説明

除雪機

50cmを超える硬い除雪塊を処理可能であり、かつ、高齢者や女性にも使い易い軽量の除雪機を提供することを目的とする。
除雪機のフレーム(10)の前端側に積雪をアップカットに切削するオーガー(41)を、後端側に操作ハンドル(11,12)を、また中間部分に円弧状の滑動体又は車輪からなる雪上移動手段(40)を取り付け、かつ、前記フレームを前記雪上移動手段(40)の取り付け部を支点(16)とする一体の梃子として構成して前記操作ハンドル(11,12)により前記オーガー(41)を上下及び前後進可能にするとともに、前記フレーム(10)には前記オーガー(41)の駆動手段(30)を設けている。この場合において、フレーム(10)に対してハンドル(11,12)が上下二段に取り付けられた構成とすることが望ましい。さらに、上記発明においては、投雪装置(50)をオーガーカバーに固定され、かつ、リンク機構によってフレームに対して傾動可能な傾斜調整台上に設置することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は除雪機、特に手動で操作する小型で軽量の除雪機に関する。
【背景技術】
【0002】
雪国では道路除雪が普及し、積雪があると大型除雪車が車道に積もった雪を道路脇に寄せる除雪が行われる。この除雪の過程で道路脇に寄せられた雪は圧縮されて硬くなり、ときには50cmを超える高さの堤状の除雪塊(以下単に「除雪塊」という)となって、住民の商店や住居の前を塞ぐことになる。そのため、住民は、自己の営業や生活のための通路を確保するために、この除雪塊を、スコップやスノーダンプ(両手押しスコップ)を用いて人力で取り除くことを強いられている。この作業は、重筋労働に属するが、近年のいわゆる核家族化と老齢化によって、若い人が少なくなり、高齢者や力の弱い女性が雪除け作業を行わざるをえなくなっている。そのため、高齢者や女性が簡易に扱える軽量で使いやすい小型除雪機が求められている。
【0003】
現在、わが国で実用化されている小型除雪機は、オーガーと呼ばれる雪を削って集めるリボン状スクリューとブロワーと呼ばれる雪を飛ばす羽根車をエンジンで駆動して、シューターと呼ばれる筒体で方向を定めて雪を飛ばす形式が多く採用されている。また、その多くが、エンジンで駆動されたるクロワー(別名キャタピラ)によって前後に走行する構造をとっている。また、これらの小型除雪機は、特許文献1及び2に示すように、油圧、空圧又はガススプリングなどの駆動源によって、オーガーを上下することができ、それによって高さが50cmに及ぶ除雪塊を処理することができるようになっている。しかしながら、上記小型除雪機は、非特許文献1に示されているように、比較的小型のものでも100kg以上の質量を有しており、高齢者や女性が容易に取り扱えないものである。さらに構造上低価格で供給することが困難であることに加え、運転操作の簡略化や、騒音低減にも改良の余地が残されており、一般家庭への普及が進んでいない。
【0004】
より軽量で安価な除雪機として、例えば特許文献3には、上記と同様にオーガーとブロワーをエンジンで駆動しながら、走行機構にスライド板(橇)を使って手押しにより移動可能とした除雪機が提案されている。この除雪機は、質量が20kg程度であり操作が簡単であるが、硬い雪を削るときには除雪機自体が除雪塊の上に持ち上がった状態となってオーガーの切削速度を上げることができないという問題がある。また、この除雪機は、オーガーを上下する機構を備えていないので、除雪塊の高さが大きくなると、作業者が除雪機全体を持ち上げて除雪塊の上に載せなければならならないという問題がある。そのため、この除雪機により、通常の作業者が処理できる除雪塊は高さが25cm程度以下に制限される。また、この提案では特にエンジン騒音の軽減対策が講じられておらず、そのため、実用機として市販されたが普及するに至っていない。
【0005】
軽量化し、騒音を減らすため、動力として電動機を用いた小型除雪機が、米国TORO社によって開発され市販されている(非特許文献2参照)。この小型除雪機は、質量が15kg以下であり、また、前後移動のために軽量車輪を設けており、高齢者や女性にも使いやすいものである。しかし、この除雪機は、オーガーの上下機構は備えておらず、そのため、処理できる除雪塊は高さが25cm程度以下に制限される。また、ここで使われている軽いブレードは、上記の硬い除雪塊を削ることはできない。
