお、成型上、押圧突起15の内部は空洞となっている。押圧突起15は、挟持部13の位置に対応して設けられている。挟持部13にポケット部5がセットされていない状態では、押圧突起15は、その先端部が挟持部13の空間部分を通過して開口部22に臨み、その先端面51が基体12の上面11より僅かに下側に突出するように構成されている(図7参照)。
【0078】
押圧突起15の先端面51は、真円で構成されているが、もちろん前後方向に長い長円で構成されてもよい。押圧突起15の先端面51は、下方に向かって凸となるように湾曲している。こうすることで、先端面51を平坦面で構成する場合に比べて、ポケット部5への押圧力を集中させることができる。押圧突起15の先端面51の凸面の中心は、挟持部13に挟持されたポケット部5の中心に略合致するようになっている。押圧突起15は、その先端面51がポケット部5の上面に接触し、ポケット部5の中心部をその深さ方向(重力方向)に押圧する。
【0079】
押圧突起15の押圧動作は、操作板14の回動により行われる。このため、ポケット部5は、斜めの方向から押圧され、しかも押圧動作の過程でその押圧方向が僅かに移行される。これにより、ポケット部5への押圧方向を一方向のみとする場合に比べて、ポケット部5から錠剤が押し出され易くなる。なお、本実施形態の押圧突起15は、ポケット部5から錠剤を押し出す最終的な押出し位置では鉛直方向に延在するが(図7参照)、もちろん鉛直方向に対し傾斜して延在してもよい。
【0080】
操作板14は、先端側の下面61に押圧突起15を有すると共に、基部側のヒンジ部62を中心に基体12に対して回動可能に構成されている。操作板14は、基体12よりも小さいサイズで形成されている。操作板14は、平面視、全体として舌状に形成され且つ基体12の領域に包含されている。操作板14の舌状の上面64は段差を有しており、高位となる先端側の上面64aは略円形の平坦面に形成されている。操作板14の先端側の上面64aは、平面視、基体12の領域の中央部に位置していると共に、その略円形の中心部に押圧突起15が位置している。
【0081】
操作板14の先端側の上面64aは、主として、押圧動作の際に操作板14が重力方向に回動操作されるために、人が接触する部位となる。このため、操作板14の先端側の上面64aは、例えば成人の手の親指よりも大きな面積を有していることが好ましい。さらに好ましくは、操作板14の先端側の上面64aは、指のみならず、人の掌、手の甲、腕や肘でも、接触性良く押圧される程度の面積を有している。
【0082】
操作板14の上面64は、その周縁部から下方に延びる周面66に連なっている。操作板14の上面64と周面66とを連ねる部分は、面取りされている。周面66の下端は、操作板14の先端側から基部側にかけて段違いに形成されている。周面66の左右の各下端面であって、周面66の基部側の半部の下端面68は、基体12の上面11に接触可能に構成されている。
【0083】
具体的には、操作板14が重力方向に回動操作されて、図7に示すように押圧突起15が押出し位置に達すると、操作板14の上記の下端面68が基体12の上面11と平行になるように突き当たる。これにより、操作板14の重力方向への更なる回動が規制されるようになっている。すなわち、操作板14の周面66の下端面68により、押圧突起15を押出し位置よりも下方に移動することを阻止する規制部が構成されている。
【0084】
一方、操作板14の周面66の基部側の後面69は、操作板14が基体12の上面11から離間するように回動した場合に、基体12の後面32に当接するストッパとして機能する。図5および図8に示すように、操作板14が基体12の上面11から離間するように回動すると、操作板14の下面61が板ばね80から離間して、板ばね80およびガイド機構16が上方に開放される。
【0085】
板ばね80は、基体12の前後中心線上に位置し、基体12の上面11側に片持ちで設けられている。板ばね80は、その基部側の固定端がアーム44の基部側の近傍に設けられ、固定端側から自由端側にかけて後上方に反るように湾曲している。板ばね80は、自由端側の上面が操作板14の下面61に接触して、操作板14を上方に付勢する。このため、操作板14は、押圧動作の際に板ばね80の付勢力に抗して重力方向に操作される。また、操作板14は、錠剤の押出し後には、板ばね80の付勢力によって元の位置に自動的に復帰する。
【0086】
板ばね80の自由端は、錠剤の押出し時に、操作板14の下面61の音発生突部82に引っ掛り、その時に音を発生させる。音発生突部82は、操作板14の下面61に突設する線状の突片からなり、板ばね80の幅に対応した幅を有している。操作板14が回動する押圧動作の初期では、板ばね80の自由端側の上面は操作板14の下面61を滑りながらこれを上方に付勢する。そして、押圧動作の最終段階では、板ばね80の自由端が音発生突部82に達しこれを乗り越えるが、このとき音が発生する。
