防災用収納箱
【課題】 通常時は防災用品等を収納する倉庫として広いスペースを活用できると共に、非常時での利用の迅速性、簡易性を重視した防災用収納箱を提供することを目的とする。
【解決手段】 前記防災用収納箱1は防災用品(図示せず)等を収納可能な建物であって、その内部に倉庫スペース10とこの倉庫スペース10の下に収納スペース11を備えている。前記収納スペース11は、その上方のカバーとなり且つ一辺を中心に回転起立されることによって前記倉庫スペース10を間仕切り可能な床面3と、この床面3に収容され、且つ、回転起立された前記床面3の上方の倉庫スペース10をさらに仕切ることができるスライド板4を備えている。よって収納スペース11に例えば便器5が設置されていれば、迅速、簡易に、独立したトイレブースが形成されることになり、男女を問わずにプライバシーが保護されて使い勝手がよい小部屋2を備えた収納箱1を提供することができる。
【解決手段】 前記防災用収納箱1は防災用品(図示せず)等を収納可能な建物であって、その内部に倉庫スペース10とこの倉庫スペース10の下に収納スペース11を備えている。前記収納スペース11は、その上方のカバーとなり且つ一辺を中心に回転起立されることによって前記倉庫スペース10を間仕切り可能な床面3と、この床面3に収容され、且つ、回転起立された前記床面3の上方の倉庫スペース10をさらに仕切ることができるスライド板4を備えている。よって収納スペース11に例えば便器5が設置されていれば、迅速、簡易に、独立したトイレブースが形成されることになり、男女を問わずにプライバシーが保護されて使い勝手がよい小部屋2を備えた収納箱1を提供することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防災用品等を備蓄することができる防災用収納箱に関する。
【背景技術】
【0002】
1995年に起きた阪神・淡路大震災は、都市のライフライン等に甚大な被害を与えたが、その中で罹災者を苦しめたトラブルにトイレ問題を始めとする生活衛生面の問題があった。
トイレの個数不足に対しては、非特許文献1のような、建設現場等に設置される仮設トイレを多数、被災地に投入することで解消させることができる。
しかし、このような仮設トイレは、機能本位な構成、外観であって、女性には敬遠される恐れがあった。
【0003】
一方、特許文献1では、物置、物置用トイレキットに関し、たとえば災害時等に有効に機能する物置、物置用トイレキットが開示されている。
これは平常時および非常時のいずれにおいても設置スペースを有効に活用することが可能な物置を提供することにあるとされ、物置等の建物床下空間のデッドスペースの有効利用に着目したものであった。
【非特許文献1】旭ハウス工業株式会社 取扱商品 AUトイレ 2008年10月30日検索 インターネット <URL http://www.asahi−ouse.com/item/au.html>
【特許文献1】特開2008−2214
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、かかる物置、物置用トイレキットにおいては、複数個のトイレを同時に使用させる建物の構成に関しては、倉庫スペースが複数の小型収納室に細分化されており、倉庫の容積性に問題があった。また、非常時には「大便器151、小便器152等を取り出し、床パネル156、床パネル157を外して便槽蓋153、便槽蓋154の便器用開口部153a、便器用開口部154aに設置して物置100を簡易トイレとして利用する」旨、記載されており、被災地の混乱の中での迅速なトイレの設置に不安があった。
さらに、デッドスペースの利用方法としてはトイレの利用に限定されていた。
【0005】
そこで、本願発明は、通常時は防災用品等を収納する倉庫として広いスペースを活用できると共に、非常時での利用の迅速性、簡易性を重視した防災用収納箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本願発明は、内部に倉庫スペースとその下に少なくとも1つ収納スペースを備える防災用収納箱において、前記収納スペースは、その上方のカバーとなり、且つ、一辺を中心に回転起立されることによって前記倉庫スペースを間仕切り可能な床面と、この床面に収容され、且つ、回転起立された前記床面の上方の倉庫スペースをさらに仕切ることができるスライド板を備えたことを特徴とする防災用収納箱とした(請求項1の発明)。
【0007】
本発明においては、収納スペースをカバーしている床面を、その一辺を中心に回転起立させることで、前記収納スペースを倉庫スペースに臨ませると共に、前記床面と、この床面に収容され、且つ、回転起立された前記床面の上方の倉庫スペースをさらに仕切ることができるスライド板により、前記倉庫スペースを収納スペース毎に区間可能な小部屋を形成することができる。
よって、小部屋の形成作業が簡単となっていて、その利用の迅速性、簡易性を重視した防災用収納箱を提供することができる。
【0008】
上記課題を解決するため、本願発明は内部に倉庫スペースとその下に少なくとも1つ収納スペースを備える防災用収納箱において、前記収納スペースは、その上方のカバーとなり、且つ、一辺を中心に回転起立されることによって前記倉庫スペースを間仕切り可能な床面を備えたことを特徴とする防災用収納箱とした(請求項2の発明)。
床面を回転起立させるのみで、前記倉庫スペースを間仕切り可能な場合においても、上記作用効果が発揮される。
【0009】
上記課題を解決するため、本願発明は内部に倉庫スペースとその下に少なくとも1つ収納スペースを備える防災用収納箱において、収納箱の四周壁の一面に開口部を備える共に、他の一面に前記開口部より大きい開口部を備えたことを特徴とする防災用収納箱とした(請求項3の発明)。
例えば、大きな開口部を倉庫スペースに臨ませることにより、大型の防災用設備、機械、その他の防災用品等の搬出、搬入の作業効率を向上させることができる。
【0010】
上記床面は、その回転起立の中心となる一辺に沿って、複数枚に分割されていることを特徴とする防災用収納箱とした(請求項4の発明)。
床面を複数枚に分割することによって床面の重量を分散させることができ、床面の回転起立の作業が容易となる。
【0011】
上記床面には、起立保持部が備わっていることを特徴とする防災用収納箱とした(請求項5の発明)。また、上記床面から引き出されたスライド板を保持させる保持部が備わっていることを特徴とする防災用収納箱とした(請求項6の発明)。
【0012】
