説明

除糞システム

【課題】鶏舎に設置される除糞システムにおいて、除糞ベルトのベルト内表面に滞留する羽毛等の夾雑物を確実に排除し、除糞ベルトによる鶏糞等の搬送を安定的に行うことが可能な除糞システムを提供することを課題とする。
【解決手段】除糞システム1は、鶏糞をベルト外表面6で受ける帯環状の除糞ベルト4と、除糞ベルト4を架設支持するためのベルト架設部9と、架設された除糞ベルト4を回転させるベルト回転部と、除糞ベルト4のベルト内表面5の夾雑物3を除去するスクレーパ2とを具備する。スクレーパ2は、複数のスクレーパ短片19を回動自在に連結した一対のスクレーパ片12a,12bによって構成され、除糞ベルト4の変形に応じてスクレーパ底面11を変形させて当接状態を保持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除糞システムに関するものであり、特に、鶏を飼育する鶏舎に設置され、鶏の排泄した鶏糞等を自動的に回収する除糞システムの除糞ベルトのベルト内表面上の羽毛や毛埃等の夾雑物を排除するためのスクレーパを備えた除糞システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、多数羽の鶏を一カ所の鶏舎でまとめて飼育し、鶏卵の集卵や鶏肉用の鶏を生産する養鶏場において、ケージと呼ばれる設備が使用されている。このケージは、金属製の複数のフレーム部材を縦横に組合わせることによって構成され、全体として略直方体の枠形状(フレーム形状)に構築したものであり、構築されたユニットを複数連設して形成されている。そして、連設(連結)されたケージ列を鶏舎の大きさに応じて長手方向に配し、係るケージ列が複数列配置されている。このケージには、前後左右及び上下の鶏の動きを規制して収容するとともに、収容された鶏に対して餌や水を自動的に供給する給餌・給水システム、産卵した鶏卵を自動的に回収する集卵システム、及び鶏から排出される鶏糞等を回収し、ケージ内部及び鶏舎全体を病気等が蔓延することの内容に清潔な状態を保持するための除糞システム等の各種システムが備え付けられている。そして、これらのケージ及び各システムをコンピュータが一元的に管理することにより、一鶏舎(或いは一養鶏場)当たりの作業人員を必要最小限に抑え、清潔かつ新鮮な鶏卵や鶏肉等の低価格で安定供給することが可能となっている。
【0003】
ここで、除糞システムについて、さらに詳細に説明すると、ケージに収容された鶏の下方には、帯環状を呈する除糞ベルトが配されている。そのため、ケージ内の鶏が排泄行為を行った場合、鶏糞は下方に落下し、相対する除糞ベルトのベルト面(ベルト外表面)に溜まることになる。ここで、除糞ベルトは、複数の回転可能なローラによって支持され、鶏舎内に配されたケージ列の長手形状の長さに略一致するように配されている。そして、除糞ベルトを回転させることにより、ベルト外表面で受けた鶏糞を所定方向に移動させることができる。ここで、除糞ベルトは帯環状に形成されているため、鶏糞を受けた上方に面したベルト外表面は、ベルト端まで到達すると鶏糞を下方に落下させた後、移動方向を180°変化させ、今度は下方にベルト外表面を向けることになる。そして、再び、他端側のベルト端に到達すると、再び、移動方向を180°変化させ、ベルト外表面を上方に向けたものとなる。これにより、ベルト端から落下した鶏糞を回収し、所定の処理を経て、肥料等に再利用することが可能となる。
【0004】
