説明

除染装置

【課題】過酸化水素蒸気を除染対象室に送るキャリア空気の必要除湿量や必要加熱量を低減する。
【解決手段】過酸化水素水Whをキャリア空気CA中で蒸発させて過酸化水素蒸気Shを発生させる蒸気発生手段8を備える除染装置において、液タンク10から供給する過酸化水素水Whを蒸気発生手段8への供給過程で高濃度化する濃縮手段15を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品の製造室や乗合車両の車内など、滅菌・消毒が必要な室空間を除染(汚染除去)する除染装置に関する。
【0002】
具体的には、液タンクから供給される過酸化水素水をキャリア空気中で蒸発させて過酸化水素蒸気を発生させる蒸気発生手段を備え、この蒸気発生手段で発生させた過酸化水素蒸気をキャリア空気とともに除染ガス路を通じ除染対象室に供給して除染対象室を除染する除染装置に関する。
【背景技術】
【0003】
この種の除染装置では一般に、特許文献1に見られるように、蒸気発生手段に供給するキャリア空気を除湿手段により除湿するともに電気ヒータなどの加熱手段で加熱して低湿高温化し、これにより、蒸気発生手段での過酸化水素水の蒸発を補助するとともに、その蒸発により発生させた過酸化水素蒸気が除染ガス路において除染対象室への送給過程で凝縮するのを防止するようにしている。
【0004】
また、除湿後のキャリア空気を電気ヒータなどで加熱するのに代え、過酸化水素水を加熱手段としての加熱容器に滴下させることで蒸発させ、この蒸発で生じた過酸化水素蒸気を除湿キャリア空気により搬送するようにしたものもあるが、これにしても、キャリア空気の除湿や加熱により過酸化水素水の蒸発を補助するとともに、除染ガス路での過酸化水素蒸気の凝縮を防止していることに変わりはない。
【0005】
一方、液タンクから蒸気発生手段に供給する過酸化水素水については、高濃度の過酸化水素水を液タンクに貯留することは安全上の問題があることから、従来、この種の除染装置では、特許文献2(特に段落0040)や特許文献3(特に第10頁)に見られるように、30重量%〜35重量%の過酸化水素水が一般的に用いられている。
【0006】
なお、過酸化水素蒸気を用いた除染には、キャリア空気とともに除染対象室に供給した過酸化水素蒸気を室内で凝縮させずに気相状態に保つ乾式除染と、キャリア空気とともに除染対象室の供給した過酸化水素蒸気を室内で凝縮させる湿式除染とがあるが、いずれの方式にしても、除染ガス路を形成するダクトや除染ガス路に介装したファンなどの腐食劣化を防止するために、また、良好かつ安定的な除染運転を行なうために、除染ガス路での過酸化水素蒸気の凝縮は防止する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−339829号
【特許文献2】特開2007−202628号
【特許文献3】特表2000−513247号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、30重量%〜35重量%の過酸化水素水は70重量%〜65%重量%の水を含んでおり、この過酸化水素水を蒸発させて過酸化水素蒸気を発生させることは、多量の水を同時に蒸発させることにもなっている。
【0009】
また、この多量の水の蒸発でキャリア空気の湿度が上昇すると過酸化水素蒸気は凝縮し易くなり、これらのことから、従来、キャリア空気の除湿や加熱をもって過酸化水素水の蒸発を補助するとともに除染ガス路での過酸化水素蒸気の凝縮を防止するのに必要なキャリア空気の除湿量や加熱量が大きくなり、このことで運転コストが嵩むとともに省エネルギ面で不利になる問題があった。
【0010】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、合理的な改良により上記問題を効果的に解消し、また併せて、装置の汎用性を高めるとともに一層除染効果の高い除染運転が可能な除染装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
