説明

防鼠方法

【課題】防鼠対策すべき建物の環境要因に対して、適正なコスト及び品質レベルをもって、適切な場所に必要かつ十分な防鼠対策を行うことが可能な防鼠方法を提供する。
【解決手段】複数の環境要因毎に鼠が侵入又は生息する可能性を示すリスク点数を予めコンピュータに入力して記憶させるリスク点数記憶工程Aと、リスク点数に対応するリスク評価を記憶させるリスク評価記憶工程Bと、環境要因及びリスク点数に対応する防鼠対策案を記憶させる対策案記憶工程Cと、を具備し、さらに、多層の建物の各階の基準点から放射状に区分けした対象区域毎に、現地環境要因をコンピュータに入力する環境要因入力工程Dと、環境要因に対応するリスク点数から上記対象区域毎のリスク評価を抽出するリスク評価工程Eと、環境要因に対応するリスク点数から対象区域毎の防鼠対策案を、対策案記憶工程Cにて記憶したデータから、抽出して決定する対策案決定工程Fと、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防鼠方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、本出願人は、鼠による製品や食品の汚損や食害、電気ケーブル等が齧られたことによる電気・通信系統の故障を防ぐために、鼠捕獲器や鼠撃退器等の防鼠機器に関して各種発明を提案してきた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−245681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、複数種類の防鼠機器のいずれのものを、かつ、どの場所に何台ずつ設置するのが合理的であるかといった対策を決定する際に、人の勘と経験に頼っていた。
従って、防鼠対策を立案・決定した人によっては、設置された防鼠機器の種類・性能・台数が過剰品質であってコストが高くなってしまう問題や、過少品質のため鼠による汚損や食害等の被害が発生する場合があった。
【0005】
そこで、本発明は、防鼠対策すべき建物の環境要因に対して、適正なコスト及び品質レベルをもって、適切な場所に必要かつ十分な防鼠対策を行うことが可能な防鼠方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の防鼠方法は、複数の環境要因毎に鼠が侵入又は生息する可能性を示すリスク点数を予めコンピュータに入力して記憶させるリスク点数記憶工程と、リスク点数に対応するリスク評価を、予めコンピュータに入力して記憶させるリスク評価記憶工程と、環境要因及びリスク点数に対応する防鼠対策案を、予めコンピュータに入力して記憶させる対策案記憶工程と、を具備し、さらに、多層の建物の各階の基準点から放射状に区分けした対象区域毎に、現地環境要因をコンピュータに入力する環境要因入力工程と、上記環境要因入力工程にて入力された環境要因に対応するリスク点数から上記対象区域毎のリスク評価を、上記リスク評価記憶工程にて記憶したデータから、抽出するリスク評価工程と、上記環境要因入力工程にて入力された環境要因に対応するリスク点数から上記対象区域毎の防鼠対策案を、上記対策案記憶工程にて記憶したデータから、抽出して決定する対策案決定工程と、を具備する方法である。
【0007】
また、複数の環境要因毎に鼠が侵入又は生息する可能性を示すリスク点数を予めコンピュータに入力して記憶させるリスク点数記憶工程と、リスク点数に対応するリスク評価を、予めコンピュータに入力して記憶させるリスク評価記憶工程と、環境要因及びリスク点数に対応する防鼠対策案を、予めコンピュータに入力して記憶させる対策案記憶工程と、を具備し、さらに、多層の建物の各階を所定のマス目に区割りしたグリッドから成る対象区域毎に、現地環境要因をコンピュータに入力する環境要因入力工程と、上記環境要因入力工程にて入力された環境要因に対応するリスク点数から上記対象区域毎のリスク評価を、上記リスク評価記憶工程にて記憶したデータから、抽出するリスク評価工程と、上記環境要因入力工程にて入力された環境要因に対応するリスク点数から上記対象区域毎の防鼠対策案を、上記対策案記憶工程にて記憶したデータから、抽出して決定する対策案決定工程と、を具備する方法である。
【0008】
