説明

防霜資材燃焼用容器

【課題】近年、果樹の防霜対策で使用されている、天然米ぬかロウ燃焼資材を用いた燃焼法では、従来の容器を用いた場合の防霜に有効な火力の持続時間は2.5時間程度で、長時間の霜害に対応には、夜間、何度も燃料の補充や燃焼資材の追加設置が必要で、肉体的、精神的負担が多大であった。
【解決手段】防霜資材燃焼用容器を、燃料を充填し燃焼を行う上面に開口部を設けた燃焼部分と、燃料を充填し、燃焼部分で発生する熱によって燃料が融ける封止された燃料融解部分が、熱伝導性の隔壁を介して連接するように構成し、隔壁には、解けた燃料が燃焼部分に流入するための通孔を設ける。
この構造により、燃料融解部分の燃料が燃焼部分の燃焼による熱で融けて隔壁の通孔を通り燃焼部分に順次供給され、燃料充填量に応じた燃焼時間の拡大が可能になり、果樹生産者の防霜対策に伴う肉体的、精神的負担を軽減できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然米ぬかロウ燃焼資材など、熱により融解する固形燃料を用いた防霜対策における防霜資材燃焼用の容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
果樹の安定生産には、春の霜害から花芽を守ることが重要であるが、甚大な被害となる場合の気温の経過をみると、真夜中前から氷点下となり、朝方まで氷点下で経過する。
【0003】
燃焼法による防霜対策では、従来からリターンスタック型のヒーターや温風をほ場内に送風して温度上昇を図る機械が開発されている(特許文献1参照)。
また、霜害が発生する時には、地上数メートルのところに発生する地表面より温度の高い逆転層にファンを設置して地上部に逆転層の空気を送風することで霜害から農作物を守る防霜ファンが開発されている(特許文献2参照)。
【0004】
また、燃料油を利用した燃焼法では、燃焼時間を拡大するために燃料油の最上層面と火炎の最下層面との間に不燃性の多孔質物質を配置させる燃焼時間延長方法が開発されている(特許文献3)。
【0005】
これらの方法は導入コストが高かったり、電源が必要であること、燃料油を利用する方法では、燃料油の運搬や充填時にほ場にこぼれたり、作業者にかかるなど、取り扱いが面倒であることなどから、近年、比較的安価で燃料の取り扱いが容易な天然米ぬかロウの燃焼資材を用いた防霜対策の実施が増加している。
【0006】
しかし、天然米ぬかロウ燃焼資材用として販売されている従来の燃焼用の容器では2.5時間程度しか燃焼が継続できず、深夜から花芽に被害を及ぼすような低温に遭遇する場合には、適宜、燃料を容器に追加投入したり、新たに燃焼資材をほ場に追加設置して着火するなどの作業が必要であった。
【特許文献1】特開2004−267139号
【特許文献2】特開平10−113076号
【特許文献3】特開2005−295941号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、取り扱いが容易で熱により融解する天然米ぬかロウ燃焼資材等の固形燃料を用いた防霜対策の燃焼時間の延長方法および凍霜害の防除に優れた防霜用の燃焼具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の防霜資材燃焼用容器は、深さを25cm程度より浅くし、燃料を充填・燃焼させる燃焼部分と、燃料を燃焼させずに燃焼部分の熱で融解させる燃料融解部分を設けて燃料の充填量を増加させた。
また、燃焼部分は上面を開口させ、燃料融解部分は上面を封止した構造とし、下部に通孔を設けた仕切りで燃焼部分と燃料融解部分を隔てることで、燃焼部分の熱で融解した燃料が燃焼せずに燃料融解部分から順次燃焼部分に流入するようにした。
このことにより、燃焼時間を大幅に延長することが可能になり、果樹生産者の防霜対策に伴う肉体的、精神的負担を大幅に軽減しつつ、果樹の花芽の保護を容易にした。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、天然米ぬかロウ燃焼資材などの固形燃料の燃焼時間を大幅に拡大することが可能になることから、深夜から氷点下になる場合でも、一度点火すれば、日の出まで燃焼を継続させることができるようになった。
【0010】