除染装置に係る本発明の第1特徴構成は、
液タンクから供給される過酸化水素水をキャリア空気中で蒸発させて過酸化水素蒸気を発生させる蒸気発生手段を備え、
この蒸気発生手段で発生させた過酸化水素蒸気をキャリア空気とともに除染ガス路を通じ除染対象室に供給して除染対象室を除染する除染装置であって、
前記液タンクから供給する過酸化水素水を前記蒸気発生手段への供給過程で高濃度化する濃縮手段を設けてある点にある。
【0012】
つまり、この構成では、液タンクに貯留する過酸化水素水は安全性を考慮して従前と同様の低濃度(例えば30重量%〜35重量%)の過酸化水素水としながらも、その低濃度の過酸化水素水を蒸気発生手段に供給する過程でその供給量分(即ち、使用分)だけを濃縮手段により高濃度化し、この高濃度化した過酸化水素水(例えば95重量%)を蒸気発生手段においてキャリア空気中で蒸発させて過酸化水素蒸気を発生させる。
【0013】
したがって、この高濃度化による過酸化水素水の水分量の減少分だけ、過酸化水素水の蒸発補助及び除染ガス路での過酸化水素蒸気の凝縮防止に必要となるキャリア空気の除湿量や加熱量を低減することができ、また場合によっては、キャリア空気の除湿や加熱を不要にすることもでき、これにより、従来の除染装置に比べ安全性は維持しながら消費エネルギを効果的に低減することができる。
【0014】
また、このようにキャリア空気の必要加熱量を低減することができて、その分、キャリア空気の温度を低くし得ることで、温度上限の低い除染対象室の除染にも使用できるようになり、この点で装置の汎用性も高めることができる。
【0015】
しかも、キャリア空気の必要除湿量や必要加熱量を低減し得る分(換言すれば、過酸化水素蒸気の発生に伴う水蒸気の発生量を低減し得る分)、除染対象室に供給する過酸化水素蒸気の一層の高濃度化も容易になり、この点で従来の除染装置に比べ一層除染効果の高い除染運転も可能にすることができる。
【0016】
なお、第1特徴構成の実施において、過酸化水素水をキャリア空気中で蒸発させて過酸化水素蒸気を発生させる蒸気発生手段は、過酸化水素水を圧縮空気とともにキャリア空気中に噴出して蒸発させる方式のものや、過酸化水素水をキャリア空気中で加熱容器に滴下して蒸発させる方式のもの、また、過酸化水素水をキャリア空気中に散水して蒸発させる方式のものや、過酸化水素水を含浸材に含浸させた状態でキャリア空気と気液接触させて蒸発させる方式のもの、あるいは、それらを組み合わせた方式のものなど、どのような蒸発方式のものであってもよい。
【0017】
本発明の第2特徴構成は第1特徴構成の実施において、
前記濃縮手段は、分離膜により過酸化水素水から水を分離して過酸化水素水を高濃度化する構成にしてある点にある。
【0018】
つまり、第1特徴構成の実施において、蒸気発生手段に供給する過酸化水素水を高濃度化する濃縮手段には種々の濃縮方式のものを採用できるが、上記の如く、分離膜により過酸化水素水から水を分離して過酸化水素水を高濃度化する濃縮手段を採用すれば、例えば加熱蒸留などにより過酸化水素水を高濃度化するのに比べ、装置構成を簡略にして装置コストを安価にすることができる。
【0019】
また、分離膜により過酸化水素水を連続的に高濃度化し得るから、除染運転に伴い必要量の過酸化水素水を連続的に高濃度化して蒸気発生手段に供給し、これにより、必要量の過酸化水素蒸気を連続的に発生させて除染対象室に送給するといった運転形態を採るのに好適であり、この点、除染運転の運転性も高く確保することができる。
【0020】
なお、第2特徴構成の実施において、分離膜による過酸化水素水の高濃度化には透過気化法(パーベーパレーション)や膜蒸留法などを採用すればよい。
【0021】
本発明の第3特徴構成は第1又は第2特徴構成の実施において、