【0087】
すなわち、板ばね80の自由端(引掛り受け部)と音発生突部82(引掛り部)とにより、ポケット部5への押圧動作に起因して、押圧突起15が図7に示す押出し位置に達する押出し時に、音を発生させる音発生部84が構成されている。この音発生部84を設けることによって、人は、錠剤の押出し時に、錠剤取出し器具10が確実に作動したかどうかを聴覚で確認することができる。また、板ばね80を有効に活用して音発生部84を設けることができ、例えば操作板14のヒンジ部62にねじりコイルバネを設ける構成などに比べて有用となる。なお、引掛り部を音発生突部82で構成したが、もちろん操作板14の下面61に凹設した音発生凹部で引掛り部を構成してもよい。
【0088】
ガイド機構16は、図4、図5および図8に示すように、押圧動作の際に、押圧突起15がポケット部5に位置決めされるように、操作板14の回動を案内するものである。ガイド機構16は、これを構成する複数の部材が基体12および操作板14の両者に対応して設けられ、錠剤取出し器具10の前後中心線上を挟んで左右対称の構造となっている。
【0089】
ガイド機構16は、操作板14の下面61に垂設した左右一対のガイド片91,91(ガイド部)と、基体12の上面11に立設された左右一対のガイド受け片92,92と、一対のガイド受け片92,92の外側に位置して、基体12の上面11に立設された左右一対のガイド阻止片93,93と、を有している。
【0090】
一対のガイド片91,91は、操作板14の基部側の下面61に垂設されており、所定の距離だけ離間している。一対のガイド片91,91の間には、上記の音発生突部82が位置している。一対のガイド片91,91の対向する内面には、一文字状の突出部位95が設けられている。なお、一対のガイド片91,91は、操作板14の強度を高める機能も奏している。
【0091】
一対のガイド受け片92,92は、一対のガイド片91,91に対応して所定の距離だけ離間しており、一対のガイド受け片92,92の間には、板ばね80が位置している。一対のガイド受け片92,92の各外面には、一文字状の突出部位97が設けられている。突出部位97は、ガイド受け片92の外面の後上部に設けられており、ガイド片91の突出部位95に対し係脱可能に構成されている。
【0092】
詳細には、操作板14が押圧動作の際に回動した場合に、一対のガイド片91,91はそれらの間に一対のガイド受け片92,92を挟むように回動する。このとき先ず、一対のガイド片91,91は、突出部位95が突出部位97を乗り越え、その後、一対のガイド受け片92,92と一対のガイド阻止片93,93との間に挿入し、これらに案内される。これら突出部位95および突出部位97によって、操作板14は押圧動作の際の回動が方向付けられるため、押圧突起15の中心部がポケット部5の中心部に適切に位置決めされる。
【0093】
一対のガイド阻止片93,93は、一対のガイド受け片92,92の前後中間部に位置しており、突出部位97よりも前方に位置している。各ガイド阻止片93の上端面は、各ガイド片91を内側に円滑に案内するように面取りされている。各ガイド阻止片93は、上部を各ガイド受け片92側に僅かに傾けられている。これにより、例えば自由状態で、ガイド片91がガイド受け片92とガイド阻止片93との間から離脱することを好適に阻止することができる。
【0094】
なお、一対のガイド阻止片93,93を設けない構成とすることもできる。また、上記の構成に代えて、一対のガイド受け片92,92の各内面で一対のガイド片91,91の各外面を案内するようにしてもよい。すなわち、一対のガイド受け片92,92は、一対のガイド片91,91を相対的に挟持する構成であれば、一対のガイド片91,91を案内するガイド受け部として機能する。
【0095】
滑走部17は、図2、図5および図6に示すように、後方の始端側から前方の終端側に向かって下り勾配を有する滑走面111と、滑走面111の両側に立設されて滑走面111に沿って延在する左右一対の側面112,112と、を有している。滑走面111は、平坦な傾斜面で形成され、その傾斜に倣って錠剤を取出し口19(受け皿部18)に向かって滑らせることができる。
【0096】
すなわち、滑走面111は、ポケット部5から滑走面111に落下した錠剤を重力によって下方に滑らせることができる。一対の側面112,112は、基体12の内壁面で構成されており、錠剤のサイズよりも大きな幅で離間している。また、一対の側面112,112は、縦置き姿勢の錠剤よりも高い所定の高さを有している。なお、滑走面111は、錠剤が滑り易いように所定の処理を施されていてもよい。
