説明

除雪機

【課題】クローラ式走行装置を備える除雪機において、除雪機本体の下部に設けられる、該クローラ式走行装置の左右のクローラの高さを、各々単独に調節可能に構成して、「横滑り」し難く、機体下面に雪が溜まっても容易に脱出できる除雪機を提供する。
【解決手段】クローラ式走行装置13を備える除雪機100において、前記クローラ式走行装置13の左右のクローラベルト(クローラ)31・31の高さを独立して変形可能に構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除雪機における除雪機本体の高さ調節機構の技術に関する。より詳しくは、除雪機本体の下部に設けられるクローラ式走行装置の左右のクローラを、各々単独に上下動することによって、除雪部の高さ、及び、傾斜を変更する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、除雪機には、その前部に配置した除雪部の高さを調節する機構が備えられており、走行する路面よりも高く積もった雪や、走行面よりも低い雪であっても容易に除雪作業ができるようになっている。
特に、小型の除雪機の場合には、馬力が小さいことから、除雪部を昇降するための駆動力を省き、必要コストを低く抑える工夫が施されており、例えば、前車軸、或いは、後車軸を中心にして機体フレームを前後回動可能に構成して、該機体フレーム前方に設けられる除雪部の高さを変更可能な構造となっている(特許文献1参照。)。
【0003】
又、前記除雪機には、機体フレームに対して除雪部の左右の傾斜を調節する機構も備えられており、傾斜面や、路面に凸凹の障害物がある場合でも、確実に除雪部下面を路面に接地でき、除雪作業が行えるようになっている。
特に、小型の除雪機の場合には、スペース確保等の理由から、例えば、アクチュエーターや、歯車機構や、リンク機構等によりコンパクトに構成された傾動調整機構を、除雪部と機体フレームとの間に設けることで、このような除雪部の傾斜調節機能を実現している(特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2004−278091号公報
【特許文献2】特開2004−108105号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような、高さ調節機能を有する除雪機で除雪作業を行う場合、前上がりの傾斜地で前部を上げて高い位置で除雪作業を行うと、除雪部のシュータの排出方向が上方を向いてしまい、所望の方向に投雪することができない場合があった。
又、上述の傾斜調節機能による除雪部の傾斜調整をともなって、右、或いは、左が下がる傾斜地で除雪作業をする場合、除雪機は、傾斜面と平行となるため、傾斜角が大きいと「横滑り」することがあり、この場合、雪面を水平に削って除雪作業を行う必要があった。
更に、除雪機本体の車高が低いため、雪が機体フレーム下部に溜まり、除雪機本体が走行不能となることもあった。
【0005】
そこで、本発明は、除雪機本体の下部に設けられる、クローラ式走行装置の左右のクローラの高さを、各々単独に調節可能に構成して、「横滑り」し難く、機体下面に雪が溜まっても容易に脱出できる除雪機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、クローラ式走行装置を備える除雪機において、前記クローラ式走行装置の左右のクローラの高さを独立して変更可能に構成したものである。
【0008】
請求項2においては、クローラ式走行装置を備える除雪機において、前記クローラ式走行装置の左右のトラックフレームをそれぞれリンク機構により支持し、該リンク機構をアクチュエーターにて上下方向に揺動することにより、前記クローラ式走行装置の左右のクローラの位置を独立して変更可能に構成したものである。
【0009】
請求項3においては、クローラ式走行装置を備える除雪機において、前記クローラ式走行装置の左右のトラックフレームをそれぞれリンク機構により支持し、該リンク機構をアクチュエーターにて前後方向に揺動することにより、前記クローラ式走行装置の左右のクローラの全高を独立して変更可能に構成したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0011】
