説明

開閉器

【課題】可動コンタクトとしてローラコンタクトを用いる開閉器において、固定コンタクトとローラコンタクトとの間でスリップが生じるのを防いで安定な動作を行なわせる。
【解決手段】中心軸線をローラ支持軸500の軸線方向に向けて並べて配置されて、互いに独立に回転するように支持された複数の導電性のローラ400によりローラコンタクト4を構成して、ローラコンタクト4が固定コンタクト2の電極面2a上を転動する際に、ローラコンタクト4を構成する各ローラ400が、ローラコンタクトの回動中心からの距離に応じて、異なる回転速度で回転することができるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローラコンタクトを可動コンタクトとして用いる開閉器に関し、特にタップ切換装置の補助開閉器として用いるのに好適な開閉器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ローラコンタクトを可動コンタクトとして用いた開閉器が知られている。例えば負荷時タップ切換器においては、タップ巻線の奇数タップを選択している状態と偶数タップを選択している状態とを切り換える切換開閉器に設ける補助開閉器として、ローラコンタクトを可動コンタクトとして用いた開閉器が採用されることがある。
【0003】
負荷時タップ切換装置に設けられる切換開閉器は、例えば図6に示すように構成される。同図において、Wt はタップt1,t2,t3,…を有する変圧器のタップ巻線、TC1及びTC2は奇数タップt1,t3,…及び偶数タップt2,t4 ,…をそれぞれ選択する奇数タップ選択器及び偶数タップ選択器である。またSWはタップ選択器TC1及びTC2にそれぞれ接続された固定コンタクトS1及びS2と、固定コンタクトS1及びS2に選択的に接触する可動コンタクトS0とからなる補助開閉器、V1は補助開閉器の可動コンタクトS0に一端が接続され、他端が中性点端子Nに接続された第1の真空バルブ、Rはタップ選択器TC1に一端が接続された限流抵抗器、V2は限流抵抗器Rの他端と中性点端子Nとの間に接続された第2の真空バルブであり、補助開閉器SWと、限流抵抗器Rと、第1及び第2の真空バルブV1及びV2とにより切換開閉器が構成されている。この種の切換開閉器において、補助開閉器SWとして、可動コンタクトS0をローラコンタクトにより構成した開閉器が用いられることがある。
【0004】
なお図6に示された切換開閉器は次のように動作する。図6に示された状態では、補助開閉器SWの可動コンタクトS0が固定コンタクトS1側(奇数タップ側)に切り換えられ、第1の真空バルブV1がオン状態にされて、奇数タップ(図示の例ではタップt1)が選択されている。この状態から偶数タップt2を選択する状態に切り換える場合には、先ず第2の真空バルブV2をオン状態にし、第1の真空バルブV1をオフ状態にして、タップt1を通して流れる電流が限流抵抗器Rを通して流れる状態に切り換える。次いで補助開閉器SWの可動コンタクトS0を固定コンタクトS2側(偶数タップ側)に切り換えた後、第1の真空バルブV1をオン状態にして、タップt1−タップt2−固定コンタクトS2−可動コンタクトS0−第1の真空バルブV1−第2の真空バルブV2−限流抵抗R−タップt1の閉回路を循環電流が流れる状態にする。その後、第2の真空バルブV2をオフ状態にして、偶数タップt2を通して主回路電流が流れる状態に切り換える。この種の切換開閉器は周知であるので、更に詳細な説明は省略する。
【0005】
可動コンタクトとしてローラコンタクトを用いた開閉器は、例えば図5に示すように構成される。図5において、1は回転自在に支持されて一方向及び他方向に回転するように操作される回転操作軸、2は回転操作軸1の軸線方向に沿う方向に向いた電極面2aを有して、回転操作軸1の中心軸線を中心とする円弧に沿って、回転操作軸の中心軸線と直交する平面上に並べて配置された複数の板状の固定コンタクト、3は回転操作軸1に後端部が取り付けられて回転操作軸1の回転に伴って回動する導電性のアーム、4′は回転操作軸1の軸線に対して直角な方向に中心軸線を向けてアームの先端に設けられた導電性のローラ支持軸5に回転自在に支持されてアームの回動に伴って各固定コンタクトの電極面上を転動するローラコンタクトである。
【0006】
図示の例では、アーム3が、回転操作軸1に後端部が取り付けられた第1のアーム3Aと、第1のアーム3Aの先端に回動自在に支持された第2のアーム3Bとからなっている。第2のアーム3Bは一対設けられていて、該一対の第2のアーム3B,3Bが、第1のアーム3Aを間にして回転操作軸1の軸線方向に並ぶように配置されている。一対の第2のアーム3B,3Bは第1のアーム3Aに回動自在に支持され、第2のアーム3B,3Bの先端にそれぞれ一対のローラ支持軸5,5が一体に設けられている。