このことにより、従来は、徹夜で重い燃料をほ場に運び、燃えている炎の中に追加投入するような危険な作業を行ったり、新たに燃焼資材をほ場に運んで点火するという、肉体的にも精神的にも負担の多い作業が必要であったが、点火後は燃焼状況の見回りを行う程度の作業となり、果樹生産者の肉体的、精神的負担を大幅に軽減できることから、果樹園などでの防霜用の燃焼用容器として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態について具体的に説明する。
本発明は、天然米ぬかロウ燃焼資材の燃焼時間を大幅に拡大して、防霜対策実施に伴う生産者の肉体的、精神的負担を軽減するとともに、燃焼法による防霜効果を確実なものにすることを目的に、燃料の充填量の増加とともに、より長時間の燃焼が可能なように燃焼用容器の形状を改良したものである。
防霜資材燃焼用容器の形状は、燃料を充填し燃焼を行う上面に開口部を設けた燃焼部分と、燃料を充填し、燃焼部分で発生する熱によって燃料が融ける封止された燃料融解部分が、熱伝導性の隔壁を介して連接するように構成し、隔壁には、解けた燃料が燃焼部分に流入するための通孔を設けるようにした。
この構造により、燃料融解部分の燃料が燃焼部分の燃焼による熱で融け、隔壁の通孔を通って燃焼部分に順次供給されることから、燃料充填量に応じた燃焼時間の拡大が可能になった。
【0012】
従来の容器は9リットル缶の上面を開いた大きさで、燃料を充填する部分と燃焼部分が同一の構造となっているが、燃料の充填量を増加させるために18リットル缶を使用して上部を開口させただけでは燃焼の際に酸素が不足するため、燃料を完全に燃焼できない。
【0013】
そこで、本発明では燃焼用の容器の深さを25cm程度より浅くし、燃料を充填・燃焼させる燃焼部分と、燃料を燃焼させずに燃焼部分の熱で融解させる燃料融解部分を設けて燃料の充填量を増加させた。
燃焼部分は上面を開口させ、燃料融解部分は上面を封止した構造とし、下部に通孔を設けた仕切りで燃焼部分と燃料融解部分を隔てることで、燃焼部分の熱で融解した燃料が燃焼せずに燃料融解部分から順次燃焼部分に流入するようにした。
このことにより、燃焼時間を大幅に延長することが可能になり、果樹生産者の防霜対策に伴う肉体的、精神的負担を大幅に軽減しつつ、果樹の花芽の保護を容易にした。
【実施例1】
【0014】
図1には、18リットル缶を加工して使用した場合の実施例を示す。
18リットル缶の胴板の一部を、一辺23.8cmの正方形の開口部ができるように切り抜き、切り抜いた胴板は、約19cmの部分で折り曲げて着脱可能な仕切りとする。
次いで、7.5kgの天然米ぬかロウ燃焼資材を充填し、10cm×10cm×10cmのロックウールを燃焼用の芯として使用して燃焼させたところ、防霜に有効であると思われる火力を維持し続けた時間は、6時間15分であった。
なお、着火時には、約20cmの縄4本を着火用の芯として使用した。
【0015】
比較例1
実施例1において、着脱可能な仕切りを用いない以外は実施例1に準じて燃焼した場合、防霜に有効であると思われる火力を維持し続けた時間は5時間30分であった。
【0016】
比較例2
18リットル缶の胴板に23.8cm×34.9cmの開口部を設けて、7.5kgの天然米ぬかロウ燃焼資材を充填し、10cm×10cm×10cmのロックウールを芯とし使用して燃焼させたところ、防霜に有効であると思われる火力を維持し続けた時間は、3時間30分であった。
【0017】
比較例3
実施例1において、ロックウールの芯を用いずに約20cmの縄6本を燃焼用の芯として使用して燃焼した場合の、防霜に有効であると思われる火力を維持し続けた時間は5時間30分であった。
【実施例2】
【0018】
図2により、燃料の充填作業の改善および未使用時の収納方法を改善した例を説明する。
実施例1では燃料融解部分への燃料の充填が面倒であることから、燃料融解部分の上面を開口させた。
仕切りの上部には、本体に引っかかる留め金部を設け、本体には開口部の大きさに合せて凹部を設けて、仕切りの留め金部が本体の凹部にかかり、ずれないように設置する。次いで燃料を充填し、燃焼部分にはロックウールを芯として設置し、燃料融解部分は蓋をして上面を塞ぐ。