【0097】
受け皿部18は、図2、図5および図6に示すように、滑走面111の終端に連なる凹面121と、凹面121の両側に立設されて凹面121に沿って延在する一対の側壁面122,122と、を有している。凹面121は、滑走面111に連なる上流部位と反対側の下流部位が、基体12の周面24の前面33の下側部位33bに連なっている。凹面121は、その下流部位がその上流部位よりも高位となるように下方に湾曲している。
【0098】
こうすることで、滑走面111を滑ってきた錠剤がその滑走の勢いで取出し口19から外に飛び出してしまうことを好適に防止でき、凹面121に錠剤をとどめておくことが可能となる。なお、滑走面111と凹面121とを一体で構成したが、もちろんこれらを別体で構成してもよい。また、凹面121で錠剤がとどまり易いように、錠剤を減速させるような処理を凹面121に施してもよい。
【0099】
一対の側壁面122,122は、基体12の内壁面で構成され、滑走部17を構成する一対の側面112,112に連なっている。一対の側壁面122,122は、それらの間の凹面121の上方が開口していると共に、それらの間の前方で取出し口19を画定している。一対の側壁面122,122は、一対の側面112,112よりも大きな幅を有して離間しており、その幅は少なくとも一本の指よりも大きく設定されている。
【0100】
これにより、人は、少なくとも一本の指を取出し口19から一対の側壁面122,122の間に挿入し、凹面121上の錠剤にアクセスしてこれを取出し口19から取り出すことができる。この場合、凹面121の上方が開口しているため、一対の側壁面122,122の間に指を挿入し且つ指を動かすのに十分なスペースを確保することができる。これにより、人は指を凹面121上にアクセスし易く、凹面121上から錠剤をつまむように簡単に取り出すことができる。
【0101】
また、人は、自分の口を取出し口19に直接あてがって、凹面121上の錠剤を取り出すことができる。具体的には、人は、基体12の前面33の下側部分33bに下唇をあてがい、凹面121上の錠剤を取出し口19から人の口に落とすように錠剤取出し器具10を手前側に傾けることで、取出し口19から錠剤を服用することができる。この傾けるときに人の口があてがわれる一対の側壁面122,122の端面は、すなわち基体12の周面24の前面33と上面11とを連ねる部位は、面取りされている。こうすることで、錠剤を服用し易くすると共に、その場合の安全性を適切に高めている。
【0102】
以上のように、本実施形態の錠剤取出し器具10によれば、簡単にPTP包装体1をセットして、その錠剤を取り出すことができる。特に、操作板14の略円形の上面64a等の形状や面積によって操作性が良好なため、手の不自由な人や老齢者等であっても、錠剤を容易に押し出して取り出すことができる。また、錠剤の押出し時に、操作板14および基体12の部位間の干渉により音が発生するため、錠剤取出し器具10が確実に作動したかどうかを聴覚で確認することができる。
【0103】
さらに、ポケット部5から押し出された錠剤は滑走部17を滑って、取出し口19に臨む受け皿部18に受容されるため、人は、容易に錠剤を指で取り出したり、口を付けて取り出したりすることができる。その他、錠剤取出し器具10の各構成部位の作用・効果は、上述のとおりである。このように、本実施形態の錠剤取出し器具10によれば、多くの点でユーザの利便性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】実施形態に係るPTP包装体を示す斜視図である。
【図2】実施形態に係る錠剤取出し器具を示す斜視図である。
【図3】実施形態に係る錠剤取出し器具にPTP包装体をセットした状態を示す斜視図である。
【図4】実施形態に係る錠剤取出し器具を示す正面図である。
【図5】実施形態に係る錠剤取出し器具を展開した状態を示す平面図である。
【図6】実施形態に係る錠剤取出し器具を示す縦断面図である。
【図7】実施形態に係る錠剤取出し器具を示す縦断面図である。
【図8】実施形態に係る錠剤取出し器具の一部を断面で示す側面図である。
【符号の説明】
【0105】
