説明

開閉ルーフの排水構造

【課題】ウェザストリップの接合部における水漏れを防止する。
【解決手段】バックウインドウ23の下端縁部には下部バック用ウェザストリップ73が設けられ、ミドルルーフパネル24の下端縁部には下部ミドル用ウェザストリップ63が設けられる。下部バック用ウェザストリップ73における下部ミドル用ウェザストリップ63との接合部には、該接合部から漏れる水を受け止める受け止め部738aと該受け止め部738aで受け止めた水を排出する排出部738bとを有する水受け部738が設けられる。ミドルルーフパネル24の下端縁部には、下部ミドル用ウェザストリップ63よりも車室内側に、リトラクタブルルーフ2の閉状態において排出部738bの下方に位置して、該排出部738bから排出される水を受け容れてドレンカバー79まで導く車内側排水溝641が形成された排水ガイド64が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉ルーフの排水構造に関し、特に、ルーフ部材のウェザストリップの接合部において漏れる水を排水する構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車室を覆う閉状態と該車室を開放する開状態との間で開閉自在に設けられたルーフ部材を備えた開閉ルーフが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
このようなルーフ部材は複数のルーフ構成部材で構成されており、特許文献1に係るルーフ部材は、車室の上方を覆うフロントルーフパネルと、車室の後方を覆うバックウインドウ(バックパネル)と、該バックウインドウとフロントルーフパネルとの間に配置されたミドルルーフパネルとで構成されている。そして、各ルーフ構成部材間や、各ルーフ構成部材とボディとの間には、ウェザストリップが介設され、ルーフ部材の閉状態において車室内を密閉して風雨から保護するように構成されている。
【0004】
この特許文献1に係る開閉ルーフにおいては、ミドルルーフパネルの下端縁部に該ミドルルーフパネルとボディ又はデッキパネルとの間をシールするミドル用ウェザストリップが、バックウインドウの下端縁部に該バックウインドウとボディ又はデッキパネルとの間をシールするバック用ウェザストリップがそれぞれ延設されている。また、各ウェザストリップは、延設方向に沿って略平行に延びる2本のシール部と該2本のシール部の間に形成された排水溝とを有している。さらに、ミドル用ウェザストリップの排水溝には排水孔が形成され、この排水孔には排水ホースの上流端が接続されている。この排水ホースは車室内側にレイアウトされ、その下流端は車両側排水部に接続されている。
【0005】
このように構成されたミドル用及びバック用ウェザストリップは、ルーフ部材の閉状態において、互いに接合されて一続きのウェザストリップを形成すると共に、各排水溝が連通するように構成されている。こうして、ミドル用及びバック用ウェザストリップは、ルーフ部材の閉状態において、ミドルルーフパネルの下端縁及びバックウインドウの下端縁とボディ及びデッキパネルとの間をシールすると共に、ウェザストリップへ流入する水を排水溝を介して排水するように構成されている。
【特許文献1】特開2003−54265号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記一続きのウェザストリップは、ミドル用ウェザストリップとバック用ウェザストリップとを接合してなる分割構造であるため、ミドル用ウェザストリップとバック用ウェザストリップとの接合部で水が漏れる虞がある。特に、前述の如く、各ウェザストリップに形成された排水溝を介して排水する構成においては、該排水溝を流通する水が接合部上を通ることなるため、該接合部における水漏れが重要となる。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ウェザストリップの接合部における水漏れを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、接合部において漏れる水を受ける水受け部をバック用ウェザストリップに設けると共に、該水受け部で受け止めた水を受け容れると共に該水を車両側排水部まで導く排水ガイドをミドルルーフパネルに設けるようにしたものである。
【0009】
詳しくは、第1の発明は、車室を覆う閉状態と該車室を開放する開状態との間で開閉自在に設けられたルーフ部材と、該ルーフ部材の端縁部に沿って延設されたウェザストリップと、車両側に設けられ、水を車外に排水するための車両側排水部とを備えた開閉ルーフの排水構造が対象である。そして、前記ルーフ部材は、前記車室の上方を覆うフロントルーフパネルと、前記車室の後方を覆うバックパネルと、該バックパネルと前記フロントルーフパネルとの間に配置されたミドルルーフパネルとを含み、前記ウェザストリップは、前記ミドルルーフパネルの下端縁部に沿って延設されたミドル用ウェザストリップと、前記バックパネルの下端縁部に沿って延設されたバック用ウェザストリップとを含み、前記バック用ウェザストリップは、前記ルーフ部材が前記閉状態となるときに、前記ミドル用ウェザストリップに対して下方から当接して接合されて、該ミドル用ウェザストリップと一続きとなり、前記バック用ウェザストリップにおける前記ミドル用ウェザストリップとの接合部には、該接合部から漏れる水を受け止める受け止め部と該受け止め部で受け止めた水を排出する排出部とを有する水受け部が設けられ、前記ミドルルーフパネルの下端縁部には、前記ミドル用ウェザストリップよりも車室内側に、前記ルーフ部材の前記閉状態において前記排出部の下方に位置して、該排出部から排出される水を受け容れて前記車両側排水部まで導く第1排水溝が形成された排水ガイドが設けられているものとする。
【0010】
前記の構成の場合、互いに接合されるミドル用及びバック用ウェザストリップにおいて、下方に位置するバック用ウェザストリップの接合部に前記水受け部を設けることによって、ミドル用及びバック用ウェザストリップの接合部において漏れる水を確実に受け止めることができる。そして、前記ミドルルーフパネルに排水ガイドを設けると共に、該排水ガイドが該水受け部の排出部の下方に位置するように配置することによって、該水受け部で受け止めた水を該排水ガイドに確実に受け渡すことができる。こうすることで、ミドル用及びバック用ウェザストリップの接合部における水漏れを確実に防止することができる。