【0006】
特許文献4には、フレームの後部に前進後退用の一対の車輪を設置するとともに、当該フレームの前方に除雪羽根を取り付け、これを駆動して雪を後方に飛散させる小型除雪機が提案されている。しかし、この提案に係る考案では、オーガーの上下機構は備えられておらず、そのため、処理できる除雪塊は高さが25cm程度以下に制限されるという問題がある。
【0007】
【特許文献1】特開2000−290951号公報
【特許文献2】特開2002−363940号公報
【特許文献3】特開平7−259041号公報
【特許文献4】登録実用新案第3043945号
【非特許文献1】ヤマハ発動機(株)カタログ「スノーメイト」2003年
【非特許文献2】米国Toro社カタログ「Electric Snowthrower」2003年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、50cmを超える硬い除雪塊を処理することが可能であり、かつ、高齢者や女性にも使い易い小型で軽量の除雪機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の除雪機は、そのフレームの前端側に積雪を切削するオーガーを、後端側に操作ハンドルを、また中間部分に円弧状の滑動体又は車輪からなる雪上移動手段を取り付け、かつ、前記フレームを前記雪上移動手段の取り付け部を支点とする一体の梃子として構成して前記操作ハンドルにより前記オーガーを上下及び前後進可能にするとともに、前記フレームには前記オーガーの駆動手段を設けている。ここに積雪を切削するオーガーは積雪をアップカットに切削できるものとするのが好ましい。
【0010】
また、本発明の除雪機は、除雪機のフレームの前端側に積雪を切削する主オーガー及び該主オーガーの後面側に設けられ該主オーガーと逆方向に回転する集雪オーガーを、後端側に操作ハンドルを、また中間部分に円弧状の滑動体又は車輪からなる雪上移動手段を取り付けており、かつ、前記フレームを前記雪上移動手段の取り付け部を支点とする一体の梃子として構成して前記操作ハンドルにより前記オーガーを上下及び前後進可能にするとともに、前記フレームには前記主オーガー及び集雪オーガーの駆動手段を設けた構成することができる。ここに積雪を切削する主オーガーは積雪をアップカットに切削できるものとするのが好ましい。
【0011】
これら各発明において、フレームに対して操作ハンドルが上下二段に取り付けることができる。さらに、上記発明においては、投雪装置をオーガーカバーに固定され、かつ、リンク機構によってフレームに対して傾動可能な傾斜調整台上に設置することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の小型除雪機は、軽量かつ小型に製作することができ、しかもオーガーを除雪塊に対して持ち上げることができるので、高齢者や女性でも50cm以上の高さの硬い積雪、特に除雪塊を容易に処理することができる。特に、オーガーをアップカットに回転するように構成した場合は、切削の手ごたえを感じることができ、操作がしやすいとういう利点がある。これらにより、本発明の除雪機は、雪国の高齢・核家族化した家庭の除雪の困難を解決できるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は本発明の第1の実施形態に係る除雪機の側面図であり、図2はその平面図、図3はその正面図である。また、図4は、図1に示す除雪機の作動機構を示す模式説明図である。図5〜7はそれぞれ本発明の第2ないし第4実施形態に係る除雪機の側面図である。
【0014】
図1、図2、図3に示すように、本発明に係る除雪機は、その躯体の主要部をなすフレーム10と、その前端部に取り付けられたオーガー41を含む除雪塊切削部40、該除雪塊切削部の背面に設けられた投雪機構50、除雪塊切削部40及び投雪機構50の駆動手段30、フレーム10の中間部分に取り付けられた雪上移動手段20から構成されている。なお、フレーム10の一部をなすが、フレーム10の後端側は操作部11となっている。
【0015】