前記蒸気発生手段に供給するキャリア空気を除湿する除湿手段として、吸着材を保持する通気性の吸着ロータを回転させて吸着ロータの各部を除湿対象キャリア空気の通風域である吸着域と高温再生気体の通風域である脱着域とに繰り返して交互に位置させる吸着ロータ式除湿装置を設けてある点にある。
【0022】
つまり、吸着ロータ式除湿装置の吸着域を通過させて吸着材による水分吸着で除湿する空気は、水分吸着に伴い発生する吸着熱及び熱容量のある吸着ロータが回転することによる高温脱着域から吸着域への熱移動(換言すれば、吸着ロータを介した高温再生気体との熱交換)により昇温する。
【0023】
従って、蒸気発生手段に供給するキャリア空気を吸着ロータ式除湿装置の吸着域に通過させて除湿するようにすれば、除湿に伴う上記昇温によりキャリア空気に対する電気ヒータなどの専用の加熱手段を不要にする(ないし装備するにしても小型化なもので済ませる)ことができ、これにより、装置構成を簡素にするとともに消費エネルギを低減することができる。
【0024】
そしてまた、前述の如く過酸化水素水の高濃度化によりキャリア空気の必要除湿量や必要加熱量を低減し得ることで、装備する吸着ロータ式除湿装置そのものも小型なもので済ませることができ、これらのことが相俟って、装置コスト面や運転コスト面並びに省エネルギ化の面で一層有利な除染装置にすることができる。
【0025】
本発明の第4特徴構成は第1又は第2特徴構成の実施において、
ヒートポンプ回路の蒸発器でキャリア空気を冷却除湿し、この冷却除湿後のキャリア空気を前記ヒートポンプ回路の凝縮器で再熱し、この再熱後のキャリア空気を前記蒸気発生手段に供給する構成にしてある点にある。
【0026】
つまり、この構成では、ヒートポンプ回路の蒸発器で冷却除湿したキャリア空気を同じヒートポンプ回路の凝縮器で再熱(加熱)する。即ち、キャリア空気の冷却除湿で生じる排熱を利用して冷却除湿後のキャリア空気を加熱(再熱)する。
【0027】
従って、この構成であれば、キャリア空気に対する電気ヒータなどの専用の加熱手段を不要にする(ないし装備するにしても小型化なもので済ませる)ことができ、これにより、装置構成を簡素にするとともに消費エネルギを低減することができる。
【0028】
そしてまた、前述の如く過酸化水素水の高濃度化によりキャリア空気の必要除湿量や必要加熱量を低減し得ることで、装備するヒートポンプ回路そのものも小型なもので済ませることができ、これらのことが相俟って、装置コスト面や運転コスト面並びに省エネルギ化の面で一層有利な除染装置にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第1実施形態を示す除染装置の構成図
【図2】第2実施形態を示す除染装置の構成図
【図3】通気経路の切り換え状態を示す回路図
【発明を実施するための形態】
【0030】
〔第1実施形態〕
図1は除染装置を示し、1は吸着ロータ式の除湿装置であり、搬送用のキャリア空気CAとして導入路2を通じ導入する搬送用の外気をこの除湿装置1により除湿する。
【0031】
この除湿装置1は、シリカゲル等の吸着材aを保持する通気性の吸着ロータ3を備えており、この吸着ロータ3をモータ4によりロータ中心軸芯q周りで回転させることで、その回転方向における吸着ロータ3の各部を、除湿対象キャリア空気CA(搬送用外気)の通風域である吸着域5と高温再生気体HGの通風域である脱着域6とに繰り返して交互に位置させる構成にしてある。
【0032】
即ち、吸着域5では、除湿対象キャリア空気CA中の水分を域内ロータ部分の吸着材aにより吸着することで除湿対象キャリア空気CAを除湿し、一方、脱着域6では、吸着域5において吸着材aが吸着した水分を高温再生気体HGによる吸着材加熱により域内ロータ部分の吸着材aから高温再生気体HGに脱着させて吸着材aを再生する。
【0033】
なお、キャリア空気CAは吸着域5を通過させて吸着材aによる水分吸着で除湿したキャリア空気CAは、その水分吸着に伴い発生する吸着熱、及び、熱容量のある吸着ロータ3が回転することによる高温脱着域6から吸着域5への熱移動(換言すれば、吸着ロータ3を介した高温再生気体HGとの熱交換)により昇温する。
