説明

開閉型賞状ファイル

【課題】賞状や図画作品等、子供の記念になる書類、とくに大判の書類を平の状態乃至平に近い状態で収納保管することができ、かつスペースの嵩張りを防止する開閉型賞状ファイルを供する。
【解決手段】開閉自在の表表紙2及び裏表紙3並びに両者の間に連設される背表紙4からなる本体1と、該本体1の外側に設けられる本体カバー8とからなる。背表紙4は隣接する両端部に形成されるアール折部5、6を介して表表紙2及び裏表紙3に連設され、該アール折部5、6には表表紙2及び裏表紙3と背表紙4の境界に沿って多数本の筋目7が設けられる。各筋目7の筋目角は150°以上になっているから円曲線効果があり、収納される賞状等に折目痕が生じにくい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、賞状や図画作品等、子供の記念になる書類、とくに大判の書類を収納保管する開閉型賞状ファイルに関する。
【背景技術】
【0002】
賞状や図画作品等、子供の記念になる書類は子供にとっても親にとっても重要であるため、終生、収納保管することが多い。
【0003】
しかしながら、賞状のように面積の大なる大判の書類は平の状態で収納保管するのが困難である。
【0004】
このため、従来は丸めて円形の筒中に収納保管するなどしていた。
【0005】
しかし、このような収納保管方法であると、筒体の直径分保管スペースを要するため嵩張るという欠点があった。
【0006】
また嵩張りを解消するため筒体の直径を過度に小にすると、細く丸めたときに大切な賞状等に折くせがついたり、丸めくせがつくことがあり、平の状態に復元することが困難であった。
【0007】
この場合、折くせや丸めくせによる撓み負担は円形の全周にかかる欠点があった。
【0008】
そこで、開閉型のファイルが考えられるが、ファイルを閉状態としたときヒンジ部分が約90°になり完全に折くせがつき折目痕が生じる欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−276374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本願発明は上記背景に鑑み、賞状や図画作品等、子供の記念になる書類、とくに大判の書類を平の状態乃至平に近い状態で収納保管することができ、かつスペースの嵩張りを防止する開閉型賞状ファイルを供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的達成のため、本願発明による開閉型賞状ファイルは、開閉自在の表表紙及び裏表紙並びに両者の間に連設される背表紙からなる本体と、該本体の外側に設けられる本体カバーとからなる賞状ファイルであって、上記背表紙は隣接する両端部に形成されるアール折部を介して上記表表紙及び上記裏表紙に連設され、該アール折部には上記表表紙及び上記裏表紙と上記背表紙の境界に沿って多数本の筋目が設けられることを特徴とする。
上記アール折部の筋目の筋目角が150°以上であることを特徴とする。
上記筋目間の間隔が約5mm以下であることを特徴とする。
上記アール折部の形成において、まず中央の筋目に隣接する筋目を形成後、中央の筋目を含む他の筋目を形成することを特徴とする。
上記各筋目はプレス加工により形成することを特徴とする。
上記背表紙の幅員が約20mmであることを特徴とする。
上記アール折部が上記背表紙の幅員と同等の幅員に形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本願発明においては、背表紙に隣接する表表紙と裏表紙を背表紙の両端部に形成されるアール折部を介して一体に連設してあるところ、該アール折部には上記表表紙及び上記裏表紙と上記背表紙の境界に沿って多数本の筋目が均等間隔に設けられているから、正n角形の内角を求める公式「180°×(n−2)/n」から、筋目角αが円曲線に準じたラインとなり、賞状に折目痕が生ずるのを防止する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(A)は本願発明による開閉型賞状ファイルの実施の形態を示し、その開状態の正面図、(B)は(A)の背面図、(C)は(A)の左側面図、(D)は(A)の平面図である。
【図2】図1の開閉型賞状ファイルが閉状態になろうとするときの図である。
【図3】図1の開閉型賞状ファイルの閉状態における一部拡大平面図である。
【図4】標準仕様の賞状用丸筒を示す平面断面図である。
【図5】筋目の作用効果を説明する図である。
【図6】円曲線効果の作用効果を説明する図である。
【図7】(A)は円曲線効果を確認するための実験条件を説明する図、(B)は(A)の実験条件により押し当て実験を説明する図である。
【図8】(A)は本願発明による開閉型賞状ファイルの他の実施の形態の作用効果の説明図、(B)は本願発明による開閉型賞状ファイルのさらに他の実施の形態の作用効果の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、実施の形態を示す図面に基づき本願発明による開閉型賞状ファイルをさらに詳しく説明する。なお、便宜上同一の機能を奏する部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0015】