さらに、上記保持部によって保持されているスライド板に対し、そのスライド板を保持させる第2の保持部が備わっていることを特徴とする防災用収納箱とした(請求項7の発明)。
上記保持部の保持機能が解除されたとしても、第2の保持部がスライド板を保持することで、小部屋のブラバシーを確保することができる。
【0013】
上記隣接するスライド板間には、目隠部が備わっていることを特徴とする防災用収納箱とした(請求項8の発明)。
スライド板間に隙間が形成されていても、目隠部があることで小部屋のブラバシーを保持することができる。
【0014】
上記床面は、巻上機により起立可能に構成されていることを特徴とする防災用収納箱とした(請求項9の発明)。
床面の回転起立の作業が容易になっている。
【0015】
する防災用収納箱
上記収納スペースには便器が収納されていることを特徴とした(請求項10の発明)。
前記収納スペースには便器等が設置可能であればよく、また便器等のセットが収容されていてもよく、さらに便器等が設置されていて、直ちに使用できる状態でもよい。なお、収納スペースに収容される対象物は、便器に限定されるものではなく、収納スペースの設置物に応じて多用途に利用することができる収納箱となっている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、小部屋の形成過程が簡単となっていて、その利用の迅速性、簡易性を重視した防災用収納箱を提供することができる。
また、通常時は防災用品等を収納する倉庫として倉庫スペース及び収納スペースを活用できる。
また、非常時は防災用品等を搬出した後に形成される小部屋を多用途に利用することができる。
さらに小部屋によりプライバシーの保護が確保されて男女を問わずに使い勝手がよい構成となっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に係る防災用収納箱の実施形態を図面に基いて説明する。
図1乃至図4は実施形態に係る防災用収納箱の外観正面図、同外観背面図、同左右側面図、図5乃至図7は同防災用収納箱の通常時の実施形態を示す水平断面図、同正面視縦断面図、同側面視縦断面図、図8乃至図10は同防災用収納箱の非常時の実施形態を示す水平断面図、同正面視縦断面図、同側面視縦断面図である。
これらの各図及び後述の各図において、同一の構成は同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0018】
防災用収納箱1(以下、収納箱1とも称する)は、図1〜図7に示したように防災用品(図示せず)等を収納可能な建物であって、その内部に倉庫スペース10とこの倉庫スペース10の下に収納スペース11を備えている。
【0019】
前記収納スペース11は、図6及び図9のように、その上方のカバーとなり、且つ、一辺30を中心に回転起立されることによって前記倉庫スペース10を間仕切り可能な床面3と、この床面3に収容され、且つ、回転起立された前記床面3の上方の倉庫スペース10をさらに仕切ることができるスライド板4を備えている。
【0020】
よって、通常時には倉庫スペース10が防災用品等を収納する倉庫として活用される。
一方、地震等の災害発生の非常時には倉庫スペース10から防災用品等が搬出された後に、前記床面3をその一辺を中心にして回転起立させることで前記収納スペース11を倉庫スペース10に臨ませると共に、前記床面3と、スライド板4により、前記倉庫スペース10を収納スペース11毎に区間可能としている。
収納スペース11に例えば便器5が設置されていれば、迅速、簡易に、独立したトイレブースが形成されることになり、男女を問わずにプライバシーが保護されて使い勝手がよい小部屋2を備えた収納箱1を提供することができる。
【0021】
前記防災用品は、例えば、炊飯用具、飲料水、保存食料、燃料、ストーブ、簡易トイレ、シート、毛布等の防寒品、ポリタンク、発電機、救急用品等であって、災害時に罹災者の生活に必要な物である。
その他、前記収納箱1の設置場所に応じて、収納対象は変わってくる。例えば、設置場所が公園内であれば、公園の管理に必要な物品が含まれる。また、設置場所が公的な会館等であれば、会館の器具備品等が含まれる。
【0022】
前記収納箱1は、主として動産的に組立可能なもの、移築可能なものであって、例えばユニットハウス、仮設ハウス、倉庫、多目的ハウス等と称され、物等を収納できる建物である。また、ユニット建物のように規格化され、連設されるようなものも含まる。
【0023】
前記収納箱1は、図1乃至図4のように四周壁(外壁)12、屋根13、床14からなり、四周壁12の一面には、倉庫スペース10及び収納スペース11への出入り口となる開口部としてのドア15を備える共に、図3のように、他の一面となる左側面には、前記ドア15より大きい開口部17を備えている。
前記開口部17には、シャッター18が備えられていて、倉庫スペース10への大型の防災機器、防災用品等の搬入、搬出の作業効率を向上させることができる。
その他、外壁12には換気扇16が、屋根13には太陽電池パネル(図示せず)がそれぞれ取付可能となっている。
前記収納箱1の外壁12、屋根13、床14等はパネル式となっていて、現地設置でのノックダウンが可能となっている。
【0024】
前記倉庫スペース10は、外壁12、屋根13、床14及び床面3によって囲まれた空間であって、概ね1つの空間を指す。
倉庫スペース10の他に、居住用の空間や事務所用の空間等を設けてもよく、その場合には居住空間等の中に独立する小部屋2を区画可能に構成してもよい。
【0025】
前記収納スペース11は、前記床面3、外壁12又は後述の固定間仕切6及び床14によって囲まれた空間であって、少なくとも1の空間が形成されている。
【0026】
前記小部屋2は、前記床面3、スライド板4、固定間仕切6の合計高さが平均的な身長の大人が隠れる程度のものすることができる空間から構成されている。
なお、前記小部屋2は上述のようにトイレブースとなるが、収納スペース11に収納されているものが耐水性のパレット等であれば、シャワーブースになり、浴槽であれば風呂ブースになり、それぞれ収納スペース11に収納されているものによって、その用途が決定される。
【0027】
前記床面3は、図5のように収納スペース11に収納される収納物に応じて分割され、分割された各床面3a〜3cはその各一辺30に沿って複数枚の単位床面30a〜30cに分割されている。
以下では、図11〜図17に基づいて、床面3bの単位床面30a〜30cの内、中央の単位床面30bを他の単位床面に代表させてその構成例を説明する。
図11は単位床面30bの正面図、図12は同平面図、図13は同側面図であり、図14は単位床面30cの正面図である。
