説明

防水型地下避難所

【課題】
地表面下に設置され、地上に構造物を有しない構造とし、また、大人数や、高齢者、子供、障害者、病人等の避難者が迅速に入室することができる、防水型地下避難所を提供する。
【解決手段】
津波や水害等の対策用として地表面下に設置される密閉防水型の避難所であって、前記避難所の上面は平面形状に形成され、前記避難所は出入用扉と外部確認用孔及び昇降具を有し、前記出入用扉及び前記外部確認用孔は密閉防水機能を有し、前記昇降具は避難時には滑り台形状で使用する、迅速な避難を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台風、大雨等による河川堤防やダムの決壊等の水害や、津波の来襲が予測された際に速やかに避難できる防水型地下避難所に関する。
【背景技術】
【0002】
東北地方太平洋沖地震とそれに伴って発生した津波による被害は、想定以上の規模であり、逃げ遅れた人が多数おり、この時、避難所が近くに有ればより多くの人が助かったのではないかと推測される。
【0003】
現在、東海沖地震が発生した際には、発生後、約5分で沿岸域に津波が到達するとの予測結果が報道されており、避難勧告が発せられてから、短時間で指定された公園や高い建物、高台まで避難することは容易ではない。まして、幼児や高齢者においてはその助かる可能性は残念ながら非常に少ない。
【0004】
現在、津波対策として、防波堤や防潮扉及び水門等の構造物で津波の来襲を阻止する方法と高台や高層建造物を避難場所として指定し、これに避難する方法がとられているが、想定されている津波の最大規模は、現在、構築されている堤防や防潮扉及び水門等では防ぎきれないものであり、指定避難場所にあっては、避難勧告等が発されてからこれらに避難を開始しても到達するに時間を要し、とうてい地震発生後津波が到達されると予測されている時間内に避難することは不可能に近い。
【0005】
従来の技術においては、避難にかかる時間について考慮がなされている場合であっても、避難所の機能を維持する設備の一部が地表面に設置されており、津波や水害等の来襲時には、津波や水害等により流失した構造物等がこの地表に設置されている設備に衝突等して損傷を受け、避難所としての機能を失い避難した人々の人命に危機をもたらす。一次緊急地下避難所の配置が急務である。
【0006】
特許文献1は、地盤下に埋設される地下カプセルである避難装置であって、非常食や水、通信手段、寝具などを常備可能であるとともに外気採り入れ手段と排水手段とを備えるカプセル本体と、同本体から地盤上に突き出す開閉蓋付きの避難筒路とを備え、同避難筒路には、カプセル本体と外部とを連絡する階段が設けられている発明が開示されている。また、特許発明2は、緊急避難用のための地下埋設型の簡易カプセルであり、出入口用人孔、及び居住区には大径鋼管を組み合わせて溶接し、補強リブなども備え、出入口には鉄鋼製ハッチが設けられ、数日間の居住を必要とするために自家発電装置と換気装置を備えている発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−315029号公報
【特許文献2】登録実用新案第3033727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1及び特許文献2に記載の発明は、特許文献1はカプセルが地中に埋蔵されているが、避難筒路が地中から地上に貫通し、避難筒路の地上部をガードフレームで保護している。また、特許文献2は、出入口用人孔及び排気管が地中から地上に貫通している。
このような地上の構造物が、津波や水害等により流失した構造物等が前記地表に設置されている構造物に衝突等して損傷を受けると、損傷箇所からカプセル内に水や土砂が流入したり、換気が不可能になる等の、避難所内に避難した人々の人命の存続が危険となる場合がある。また、避難所内に避難する際には、鉛直に設置された梯子を使用するため、避難所には一度に数人しか入れず、大人数が避難を完了するまでに時間を要する。また、高齢者、子供、障害者、病人等は梯子の使用が困難である。