また、複数の環境要因毎に鼠が侵入又は生息する可能性を示すリスク点数を予めコンピュータに入力して記憶させるリスク点数記憶工程と、リスク点数に対応するリスク評価を、予めコンピュータに入力して記憶させるリスク評価記憶工程と、環境要因リスク点数に対応する防鼠対策案を、予めコンピュータに入力して記憶させる対策案記憶工程と、を具備し、さらに、建物の基準点から放射状に区分けした対象区域毎に、現地環境要因をコンピュータに入力する環境要因入力工程と、上記環境要因入力工程にて入力された環境要因に対応するリスク点数から上記対象区域毎のリスク評価を、上記リスク評価記憶工程にて記憶したデータから、抽出するリスク評価工程と、上記環境要因入力工程にて入力された環境要因に対応するリスク点数から上記対象区域毎の防鼠対策案を、上記対策案記憶工程にて記憶したデータから、抽出して決定する対策案決定工程と、を具備する方法である。
【0009】
また、複数の環境要因毎に鼠が侵入又は生息する可能性を示すリスク点数を予めコンピュータに入力して記憶させるリスク点数記憶工程と、リスク点数に対応するリスク評価を、予めコンピュータに入力して記憶させるリスク評価記憶工程と、環境要因リスク点数に対応する防鼠対策案を、予めコンピュータに入力して記憶させる対策案記憶工程と、を具備し、さらに、建物を所定のマス目に区割りしたグリッドから成る対象区域毎に、現地環境要因をコンピュータに入力する環境要因入力工程と、上記環境要因入力工程にて入力された環境要因に対応するリスク点数から上記対象区域毎のリスク評価を、上記リスク評価記憶工程にて記憶したデータから、抽出するリスク評価工程と、上記環境要因入力工程にて入力された環境要因に対応するリスク点数から上記対象区域毎の防鼠対策案を、上記対策案記憶工程にて記憶したデータから、抽出して決定する対策案決定工程と、を具備する方法である。
【0010】
また、上記対策案決定工程で決定した防鼠対策案を実行した後に、上記対象区域に鼠が侵入又は生息する可能性を示す実行後環境要因をコンピュータに入力して、上記環境要因入力工程までフィードバックさせる方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、人の経験や勘に頼らず、確実かつ容易に、対象区域毎の環境要因に対応した最適な対策案を決定できる。適切な場所に適正なコストと品質を有する対策を容易かつ迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の一形態を示すフローチャート図である。
【図2】建物の一例を示す要部断面側面図である。
【図3】環境要因の一例を示す説明図である
【図4】環境要因の他例を示す説明図である。
【図5】対象区域を説明する平面図である。
【図6】実施の一形態を説明する簡略構成図である。
【図7】本発明に係るシステムを説明するブロック図である。
【図8】建物の他例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図示の実施形態に基づき本発明を詳説する。
先ず、図2に示すような商業ビル(デパート)やオフィスビル、ホテル、官公庁、病院等の防鼠対策が必要な多層の建物10に対して、鼠が侵入又は生息する虞れのある環境要因を設定する。
例えば、環境要因の内、建物10の外壁部の密閉性や開放箇所等の鼠の侵入経路に関係するバリア要因としては、人(来客)用出入口18、車(駐車場)用出入口19、搬入口(業者用荷物出入口)17、排水溝、屋内外を連通する配管貫通部(電気配管、給水配管、排水配管、ガス配管、衛生配管等)の周囲の隙間(以下、穴と呼ぶ場合がある)、犬走り、植栽、防虫帯、シャッター、ネズミ返し等である。
【0014】
また、環境要因の内、実際のネズミの存在に関係する生息要因として、糞尿等のラットサイン、鼠穴、足跡、営巣箇所、行動音、配線・資材等の齧り跡、製品や材料の食害、無毒餌の喫食状況等である。具体的には、調査区域(後述の対象区域Ti)内を10〜20m間隔のグリッドで区分けし、目視による形跡、糞、体毛、齧り跡、ラットサインの調査結果や、聞き取りによる目撃、商品・原料被害の調査結果や、捕獲数÷粘着シート配置枚数、鼠検知器、捕獲器等から得たカウント数調査結果、等である。
【0015】
また、環境要因の内、鼠を誘引する原因で建物10内の設備に関係する侵入防御要因(第1誘引要因)としては、ゴミ置き場、食堂、排水処理設備、給湯室、電気室、トイレ、製造室、大型機械、倉庫(材料倉庫や製品倉庫)、営巣可能箇所、棚16等の潜伏可能箇所、各部屋や各階11を連通する配管貫通部(電気配管、給水配管、排水配管、ガス配管、衛生配管等)の周囲の隙間(以下、穴と呼ぶ場合がある)、壁穴部、臭気部(臭い)、熱気部(温度)、空気の流れ、地下階、1階、低層階(2〜5階)、中層階(6〜9階)、高層階(10階以上)等である。