図15は単位床面30bに内蔵されているスライド板4の正面図、図16は同平面図であり、図17は単位床面30cに内蔵されているスライド板4の正面図である。
【0028】
前記床面30bは、フレーム31と、このフレーム31に固定されたボード32と、前記フレーム31の底辺31aに取り付けられた丁番33と、前記フレーム31の対向する側辺31b、31bに、その両端がスライド可能に収納されたスライド板4を備えている。
前記フレーム31の上辺31cには起立保持部としてのスライドボルト34が取付けられている。図示は省略するが、スライドボルト34のシャフトの先端が出没する受けが、隣接し、且つ、回転起立される単位床面30aのフレーム31の上辺31cに設けられている。
前記フレーム31の一方の側辺31bには、後述の巻上機によって、単位床面30aを連動させて回転起立させるための床面連動金具35が設けられている。
また前記フレーム31の両側辺31b、31bには、前記スライド板4を保持させるラッチ40と共に保持部を構成するストッパ36が形成されている。
なお、単位床面30cは、図14のように単位床面30a、30bに比べて、幅広に構成されているが、その他の構成は単位床面30a、30bと略同一である。
【0029】
前記スライド板4は、図15〜図17に図示したように、前記ラッチ40、40と、隣接するスライド板4、4との間の隙間を隠す目隠部41と、前記ラッチ40によって保持されているスライド板4に対し、そのスライド板をさらに保持させる第2の保持部としてストッパ金具42(図示は省略)が備わっている。
ストッパ金具42としては、たとえば、前記スライド板4の裏面43に本体が固定され、その本体から楔状に回動される枝部が前記フレーム31の上辺31cに当接するようなものでもよい。
なお、単位床面30cに内蔵されているスライド板4は、図17のように単位床面30a、30bのスライド板4に比べて、幅広に構成されているが、その他の構成は単位床面30a、30bのスライド板4と略同一である。
【0030】
以上の構成による単位床面30bによれば、図18のように、<○1> 単位床面30bの丁番33を介しての回転起立動作、<○2> スライドボルト34のシャフトの受けへの係合動作、<○3> スライド板4の引き上げ動作、<○4> ラッチ40のストッパ36に対する係止動作、必要に応じた<○5> スライド板4の裏面43からのストッパ金具42による単位床面30bへの係止動作で、小部屋2が形成される。
よって、特別な冶具を用いることなく、また他の構成部材を付加させることなく、迅速、簡単な作業内容となっている。
特に、前記<○1>の動作は、前記スライド板4を内蔵した各床面3a〜3cは単位床面30a〜30cに分割されているので、単位床面30a〜30cが軽量化されることとなり、作業性が向上している。
【0031】
前記固定間仕切板6は、上述のように収納スペース11の間仕切りとなるもので、図19及び図20の図示の通り、本体60と、この本体60を床14に固定する固定部61と、前記床面3の端部を支える床面サポート部62を備え、この床面サポート部62には前記単位床面30bの底辺31aの丁番33を固定する固定金具63(図11参照)を備えている。
【0032】
以上のように構成された収納箱1について、図21A及び図21Bに基づいて、通常時の実施態様(図21A(1)参照)から非常時の実施態様への移行方法を説明する。
【0033】
まず、床面3cの単位床面30aを回転起立させ(図21A(2)参照)、前記スライドボルト34のシャフトの先端を外壁12に設けられた受けに係合させて、その起立状態を保持させる。
次に、スライド板4を上方に引き出して、前記単位床面30aのストッパ36に前記ラッチ40を係止させる(図21A(3)参照)。
同様に、隣接する単位床面30bを回転起立させ(図21A(3)参照)、そのスライドボルト34のシャフトの先端を単位床面30aに設けられた受けに係合させて、その起立状態を保持させる。
その後同様にスライド板4の立設、単位床面30cの回転起立、スライド板4の立設を行う(図21A(4)、(5)参照)。
なお、単位床面30cの場合には、そのスライドボルト34のシャフトの先端を外壁12に設けられた受け(図示せず)に係合させて、その起立状態を保持させる。
また、係合をより強固にしたい場合は、単位床面30bと30cにスライドボルト34と受けを追加して設けることもできる。
以下、同様な手順によって、各床面3b、3cから小部屋2を形成することで、図21B(7)及び同(8)に示したようなトイレブースが形成される。
必要に応じて、スライド板4の裏面43からのストッパ金具42による単位床面への係止動作を加えることができる。
【0034】
なお、以上の手順では3ヵ所のトイレブースがすべて形成されるようにしたが、需要に応じてその数を調整することができる。
また、前記便器5は便槽と一体のものを収納しておいてもよいが、下水管に隣接して収納箱1を設置できる場合には、便器5からパイプ等を介しての下水管への直流方式でもよい。
【0035】
以上のような防災用収納箱1の作用効果は、次の通りである。
1. 各単位床面30a〜30cの回転起立と、スライドボルト34による保持、スライド板4の引き出しとラッチ40による保持という作業により、簡単、迅速に小部屋2が形成され、その利用の迅速性、簡易性を重視した防災用収納箱を提供することができる。
2. 各床面3a〜3cが単位床面30a〜30cに分割されているので、各床面3a〜3cの重量も分散されて、床面3a〜3cの回転起立の作業が容易となっている。
3. 前記開口部17は、シャッター18が備えられていて、倉庫スペース10への大型の防災機器、防災用品等の搬入、搬出の作業効率を向上させることができる。
4. 収納箱1の収納スペース11の使用目的、用途を自由に設定でき、倉庫スペース10が、その目的、用途に応じた小部屋2を備えた空間に可変可能である。
5. 各小部屋2の独立性が高いので、非常時に際してもプライバシーの保護を図ることができる。さらに、プライバシーの保護は、前記目隠部41、前記ストッパ金具42によって徹底されている。
6. 起立された床面3の通常状態への復帰は、上記手順を逆行させればよく、再度倉庫スペース10に容易に可変させることができる。
【0036】
なお、前記収納スペース11が広く、その上方の床面3を回転起立させた場合にプライバシーの保護に十分な高さになれば、その床面3のみで前記倉庫スペース10を間仕切り可能なようにすることもできる。
【0037】
次に巻上機(ウインチ)19により床面3a〜3cを起立可能にする構成例を説明する。