【0009】
これらの問題を解決するために、本発明は、地下に設置され、地上に構造物を有しない構造とし、また、大人数や、高齢者、子供、障害者、病人等の避難者が迅速に入室することができる、防水型地下避難所を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る防水型地下避難所は、津波や水害等の対策用として地表面下に設置される密閉防水型の避難所であって、前記避難所の上面は平面形状に形成され、前記避難所は出入用扉と外部確認用孔及び昇降具を有し、前記出入用扉及び前記外部確認用孔は密閉防水機能を有し、前記昇降具は避難時には滑り台形状で使用することを特徴とする。
【0011】
また、前記防水型地下避難所は、前記避難所の上面の平面形状によって、水中に没した際に前記避難所と漂流物との衝突による破損を回避し、及び、設置された地表面と前記避難所の上面との段差を無くしたことを特徴とする。
【0012】
また、前記防水型地下避難所に設置された前記外部確認用孔は、閉塞時には密閉防水機能を有し、開放時には前記避難所内部から情報収集用のカメラを外部に送り出すこと、及び通気口として用いることを特徴とする。
【0013】
また、前記防水型地下避難所は、隣接して複数設置され、前記防水型地下避難所に設けられた扉を通過して、隣接した前記防水型地下避難所と通行が可能なことを特徴とする。
【0014】
また、前記防水型地下避難所は、複数のコンクリート製部品に分割して作製され、設置場所の地表面下に前記複数のコンクリート製部品を組み立てて建設することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る防水型地下避難所は、密閉防水型であり、地下に設置し、地上に構造物を有しない構造とすることにより、台風、大雨等による河川堤防やダムの決壊等の水害や、津波の発生時に水中に没しても、また、水による流失物等の衝撃の影響を受けない構造になっていることから、避難後、設備の損傷の恐れがないため、前記防水型地下避難所内へ避難した避難者への影響が無く、安全な避難の継続が可能である。
【0016】
また、前記防水型地下避難所は、災害発生中に水中に没しても、密閉防水型であり、内部に浸水しない。この時、前記防水型地下避難所に設置された空調機械及び薬品等で1日以上、外気を取り入れることなく、窒息せずに過ごすことができる。また、前記防水型地下避難所に備蓄した、水、食料や、椅子、簡易ベッド、トイレなどにより、災害が鎮静化するまで、避難者は前記防水型地下避難所内で安全に過ごすことができる。
【0017】
また、前記防水型地下避難所は、出入口から床面までの昇降具が滑り台形状になっており、避難時には、短時間で大人数の避難者を前記防水型地下避難所に入室させることができる。また、階段・梯子の昇降に難のある高齢者、子供、障害者、病人等を、滑り台を使用することにより、短時間で安全に入室させることができる。
【0018】
災害発生中に前記防水型地下避難所内から周囲の状況を確認する場合は、密閉型の孔を内部から開き、カメラ等を前記防水型地下避難所の外に出すことにより確認することができる。最小の開閉部のみで周囲の状況を確認することが可能であるため、内部の避難者の安全を確保しつつ、外部の情報を収集することができる。
【0019】
また、災害後に前記防水型地下避難所の漂着物が漂着し、前記防水型地下避難所から退室できなくなった場合でも、避難者は、前記空調機械及び薬品、備蓄品により、外部からの救出が有るまで前記防水型地下避難所内で安全に過ごすことができる。
【0020】
また、設置方法として、前記防水型地下避難所は、工場で複数のコンクリートの箱形の部品(例えば、PCボックスカルバート:登録商標)、に分割して作製され、設置場所の地中に前記コンクリートの部品を並べて組み立て建設することができる。よって、工場で大量に安価に製造し、短時間で建設することが可能である。また、前記コンクリートの部品の個数の増減や、大きさを変更することで、任意の大きさや、任意の収容人数の前記防水型地下避難所を作製することが容易である。