【0007】
ローラコンタクト4′は一対設けられて、該一対のローラコンタクト4′,4′が一対のローラ支持軸5,5にそれぞれ支持されている。一対のローラコンタクト4′、4′は、円柱状に形成されて、各固定コンタクト2を間に挟む状態で各固定コンタクトの表裏両面の電極面2a,2aに接触するように設けられている。また一対のローラコンタクト4′,4′を互いに接近する方向に付勢して、一対のローラコンタクト4′,4′と各固定コンタクトの電極面との間に接触圧力を付与する接圧付与機構8,8が設けられている。図示してないが、第1のアーム3Aには可撓性を有する集電導体が接続されていて、ローラコンタクト4′がローラ支持軸5と第2のアーム3Bと該集電導体を通して外部の回路(図5の例では真空バルブV1)に接続される。
【0008】
図5に示したように、ローラコンタクト4′を円柱状に形成した場合には、ローラコンタクト4′が円弧状の軌跡に沿って回動しつつ転動する際に、ローラコンタクト4′の各部に必要とされる転動量(ローラの周方向の変位量)がローラコンタクトの回動中心からローラコンタクトの各部までの距離に応じて異なるにもかかわらず、ローラコンタクト4′の周速がローラコンタクト4′の軸線方向の各部で同じになるため、ローラコンタクト4′と固定コンタクト2の電極面2aとの間でスリップが生じて、ローラコンタクト4′と固定コンタクト2の電極面との間に摩擦力が働き、ローラコンタクト4′を円滑に転動させることができなかったり、電極面2aの摩耗が早期に進行する等の問題が生じる。
【0009】
そこで、特許文献1に示されているように、ローラコンタクト4′を截頭円錐形の形状に形成して、その小径側の端部をローラコンタクト4′の回動中心側に向けて配置することにより、ローラコンタクト4′の軸線方向の各部の転動量を等しくして、上記の問題を解決した開閉器が提案された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−186719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に示された開閉器のように、ローラコンタクト4′を截頭円錐形の形状に形成すれば、ローラコンタクト4′の軸線方向の各部の転動量を等しくすることができるため、ローラコンタクト4′と固定コンタクト2の電極面2aとの間でスリップが生じるのを防ぐことができ、ローラコンタクト4′を円滑に転動させることが可能になる。またローラコンタクトがスリップするのを防ぐことにより、電極面の摩耗を抑制することができる。
【0012】
しかしながら、截頭円錐形のローラコンタクトはその加工が面倒であるため、製造コストが高くなるのを避けられない。またローラコンタクトを截頭円錐形としても、その加工精度が悪いと、軸線方向の各部の転動量を等しくすることができなくなるため、ローラコンタクトと固定コンタクトの電極面との間でスリップが生じるのを防ぐことができない。従って、特許文献1に示された構成により、ローラコンタクトと固定コンタクトの電極面との間でスリップが生じるのを防いで、安定な切換動作を行なわせるためには、ローラコンタクトを製作する際に加工精度の管理を厳密に行うことが必要であり、製造コストが高くなるのを避けられない。
【0013】
またローラコンタクトを截頭円錐形とした場合には、コーラコンタクトの回動中心と固定コンタクトとの間の距離が異なる毎にローラコンタクトの形状を異ならせる必要があるため、開閉器の型式が異なる毎に異なるローラコンタクトを用意することが必要になり、ローラコンタクトの標準化を図ってコストの低減を図ることができない。
【0014】
本発明の目的は、面倒な機械加工を必要とせずにローラコンタクトを構成できるようにするとともに、ローラコンタクトの回動中心と固定コンタクトとの間の距離が異なる場合でも、同じローラコンタクトを共用できるようにして、コストの上昇を招くことなく、安定な動作を行なうことができるようにした開閉器を提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的は、コストの上昇を招くことなく、安定な動作を行なうことができるようにするとともに、ローラコンタクトを固定コンタクトの電極面に多点で接触させる構造とすることにより、電流通電容量を増大させることができるようにした開閉器を提供することにある。
【0016】