上述の除糞システムは、鶏の飼育時において常に稼働し、除糞ベルトが回転しているものではなく、通常はほとんど停止した状態で待機している。そして、ベルト外表面に鶏糞等が十分に滞留した段階で除糞ベルトを回転させるように制御するものであり、係る頻度は一週間に一回或いは二回程度であることが多い。ここで、回転可能に鶏舎内に架設された除糞ベルトは、上述のように帯環状を呈しているため、上方及び下方にそれぞれベルトが存在し、ベルト端部でこれを連結するような構成となっている。そのため、上方側のベルト及び下方側のベルトの間のベルト間にゴミ等の夾雑物が上記待機中に溜まることがある。特に、ケージ内の羽ばたきによって羽毛や毛埃等が鶏舎内に飛散することがあり、これらの夾雑物が除糞ベルトのベルト間に進入し、最終的に下方側の除糞ベルトのベルト内表面に滞留することがある。これらのベルト内表面の夾雑物をそのままにして除糞ベルトを回転させると、ベルト端部で除糞ベルト及びローラ(方向転換ローラ)の間に夾雑物が挟み込まれる可能性があった。これらをそのままにするとローラ表面やベルト内表面に凹凸が生じ、安定した除糞ベルトの回転が阻害されることがあった。そのため、方向転換ローラの直前に夾雑物をベルト内表面から排除するためのスクレーパ機構が一般的に設けられている。
【0005】
具体的に説明すると、スクレーパは、除糞ベルトのそれぞれのベルト幅端部からベルト幅中央方向に突設された一対のスクレーパ片を有して構成され、互いのスクレーパ片の一端部同士が接合され、上方から観察すると略二等辺三角形状を呈するように構成されている。このとき、それぞれのスクレーパ片のスクレーパ底面と除糞ベルトのベルト内表面とが擦れ合うようにして接するため、ベルト内表面上の夾雑物が、スクレーパ片によって移動(搬送)が規制される。このとき、スクレーパが一対のスクレーパ片によって二等辺三角形状に形成され、除糞ベルトの中央から斜めに横切るようにしてそれぞれのスクレーパ片が配置されている。そのため、スクレーパ片及び除糞ベルトの間に滞留した夾雑物は除糞ベルトの回転により、徐々に中央からベルト幅端部に向かって移動し、最終的にベルト幅端部から落下することになる。ここで、ベルト幅端部から落下した夾雑物は夾雑物回収用のボックスやシューターによって回収或いは収集される。一般的な鶏舎の場合、多数羽の鶏は多段に設けられたケージ内で飼育されるため、上記除糞システムも各階層毎に設けられる必要がある。その結果、回収用のシューター等に到達した夾雑物は、その下方に設けられた除糞システムの除糞ベルトのベルト外表面の上に落とされるものであっても構わない。これにより、除糞ベルトの回転によって鶏糞とともに回収が行われる。なお、最下層の除糞システムの場合、回収用のボックスに個別に回収されることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の除糞システム、特に、除糞システムに採用されるスクレーパは、下記に掲げるような問題点を生じることがあった。ここで、除糞システムに採用される除糞ベルトは、複数のローラ(回転ローラ等)によって回転駆動させ、それぞれのベルト端で移動方向を方向転換ローラによって180°転換している。そのため、ポリプロピレン等の可撓性素材からなる樹脂製部材が利用されている。ここの除糞ベルトは、方向転換ローラに沿って柔軟に変形可能とするために薄板状(フィルム状)の形状のものが採用されている。そのため、回転に伴って除糞ベルトの表面が撓んだり、弛んだりする等の変形が生じる可能性があり、上側のベルト外表面及び下側のベルト内表面が水平方向に沿って安定して移動することができない可能性があった。
【0007】
そのため、スクレーパ片のスクレーパ底面と除糞ベルトのベルト内表面との間に隙間が生じることがあり、この隙間を夾雑物が通過するおそれがあった。その結果、本来はスクレーパ片によって除去され、方向転換ローラまで到達するはずのない夾雑物が、方向転換ローラと除糞ベルトの間に挟まれることがあり、方向転換ローラのローラ表面やベルト内表面に汚れが付着することがあった。その結果、それぞれの表面に凹凸が生じ、安定した除糞ベルトの回転ができないことがあった。さらに、これらの夾雑物による汚れや凹凸が激しくなると、ローラ自体の回転を阻害する可能性もあり、その結果として除糞ベルトの回転自体ができない不具合を生じることもあった。