請求項1においては、高さ調節機能、及び、傾斜調節機能を各々個別に設けることなく、除雪機本体を所定角度に保持したまま、除雪部を所望の高さまで昇降することが可能となるため、除雪部を前下方に下げた状態で障害物に突っ込んだり、除雪部を上方に上げた際に、投雪角度が上を向いて所望の方向へ投雪できなくなるようなことをなくすことができる一方、路面と車体下面との間隔を確保することが可能となり、掻き分けた雪が除雪機本体の下方に溜まり、除雪機が走行できなくなることもない。
又、左右のクローラの高さをそれぞれ変更することで、機体を左右所望の角度に傾倒したり、水平を保持したりすることが可能となる。
更に、左右方向の傾斜地での作業では、機体や除雪部、及び、クローラを斜面と平行ではなく、水平とした状態で除雪作業を行うことが可能となり、この場合、機体の重心は山側へ偏心させることができ、安定した走行が可能となり、「横滑り」も防止することができる。
【0012】
請求項2においては、簡単な構造によって車高調節手段を形成することが可能となり、部品点数も少なく、経済的である。
【0013】
請求項3においては、簡単な構造によって車高調節手段を形成することが可能となり、部品点数も少なく、経済的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施例に係る除雪機の全体的な構成を示した側面図、図2は同じく平面図、図3は同じく背面図、図4は走行装置の全体的な構成を示した側面図、図5は同じく正面図、図6は除雪機の昇降状態を示した背面図である。
図7は本発明の別実施例に係る除雪機の全体的な構成を示した側面図、図8は本発明の別実施例に係る除雪機の昇降状態を示した背面図である。
【0015】
[除雪機100の全体構成]
先ず、本実施例における除雪機100の全体構成について、図1、及び、図2を用いて説明する。尚、図1、及び、図2に示す矢印Aの向きを前方として、以下左右方向を規定する。
【0016】
除雪機100は、機体フレーム15の前部に配設される除雪部11、及び、駆動部12や、当該駆動部12の下方に設けられるクローラ式走行装置13や、駆動部12の後方であって機体フレーム15の後部に配設される運転操作部14等によって構成される。
【0017】
除雪部11には、機体フレーム15の前部に連設されるブロワハウジング16や、当該ブロワハウジング16に内設されるブロワ17や、ブロワハウジング16の前方に連設されるオーガハウジング18や、当該オーガハウジング18に回転軸が左右方向となるようにして内設される掻込オーガ19や、前記ブロワハウジング16の上方に水平旋回可能に立設される投雪シュータ21等が具備されている。
【0018】
投雪シュータ21の下部には、旋回座20が一体的に配置されている。旋回座20の外周下部には歯部が形成されており、当該歯部にギヤが噛合され、このギヤを旋回モータ、或いは、シュータハンドル37の回転動作を介して回転させることで、旋回座20とともに投雪シュータ21を回動させ、投雪方向を変更できるように、投雪シュータ21は構成されている。
【0019】
そして、このような構成からなる除雪部11において、掻込オーガ19によってオーガハウジング18の左右略中央方向へと掻き込まれた雪は、ブロワ17によって上方へと跳ね飛ばされ、投雪シュータ21によって、投雪方向がガイドされ、任意の方向へと排出できるようにしている。
【0020】
オーガハウジング18の下端には、ソリ8・8が左右で対称位置に固設されており、当該ソリ8・8の底面が地面と接することで、除雪部11の姿勢が安定するようにしている。ソリ8・8は、ボルト締結によってオーガハウジング18に固設されており、必要に応じて左右各々で、ソリ8・8の取付位置を変更可能としている。
【0021】
ソリ8・8は、取付位置を上下調節可能に構成されており、除雪部11と地面との間隔を変更自在としている。このような構成とすることで、作業者はソリ8・8の取付位置(上下位置)を変更することで、除雪部11の高さを容易に微調整することができる。
【0022】
駆動部12においては、機体フレーム15の上部にエンジン22が載置されている。該エンジン22の出力軸22aに嵌装されたプーリから、除雪部11へとベルト式動力伝達機構を介して動力が伝達され、除雪部11に伝達された動力によって、ブロワ17、及び、掻込オーガ19が回転駆動される。
【0023】
機体フレーム15下方の前後方向中央部には、クローラ式走行装置13が設けられる。前記クローラ式走行装置13には、後述する車高調節手段1・1が左右両側に各々具備されており、該車高調整手段1・1を介してトラックフレーム27・27が上下動可能に支持されている。