また、鼠を誘引する原因で人に関係する5S要因(第2誘引要因)としては、営巣の原因となるような箇所がないか等の整理状況、製品や材料が管理されているか等の整頓状況等、食べカス等がないか等の清掃状況、衛生的であるか等の清潔状況、管理者や従業員等に防鼠に対する意識や習慣が身についているか等の躾状況、等である。
【0016】
環境要因の内、鼠の侵入・生息に対する予防・駆除に関係する防除要因として、捕獲器等の防鼠機器の施工状況や施工頻度、防鼠薬剤等の使用量や施工状況及び施工頻度、施工人員状況、防鼠管理体制、等である。
環境要因の内、業種や製造品目等に関係する業態要因として、食品業、薬品業、農畜産業、等である。
【0017】
そして、上述の環境要因に、その環境要因毎にリスク点数(ポイント)を設定する。鼠が侵入又は生息する可能性が高い環境要因は、点数が高く設定されている。
例えば、図2及び図3に示すような地下道や地下鉄等の地下出入口28と連絡している建物10の人用出入口18は、昼間は人通りが多く、夜間等はシャッターによって閉鎖可能である。
図2及び図4に示すような地下駐車場の車用出入口19は、昼夜通して人通りは少なく、屋外と常時(24時間)連通し、さらに薄暗い場所である。このような場合、人用出入口18よりも車用出入口19のリスク点数の重み付けを重く(リスク点数を高く設定)している。なお、ネズミ返し等の防鼠に貢献しているような環境要因は、リスク点数をマイナスに設けるも良い。
【0018】
また、業態(業種)によって、リスク点数を設定している。例えば、事務所<衣料店<薬品店<飲食店、と鼠の嗜好性が高くなる順にリスク点数を高く設定している。
さらに、飲食店の内、提供する料理によって、リスク点数を設定している。例えば、日本料理店<西洋料理店<粉物店(コーヒー店<うどん屋<蕎麦屋)<中華料理店のように順にリスク点数を高く設定している。
【0019】
また、電気室や情報管理室等、ケーブルが鼠に齧られることで建物10全体に障害が生じるような保護重要度の高い場所のリスク点数を高く設定している。
また、各階11によってリスク点数を設定する。例えは、11階以上<5〜10階<2〜5階<1階<地下階、といった鼠が侵入又は生息する可能性の高い順に、リスク点数を高く設定する。
【0020】
そして、上述した複数(多数)の環境要因毎に鼠が侵入又は生息する可能性を示すリスク点数をコンピュータに入力して記憶させるリスク点数記憶工程Aを行う(図1参照)。
【0021】
また、リスク点数に対応するリスク評価を設定している。例えば、以下の表1に示すように、リスク点数の総合計点数(評価値合計)を、49点以下、50〜299点、300〜499点、500点以上、の4段階のリスク評価範囲に区分評価を設定し、さらに、49点以下は「適正」、50〜299点は「許容」、300〜499点は「警戒」、500点以上は「措置」、とリスク評価名を設定する。
【0022】
【表1】

【0023】
また、環境要因を、バリア要因、第1誘引要因、生息要因、5S要因、防除要因等に区分し、要因毎のリスク点数の合計を、39点以下、40〜59点、60〜79点、80以上の評価範囲に区分評価する。また、区分評価に対応するリスク評価名を設定する。例えば、次の表2のように設定する。
【0024】
【表2】

【0025】
そして、リスク点数に対応するリスク評価を、コンピュータに入力して記憶させるリスク評価記憶工程Bを行う(図1参照)。
【0026】
また、環境要因とリスク点数とリスク評価に対応する防鼠対策案を、例えば、次の表3のように設定する。
【0027】
【表3】

【0028】
また、次の表4に示すような内容の対策を、環境要因とリスク点数とリスク評価に対応する対策案に盛り込んでいる。また、対策案に、ゲージや薬剤等の捕獲手段、超音波発生器や薬剤等の忌避手段、ビデオ撮影やセンサ等による検知手段等をどのように何個設置するかが含まれている。また、上下方向の壁孔や配管があるような場合はクマネズミを、水廻りが多いような場合はドブネズミを、粉や孔の小さな箇所が多い場合はハツカネズミを、主として想定した捕獲手段や忌避手段等を用いる対策が含まれている。また、検知手段としては、対象物(鼠)から出ている赤外線放射エネルギーを検出し、見かけの温度に変換して、温度分布を画像表示して鼠を検知する装置や、周囲の温度変化と鼠を識別してカウントする装置や、レーザーセンサー装置等である。なお、表4に於て、「ラットクリン」とは鼠捕獲機器のことである。「ゲートクリン」は鼠感知センサのことである。
