説明

防音体と該防音体を用いた家具据付施工構造

【課題】 従来のゴム等の防音体に比べて、防音効果が大きく、且つ家具等の据付施工にも適しており、手軽で取り扱いやすい施工ができる防音体と該防音体を用いた家具据付施工構造を提供する。
【解決手段】 家具と壁面または床面の接する面、或いは家具同士の接する面に配設される防音体を、該防音体は、100g/cm2の荷重に対して未圧縮厚みの2/3以下となり、かつ圧縮後厚みが2mm以下の不織布で防音体を構成した。また、前記不織布は、未圧縮状態で、シート状の少なくとも一方の面に多数の凸部を点在させて形成し、各凸部の未圧縮厚みが5mm以下で、面重量が1kg/m2以下で、引張り破断強度が10mm幅当たり50N以上とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、集合住宅等のキッチン(キッチンパネルを含む)や吊戸棚、洗面化粧台等の固定家具の上で発生する騒音が、隣接する部屋や階下の部屋に響きにくくすることができる防音体と該防音体を用いた家具据付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の集合住宅では、上記固定家具の上で発生する騒音が、隣接する部屋や階下の部屋に響かないように、例えば、特許文献1や特許文献2に示すような防音材を、家具と接する壁面や床面に介装して問題を解決しようとしているのが現状である。
【0003】
【特許文献1】特開2001−286361号公報
【0004】
【特許文献2】特開2005−115288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のゴムや熱可塑性合成樹脂からなる防音材を用いた防音構造にあっては、防音効果が低く、十分な防音効果が期待できない、という問題を有していた。
【0006】
この発明は、かかる現状に鑑み創案されたものであって、その目的とするところは、従来のゴム等の防音体に比べて、防音効果が大きく、且つ家具等の据付施工にも適しており、手軽で取り扱いやすい施工ができる防音体と該防音体を用いた家具据付施工構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の防音体は、家具と壁面または床面の接する面、或いは家具同士の接する面に配設される防音体であって、該防音体は、100g/cm2の荷重に対して未圧縮厚みの2/3以下となり、かつ圧縮後厚みが2mm以下の防音不織布であることを特徴とするものである。
【0008】
また、請求項2に記載の発明にあっては、請求項1に記載の防音体を技術的前提とし、前記防音不織布は、未圧縮状態で、シート状の少なくとも一方の面に多数の凸部を点在させて形成し、各凸部の未圧縮厚みが5mm以下で、面重量が1kg/m2以下で、引張り破断強度が10mm幅当たり50N以上であることを特徴とするものである。
【0009】
さらに、請求項3に記載の家具据付施工構造にあっては、請求項1又は請求項2のいずれかに記載の防音体を用いて、家具の壁面または床面との固定或いは家具同士の固定は、防音体を両面テープで仮止めし、緊結具を前記防音体に貫通させて家具を壁面または床面又は隣接する家具に据付固定することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、防音不織布を家具と床面または壁面に配置した場合には、家具での発生音や振動が隣室に伝播するのを抑制でき、また、圧縮後は防音体の厚みが小さくなるので、家具を所定間口の室内空間へ配置する際に、家具寸法を調整する必要がなく、狭い隙間の家具配置に対応することができる。特に押圧力が100g/cm2に対して2/3以下の厚みとなるため、工具を使わずに、人力で家具を壁面などに押圧して据え付けても防音不職布が圧縮可能であり制振効果を奏する。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、防音不織布の多数の凸部で家具と床面または壁面或は家具同士との間に密着率の疎密が発生するので、発生音を減衰させることができると共に、本防音不織布は軽く、引張り強度があるため取り扱いやすい。尚、各凸部の未圧縮厚みは、3mm以下、1mm以上が防音効果を有しつつ間口対応が行いやすい。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、防音不織布の一方の面は略平坦であるため家具への防音不織布の取り付けが両面テープなどで簡単にでき、また、防音不織布を貼り付けた状態で家具をねじ等の緊結具で固定できるため、地震などに対して耐震性があり且つ防音効果のある家具の据付施工ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面に示す一実施形態例に基づいて、この発明を詳細に説明する。
【0014】
図1は、この発明の一実施形態例に係る防音体である防音不織布の構造を一部切断して示す斜視図を、図2は同防音不織布の防音効果を測定するためのパネル音試験装置を示す側面図を、図3は図2のパネル音試験装置を設置した試験室の構成を示す説明図を、図4は同防音不織布の防音効果を測定するためのキッチン扉音試験条件を示すキッチン平面図を、図5は図4のキッチン扉音試験条件での試験室構成を示す説明図を、図6は同防音不織布をキッチンキャビネットに取り付けた状態を示す裏面底側から眺めた分解斜視図を、図7は比較例である加硫ゴム板をキッチンキャビネットに取り付けた状態を示す裏面底側から眺めた分解斜視図を、図8は同防音体を取り付けるキッチンキャビネットを裏面底側から眺めた分解斜視図である。
【0015】
図1に本発明の防音体の一実施例である防音不職布1を示す。この防音不織布1は、原材料が、例えば、ポリエチレンテレフタレート等の不織布でシート状に形成され、かつ、未圧縮状態で、シート状の少なくとも一方の面に多数の凸部2を規則的に点在させて形成し、各凸部2の厚みが2.78mmで、面重量が0.42kg/m2形成され、引張破談強度が120N/10mm幅に形成されている。尚、上記厚みは、家具と壁面または床面の接する面、或いは家具同士の接する面に配設される他、凸部2の未圧縮厚みは、最大で5mm以下、面重量も1kg/m2以下で、引張り破断強度も10mm幅当たり50N以上であれば同様の効果が得られた。
【0016】
また、上記防音不織布1は、100g/cm2の荷重に対して未圧縮厚みの2/3以下となり、かつ圧縮後厚みが2mm以下となる不織布であることが望ましい。さらに、本防音不織布1のホルムアルデヒド放散量をガラスデシケーター法で測定した結果、検出されなかった。
【0017】
このように形成された防音不織布1を、図2、図3に示す試験方法を用いて防音効果を測定した。
【0018】
この試験装置10は、図2に示すように、パネル(例えばキッチンパネル)101の裏面に防音不織布1を両面テープで貼り付け、前記凸部2が界壁11側に向く状態で更に両面テープで界壁11に固着し、長さ300mmの糸12で吊るしたゴルフボール13を角度90度でパネル101に衝突させることができるように構成されている。
【0019】
このように構成された試験装置10を、図3に示すような試験室20に用いて測定をした。尚、同図中、符号21はグラスウール10Kg、22は厚さ12.5mmの石膏ボードを、23は厚さ3.0mmの遮音シートを示し、界壁11の厚さを89mmとし、該界壁11の試験装置10が取り付けられた音源室24側には、厚さ12.5mmのフローリング25と厚さ20mmのパーティクルボード26から構成された二重床を基礎面30から130mmの高さで配設し、界壁11の他方の受音室27側には、振動加速度ピックアップ28とマイクロフォン29を配設した。このマイクロフォン29は、石膏ボード22の表面から500mmはなれた位置で、基礎面30から1250mmの高さにセットされ、また、振動加速度ピックアップ28は、基礎面30から1500mmの高さで石膏ボード22の表面にセットした。
【0020】
尚、騒音測定は、1/Nオクターブ分析処理機SA−01(RION製)を用いて行い、評価条件は、騒音レベルが1/3オクターブバンドでA特性がLmax、振動加速度レベルが1/3オクターブバンドでF特性がLmaxとして、3回測定しその平均値を用いた。
【0021】
その試験結果であるパネル下地防音体試験結果を表1に示す。表1の下地防音体仕様欄に示す防音不織布1は本発明の一実施例である防音体である。この防音不織布1は原材料がポリエチレンテレフタレートの不織布でシート状に形成され、かつ、未圧縮状態で、シートの一方の面に多数の凸部2を規則的に点在させ、裏面が平坦で、各凸部2の厚みが未圧縮状態で2.78mm(表ではt=3mmと記す)で、面重量が0.42kg/m2で、引張破談強度が120N/10mm幅である。tは厚みを示す。
【0022】
また、圧縮フェルトは、原材料が防音不織布1と同様の不職布で全面が既に圧縮固着された表裏が共に平坦なシート状形状で、荷重により殆ど収縮しない防音体である。発泡体は発泡スチロール板であり、ゴム板は板状ブチルゴムで商品名SR−6000を使用した。石膏ボード+ゴムスペーサーは石膏ボードに前記SR−6000のゴム板をパネルの四隅にのみ重ね合わせたことを示す。
【0023】
次いで、ビス止め位置欄に記載のビス止めなしは両面テープのみでの固着を示し、ビス止め有りは両面テープで防音体を貼り付けた後にパネルの四隅を木ねじで累着させたものである。尚、この試験で用いた防音体はパネル裏面の全面に固着している。
【0024】
【表1】