【0021】
また、前記防水型地下避難所は、地中に設置され、天井部が平面であることから、道路や地区の公園、自治会館の駐車場や学校の運動場等の、開けた場所の地下に設置することができる。人々の身近な場所に設置することが可能であるので、避難勧告が発令されてから短時間での身近な前記防水型地下避難所への避難が可能となる。
【0022】
また、前記防水型地下避難所は、災害後は、避難所として住宅等を損失した人々の生活の空間としての利用も可能である。
【0023】
また、前記防水型地下避難所は、通常時は、災害時用の防災倉庫、備蓄倉庫として使用することができる。
【0024】
また、連接して地中に複数の前記防水型地下避難所を設置し、連絡用扉を設け、地中で相互の前記防水型地下避難所を往来して使用することができる。
【0025】
また、前記防水型地下避難所は、災害の前後は、外部電源により前記防水型地下避難所内のバッテリーの充電及び電気機器の使用をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施例を示す防水型地下避難所の側断面図である。
【図2】本発明の第1の実施例を示す防水型地下避難所の上方から見た平面図である。
【図3】図1のI−Iの位置における断面図である。
【図4】図4(A)は、外部観察用孔と防水蓋が密接した状態の断面図、図4(B)は外部観察用孔と防水蓋が離間した状態の断面図である。
【図5】図5(A)本発明の第2の実施例を示す防水型地下避難所の側断面図、図5(B)は、図5(A)のII−IIの位置における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[第1の実施例]
以下、本発明の第1の実施例を図1乃至図4を参照して説明する。図1は、本発明に係る防水型地下避難所の側面断面図、図2は、本発明に係る防水型地下避難所の地上部分の平面図、図3は、本発明に係る防水型地下避難所を図1のI−Iの位置から見た平面図、図4(A)は、外部観察用孔と防水蓋が密接した状態の拡大断面図、図4(B)は外部観察用孔と防水蓋が離間した状態の拡大断面図である。
【0028】
図1に示すように、防水型地下避難所1は、地中に設置され、外壁2によって囲まれた空間を構成し、外壁2は、天井部2a、側壁部2b及び床部2cから成る。天井部2aの外側(上面)は、突起物がなく、平面に構成されている。また、外壁2はコンクリートで成型される。建設方法は、別の場所でコンクリートの箱形の部品として、輪切り状態に分割して作成し、設置場所に防水型地下避難所1の大きさの穴を掘り、前記コンクリートの部品を埋設して組み立てる方法が、工事精度、作成期間等の点から好適である。なお、設置場所に直接コンクリートを流し込む、従来の建設方法でもよい。当該第1の実施例における防水型地下避難所1の大きさは、奥行3m、幅9m、天井高2.5mであり、約60人が避難可能である。
【0029】
天井部2aの外側(上面)で地表に接する部分は、突起物の無い平面となっている。天井部に入り口や通気口等の突起物を設置した場合、津波や水害等が発生した場合は、水圧と漂流物によって、突起物が破損する可能性が非常に高い。破損した場合は、その破損部から水や漂流物が避難所内に流入し、内部の避難者の生命の危機にさらされる恐れがある。そのため、本発明に係る防水型地下避難所1は、破損を避けるべく突起物を設置せず、天井部を平面とした。
【0030】
天井部2aには、1以上の防水扉3、防水コネクター5及び外部観察用孔6が設けられている。防水扉3は、外部(地上)からの防水型地下避難所1への入り口である。開閉方法は開き戸、引き戸等、種類を問わないが、津波や水害等により水中に没するため、密閉防水型で防水型地下避難所1に水が入らない構造になっている。また、漂流物の衝突や、津波後の火災も想定されるので、対衝撃、防火機能を備え、人が1人出入りできる程度の大きさの扉が好適である。
【0031】