図6等に図示されているように、ウインチ19は、取付台を介して外壁12の内面に固定されており、このウインチ19のワイヤを中継する滑車19aが前記内面に取り付けられている。
【0038】
以上の巻上機(ウインチ)19が取付けられた収納箱1について、図22A及び図22Bに基づいて、床面3が敷設された通常時の実施態様(図22A(1)参照)から非常時の実施形態への移行手順を説明する。
【0039】
まず、ウインチ19のワイヤ19bの一端を滑車19aを介して床面3cの単位床面30cの上部に固定する(図22A(2)参照)。
ウインチ19によりワイヤ19bを巻き戻すと、各単位床面30cと30bの一片の側辺31bに設けられた前記連動金具35が、隣接する各単位床面30bと30aの他片の側片31bの下方に位置していることにより、各単位床面30a〜30cが連動されて同時に3枚の単位床面30a〜30cが回転起立される。
なお、連動金具35は単位床面30cと30bの片側(扉15側)のみに設けてあるので、手動で単位床面30a〜30cを回転起立させる場合は連動しない。
この状態で各スライドボルト34を各受けに係合させて、その起立状態を保持させる(図22A(2)、同図(3)参照)。
その後、ワイヤ19bを解いて、順次、各スライド板4を上方に引き出して、各ストッパ36に前記ラッチ40を係止させる(図22A(4)〜同図(6)参照)。
上記と同様な手順によって、各床面3b、3cから小部屋2を形成する(図22C(7)〜同図(8)参照)。
なお、必要に応じて、スライド板4の裏面43からのストッパ金具42による単位床面への係止動作を加えることができる。
その結果、図22C(9)に示したようなトイレブースが形成される。
【0040】
以上の収納箱1によれば、上記作用効果に加えて、最小単位の作業員、例えば一人によっても、簡単、迅速に小部屋2を形成することができる。
【0041】
上記構成の収納箱1は、収納スペース11に便器5を設置していたが、図23〜図24に示した収納箱1Aのように、収納スペース11を一部省いて、そこに車椅子対応のトイレ50を設置してもよい。
この場合に、前記開口部17に隣接する場所に車椅子対応のトイレ50を設置することで、スロープ51の設置等も容易となる。
その他の収納箱1Aの構成は、収納箱1と同様であり、同一の作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施形態に係る防災用収納箱の外観正面図、
【図2】同背面図、
【図3】同左側面図、
【図4】同右側面図、
【図5】実施形態に係る防災用収納箱の通常時の水平断面図、
【図6】同正面から見た縦断面図、
【図7】同側面から見た縦断面図、
【図8】実施形態に係る防災用収納箱の非常時の水平断面図、
【図9】同正面から見た縦断面図、
【図10】同側面から見た縦断面図、
【図11】単位床面の正面図、
【図12】同平面図、
【図13】同側面図、
【図14】単位床面の正面図、
【図15】スライド板の正面図、
【図16】同平面図、
【図17】スライド板の正面図、
【図18】単位床面の動作説明図、
【図19】固定間仕切板の正面図、
【図20】同側面図、
【図21A】通常時から非常時への移行手順説明図、
【図21B】通常時から非常時への移行手順説明図、
【図22A】通常時から非常時への移行手順説明図、
【図22B】通常時から非常時への移行手順説明図、
【図22C】通常時から非常時への移行手順説明図、
【図23】他の実施形態に係る防災用収納箱の外観正面図、
【図24】同正面視断面図、
【図25】同平面視断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 防災用収納箱
10 倉庫スペース
11 収納スペース
12 外壁
13 屋根
14 床
15 ドア
16 換気扇
17 開口部
18 シャッター
19 ウインチ
2 小部屋
3 3a 3b 3c 床面
30a 30b 30c 単位床面
30 床面の一辺
31 フレーム
31a 底辺
31b 側辺
31c 上辺
32 ボード
33 丁番
34 スライドボルト
35 連動金具
36 ストッパ
4 スライド板
40 ラッチ
41 目隠部
42 ストッパ金具
43 裏面
5 50 便器
6 固定間仕切板
【技術分野】
【0001】
本発明は、防災用品等を備蓄することができる防災用収納箱に関する。
【背景技術】
【0002】
1995年に起きた阪神・淡路大震災は、都市のライフライン等に甚大な被害を与えたが、その中で罹災者を苦しめたトラブルにトイレ問題を始めとする生活衛生面の問題があった。
トイレの個数不足に対しては、非特許文献1のような、建設現場等に設置される仮設トイレを多数、被災地に投入することで解消させることができる。
しかし、このような仮設トイレは、機能本位な構成、外観であって、女性には敬遠される恐れがあった。
【0003】
一方、特許文献1では、物置、物置用トイレキットに関し、たとえば災害時等に有効に機能する物置、物置用トイレキットが開示されている。
これは平常時および非常時のいずれにおいても設置スペースを有効に活用することが可能な物置を提供することにあるとされ、物置等の建物床下空間のデッドスペースの有効利用に着目したものであった。
【非特許文献1】旭ハウス工業株式会社 取扱商品 AUトイレ 2008年10月30日検索 インターネット <URL http://www.asahi−ouse.com/item/au.html>
【特許文献1】特開2008−2214
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、かかる物置、物置用トイレキットにおいては、複数個のトイレを同時に使用させる建物の構成に関しては、倉庫スペースが複数の小型収納室に細分化されており、倉庫の容積性に問題があった。また、非常時には「大便器151、小便器152等を取り出し、床パネル156、床パネル157を外して便槽蓋153、便槽蓋154の便器用開口部153a、便器用開口部154aに設置して物置100を簡易トイレとして利用する」旨、記載されており、被災地の混乱の中での迅速なトイレの設置に不安があった。
さらに、デッドスペースの利用方法としてはトイレの利用に限定されていた。
【0005】
そこで、本願発明は、通常時は防災用品等を収納する倉庫として広いスペースを活用できると共に、非常時での利用の迅速性、簡易性を重視した防災用収納箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本願発明は、内部に倉庫スペースとその下に少なくとも1つ収納スペースを備える防災用収納箱において、前記収納スペースは、その上方のカバーとなり、且つ、一辺を中心に回転起立されることによって前記倉庫スペースを間仕切り可能な床面と、この床面に収容され、且つ、回転起立された前記床面の上方の倉庫スペースをさらに仕切ることができるスライド板を備えたことを特徴とする防災用収納箱とした(請求項1の発明)。