【0011】
また、水受け部で受け止めた水を、前記特許文献1に開示された排水ホースを用いて車外に排水する構成も考えるが、かかる構成の場合、ルーフ部材の開閉動作に追従して排水ホースが変形するためのスペースをルーフ部材の車室内側の空間に確保する必要がある。つまり、排水ホースを用いる構成では、ルーフ部材の車室内側の空間のレイアウト性が低下してしまう。ところが、本発明によれば、ルーフ部材の開閉動作に伴って、前記水受け部はバックパネルと共に、排水ガイドはミドルルーフパネルと共に移動するため、前記排水ホースのように、ルーフ部材の開閉動作に追従して変形するためのスペースを設ける必要がなく、レイアウト性を低下させることなく、水漏れ防止構造を実現することができる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、前記排水ガイドは、前記ルーフ部材が前記閉状態となるときの、前記排出部の移動軌跡上に位置しており、前記排水ガイド及び前記排出部のうち少なくとも一方は、弾性体で形成されており、前記排出部の先端は、前記ルーフ部材が前記閉状態となるときに前記排水ガイド及び該排出部のうち弾性体で形成されている部材が弾性変形することで、該排水ガイドを乗り越えて前記第1排水溝の上方位置に移動するものとする。
【0013】
前記の構成の場合、ルーフ部材の閉状態において、前記水受け部の排出部が前記排水ガイドの第1排水溝内に入り込んだ状態となるように構成することによって、該排出部から第1排水溝への水の受け渡しを確実に行うことができる。
【0014】
また、前記の構成では、前記排水ガイドがルーフ部材が前記閉状態となるときの排出部の移動軌跡上に位置するように構成すると共に、該排水ガイド及び排出部のうち少なくとも一方を弾性体で形成することによって、ルーフ部材が閉状態となるときに該排水ガイド及び排出部のうち弾性体で形成された部材が弾性変形することで排出部の先端が排水ガイドを乗り越えて第1排水溝の上方位置に移動することができる。こうすることで、バック用ウェザストリップがミドル用ウェザストリップに対して下方から当接する、即ち、ルーフ部材が閉状態となるときにバックパネルがミドルルーフパネルに対して下方から当接する構成であっても、バックパネルと共に移動する排出部の先端を、ミドルルーフパネルと共に移動する排水ガイドの第1排水溝に上方に配置させる、即ち、第1排水溝を排出部の下方に位置させることができ、該排出部から排出される水を第1排水溝で確実に受け容れることができる。
【0015】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記ミドル用ウェザストリップには、その延設方向に沿って延びるミドル用排水溝が形成され、前記バック用ウェザストリップには、その延設方向に沿って延びるバック用排水溝が形成され、前記ミドル用排水溝と前記バック用排水溝とは、前記ルーフ部材が前記閉状態となったときに連通して一続きの第2排水溝を構成するものとする。
【0016】
前記の構成の場合、ルーフ部材の閉状態において、バック用ウェザストリップとミドル用ウェザストリップとで形成される一続きのウェザストリップには、前記バック用排水溝とミドル用排水溝とで第2排水溝が形成され、この第2排水溝を介して排水することができる。このようにウェザストリップに形成された第2排水溝を介して排水する構成においては、ウェザストリップの接合部、即ち第2排水溝の接合部における水漏れが特に問題となるが、前記水受け部及び排水ガイドを設けることによって、前記第2排水溝を流通する水が、バック用ウェザストリップとミドル用ウェザストリップとの接合部から車室内側に漏れることを確実に防止できると共に、車両側排水部から排水することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ミドル用ウェザストリップに対して下方から接合されるバック用ウェザストリップの接合部に該接合部から漏れる水を受け止める水受け部を設けると共に、ミドルルーフパネルに該水受け部で受け止めた水を受け容れて、車両側排水部まで導く第1排水溝が形成された排水ガイドを設けることによって、該接合部における水漏れを確実に防止することができる。そして、該水受け部をバック用ウェザストリップに、排水ガイドをミドルルーフパネルに設けることによって、ルーフ部材が開閉動作するときには、水受け部及び排水ガイドは、それぞれバックパネル及びミドルルーフパネルの開閉動作に伴って、別々に移動するため、接合部に排水ホースを設ける構成のように排水ホースの変形を許容するためのスペースを設ける必要がなく、つまり、ルーフ部材の車室内側におけるレイアウト性を低下させることなく、接合部における水漏れを防止する構成を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0019】
図1,2は、本発明のリトラクタブルルーフが搭載された車両1を示す模式的な側面図である。リトラクタブルルーフ(ルーフ部材)2は、車室の上方を覆うフロントルーフパネル21と、フロントルーフパネル21の後方位置に配置されて車室の後方を覆うバックルーフパネル22と、を含む。バックルーフパネル22はさらに、透明性部材からなるバックウインドウ23(バックパネルに相当する)と、フロントルーフパネル21とバックウインドウ23との間に配置されて、車両1のピラーを構成するミドルルーフパネル24と、を含む。
【0020】
車両1の後部にはトランクルームが形成されており、その開口はトランクリッド11によって開閉可能に閉塞されている。車室13とトランクルームとの間には、前記リトラクタブルルーフ2が格納される格納室12が、上方に開口して形成されている。
【0021】
格納室12の上端開口にはデッキリッド3が配設されている。このデッキリッド3は、リトラクタブルルーフ2が車室13を覆っている状態(後述するルーフ2が使用位置にある状態)において、そのルーフ2の後端縁と格納室12の開口縁との間に位置する。それによってデッキリッド3は、その部分において上方に開口する、格納室12の上端開口を閉塞する。
【0022】
前記リトラクタブルルーフ2は、図1,2では図示を省略するリンク機構によって、車室13を覆う使用位置(図1参照)と、格納室12に格納されて車室13を開放する格納位置(図2参照)との間で位置変更される。また、前記デッキリッド3は、前記リトラクタブルルーフ2の位置変更を行うリンク機構とは別のリンク機構(図示省略)によって、格納室12の上端開口の一部を覆う使用位置(図1,2参照)と、その使用位置に対して後方の斜め上方に退避して格納室12の上端開口を開放する退避位置(図1の一点鎖線参照)との間で位置変更される。