本発明の更に他の目的は、コストの上昇を招くことなく、安定な動作を行なうことができるようにするとともに、固定コンタクトの電極面に凹凸がある場合でもローラコンタクトを容易に追従させて、安定した通電を行わせることができるようにした開閉器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、回転自在に支持されて一方向及び他方向に回転するように操作される回転操作軸と、回転操作軸の軸線方向に沿う方向に向いた電極面を有して回転操作軸の中心軸線を中心とする円弧に沿って、回転操作軸の中心軸線と直交する平面上に並べて配置された複数の板状の固定コンタクトと、回転操作軸に後端部が取り付けられて回転操作軸の回転に伴って回動する導電性のアームと、回転操作軸の軸線に対して直角な方向に中心軸線を向けた状態で前記アームの先端に回転自在に支持されてアームの回動に伴って各固定コンタクトの電極面上を転動するローラコンタクトとを備えて、回転操作軸の回転に伴ってローラコンタクトが転動する固定コンタクトを切り換える開閉器を対象とする。
【0018】
本発明においては、中心軸線を回転操作軸の軸線に対して直角な方向に向けた状態で並べて配置されて、アームにローラ支持軸を介して回転自在に支持された複数の導電性のローラにより、ローラコンタクトを構成した。上記複数のローラは、互いに独立に回転し得るように設けられる。
【0019】
上記のように、ローラコンタクトを、軸線方向に並べて配置されて互いに独立に回転する複数のローラにより構成すると、複数のローラが、ローラコンタクトの回動中心からの距離に応じて異なる回転速度で回転して、固定コンタクトの電極面上を転動するので、ローラコンタクトと固定コンタクトとの間でスリップが生じるのを防いで、常に安定な切換動作を行なわせることができる。
【0020】
また上記のように構成すると、ローラコンタクトを截頭円錐形に形成する場合のように面倒な機械加工を必要としない。またローラコンタクトの回動中心と固定コンタクトとの間の距離が異なる場合でも、ローラコンタクトを構成する各ローラの径は異ならせる必要がないため、回転操作軸と固定コンタクトとの間の距離が異なる種々の型式の開閉器に対して部品の共用化を図って製造コストの低減を図ることができる。
【0021】
また上記のように構成すると、ローラコンタクトを固定コンタクトの電極面に多点で接触させることができるため、電流通電容量の増大を図ることができ、通電容量が同じである場合には、ローラコンタクトの小形化を図ることができる。
【0022】
本発明の好ましい態様では、各固定コンタクトが、回転操作軸の軸線方向に向いた電極面を表裏両面に有し、アームは、回転操作軸に後端部が取り付けられた第1のアームと、該第1のアームを間にして回転操作軸の軸線方向に並ぶように設けられて、回転操作軸の軸線と平行な方向に延びる回動軸により第1のアームの先端に回動自在に支持された一対の第2のアームとからなっている。この場合、ローラコンタクトは一対設けられ、該一対のローラコンタクトがそれぞれ一対の第2のアームの先端にローラ支持軸を介して支持されて、一対のローラコンタクトが各固定コンタクトを間に挟む状態で各固定コンタクトの表裏両面に接触するように構成される。本態様ではまた、一対のローラコンタクトを互いに接近する方向に付勢して、一対のローラコンタクトと各固定コンタクトの電極面との間に接触圧力を付与する接圧付与機構が設けられる。
【0023】
上記のように構成すると、ローラコンタクトと固定コンタクトとの接触面積を増大させることができるため、電流容量を増大させることができる。また各ローラコンタクトと固定コンタクトとの接触圧力を十分に確保することができるため、ロータコンタクトと固定コンタクトとの間の接触抵抗を少なくすることができる。
【0024】
本発明の他の好ましい態様では、ローラコンタクトを構成する各ローラと各ローラを支持するローラ支持軸との間に導電性のバネが挿入されて、各ローラが該バネを介してローラ支持軸に接触させられ、ローラコンタクトを構成する各ローラが回転操作軸の軸線方向に変位し得るように構成される。
【0025】
上記のように構成すると、各ローラが回転操作軸の軸線方向に個別に変位することが許容されるため、ローラの追従性を良好にすることができる。
【0026】
本発明の更に他の好ましい態様では、ローラ支持軸が複数のローラのそれぞれに対して個別に設けられていて、各ローラに対して設けられたローラ支持軸が、回転操作軸の軸線方向に変位し得るように、第2のアームに導電性の弾性支持部材を介して支持されている。
【0027】