防水コネクター5は、地上の外部電源を防水型地下避難所1に接続するための、コンセントである。防水コネクター5は天井部2aの上面の平面から突出しない位置に設置し、水中に没することを考慮し、防水機能を有する。また、未使用時は防水コネクター5に防水型のカバー(図示せず)を組み合わせ、保護することが望ましい。
【0032】
次に図4を用いて、外部観察用孔6と防水蓋25を説明する。図4(A)は、外部観察用孔6と防水蓋25が密接した状態の断面図である。図4(B)は外部観察用孔6と防水蓋25が離間した状態の断面図である。
【0033】
外部観察用孔6は、天井部2aを貫通し、外部と防水型地下避難所1の内部を連通する約直径10cm程度の孔である。外部観察用孔6は、外部と防水型地下避難所1の通気穴として使用する役割、及び、外部観察用筒29を外部に露出して、地上の状況を観察する情報収集に使用する役割を有する。
【0034】
外部観察用孔6には、防水蓋25が勘合する。防水蓋25は防水蓋ねじ部26が設けられ、防水蓋ねじ部26の先端から約2mの防水蓋把手部27が延伸する。外部観察用孔6の内側には、外部観察用孔ねじ部26が設けられ、防水蓋25の防水蓋ねじ部62と螺号し、外部観察用孔6と防水蓋25が密閉ることで、密閉防水機能を有する。防水蓋25が閉じた状態は、防水蓋25は天井部2aから突出せず平面となる。また、防水型地下避難所1内部の避難者は、防水蓋把手部27を掴んで防水蓋25を回転させ、防水蓋25を外部観察用孔6から離間させて、はずすことができる。
【0035】
津波や水害等の発生時に、防水型地下避難所1は水中に没することを想定するため、外壁2、防水扉3、防水コネクター5及び外部観察用孔6は密閉防水型とし、防水型地下避難所1の内部空間に浸水することを防ぐ。また、防水扉3、防水コネクター5及び外部観察用孔6は、津波や水害の後の漂着物が上に載って開閉不可能になる恐れがあることから、間隔を開けて複数設置することが望ましい。
【0036】
次に、防水型地下避難所1の内部の設備について説明する。防水型地下避難所1は内部空間に、昇降具11を有し、食料・生活用品(図示せず)等を備蓄する。
【0037】
昇降具11は、防水扉3の直下約50cmの位置に設置される。避難者は地上の出入口である防水扉3から防水型地下避難所1に入り、昇降具11で床部2cに降りる。本発明では、昇降具11は階段であり、前記階段には平面状のカバー(図示せず)で覆われており、前記カバーの上面は、滑り台として使用することができる。避難者は、避難時の入室の際には、前記カバーを滑り台として使用して防水型地下避難所1に入室する。前記滑り台を使用することで、短時間で大人数を避難させることが可能である。全員の避難が終了した後は、昇降具11から前記カバーを取り外して階段として使用する。なお、別途垂直式の梯子や、車椅子用のリフトなどを設置しておいてもよい。
【0038】
防水型地下避難所1の床部2c上面には、食料・生活用品として水、食料、寝具等の約60人が数日分生活できる備蓄及び、備品(図示せず)として、避難者の休息用に椅子、簡易ベッド、電源(バッテリー、手動式発電機、等)、照明、トイレ、テレビ、無線機、テレビカメラ用のモニタ等の設備と、空調設備(図示せず)として、酸素ボンベ、空気濾過機、空気清浄器械、及び炭酸ガス吸着剤等を有する。
【0039】
格納場所は、昇降具11と床部2cの間や、椅子と床部2cの空間や、側壁部2bに沿って、収納棚を設置しても良い。また、災害後の生活の再建に必要な物資や資材を備蓄しておいてもよい。
【0040】
[設置場所]
本発明に係る防水型地下避難所1は、地中に設置され、天井部2aの外側(上面)が平面であることから、道路や地区の公園、自治会館の駐車場や学校の運動場等の、開けた場所の地下に設置することができる。しかしながら、防水型地下避難所1の地上(天井部2aの上面)に建築物を設置することは、津波や水害等で建築物が破損した場合に、がれきが地上との出入り口である防水扉3を塞ぐ可能性があることから、望ましくない。
【0041】