【0023】
ここで、リトラクタブルルーフ2の位置変更動作、つまりリトラクタブルルーフ2が車室13を覆う状態から車室13を開放する状態への切り換え動作について、図1,2を参照しながら簡単に説明する。まず、デッキリッド3が、リンク機構によって、図1に実線で示す使用位置から、一点鎖線で示す退避位置へと移動して、格納室12の上端開口を開放する。これと同時に、リトラクタブルルーフ2のリンク機構が作動することによって、ミドルルーフパネル24が所定の回転軸回りに後方へ回動し(図1において時計回り方向に回動し)、それに伴い、フロントルーフパネル21は後方の斜め上方にスライド移動する。また、バックウインドウ23は、ミドルルーフパネル24に対して相対的に前方に移動しながら下方へ移動する(図1の一点鎖線参照)。
【0024】
リトラクタブルルーフ2のリンク機構の作動がさらに継続することによって、図2に一部破線で示すように、フロントルーフパネル21とミドルルーフパネル24とが上下方向に折り重なった状態で、格納室12内に収容される。このときにバックウインドウ23は、車幅方向に延びる軸に沿って見て(図2に示す状態で見て)、ミドルルーフパネル24と重なって配置される。
【0025】
リトラクタブルルーフ2が格納室12に格納された後に、デッキリッド3が、そのリンク機構の作動によって、退避位置から格納室12の一部を閉塞する使用位置へと移動する。こうして、車室13を開放する状態になる。
【0026】
尚、リトラクタブルルーフ2が車室13を開放した状態から車室13を覆う状態への切り換え動作は、前記とは逆になる。
【0027】
図3,4は、リトラクタブルルーフ2のリンク機構4を示している。このリンク機構4は、リトラクタブルルーフ2の内側において、車幅方向の両側位置それぞれに配置されている。尚、図3は、車幅方向右側に配置されたリンク機構4を車両1の左側方から見た側面図であり、図4は、車幅方向左側に配置されたリンク機構4を分解して示す斜視図である。
【0028】
リンク機構4は基本的に、それぞれ、フロントルーフパネル21に枢支結合されると共に、車体側部材に枢支結合される第1及び第2リンクからなる4節リンクを含んでいる。
【0029】
リンク機構4は、本実施形態では電動式に構成されている。駆動源である駆動モータ41は、車両1に対して固定されるメインブラケット42に、ボルト等によって固定されている。メインブラケット42は、略板状の部材であって、格納室12内に配置されている。これによってメインブラケット42は、リトラクタブルルーフ2が使用位置にある状態で、そのミドルルーフパネル24の下方位置に相当する位置に位置する(図3参照)。
【0030】
前記メインブラケット42の車両外方側には、ロアアーム43が取り付けられている。ロアアーム43は、メインブラケット42とベースプレート410とに挟持されることによって、メインブラケット42に対して車幅方向に延びる回転軸X回りに回転可能に取り付けられる。
【0031】
ロアアーム43は、上下方向に延びるアーム部43aと、該アーム部43aの上端で屈曲して、後述するようにミドルルーフパネル24に対して固定される固定部43bとを、有している。また、アーム部43aの基端部分には、駆動モータ41の駆動軸に取り付けられた駆動ギヤと噛み合う減速ギヤ43cが固定されている。これによってロアアーム43は、駆動モータ41の駆動に伴い、図3に示すようにアーム部43aが起立する位置と、図7に示すようにアーム部43aが後方に倒伏する位置と、の間で、回転軸X回りに回動する。
【0032】
メインブラケット42にはまた、その上端近傍の後端部から後方の斜め上方に向かって延びるウインドウブラケットベース411が固定されている。このウインドウブラケットベース411の後端部には、ウインドウリンクレバー44が枢支結合されている。
【0033】
ウインドウリンクレバー44には、その前端部と後端部とのそれぞれに貫通孔が形成されている。ウインドウリンクレバー44は、その前端部の貫通孔にブッシュが内挿された状態で、ボルト等により前記ウインドウブラケットベース411の後端部に固定されている。これによって、ウインドウリンクレバー44は、車幅方向に延びる軸回りに、ウインドウブラケットベース411に対して相対的に回動する。
【0034】
バックウインドウ23の車幅方向両端部には、ウインドウブラケット412が固定されている。ウインドウリンクレバー44の後端部は、そのウインドウブラケット412の下端部に対して枢支結合されている。つまり、ウインドウリンクレバー44は、その後端部の貫通孔にブッシュが内挿された状態で、ボルト等により前記ウインドウブラケット412の下端部に固定されている。これによって、ウインドウリンクレバー44は、車幅方向に延びる軸回りに、ウインドウブラケット412、換言すればバックウインドウ23に対して相対的に回動する。
【0035】
ウインドウブラケット412の上端部には、前後方向に所定の間隔を開けて2つの取付孔が形成されている。この2つの取付孔に対して、それぞれ第1及び第2リンクレバー45a,45bが枢支結合されている。
【0036】
第1及び第2リンクレバー45a,45bは、互いに略同じ長さのリンクレバーであって、リトラクタブルルーフ2が使用位置にある状態において、それぞれ前方に向かって登り勾配となる姿勢で、車両前後方向に並んで配置されている。この第1及び第2リンクレバー45a,45bはそれぞれ、その上端部と下端部とのそれぞれに貫通孔が形成されている。そして、第1及び第2リンクレバー45a,45bはそれぞれ、その下端部の貫通孔にブッシュが内挿された状態で、ボルト等により前記ウインドウブラケット412の上端部に固定されている。これによって第1及び第2リンクレバー45a,45bは、車幅方向に延びる軸回りに、ウインドウブラケット412に対して相対的に回動する。前記第1及び第2リンクレバー45a,45bは、換言すれば、バックウインドウ23に枢支結合されている。
【0037】
