説明

開閉式パンタグラフカバー

【課題】パンタグラフの基本構成を変更せず、所定の特性が保持され、構成各部への着雪を防止し、所定の押上力が保持され得るようにした開閉式パンタグラフカバーを提供する。
【解決手段】パンタグラフの前後に可動装置を有するカバーを設け、パンタグラフ折り畳み時は、カバーが閉じることにより降雪からパンタグラフを保護し、走行時は、パンタグラフ上昇とともにカバーが開き、カバーの形状によりパンタグラフを風雪から保護する。
パンタ各部への着雪を防止することで所定の押上力、架線との接触状態が確実に保持される。スパークの発生によるすり板や架線の損耗を抑制し、架線の断線を抑制して安全走行が行われる。保守要員が車体の屋根に登って除雪作業等を行うことなく、折畳み状態から素早く押上げ動作ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用パンタグラフの雪による上昇・下降の不具合を低減するパンタグラフカバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3は、パンタグラフを従来例を説明するパンタグラフ全体の機構図である。同図において、11は集電舟、11aはすり板、12は舟支え、13は上枠、14は下枠、15は釣合棒、16は主バネ、17は台枠、18は碍子、8は車体(屋根上)、19は架線である。
パンタグラフは、集電状態において主バネまたは空気シリンダを有する昇降機構によって下枠と上枠とが押し上げられた状態に保持されるように押上力が作用されており、架線に対してすり板が摺擦状態を保持されるように構成されている。パンタグラフにおいては、一般にこの押上力が45N〜65Nの範囲で一定になるように設定されている。
【0003】
パンタグラフは、何らかの原因によって上述した押上力が保持されなくなりすり板と架線との接触状態が絶たれるといった事態が生じた場合には、電力の集電が行い得なくなる。また、パンタグラフは、押上力が不安定となって走行時にすり板と架線とが断接状態を繰り返した場合には、電力の集電が不安定となるとともにすり板と架線との間でスパークが発生してすり板の損耗が大きくなるなど舟板の破損及び架線の切断といった重大事故を引き起こすことがある。
【0004】
パンタグラフにおいて、特に降雪があった場合に各枠組や集電舟等に付着した雪の影響により、上述した問題が顕著に発生する。パンタグラフは、各枠組や集電舟等に着雪が発生すると、これらの部位が重くなって所定の押上力が保持し得なくなる。パンタグラフは、例えば電車等が基地に留置されている場合には下げられて折り畳まれた状態にあり、各枠組や集電舟等の上に降り積もった雪によって押上げ動作が不能となる事態が発生する。
【0005】
一方、パンタグラフは、電車等が走行中に各枠組や集電舟等に付着した雪による重みによって押上力が低下し、このためにすり板の架線からの離線現象が頻繁に発生するといった問題があった。
【0006】
従来、パンタグラフは保守要員により除雪作業が行われており、電車等の屋根に登っての雪降ろしや、常設の融雪装置により行われている。屋根に登っての除雪作業は、転落や感電の危険があるとともに、結氷化した積雪の排除が困難である。
融雪装置による除雪作業は、電車等を移動させる必要があるとともに限られた場所に設置されているために何処でも手軽に行い得ない。
【0007】
従来のパンタグラフには、それ自体に除雪装置や融雪装置が備えられていないために、電車等が走行中に各枠組や集電舟等に付着した雪を排除することができない。このため、離線現象が頻繁に発生し、ダイヤの遅れを生じさせていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−182204号 公報
【特許文献2】特開2002−27608 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、パンタグラフの基本構成を変更せず、所定の特性が保持され、構成各部への着雪を防止し、所定の押上力が保持され得るようにした開閉式パンタグラフカバーを提供することを目的に提案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明によれば、パンタグラフの前後に可動手段を有するカバーを車両の屋根上に設け、該パンタグラフ折り畳み時は、該可動手段により該カバーが閉じ降雪から前記パンタグラフを保護し、車両走行時は、該可動手段により該カバーが開き前記パンタグラフに当たる雪の量を低減させるようなカバー形状により、パンタグラフを風雪から保護することを特徴とする。
【0011】
すなわち、パンタグラフの前後に可動装置を有するカバーを設け、パンタグラフ折り畳み時は、カバーが閉じることにより降雪からパンタグラフを保護し、走行時は、パンタグラフ上昇とともにカバーが開き、カバーの形状によりパンタグラフを風雪から保護することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
開閉式パンタカバーを用いれば、各部への着雪を防止することで所定の押上力が確実に保持されるようになる。
【0013】
したがって、架線との接触状態が確実に保持されることで、安定した電力の集電を行い、スパークの発生によるすり板や架線の損耗を抑制し、或いは架線の断線を抑制して安全走行が行われるようにする。また、保守要員が車体の屋根に登って除雪作業等を行うことなく、折畳み状態から素早く押上げ動作が行われるようにする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例の開閉式パンタグラフカバーを示した説明図である。(集電時)(実施例1)
【図2】本発明の一実施例の開閉式パンタグラフカバーを示した説明図である。(折畳時)(実施例1)
【図3】従来例のパンタグラフ全体の機構図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1と2は、本発明の実施例の構成を示す図である。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の開閉式パンタグラフカバーのパンタグラフ集電状態の図であり、1のパンタグラフが上昇する前に、7の信号により6の電磁弁が動作し、5の空気シリンダに空気が供給される。空気シリンダ5のヘッド部と連結された、3の可動装置が4のレール上を動き2のパンタグラフカバーが開く。タイマーまたは、リミットスイッチ等によりパンタグラフカバー2が開いたことを確認した後、パンタグラフ1が上昇する。
【0017】
図2は、本発明の開閉式パンタグラフカバーのパンタグラフ折り畳み状態の図であり、1のパンタグラフが下降後、タイマーまたは、リミットスイッチ等によりパンタグラフ1が下降したことを確認後、7の信号により6の電磁弁が動作し、5の空気シリンダに空気が供給される。空気シリンダ5のヘッド部と連結された、3の可動装置が4のレール上を動き2のパンタグラフカバーが閉じる。
【符号の説明】
【0018】
1 パンタグラフ
2 パンタグラフカバー
3 可動装置
4 レール
5 空気シリンダ
6 電磁弁
7 信号
8 車体(屋根上)
9 風雪
10 降雪
11 集電舟
11a すり板
12 舟支え
13 上枠
14 下枠
15 釣合棒
16 主バネ
17 台枠
18 碍子
19 架線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両用パンタグラフにおいて、パンタグラフの前後に可動手段を有するカバーを車両の屋根上に設け、該パンタグラフ折り畳み時は、該可動手段により該カバーが閉じ降雪から前記パンタグラフを保護し、車両走行時は、該可動手段により該カバーが開き前記パンタグラフに当たる雪の量を低減させるようなカバー形状により、パンタグラフを風雪から保護することを特徴とする鉄道車両用パンタグラフカバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−19591(P2012−19591A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154841(P2010−154841)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(000003115)東洋電機製造株式会社 (380)
【Fターム(参考)】