【0025】
表1からも明らかなように、本発明の実施例1,2は、比較例8の防音体なしの何も対策をとらない施工構造や、比較例1、2の圧縮フェルト、比較例3,4の発泡体、比較例5のゴム板、比較例6,7の石膏ボード及びゴムスペーサ併用施工構造に比較して、隣室に於ける騒音レベル及び振動加速レベルが有効に減衰することがわかる。
【0026】
次いで、家具であるキッチンキャビネットで本発明の効果を確認した。
【0027】
試験方法は、図3のキッチンパネル下地防音体試験と同一の部分は省略し、異なる部分について説明する。図5に示す如く、試験室20には被試験体のパネル101に代えてキッチンキャビネット101’を設置し試験を行った。階下受音室27aのキッチンキャビネット101’の直下に基礎下面30aから1000mmの位置に階下マイクロフォン29aを配置している。図6には本発明の実施例である防音不織布1のキッチンキャビネット101’への配置個所を示し、図7には、比較例であるゴム板1’のキッチンキャビネット101’への配置個所を示す。
【0028】
キッチンキャビネット101’のカウンタートップ上にゴルフボールを落球(落下高さ300mm)したときの隣室・騒音レベル及び振動加速度レベルを表2に示す。
【0029】
また、表3へはキッチンキャビネット101’の扉を強制的に閉じた場合の隣室及び階下の測定結果を示している。このキッチン扉音試験は図4に示す如く、弾性力のあるゴムひもを扉の自由端とキッチンキャビネット間に取り付け、扉を400mm開いた状態から離して閉じた時の騒音を測定したものである。
【0030】
【表2】