防水型地下避難所1は、設置場所の面積に合せて、任意の大きさに設計を変更し、製造することが容易に可能である。人々の身近な場所に設置可能であることから、避難勧告が発令されてから短時間での避難が可能になり、日常生活において地域住民等に安心を提供することできる。さらに、避難地図に本防水型地下避難所1を記載すれば、地域住民や災害時にその周囲に居合わせた人々が避難場所を知ることができ、より一層、安心を提供することができる。
【0042】
[避難方法]
津波や洪水警報が発令された場合、避難者は、地上の出入口である防水扉3から防水型地下避難所1に入り、昇降具11で地下の床部2cに降りる。このとき、昇降具11は滑り台形状の前記カバーを使用し、避難者は床部2cに滑り降りる。避難する際に、階段/梯子を使用すると、避難所には一度に数人しか入れず、また、高齢者、子供、障害者、病人等は、階段/梯子の下降に困難が生じる場合があり、大人数が避難を完了するまでに時間を要してしまう。津波や洪水の到達速度は速いため、一分一秒を急ぎ避難する必要がある。そこで、ビルや飛行機からの緊急避難時のように、滑り台を使用することで大人数を迅速に、安全に非難させることができる。
【0043】
最後の避難者は、防水扉3を閉じる。また、外部観察用孔6の防水蓋25を、防水蓋把手部27を掴んで回し、外部観察用孔ねじ部21と防水蓋ねじ部26とを密着させ閉じる。防水扉3と防水蓋25を閉じると、防水型地下避難所1は完全な密閉防水となり、天井部2aが水面下に沈んでも、水漏れすることなく、安全に避難することができる。また、防水型地下避難所1の周囲の土壌がえぐられて側壁部2bが水に触れても、水漏れすることは無い。
【0044】
津波や水害等の災害が鎮静化するまで、避難者は防水型地下避難所1で過ごす。このとき、防水型地下避難所1内は、前記電源によって、前記照明、前記空気濾過機、空気清浄器械が稼動し、快適に過ごすことができる。
【0045】
また、前記炭酸ガス吸着剤で避難者の呼吸から生じる二酸化炭素を吸収すること及び、前記酸素ボンベで酸素を供給し、前記空気濾過機及び空気清浄器械によって、空気を浄化させることによって、窒息せずに防水型地下避難所1内で過ごす事ができる。前記酸素ボンベ及び炭酸ガス吸着剤は、約60人が最低限1日以上生存できる量を備蓄しておく必要がある。炭酸ガス吸着剤は、ゼオライト、活性炭、アルミナなどの吸着剤に、二酸化炭素を選択吸着させ、分離・回収する手法である。
【0046】
災害後、十分な時間が経過し、鎮静化と思われる頃、地上の状況を確認する場合は、避難者は、防水蓋25の、防水蓋把手部27を掴んで回し、防水蓋25を外部観察用孔6から外す。そして、先端がL字型になった長い筒状の外部観察用筒29の先端に、カメラやマイクを設置しカメラの映像を防水型地下避難所1内に設置したテレビやモニタに映すことで、外部の状況を確認することができる。また、防水蓋25を外部観察用孔6から外すことで、外気が入り、防水型地下避難所1の換気が可能となる。
【0047】
外部観察用筒29によって、地上の状況が安全だと判断した場合は、避難者は昇降具11の前記カバーを外して普通の階段として使用し、防水扉3を開けて地上に出て、他の避難所や施設に避難する。
【0048】
しかし、地上の安全が確認できなかった場合や、防水型地下避難所1の地上に漂着物や瓦礫が載り、防水蓋25や防水扉3が開閉不可能な場合等は、防水型地下避難所1内に滞在し、備蓄された食料・生活用品を使用して、安全に外部からの救助を待つことができる。
【0049】
また、防水型地下避難所1から退室しても、地上の家屋等が破壊され、避難所が必要な場合は、再び防水型地下避難所1に備蓄された食料・生活用品を使用し、一定の期間を過ごすことができる。このとき、外部電源が取得可能であれば、外部電源を防水コネクター5接続することで、防水型地下避難所1内の電気製品を外部電源で使用すること及び、バッテリーの充電をすることができる。また、防水扉3及び外部観察用孔6を開放することで、換気が十分に行える。
【0050】
[第2の実施例]