【0008】
さらに、スクレーパのスクレーパ片は、一般に長片状(長手形状)の金属製の板状部材から構成され、そのスクレーパ底面はベルト内表面と広範囲で当接するように直線形状に形成されていた。そのため、上述した除糞ベルトの変形に対応することができなかった。
【0009】
そこで、本発明は、上記実情に鑑み、鶏舎に設置される除糞システムにおいて、除糞ベルトのベルト内表面に滞留する羽毛等の夾雑物を確実に排除し、除糞ベルトによる鶏糞等の搬送を安定的に行うことが可能な除糞システムの提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明の除糞システムは、「上方から落下する鶏糞を受けるベルト外表面を有し、可撓性素材によって変形可能に形成された帯環状の除糞ベルトと、一対の方向転換ローラ及び前記方向転換ローラの間に配設される複数の回転ローラを有し、前記方向転換ローラ及び前記回転ローラを前記除糞ベルトのベルト内表面に外接させ、断面長円形状に前記除糞ベルトを架設して支持するベルト架設部と、前記方向転換ローラ及び前記回転ローラの少なくとも一つと駆動伝達機構を介して連結され、架設支持された前記除糞ベルトを所定方向に回転させ、前記ベルト外表面の前記鶏糞を前記方向転換ローラによってベルト移動方向が変化した一方のベルト端部まで搬送するベルト回転部と、前記除糞ベルトの他方の前記ベルト端部に近接して設けられ、前記ベルト回転部によって回転する前記除糞ベルトの撓みや弛みを含む前記ベルト内表面の変形に応じ、前記ベルト内表面と当接するスクレーパ底面の底面形状を変形させる底面変形手段を有する一対のスクレーパ片を有し、一対の前記スクレーパ片の一端部同士をベルト幅中央で接合し、前記除糞ベルトを斜めに横断するようにベルト幅端部に向けてそれぞれの他端部を拡開して前記スクレーパ片を配設したスクレーパと」を主に具備して構成されている。なお、除糞ベルト、ベルト架設部、及びベルト回転部については、上記説明及び一般的な除糞システムのものを採用することが可能であり、ここでは説明を省略する。
【0011】
スクレーパは、一対のスクレーパ片を有し、一端部同士を接合し、ベルト幅中央からベルト幅端部に向かって除糞ベルトを斜めに横断するように他端部を拡開してスクレーパ片を配設している。このとき、スクレーパ片のスクレーパ底面と除糞ベルトのベルト内表面とが当接し、さらにスクレーパ底面がベルト内表面の変形に応じて変化するような底面変形手段を備えている。ここで、底面変形手段とは、ベルト内表面の変形に追随し、スクレーパ底面を形状を変えるように、例えば、スクレーパ片全体をゴム等の弾性を有する素材によって形成するものが想定される。これにより、変形によって除糞ベルトが下方の撓むように凹状に変形しても、凹状の曲面に沿ってスクレーパ片が変形することにより、スクレーパ片とベルト内表面の間に隙間が生じることがない。
【0012】
したがって、本発明の除糞システムによれば、スクレーパ底面の底面形状を変化させることの可能なスクレーパ片によって、ベルト内表面との間の隙間の形成を抑制し、ベルト内表面上の夾雑物を確実にキャッチすることが可能となる。
【0013】
さらに、本発明の除糞システムは、上記構成に加え、「前記スクレーパ片は、複数の長手形状のスクレーパ短片と、互いに隣接する前記スクレーパ短片の短片端部同士を所定の回動範囲で回動自在に軸支して連結する回動連結部とをさらに具備し、前記底面変形手段は、前記回動連結部を介して連結された複数の前記スクレーパ短片間の関節角度を、前記除糞ベルトの前記ベルト内表面の変形に応じて変化させる」ものであっても構わない。
【0014】
したがって、本発明の除糞システムによれば、スクレーパ片が複数のスクレーパ短片を連結することにより構成され、スクレーパ短片同士の連結が一方のスクレーパ短片に対して所定の回動範囲で回動自在に軸支する回動連結部を介して行われている。これにより、スクレーパ片は、関節のような動きをすることが可能となり、除糞ベルトの変形に応じて容易にスクレーパ底面の形状を変えることが可能となる。