図4に模式的に示されているように、本発明の除雪機では、フレーム10が全体として梃子として作用できる形状を有し、支点16を中心として回転できるようになっている。そして円弧状の橇21が上記支点16がその円弧の中心となるように取り付けられている。また、フレーム10の先端側はオーガー41を含む除雪塊切削部40の取り付け部と、後端側は上部ハンドル12、下部ハンドル13を含む操作部となっている。そのため、操作者は、除雪機を人力で前後進させることができるとともに、ハンドル(上部ハンドル12又は下部ハンドル13)の押し下げにより容易にオーガー41を除雪塊Sの上まで持ち上げることができる。また、たとえばハンドルが一つしかないときは、人間工学的な押し下げ範囲の制限により除雪塊の処理高さが制限されることがあるが、図示のように上部ハンドル12及び下部ハンドル13を設けることにより、下部ハンドルの押し下げ位置が操作者の膝の高さ以下となったとき、操作者がハンドル13から上部ハンドル12に持ち替えれば、高い除雪塊の処理が可能になる。
【0016】
このようにして、本発明の除雪機では、高い除雪塊を処理できるが、以下に示すように、積雪を切削するオーガーをアップカット方法に回転させるようにすることにより、操作者が極めて制御しやすいものとなっている。以下その点について説明する。
【0017】
まず、図4において示すように、操作者によって下部ハンドルが前方に押されると、除雪機全体が橇21によって雪上を滑って除雪塊Sに向かって移動する。その状態で、図4では図示しない駆動手段によってオーガー41をアップカット方向に回転させる。これにより除雪塊Sの切削が始まる。切削された雪はアップカット方向に回転するオーガー41によって上方ないし後方に飛ばされ、後述する投雪機構により処理される。この切削の進行ととともに、下部ハンドル13が操作者によって押し下げると、フレーム10が支点16を中心に回転し、その結果、オーガー41は除雪塊Sの側面に沿って持ち上げられ、その上面にある除雪塊Sが切削、処理される。この操作者のハンドル操作による除雪機の前進、オーガーの持ち上げにより除雪塊は、その全高にわたって処理されることになる。
【0018】
このようにして、本発明の除雪機では、オーガーを梃子の原理により除雪塊に沿って持ち上げることができ、それによって高い除雪塊の処理が可能になっている。これに加えて、本発明の除雪機でオーガーの回転方向がいわゆるアップカット方向となっている場合には、下部ハンドル13を押し下げるときの力F3が、操作者のよって極めて制御しやすい状態になる。
【0019】
すなわち、操作者が下部ハンドル13を押し下げるときの力F3は、フレーム10の梃子として作用によりその先端にあるオーガー側に伝えられ、逆にオーガー側からはフレーム10の先端の駆動手段30、除雪塊切削部40、投雪機構50などの重量(重力による力)による下向きの力F1のほか、オーガー41のアップカット方向の回転作用による反力F2が下部ハンドル側に伝えられることになる。したがって、操作者は、このオーガー41の切削力を反力F2として感じ取ることが可能であり、種々の硬さの除雪塊に対して常に適当な切削力を維持しながら、除雪塊の処理を進めることができる。また、オーガー41からの下向きの反力F2は、除雪の際に除雪機が浮き上がることを防止するのに効果があり、それによって除雪機全体を軽量化できる。
【0020】
以下本発明の実施形態について具体的に説明する。
【0021】
図1に示す第1実施形態では、フレーム10が、上部ハンドル12と下部ハンドル13を含む上部フレーム10Aと、下部フレーム10Bに分割されており、これら上部フレーム10Aと下部フレーム10Bが互いにボルト等の締結手段によって結合されている。図2及び図3に示すように、フレーム10は左右一対に設けられ、これらが上部ハンドル取手14、下部ハンドル取手15さらには連結部材17によって一体に結合され、除雪機の躯体を形成している。このフレーム10は、たとえば鋼板をプレス加工して製造することができ、それによって除雪機の軽量化を図ることができる。
【0022】
上記フレーム10の中間位置よりやや前方には、底部が円弧状をなす橇21がフレーム10と一体をなすように取り付けられ、雪上移動手段20となっている。そして、この橇21の円弧の中心がフレーム10を梃子として作用させたときの支点16となっている。
【0023】
フレーム10の先端部は、オーガーカバー42に連接されている。このオーガーカバー42は、側面カバー43及び背面カバー44からなる。側面カバー43は左右一対に備えられており、そのほぼ中心部には軸受(図示しない)及びウォーム減速機36が取り付けられ、そこにオーガー41が回転自在に軸支されている。一方、背面カバー43は、実質的にオーガー41の上面及び背面側を覆っており、その背面側は、投雪機構50のブロワーケース51への開口部となっている。