【0029】
【表4】

【0030】
そして、環境要因とリスク点数及びリスク評価に対応する防鼠対策案を、コンピュータに入力して記憶させる対策案記憶工程Cを行う(図1参照)。
【0031】
また、以下の表5に示すように、リスク点数の総合計点数(評価値合計)の範囲を7段階に設定し、リスク評価のリスク評価名や内容、定義を7段階に設定して、リスク点数の総合計点数の範囲に各リスク評価を対応させて、コンピュータに入力して記憶させるリスク評価記憶工程Bを行っても良い。また、リスク点数とリスク評価に対応する防鼠対策案を表5に示すように設定して対策案記憶工程Cを行っても良い。
【0032】
【表5】

【0033】
また、図5に示すように、防鼠対策を実行すべき建物10の各階(フロア)11の中心(面重心)又はその近傍を基準点Pとし、その基準点Pを中心として、各階11を放射状に区分けする区分工程を行う。
例えば、図5(a)に示すように、基準点Pを交点とする十字状に区分けして、北東部の対象区域T1、東南部の対象区域T2、南西部の対象区域T3、北西部の対象区域T4といった4つに区分けする。あるいは、図5(b)に示すように、北北東部の対象区域T1´、東北東部の対象区域T2´、東南東部の対象区域T3´、南南東部の対象区域T4´、南南西部の対象区域T5´、西南西部の対象区域T6´、西北西部の対象区域T7´、北北西の対象区域T8´、といった8つに区分けするも良い。
また、図5(c)に示すように、建物10の各階11を所定のマス目に区分けしたグリッドから成るように対象区域Tiを設定するも良い。つまり、碁盤目状に区分けして、1行1列目の対象区域T1´´、1行2列目の対象区域T2´´、1行3列目の対象区域T3´´といたように多数のマス目に区画するも良い。このマス目は、一辺が20〜50mの正方形又は長方形とし、同じ面積となるように設定するのが好ましい。
【0034】
ここで、区分工程、及び、図1に於て二点鎖線で囲んだリスク点数記憶工程Aとリスク評価記憶工程Bと対策案記憶工程Cと、の時間的前後は順不同であって、何れが先でも後でも自由である。
【0035】
そして、リスク点数記憶工程Aとリスク評価記憶工程Bと対策案記憶工程Cが予め行われた後に、対象区域Ti毎に上述した現地の環境要因(現地環境要因)をコンピュータに入力する環境要因入力工程Dを行う。
【0036】
図1に於て、対象区域Ti内の現地環境要因の入力(環境要因入力工程D)が終了すると、コンピュータは入力された環境要因に対応するリスク点数のデータをリスク点数記憶工程Aにて記憶したデータから抽出する。そして、リスク点数を対象区域Ti毎に合算し、リスク評価をリスク評価記憶工程Bにて記憶したデータから抽出して、リスク評価を決定するリスク評価工程Eを行う。例えば、以下の表6のように、リスク点数の総合点数315点と評価名「警戒」といった対象区域Ti毎の評価や、以下の表7のような評価が得られる。また、上述の表1で総合点数に対応する行が表示、又は、総合点数に対応する行が点灯や点滅、太字等強調表示される。
【0037】
【表6】

【0038】
【表7】

【0039】
言い換えると、リスク評価工程Eは、防鼠対策の必要な階11と不要な階11とを、又は、防鼠対策の必要な対象区域Tiと不要な対象区域Tiとを、評価をもって対策が必要か否かを判別するリスク判定工程とも言える。
【0040】
さらに、コンピュータは、入力された環境要因に対応するリスク点数とリスク評価と環境要因に対応する対象区域Ti毎の対策案を、対策案記憶工程Cにて記憶したデータから抽出して決定する対策案決定工程Fを行う。
【0041】
例えば、図5(a)のように、北東部の対象区域T1は、人用出入口18があるが、人通りが多く、整理・整頓もされていたためリスク点数が低く、評価が良いとすると、カメラやセンサによる「モニタリング」といった防鼠対策案が決定する。
また、南西部の対象区域T3は、倉庫に連通した搬入口17がある。人影がなく、棚16等の潜伏可能箇所が多く、整理整頓が不十分で鼠の食料となるものが多いとすると、同じ1階であっても、北東部の対象区域T1よりもリスク点数が高く、評価が悪い。この場合、南西部の対象区域T3は、モニタリングや捕獲機器、忌避機器等の「防鼠機器の設置」といった防鼠対策案や表4に示したような対策案が決定する。
【0042】