【0015】
さらに、本発明の除糞システムは、上記構成に加え、「前記スクレーパ片は、自重の一部が前記スクレーパ底面と前記ベルト内表面で当接した前記除糞ベルトによって支持されている」ものであっても構わない。
【0016】
したがって、本発明の除糞システムによれば、スクレーパを構成するスクレーパ片の重量が除糞ベルトのベルト内表面に掛かり、当該除糞ベルトのテンションによってスクレーパ片を略水平方向に支持している。ここで、スクレーパ片の他端部は、それぞれケージ等の一部と固定回転軸を介して回転可能に形成されている。そして、スクレーパ片が除糞ベルトのベルト内表面にスクレーパ底面を当接させた状態で載置される。すなわち、スクレーパ片は、上記除糞ベルトがない場合、固定回転軸を軸として下方に垂下した状態となる。これにより、スクレーパ片の自重によって除糞ベルトを下方に押付ける作用が奏せられ、その結果として、隙間のない当接状態を維持することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の効果によれば、スクレーパ底面の底面形状を除糞ベルトの撓み等の変形に応じて追従するように変化させることにより、ベルト内表面の上の羽毛等の夾雑物の排除が可能となる。これにより、除糞ベルトの回転運動が安定して行われるとなり、方向転換ローラと除糞ベルトとの間に夾雑物が捲込まれる等の不具合の発生を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態の除糞システムのスクレーパの構成を示す平面図である。
【図2】スクレーパの構成を示す左側面図である。
【図3】スクレーパの構成を示す(a)上方に変形した左側面図、及び(b)下方に変形した左側面図である。
【図4】スクレーパによる夾雑物の除去の一例を模式的に示す左側方から見た説明図である。
【図5】スクレーパによる夾雑物の除去の一例を模式的に示す上方から見た説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態である除糞システム1について、図1乃至図5に基づいて説明する。図1は本実施形態の除糞システム1のスクレーパ2の構成を示す平面図であり、図2はスクレーパ2の構成を示す(a)通常状態の左側面図、及び(b)底面変形状態の一例を示す左側面図であり、図3はスクレーパ2による夾雑物3の除去の一例を模式的に示す側方から見た説明図であり、図4はスクレーパ2による夾雑物3の除去の一例を模式的に示す左側方から見た説明図であり、図5はスクレーパ2による夾雑物3の除去の一例を模式的に示す上方から見た説明図である。ここで、本実施形態の除糞システム1において、除糞ベルト4のベルト内表面5に滞留し、蓄積された羽毛等の夾雑物3をスクレーパ2によって排除する機能に特に言及して説明し、除糞システム1の本来の機能であるベルト外表面6で、上方から落下する鶏糞(図示しない)を受け止め、これを回収する点については従来の除糞システムと同一であるため、ここでは詳細な説明は省略するものとする。
【0020】
本実施形態の除糞システム1は、図1乃至図5に示すように、鶏糞をベルト外表面6で受止め、所定方向に搬送し回収するための帯環状の除糞ベルト4と、当該除糞ベルト4を鶏舎に設置された各ケージの長手方向に沿って架設して支持するベルト架設部9と、架設された除糞ベルト4を回転させるベルト回転部と、除糞ベルト4のベルト内表面5にそれぞれのスクレーパ底面11を密着するように当接させた一対のスクレーパ片12a,12bを有するスクレーパ2とを具備して主に構成されている。
【0021】