上記のように構成した場合も、各ローラが回転操作軸の軸線方向に個別に変位することが許容されるため、ローラの追従性を良好にすることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、ローラコンタクトを、軸線方向に並べて配置されて互いに独立に回転する複数のローラにより構成するので、複数のローラを、ローラコンタクトの回動中心からの距離に応じて異なる回転速度で回転させて、ローラコンタクトと固定コンタクトとの間でスリップが生じるのを防ぐことができ、常に安定な切換動作を行なわせることができる。
【0029】
本発明によればまた、ローラコンタクトを截頭円錐形に形成する場合のように面倒な機械加工を必要とせず、またローラコンタクトを構成する各ローラとしては、回転操作軸と固定コンタクトとの間の距離の如何に関わなく同一寸法のものを用いることができるため、回転操作軸と固定コンタクトとの間の距離が異なる種々の型式の開閉器に対して部品の共用化を図って製造コストの低減を図ることができる。
【0030】
請求項2または3に記載された発明によれば、各ローラが回転操作軸の軸線方向に個別に変位することが許容されるため、ローラの追従性を良好にすることができ、開閉器の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態の要部の構成を概略的に示した上面図である。
【図2】図1の実施形態の要部の側面図である。
【図3】本発明の他の実施形態の要部を示した断面図である。
【図4】(A),(B)は本発明の更に他の実施形態の要部の構成を示したもので、(A)は側面図、(B)は(A)の上半部の斜視図である。
【図5】従来の開閉器の要部の構成を示した側面図である。
【図6】本発明を適用する開閉器の一例として、負荷時タップ切換装置の切換開閉器の構成を示した回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下図1ないし図4を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。図1及び図2は本発明の第1の実施形態の構成を示したもので、これらの図において、1は軸線O1−O1を中心として回転し得るように、図示しない軸受け装置により回転自在に支持されて、図示しない蓄勢機構により一方向及び他方向に回転するように操作される回転操作軸である。2,2は、回転操作軸1の中心軸線O1−O1を中心とする円弧に沿って、回転操作軸1の中心軸線O1−O1と直交する平面上に並べて配置された複数(図示の例では2個)の板状の固定コンタクトで、各固定コンタクト2は、回転操作軸1の軸線方向に沿う方向に向いた電極面2a,2aを表裏に有している。
【0033】
3は回転操作軸1に後端部が固定されて、回転操作軸1の回転に伴って、回転操作軸1の軸線と直交する平面上で回動する導電性のアーム、4は回転操作軸1の軸線O1−O1に対して直角な方向に中心軸線を向けてアーム3の先端に設けられた導電性のローラ支持軸5に回転自在に支持されたローラコンタクトである。ローラコンタクト4は、アーム3の回動に伴って回転操作軸1の中心軸線を中心とした円弧に沿って回動しつつ、各固定コンタクト2の電極面2a上を転動する。
【0034】
図示の例では、アーム3が、回転操作軸1の軸線と直交する方向に延びるように設けられて、回転操作軸1に後端部が固定された第1のアーム3Aと、該第1のアーム3Aを間にして回転操作軸1の軸線方向に並ぶように設けられて、回転操作軸1の軸線と平行な方向に延びる回動軸11により第1のアーム3Aの先端に回動自在に支持された一対の第2のアーム3B,3Bとからなっている。
【0035】
ローラ支持軸5は一対設けられていて、該一対のローラ支持軸5,5が、それぞれの中心軸線O2−O2を一対の第2のアーム3B,3Bの長手方向に向けた状態で、一対の第2のアーム3B,3Bの先端にそれぞれ一体に設けられている。またローラコンタクト4も一対設けられていて、該一対のローラコンタクト4,4がそれぞれ一対のローラ支持軸5,5に回転自在に支持されている。一対のローラコンタクト4,4は、各固定コンタクト2A,2Bを間に挟む状態で各固定コンタクトの表裏両面に接触させられる。
【0036】
各第2のアーム3Bの、回動軸11よりも回転操作軸1側に位置する部分には、第1のアーム3A側に突出した突起301(図2参照)が設けられ、各第2のアーム3Bの突起301が第1のアーム3Aに接触させられている。
【0037】