【0024】
前記トラックフレーム27・27の前端部には、駆動スプロケット25・25が前車軸23・23を介して設けられている。該前車軸23・23には、それぞれ図示せぬトラックフレーム27・27に取り付けられた駆動モータの出力軸と連結されている。
【0025】
但し、本実施例では電動モータにより駆動する構成としているが、油圧モータにより駆動する構成とすることもできる。又、駆動輪は後車軸として駆動する構成とすることも可能である。
【0026】
前記トラックフレーム27・27の後端部には、後車軸40・40を各々左右方向に嵌装し、後車軸40・40を介して従動スプロケット41・41が回転可能に横架されている。
【0027】
そして、左右の両トラックフレーム27・27の側部に設けられる駆動スプロケット25・25、及び、従動スプロケット41・41には、無端状のクローラベルト31・31が巻回されており、これらによって、前車軸23・23の回転駆動によって走行駆動されるクローラ式走行装置13が、機体フレーム15の下方に構成されている。
【0028】
尚、トラックフレーム27・27の下端にはクローラガイド7・7が固設されており、当該クローラガイド7・7によって、地面との接地面に対して、内側よりクローラベルト31・31を地面に押し付ける構造としている。
【0029】
このような構成によって、クローラベルト31・31の剛性が確保され、当該クローラベルト31・31は安定した状態で地面に接し、外れることがないようにしている。
【0030】
運転操作部14には、機体フレーム15の左右両側後部より斜め後上方に向かって操向ハンドル32・32が突設され、左右の操向ハンドル32・32の間には、操作ボックス33が配設されている。
【0031】
操作ボックス33には、機体フレーム15下方のクローラ式走行装置13に設けられる左右の車高調節手段1・1を、各々単独で操作するための車高調節レバー51・51や、エンジン22からクローラ式走行装置13への伝動の入切操作を行うための走行クラッチレバー35や、エンジン22から除雪部11への伝動の入切操作を行うための除雪クラッチレバー36や、変速装置28による変速操作を行うための走行変速レバー38や、投雪シュータ21の角度を変更操作するための投雪上下変更レバー39等が配設されており、前記操作ボックス33の後下方には投雪シュータ21を旋回させるためのシュータハンドル37が配設されている。
【0032】
ここで、前記車高調節レバー51・51は、左右の車高調節手段1・1に各々具備される調節シリンダ5・5の伸縮動作をそれぞれ単独で操作可能となっており、例えば、図2に示すように、右側(左側)に配設される車高調節レバー51を後方に倒せば、前記車高調節手段1を介して、右側(左側)のトラックフレーム27が上昇し、又、車高調節レバー51を前方に倒せば、前記車高調節手段1を介して、右側(左側)のトラックフレーム27が下降するようになっている。
【0033】
又、前記走行クラッチレバー35、及び、除雪クラッチレバー36は、いずれも操向ハンドル32・32の近傍に設けられており、操向ハンドル32・32を握りながらこれらのレバー35・36を握り操作できるように構成されている。即ち、走行クラッチレバー35、及び、除雪クラッチレバー36は、操向ハンドル32・32とともに握っている時に走行クラッチ、或いは、除雪クラッチが作動し、放すと停止するデッドマンクラッチレバーとして構成されている。
【0034】
[車高調節手段1]
次に、本発明における車高調節手段1の第一実施例について、図4、及び、図5を用いて説明する。尚、図4に示す矢印Aの向きを前方として、以下左右方向を規定する。
又、クローラ式走行装置13には、左右両側に各々一基ずつ車高調節手段1・1が設けられるが、これらは互いに対称構造となっているため、以下、特に必要の無い限り、左側部の車高調節手段1を説明し、右側部の車高調節手段1の説明を省略する。
【0035】
車高調節手段1は、主にベースとなる基台2や、当該基台2に設けられるリンク機構を構成する上側昇降リンク3・3、及び、下側昇降リンク4・4や、これら昇降リンク3・3・4・4を上下方向に揺動可動する昇降用アクチュエーターとしての調節シリンダ5等によって形成される。
【0036】
前記基台2は、左右両側面を開放された矩形状の箱状部材から形成され、前板2cと、後板2fと、その内部の前後両側に各々隙間を隔てて並行に設けられる、前板部材2d、及び、後板部材2eによって構成されている。