例えば、図6に於て、南西部の対象区域T3に実行された対策は、搬入口17に、鼠の温度感知等の鼠検知器31、超音波を発生する撃退器32、鼠を捕獲する捕獲器33等の設置である。これらの防鼠機器31,32,33は、有線或いは無線等の通信回線Iを介して、コンピュータである情報処理装置2に接続されている。そして、コンピュータは、これらの防鼠機器31,32,33が、鼠を検知した回数や、捕獲した個体数や撃退した個体数を、対策の実行後環境要因として自動で読み取り記憶する。言い換えると、防鼠機器31,32,33は対策の実行後環境要因をコンピュータに自動入力する。
【0043】
また、対策案で「穴埋め防鼠工事」が決定され、実行すれば、「穴なし」という実行後環境要因がコンピュータに入力され記憶される。また、対策案で「集中清掃」が決定され、実行すれば、「綺麗」という実行後環境要因がコンピュータに入力され記憶される。また、実行後環境要因として、定点粘着シート捕獲量(目安 1枚/10平方メートル)や、無毒餌による駆除率=(1−対策実行後の喫食量÷対策実行前の喫食量)×100、等の生息・侵入状況を示す値が入力され記憶されるも良い。
【0044】
つまり、コンピュータは、上記対策案決定工程Fで決定した防鼠対策案を実行した後に、対象区域Ti内がどのように変化したかを、所定の期間、監視(管理)して実行後環境要因を得る対策検証工程G(図1参照)を行う。
そして、この対策検証工程Gで得られた実行後環境要因を、新たな現地環境要因として、環境要因入力工程Dまでフィードバックさせ、対策後の対象区域Tiのリスク評価や、対策後の対象区域Tiに最適な新たな対策案を決定する。
【0045】
例えば、防鼠対策実行後に、鼠の侵入や捕獲数が減少した状態で安定した場合は、捕獲数や検知数の減少が新たな環境要因として反映(フィードバック)され、捕獲器33の撤去を許可するような対策案を決定する。これにより、必要以上に長く捕獲器33を設置しておく必要がなく、ランニングコストの低減に貢献する。
また、近隣のビル解体工事等で、鼠が移動して来たような場合は、捕獲数や検知数の増加が新たな環境要因として反映するので、捕獲器33や撃退器32の増設を促す対策を決定する。
【0046】
図1に示すように、環境要因入力工程D,リスク評価工程E、対策案決定工程F、対策検証工程Gを順次ループ状に繰り返し行う。従って、寒い時期や繁殖期等の季節(時期)に応じて、対象区域Ti毎に(適切な場所に)、防鼠機器の種類や設置数等が変更された新たな対策案が得られ、効率良く確実に防鼠効果が得られる。即ち、IPM(Integrated
Pest Management)といった総合防除管理に最適な防鼠方法(システム)である。
【0047】
また、防鼠すべき対象区域Tiの建物10の戸締り用設備(出入口扉39や窓)をコンピュータで遠隔操作可能に設け、防鼠機器から入力された捕獲個体数や検知数の多い時間帯に戸締り用設備を自動で閉じるような対策を実行する防鼠方法(無人防鼠システム)とするも良い。
【0048】
また、図6に於て、コンピュータは、防鼠を行うべき建物10の管理センター12内に設けている情報処理装置2、や、建物10から離れた場所にある管理委託会社等内の情報処理装置2´、システム提供会社内のサーバ等の情報処理装置2´´等いずれとするも自由である。そして、防鼠すべき建物10と離れた場所から、インターネット回線等の情報通信回線Iを介して、監視(管理)状況を閲覧可能とすると共に、建物10の戸締り設備(出入口扉39)を遠隔操作して鼠による被害を防除する防鼠方法(WEB管理防鼠システム)とするも良い。
【0049】
図7に於て、本発明の防鼠方法をシステムとして言い換えると以下の通りである。
即ち、本発明に係る防鼠システムは、予め、環境要因データベース、リスク点数データベース、リスク評価データベース、防鼠対策案データベースが各々関連づけて記憶されているハードディスク等の記憶手段20と、リスク点数の演算や評価の抽出決定や対策案の抽出決定や対策が必要か否かの判定を行うCPU等の演算処理手段21と、防鼠手段30や(サーバ等の)情報集積手段26や(携帯情報端末)情報確認手段27と有線又は無線で相互通信可能な外部通信手段22と、を有するコンピュータ(情報処理装置2)を備えている。
さらに、環境要因が入力可能なキーボード等の入力手段23と、評価結果や決定した対策案を表示可能なモニタ等の表示手段24と、評価結果や決定した対策案を紙等に印刷可能なプリンタ等の出力手段25と、鼠検知器31等の検知(カウント)手段と鼠の撃退器32等の忌避手段と鼠の捕獲機器33等の捕獲手段等である防鼠手段30と、防鼠手段30等とコンピュータを有線又は無線で相互通信可能なLANやインターネット等の通信回線手段Iと、を具備するシステムである。
【0050】