本体1は開閉自在の表表紙2及び裏表紙3と、両者の間に連設される背表紙4とからなる。該背表紙4は両端部に、アール折部5、6が形成され、該アール折部5、6には上記表表紙2及び上記裏表紙3の境界に沿って5本の筋目7a〜7eが設けられる(以下、総称するときは「筋目7」という)。各筋目7a〜7e間の間隔Rは5mmとされる。上記本体1の外側には本体カバー8が設けられる。9は蓋10の付いたポケット、11はリフィル式の上部11aが開放したポケットで、これは綴じ具12により複数枚綴じられている。
【0016】
各部の寸法は、表表紙2及び裏表紙3がA3用紙を平の状態で収納保管できる程度の大きさ、例えば縦460mm×横357mmに形成される。上記背表紙4の幅員W1はファイル形状の安定性を確保するため一般に採用される20mmとしてある。上記背表紙4の両端部に形成されるアール折部5、6の幅員W2は背表紙4と同幅の20mmとし、ここに5mm間隔で上記筋目7a〜7eが設けられる。よって開状態における本体1の寸法は縦460mm×横774mmに形成される。
【0017】
生地厚は上記本体1が各部いずれも0.85mm、上記本体カバー8が0.15mm、上記ポケット11が0.08mm、上記ポケット9が0.18mmである。
【0018】
材質は上記本体1及び上記各ポケット9、11いずれもポリプロピレン(PP)からなり、綴じ具12はスチール製である。
【0019】
<製造方法>
【0020】
本願発明による開閉型賞状ファイルは次のようにして製造される。まず、背表紙4を含む上記本体1と、上記アール折部5、6の第2筋目7b及び第4筋目7dの合計4本の筋目を1回のプレス加工により「抜き」と「型押し」を同時に行う。次いで、上記アール折部5、6の第1筋目7a、第3筋目7c及び第5筋目7eの合計6本の筋目を1回のプレス加工により「型押し」する。
【0021】
このように上記アール折部5、6の隣接する筋目を交互にプレス加工するのは、5mm間隔という狭小な幅で同時にプレス加工すると、生地が一気に局所に寄せられ、これにより生地の逃げがなくなると、生地に「破れ」や「波打ち」などの不具合が生ずることがあり、これを防止するためである。
【0022】
図2は上記本体1とその外側に設けられた上記本体カバー8との間に、大判例えばA2用紙、四つ切サイズの賞状13を挿入し、閉状態に折り曲げて収納保管しようとする場合を示す。かかる状態で表表紙2と裏表紙3とが折り曲げられたときの上記アール折部5、6の筋目7a〜7eの作用効果を図3に基づき説明する。
【0023】
図3において上記アール折部5、6の各筋目7a〜7eは筋目角αが折目痕が生じにくい角度である157.5°に設定されている。本実施の形態において筋目7がこのような角度となるのは以下の理由からである。
【0024】
まず、従来の丸筒からなる保管筒について考える。図4は標準仕様M(内径O=47mm、外径P=50mm)の保管筒を示す。このような標準仕様の丸筒からなる保管筒の場合、経験上、賞状13に折り目や折り癖から生ずる折目痕が形成されないので、本願発明のような開閉型賞状ファイルにおいても上記標準仕様と同等以上の丸み(アール)を確保すればよいことになる。
【0025】
ところで、本願発明のようなファイルにおいては管理上背表紙にタイトルを表示する必要がある。この場合、背表紙の幅員W1はファイル形成の安定性を確保する等の理由から、少なくとも20mm程度のサイズを要する。よって図4の標準仕様の丸筒を背表紙に相当する幅員20mmの辺を基準とした多角形の筒に構成すると、図5に示すような正八角形の筒となる。このとき、辺aに隣接する両側の辺b、cとの間の挟角からなる筋目角α1は正n角形の内角を求める公式「180°×(n−2)/n」(ただし、n=辺の数)からα1=135度となり、
α1=180°×(8−2)/8=135°
この筋目角α1=135°では折目痕の問題が経験上完全には解消されない。
【0026】
そこで、図6に示すように、辺a、b間又は辺a、c間に複数の筋目を設けるとともに、筋目間の間隔を同一にして全周に筋目をつけてみた。すると筋目間の辺は全部で16個となるので、各筋目の筋目角α2を計算すると、上記公式からα2=157.5°となり、円曲線に準じたラインとなる。このとき、図6の筒体の周上の筋目は1/4周ごとに筋目r1、r2、r3、r4、r5及び筋目r13、r14、r15、r16、r1と各5個の筋目となる。
α2=180°×(16−2)/16=157.5°
【0027】
この筋目角α2=157.5°を有する筒体で試してみると、賞状に折目痕が生じず円曲線効果があった。
【0028】
ここで、円曲線効果について詳述する。筋目角αが何度以上になると円曲線効果を奏するのか実験してみた。画用紙の標準規格は厚さ0.18mm〜0.2mmであるのでこれを供試片Aとした。図7(A)に示すような0.2mmのポリプロピレン(PP)の板20に折部21を設ける。図7(B)に示すように、ポリプロピレン板20の上に供試片Aの画用紙を重ね、その上にさらに本体カバー8に見立てた厚さ0.15mmのポリプロピレンシート22を重ねて押し当て、ファイル収納保管時に近い条件で実験した。筋目角αとなる内径の角度αは130°、140°、150°に設定した。
【0029】
折部21に沿って手でなぞるように圧力を加え、上記したポリプロピレン板20、供試片A及びポリプロピレンシート22の3点を密着させて、供試片Aに生ずる折目痕を観察した。結果は次の通りである。
筋目角α=130°のとき、折目痕が確認できるので「不良」である。