以下、本発明の第2の実施例を図5を参照して説明する。図5(A)は、複数連結した防水型地下避難所の側面図、図5(B)は図5(A)のIIの位置における平面断面図である。
【0051】
図5に示す防水型地下避難所51、61、71は、防水型地下避難所1と同じ構造をしており、それぞれ独立し、避難所として同一の機能を有する。防水型地下避難所51、61、71の側壁はそれぞれ連絡用扉52a、62a、62b、72bが設置されている。連絡用扉52a、62a、62b、72bは防水扉3と同様に、完全密閉型で水が入らない構造であり、対衝撃、防火機能を備えた、人が1人出入りできる程度の大きさの扉が好適である。防水型地下避難所51、61、71はそれぞれ連絡用扉52a、62a、62b、72bを通過して、お互いの防水型地下避難所を往復することが可能である。
【0052】
このように、複数の防水型地下避難所を連結して使用することが可能である。例えば、それぞれの防水型地下避難所に役割を持たせ、病室用は防水型地下避難所51、集会所用は防水型地下避難所61、一般避難者用は防水型地下避難所71として使用することも考えられる。
【0053】
もし一つの防水型地下避難所に故障や疫病等の問題が発生した場合、前記連絡用扉を閉じて閉鎖することで、他の前記防水型地下避難所との往来を制限することで、他の前記防水型地下避難所への被害の拡大を防ぐことができる。
【0054】
本実施例は、例えば、道路等の地下に連続して複数の防水型地下避難所を設置する場合に好適である。また、長手方向への連結だけでなく、短い奥行き方向への複数の連結も可能である。設置場所に応じて、個数、連結形態を任意に設置することができる。
【0055】
以上述べたように、本発明に係る防水型地下避難所によれば、密閉防水型であり、地下に設置し、地上に構造物を有しない構造とすることにより、台風、大雨等による河川堤防やダムの決壊等の水害や、津波の発生時に水中に没しても、また、水による流失物等の衝撃の影響を受けない構造になっていることから、避難後、設備の損傷の恐れがないため、避難者への影響が無く、安全な避難の継続が可能である。
【0056】
また、前記防水型地下避難所は、災害発生中に水中に没しても、密閉防水型であり、内部に浸水しない。この時、前記防水型地下避難所に設置された空調機械及び薬品等で1日以上、外気を取り入れることなく、窒息せずに過ごすことができる。また、前記防水型地下避難所に備蓄した、水、食料や、椅子、簡易ベッド、トイレなどにより、災害が鎮静化するまで、避難者は前記防水型地下避難所内で安全に過ごすことができる。
【0057】
また、前記防水型地下避難所は、出入口から床面までの昇降具が滑り台形状になっており、避難時には、短時間で大人数の避難者を前記防水型地下避難所に入室させることができる。また、階段・梯子の昇降に難のある高齢者、子供、障害者、病人等を、滑り台を使用することにより、短時間で安全に入室させることができる。
【0058】
災害発生中に前記防水型地下避難所内から周囲の状況を確認する場合は、密閉型の孔を内部から開き、カメラ等を前記防水型地下避難所の外に出すことにより確認することができる。最小の開閉部のみで周囲の状況を確認することが可能であるため、内部の避難者の安全を確保しつつ、外部の情報を収集することができる。
【0059】
また、災害後に前記防水型地下避難所の漂着物が漂着し、前記防水型地下避難所から退室できなくなった場合でも、避難者は、前記空調機械及び薬品、備蓄品により、外部からの救出が有るまで前記防水型地下避難所内で安全に過ごすことができる。
【0060】
また、設置方法として、前記防水型地下避難所は、工場で複数のコンクリートの箱形の部品(例えば、PCボックスカルバート:登録商標)に分割して作製され、設置場所の地中に前記コンクリートの部品を並べて組み立て建設することができる。よって、工場で大量に安価に製造し、短時間で建設することが可能である。また、前記コンクリートの部品の個数の増減や、大きさを変更することで、任意の大きさや、任意の収容人数の前記防水型地下避難所を作製することが容易である。