ミドルルーフパネル24の上端部には、後述するように、フロントルーフパネル21に向かって前方に延びるアッパーアーム47が固定されている。前記第1及び第2リンクレバー45a,45bの上端部は、アッパーアーム47に対して枢支結合されている。つまり、第1及び第2リンクレバー45a,45bはそれぞれ、その上端部の貫通孔にブッシュが内挿された状態で、ボルト等により前記アッパーアーム47の後端部に固定されている。これによって、第1及び第2リンクレバー45a,45bは、車幅方向に延びる軸回りに、アッパーアーム47対して相対的に回動する。前記第1及び第2リンクレバー45a,45bは、換言すれば、ミドルルーフパネル24に枢支結合されている。
【0038】
このように第1及び第2リンクレバー45a,45bは、ミドルルーフパネル24とバックウインドウ23とのそれぞれに対して枢支結合されている。このため、第1及び第2リンクレバー45a,45bは、ミドルルーフパネル24とバックウインドウ23との間に介在して、ミドルルーフパネル24とバックウインドウ23との相対的な移動を規制する4節リンク(第2の4節リンク45)として機能する。
【0039】
前記フロントルーフパネル21の後端部近傍には、フロントルーフブラケット413が固定されている。前記アッパーアーム47の前端部は、フロントルーフブラケット413に枢支結合されている。つまり、アッパーアーム47には、その前端部に貫通孔が形成されており、アッパーアーム47は、その貫通孔にブッシュが内挿された状態で、ボルト等によりフロントルーフブラケット413に対して固定されている。これによって、アッパーアーム47は、車幅方向に延びる軸回りに、フロントルーフブラケット413に対して回動する。アッパーアーム47は、換言すれば、フロントルーフパネル21に対して枢支結合されている。
【0040】
前記フロントルーフブラケット413には、アッパーアーム47の枢支点(取付孔)よりも後方位置に、別の取付孔が形成されている。この取付孔には、コントロールリンク48の上端部が枢支結合される。
【0041】
コントロールリンク48は、リトラクタブルルーフ2が使用位置にある状態で、前方に向かって登り勾配となる姿勢で配設されている。コントロールリンク48には、その上端部と下端部とのそれぞれに貫通孔が形成されている。そうして、コントロールリンク48は、その上端部の貫通孔内にブッシュが内挿された状態で、ボルト等により前記フロントルーフブラケット413の取付孔に固定されている。これによってコントロールリンク48は、車幅方向に延びる軸回りに、フロントルーフパネル21に対して相対的に回動する。コントロールリンク48は、換言すれば、フロントルーフパネル21に対して枢支結合されている。
【0042】
前記第1リンクレバー45aには、その中間位置に取付孔が形成されている。コントロールリンク48の下端部は、その取付孔に対して枢支結合されている。つまり、コントロールリンク48は、その下端部の貫通孔内にブッシュが内挿された状態で、ボルト等により、第1リンクレバー45aの中間部分に固定されている。これによってコントロールリンク48は、車幅方向に延びる軸回りに、第1リンクレバー45aに対して相対的に回動する。コントロールリンク48は、換言すれば、第2の4節リンク45に対して枢支結合されている。
【0043】
以上説明したように、ミドルルーフパネル24は、アッパーアーム47を介してフロントルーフパネル21に対して枢支結合されていると共に、ロアアーム43を介してメインブラケット42に枢支結合されている。これによって、ミドルルーフパネル24は、4節リンクを構成する一対のリンクの内の一方のリンクとして機能する。また、この一方のリンクは、ロアアーム43が駆動モータ41によって駆動されることから、4節リンクにおける駆動リンクとして機能する。
【0044】
一方、4節リンクを構成する一対のリンクの内の他方のリンク(従動リンク)は、ウインドウリンクレバー44、バックウインドウ23(ウインドウブラケット412)、第1及び第2リンクレバー45a,45b、並びにコントロールリンク48、を含んで構成される。
【0045】
この構成のリトラクタブルルーフ2は、図3,5〜7に示すように動作して、使用位置から格納位置へ、とその位置を変更する。尚、図3は使用位置にある状態(閉状態)のリトラクタブルルーフ2を、図7は格納位置にある状態(開状態)のリトラクタブルルーフ2を、図5は使用位置から格納位置までの位置変更過程において、使用位置からおおよそ1/3の過程が経過した状態のリトラクタブルルーフ2を、図6は使用位置から格納位置までの位置変更過程において、使用位置からおおよそ2/3の過程が経過した状態のリトラクタブルルーフ2を、それぞれ示している。
【0046】
まず、駆動モータ41が駆動を開始することにより、減速ギヤ43cによってトルクが増幅され、ロアアーム43が、回転軸X回りに、図3における時計回り方向に回動を開始する。その回動に伴い、ミドルルーフパネル24が時計回り方向に回動を開始する(図3,5参照)。
【0047】
ミドルルーフパネル24の回動に伴い、このミドルルーフパネル24(アッパーアーム47)と枢支結合されたフロントルーフパネル21も、後方の斜め上方に移動するが、フロントルーフパネル21にはコントロールリンク48が枢支結合されている、換言すればフロントルーフパネル21とメインブラケット42との間には、4節リンクが構成されているため、フロントルーフパネル21の移動軌跡は、所定の軌跡に規制される。
【0048】
また、ミドルルーフパネル24の回動に伴い、このミドルルーフパネル24とバックウインドウ23とは、第2の4節リンク45によって相対移動を行う。つまり、バックウインドウ23は、後方に回動するミドルルーフパネル24に対して相対的に前方側に移動しながら、後方に回動する。
【0049】
駆動モータ41が駆動を継続することによって、ミドルルーフパネル24は、ほぼ横向きに倒れた姿勢になる(図6参照)。フロントルーフパネル21は、さらに後方に移動してミドルルーフパネル24の上方に位置する。
【0050】
駆動モータ41がさらに駆動を継続することによって、ミドルルーフパネル24は、さらに後方に回動して格納室12内に収容される(図7参照)。これと共に、フロントルーフパネル21が下方に移動し、格納室12内においてミドルルーフパネル24の直上に位置する。こうして、フロントルーフパネル21とミドルルーフパネル24とは、上下に折り重なった状態となる。また、バックウインドウ23は、車幅方向に延びる軸に沿って見てミドルルーフパネル24に対して重なった位置に配置される。
【0051】
尚、リトラクタブルルーフ2は、前記とは逆の動きで、格納位置から使用位置へとその位置を変更する。
【0052】