回動軸11は、第1のアーム3Aの先端部と、第2のアーム3B,3Bの中間部とを貫通した状態で設けられていて、回動軸11の第2のアーム3B,3Bを突き抜けて上下に突出した部分にそれぞれ接圧バネ12,12が嵌合されている。回動軸11の両端部寄りの部分にそれぞれバネ受け板13,13が嵌合され、回動軸11に形成された貫通孔に挿入された割ピン14,14により、バネ受け板13,13の回動軸11からの抜け止めが図られるとともに、回動軸11の軸線方向への変位が規制されている。バネ受け板13,13と第2のアーム3B,3Bとの間に接圧バネ12,12が圧縮された状態で保持され、これらの接圧バネにより、ローラコンタクト4,4が固定コンタクト2側に付勢されている。本実施形態では、回動軸11と、接圧バネ12,12と、バネ受け板13,13とにより、一対のローラコンタクト4,4を互いに接近する方向に付勢して、両ローラコンタクトと各固定コンタクトの電極面2a,2aとの間に接触圧力を付与する接圧付与機構15が構成されている。
【0038】
図1に示されているように、第1のアーム3Aには、可撓性を有する集電導体19が接続されていて、ローラコンタクト4がローラ支持軸5と第2のアーム3Bと第1のアーム3Aと、集電導体19とを通して外部の回路に接続される。本実施形態の開閉器を図6に示された切換開閉器の補助開閉器SWとして用いる場合には、固定コンタクト2,2の一方及び他方がそれぞれ固定コンタクトS1及びS2を構成する。またローラコンタクト4が可動コンタクトS0を構成し、集電導体19が真空バルブV1に接続される。
【0039】
本実施形態では、各ローラコンタクト4が、導電材料からなる複数(図示の例では5個)の外径が等しいローラ400,400,…からなっている。複数のローラ400,400,…は、中心軸線をローラ支持軸5の軸線O2−O2方向に向けて並べて配置されて、互いに独立に回転し得るようにして、ローラ支持軸5に回転自在に支持されている。
【0040】
本実施形態のように、ローラコンタクト4を、軸線方向に並べて配置されて互いに独立に回転する複数のローラ400により構成すると、複数のローラ400を、ローラコンタクト4の回動中心O1−O1からの距離に応じて異なる回転速度で回転させて、固定コンタクトの電極面上を転動させることができるため、ローラコンタクト4と固定コンタクト2との間でスリップが生じるのを防いで、安定な切換動作を行なわせることができる。
【0041】
また上記のように構成すると、ローラコンタクト4を截頭円錐形に形成する場合のように、ローラコンタクトを製作する際に、加工精度の厳密な管理を要する面倒な機械加工を必要としない。またローラコンタクトの回動中心O1−O1と固定コンタクト2との間の距離が異なる場合でも、ローラコンタクト4を構成する各ローラ400の径は異ならせる必要がないため、回転操作軸1と固定コンタクト2との間の距離が異なる種々の型式の開閉器に対して共通のローラ400を用いて、部品の共用化を図り、製造コストの低減を図ることができる。
【0042】
また上記のようにローラコンタクト4を複数のローラ400により構成すると、ローラコンタクト4を固定コンタクト2に多点で接触させることができるため、開閉器の電流通電容量を増大させることができ、通電容量が同一である場合にはローラコンタクトの小形化を図ることができる。
【0043】
図3は、本発明の第2の実施形態の要部を示したものである。この実施形態では、ローラコンタクト4を構成する各ローラ400とローラ支持軸5との間に波形の導電性バネ20が挿入されて、各ローラ400がバネ20を介して各ローラ支持軸5に支持されている。導電性バネ20は、ローラ400とローラ支持軸5との双方に接触して両者間を電気的に接続する。このように構成すると、ローラコンタクト4を構成する各ローラ400が回転操作軸1の軸線方向に変位することが許容されるため、ローラの追従性を良好にすることができる。
【0044】
図4(A)及び(B)は、本発明の第3の実施形態の要部を示したもので、本実施形態においては、ローラ支持軸が複数のローラ400に対して共通に設けられるのではなく、複数のローラ400,400,…のそれぞれに対して個別にローラ支持軸500が設けられ、各ローラ400に対して設けられたローラ支持軸500が、回転操作軸1の軸線方向(図4において上下方向)に変位し得るように、第2のアーム3Bに導電性の弾性支持部材21を介して支持されている。
【0045】
図示の例では、弾性支持部材21が、第2のアーム3Bに溶接等により電気的及び機械的に接続された基部21aと、基部21aに後端部が一体化された状態で設けられて固定コンタクト2側に傾斜して延びる腕部21bと、腕部21bの先端に一体に形成された二股状のローラ支持部21cとを有する形状に形成されている。ローラ400は、弾性支持部材21のローラ支持部21cの二股部分の間に挿入されて、該二股部分を貫通したローラ支持軸500によりローラ支持部21cに回転自在に支持されている。各ローラ400は、弾性支持部材21の腕部21bの弾性により、回転操作軸1の軸線方向への変位が許容される。この場合、ローラ400をローラ支持軸500に固定して、該ローラ支持軸500をローラ支持部21cに回転自在に支持するようにしてもよく、ローラ支持軸500をローラ支持部21cに固定して、ローラ400をローラ支持軸500に回転自在に支持するようにしてもよい。
