説明

除雪機

【課題】 従来の除雪機の走行駆動機構は、エンジンの出力を2系統に分岐するような構造となるため、機構自体の構成が複雑となってしまう。
そのため、機構自体の重量が重くなるとともに、部品点数が多いため製造コストが高くなってしまう問題があった。
また、除雪機の軽量化や製造コストを下げるために、走行駆動機構を省いた人力による手押式除雪機もあるが、作業者にとっては除雪機を動かす労力が増加するので、作業効率が低下する懸念がある。
【解決手段】 機体前部に除雪部11を配置し、機体後部に運転操作部14を配置し、機体前後中央下部に回転自在に設けた走行用車輪、または、橇71を配置した除雪機において、除雪部11のオーガハウジング18の後下部に、該オーガハウジング内の回転により駆動される補助輪51を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーガの動力を利用して補助輪を駆動するようにした、手押し式の除雪機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の除雪機は、エンジンからの動力を摩擦板式クラッチ、ギヤ、又はHST等を介して走行駆動機構に伝えて操向するようにしたものが一般的であった。
これらの多くは、エンジンの出力を除雪用(オーガ等の駆動用)と走行用(車輪等の駆動用)の2系統に分岐して減速又は正逆切換を行うものであった。
このような除雪機の一例としては下記特許文献1に示すようなものがある。
【特許文献1】特開2003−213642号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来の除雪機の走行駆動機構は、上述したようにエンジンの出力を2系統に分岐するような構造となるため、機構自体の構成が複雑となってしまう。
そのため、機構自体の重量が重くなるとともに、部品点数が多いため製造コストが高くなってしまう問題があった。
また、除雪機の軽量化や製造コストを下げるために、走行駆動機構を省いた人力による手押式除雪機もあるが、作業者にとっては除雪機を動かす労力が増加するので、作業効率が低下する懸念がある。
そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、重量が軽く安価で作業効率が低下することのない除雪機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
請求項1においては、機体前部に除雪部を配置し、機体後部に運転操作部を配置し、機体前後中央下部に回転自在に設けた走行用車輪、または、橇を配置した除雪機において、除雪部のオーガハウジングの後下部に、該オーガハウジング内の回転により駆動される補助輪を設けたものである。
【0006】
請求項2においては、前記補助輪の高さを調節可能に構成したものである。
【0007】
請求項3においては、前記補助輪と前記オーガのオーガ軸との間に、動力の入切を行うクラッチを有してなるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0009】
請求項1の構成により、従来のようにエンジンの出力を除雪用と走行用の2系統に分岐する構成とは異なり、単にオーガを回転駆動する構成としているので、除雪機を走行させるための構成を簡略化できるとともに、除雪機全体の重量も軽くすることが可能となって、操作性を向上させることが可能となる。更に、除雪作業時には補助輪の回動により前進方向の押す力を軽減でき、作業性を向上できる。
【0010】
請求項2の構成により、オーガの地面からの高さを利用者が所望する高さに設定することが可能となり、高さ設定用のソリ等を省くことができる。
【0011】
請求項3の構成により、例えば、単に手押しで除雪機を移動させる際や後進時等に、オーガを回転させずに、無駄なエネルギーを浪費することを防止することができ、簡単に操向操作が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について説明し、本発明の理解に供する。尚、以下の本発明を実施するための最良の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
図1は本発明の除雪機の概略構成図(側面図)、図2は本発明の除雪機の概略構成図(平面図)、図3は補助輪51の爪式クラッチの概略構成図、である。
【0013】
先ず、除雪機1の全体構成について、以下に説明する。
尚、以下では、便宜上、除雪機1の進行方向を前方とし、この進行方向に向かって左右を決定するものとする。
図1または図2に示すように、除雪機1は、機体前部に配設される除雪部11と、該除雪部11の後方に配設される駆動部12と、駆動部12の後方であって機体後部に配設される運転操作部14とで構成されている。
【0014】
前記駆動部12の前部には除雪部11のブロアハウジング16が連設され、該ブロアハウジング16の前方にオーガハウジング18が連設されている。
ブロアハウジング16にはブロア17が内設されており、該ブロア17はブロア軸41の前後中途部に固設されている。
オーガハウジング18には掻込オーガ19が内設されており、該掻込オーガ19の回転軸たるオーガ軸42が該オーガハウジング18の左右方向となるように軸支されている。
【0015】
ブロアハウジング16の上面において、左右中心より一側に偏心して上方へパイプ状の吐出口16aが突出して形成され、該吐出口16aの上端に投雪シュータ21の基部が旋回座20を介して水平旋回自在に嵌合されている。