【0007】
本発明においては、収納スペースをカバーしている床面を、その一辺を中心に回転起立させることで、前記収納スペースを倉庫スペースに臨ませると共に、前記床面と、この床面に収容され、且つ、回転起立された前記床面の上方の倉庫スペースをさらに仕切ることができるスライド板により、前記倉庫スペースを収納スペース毎に区間可能な小部屋を形成することができる。
よって、小部屋の形成作業が簡単となっていて、その利用の迅速性、簡易性を重視した防災用収納箱を提供することができる。
【0008】
上記課題を解決するため、本願発明は内部に倉庫スペースとその下に少なくとも1つ収納スペースを備える防災用収納箱において、前記収納スペースは、その上方のカバーとなり、且つ、一辺を中心に回転起立されることによって前記倉庫スペースを間仕切り可能な床面を備えたことを特徴とする防災用収納箱とした(請求項2の発明)。
床面を回転起立させるのみで、前記倉庫スペースを間仕切り可能な場合においても、上記作用効果が発揮される。
【0009】
上記課題を解決するため、本願発明は内部に倉庫スペースとその下に少なくとも1つ収納スペースを備える防災用収納箱において、収納箱の四周壁の一面に開口部を備える共に、他の一面に前記開口部より大きい開口部を備えたことを特徴とする防災用収納箱とした(請求項3の発明)。
例えば、大きな開口部を倉庫スペースに臨ませることにより、大型の防災用設備、機械、その他の防災用品等の搬出、搬入の作業効率を向上させることができる。
【0010】
上記床面は、その回転起立の中心となる一辺に沿って、複数枚に分割されていることを特徴とする防災用収納箱とした(請求項4の発明)。
床面を複数枚に分割することによって床面の重量を分散させることができ、床面の回転起立の作業が容易となる。
【0011】
上記床面には、起立保持部が備わっていることを特徴とする防災用収納箱とした(請求項5の発明)。また、上記床面から引き出されたスライド板を保持させる保持部が備わっていることを特徴とする防災用収納箱とした(請求項6の発明)。
【0012】
さらに、上記保持部によって保持されているスライド板に対し、そのスライド板を保持させる第2の保持部が備わっていることを特徴とする防災用収納箱とした(請求項7の発明)。
上記保持部の保持機能が解除されたとしても、第2の保持部がスライド板を保持することで、小部屋のブラバシーを確保することができる。
【0013】
上記隣接するスライド板間には、目隠部が備わっていることを特徴とする防災用収納箱とした(請求項8の発明)。
スライド板間に隙間が形成されていても、目隠部があることで小部屋のブラバシーを保持することができる。
【0014】
上記床面は、巻上機により起立可能に構成されていることを特徴とする防災用収納箱とした(請求項9の発明)。
床面の回転起立の作業が容易になっている。
【0015】
する防災用収納箱
上記収納スペースには便器が収納されていることを特徴とした(請求項10の発明)。
前記収納スペースには便器等が設置可能であればよく、また便器等のセットが収容されていてもよく、さらに便器等が設置されていて、直ちに使用できる状態でもよい。なお、収納スペースに収容される対象物は、便器に限定されるものではなく、収納スペースの設置物に応じて多用途に利用することができる収納箱となっている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、小部屋の形成過程が簡単となっていて、その利用の迅速性、簡易性を重視した防災用収納箱を提供することができる。
また、通常時は防災用品等を収納する倉庫として倉庫スペース及び収納スペースを活用できる。
また、非常時は防災用品等を搬出した後に形成される小部屋を多用途に利用することができる。
さらに小部屋によりプライバシーの保護が確保されて男女を問わずに使い勝手がよい構成となっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に係る防災用収納箱の実施形態を図面に基いて説明する。
図1乃至図4は実施形態に係る防災用収納箱の外観正面図、同外観背面図、同左右側面図、図5乃至図7は同防災用収納箱の通常時の実施形態を示す水平断面図、同正面視縦断面図、同側面視縦断面図、図8乃至図10は同防災用収納箱の非常時の実施形態を示す水平断面図、同正面視縦断面図、同側面視縦断面図である。
これらの各図及び後述の各図において、同一の構成は同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0018】
防災用収納箱1(以下、収納箱1とも称する)は、図1〜図7に示したように防災用品(図示せず)等を収納可能な建物であって、その内部に倉庫スペース10とこの倉庫スペース10の下に収納スペース11を備えている。
【0019】
前記収納スペース11は、図6及び図9のように、その上方のカバーとなり、且つ、一辺30を中心に回転起立されることによって前記倉庫スペース10を間仕切り可能な床面3と、この床面3に収容され、且つ、回転起立された前記床面3の上方の倉庫スペース10をさらに仕切ることができるスライド板4を備えている。
【0020】
よって、通常時には倉庫スペース10が防災用品等を収納する倉庫として活用される。
一方、地震等の災害発生の非常時には倉庫スペース10から防災用品等が搬出された後に、前記床面3をその一辺を中心にして回転起立させることで前記収納スペース11を倉庫スペース10に臨ませると共に、前記床面3と、スライド板4により、前記倉庫スペース10を収納スペース11毎に区間可能としている。
収納スペース11に例えば便器5が設置されていれば、迅速、簡易に、独立したトイレブースが形成されることになり、男女を問わずにプライバシーが保護されて使い勝手がよい小部屋2を備えた収納箱1を提供することができる。
【0021】
前記防災用品は、例えば、炊飯用具、飲料水、保存食料、燃料、ストーブ、簡易トイレ、シート、毛布等の防寒品、ポリタンク、発電機、救急用品等であって、災害時に罹災者の生活に必要な物である。
その他、前記収納箱1の設置場所に応じて、収納対象は変わってくる。例えば、設置場所が公園内であれば、公園の管理に必要な物品が含まれる。また、設置場所が公的な会館等であれば、会館の器具備品等が含まれる。