【0024】
オーガーカバー42の背面側には、ブロワーケース51がフレーム10に対して直接取り付けられている。このブロワーケース51にはブロワー52が内蔵されており、その上部は開口してシューター53、シューターキャップ54につながっている。また、上記ブロワーケース51の背面側には電動機31、減速機32等の駆動手段30がフレーム10Bに対して直接取り付けられている。
【0025】
これら電動機31、減速機32は、オーガー41のウォーム減速機34、ブロワー52の駆動軸(図示しない)と駆動軸33によって同軸に結合されており、オーガー41をアップカット方向又はダウンカット方向に回転できるようになっている。また、電動機31は適当な電源に接続されており、そのスイッチ35A,35Bがそれぞれ上部ハンドル12及び下部ハンドル13に設置されている。
【0026】
図1に示す第1の実施形態に係る除雪機は、このように構成されているから、スイッチ35A又は35Bを操作して電動機を起動するとオーガー41とともにブロワー52が回転し始める。オーガー41の回転により除雪塊Sは切削され、切削されたフレーク状の雪は、オーガーカバー42内に捕捉され、ついでブロワー52の回転によりブロワーケース51内に吸引され、シューター53、シューターキャップ54から所望の方向に投雪される。この際、すでに図4を用いて説明したように除雪機を操作することができ、それによって高さの大きい除雪塊を容易に処理できる。
【0027】
図5は、本発明の第2実施形態に係る除雪機の側面図である。この実施形態では、積雪を切削する主オーガー46のほかにその後面側に主オーガー46と逆方向に回転する集雪オーガー47を設けている。これらは同軸の駆動軸33により回転するようにされている。しかしながら、その回転方向は、各オーガーの回転軸を支持する軸受に取り付けられたウォーム減速機34及び36によって異なるようにされている。また、主オーガー46と集雪オーガー47は、互いに同一ピッチで反対方向に同一速度で回転するスパイラル曲線群からなる刃を設け、両者に適切な位相角を持たせている。その他の構成は、基本的に実施形態1の除雪機と変わるところがない。
【0028】
この構成においては、主オーガー46によって切削されて生じたフレーク状の雪は、集積オーガー47によって進行方向を逆方向に変え、ブロワー52によりシューター53へと導かれて所望の方向に投雪される。そして、この構成によるときは、特に、地表付近の雪の集雪効率の低下を防止することができる。なお、主オーガー46は、実施形態1の除雪機と同様、除雪塊を切削する機能を有さなければならないので、雪質に応じた切削力を有する必要があるが、集雪オーガー47は、主オーガー46により切削されたフレーク状の雪を幅方向中央部に集め、ブロワーケース51内に送り込むだけの機能を有すれば足りるので、ゴム等フレキシブルな材料によって構成することができる。これにより、たとえば、異物の噛み込みによるオーガーの衝撃を緩和することができる。なお、この場合においても、主オーガーの回転方向をアップカット方向とするときは、操作者は、オーガー41の切削力を反力F2として感じ取ることが可能であり、種々の硬さの除雪塊に対して常に適当な切削力を維持しながら、除雪塊の処理を進めることができる。
【0029】
図6は、本発明の第3実施形態に係る除雪機の側面図である。この実施形態では、投雪機構50が傾斜調整台61上に設置され、かつ、この傾斜調整台61が傾斜調整機構60によりフレーム10に対して傾動可能になっている。
【0030】
この傾斜調整機構60は、代表的には、図6に示す構造のもので、クランク板63を固定回転ピン65によってフレーム10に取り付け、このクランク板16の上方に傾斜調整台61を取り付け、これを回転ハンドル68によって傾斜可能としている。具体的には、傾斜調整台63の後方に長穴62が開けられており、該長穴内をクランク板63の一端に設けた回転スライドピン64が摺動するよう取り付けられるとともに、クランク板63の他端をスラスト止め軸受66として、ここにネジつき棒68、固定ナット69(これはフレーム10に固定されている)、回転ハンドル70を設けてネジつき棒46を伸縮可能にしている。したがって、操作者が回転ハンドル70によってネジつき棒68を伸ばすように操作すると、それに応じて回転スライドピン65が長穴62内を後方に移動し、その結果、傾斜調整台61が前上がりに傾斜することになる。