1…PTP包装体、5…ポケット部、10…錠剤取出し器具、11…上面、12…基体、13…挟持部、14…操作板、15…押圧突起、16…ガイド機構、17…滑走部、18…受け皿部、19…取出し口、21…ブリッジ部、22…開口部、41…誘込み部、42…切込み部、51…先端面、64…上面、64a…先端側の上面、80…板ばね、82…音発生突部(引掛り部)、84…音発生部、91…ガイド片(ガイド部)、92…ガイド受け片(ガイド受け部)、93…ガイド阻止片、111…滑走面、112…側面、121…凹面、122…側壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PTP包装体のポケット部内に収容された錠剤を取り出すための錠剤取出し器具であって、
前記ポケット部を押圧し、当該ポケット部から錠剤を押し出す押圧部と、
前記押圧部に対向して設けられ、前記ポケット部から押し出された錠剤を取出し口に向かって滑らせる滑走部と、
を備えた錠剤取出し器具。
【請求項2】
前記滑走部は、
始端側から終端側に向かって下り勾配を有する滑走面と、
前記滑走面の両側に立設され、当該滑走面に沿って延在する一対の側面と、を有する請求項1に記載の錠剤取出し器具。
【請求項3】
前記滑走面の終端に連なる凹面を有し、当該凹面上の錠剤に人が前記取出し口を介してアクセス可能な受け皿部を更に備え、
前記凹面は、前記滑走面に連なる上流部位と反対側の下流部位が、当該上流部位よりも高位となるように湾曲してなる請求項2に記載の錠剤取出し器具。
【請求項4】
人が前記取出し口を介してアクセス可能な受け皿部を更に備え、
前記受け皿部は、
前記滑走面の終端に連なる凹面であって、当該凹面上の錠剤に人が前記取出し口を介してアクセス可能な凹面と、
前記凹面の両側に立設され、当該凹面に沿って延在すると共に前記一対の側面に連なる一対の側壁面と、を有し、
前記一対の側壁面は、それらの間で前記取出し口を画定している請求項2に記載の錠剤取出し器具。
【請求項5】
前記押圧部に対向して設けられ、前記ポケット部を前記押圧部に臨ませた状態で前記PTP包装体をセットする基体を更に備え、
前記滑走部は、前記基体に設けられている請求項1ないし4のいずれか一項に記載の錠剤取出し器具。
【請求項6】
PTP包装体のポケット部内に収容された錠剤を取り出すための錠剤取出し器具であって、
前記ポケット部を押圧し、当該ポケット部から錠剤を押し出す押圧部と、
前記押圧部に対向して設けられ、前記ポケット部を前記押圧部に臨ませた状態で前記PTP包装体をセットする基体と、
前記ポケット部に対する前記押圧部の押圧動作に起因して、錠剤の押出し時に前記押圧部と前記基体との間で音を発生する音発生部と、
を備えた錠剤取出し器具。
【請求項7】
前記押圧部は、
前記ポケット部に接触する押圧突起と、
前記押圧突起を下面に有すると共に押圧動作の際に操作される操作板と、を備え、
前記音発生部は、
前記操作板の下面に設けられた引掛り部と、
前記基体に設けられ、錠剤の押出し時に前記引掛り部に引っ掛る引掛り受け部と、で構成されている請求項6に記載の錠剤取出し器具。
【請求項8】
前記基体は、前記操作板をその下面を介して上方に付勢する片持ちの板ばねを有しており、
前記引掛り受け部は、前記板ばねの自由端からなる請求項7に記載の錠剤取出し器具。
【請求項9】
前記操作板は、先端側の下面に前記押圧突起を有すると共に基部側を中心に前記基体に対して回動可能に構成され、
前記操作板は、前記板ばねから離間して当該板ばねを上方に開放するように、基部側を中心に回動可能に構成されている請求項8に記載の錠剤取出し器具。
【請求項10】
PTP包装体のポケット部内に収容された錠剤を取り出すための錠剤取出し器具であって、
前記ポケット部を押圧し、当該ポケット部から錠剤を押し出す押圧部と、
前記押圧部に対向して設けられ、前記ポケット部を前記押圧部に臨ませた状態で前記PTP包装体をセットする基体と、を備え、
前記押圧部は、
前記ポケット部に接触する押圧突起と、
先端側の下面に前記押圧突起を有し且つ基部側を中心に前記基体に対して回動可能に構成され、押圧動作の際に回動操作される操作板と、を備え、
前記操作板の先端側の上面は、略円形に形成され、少なくとも親指よりも大きな面積を有している錠剤取出し器具。
【請求項11】
前記押圧動作の際に、前記押圧突起が前記ポケット部に位置決めされるように、前記操作板の回動を案内するガイド機構を、更に備えた請求項10に記載の錠剤取出し器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−230500(P2006−230500A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−46109(P2005−46109)
【出願日】平成17年2月22日(2005.2.22)
【出願人】(000000217)エーザイ株式会社 (102)
【出願人】(000206185)大成化工株式会社 (83)
【Fターム(参考)】