【0037】
そして、基台2の前部における、前板2c、及び、前板部材2dの間には、上から順に、第一枢支ピン29、及び、第二枢支ピン30が上下方向に並行、且つ、軸心方向を機体前後方向として嵌装され、これら第一、及び、第二枢支ピン29・30を介して、上側昇降リンク3、及び、下側昇降リンク4の一端部が枢支されている。
【0038】
尚、第二枢支ピン30は、第一枢支ピン29に比べて全長が長く、一方の端部において、下側昇降リンク4の端部を貫通するとともに、他方の端部において、後述する調節シリンダ5の伸縮ロッド5b端(図5を参照)を貫通するよう形成されている。
【0039】
又、基台2の後部においても同様に、後板2f、及び、後板部材2eの間には、二本の第一枢支ピン29・29が上下方向に並行、且つ、軸心方向を機体前後方向として嵌装され、これら第一枢支ピン29・29を介して、上側昇降リンク3、及び、下側昇降リンク4の一端部が枢支されている。
【0040】
このような構成からなる基台2は、機体フレーム15下方の左側面において、前後方向中央部に固定保持され、当該基台2より突出する上側昇降リンク3・3、及び、下側昇降リンク4・4を介して、トラックフレーム27が連結される。
【0041】
尚、本実施例においては、左右の車高調節手段1・1に設けられる基台2・2を一体構造としているが、これに限定されるものではなく、例えば、左右各々に分割された独立構造としてもよい。
【0042】
又、本実施例においては、基台2は溶接等によって、機体フレーム15の下面に一体的に固定保持するものとしているが、これに限定されるものではなく、例えば、ボルト等の締結部材を用いて、機体フレーム15に対して着脱自在な構成としてもよい。
【0043】
前記上側昇降リンク3・3、及び、下側昇降リンク4・4は、略矩形状の延出部材から形成され、その両先端部には、延出方向に対して直行する貫通孔が各々並行に設けられて、平行リンクを構成している。そして、上側昇降リンク3・3、及び、下側昇降リンク4・4は、基台2の上部、及び、下部において、進行方向左側方に向かって延出するようにして各々並行に配置され、前記一方の先端部に設けられた貫通孔を介して、上側昇降リンク3・3は第一枢支ピン29・29によって、下側昇降リンク4・4は第一、及び、第二枢支ピン29・30によって、各々枢設される。
【0044】
ここで、図5に示すように、上側昇降リンク3・3の上面部において、長手方向略中央部(基台2寄り)には僅かな隆起部3a・3aが設けられており、当該隆起部3a・3aの上面には、幾分かの平面部3b・3bが形成されている。そして、後述する調節シリンダ5によって、上側昇降リンク3・3が上方に揺動動作する際には、前記平面部3b・3bが基台2の上面と当接することで、ストッパー機能を有することとしている。
【0045】
このように、基台2の上下、及び、前後方向において、進行方向に対して直交、且つ、左側方に向かって各々突出させて、複数の昇降リンク3・3・4・4は枢設され、その突出する先端部において、トラックフレーム27を上下調節可能に支持している。
【0046】
調節シリンダ5は、基台2の前後方向中央部において、下側昇降リンク4・4と平面視並行になるようにして配置されており、伸縮ロッド5bを基台2の方向に向け、その先端部において、前記第二枢支ピン30によって枢支されている。
【0047】
即ち、調節シリンダ5の伸縮ロッド5bの端部は、図4、及び、図5に示すように、基台2の底面上に立設した2枚の枢支ブラケット6・6間に枢支され、この枢支部を構成する枢支ピンには、基台2の前方下部に設けられる下側昇降リンク4から、枢支ブラケット6・6の部分まで延長突設された前記第二枢支ピン30が兼用されている。
【0048】
一方、図4、及び、図5に示すように、これら昇降リンク3・3・4・4の進行方向左側の先端部は、トラックフレーム27の機体内側から突設した枢支ブラケット9・9において、枢支ピン10・10・10・10により枢支されており、前記調節シリンダ5の本体部5c端部は、枢支ブラケット24において、枢支ピン26により枢支されている。
【0049】
ここで、枢支ブラケット24は、図4、及び、図5に示すように、正面視逆L字状の本体部24aと、該本体部24a内側に垂設された枢支板24b・24bと、片側の枢支板24bの外面に固設された回り止め24cと、から形成されている。そして、回り止め24cの下面に、半月状に形成される前記枢支ピン26のピン頭26aの直線部分が接当することにより、枢支ピン26の回り止め機構が構成されている。