【0022】
前記収納箱1は、主として動産的に組立可能なもの、移築可能なものであって、例えばユニットハウス、仮設ハウス、倉庫、多目的ハウス等と称され、物等を収納できる建物である。また、ユニット建物のように規格化され、連設されるようなものも含まる。
【0023】
前記収納箱1は、図1乃至図4のように四周壁(外壁)12、屋根13、床14からなり、四周壁12の一面には、倉庫スペース10及び収納スペース11への出入り口となる開口部としてのドア15を備える共に、図3のように、他の一面となる左側面には、前記ドア15より大きい開口部17を備えている。
前記開口部17には、シャッター18が備えられていて、倉庫スペース10への大型の防災機器、防災用品等の搬入、搬出の作業効率を向上させることができる。
その他、外壁12には換気扇16が、屋根13には太陽電池パネル(図示せず)がそれぞれ取付可能となっている。
前記収納箱1の外壁12、屋根13、床14等はパネル式となっていて、現地設置でのノックダウンが可能となっている。
【0024】
前記倉庫スペース10は、外壁12、屋根13、床14及び床面3によって囲まれた空間であって、概ね1つの空間を指す。
倉庫スペース10の他に、居住用の空間や事務所用の空間等を設けてもよく、その場合には居住空間等の中に独立する小部屋2を区画可能に構成してもよい。
【0025】
前記収納スペース11は、前記床面3、外壁12又は後述の固定間仕切6及び床14によって囲まれた空間であって、少なくとも1の空間が形成されている。
【0026】
前記小部屋2は、前記床面3、スライド板4、固定間仕切6の合計高さが平均的な身長の大人が隠れる程度のものすることができる空間から構成されている。
なお、前記小部屋2は上述のようにトイレブースとなるが、収納スペース11に収納されているものが耐水性のパレット等であれば、シャワーブースになり、浴槽であれば風呂ブースになり、それぞれ収納スペース11に収納されているものによって、その用途が決定される。
【0027】
前記床面3は、図5のように収納スペース11に収納される収納物に応じて分割され、分割された各床面3a〜3cはその各一辺30に沿って複数枚の単位床面30a〜30cに分割されている。
以下では、図11〜図17に基づいて、床面3bの単位床面30a〜30cの内、中央の単位床面30bを他の単位床面に代表させてその構成例を説明する。
図11は単位床面30bの正面図、図12は同平面図、図13は同側面図であり、図14は単位床面30cの正面図である。
図15は単位床面30bに内蔵されているスライド板4の正面図、図16は同平面図であり、図17は単位床面30cに内蔵されているスライド板4の正面図である。
【0028】
前記床面30bは、フレーム31と、このフレーム31に固定されたボード32と、前記フレーム31の底辺31aに取り付けられた丁番33と、前記フレーム31の対向する側辺31b、31bに、その両端がスライド可能に収納されたスライド板4を備えている。
前記フレーム31の上辺31cには起立保持部としてのスライドボルト34が取付けられている。図示は省略するが、スライドボルト34のシャフトの先端が出没する受けが、隣接し、且つ、回転起立される単位床面30aのフレーム31の上辺31cに設けられている。
前記フレーム31の一方の側辺31bには、後述の巻上機によって、単位床面30aを連動させて回転起立させるための床面連動金具35が設けられている。
また前記フレーム31の両側辺31b、31bには、前記スライド板4を保持させるラッチ40と共に保持部を構成するストッパ36が形成されている。
なお、単位床面30cは、図14のように単位床面30a、30bに比べて、幅広に構成されているが、その他の構成は単位床面30a、30bと略同一である。
【0029】
前記スライド板4は、図15〜図17に図示したように、前記ラッチ40、40と、隣接するスライド板4、4との間の隙間を隠す目隠部41と、前記ラッチ40によって保持されているスライド板4に対し、そのスライド板をさらに保持させる第2の保持部としてストッパ金具42(図示は省略)が備わっている。
ストッパ金具42としては、たとえば、前記スライド板4の裏面43に本体が固定され、その本体から楔状に回動される枝部が前記フレーム31の上辺31cに当接するようなものでもよい。
なお、単位床面30cに内蔵されているスライド板4は、図17のように単位床面30a、30bのスライド板4に比べて、幅広に構成されているが、その他の構成は単位床面30a、30bのスライド板4と略同一である。
【0030】
以上の構成による単位床面30bによれば、図18のように、<○1> 単位床面30bの丁番33を介しての回転起立動作、<○2> スライドボルト34のシャフトの受けへの係合動作、<○3> スライド板4の引き上げ動作、<○4> ラッチ40のストッパ36に対する係止動作、必要に応じた<○5> スライド板4の裏面43からのストッパ金具42による単位床面30bへの係止動作で、小部屋2が形成される。
よって、特別な冶具を用いることなく、また他の構成部材を付加させることなく、迅速、簡単な作業内容となっている。
特に、前記<○1>の動作は、前記スライド板4を内蔵した各床面3a〜3cは単位床面30a〜30cに分割されているので、単位床面30a〜30cが軽量化されることとなり、作業性が向上している。
【0031】
前記固定間仕切板6は、上述のように収納スペース11の間仕切りとなるもので、図19及び図20の図示の通り、本体60と、この本体60を床14に固定する固定部61と、前記床面3の端部を支える床面サポート部62を備え、この床面サポート部62には前記単位床面30bの底辺31aの丁番33を固定する固定金具63(図11参照)を備えている。
【0032】
以上のように構成された収納箱1について、図21A及び図21Bに基づいて、通常時の実施態様(図21A(1)参照)から非常時の実施態様への移行方法を説明する。
【0033】
まず、床面3cの単位床面30aを回転起立させ(図21A(2)参照)、前記スライドボルト34のシャフトの先端を外壁12に設けられた受けに係合させて、その起立状態を保持させる。
次に、スライド板4を上方に引き出して、前記単位床面30aのストッパ36に前記ラッチ40を係止させる(図21A(3)参照)。
同様に、隣接する単位床面30bを回転起立させ(図21A(3)参照)、そのスライドボルト34のシャフトの先端を単位床面30aに設けられた受けに係合させて、その起立状態を保持させる。
その後同様にスライド板4の立設、単位床面30cの回転起立、スライド板4の立設を行う(図21A(4)、(5)参照)。