そして、この構成のリトラクタブルルーフ2においては、図1に示すように、フロントルーフパネル21、ミドルルーフパネル24及びバックウインドウ23にはウエザストリップが設けられている。すなわち、フロントルーフパネル21には、その前端縁部から側端縁部に亘ってフロントヘッダ14及びサイドウインドウ15との間をシールするためのフロント用ウェザストリップ5が設けられている。また、ミドルルーフパネル24には、その前端縁部から側端縁部、下端縁部に亘ってフロントルーフパネル21、サイドウインドウ15及びデッキリッド3との間をシールするミドル用ウェザストリップ6が設けられている。さらに、バックウインドウ23には、その全周縁部に亘ってミドルルーフパネル24及びデッキリッド3との間をシールするバック用ウェザストリップ7が設けられている。さらにまた、車両1のボディにおける、ミドルルーフパネル24の前下端縁部との当接部には、ミドルルーフパネル24とボディとの間をシールするキャブサイドウェザストリップ78が設けられている。尚、キャブサイドウェザストリップ78には排水孔(図示省略)が形成されていると共に、キャブサイドウェザストリップ78の下方位置であってリアフェンダ16の車内側には該キャブサイドウェザストリップ78の排水孔から落下する水を受けて車外に排水するドレンカバー79(車両側排水部に相当する)が設けられている。
【0053】
以下に、前記ミドル用ウェザストリップ6及びバック用ウェザストリップ7についてさらに詳しく説明する。
【0054】
前記ミドル用ウェザストリップ6は、図8に示すように、フロントルーフパネル21との間をシールする上部ミドル用ウェザストリップ61と、左右のサイドウインドウ15(図8では右側のみ図示)との間をシールする側部ミドル用ウェザストリップ62(図8では右側のみ図示)と、デッキリッド3との間をシールする下部ミドル用ウェザストリップ63とを含んでいる。
【0055】
前記バック用ウェザストリップ7は、ミドルルーフパネル24との間をシールする上部バック用ウェザストリップ71及び側部バック用ウェザストリップ72,72と、デッキリッド3との間をシールする下部バック用ウェザストリップ73とを含んでいる。
【0056】
そして、リトラクタブルルーフ2の閉状態において、前記下部ミドル用ウェザストリップ63と下部バック用ウェザストリップ73とは、図9(デッキリッド3を省略している)に示すように、接合されて一続きの下端縁ウェザストリップを構成する。リトラクタブルルーフ2が閉状態となるときには、前記バックウインドウ23がミドルルーフパネル24に対して車室内側から移動して閉状態となるため、下部バック用ウェザストリップ73は、各下部ミドル用ウェザストリップ63(図9では右側のみ図示)に対して車室内側、即ち下方から当接している。
【0057】
前記バックウインドウ23は、図10に示すように、ウインドウ部材23aと該ウインドウ部材23aの周縁部に取り付けられたサポートフレーム23bとを有しており、該サポートフレーム23bの下端縁部に下部バック用ウェザストリップ73が取り付けられている。詳しくは、下部バック用ウェザストリップ73は、サポートフレーム23bの下端縁部に沿って平行に延びる2本の中空状のシール部731,732と、該シール部731,732間に形成されたバック用排水溝733と、外側のシール部732の下端から該バック用排水溝733の底部と平行にサポートフレーム23bの内方に折り返されて延びる折返し部734と、内側のシール部731の下端からサポートフレーム23bの内方に延びる延設部735とを有する。この下部バック用ウェザストリップ73はゴム部材で形成されている。そして、下部バック用ウェザストリップ73は、延設部735をウインドウ部材23aとサポートフレーム23bとの間に挿入し且つ、前記バック用排水溝733の底部と折返し部734とでサポートフレーム23bの下端縁部を挟み込むようにしてサポートフレーム23bの車室外側の面に取り付けられる。
【0058】
この下部バック用ウェザストリップ73の端部の構成についてさらに詳しく説明する。尚、下部バック用ウェザストリップ73の左右の端部は構成が同じであるため、図11を参照して、右側の端部についてのみ説明する。下部バック用ウェザストリップ73の端部においては、内側のシール部731と外側のシール部732とがバック用排水溝733の上方で連結されている。そして、この連結部には前記下部ミドル用ウェザストリップ63が接合される接合面736が形成されており、接合面736にはバック用排水溝733と連通する連通孔737が貫通形成されている。この接合面736は、下部ミドル用ウェザストリップ63側の端部に向かって車室外側から内側へ傾斜する傾斜面となっている。
【0059】
また、下部バック用ウェザストリップ73の端部において、内側のシール部731には側部バック用ウェザストリップ72が連結されている(図11では、右側のみ図示)。側部バック用ウェザストリップ72は、バックウインドウ23の側端縁部に沿って平行に延びる2本のシール部721,722と、該シール部721,722の間に形成された側部排水溝723とを有する。また、側部バック用ウェザストリップ72は、図示は省略するが、下部バック用ウェザストリップ73と同様の取付構造によってバックウインドウ23に取り付けられている。そして、この側部バック用ウェザストリップ72の下端部は下部バック用ウェザストリップ73の内側のシール部731に連結され、前記側部排水溝723を流れてきた水は、下部バック用ウェザストリップ73のシール部731を乗り越えてバック用排水溝733に流れ込むように構成されている。
【0060】
さらに、下部バック用ウェザストリップ73は、接合面736よりも下部ミドル用ウェザストリップ63側の部分には、該接合面736を囲むようにして水受け部738が形成されている。この水受け部738は、詳しくは後述するが、下部ミドル用ウェザストリップ63と下部バック用ウェザストリップ73との接合部で漏れる水を受け止めて、受け止めた水を後述する排水ガイド64へ排出するためのものであって、該接合部で漏れる水を受け止める受け止め部738aと、受け止め部738aで受け止めた水を排出する排出部738bとを有する。前記受け止め部738aは、側部バック用ウェザストリップ72の外側のシール部722の下端部から接合面736の下部ミドル用ウェザストリップ63側を囲むように延び且つ、接合面736よりも車室内側に陥没した溝形状に形成されている。また、前記排出部738bは、受け止め部738aの下端から連続してさらに外方に突出して形成されている。