さらに詳細に説明すると、除糞ベルト4は、ポリプロピレン樹脂から構成され、薄板状(フィルム状)に成型加工したものを使用している。係るポリプロピレン樹脂の除糞ベルト4は、応力に対して変形可能な性質(すなわち、可撓性)を有している。そのため、長板状に形成し、その端部同士を互いに接合することにより、帯環状(ベルト状)の除糞ベルト4を構築することができる。なお、除糞ベルト4のベルト外表面6は、ケージに収容された鶏が排泄した鶏糞が上方から落下してくるのを受け止める機能を有している。そのため、ケージの横幅と同一またはそれよりも大きなベルト幅を有するように構成されている。
【0022】
そして、係る除糞ベルト4をベルト架設部8によって断面長円形状を呈するように、かつベルト外表面6が略水平方向に沿って一致するように架設支持される。ここで、ベルト架設部9は、複数のローラがケージ等の一部と回転可能に軸支されている。具体的に説明すると、帯環状の除糞ベルト4が断面長円形状を架設するために、それぞれのベルト端部14に設けられ、除糞ベルト4の進行方向(移動方向)を180°逆転させる一対の方向転換ローラ7と、当該方向転換ローラ7の間に除糞ベルト4の略水平方向の移動を支持するとともに、当該除糞ベルト4に移動のための回転力を付与することの可能な複数の回転ローラ8とを具備して主に構成されている(図4等参照)。さらに、本実施形態の除糞システム1は、ベルト架設部9の回転ローラ8の一部とギア(或いはチェーン)等の駆動伝達機構(図示しない)を含むベルト回転部(図示しない)を具備している。これにより、除糞ベルト4を架設支持し、かつ所定方向に回動させることができる。なお、ベルト回転部は、周知の技術を応用することによって構築可能なものであり、ここでは詳細な説明は省略するものとする。
【0023】
一方、除糞ベルト4の内側の空間で、ベルト内表面5と一部が接するように配されたスクレーパ2は、除糞ベルト4の鶏糞等の回収される一方のベルト端部(図示しない)に相対する他方のベルト端部10に近接して設けられている。ここで、ベルト回転部によって回転ローラ8等に沿って所定方向に回転する除糞ベルト4は、撓みや変形等によって水平方向を保って回転が行われるとは限らない。すなわち、除糞ベルト4の一方のベルト幅端部14a等の方向に傾斜したり、或いは除糞ベルト4自体が波打ちながら変形することがある。これに対し、本実施形態の除糞システム1のスクレーパ2は、除糞ベルト4の変形(特に、ベルト内表面5の変形)に応じ、これと当接するスクレーパ底面11の形状を変化させる底面変形機構15(底面変形手段に相当)を有する一対のスクレーパ片12a,12bを備えている。一対のスクレーパ片12a,12bは、それぞれの一端部17同士が接合され、ベルト幅中央13に当該接合箇所が位置するようにセットされ、さらに、ベルト幅中央13から除糞ベルト4の下側が移動する方向に向かってベルト幅端部14a,14bに向かって斜めに横断するように、一対のスクレーパ片12a,12bがそれぞれ配されている。そして、スクレーパ片12a,12bの他端部18は、ケージに設けられたスクレーパ片連結部(図示しない)と固定されている。これにより、上方から観察すると、接合された一端部同士17を頂点として、逆V字形状を呈している。
【0024】
さらに具体的に説明すると、スクレーパ片12a,12bは、図1及び図2等に示すように、長手形状を有する板状の六本のスクレーパ短片19によって構成されている。そして、一方の端に位置するスクレーパ短片19が曲折され、上記の一端部17を構成している。さらに、他方の端に位置するスクレーパ短片19が曲折され、他端部18が形成されている。そして、各スクレーパ短片19の短片端部20には、板材を貫通する孔部21が穿設され、係る孔部21の位置が合うように互いのスクレーパ短片19を重合わせる。そして、重なった孔部21に連結ジョイント22を挿入し、固定する。これにより、隣接するスクレーパ短片19同士が連結され、一方のスクレーパ短片19に対する他方のスクレーパ端片19の間の角度(関節角度)を所定の回動範囲で自由に変化させることができる(図3(b)参照)。その結果、スクレーパ底面11の形状を変形することができる。ここで、連結ジョイント22が本発明の回動連結部に相当し、スクレーパ短片19及び連結ジョイント22によるスクレーパ底面11の変形が本発明の底面変形機構15(底面変形手段)に相当する。