このように燃料融解部分に蓋を設けて開閉可能にしたことで、燃料充填の作業性が改善された。
【0019】
なお、18リットル缶では未使用時の収納性が劣るので、未使用時の保管スペースを小さくして収納性を改善するためには、本体底面を本体上面よりもやや小さくして、本体同士を重ねて収容できるようにすれば良い(図2参照)。
【実施例3】
【0020】
図3及び図4により、本発明の機構が発揮される容器の多様な形状の例を説明する。
実施例1および実施例2では、燃焼部分の片側に燃料融解部分が配置されているが、本発明の機構を発揮するための形状は多様であり、図3及び図4では、容器本体の中心部分に燃焼部分があり、その周囲に燃料融解部分が配置されるような構造を示す。
この場合、燃料融解部分の体積が実施例1および実施例2の場合に比べ大幅に増やすことが可能であることから、燃焼時間をさらに長時間にすることが可能である。
【0021】
図3は燃焼部分の開口部が四角形の場合の例であり、図4は、燃焼部分の開口部が円形の場合の例を示す。
図3および図4とも、燃焼部分の熱により燃料融解部分の燃料が溶けて、仕切り下部にある通孔から順次燃料が流入することで長時間の燃焼を可能にする機構は、実施例1及び実施例2と同じである。
【0022】
実施例1から実施例3までの燃料融解部分は、燃焼部分から遠ざかると熱量が不足して燃料の融解が不十分となることから、燃料融解部分は仕切りから約25cm程度までの大きさとなるような構造にすると良い。
【0023】
実施例1から実施例3までの燃焼において、燃料が燃え尽きる前に日の出等により気温が上昇して防霜対策が不要になる場合には、金属等でできた不燃性の板や蓋によって燃焼部分の開口部を塞ぐと、火を消すことができる。
【0024】
一旦、火を消したものを防霜対策で使用する場合には、金属等の不燃性の板や蓋を外し、燃料を補充して着火すれば、長時間の燃焼が可能である。
また、消火時の燃料の残量によっては、燃料を追加することなく着火しても数時間、燃焼することができるので、防霜対策で使用することも可能である。
【0025】
実施例1から実施例3までの本体の側面に取っ手や指がかかる部分を設けると、持ち運びの際の作業性が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、防霜資材燃焼用の容器として利用され、果樹の防霜対策の省力化、軽労働化が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】18リットル缶を加工して使用した場合の実施例
【図2】燃料融解部分への燃料充填および本体の収納性を改善した場合の実施例
【図3】燃焼部分の開口部が四角形で周囲に燃料融解部分を配置した実施例
【図4】燃焼部分の開口部が円形で周囲に燃料融解部分を配置した実施例
【符号の説明】
【0028】
1:本体
2:開口部
3:燃焼部分
4:燃料融解部分
5:仕切り
6:通孔
7:蓋
8:留め金部
9:凹部
10:仕切り折り返し部
11:本体折り返し部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防霜資材燃焼用の容器であって、燃料を充填し燃焼を行う上面に開口部を設けた燃焼部分と、燃料を充填し、前記燃焼部分で発生する熱によって燃料が融ける封止された燃料融解部分からなり、燃焼部分と燃料融解部分は熱伝導性の隔壁を介して連接し、前記隔壁には、前記解けた燃料が燃焼部分に流入するための通孔を設けてなることを特徴とする防霜資材燃焼用容器。
【請求項2】
請求項1に記載した防霜資材燃焼用の容器は、前記隔壁を着脱可能とし、または、前記封止された燃料融解部分の上面を開閉可能とし、または、前記隔壁を着脱可能としつつ前記封止された燃料融解部分の上面を開閉可能として燃料の充填を容易にした防霜資材燃焼用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−196723(P2008−196723A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−29900(P2007−29900)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(307002194)