説明

防水カメラ

【目的】 コンバータを装着したときにも大型化することなく防水機能を達成することができる防水カメラを提供する。
【構成】 水中撮影に耐えられる防水構造のカメラ本体1と、上記カメラ本体1に一体的に取付けられた鏡筒外筒14と、上記鏡筒外筒14に対して光軸方向に進退自在なズーム移動枠10と、上記鏡筒外筒14と上記ズーム移動枠10との摺動部が防水されるように上記鏡筒外筒14の先端部に設けられたワイドコンバータ12と、上記ズーム移動枠10が上記鏡筒外筒14に取付けられたことを検知する第1接点18,第2接点19を備えたコンバータ装着検知スイッチ32と、上記コンバータ装着検知スイッチ32の出力に基づいて上記ズーム移動枠10を予め定められた所定の位置に駆動するとともに、上記ズーム移動枠10を上記所定の位置に駆動した後該ズーム移動枠10の駆動を禁止する駆動制御手段とを備えた防水カメラ。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、防水カメラ、より詳しくは、レンズ鏡筒の先端部に装着するコンバータを備えた防水カメラに関する。
【0002】
【従来の技術】防水機能を備えたカメラは、従来より種々のものが提案されていて、特開平2−111127号公報には、カメラボディに対して透明材料からなる防水用レンズカバーを着脱可能に設けたものが開示されている。
【0003】ところで、陸上と水中では、使い勝手の良い撮影レンズの焦点距離が異なっている。陸上では、例えば28mm程度のワイドから200mm程度の望遠が使い勝手の良い焦点距離とされているが、カメラを水中で使用する際には、望遠はほとんど不要であり、一般的にはワイド系の広角画像が得られることが望ましい。それも、上記28mm程度のワイドに限らず、20mm,15mmといったよりワイドな焦点距離が一般には望まれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記特開平2−111127号公報に記載のものでは、コンバータレンズを鏡筒先端に設けた場合に、防水カバーが大型化し、特に広角系のコンバータレンズではこの大型化する傾向が著しくなってしまう。
【0005】本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、コンバータを装着したときにも大型化することなく防水機能を達成することができる防水カメラを提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段及び作用】上記の目的を達成するために本発明による防水カメラは、水中撮影に耐えられる防水構造のカメラ本体と、上記カメラ本体に一体的に取付けられた第1のレンズ鏡筒と、上記第1のレンズ鏡筒に対して光軸方向に進退自在な第2のレンズ鏡筒と、上記第1のレンズ鏡筒と上記第2のレンズ鏡筒との摺動部が防水されるように上記第1のレンズ鏡筒の先端部に設けられたコンバータとを備えている。
【0007】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。図1ないし図8は本発明の一実施例を示したものであり、図1はカメラとコンバータの外観を示す斜視図、図2はカメラの正面図、図3はカメラとコンバータの光軸に沿った断面図、図4はレンズ鏡筒下面側に設けられたスイッチ部を示す要部拡大断面図である。
【0008】本実施例のカメラは、図1に示すように、一眼レフレックスカメラであって、カメラ本体1の上面側ほぼ中央部にはファインダ部6が設けられ、このファインダ部6の上部にフラッシュ取付部7等が配置されている。該カメラ本体1の上面のファインダ部6の左右には、撮影を行うためのレリーズボタン2,種々のモード切換等を行う複数の操作ボタン4,絞り値やシャッタースピード等の種々の撮影情報を表示するための表示LCDパネル3等が配設されている。
【0009】また、カメラ本体1の背面側には、裏蓋5がフィルム着脱のために開閉可能に設けられている。
【0010】カメラ本体1の前側のほぼ中央部からは、後述する撮影レンズ11を保持するレンズ鏡筒8が突設されている。このレンズ鏡筒8の周面でカメラの側方となる側には、ズーム操作ボタン9が設けられていて、該レンズ鏡筒8を保持する手で撮影レンズ11をテレ側およびワイド側にズーム操作することができるようになっている。