【0025】
ここで、複数のスクレーパ短片19を連結してなるスクレーパ片12a,12bは、除糞ベルト4のベルト幅短部14a,14bの外側に位置する前述のスクレーパ片連結部(図示しない)に他端部18が連結している。このとき、他端部18から伸びたスクレーパ片12a,12bは、一端部17方向に向かってスクレーパ片12a,12bを支持する力は作用していない。そのため、何もない状態ではスクレーパ片12a,12bは、他端部18を有するスクレーパ短片19と接続したスクレーパ短片19が連結ジョイント22を軸として垂下しようとする力が作用する。このとき、ベルト架設部9によって有る程度の張力を有して架設支持された除糞ベルト4のベルト内表面5とスクレーパ片12a,12bのスクレーパ底面11とが当接し、上記張力によってスクレーパ片12a,12bを下方から支持する力が作用する。これにより、図3及び図4等に示すように、スクレーパ片12a,12bは、ベルト内表面5に沿って略水平方向に突出するように維持されている。すなわち、スクレーパ片12a,12bの自重が除糞ベルト4によって支持されている。これにより、ベルト内表面5にスクレーパ片12a,12bが押付けられたような作用が生じる。
【0026】
次に、本実施形態の除糞システム1におけるスクレーパ2による除去の一例を、主に図4及び図5に基づいて説明する。ここで、除糞ベルト4による回転の頻度は、一週間に数回程度に設定され、ベルト外表面6には鶏糞が滞留し、一方、ベルト内表面5には鶏の羽毛等の夾雑物3が滞留している状態を想定するものとする。そして、係る状態でベルト回転部を制御し、ベルト架設部9に架設支持された除糞ベルト4を回転させる。これにより、ベルト外表面6の上の鶏糞は、回転する除糞ベルト4によって略水平方向に搬送され、一方のベルト端部に到達する。そして、係るベルト端部を越えると、方向転換ローラ7によって除糞ベルト4の上側から下側を移動するように、ベルト搬送方向が180°変化する。このとき、ベルト外表面6に載置されただけの鶏糞は、係るベルト端部でベルト外表面6から重力に従って落下する。そして、落下先に設置された鶏糞回収用の回収部(図示しない)に回収される。これにより、鶏糞の除糞が完了する。
【0027】
一方、ベルト内表面5の夾雑物3は、他方のベルト端部10に近接するように移動する。そして、当該ベルト端部10の手前に設けられたスクレーパ2の付近に到達する。このとき、スクレーパ2の一対のスクレーパ片12a,12bは、底面変形機構15によって、スクレーパ底面11をベルト内表面5の撓み等に応じて変形させている。そのため、ベルト内表面5及びスクレーパ底面11の間に隙間が生じることがない。そのため、スクレーパ片12a,12bの片側面24に到達した夾雑物3は、それ以上、ベルト端部10に向かって移動することが規制される。このとき、一対のスクレーパ片12a,12bによって逆V字形状(ベルト端部10の方向を基準とする)に形成されているため、スクレーパの片側面24と接した夾雑物3は、スクレーパ片12a,12bに沿って斜め方向に徐々に移動する。そして、最終的に図5等に示すように、除糞ベルト4のベルト幅端部14aに到達し、係る部位から除糞ベルト4のベルト内表面5から外れるようにして落下する。これにより、本実施形態の除糞システム1のスクレーパ2の作用により、夾雑物3が他方のベルト端部10に近接することがない。特に、スクレーパ片12a,12bが底面変形機構15を有するため、従来の直線のプレート状で構成されたスクレーパと比べ、隙間の発生を著しく減少することができる。これにより、隙間を通過した夾雑物3が除糞ベルト4と方向転換ローラ7の間に挟込まれる等の不具合を生じる可能性を低くすることができる。さらに、スクレーパ片12a,12bが除糞ベルト4の張力によって略水平方向に支持されているため、より隙間が発生することがない。