【0034】
7は脱着域6に供給する高温再生気体HG(例えば、高温水蒸気やヒータで加熱した空気あるいはバーナの高温燃焼ガス)を生成する再生気体生成装置である。
【0035】
8は中継路9により導かれる吸着域通過後のキャリア空気CA(即ち、除湿されるとともに昇温したキャリア空気)中で過酸化水素水Whを蒸発させて過酸化水素蒸気Shを発生させる蒸気発生器であり、具体的には、この蒸気発生器8では、液タンク10から給液路11を通じて供給される過酸化水素水Whを2流体噴出装置8Aにより圧縮空気PAとともにキャリア空気CAに対して噴出する構造にしてある。
【0036】
即ち、このように過酸化水素水Whを圧縮空気PAとともに噴出することで、噴出した過酸化水素水Whの微細化を促進し、これにより、除湿及び昇温したキャリア空気CAによる蒸発補助の下で過酸化水素水Whを効率的に蒸発させて、過酸化水素蒸気Shを効率良く発生させる。
【0037】
12は蒸気発生器8で発生させた過酸化水素蒸気Shをキャリア空気CAとともに除染対象室13に導く除染ガス路であり、この除染ガス路12を通じてキャリア空気CAによる搬送により過酸化水素蒸気Shを除染対象室13に送給することで、除染対象室13を除染する。
【0038】
また、キャリア空気CAとして前述の如く除湿及び昇温した空気を用いることで、蒸気発生器8での過酸化水素水Whの蒸発補助に加え、除染対象室13への送給過程における除染ガス路12での過酸化水素蒸気Shの凝縮も防止する。
【0039】
14は中継路9に介装した補助加熱器であり、吸着ロータ式除湿装置1における吸着域5の通過過程で得られるキャリア空気CAの昇温だけでは不十分な場合、この補助加熱器14を用いて蒸気発生器8への給送キャリア空気CAをさらに加熱する。
【0040】
15は液タンク10からの給液路11に介装した濃縮装置であり、この濃縮装置15は給液路11を通じて液タンク10から蒸気発生器8に供給する過酸化水素水Whをその供給過程において連続的に高濃度化するものである。
【0041】
具体的には、液タンク10からポンプPにより給液路11を通じて蒸気発生器8の2流体噴出装置8Aに過酸化水素水Whを加圧供給する給液構成において、この濃縮装置15は、液タンク10からの過酸化水素水Whを通過させる加圧液体域16と、排気路17を通じて真空ポンプ18により域内を減圧する減圧気体域19とを、水分子の透過が可能な分離膜20により仕切った構造にしてある。
【0042】
つまり、この構造により、液タンク10から供給される低濃度(例えば30重量%〜35重量%)の過酸化水素水Whに含まれる多量の水が気化を伴う状態で分離膜20を加圧液体域16から減圧気体域19の側に透過して過酸化水素水Whから分離されるようにし、これにより、液タンク10から供給される低濃度の過酸化水素水Whを加圧液体域16の通過過程で高濃度化して、その高濃度化した過酸化水素水Wh(例えば95重量%)を蒸気発生器8の2流体噴出装置8Aに供給するようにしてある。
【0043】
そして、このように高濃度化した過酸化水素水Whを2流体噴出装置8Aからの噴出によりキャリア空気CA中で蒸発させて過酸化水素蒸気Shを発生させることで、過酸化水素蒸気Shの発生に伴う水分蒸発量を低減し、このことで、蒸気発生器8での過酸化水素水Whの蒸発補助及び除染ガス路12での過酸化水素蒸気Shの凝縮防止に要するキャリア空気CAの除湿量や加熱量を低減する。
【0044】
21は排気路17を通じて減圧気体域19から排出される分離水蒸気を冷却して凝縮させる冷却器である。
【0045】
〔第2実施形態〕
図2は第1実施形態で示した吸着ロータ式除湿装置1に代えてキャリア空気CAの調整にヒートポンプ回路22を用いた除染装置を示す。
【0046】