筋目角α=140°のとき、僅かに折目痕が確認できるので、長時間にわたる年月押し当てると折目痕に成長するおそれがあり、「やや不良」である。
筋目角α=150°のとき、折目痕が確認できないので「良」である。
【0030】
上記実験より、筋目角α=150°以上であれば、円曲線効果があると考えられる。
【0031】
本件発明は上記知見に基づきなされたものである。図3に示す実施例では、背表紙4とその両側の表表紙2及び裏表紙3の間に5個の筋目7a〜7eを筋目角150°以上の157.5°に設けたアール折部5、6を介することにより、偶部が円曲線に準じたラインとなる。このため賞状13等の収納物は大きなアールとなってわん曲状態におかれるから、ファイルを開状態から閉状態においたとき賞状13に折目痕が生ずるのを防止する。
【0032】
また閉状態において収納される賞状にかかる撓み負担は、従来の丸められた賞状について円全周にかかる撓み負担から、アール折部5、6に沿った2箇所に軽減される。
【0033】
またファイルの開閉時に上記アール折部5、6には負荷がかかるが、筋目7a〜7eの存在によりアール折部5、6が補強され、かつ開閉自在時に生じる上記アール折部5、6のヒンジ負担が多数個の筋目7に分散されるため、接合部たるアール折部5、6の耐久性が向上する。
【0034】
次に表表紙2及び裏表紙3は各々縦460mm×横377mmに形成されているから、ファイルの閉状態において、A3用紙程度の賞状、書類を平の状態のままの収納保管することができる。
【0035】
本願発明は上記した実施の形態に制限されることはない。例えば、アール折部を形成する筋目は4本又は6本であっても上記実施の形態と同等の効果を有する。ただし、筋目7は6本を超えて多くすると、限られた幅員の中でのプレス加工のため、隣接する筋目同士が付着してしまうおそれがある。また筋目7を4本より小とすると、円曲線効果が減少するおそれがある。
【0036】
また筋目7間の間隔は、プレス加工上4mm、3mmといった寸法まで考えられる。筋目間が4mmの場合は、図8(A)に示すように正20角形となり、筋目角αは162°となるので、円曲線効果を奏することができる。
α=180°×(20−2)/20=162°
また筋目間が3mmの場合は、図8(B)に示すように正28角形となり、筋目角αは167°となるので、円曲線効果を奏することができる。
α=180°×(28−2)/28=167°
しかしながら、本願発明が大判の賞状を収納保管する大型形状のファイルであることより、ファイル開閉時のヒンジ負担を考慮すると5mm幅とするのが望ましい。
【0037】
また表表紙2、裏表紙3、背表紙4及び上記本体1の各寸法は一例として理解すべきである。また各部の生地厚、素材についても適宜に設計することができる。
【0038】
また各ポケット9、11の設置は任意的である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本願発明は文房具用品として広く活用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 本体
2 表表紙
3 裏表紙
4 背表紙
5 アール折部
6 アール折部
7 筋目
7a 第1筋目
7b 第2筋目
7c 第3筋目
7d 第4筋目
7e 第5筋目
8 本体カバー
9 蓋付きポケット
10 上蓋
11 ポケット
12 綴じ具
13 賞状
20 ポリプロピレン板
21 折部
22 ポリプロピレンシート
A 供試片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉自在の表表紙及び裏表紙並びに両者の間に連設される背表紙からなる本体と、該本体の外側に設けられる本体カバーとからなる賞状ファイルであって、上記背表紙は隣接する両端部に形成されるアール折部を介して上記表表紙及び上記裏表紙に連設され、該アール折部には上記表表紙及び上記裏表紙と上記背表紙の境界に沿って多数本の筋目が設けられることを特徴とする開閉型賞状ファイル。
【請求項2】
上記アール折部の筋目の筋目角が150°以上であることを特徴とする請求項1記載の開閉型賞状ファイル。
【請求項3】
上記筋目間の間隔が約5mm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の開閉型賞状ファイル。
【請求項4】
上記アール折部の形成において、まず中央の筋目に隣接する筋目を形成後、中央の筋目を含む他の筋目を形成することを特徴とする請求項1乃至請求項3いずれか一記載の開閉型賞状ファイル。
【請求項5】
上記各筋目はプレス加工により形成することを特徴とする請求項1又は請求項4いずれか一記載の開閉型賞状ファイル。
【請求項6】
上記背表紙の幅員が約20mmである請求項1記載の開閉型賞状ファイル。
【請求項7】
上記アール折部が上記背表紙の幅員と同等の幅員に形成されることを特徴とする請求項1記載の開閉型賞状ファイル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−201831(P2010−201831A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−51245(P2009−51245)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(501089623)株式会社デビカ (5)
【Fターム(参考)】