【0061】
一方、前記ミドルルーフパネル24は、図12に示すように、アウタパネル24aとインナパネル24bとを有しており、アウタパネル24aの下端縁部に前記下部ミドル用ウェザストリップ63が取り付けられている。詳しくは、下部ミドル用ウェザストリップ63は、アウタパネル24aの下端縁部に沿って延びる中空状のシール部631と、該シール部631よりも外側に位置し且つ該シール部631と平行に延びるリップ部632と、該シール部631とリップ部632との間に形成されたミドル用排水溝633とを有する。この下部ミドル用ウェザストリップ63はゴム部材で形成されている。そして、下部ミドル用ウェザストリップ63は、前記ミドル用排水溝633の底部をアウタパネル24aの下端縁部の車室外側の面に貼り付けることで、アウタパネル24aに取り付けられている。また、下部ミドル用ウェザストリップ63の車両後側、即ちバックウインドウ側の端部においては、図9に示すように、シール部631及びリップ部632がミドル用排水溝633の底部よりもバックウインドウ側に突出している。そして、前記ミドル用排水溝633は、リトラクタブルルーフ2の閉状態において、下部バック用ウェザストリップ73のバック用排水溝733と連通孔737を介して連通して、一続きの車外側排水溝(第2排水溝に相当する)を構成する。
【0062】
さらに、下部ミドル用ウェザストリップ63には、図12,13に示すように、排水ガイド64が一体形成されている。この排水ガイド64は、リップ部632の下端部から下方に延びた後、車室内側に湾曲し、さらに上方に湾曲した断面J字形状をしている。そして、その内部には上方に開口する車内側排水溝641(第1排水溝に相当する)が形成されている。この排水ガイド64は下部ミドル用ウェザストリップ63と同様にゴム部材で形成されている。このように構成された排水ガイド64は、ミドルルーフパネル24の下端縁部の車室内側において該下端縁部に沿って延設されていて、後端部から前端部へ向かって下り勾配となっている。そして、排水ガイド64の前端部は、ドレンカバー79の上方に位置しており、排水ガイド64の車内側排水溝641を流通する水は前端部から排水され、ドレンカバー79内に落下するように構成されている。
【0063】
そして、リトラクタブルルーフ2の閉状態においては、下部バック用ウェザストリップ73の水受け部738の排出部738bが、排水ガイド64の上流端部(後端部)に形成された受け容れ部642内に入り込んだ状態となっている。すなわち、該排出部738bは、受け容れ部642において車内側排水溝641の上方位置しており、排出部738bから排出される水が車内側排水溝641内へ流入するように構成されている。
【0064】
このように構成されたリトラクタブルルーフ2の排水構造、特に車両後部の排水構造による排水について説明すると、バックウインドウ23の表面を伝う水及びミドルルーフパネル24の表面を伝う水はそれぞれ下部バック用ウェザストリップ73のバック用排水溝733及び下部ミドル用ウェザストリップ63のミドル用排水溝633に流入する。また、各側部バック用ウェザストリップ72の側部排水溝723を流通する水もバック用排水溝733に流入する。そして、バック用排水溝733に流入した水は、バック用排水溝733の左右の両端部から各連通孔737を通じてミドル用排水溝633へ流入する。ミドル用排水溝633へ流入した水は、該ミドル用排水溝633の前部まで流れ、該前部に形成された連通孔(図示省略)から排水ガイド64の車内側排水溝641内へ流入し、該車内側排水溝641からドレンカバー79へ落下し、該ドレンカバー79を介して車外に排水される。また、ミドル用排水溝633を流通する水の一部は、連通孔から排水ガイド64へ流入せずにミドル用排水溝633から溢れ出てリアフェンダ16の表面を伝って車外へ排水される。
【0065】
このとき、下部ミドル用ウェザストリップ63と下部バック用ウェザストリップ73との接合部において、バック用排水溝733を流通する水がミドル用排水溝633へ上手く流入せず、該下部ミドル用ウェザストリップ63と下部バック用ウェザストリップ73との接合部から漏れる場合がある。こうして漏れる水は、接合部において下側に位置する下部バック用ウェザストリップ73の接合面736を下方に伝っていくが、この接合面736の周囲には水受け部738が設けられているため、接合面736を伝う水は水受け部738の受け止め部738aによって受け止められる。そして、受け止め部738aで受け止められた水は、排出部738bから排出されて、排水ガイド64の車内側排水溝641内へ流入する。このとき、排出部738bの先端は、排水ガイド64の車内側排水溝641の上方に位置するため、該排出部738bから排出された水は車内側排水溝641へ確実に流入する。車内側排水溝641へ流入した水は、該車内側排水溝641の勾配に従ってその前端部まで流れていき、車内側排水溝641の前端部からドレンカバー79へ落下する。こうして、ドレンカバー79へ排出された水は、該ドレンカバー79内を流通して車外へ排水される。
【0066】
つまり、リトラクタブルルーフ2の車両後部では、主として、下部バック用ウェザストリップ73及び下部ミドル用ウェザストリップ63に形成された車外側排水溝633,733を介して排水されると共に、下部バック用ウェザストリップ73と下部ミドル用ウェザストリップ63との接合部において漏れた水は、水受け部738及び排水ガイド64の車内側排水溝641を介して排水される。
【0067】
ところで、前記水受け部738の排出部738bは、リトラクタブルルーフ2の閉状態において排水ガイド64の受け容れ部642内に入り込んでいて、車内側排水溝641の上方に位置する。ところが、水受け部738は下部バック用ウェザストリップ73に設けられ、排水ガイド64は下部ミドル用ウェザストリップ63に設けられているため、リトラクタブルルーフ2が開状態から閉状態になるときには、水受け部738が排水ガイド64に対して下方から移動してくることになる。つまり、リトラクタブルルーフ2が閉状態となるときに、水受け部738の排出部738bは、排水ガイド64の受け容れ部642と干渉し、該受け容れ部642を乗り越えなければ、車内側排水溝641の上方位置に位置することができない。
【0068】