この除染装置では、圧縮機23―凝縮器24―膨張機構25−蒸発器26の順に冷媒rを循環させる蒸気圧縮式のヒートポンプ回路22を装備し、そのヒートポンプ回路22の蒸発器26を空気冷却器としてキャリア空気CAの導入路2に介装し、また、そのヒートポンプ回路22の凝縮器24を空気加熱器として蒸発器26の下流側で導入路2に介装してある。
【0047】
27は蒸発器26を通過した空気を外部に排出する排気路、28は蒸発器26を介さずにキャリア空気CAとしての搬送用外気を凝縮器24に導く補助導入路である。
【0048】
29a〜29cは通気経路の切り換えを行なうダンパであり、これらダンパ29a〜29cの切り換え操作により基本的に次の夏期用通気状態と冬期用通気状態との切り換えを行なう。
【0049】
夏期用通気状態:図3(A)に示す如く蒸発器26を通過させたキャリア空気CAをさらに凝縮器24に通過させて蒸気発生器8に送る。
【0050】
冬期用通気状態:図3(B)に示す如く蒸発器26を通過させた空気は排気路27を通じて外部に排出し、これに併行して、補助導入路28からの導入外気をキャリア空気CAとして凝縮器24に通過させて蒸気発生器8に送る。
【0051】
つまり、外気が高温高湿となる夏期には図3(A)の夏期用通気状態にして、導入路2を通じキャリア空気CAとして導入する外気を蒸発器26で冷却除湿するとともに、その冷却除湿に続いて凝縮器24で再熱(加熱)し、これら冷却除湿とそれに続く再熱により温湿度調整したキャリア空気CAを蒸気発生器8に送って、その調整キャリア空気CAに対し前述の濃縮装置15により高濃度化した過酸化水素水Whを2流体噴出装置8Aにより噴出することで過酸化水素蒸気Shを発生させる。
【0052】
また、キャリア空気CAとして用いる外気が高温高湿であることに対し、蒸発器26での冷却除湿とそれに続く凝縮器24での再熱によりキャリア空気CAの温湿度を調整することで、蒸気発生器8での過酸化水素水Whの蒸発を補助するとともに除染ガス路12での過酸化水素蒸気Shの凝縮を防止する。
【0053】
そしてまた、夏期には、蒸発器26での冷却除湿で生じる排熱(具体的には蒸発器26でのキャリア空気CAから吸熱量)を利用して冷却除湿後のキャリア空気CAを凝縮器24において再熱する加熱形態を採ることで、キャリア空気CAの温湿度調整に要する消費エネルギを低減する。
【0054】
一方、外気が低温低湿となる冬期には図3(B)の冬期用通気状態にして、導入路2からの導入外気に対し蒸発器26を吸熱機能させ、この吸熱により低温化した空気は排気路27を通じて外部に排出する。そして、これに併行して、補助導入路28を通じキャリア空気CAとして導入する外気を蒸発器26での吸熱量を用いて凝縮器24で加熱し、この加熱キャリア空気CAを蒸気発生器8に送って、その加熱キャリア空気CAに対し前述の濃縮装置15により高濃度化した過酸化水素水Whを2流体噴出装置8Aにより噴出することで過酸化水素蒸気Shを発生させる。
【0055】
また、キャリア空気CAとして用いる外気が低温低湿であることに対し、凝縮器24での加熱によりキャリア空気CAの温度を調整するだけで、蒸気発生器8での過酸化水素水Whの蒸発を補助するとともに除染ガス路12での過酸化水素蒸気Shの凝縮を防止する。
【0056】
なお、ここでは図3(A)に示す夏期用通気状態と図3(B)に示す冬期用通気状態とを二者択一に切り換え使用する例を示したが、場合によっては、蒸発器26に通過させて冷却除湿した空気を分流して、その一方を排気路27を通じ外部に排出するとともに、他方を補助導入路28からの導入外気との混合状態で凝縮器24に通過させて加熱し、この加熱混合空気をキャリア空気CAとして蒸気発生器8に供給するようにする。
【0057】
そして、この通風状態おいて、蒸発器26で冷却除湿した空気の分流比、及び、補助導入路28を通じて凝縮器24に導く外気の風量を外気の温湿度状態などに応じてダンパ29a〜29cにより適宜調整するようにしてもよい。
【0058】