【0050】
このような構成からなる枢支ブラケット24は、トラックフレーム27の内側に形成されたケース状の取付部34に内挿した上で、ボルトなどの締結具によって取付部34に容易に着脱可能に装着することができる。
【0051】
尚、本実施例においては、調節シリンダ5と、トラックフレーム27と、の組付けを、当該トラックフレーム27に着脱自在な枢支ブラケット24を介して行うこととしているが、これに限定されるものではなく、例えば、トラックフレーム27に一体的に形成された支持部材を介して、調節シリンダ5の本体部5cの先端部を直接枢支する構成としてもよい。
【0052】
このような構成からなる車高調節手段1・1を左右両側に具備することにより、除雪機100に設けられたクローラ式走行装置13は、調節シリンダ5における伸縮ロッド5bの出入動作を介して、左右各々単独に上下可動することが可能となっている。
【0053】
即ち、図5に示すように、クローラ式走行装置13は、常にクローラベルト31・31の下面を水平に保ちつつ、第一、第二枢支ピン29・30を中心として上下揺動することから、下降状態(図5における左側)と、上昇状態(図5における右側)におけるクローラベルト31・31の下面の上下距離Y変更可能としている。
【0054】
つまり、伸縮ロッド5bが延出すれば、調節シリンダ5は第二枢支ピン30を中心として、上方に向かって揺動されるとともに、トラックフレーム27も上方に揺動されてクローラベルト31は上昇し、又、伸縮ロッド5bが調節シリンダ5の本体5c内に戻れば、調節シリンダ5は第二枢支ピン30を中心として、下方に向かって揺動されるとともに、トラックフレーム27も下方に揺動されてクローラベルト31は下降するのである。
【0055】
このように、クローラ式走行装置13を備える除雪機100において、前記クローラ式走行装置13の左右のクローラベルト(クローラ)31・31の高さを独立して変形可能に構成したことにより、従来のような高さ調節機能、及び、傾斜調節機能を各々個別に設けることなく、クローラ式走行装置13の車高調節機能一つで、除雪機100本体の水平状態を保持しつつ、雪面の高低差に対して、対応することができる。
【0056】
その結果、除雪部11を前下方に下げた状態で障害物に突っ込んだり、除雪部11を上方に上げた際に、投雪角度が上を向いて所望の方向へ投雪できなくなるようなことをなくすことができる
【0057】
又、作業現場における雪面での不意な凸凹部等の障害物がある場合には、左右両側のクローラベルト31・31下面の上下位置を同時に下降させて、機体の車高を高くすることで、前記障害物を容易に回避することができるため、除雪機100の機動性も向上する。
【0058】
即ち、図6(a)に示す状態から、左右両側のクローラベルト31・31下面の上下位置を同時に下降させて、図6(b)に示す状態にすることで、除雪機100本体の水平状態を保ちつつ、路面と車体下面との間隔を容易に増加させることができ(図6に示す寸法X)、掻き分けた雪が除雪機本体の下方に溜まり、除雪機が走行できなくなることもない。
【0059】
更に、図6(c)に示すように、例えば高低差のある傾斜面における雪面での作業においては、一方のクローラベルト31下面の上下位置を上昇(或いは、下降)させて、左右のクローラベルト31・31下面の高低差を、前記凸凹部や傾斜面の高低差(図6に示すY寸法)に合わせることで、確実に機体の水平状態を保つことができる。
【0060】
これにより、従来では傾斜面での機体の「横滑り」を防止するべく、雪面を水平に削った上で、除雪作業を行う必要があったが、本発明に拠れば、このような事前の段取り作業を行うことなく、直ちに除雪作業を行うことができ、傾斜面での作業性が向上する。
【0061】
又、クローラ式走行装置13を備える除雪機100において、前記クローラ式走行装置13の左右のトラックフレーム27・27をそれぞれ上側昇降リンク3・3、及び、下側昇降リンク4・4等からなるリンク機構により支持し、該リンク機構を調節シリンダ(アクチュエーター)5にて上下方向に揺動することにより、前記クローラ式走行装置13の左右のクローラベルト(クローラ)31・31の位置を独立して変形可能に構成したことにより、大掛かりな構造を必要とせず、単純な構造によって形成することが可能であり、部品点数も少なく、経済的である。但し、車高調節手段1・1は昇降リンクを設けることなく油圧シリンダによって、直接トラックフレーム27を昇降する構成とすることも可能である。