該投雪シュータ21は、該旋回座20に図示せぬ保持機構を係合させて任意位置で保持できるようにし、投雪シュータ21の後面に設けたシュータハンドル37を左右回動することにより投雪方向を変更できるように構成されている。
上述のように構成される除雪部11において、掻込オーガ19によってオーガハウジング18の左右略中央方向へ掻き込まれた雪は、ブロア17によって上方へ跳ね飛ばされ、
投雪シュータ21によってその方向がガイドされて任意の方向へ排出できるようにしている。
また、投雪シュータ21上端には、キャップ21aを設けてシュータハンドル37の上下操作で回動可能とし、投雪距離を調節可能としている。このように、シュータハンドル37は、投雪方向と投雪距離とを変更するための手段を兼用している。
【0016】
エンジン22の動力伝達の構成は以下の如くである。
エンジン22の出力軸22aには出力プーリ27が固設されており、除雪部11の入力軸であるブロア軸41の後端側には除雪入力プーリ28が固設されている。この出力プーリ27と除雪入力プーリ28とは、互いに上下の位置関係であって、ベルト29によって巻回されている。該出力プーリ27と除雪入力プーリ28との間にベルトテンション式のクラッチが設けられている。
ブロア軸41の前端側には、回転駆動されるブロア軸41の動力をオーガ軸42に伝達するためのオーガ用ギヤボックス25が設けられている。
このように構成されているので、エンジン22の出力は、上記2つのプーリやブロア軸41等を介して除雪部11側へ伝達されて、ブロア17及び掻込オーガ19を駆動することが可能となる。
【0017】
また、操向ハンドル32が、エンジン22の下方から斜め後上方に突出するように設けられ、その形状は平面視略U字状で、側面視「へ」字状に構成されて、下水平部はエンジンフレームを兼用している。
また、操向ハンドル32には、除雪クラッチレバー39が設けられており、エンジン22から除雪部11への動力伝達の入切操作を行えるようにしている。
また、この除雪クラッチレバー39の下端側には除雪クラッチワイヤー39aの一端が接続され、他端側は前記ベルトテンションクラッチのテンションアームに接続されており、除雪クラッチレバー39はクラッチを切る操作位置側に付勢されている。
【0018】
また、エンジン22の前下方に設けられ、上記除雪入力プーリ28を覆うプーリハウジング3の後部両側面には、後方側へ突出するフレーム4・4が固設されている。
このフレーム4の後部には、車軸5が枢支され、該車軸5の両端にはタイヤ又は鉄製の車輪6・6が固設されている。該車輪6・6は走行用に利用され、路上等では操向ハンドル32の後部を下方に押し下げて除雪部11を持ち上げた状態で、作業者が押して走行できるようにしている。
また、フレーム4や車軸5の下方側で左右略中央部には、橇71が設けられている。
この橇71の一端(前端)は、ブロアハウジング16の後部下方に角度調整可能に取り付けられている。
このように橇71が設けられているので、積雪量が多くても、車輪6・6が雪に埋もれて走行できなくても除雪作業を行うことが可能となる。
また、上述においては、車軸5の両端に2つの車輪6・6を設ける場合について説明したが、例えば、橇71を設けずに、単に左右略中央部に一輪の車輪6を設け、その両側に橇を設ける構成としても良い。また、軽量化やコスト低減化のために車輪6のみ設ける構成であっても、橇71のみ設ける構成であってもよい。
このように一輪の走行輪とすることで、操向操作が簡単に行え、除雪機の軽量化を図ることが可能となるからである。
【0019】
<補助輪>
オーガ軸42の左右一端側(図1、図2の場合では左側)は、例えば、オーガハウジング18の外部(左側)へ突出し、その突出した部分に補助輪駆動用プーリ43を固設するとともに、アーム44の一端が遊嵌に貫通されて設けられている。
別例としては、補助輪駆動用プーリ43はオーガハウジング18の内部側(機体中央側)においてオーガ軸42に固設されてもよく、この場合にアーム44も内部側(機体中央側)に設けられ、図1の場合と同様にアーム44を機体後部へ突出させるために、オーガハウジング18の後部側に上下方向に長孔を形成する。このように構成することで、補助輪駆動用プーリ43やアーム44を外部側に設ける場合と比較して、機体前部をコンパクトに構成できて、風雪等の抵抗を軽減することが可能となる。
他方、アーム44の他端側は、補助輪(またはゲージ輪)51の補助輪軸52によって遊嵌に貫通されて設けられている。該補助輪軸52の一側(右側)はオーガハウジング18の右側面より後方に突出したサイドサポート46によって支持されて、補助輪軸52はブロアハウジング16の下方で左右方向に配設される。
該補助輪軸52の一端側(図1、図2の場合では左側)は、補助輪51の外部(左側)へ突出され、その突出した部分に補助輪側プーリ53が固設されている。
また、補助輪駆動用プーリ43と補助輪側プーリ53とは、ベルト45によって巻回されている。尚、プーリとベルトの代わりにスプロケットとチェーンを用いることも可能である。
また、図面の見易さを考慮して、図2のみに2点鎖線で示したように、アーム44の代わりにベルトケース47(又はチェーンケース)で補助輪51を支持する構成とすることもできる。
このようにオーガハウジング18の後下部の左右両側には、掻込オーガ19の駆動と連動連結された補助輪51・51が配置され、左右一側に配置した動力伝達手段を介してオーガ軸42から補助輪軸52に伝える構成としたので、エンジン22が動作することによってオーガ軸42が回転駆動されると、補助輪51も回転駆動されることになる。