なお、単位床面30cの場合には、そのスライドボルト34のシャフトの先端を外壁12に設けられた受け(図示せず)に係合させて、その起立状態を保持させる。
また、係合をより強固にしたい場合は、単位床面30bと30cにスライドボルト34と受けを追加して設けることもできる。
以下、同様な手順によって、各床面3b、3cから小部屋2を形成することで、図21B(7)及び同(8)に示したようなトイレブースが形成される。
必要に応じて、スライド板4の裏面43からのストッパ金具42による単位床面への係止動作を加えることができる。
【0034】
なお、以上の手順では3ヵ所のトイレブースがすべて形成されるようにしたが、需要に応じてその数を調整することができる。
また、前記便器5は便槽と一体のものを収納しておいてもよいが、下水管に隣接して収納箱1を設置できる場合には、便器5からパイプ等を介しての下水管への直流方式でもよい。
【0035】
以上のような防災用収納箱1の作用効果は、次の通りである。
1. 各単位床面30a〜30cの回転起立と、スライドボルト34による保持、スライド板4の引き出しとラッチ40による保持という作業により、簡単、迅速に小部屋2が形成され、その利用の迅速性、簡易性を重視した防災用収納箱を提供することができる。
2. 各床面3a〜3cが単位床面30a〜30cに分割されているので、各床面3a〜3cの重量も分散されて、床面3a〜3cの回転起立の作業が容易となっている。
3. 前記開口部17は、シャッター18が備えられていて、倉庫スペース10への大型の防災機器、防災用品等の搬入、搬出の作業効率を向上させることができる。
4. 収納箱1の収納スペース11の使用目的、用途を自由に設定でき、倉庫スペース10が、その目的、用途に応じた小部屋2を備えた空間に可変可能である。
5. 各小部屋2の独立性が高いので、非常時に際してもプライバシーの保護を図ることができる。さらに、プライバシーの保護は、前記目隠部41、前記ストッパ金具42によって徹底されている。
6. 起立された床面3の通常状態への復帰は、上記手順を逆行させればよく、再度倉庫スペース10に容易に可変させることができる。
【0036】
なお、前記収納スペース11が広く、その上方の床面3を回転起立させた場合にプライバシーの保護に十分な高さになれば、その床面3のみで前記倉庫スペース10を間仕切り可能なようにすることもできる。
【0037】
次に巻上機(ウインチ)19により床面3a〜3cを起立可能にする構成例を説明する。
図6等に図示されているように、ウインチ19は、取付台を介して外壁12の内面に固定されており、このウインチ19のワイヤを中継する滑車19aが前記内面に取り付けられている。
【0038】
以上の巻上機(ウインチ)19が取付けられた収納箱1について、図22A及び図22Bに基づいて、床面3が敷設された通常時の実施態様(図22A(1)参照)から非常時の実施形態への移行手順を説明する。
【0039】
まず、ウインチ19のワイヤ19bの一端を滑車19aを介して床面3cの単位床面30cの上部に固定する(図22A(2)参照)。
ウインチ19によりワイヤ19bを巻き戻すと、各単位床面30cと30bの一片の側辺31bに設けられた前記連動金具35が、隣接する各単位床面30bと30aの他片の側片31bの下方に位置していることにより、各単位床面30a〜30cが連動されて同時に3枚の単位床面30a〜30cが回転起立される。
なお、連動金具35は単位床面30cと30bの片側(扉15側)のみに設けてあるので、手動で単位床面30a〜30cを回転起立させる場合は連動しない。
この状態で各スライドボルト34を各受けに係合させて、その起立状態を保持させる(図22A(2)、同図(3)参照)。
その後、ワイヤ19bを解いて、順次、各スライド板4を上方に引き出して、各ストッパ36に前記ラッチ40を係止させる(図22A(4)〜同図(6)参照)。
上記と同様な手順によって、各床面3b、3cから小部屋2を形成する(図22C(7)〜同図(8)参照)。
なお、必要に応じて、スライド板4の裏面43からのストッパ金具42による単位床面への係止動作を加えることができる。
その結果、図22C(9)に示したようなトイレブースが形成される。
【0040】
以上の収納箱1によれば、上記作用効果に加えて、最小単位の作業員、例えば一人によっても、簡単、迅速に小部屋2を形成することができる。
【0041】
上記構成の収納箱1は、収納スペース11に便器5を設置していたが、図23〜図24に示した収納箱1Aのように、収納スペース11を一部省いて、そこに車椅子対応のトイレ50を設置してもよい。
この場合に、前記開口部17に隣接する場所に車椅子対応のトイレ50を設置することで、スロープ51の設置等も容易となる。
その他の収納箱1Aの構成は、収納箱1と同様であり、同一の作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施形態に係る防災用収納箱の外観正面図、
【図2】同背面図、
【図3】同左側面図、
【図4】同右側面図、
【図5】実施形態に係る防災用収納箱の通常時の水平断面図、
【図6】同正面から見た縦断面図、
【図7】同側面から見た縦断面図、
【図8】実施形態に係る防災用収納箱の非常時の水平断面図、
【図9】同正面から見た縦断面図、
【図10】同側面から見た縦断面図、
【図11】単位床面の正面図、
【図12】同平面図、
【図13】同側面図、
【図14】単位床面の正面図、
【図15】スライド板の正面図、
【図16】同平面図、
【図17】スライド板の正面図、
【図18】単位床面の動作説明図、
【図19】固定間仕切板の正面図、
【図20】同側面図、
【図21A】通常時から非常時への移行手順説明図、
【図21B】通常時から非常時への移行手順説明図、
【図22A】通常時から非常時への移行手順説明図、
【図22B】通常時から非常時への移行手順説明図、
【図22C】通常時から非常時への移行手順説明図、
【図23】他の実施形態に係る防災用収納箱の外観正面図、
【図24】同正面視断面図、
【図25】同平面視断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 防災用収納箱
10 倉庫スペース
11 収納スペース
12 外壁
13 屋根
14 床
15 ドア
16 換気扇
17 開口部
18 シャッター
19 ウインチ
2 小部屋
3 3a 3b 3c 床面
30a 30b 30c 単位床面
30 床面の一辺
31 フレーム
31a 底辺
31b 側辺
31c 上辺
32 ボード
33 丁番
34 スライドボルト
35 連動金具
36 ストッパ