次に、他の実施形態として、図8に示すように、防鼠対策すべき建物10が、コンビニエンスストアやファミリーレストラン、食品工場等の平屋状である場合は、上述した環境要因内に、建物10から離れた箇所、かつ、敷地S内に存在する周辺環境要因を追加する。
【0051】
周辺環境要因とは、建物内10の各対象区域Tiに隣接する建物10の敷地S内にある環境要因である。例えば、周辺環境要因としては、占有率30%以下の植栽51、占有率31〜60%以下の植栽52、占有率61%以上の植栽、ごみ捨て場50、側溝、排水溝、敷地S内の食堂、敷地S内の電気室、敷地S内の排水処理施設、等である。この周辺環境要因も上述の環境要因と同様に、リスク点数を関連付けている。
【0052】
なお、東南東部の対象区域T3´に、鼠の侵入するような配管部の隙間がなく、密閉状態であれば、隣接する敷地Sに存在するゴミ捨て場50や占有率31〜60%以下の植栽52を現地環境要因としてコンピュータに入力しても、対象区域T3´の総合計リスク点数に大きな影響を与えないようにリスク点数が補正されるように設定するのが望ましい。
また、南南西部の対象区域T5´に、搬入口17や配管部の隙間が環境要因としてある場合は、占有率30%以下の植栽51であっても、対象区域T3´の総合計リスク点数が高くなるようにリスク点数が補正されるように設定するのが望ましい。なお、対象区域Tiを建物10を所定のマス目に区割りしたグリッドとするも良い。
【0053】
本発明は設計変更可能であって、環境要因は上述したもの以外のものでも良い。また、環境要因に対応させるリスク点数としては、鼠が生息・侵入する可能性が高い環境要因程、点数を低く(マイナス側に)設定し、生息・侵入する可能性が低い(防鼠に貢献している)環境要因に、高い点数を設定して、評価、対策案の決定を行うようにしても良い。
【0054】
以上のように、本発明の防鼠方法は、複数の環境要因毎に鼠が侵入又は生息する可能性を示すリスク点数を予めコンピュータに入力して記憶させるリスク点数記憶工程Aと、リスク点数に対応するリスク評価を、予めコンピュータに入力して記憶させるリスク評価記憶工程Bと、環境要因及びリスク点数に対応する防鼠対策案を、予めコンピュータに入力して記憶させる対策案記憶工程Cと、を具備し、さらに、多層の建物10の各階11の基準点Pから放射状に区分けした対象区域Ti毎に、現地環境要因をコンピュータに入力する環境要因入力工程Dと、環境要因入力工程Dにて入力された環境要因に対応するリスク点数から対象区域Ti毎のリスク評価を、リスク評価記憶工程Bにて記憶したデータから、抽出するリスク評価工程Eと、環境要因入力工程Dにて入力された環境要因に対応するリスク点数から対象区域Ti毎の防鼠対策案を、対策案記憶工程Cにて記憶したデータから、抽出して決定する対策案決定工程Fと、を具備するので、人の経験や勘に頼らず、確実かつ容易に、対象区域Ti毎の環境要因に対応した最適な対策案を決定できる。適切な場所に適正なコストと品質を有する対策を容易かつ迅速に行うことができる。同じ階11であっても、防鼠対策をすべき対象区域Tiと防鼠対策が不要な対象区域Tiを判別できる。適切な種類の防鼠機器を適切な数量だけ適切な場所に設置する効率の良い経済的な防鼠対策を得ることができる。適正なコスト及び品質レベルをもった対策を決定できる。
【0055】
また、複数の環境要因毎に鼠が侵入又は生息する可能性を示すリスク点数を予めコンピュータに入力して記憶させるリスク点数記憶工程Aと、リスク点数に対応するリスク評価を、予めコンピュータに入力して記憶させるリスク評価記憶工程Bと、環境要因及びリスク点数に対応する防鼠対策案を、予めコンピュータに入力して記憶させる対策案記憶工程Cと、を具備し、さらに、多層の建物10の各階11を所定のマス目に区割りしたグリッドから成る対象区域Ti毎に、現地環境要因をコンピュータに入力する環境要因入力工程Dと、環境要因入力工程Dにて入力された環境要因に対応するリスク点数から対象区域Ti毎のリスク評価を、リスク評価記憶工程Bにて記憶したデータから、抽出するリスク評価工程Eと、環境要因入力工程Dにて入力された環境要因に対応するリスク点数から対象区域Ti毎の防鼠対策案を、対策案記憶工程Cにて記憶したデータから、抽出して決定する対策案決定工程Fと、を具備するので、人の経験や勘に頼らず、確実かつ容易に、対象区域Ti毎の環境要因に対応した最適な対策案を決定できる。適切な場所に適正なコストと品質を有する対策を容易かつ迅速に行うことができる。同じ階11であっても、防鼠対策をすべき対象区域Tiと防鼠対策が不要な対象区域Tiを判別できる。適切な種類の防鼠機器を適切な数量だけ適切な場所に設置する効率の良い経済的な防鼠対策を得ることができる。適正なコスト及び品質レベルをもった対策を決定できる。