【0011】レンズ鏡筒8は、最外周は第1のレンズ鏡筒たる鏡筒外筒14であり、光軸前方側の端部内周面にコンバータ固定ねじ14aが螺刻されている。この鏡筒外筒14の内周面の後述するワイドコンバータ12の後端面12cが当接する部分には、防水用の防水Oリング15が固着されている。この防水Oリング15の内径に接するように該鏡筒外筒14の内部には、ズームにより撮影光軸方向に進退する第2のレンズ鏡筒たるズーム移動枠10が設けられていて、これにより、鏡筒外筒14とズーム移動枠10の間には水等が侵入しないようになっている。
【0012】このズーム移動枠10の光軸前側には、複数のレンズ等で構成される撮影レンズ11の一部が固着されて支持されているとともに、該ズーム移動枠10の周面の所定の位置には、コンバータ指標10bが設けられている。
【0013】このズーム移動枠10の内側には、複数枚で構成される撮影レンズ11の一部を支持するレンズ枠10aが配設されている。
【0014】また、鏡筒外筒14のカメラ下側となる部分には、カバー20により覆われたスイッチ部が設けられている。
【0015】このスイッチ部は、ばね17によって前方に付勢されながら前後移動可能に支持されたスイッチ移動片16を有している。このスイッチ移動片16は、上記ばね17の付勢力をばね受部16cで受けていて、接点係合部16bを長手方向の側部から突設するとともに、先端部16aが外筒14から前面側に突出している。上記接点係合部16bは、外筒14に対して固定された第1接点18および第2接点19に対向した位置に設けられている。
【0016】上記スイッチ移動片16の先端部16aは上述のように突出しているため、カメラ本体1の前面側から見ると、図2に示すように見える。
【0017】ワイドコンバータ12は、複数のレンズ等で構成されるコンバータレンズ13を、スペーサ等を介してワイドコンバータ12前面側から挿入し、さらに防水Oリング21を前面側から入れて、固定用ねじリング22を該ワイドコンバータ12の前端部内周面に螺刻されたレンズ固定用ねじ12aに螺合して締め付けて固定することで構成されている(図3,図5参照)。また、該ワイドコンバータ12の後端部外周面には雄ねじでなるコンバータ固定ねじ12bが螺刻されるとともに、その後端はワイドコンバータ12の後端面12cとなっている。そして、上記スイッチ移動片16の先端部16aは、このワイドコンバータ12の後端面12cに当接するようになっている。
【0018】該ワイドコンバータ12は、上記コンバータ固定ねじ12bを、レンズ鏡筒8の前方側内周面に螺刻された雌ねじでなる固定ねじ14aに螺合することにより取り付けられるようになっている。そして、このワイドコンバータ12を装着することにより、水中撮影に適したワイドな焦点距離を有する撮影光学系を構成することができる。
【0019】次に、図7は、カメラの主要回路を示したブロック図である。カメラの種々の制御を司る駆動制御手段たる制御用CPU31には、上記第1接点18と第2接点19などで構成される検知手段たるコンバータ装着検知スイッチ32(図面でSW3と略記。)と、上記撮影レンズ11のズーム駆動操作ボタン9により開閉されるスイッチであって、制御用CPU31を介してズーム駆動回路33によりズームモータ34を駆動するズームスイッチ36(図面でSW1,SW2と略記)が電気的に接続されている。さらに該制御用CPU31には、ズーム状態(焦点距離)を検知するためのズームエンコーダ35が電気的に接続されている。
【0020】該制御用CPU31には、その他にも、バッテリ,オートフォーカス装置,自動露出機構,フィルム給送機構,表示等の種々の図示しない制御回路ブロックが電気的に接続されている。
【0021】次に、このような実施例において、まずワイドコンバータ12を装着する前の状態について説明する。カメラ本体1は、レリーズボタン2,複数の操作ボタン4,ズーム操作ボタン9および裏蓋5の可動部等を含めて、水中での使用が可能な防水構造となっている。