【0062】
[クローラ式走行装置61]
次に、本発明の第二実施例となる車高調節手段62を備えるクローラ式走行装置61について、図7を用いて説明する。尚、図7に示す矢印Aの向きを前方として、以下左右方向を規定する。
又、クローラ式走行装置61には、左右両側に各々一基ずつ車高調節手段62・62が設けられるが、これらは互いに対称構造となっているため、以下、特に必要の無い限り、左側部のクローラ式走行装置61について説明し、右側部のクローラ式走行装置61の説明を省略する。
【0063】
クローラ式走行装置61は、機体フレーム15に設けられるトラックフレーム27や、該トラックフレーム27に各々配設される前転輪52Fや、後転輪52Rや、テンションローラ54や、前記トラックフレーム27の前方に配設される駆動スプロケット55や、これら、前後両転輪52F・52R、駆動スプロケット55、及び、テンションローラ54等を無端状に巻回するクローラベルト31等、によって構成される。
【0064】
トラックフレーム27は、前後方向に延出する略矩形状の部材からなり、機体フレーム15の左右両側面下部に配設され、その上部の前後端部では、後述する車高調節手段62に設けられる昇降リンク58F・58Rの下端部によって枢支されている。
【0065】
トラックフレーム27の下部には、前端から後端にかけて順に、前転輪52F、後転輪52Rが各々枢設されており、又、トラックフレーム27の上部には、中央部にアームを介してテンションローラ54が配設されている。
【0066】
トラックフレーム27の斜前上方には駆動スプロケット55が設けられている。前記駆動スプロケット55は、ミッションケース(図示せず)から機体左右両側方へ突出された駆動軸66の両端部にて軸支されており、エンジン22による駆動力が駆動軸66に伝達され、駆動スプロケット55が駆動回転することによって、クローラベルト31が回動される。
【0067】
このように、各々回動自在に枢設されるテンションローラ54や、駆動スプロケット55や、前転輪52Fや、後転輪52Rにおいて、順にクローラベルト31が巻回されることにより、クローラ式走行装置61が走行可能としている。
【0068】
尚、クローラベルト31の内周部下面には、前後方向に各々前クローラガイド56、及び、後クローラガイド57が設けられ、トラックフレーム27に固定されており、除雪機200の旋回運転時等における前記クローラベルト31の脱落を防止している。
【0069】
[車高調節手段62]
ここで、本実施例におけるクローラ式走行装置61に設けられる車高調節手段62の詳細について、説明する。
【0070】
車高調節手段62は、主に、トラックフレーム27を支持する昇降リンク58F・58Rや、該昇降リンク58F・58Rを駆動する調節シリンダ60等によって構成される。
【0071】
昇降リンク58F・58Rは、側面視「く」字状の部材からなり、機体フレーム15の左右両側面の中央部において、各々前後方向に二個並設され、その上下方向中央部に嵌挿される支持パイプ59・59を介して、機体フレーム15に揺動自在に枢設されて、平行リンクを構成している。
【0072】
昇降リンク58F・58Rの上方には、調節シリンダ60が、後方に向かって伸縮ロッド60aが延出するようにして配設されており、前記伸縮ロッド60aの先端部は、後昇降リンク58Rの上端部と連結されている。
【0073】
調節シリンダ60の基部60b後端部は機体フレーム15に枢支され、伸縮ロッド60aと、後昇降リンク58Rと、の枢支部の下部において、連結ロッド63が枢支されている。従って、前記後昇降リンク58Rは、前記連結ロッド63を介して、前昇降リンク58Fと枢結され、水平センサーからの入力や手動によって、前記調節シリンダ60を作動させて、トラックフレーム27を昇降制御可能に構成している。
【0074】
このような構成からなる車高調節手段62・62を具備することにより、除雪機200に設けられた左右両側のクローラ式走行装置61・61は、調節シリンダ60における伸縮ロッド60aの出入動作を介して各々単独に上下可動することが可能となっている。
【0075】
