説明

防爆形照明装置

【課題】シリンダで密閉された空間に光源を収納した防爆形の照明装置であって、配光特性に優れ、いわゆる光のロスが少なく、メンテナンス性にもきわめて良好な防爆形照明装置を提供する。
【解決手段】特殊環境で使用される防爆形照明装置であって、シリンダ11で密閉された空間12に支持体13を配置し、この支持体13にシリンダ断面の中心Oを基準にほぼ放射方向に光軸Pを合わせて複数のLED光源15を取り付けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特殊環境で使用される耐圧防爆形、安全増防爆形或いは密閉形照明器具を含む防爆形照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、特殊環境で使用される防爆形照明装置としてシリンダで密閉された空間に蛍光ランプを収納した照明装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開平11−53929号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、この種の蛍光ランプは拡散タイプであり、漏れ光が発生し、反射板を使用したとしても効率のよい配光特性が得られず、いわゆる光のロスが発生する。また、蛍光ランプはランプ寿命が短いため、メンテナンス性がよくない。
そこで、本発明の目的は、シリンダで密閉された空間に光源を収納した防爆形の照明装置であって、配光特性に優れ、いわゆる光のロスが少なく、メンテナンス性にもきわめて良好な防爆形照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、特殊環境で使用される防爆形照明装置であって、シリンダで密閉された空間に支持体を配置し、この支持体にシリンダ断面の中心を基準にほぼ放射方向に光軸を合わせて複数のLED光源を取り付けたことを特徴とする。
【0005】
本発明では、光源に、蛍光ランプのような拡散タイプではなく、LEDを使用しているため、漏れ光が発生しにくく、しかも、このLEDが、シリンダ断面の中心を基準にほぼ放射方向に光軸を合わせて配置されているため、シリンダを透過する光の乱反射が少なく、優れた配光特性が得られ、いわゆる光のロスが少なく、さらには、LED光源を使用したため、寿命が長く、メンテナンス性が向上する。
【0006】
この場合において、複数のLED光源は狭角形LEDを主体として、両側および/または中央に広角形LEDを配置してもよい。また、狭角形LEDの数量が広角形LEDの数量とほぼ同等数か、或いはそれ以上であってもよい。
【0007】
この場合において、前記支持体が断面V字形状を備え、隣接する各取り付け面に前記LED光源を取り付け可能としてもよい。
この構成によれば、断面V字形状の支持体の隣接する各取り付け面に、複数のLED光源を取り付けたため、この支持体をシリンダに挿入するだけで、複数のLED光源を、シリンダ断面の中心を基準にほぼ放射方向に光軸を合わせて簡易に取り付けることができ、組み付け性を向上させることができる。また、支持体が、断面V字形状であるため、複数のLED光源の光軸が、相互に適当な角度を持って配置されるため、いわゆる配光特性に優れた照明装置が提供される。
【0008】
また、前記支持体に放熱フィンを一体に形成してもよい。さらに、前記支持体にLED光源の光を拡散させる反射体を備えてもよい。また、前記支持体とシリンダホルダとが放熱体であってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シリンダで密閉された空間に支持体を配置し、この支持体にシリンダ断面の中心を基準にほぼ放射方向に光軸を合わせて複数のLED光源を取り付けたため、配光特性に優れ、いわゆる光のロスが少なく、メンテナンス性を向上させたものが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態を、図面に基づき説明する。
図1A及びBは、本発明の一実施の形態に係る耐圧防爆形照明装置を示す。符号1は、照明装置本体を示し、この照明装置本体1は、一対の吊り下げ具2,3を介して例えばトンネル等の天井4に支持されている。その取り付け高さは2.5m、器具の取り付け間隔は15m、水平面平均照度は1ルックスである。吊り下げ具3には結線ボックス5が配置され、この結線ボックス5に導入された電源線(図示せず)が、図示を省略した配線により、照明装置本体1の電源装置6に接続されている。
【0011】
照明器具本体1の下面には反射板7が支持され、この反射板7の内側に位置して、照明器具本体1の両端には一対のシリンダホルダ8,9が配置され、これらシリンダホルダ8,9間には、LED光源室10が支持されている。
【0012】