つまり、上述の構成は、掻込オーガ19の動力を用いて補助輪を駆動する構成の一例であるといえる。
この構成は、従来のようにエンジンの出力を除雪用と走行用の2系統に分岐する構成とは異なり、単にオーガを回転駆動する構成としているので、除雪機を走行させるための構成を簡略化できるとともに、除雪機全体の重量も軽くすることが可能となって、操作性を向上させることが可能となる。そして、除雪作業時には補助輪51が駆動されることにより前方への押しつけ力が付加されて、手押しのみの作業に比べて除雪作業の労力を軽減することができる。
【0020】
<高さ調節可能>
また、上述の構成では、アーム44及びサイドサポート46はオーガ軸42に対して遊嵌に貫通されているだけであるため、この状態で除雪機を使用すると掻込オーガ19が地面に接地してしまう問題が発生する。
そこで、補助輪51は接地するが、掻込オーガ19は地面から浮いた状態となるような構成、即ち、補助輪51と掻込オーガ19との相対的な高さが調節可能な構成として、除雪高さを調節できる構成としている。その構成について説明する。
ブロアハウジング16の両側面下方に、例えば図1に示すような三日月形状の固定部材61をボルト又は溶接等で固定する。
この固定部材61には、長孔62を形成する。この長孔62は、例えば、オーガ軸42を中心とした同心円における円弧を象ったものである。
更に、アーム44上において、アーム44及びサイドサポート46をオーガ軸42に取り付けた状態で上記固定部材61の長孔62と一致する箇所にてボルト孔を形成し、ボルト63を用いてアーム44と固定部材61の長孔62とを締結する。
このように構成することで、アーム44及びサイドサポート46と除雪機1の機体との角度を調節して固定することが可能となるので、掻込オーガ19の地面からの高さを利用者が所望する高さに設定することが可能となる。
【0021】
<クラッチ>
ところで、除雪作業時において、除雪位置を変更したい場合等で掻込オーガ19を回転させながら方向を変更しようとしても、補助輪51が前進回転しているために操向操作するために大きな力が必要となる。また、後進したい場合に、エンジン22を停止させたり、除雪クラッチレバー39を切としても、掻込オーガ19と連動連結されていると補助輪51は遊転状態となりえず、そのまま後方へ引っ張っても抵抗となってしまう。
そこで、ここでは掻込オーガ19からの動力の入切を行うための補助輪クラッチ80を補助輪51側に設けて、運転操作部14で「入」「切」操作できるようにすることで、操向や後進の労力を低減できるようにしている。この構成について図3を用いて説明する。尚、図3は補助輪51近傍の断面を上方から見たものである。
ここでは上述した補助輪側プーリ53にプーリ側爪54を設けたものを新たに補助輪側プーリ53aとし、爪式クラッチ(別称;噛合クラッチ)を採用する場合の一例について説明するが、多板式クラッチ等で構成することも可能であり、限定するものではない。
補助輪側プーリ53aの機体左右中央側(補助輪51側)面にはプーリ側爪54を複数設け、補助輪側プーリ53aは補助輪軸52に対して遊嵌貫通されて設けられている。
また、補助輪側プーリ53aの機体内側には、補助輪軸52に対してスプライン嵌合された摺動体81が設けられ、該摺動体81の外部側(補助輪側プーリ53a側)面には、上記プーリ側爪54と噛み合う受爪82が複数設けられている。
また、摺動体81の外周には係合溝を形成し、該係合溝にスライドフォーク83を嵌合し、該スライドフォーク83はワイヤ等を介して運転操作部14に設けた操作手段と連結し、該操作手段を操作することで摺動体81を摺動させて、補助輪クラッチ80を「入」「切」操作可能としている。
このように構成しているので、摺動体81を補助輪51側に摺動させることで、補助輪51の回転を掻込オーガ19に伝達しないようにできるので、上述したような、単に手押しで除雪機1を移動させる際や後進時等に、掻込オーガ19を回転させてしまうことがなくなるので、無駄なエネルギーを浪費することを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の除雪機の概略構成図(側面図)。
【図2】本発明の除雪機の概略構成図(平面図)。
【図3】補助輪51の爪式クラッチの概略構成図。
【符号の説明】
【0023】
1 除雪機
6 車輪
19 掻込オーガ
42 オーガ軸
43 補助輪駆動用プーリ
44 アーム
45 ベルト
51 補助輪
52 補助輪軸
53 補助輪側プーリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体前部に除雪部を配置し、機体後部に運転操作部を配置し、機体前後中央下部に回転自在に設けた走行用車輪、または、橇を配置した除雪機において、
除雪部のオーガハウジングの後下部に、該オーガハウジング内の回転により駆動される補助輪を設けたことを特徴とする除雪機。
【請求項2】
前記補助輪の高さを調節可能に構成した請求項1記載の除雪機。
【請求項3】
前記補助輪と前記オーガのオーガ軸との間に、動力の入切を行うクラッチを有してなる請求項1又は請求項2のいずれかに記載の除雪機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−193953(P2006−193953A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−5559(P2005−5559)
【出願日】平成17年1月12日(2005.1.12)
【出願人】(391025914)八鹿鉄工株式会社 (131)
【Fターム(参考)】