【0046】
このように構成した場合も、各ローラ400が回転操作軸の軸線方向に個別に変位することが許容されるため、ローラコンタクトの追従性を良好にすることができる。
【0047】
上記の実施形態では、固定コンタクト2が2個だけ設けられているが、3以上の固定コンタクトが設けられる開閉器にも本発明を適用できるのはもちろんである。
【0048】
また上記の実施形態では、ローラコンタクト4を5個のローラ400により構成したが、ローラコンタクト4は複数個のローラ400により構成されればよく、ローラ400の数は任意である。電流容量に応じてローラ400の数を増減することができる。
【0049】
上記の説明では、本発明に係わる開閉器を、負荷時タップ切換装置の補助開閉器として用いるとしたが、他の用途にも用いることができるのはもちろんである。
【符号の説明】
【0050】
1 回転操作軸
2 固定コンタクト
3 アーム
3A 第1のアーム
3B 第2のアーム
4 ローラコンタクト
400 ローラ
5,500 ローラ支持軸
11 回動軸
12 接圧バネ
13 ナット
21 弾性支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転自在に支持されて一方向及び他方向に回転するように操作される回転操作軸と、前記回転操作軸の軸線方向に沿う方向に向いた電極面を有して前記回転操作軸の中心軸線を中心とする円弧に沿って、前記回転操作軸の中心軸線と直交する平面上に並べて配置された複数の板状の固定コンタクトと、前記回転操作軸に後端部が取り付けられて前記回転操作軸の回転に伴って回動する導電性のアームと、前記回転操作軸の軸線に対して直角な方向に中心軸線を向けた状態で前記アームの先端に回転自在に支持されて前記アームの回動に伴って各固定コンタクトの電極面上を転動するローラコンタクトとを備えて、前記回転操作軸の回転に伴って前記ローラコンタクトが転動する固定コンタクトを切り換える開閉器において、
前記ローラコンタクトは、中心軸線を前記回転操作軸の軸線に対して直角な方向に向けた状態で並べて配置されて、前記アームにローラ支持軸を介して回転自在に支持された複数の導電性のローラからなり、
前記複数のローラは、互いに独立に回転し得るように設けられていること、
を特徴とする開閉器。
【請求項2】
各固定コンタクトは前記回転操作軸の軸線方向に向いた電極面を表裏両面に有し、
前記アームは、前記回転操作軸に後端部が取り付けられた第1のアームと、該第1のアームを間にして前記回転操作軸の軸線方向に並ぶように設けられて、前記回転操作軸の軸線と平行な方向に延びる回動軸により前記第1のアームの先端に回動自在に支持された一対の第2のアームとからなり、
前記ローラコンタクトは一対設けられていて、該一対のローラコンタクトがそれぞれ前記一対の第2のアームの先端にローラ支持軸を介して支持されて、前記一対のローラコンタクトが前記各固定コンタクトを間に挟む状態で各固定コンタクトの表裏両面に接触するように構成され、
前記一対のローラコンタクトを互いに接近する方向に付勢して、前記一対のローラコンタクトと各固定コンタクトの電極面との間に接触圧力を付与する接圧付与機構が設けられていること、
を特徴とする請求項1に記載の開閉器。
【請求項3】
前記ローラコンタクトを構成する各ローラと各ローラを支持するローラ支持軸との間に導電性のバネが挿入されて、各ローラが該バネを介して前記ローラ支持軸に接触させられ、
前記ローラコンタクトを構成する各ローラが前記回転操作軸の軸線方向に変位し得るように構成されていること、
を特徴とする請求項1または2に記載の開閉器。
【請求項4】
前記ローラ支持軸は、前記複数のローラのそれぞれに対して個別に設けられていて、各ローラに対して設けられたローラ支持軸が、前記回転操作軸の軸線方向に変位し得るように、前記第2のアームに導電性の弾性支持部材を介して支持されていること、
を特徴とする請求項1または2に記載の開閉器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−146499(P2012−146499A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3738(P2011−3738)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】