そこで、本実施形態では、水受け部738の排出部738bと排水ガイド64の受け容れ部642とを弾性体であるゴム部材によって形成している。こうすることで、排出部738bは、受け容れ部642を乗り越えて車内側排水溝641の上方位置に位置することができる。詳しくは、図14に示すように、排水ガイド64の受け容れ部642は、リトラクタブルルーフ2が閉状態となるときの排出部738bの移動軌跡T上に位置している。そのため、リトラクタブルルーフ2が閉状態となるとき、即ち、バックウインドウ23がミドルルーフパネル24に向かって斜め上方に移動するときに、排出部738bが受け容れ部642の車室内側壁部に下方又は車室内側から当接する。そして、バックウインドウ23がミドルルーフパネル24に向かってさらに移動すると、該排出部738bと受け容れ部642の車室内側壁部は互いに弾性変形する(図中の一点鎖線参照)。その後、該排出部738bが受け容れ部642の車室内側壁部を乗り越えると、排出部738bと受け容れ部642の車室内側壁部とは元の状態に戻り、該排出部738bは、受け容れ部642において車内側排水溝641の上方位置に位置することになる(図中の実線参照)。
【0069】
一方、リトラクタブルルーフ2が閉状態から開状態となるときには、前記と同様に、排出部738bと受け容れ部642とが弾性変形することで、排出部738bが受け容れ部642を乗り越えて、排水ガイド64よりも下方へ移動することができる。
【0070】
したがって、本実施形態によれば、下部バック用ウェザストリップ73と下部ミドル用ウェザストリップ63とが接合され且つ、下部バック用ウェザストリップ73に形成されたバック用排水溝733と下部ミドル用ウェザストリップ63に形成されたミドル用排水溝633とで構成される車外側排水溝を介して水を排水する構成において、下部バック用ウェザストリップ73の接合部に水受け部738を設けると共に、ミドルルーフパネル24の下端縁部に沿って下部ミドル用ウェザストリップ63と一体に排水ガイド64を設けることによって、下部バック用ウェザストリップ73と下部ミドル用ウェザストリップ63との接合部において漏れる水を該水受け部738で受け止めると共に、受け止めた水を排水ガイド64の車内側排水溝641に受け渡し、該車内側排水溝641を介して排水することができる。その結果、ウェザストリップの接合部における水漏れを防止することができる。
【0071】
また、ウェザストリップの接合部で漏れる水は該接合部において下方に位置するウェザストリップの接合面を伝って漏れるが、前記実施形態では、下部ミドル用ウェザストリップ63及び下部バック用ウェザストリップ73のうち、接合部において下方に位置する下部バック用ウェザストリップ73に水受け部738を設けることによって、該接合部で漏れる水を確実に受け止めることができる。
【0072】
さらに、水受け部738の排出部738bは、リトラクタブルルーフ2の閉状態において、排水ガイド64の車内側排水溝641の上方に位置するため、排出部738bから排出する水を車内側排水溝641へ確実に受け渡すことができる。
【0073】
また、水受け部738及び排水ガイド64はそれぞれ、バックウインドウ23及びミドルルーフパネル24の車室内側、即ち格納室12内に設けられているが、これらはそれぞれバックウインドウ23の下端縁部及びミドルルーフパネル24の下端縁部に設けられているため、格納室12内への突出量が少なく、水受け部738及び排水ガイド64を設ける構成であっても、格納室12内のスペースを占有して該格納室12内のレイアウト性を低下させることを防止することができる。
【0074】
さらに、水受け部738と排水ガイド64とは、リトラクタブルルーフ2の閉状態においては、排出部738bが受け容れ部642内に入り込んで、連続した排水経路を形成した状態となっているが、リトラクタブルルーフ2の閉状態以外のとき、即ち、リトラクタブルルーフ2が開状態のときや、開閉動作中のときには、水受け部738はバックウインドウ23と共に、排水ガイド64はミドルルーフパネル24と共に移動するため、例えば下部バック用ウェザストリップ73の接合部とドレンカバー79とを排水ホースで接続する構成のように、リトラクタブルルーフ2の開閉動作に伴って排水ホースが変形するためのスペースを確保する必要がなく、格納室12内のレイアウト性を低下させることを防止することができる。
【0075】
また、リトラクタブルルーフ2が閉状態となるときに下部バック用ウェザストリップ73が下部ミドル用ウェザストリップ63に対して下方から当接する一方、リトラクタブルルーフ2が閉状態のときに下部バック用ウェザストリップ73に設けられた水受け部738の排出部738bが下部ミドル用ウェザストリップ63に設けられた排水ガイド64の車内側排水溝641の上方に位置する構成においては、リトラクタブルルーフが閉状態となるときに排出部738bが排水ガイド64を乗り越える必要がある。そこで、本実施形態では、排出部738b及び排水ガイド64の受け容れ部642をゴム部材で形成することによって、リトラクタブルルーフ2の閉動作時に、排出部738bが排水ガイド64の受け容れ部642と干渉すると、該排出部738b及び受け容れ部642が弾性変形するため、排出部738bは排水ガイド64を容易に乗り越えることができる。こうして、リトラクタブルルーフ2の閉状態において下部バック用ウェザストリップ73が下部ミドル用ウェザストリップ63の下方から当接する構成であっても、排出部738bを車内側排水溝641の上方位置に配置させることができる。
【0076】
《その他の実施形態》
本発明は、前記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0077】
すなわち、前記実施形態では、水受け部738を下部バック用ウェザストリップ73の接合面736の周囲を囲む溝形状に形成したが、これに限られるものではない。例えば、下部バック用ウェザストリップ73の下部ミドル用ウェザストリップ63側の端部に、車室内側から取り付けられた受け皿部材で水受け部を構成してもよく、下部バック用ウェザストリップ73の接合面736を伝って漏れる水を受け止めることができる構成であれば、任意の構成を採用することができる。
【0078】
また、前記実施形態では、排水ガイド64と下部ミドル用ウェザストリップ63とを一体形成しているが、これに限られるものではない。つまり、排水ガイド64と下部ミドル用ウェザストリップ63とを別体で形成してもよい。かかる場合、排水ガイド64をミドルルーフパネル24の下端縁部の車室内側に設けるようにすればよい。