【0031】
【表3】

【0032】
表2及び表3に示す如く、表1のパネル試験結果が示した本発明の防音不織布1は、防音体を使用しないキッチンキャビネット101’据付施工構造や防音体にゴム板1’を使用する場合に比べ騒音の減衰効果が僅かであるものの優れることがわかる。
【0033】
尚、ビス止め有りとは、ビス止め位置に防音体を貼り付け防音体を貫通させてキッチンキャビネット101’を壁面又は床面に固着する施工法を示し、ビス止めなしは緊結金具なしでキッチンキャビネット101’を壁面に押圧させている。
【0034】
キッチンキャビネット101’の壁面への固定は、図6のキャビネット裏側に配設した防音不織布1の位置にて2箇所を木ねじで累着固定した。
【0035】
また、表中、「線貼り」とは、図6に示すようにキッチンキャビネット101’の接地部やコーナー部に、線状に本実施形態品を貼り付けることを示し、ゴム板は図7に示すように線状ではなくキッチンキャビネットのコーナー部にのみ配置した。
【0036】
図8は、キッチンキャビネットセットを裏面下側から見上げた状態の分解斜視図を示す。本実施形態品である防音体と取り付け状態を示すもので、太線や斜線を入れた部分が防音体の配設位置を示し、具体的には、キッチンパネル(正面側)裏面3や、キャビネット側板の壁接触面4、キャビネット底板の床接触面5、カウンタートップの背面壁接触面6、キッチンパネルの側面側裏面7や吊戸壁接触面8に取り付けられる。キッチンパネルの場合は、パネル裏面全面が壁に当接するため、全面に防音不織布1を両面テープで仮止めした後に、所定個所に木ねじで壁面にパネルを固定する。
【0037】
キッチン台などでは、裏面や床面の全面ではなく側板部分のみが床や壁とキッチン台で当接するため、該当接部分のみに線状の防音不織布1を両面テープで貼り付けキッチン台を据え付ける。この場合のキッチン台の固定は、床や壁と家具が当接しない個所でねじ緊結する場合が発生するが、ゴムなど所定厚みの隙間材を用いて防音不織布1を配置した後に、不織布を貫通する状態で家具を固定すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】この発明の一実施形態例に係る防音不織布の構造を一部切断して示す斜視図である。
【図2】同防音不織布の防音効果を測定するためのパネル音試験装置を示す側面図である。
【図3】図2のパネル音試験装置を設置した試験室の構成を示す説明図である。
【図4】同防音不織布の防音効果を測定するためのキッチン扉音試験条件を示すキッチン平面図である。
【図5】図4のキッチン扉音試験条件での試験室構成を示す側面図である。
【図6】同防音不織布をキッチンキャビネットに取り付けた状態を示す裏面底側から眺めた分解斜視図である。
【図7】比較例である加硫ゴム板をキッチンキャビネットに取り付けた状態を示す裏面底側から眺めた分解斜視図である。
【図8】同防音体を取り付けるキッチンキャビネットを裏面底側から眺めた分解斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
1 防音不織布
1’ 加硫ゴム板
101 パネル
101’ キッチンキャビネット
10 防音装置
11 界壁
12 糸
13 ゴルフボール
28 振動加速度ピックアップ
29 マイクロフォン
29a 階下マイクロフォーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
家具と壁面または床面の接する面、或いは家具同士の接する面に配設される防音体であって、該防音体は、100g/cm2の荷重に対して未圧縮厚みの2/3以下となり、かつ圧縮後厚みが2mm以下の不織布であることを特徴とする防音体。
【請求項2】
前記不織布は、未圧縮状態で、シート状の少なくとも一方の面に多数の凸部を点在させて形成し、各凸部の未圧縮厚みが5mm以下で、面重量が1kg/m2以下で、引張り破断強度が10mm幅当たり50N以上である請求項1に記載の防音体。
【請求項3】
前記家具の壁面または床面との固定或いは家具同士の固定は、請求項1又は請求項2のどちらかに記載の防音体を両面テープで仮止めし、緊結具を前記防音体に貫通させて家具を壁面または床面に据付固定することを特徴とする家具据付施工構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−194075(P2008−194075A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−29198(P2007−29198)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(000002222)サンウエーブ工業株式会社 (196)