その他、図1の除染装置と同じ機能部分には図1で用いたのと同じ符号を付してあり、図2に示す除染装置についても図1に示した除染装置と同様、蒸気発生器8に供給する過酸化水素水Whを供給過程で濃縮装置15により高濃度化することで、過酸化水素蒸気Shの発生に伴う水分蒸発量を低減することができ、これにより、キャリア空気CAの必要除湿量や必要加熱量を低減することができる。
【0059】
〔別の実施形態〕
次に本発明の別実施形態を列記する。
キャリア空気CAを除湿する除湿手段を装備する場合、その除湿手段には種々の除湿方式のものを採用することができ、また、キャリア空気CAを加熱する加熱手段を装備する場合にも、その加熱手段には種々の加熱方式のものを採用することができる。
【0060】
キャリア空気CAとして用いる空気は外気に限られるものではなく、工場等における内部空気やボンベ等に貯留した空気、あるいは、除染対象室13からの還気空気やそれら空気を混合した空気などであってもよい。
【0061】
過酸化水素水Whを蒸気発生器8に送る過程で高濃度化する濃縮手段15としては、前述の実施形態で示したように分離膜20による水の分離により過酸化水素水Whを高濃度化する方式のものが好適ではあるが、必ずしも、膜利用の方式に限られるものではなく、分離膜を用いずに過酸化水素水Whを高濃度化するその他の方式の濃縮手段を採用してもよい。
【0062】
除染対象室13はどのような用途の室空間であってもよく、また、本発明による除染装置を可搬式にして異なる室空間を随時に除染できるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明による除染装置は医薬品の製造室や乗合車両の車内を初め、各種用途の室空間の除染に利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
10 液タンク
Wh 過酸化水素水
CA キャリア空気
Sh 過酸化水素蒸気
8 蒸気発生手段
12 除染ガス路
13 除染対象室
15 濃縮手段
20 分離膜
a 吸着材
3 吸着ロータ
5 吸着域
HG 高温再生気体
6 脱着域
1 吸着ロータ式除湿装置
22 ヒートポンプ回路
26 蒸発器
24 凝縮器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液タンクから供給される過酸化水素水をキャリア空気中で蒸発させて過酸化水素蒸気を発生させる蒸気発生手段を備え、
この蒸気発生手段で発生させた過酸化水素蒸気をキャリア空気とともに除染ガス路を通じ除染対象室に供給して除染対象室を除染する除染装置であって、
前記液タンクから供給する過酸化水素水を前記蒸気発生手段への供給過程で高濃度化する濃縮手段を設けてある除染装置。
【請求項2】
前記濃縮手段は、分離膜により過酸化水素水から水を分離して過酸化水素水を高濃度化する構成にしてある請求項1記載の除染装置。
【請求項3】
前記蒸気発生手段に供給するキャリア空気を除湿する除湿手段として、吸着材を保持する通気性の吸着ロータを回転させて吸着ロータの各部を除湿対象キャリア空気の通風域である吸着域と高温再生気体の通風域である脱着域とに繰り返して交互に位置させる吸着ロータ式除湿装置を設けてある請求項1又は2記載の除染装置。
【請求項4】
ヒートポンプ回路の蒸発器でキャリア空気を冷却除湿し、この冷却除湿後のキャリア空気を前記ヒートポンプ回路の凝縮器で再熱し、この再熱後のキャリア空気を前記蒸気発生手段に供給する構成にしてある請求項1又は2記載の除染装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−34781(P2012−34781A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176602(P2010−176602)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(000002934)武田薬品工業株式会社 (396)
【出願人】(000149790)株式会社大気社 (136)
【Fターム(参考)】