【0028】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0029】
すなわち、本実施形態の除糞システム1において、除糞ベルト4の変形に応じて変形するスクレーパ片12a,12bとして複数のスクレーパ短片19からなるものを示したがこれに限定されるものではなく、弾性変形可能な素材(例えば、硬質ゴム等)によってスクレーパ片を形成し、除糞ベルト4の変形に応じて弾性変形させるものであっても構わない。
【符号の説明】
【0030】
1 除糞システム
2 スクレーパ
3 夾雑物
4 除糞ベルト
5 ベルト内表面
6 ベルト外表面
7 方向転換ローラ
8 回転ローラ
9 ベルト架設部
10 ベルト端部
11 スクレーパ底面
12a,12b スクレーパ片
13 ベルト幅中央
14a,14b ベルト幅端部
15 底面変形機構
17 一端部
18 他端部
19 スクレーパ短片
20 短片端部
21 開孔部
22 連結ジョイント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方から落下する鶏糞を受けるベルト外表面を有し、可撓性素材によって変形可能に形成された帯環状の除糞ベルトと、
一対の方向転換ローラ及び前記方向転換ローラの間に配設される複数の回転ローラを有し、前記方向転換ローラ及び前記回転ローラを前記除糞ベルトのベルト内表面に外接させ、断面長円形状に前記除糞ベルトを架設して支持するベルト架設部と、
前記方向転換ローラ及び前記回転ローラの少なくとも一つと駆動伝達機構を介して連結され、架設支持された前記除糞ベルトを所定方向に回転させ、前記ベルト外表面の前記鶏糞を前記方向転換ローラによってベルト移動方向が変化した一方のベルト端部まで搬送するベルト回転部と、
前記除糞ベルトの他方の前記ベルト端部に近接して設けられ、前記ベルト回転部によって回転する前記除糞ベルトの撓みや弛みを含む前記ベルト内表面の変形に応じ、前記ベルト内表面と当接するスクレーパ底面の底面形状を変形させる底面変形手段を有する一対のスクレーパ片を有し、一対の前記スクレーパ片の一端部同士をベルト幅中央で接合し、前記除糞ベルトを斜めに横断するようにベルト幅端部に向けてそれぞれの他端部を拡開して前記スクレーパ片を配設したスクレーパと
を具備することを特徴とする除糞システム。
【請求項2】
前記スクレーパ片は、
複数の長手形状のスクレーパ短片と、
互いに隣接する前記スクレーパ短片の短片端部同士を所定の回動範囲で回動自在に軸支して連結する回動連結部と
をさらに具備し、
前記底面変形手段は、
前記回動連結部を介して連結された複数の前記スクレーパ短片間の関節角度を、前記除糞ベルトの前記ベルト内表面の変形に応じて変化させることを特徴とする請求項1に記載の除糞システム。
【請求項3】
前記スクレーパ片は、
前記スクレーパ底面と前記ベルト内表面が当接した前記除糞ベルトによって下方から支持されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の除糞システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−36217(P2011−36217A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188899(P2009−188899)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【出願人】(390030661)株式会社ハイテム (22)
【Fターム(参考)】