本実施の形態に係るLED光源室10は、いわゆる防爆形であり、円筒形の厚肉のガラス製シリンダ11と、このシリンダ11で密閉された空間12(図3参照)に配置されたアルミニウム製の支持体13と、この支持体13に取り付けられた複数のLED光源15,15…15とを備えて構成されている。上記ガラス製シリンダ11は、例えば外径が50mm、内径が40mm、厚さが5mmであり、透光性を有したLED光源の保護筒であって、例えば硬質ガラスで構成されている。
【0013】
図2は、シリンダホルダの断面図である。
一対のシリンダホルダ8,9は、共に略同じ構造であるため、説明の便宜上、一方のシリンダホルダ9を例にとって説明する。このシリンダホルダ9は、照明装置本体1に、ねじ21を介して固定された、熱伝導性に優れる素材からなるシリンダホルダ本体22を備え、このシリンダホルダ本体22の中空部23には、電源装置6からの配線を導く配線部24を臨ませている。中空部23に連なる一方の開口部23Aは、蓋部材25を螺入して閉塞され、他方の開口部23Bには、開口中心の側から上記支持体13、上記シリンダ11及び環状のパッキン26が嵌められ、シリンダ11と開口部23Bの内壁との間に、固着剤27が填装されている。
【0014】
上記支持体13の端部は、T形ホルダ28のフランジ28Aに、ねじ29を介して固定されている。そして、このT形ホルダ28の端部に、蓋部材25の突起25Aを当接させて、シリンダホルダ本体22の一方の開口部23Aに、蓋部材25をゆっくりと螺入させていくと、上記支持体13が、一対のシリンダホルダ8,9の蓋部材25で両側から挟持され、シリンダホルダ本体22間に支持される。支持体13およびシリンダホルダ9は、熱伝導性に優れるため、放熱体となっている。
【0015】
上記支持体13に取り付けられた複数のLED光源15,15…15から延びた配線31は、端部にコネクタ32を有し、このコネクタ32に連結されるコネクタ33が、上記配線部24から延びた配線34に接続されている。
LED光源15,15…15のメンテナンス時には、蓋部材25を外し、コネクタ32,33の接続を外し、支持体13毎、一方向に引き出して行う。このメンテナンス作業の労務は軽減されている。
【0016】
上記金属製の支持体13は、図3に示すように、断面V字形状を呈しており、長さの等しい各辺には各々取り付け面13A,13Bが形成されている。各取り付け面13A,13Bには、複数のLED光源15が、支持体13の長手方向にほぼ等間隔で取り付けられている。これらLED光源15は、狭角形のLEDを主体として配列し、例えば両側および/または中央に広角形のLEDを一部配置してもよく、或いはすべて狭角形のLEDを配列してもよい。この配列に際しての狭角形LEDの数量は、広角形LEDの数量とほぼ同等数か、或いはそれ以上の数量であることが望ましい。一般に、LED光源は光量が少ないため、狭角形のLEDで指向性を高め、光源に近い箇所、例えば照明装置の真下の位置を広角形LEDで広範囲に照射することが望ましい。
【0017】
この場合、各LED光源15は、図示のように、シリンダ断面の中心Oを基準に、ほぼ放射方向に向けて光軸Pを合わせて取り付けられている。本構成では、各々の取り付け面13A,13Bのなす角度(頂角)θが、90°であり、LED光源15の照射角θ1が、45°である。なお、LED光源15は、使用の用途に応じて、例えば、片側の取り付け面13Aもしくは13Bにのみ取り付けて使用することも可能である。上記シリンダ11は、ガラス製に限定されず、例えば樹脂製でもよい。
【0018】
上記LED光源15は、一枚の熱伝導性に優れたプレート16に取り付けられ、例えば、ねじ17で固定されている。別の形態として、一枚のプレートに複数個のLEDをモールドして形成し、このプレートを、支持体13の長手方向に並べて、各々の取り付け面13A,13Bに、例えばねじで固定してもよい。
【0019】
支持体13の断面において残りの辺は湾曲し、この湾曲した辺には、複数の放熱フィン13Cが一体に形成されている。また、支持体13には、一対の反射体13C,13Dが配設され、この反射体13C,13Dは、表面が白色に塗装され、LED光源15からの光を反射し、この光を器具の光の照射方向に拡散させる。
【0020】
図4は、別の構成を示す。この構成では、支持体13に形成された各取り付け面13A,13Bのなす角度(頂角)θが、50°であり、LED光源15の照射角θ1が、65°である。本実施の形態では、支持体13の頂角θを適宜規定することにより、LED光源15の照射角θ1を決定できる。従って、照明の配光性を考慮し、頂角θを適宜設定すれば、正確な配光を簡易に得られる。
【0021】
図5〜図7は、支持体の別の形態を示す。
図5の支持体113は、断面形状が略二等辺三角形状であり、等しい各辺に光源の取り付け面113A,113Bが形成され、残りの辺に放熱フィン113Cが一体に形成されている。図6の支持体213は、断面形状が略V字形状であり、等しい各辺に光源の取り付け面213A,213Bが形成され、これら辺の内側に放熱フィン213Cが各々形成されている。図7の支持体313は、図6の支持体213とほぼ同様の構造をしており、放熱フィン313Cの形状が三角歯状である点で異なっている。