【0061】
また、前記防水型地下避難所は、地中に設置され、天井部が平面であることから、道路や地区の公園、自治会館の駐車場や学校の運動場等の、開けた場所の地下に設置することができる。人々の身近な場所に設置することが可能であるので、避難勧告が発令されてから短時間での身近な前記防水型地下避難所への避難が可能となる。
【0062】
また、前記防水型地下避難所は、災害後は、避難所として住宅等を損失した人々の生活の空間としての利用も可能である。
【0063】
また、前記防水型地下避難所は、通常時は、災害時用の防災倉庫、備蓄倉庫として使用することができる。
【0064】
また、連接して地中に複数の前記防水型地下避難所を設置し、連絡用扉を設け、地中で相互の前記防水型地下避難所を往来して使用することができる。
【0065】
また、前記防水型地下避難所は、災害の前後は、外部電源により前記防水型地下避難所内のバッテリーの充電及び電気機器の使用をすることができる。
【0066】
この発明は、その本質的特性から逸脱することなく数多くの形式のものとして具体化することができる。よって、上述した実施形態は専ら説明上のものであり、本発明を制限するものではないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0067】
1 防水型地下避難所
2 外壁
2a 天井部
2b 側壁部
2c 床部
3 防水扉
5 防水コネクター
6 外部観察用孔
11 昇降具(滑り台)
21 外部観察用孔ねじ部
25 防水蓋
26 防水蓋ねじ部
27 防水蓋把手部
29 外部観察用筒
51、61、71 防水型地下避難所
52a、62a、62b、72b 連絡用扉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水害及び津波対策用として地表面下に設置される密閉防水型の避難所であって、
前記避難所の上面は平面形状に形成され、
前記避難所は出入用扉と外部確認用孔及び昇降具を有し、
前記出入用扉及び前記外部確認用孔は密閉防水機能を有し、
前記昇降具は避難時には滑り台形状で使用すること
を特徴とする防水型地下避難所。
【請求項2】
前記避難所の上面の平面形状によって、
水中に没した際に前記避難所と漂流物との衝突による破損を回避し、
及び、設置された地表面と前記避難所の上面との段差を無くしたこと
を特徴とする請求項1に記載の防水型地下避難所。
【請求項3】
前記外部確認用孔は、閉塞時には密閉防水機能を有し、開放時には前記避難所内部から情報収集用のカメラを外部に送り出すこと、及び通気口として用いること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の防水型地下避難所。
【請求項4】
前記防水型地下避難所は隣接して複数設置され、前記防水型地下避難所に設けられた扉を通過して、隣接した前記防水型地下避難所と通行が可能なこと
を特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1に記載の防水型地下避難所。
【請求項5】
前記防水型地下避難所は、複数のコンクリート製部品に分割して作製され、設置場所の地表面下に前記複数のコンクリート製部品を組み立てて建設すること
を特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1に記載の防水型地下避難所。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−255316(P2012−255316A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129882(P2011−129882)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(301028901)株式会社鉄組潜水工業所 (6)
【出願人】(300089932)有限会社アイアン (5)
【Fターム(参考)】