4 スライド板
40 ラッチ
41 目隠部
42 ストッパ金具
43 裏面
5 50 便器
6 固定間仕切板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に倉庫スペースとその下に少なくとも1つ収納スペースを備える防災用収納箱において、
前記収納スペースは、その上方のカバーとなり、且つ、一辺を中心に回転起立されることによって前記倉庫スペースを間仕切り可能な床面と、この床面に収容され、且つ、回転起立された前記床面の上方の倉庫スペースをさらに仕切ることができるスライド板を備えたことを特徴とする防災用収納箱。
【請求項2】
内部に倉庫スペースとその下に少なくとも1つ収納スペースを備える防災用収納箱において、
前記収納スペースは、その上方のカバーとなり、且つ、一辺を中心に回転起立されることによって前記倉庫スペースを間仕切り可能な床面を備えたことを特徴とする防災用収納箱。
【請求項3】
内部に倉庫スペースとその下に少なくとも1つ収納スペースを備える防災用収納箱において、
収納箱の四周壁の一面に開口部を備える共に、他の一面に前記開口部より大きい開口部を備えたことを特徴とする防災用収納箱。
【請求項4】
前記床面は、前記一辺に沿って、複数枚に分割されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の防災用収納箱。
【請求項5】
前記床面には、起立保持部が備わっていることを特徴とする請求項1、2又は4の何れかに記載の防災用収納箱。
【請求項6】
前記床面から引き出されたスライド板を保持させる保持部が備わっていることを特徴とする請求項1、4又は5の何れかに記載の防災用収納箱。
【請求項7】
前記保持部によって保持されているスライド板に対し、そのスライド板を保持させる第2の保持部が備わっていることを特徴とする請求項6に記載の防災用収納箱。
【請求項8】
隣接する前記スライド板間には、目隠部が備わっていることを特徴とする1、4、5、6又は7の何れかに記載の防災用収納箱。
【請求項9】
前記床面は、巻上機により起立可能に構成されていることを特徴とする請求項1、2、4、5、6、7又は8の何れかに記載の防災用収納箱。
【請求項10】
前記収納スペースには便器が収納されていることを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載の防災用収納箱。
【請求項1】
内部に倉庫スペースとその下に少なくとも1つ収納スペースを備える防災用収納箱において、
前記収納スペースは、その上方のカバーとなり、且つ、一辺を中心に回転起立されることによって前記倉庫スペースを間仕切り可能な床面と、この床面に収容され、且つ、回転起立された前記床面の上方の倉庫スペースをさらに仕切ることができるスライド板を備えたことを特徴とする防災用収納箱。
【請求項2】
内部に倉庫スペースとその下に少なくとも1つ収納スペースを備える防災用収納箱において、
前記収納スペースは、その上方のカバーとなり、且つ、一辺を中心に回転起立されることによって前記倉庫スペースを間仕切り可能な床面を備えたことを特徴とする防災用収納箱。
【請求項3】
内部に倉庫スペースとその下に少なくとも1つ収納スペースを備える防災用収納箱において、
収納箱の四周壁の一面に開口部を備える共に、他の一面に前記開口部より大きい開口部を備えたことを特徴とする防災用収納箱。
【請求項4】
前記床面は、前記一辺に沿って、複数枚に分割されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の防災用収納箱。
【請求項5】
前記床面には、起立保持部が備わっていることを特徴とする請求項1、2又は4の何れかに記載の防災用収納箱。
【請求項6】
前記床面から引き出されたスライド板を保持させる保持部が備わっていることを特徴とする請求項1、4又は5の何れかに記載の防災用収納箱。
【請求項7】
前記保持部によって保持されているスライド板に対し、そのスライド板を保持させる第2の保持部が備わっていることを特徴とする請求項6に記載の防災用収納箱。
【請求項8】
隣接する前記スライド板間には、目隠部が備わっていることを特徴とする1、4、5、6又は7の何れかに記載の防災用収納箱。
【請求項9】
前記床面は、巻上機により起立可能に構成されていることを特徴とする請求項1、2、4、5、6、7又は8の何れかに記載の防災用収納箱。
【請求項10】
前記収納スペースには便器が収納されていることを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載の防災用収納箱。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図22A】
【図22B】
【図22C】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図22A】
【図22B】
【図22C】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2010−112018(P2010−112018A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−283491(P2008−283491)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年10月8日 ユニキューブ株式会社発行の「「多機能備蓄倉庫 UCF−23 ストック&トイレ」パンフレット」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 平成20年10月8日〜10日 株式会社東京ビッグサイト主催の「危機管理産業展2008」に出品
【出願人】(000005005)不二サッシ株式会社 (118)
【出願人】(508329427)ユニキューブ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年10月8日 ユニキューブ株式会社発行の「「多機能備蓄倉庫 UCF−23 ストック&トイレ」パンフレット」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 平成20年10月8日〜10日 株式会社東京ビッグサイト主催の「危機管理産業展2008」に出品
【出願人】(000005005)不二サッシ株式会社 (118)
【出願人】(508329427)ユニキューブ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]