【0079】
また、前記排水ガイド64は全てゴム製であるが、これに限られるものではない。すなわち、排水ガイド64のうち、水受け部738の排出部738bを受け容れる受け容れ部642がゴム製又はその他の弾性体で構成されていれば、他の部分は非弾性体で形成されていてもよい。このことは、水受け部738についても同様で、排出部738bが弾性体で形成されていれば、他の部分は非弾性体で形成されていてもよい。
【0080】
さらに、前記排出部738bと受け容れ部642とは両方が弾性体で形成されているが、何れか一方が弾性体で形成されていればよい。
【0081】
また、前記実施形態では、弾性体としてゴム部材を採用しているが、これに限られるものではない。つまり、リトラクタブルルーフ2が閉状態となるときに、排出部738bが排水ガイド64を乗り越えることができる程度に弾性変形する部材であれば、樹脂であっても金属であっても任意の材料を採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
以上説明したように、本発明は、開閉ルーフの排水構造に関し、特に、ルーフ部材のウェザストリップの接合部において漏れる水を排水する構造について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明に係るリトラクタブルルーフを使用位置にした状態の車両の側面図である。
【図2】リトラクタブルルーフを格納位置にした状態の車両の側面図である。
【図3】使用位置におけるリトラクタブルルーフのリンク機構を示す側面図である。
【図4】リンク機構の分解斜視図である。
【図5】使用位置と格納位置との間の位置におけるリトラクタブルルーフのリンク機構を示す側面図である。
【図6】使用位置と格納位置との間の位置におけるリトラクタブルルーフのリンク機構を示す側面図である。
【図7】格納位置におけるリトラクタブルルーフのリンク機構を示す側面図である。
【図8】リトラクタブルルーフを使用位置にした状態の車両の斜め後方から見た斜視図である。
【図9】バックウインドウ及びミドルルーフパネルの下端縁ウェザストリップをデッキリッドを省略して斜め後方から見た斜視図である。
【図10】図9のX−X線における断面図である。
【図11】下部バック用ウェザストリップの端部を車室外側から見た拡大斜視図である。
【図12】図9のXII−XII線における断面図である。
【図13】リトラクタブルルーフを使用位置にした状態の車両の車室内から見た斜視図である。
【図14】図9のXIV−XIV線における断面図である。
【符号の説明】
【0084】
13 車室
2 リトラクタブルルーフ(ルーフ部材)
21 フロントルーフパネル
23 バックウインドウ(バックパネル)
24 ミドルルーフパネル
63 下部ミドル用ウェザストリップ(ミドル用ウェザストリップ)
633 ミドル用排水溝(第2排水溝)
64 排水ガイド
641 車内側排水溝(第1排水溝)
73 下部バック用ウェザストリップ(バック用ウェザストリップ)
733 バック用排水溝(第2排水溝)
738 水受け部
738a 受け止め部
738b 排出部
79 ドレンカバー(車両側排水部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室を覆う閉状態と該車室を開放する開状態との間で開閉自在に設けられたルーフ部材と、該ルーフ部材の端縁部に沿って延設されたウェザストリップと、車両側に設けられ、水を車外に排水するための車両側排水部とを備えた開閉ルーフの排水構造であって、
前記ルーフ部材は、前記車室の上方を覆うフロントルーフパネルと、前記車室の後方を覆うバックパネルと、該バックパネルと前記フロントルーフパネルとの間に配置されたミドルルーフパネルとを含み、
前記ウェザストリップは、前記ミドルルーフパネルの下端縁部に沿って延設されたミドル用ウェザストリップと、前記バックパネルの下端縁部に沿って延設されたバック用ウェザストリップとを含み、
前記バック用ウェザストリップは、前記ルーフ部材が前記閉状態となるときに、前記ミドル用ウェザストリップに対して下方から当接して接合されて、該ミドル用ウェザストリップと一続きとなり、
前記バック用ウェザストリップにおける前記ミドル用ウェザストリップとの接合部には、該接合部から漏れる水を受け止める受け止め部と該受け止め部で受け止めた水を排出する排出部とを有する水受け部が設けられ、
前記ミドルルーフパネルの下端縁部には、前記ミドル用ウェザストリップよりも車室内側に、前記ルーフ部材の前記閉状態において前記排出部の下方に位置して、該排出部から排出される水を受け容れて前記車両側排水部まで導く第1排水溝が形成された排水ガイドが設けられていることを特徴とする開閉ルーフの排水構造。
【請求項2】
請求項1に記載の開閉ルーフの排水構造において、
前記排水ガイドは、前記ルーフ部材が前記閉状態となるときの、前記排出部の移動軌跡上に位置しており、
前記排水ガイド及び前記排出部のうち少なくとも一方は、弾性体で形成されており、
前記排出部の先端は、前記ルーフ部材が前記閉状態となるときに前記排水ガイド及び該排出部のうち弾性体で形成されている部材が弾性変形することで、該排水ガイドを乗り越えて前記第1排水溝の上方位置に移動することを特徴とする開閉ルーフの排水構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の開閉ルーフの排水構造において、
前記ミドル用ウェザストリップには、その延設方向に沿って延びるミドル用排水溝が形成され、
前記バック用ウェザストリップには、その延設方向に沿って延びるバック用排水溝が形成され、
前記ミドル用排水溝と前記バック用排水溝とは、前記ルーフ部材が前記閉状態となったときに連通して一続きの第2排水溝を構成することを特徴とする開閉ルーフの排水構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−331679(P2007−331679A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−168275(P2006−168275)
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【出願人】(000108889)ベバスト ジャパン株式会社 (36)
【出願人】(000196107)西川ゴム工業株式会社 (454)
【Fターム(参考)】