【0022】ズーム操作により前後に動くズーム移動枠10は、外筒14との間については防水Oリング15によって水密構成となってはいるが、ズーム移動枠10の前後摺動時には完全な防水を達成することは難しく、いわゆる「生活防水」機能となっており、水中での使用は不可能となっている。
【0023】撮影時のピント合わせは、内側に配置されたレンズ枠10aを前後に移動することにより行うインナーフォーカス方式となっている。そして、ズーム操作ボタン9を押して操作することにより、ズーム移動枠10が移動して撮影レンズ11の焦点距離が変化する。
【0024】本実施例では、図3に示す状態が短焦点位置(ワイド)であり、ズーム移動枠はレンズ鏡筒8全体を最短にする位置となっている。
【0025】まず、ワイドコンバータ12をカメラ本体1に装着しないときには、装着を検知するためのスイッチである第1接点18と第2接点19は互いに離れていて電気的には接続されていない。
【0026】すなわち、ワイドコンバータ12をカメラ本体1に装着しないときには、図4に示すように、スイッチ移動片16は、そのばね受部16cにばね17が当接して前方に付勢されているため、スイッチ移動片16の接点係合部16bは第1接点18の前方に位置していて、該第1接点18からは離れている。よって第1接点18と第2接点19は開状態となっており、ワイドコンバータ12が非装着の状態であると検知される。
【0027】次に、図5,図6を参照してワイドコンバータ12をカメラ本体1に装着した場合について説明する。まず、ワイドコンバータ12を装着する際は、ズーム移動枠10をワイド状態もしくはワイド近辺に退避させて行う。
【0028】ワイドコンバータ12は、その後端部に設けられたコンバータ固定ねじ12bをカメラ本体1側の外筒14に設けた固定ねじ14aに螺合することにより装着される。
【0029】このとき、ワイドコンバータ12の後端面12cは、外筒14に固着された防水Oリング15を押圧する。これにより防水Oリング15は圧縮され、ワイドコンバータ12と外筒14の当接部を十分な水密状態とする。
【0030】ワイドコンバータ12がカメラ本体1に装着された状態では、カメラ本体1のみでは水密性が不十分であったズーム移動枠10の摺動部が完全に覆われることにより、水中で十分使用することが可能な防水状態となる(図5,図6参照)。次に図8を参照して、ワイドコンバータ12を装着したとき、あるいは非装着であるときのカメラの動作シーケンスについて説明する。
【0031】まず、ワイドコンバータ12を装着するためにズーム操作ボタン9によりワイド側にズーミングして、ズーム移動枠10をワイドコンバータ12と当接しない位置まで移動する。このとき図1に示したコンバータ指標10bを、鏡筒外筒14の先端に合わせるか、またはさらにワイド側にズーミングしてワイド端まで移動させれば良い。
【0032】シーケンスがスタートする(ステップS1)と、コンバータ装着検知スイッチ32がオンであるかオフであるかを判定する(ステップS2)。この判定結果がオンである場合(すなわちコンバータ装着時)には、ズームのワイド端であるかどうかを判定し(ステップS3)、一方、上記ステップS2でコンバータが非装着であると判定された場合には、後述するステップS6に進む。
【0033】上記ステップS3では、ズームエンコーダ35によりズームがワイド端にあるかどうかをチェックする。ズームがワイド端にない場合には、ワイドコンバータ12とマスターレンズたる撮影レンズ11との光学位置が不適正であり、撮影光学系としての性能が満たされないために、自動制御により適正な位置であるワイド端にズーム駆動する(ステップS4)。ズームがすでにワイド端にある場合には、このステップS4を省略して次に進む。
【0034】ワイド端にズーム駆動されると、以後のズーム駆動は禁止される(ステップS5)。そこで一方のシーケンスは終了する(ステップS11)。
【0035】他方、上記ステップS2でコンバータが非装着であると判定された場合には、ズーム駆動は許可される(ステップS6)。次に、ズーム操作スイッチ36(図7,図8のSW1,SW2)がオンであるかどうかを判定し(ステップS7)、両方がオンである場合にのみズームモータ34を駆動してズーム駆動を行う(ステップS8)。