いずれの支持体であっても、取り付け面に固定されたLED光源15の光軸Pを、シリンダ断面の中心Oを基準に、ほぼ放射方向に向けて一致させるように、上記シリンダの密閉空間に支持する点は共通する。
【0022】
上記構成の防爆形照明器具では、光源にLED光源15を使用したため、蛍光ランプ等に比べ、寿命が格段に向上する。従って、メンテナンス性が向上し、特殊環境の下では、メンテナンス作業に係る労務を軽減できる。また、LED光源15がスポット光源形(狭角形)であるため、漏れ光が少なく、光のロスが低減され、配光性に優れたものが提供される。さらに、LED光源15を、シリンダ断面の中心Oを基準に、ほぼ放射方向に向けて光軸Pを合わせて取り付けているため、シリンダ11を透過する光が直進し、乱反射が減少し、光のロスが低減される。
シリンダホルダ本体22の中空部23の内側では、狭角形LED光源15,15…15から延びた配線31が、コネクタ32,33を介して、配線部24から延びた配線34に接続され、しかも、メンテナンス時には、蓋部材25を外し、コネクタ32,33の接続を外し、支持体13毎、一方向に引き出して行うことができるため、このメンテナンス作業の労務をさらに軽減できる。
【0023】
図8は、別の実施の形態を示す。
本構成では、反射板7の内側に、上記実施の形態とほぼ同様構造の2本のLED光源室10,10が平行に支持されている。この場合、照明状況に応じ、図9Aに示すように、2本のLED光源室10,10を共に照明させてもよく、図9Bに示すように、2本のLED光源室10,10の外側方向のみを照明させてもよく、図9Cに示すように、2本のLED光源室10,10の片側同一方向のみを照明させてもよい。
【0024】
以上、一実施の形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、種々の変更実施が可能である。例えば、上記実施の形態では、特殊環境で使用される耐圧防爆形照明装置について説明したが、安全増防爆形、或いは密閉形照明器具等であっても、本発明の適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】Aは、本発明の一実施の形態を示す正面図、Bはその端面図である。
【図2】シリンダホルダの断面図である。
【図3】照明器具の断面図である。
【図4】同じく別例の照明器具の断面図である。
【図5】支持体の断面図である。
【図6】支持体の断面図である。
【図7】支持体の断面図である。
【図8】別の実施の形態を示す端面図図である。
【図9】A,B,Cは各々照明装置の照明状態を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
8,9 シリンダホルダ
10 照明器具
11 シリンダ
13 支持体
13A,13B 取り付け面
15 LED光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特殊環境で使用される防爆形照明装置であって、
シリンダで密閉された空間に支持体を配置し、この支持体にシリンダ断面の中心を基準にほぼ放射方向に光軸を合わせて複数のLED光源を取り付けたことを特徴とする防爆形照明装置。
【請求項2】
複数のLED光源は狭角形LEDを主体として、
両側および/または中央に広角形LEDを配置したことを特徴とする請求項1に記載の防爆形照明装置。
【請求項3】
狭角形LEDの数量が広角形LEDの数量とほぼ同等数か、或いはそれ以上であることを特徴とする請求項2に記載の防爆形照明装置。
【請求項4】
前記支持体が断面V字形状を備え、
隣接する各取り付け面に前記LED光源を取り付け可能としたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の防爆形照明装置。
【請求項5】
前記支持体に放熱フィンを一体に形成したことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の防爆形照明装置。
【請求項6】
前記支持体にLED光源の光を拡散させる反射体を備えたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の防爆形照明装置。
【請求項7】
前記支持体とシリンダホルダとが放熱体であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の防爆形照明装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−227305(P2007−227305A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−50108(P2006−50108)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】