【0056】
また、複数の環境要因毎に鼠が侵入又は生息する可能性を示すリスク点数を予めコンピュータに入力して記憶させるリスク点数記憶工程Aと、リスク点数に対応するリスク評価を、予めコンピュータに入力して記憶させるリスク評価記憶工程Bと、環境要因リスク点数に対応する防鼠対策案を、予めコンピュータに入力して記憶させる対策案記憶工程Cと、を具備し、さらに、建物10の基準点Pから放射状に区分けした対象区域Ti毎に、現地環境要因をコンピュータに入力する環境要因入力工程Dと、環境要因入力工程Dにて入力された環境要因に対応するリスク点数から対象区域Ti毎のリスク評価を、リスク評価記憶工程Bにて記憶したデータから、抽出するリスク評価工程Eと、環境要因入力工程Dにて入力された環境要因に対応するリスク点数から対象区域Ti毎の防鼠対策案を、対策案記憶工程Cにて記憶したデータから、抽出して決定する対策案決定工程Fと、を具備するので、人の経験や勘に頼らず、確実かつ容易に、対象区域Ti毎の環境要因に対応した最適な対策案を決定できる。適切な場所に適正なコストと品質を有する対策を容易かつ迅速に行うことができる。防鼠対策をすべき対象区域Tiと防鼠対策が不要な対象区域Tiを判別できる。適切な種類の防鼠機器を適切な数量だけ適切な場所に設置する効率の良い経済的な防鼠対策を得ることができる。適正なコスト及び品質レベルをもった対策を決定できる。
【0057】
また、複数の環境要因毎に鼠が侵入又は生息する可能性を示すリスク点数を予めコンピュータに入力して記憶させるリスク点数記憶工程Aと、リスク点数に対応するリスク評価を、予めコンピュータに入力して記憶させるリスク評価記憶工程Bと、環境要因リスク点数に対応する防鼠対策案を、予めコンピュータに入力して記憶させる対策案記憶工程Cと、を具備し、さらに、建物10を所定のマス目に区割りしたグリッドから成る対象区域Ti毎に、現地環境要因をコンピュータに入力する環境要因入力工程Dと、環境要因入力工程Dにて入力された環境要因に対応するリスク点数から対象区域Ti毎のリスク評価を、リスク評価記憶工程Bにて記憶したデータから、抽出するリスク評価工程Eと、環境要因入力工程Dにて入力された環境要因に対応するリスク点数から対象区域Ti毎の防鼠対策案を、対策案記憶工程Cにて記憶したデータから、抽出して決定する対策案決定工程Fと、を具備するので、人の経験や勘に頼らず、確実かつ容易に、対象区域Ti毎の環境要因に対応した最適な対策案を決定できる。適切な場所に適正なコストと品質を有する対策を容易かつ迅速に行うことができる。防鼠対策をすべき対象区域Tiと防鼠対策が不要な対象区域Tiを判別できる。適切な種類の防鼠機器を適切な数量だけ適切な場所に設置する効率の良い経済的な防鼠対策を得ることができる。適正なコスト及び品質レベルをもった対策を決定できる。
【0058】
また、対策案決定工程Fで決定した防鼠対策案を実行した後に、対象区域Tiに鼠が侵入又は生息する可能性を示す実行後環境要因をコンピュータに入力して、環境要因入力工程Dまでフィードバックさせるので、環境要因の変化に対応したタイムリーな防鼠対策案が迅速に得られ、建物10を鼠から確実に防御できる。特に、IPM(Integrated Pest Management)といった総合防除管理に最適な方法である。季節や時間、その建物10の状況に対応した独自かつ最適な対策が得られる。
【符号の説明】
【0059】
10 建物
11 階
A リスク点数記憶工程
B リスク評価記憶工程
C 対策案記憶工程
D 環境要因入力工程
E リスク評価工程
F 対策案決定工程
P 基準点
Ti 対象区域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の環境要因毎に鼠が侵入又は生息する可能性を示すリスク点数を予めコンピュータに入力して記憶させるリスク点数記憶工程(A)と、
リスク点数に対応するリスク評価を、予めコンピュータに入力して記憶させるリスク評価記憶工程(B)と、
環境要因及びリスク点数に対応する防鼠対策案を、予めコンピュータに入力して記憶させる対策案記憶工程(C)と、を具備し、
さらに、多層の建物(10)の各階(11)の基準点(P)から放射状に区分けした対象区域(Ti)毎に、現地環境要因をコンピュータに入力する環境要因入力工程(D)と、