即ち、図8(a)に示すように、伸縮ロッド60aが後方へと延出すると、該伸縮ロッド60aに連結される後昇降リンク58Rは、支持パイプ59を中心にして時計回り(右回り)に回動されることとなり、これに伴って、連結ロッド63も後方へと追従し、前昇降リンク58Fが支持パイプ59を中心にして時計回り(右回り)に回動される。
【0076】
その結果、前後両昇降リンク58F・58Rの下端部は、斜前下方へと移動することとなり、トラックフレーム27は下降し、クローラベルト31の上下面高さ(図8に示す寸法H1)は増加する。
【0077】
一方、図8(b)に示すように、伸縮ロッド60aが基部60b内に戻ると、該伸縮ロッド60aに連結される後昇降リンク58Rは、支持パイプ59を中心にして反時計回り(左回り)に回動されることとなり、これに伴って、連結ロッド63も前方へと追従し、前昇降リンク58Fが支持パイプ59を中心にして反時計回り(左回り)に回動される。
【0078】
その結果、前後両昇降リンク58F・58Rの下端部は、斜後上方へと移動することとなり、トラックフレーム27は上昇し、クローラベルト31の上下面高さ(図8に示す寸法H2)は減少するのである。
【0079】
このように、クローラ式走行装置61を備える除雪機200において、前記クローラ式走行装置61の左右のトラックフレーム27・27をそれぞれ前後両昇降リンク58F・58R等からなるリンク機構により支持し、該リンク機構を調節シリンダ(アクチュエーター)60にて前後方向に揺動することにより、前記クローラ式走行装置61の左右のクローラベルト(クローラ)31・31の全高を独立して変更可能に構成したことにより、大掛かりな構造を必要とせず、単純な構造によって形成することが可能であり、部品点数も少なく、経済的である。
【0080】
尚、前記第一実施例の車高調節手段1及び第二実施例の車高調節手段62における油圧シリンダの伸縮を切換えるバルブを電磁バルブとし、該電磁バルブをコントローラと接続し、該コントローラに、角度検出手段(傾斜センサー)と左右角度設定手段と高さ設定手段を接続して、除雪部及び機体を水平に制御したり、所望の左右角度に制御したりして、除雪作業や走行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の一実施例に係る除雪機の全体的な構成を示した側面図。
【図2】同じく平面図。
【図3】同じく背面図。
【図4】走行装置の全体的な構成を示した側面図。
【図5】同じく正面図。
【図6】除雪機の昇降状態を示した図であり、(a)は上昇位置、(b)は下降位置、(c)は傾斜面における状態を示した背面図。
【図7】本発明の別実施例に係る除雪機の全体的な構成を示した側面図。
【図8】本発明の別実施例に係る除雪機の昇降状態を示した図であり、(a)は上昇位置、(b)は下降位置を示した背面図。
【符号の説明】
【0082】
1 車高調節手段
3 上側昇降リンク(リンク機構)
4 下側昇降リンク(リンク機構)
5 調節シリンダ(昇降用アクチュエーター)
11 除雪部
13 クローラ式走行装置
15 機体フレーム
27 トラックフレーム
58F 前昇降リンク(リンク機構)
58R 後昇降リンク(リンク機構)
60 調節シリンダ(昇降用アクチュエーター)
62 車高調節手段
100 除雪機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クローラ式走行装置を備える除雪機において、
前記クローラ式走行装置の左右のクローラの高さを独立して変更可能に構成した、
ことを特徴とする除雪機。
【請求項2】
クローラ式走行装置を備える除雪機において、
前記クローラ式走行装置の左右のトラックフレームをそれぞれリンク機構により支持し、
該リンク機構をアクチュエーターにて上下方向に揺動することにより、
前記クローラ式走行装置の左右のクローラの位置を独立して変更可能に構成した、
ことを特徴とする除雪機。
【請求項3】
クローラ式走行装置を備える除雪機において、
前記クローラ式走行装置の左右のトラックフレームをそれぞれリンク機構により支持し、
該リンク機構をアクチュエーターにて前後方向に揺動することにより、
前記クローラ式走行装置の左右のクローラの全高を独立して変更可能に構成した、
ことを特徴とする除雪機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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