【0036】そして、ズーム操作スイッチ36(SW1,SW2)がオフされたかどうかを判定し(ステップS9)、両方がオフである場合にのみズームモータ34を停止して(ステップS10)、ズーム駆動を止めて所定のズーム操作を終了する(ステップS11)。なお、ズーム駆動あるいは停止は、ズーム操作スイッチ36が操作される毎に行われる。
【0037】以上のシーケンスにより、ワイドコンバータ12を装着したときには、該ワイドコンバータ12と撮影レンズ11の位置を適正な関係に自動制御している。また、ワイドコンバータ12を装着していないときには、通常のズーム操作をすることが可能である。
【0038】このような実施例によれば、コンバータ使用時には防水カバーが不要となるため、コンバータの上から防水カバーを装着した場合に比べて小型化、低コスト化を実現することができる。
【0039】そして、コンバータを装着しないときには、陸上使用に適した焦点距離・大きさのカメラとし、コンバータ装着したときには水中使用に適したワイド側の焦点距離とするとともに防水構造を達成することにより、陸上および水中のどちらで使用する際にも使い易いカメラとすることができる。
【0040】また、陸上使用時には、ズーム動作等により鏡枠部が進退するが、防水機構としてつぶし代の大きなOリングを用いればこの進退動作時の動作抵抗が増大して駆動が困難になり、また、ジャバラ式の防水シール等の機構を用いれば機構が大型化する等の困難が発生するが、本実施例のカメラを水陸両用カメラとして用いれば、このような困難を避けることができる。
【0041】加えて、ワイドコンバータ装着時に適正なマスターレンズ位置になるよう自動制御することにより、間違った状態で撮影して失敗するのを防止することができる。
【0042】
【発明の効果】以上説明したように本発明の防水カメラによれば、コンバータを装着したときにも大型化することなく防水機能を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例のカメラとコンバータの外観を示す斜視図。
【図2】上記実施例のカメラの正面図。
【図3】上記実施例のカメラとコンバータを光軸に沿って一部切断した状態を示す側面図。
【図4】上記実施例のレンズ鏡筒下面側に設けられたスイッチ部を示す要部拡大断面図。
【図5】上記実施例のコンバータを装着したカメラを光軸に沿って一部切断した状態を示す側面図。
【図6】上記実施例のコンバータを装着した状態におけるスイッチ部を示す要部拡大断面図。
【図7】上記実施例のカメラの主要回路を示すブロック図。
【図8】上記実施例のワイドコンバータ12を装着したとき、あるいは装着していないときのカメラの動作シーケンスを示すフローチャート。
【符号の説明】
1…カメラ本体
10…ズーム移動枠(第2のレンズ鏡筒)
12…ワイドコンバータ
14…鏡筒外筒(第1のレンズ鏡筒)
15…防水Oリング
16…スイッチ移動片
18…第1接点
19…第2接点
31…CPU(駆動制御手段)
32…コンバータ装着検知スイッチ(検知手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 水中撮影に耐えられる防水構造のカメラ本体と、上記カメラ本体に一体的に取付けられた第1のレンズ鏡筒と、上記第1のレンズ鏡筒に対して光軸方向に進退自在な第2のレンズ鏡筒と、上記第1のレンズ鏡筒と上記第2のレンズ鏡筒との摺動部が、防水されるように上記第1のレンズ鏡筒の先端部に設けられたコンバータと、を具備したことを特徴とする防水カメラ。
【請求項2】 上記第2のレンズ鏡筒が上記第1のレンズ鏡筒に取付けられたことを検知する検知手段と、上記検知手段の出力に基づいて、上記第2のレンズ鏡筒を予め定められた所定の位置に駆動する駆動制御手段と、を具備したことを特徴とする請求項1に記載の防水カメラ。
【請求項3】 上記駆動制御手段は、上記第2のレンズ鏡筒を上記所定の位置に駆動した後、該第2のレンズ鏡筒の駆動を禁止することを特徴とする請求項2に記載の防水カメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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