上記環境要因入力工程(D)にて入力された環境要因に対応するリスク点数から上記対象区域(Ti)毎のリスク評価を、上記リスク評価記憶工程(B)にて記憶したデータから、抽出するリスク評価工程(E)と、
上記環境要因入力工程(D)にて入力された環境要因に対応するリスク点数から上記対象区域(Ti)毎の防鼠対策案を、上記対策案記憶工程(C)にて記憶したデータから、抽出して決定する対策案決定工程(F)と、を具備することを特徴とする防鼠方法。
【請求項2】
複数の環境要因毎に鼠が侵入又は生息する可能性を示すリスク点数を予めコンピュータに入力して記憶させるリスク点数記憶工程(A)と、
リスク点数に対応するリスク評価を、予めコンピュータに入力して記憶させるリスク評価記憶工程(B)と、
環境要因及びリスク点数に対応する防鼠対策案を、予めコンピュータに入力して記憶させる対策案記憶工程(C)と、を具備し、
さらに、多層の建物(10)の各階(11)を所定のマス目に区割りしたグリッドから成る対象区域(Ti)毎に、現地環境要因をコンピュータに入力する環境要因入力工程(D)と、
上記環境要因入力工程(D)にて入力された環境要因に対応するリスク点数から上記対象区域(Ti)毎のリスク評価を、上記リスク評価記憶工程(B)にて記憶したデータから、抽出するリスク評価工程(E)と、
上記環境要因入力工程(D)にて入力された環境要因に対応するリスク点数から上記対象区域(Ti)毎の防鼠対策案を、上記対策案記憶工程(C)にて記憶したデータから、抽出して決定する対策案決定工程(F)と、を具備することを特徴とする防鼠方法。
【請求項3】
複数の環境要因毎に鼠が侵入又は生息する可能性を示すリスク点数を予めコンピュータに入力して記憶させるリスク点数記憶工程(A)と、
リスク点数に対応するリスク評価を、予めコンピュータに入力して記憶させるリスク評価記憶工程(B)と、
環境要因リスク点数に対応する防鼠対策案を、予めコンピュータに入力して記憶させる対策案記憶工程(C)と、を具備し、
さらに、建物(10)の基準点(P)から放射状に区分けした対象区域(Ti)毎に、現地環境要因をコンピュータに入力する環境要因入力工程(D)と、
上記環境要因入力工程(D)にて入力された環境要因に対応するリスク点数から上記対象区域(Ti)毎のリスク評価を、上記リスク評価記憶工程(B)にて記憶したデータから、抽出するリスク評価工程(E)と、
上記環境要因入力工程(D)にて入力された環境要因に対応するリスク点数から上記対象区域(Ti)毎の防鼠対策案を、上記対策案記憶工程(C)にて記憶したデータから、抽出して決定する対策案決定工程(F)と、を具備することを特徴とする防鼠方法。
【請求項4】
複数の環境要因毎に鼠が侵入又は生息する可能性を示すリスク点数を予めコンピュータに入力して記憶させるリスク点数記憶工程(A)と、
リスク点数に対応するリスク評価を、予めコンピュータに入力して記憶させるリスク評価記憶工程(B)と、
環境要因リスク点数に対応する防鼠対策案を、予めコンピュータに入力して記憶させる対策案記憶工程(C)と、を具備し、
さらに、建物(10)を所定のマス目に区割りしたグリッドから成る対象区域(Ti)毎に、現地環境要因をコンピュータに入力する環境要因入力工程(D)と、
上記環境要因入力工程(D)にて入力された環境要因に対応するリスク点数から上記対象区域(Ti)毎のリスク評価を、上記リスク評価記憶工程(B)にて記憶したデータから、抽出するリスク評価工程(E)と、
上記環境要因入力工程(D)にて入力された環境要因に対応するリスク点数から上記対象区域(Ti)毎の防鼠対策案を、上記対策案記憶工程(C)にて記憶したデータから、抽出して決定する対策案決定工程(F)と、を具備することを特徴とする防鼠方法。
【請求項5】
上記対策案決定工程(F)で決定した防鼠対策案を実行した後に、上記対象区域(Ti)に鼠が侵入又は生息する可能性を示す実行後環境要因をコンピュータに入力して、上記環境要因入力工程(D)までフィードバックさせる請求項1,2,3又は4記載の防鼠方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−242878(P2011−242878A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112379(P2010−112379)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000101938)イカリ消毒株式会社 (33)