【0031】
傾斜調整台61上には、図6に示すように、駆動手段30及び投雪機構50が載荷されている。実施形態1の除雪機では、高い除雪塊を処理するときにフレーム10の傾きに応じて投雪機構のシューター53が操作者側に傾き投射される雪を操作者が被るおそれがある。しかしながら、傾斜調整機構60を備える実施形態4の除雪機では、操作者が雪の投射方向を任意に変更することができるので、このようなおそれを避けることができる。
【0032】
図7は、本発明の第4実施形態に係る除雪機の側面図である。この実施形態では、図1に示す雪上移動手段20が橇21から車輪22に置き換えられている。その他の点は図1の場合と基本的に異ならない。この実施形態では、路面上に積雪がなく、そのため橇による除雪機の移動が困難なときでも、除雪塊に対して除雪機を移動させて除雪作業を進めることができる。
【実施例1】
【0033】
実施形態1の除雪機において、フレーム10の支点16を地上213mmとし、フレーム10がこの支点16を中心に回動するよう、この点を中心とする同一半径(213mm)の円弧形の橇21を設けた。そしてこの支点16の前方410mmの位置に直径220mmのオーガーを置き、後方1000mmの位置に下部ハンドルの取手15をおいた。また、支点16からの下部ハンドルの取手15への見込み角度を60°とした。これより、オーガーが地上にあるとき、下部ハンドルの取手1の高さは1079mmとなり、概ね人の肩の高さにくる。この状態から下部ハンドルの取手15を押し下げて、フレーム10を60°回動すると、下部ハンドルの取手15のがほぼ地上から213mmの高さにくる。このとき、上部ハンドルの取手14は地上から500mmの位置、すなわち、ほぼ操作者の腰の高さにくる。したがって、操作者は、下部ハンドルを上部ハンドルに持ち替えて、さらに除雪を進めることができる。
【0034】
上記ハンドル操作により、オーガー41の中心と支点16を結ぶ軸線は、当初水平面に対して、-15°(下向き15°)であったものが+45°(上向き45°)まで変化する。これにより、オーガーの上端位置が当初220mmであったものが615mmまで持ち上げられ、その結果高さ600mmの除雪塊の処理が可能になった。
【0035】
一方、上記のハンドル操作に要する押し下げ力は、支点16周りの重力のモーメントとオーガー41の先端にかかる切削力によって決められるものであるが、下部ハンドルの取手15を操作する場合は、最大で366N(36.5kgf)、通常150N(14.8kgf)、うち自重分が56N(5.57kgf)である。また、上部ハンドルの取手14を操作するときは、上記値はそれぞれ120N(12.0kgf)、35N(3.5kgf)、-1.5N(-0.15kgf)である。ここで、最大切削力はモーターの最大出力を2600J/s(2600W)とし、通常切削力を、経験に基づき最大出力の30%とした。なお、上記自重分は無切削状態でハンドルを引き下げる力であり、下部ハンドルの取手15を操作する場合は、ハンドルが自重で立つが、上部ハンドルの取手14を操作するときは除雪機が後方に倒れることになる。なお、切削力はオーガーをアップカット方向に回転させたときの値である。
【0036】
表1は、上記諸次元を有する実施形態1の除雪機を用い、オーガーをアップカット方向に回転させて除雪するときの特性を市販の小型除雪機と比較して示したものである。比較対象は非特許文献1に記載した小型除雪機のうち40cm以上の高さの除雪塊を処理できるもののうち最も軽量のものである。本発明に係る除雪機は、比較対照の除雪機に比べ、出力が約60%であり、除雪能力が約27%であったが、除雪機の質量が約25%と軽量であり、かつ除雪塊の処理高さが136%と大幅に向上した。したがって、本発明の除雪機は除雪時間が多くかかるものの、高い除雪塊を小さい労力で簡便の処理することができ、高齢者や女性にもより扱いやすいものである。
【0037】
【表1】

【実施例2】
【0038】
本発明の実施形態2の除雪機を主オーガー径140mm、集雪オーガー径220mm、主オーガーと集雪オーガーの軸間距離を130mmとし、主オーガーと集雪オーガーは、互いに逆ねじ回りのスパイラル曲線とし、両オーガーが互いに接触しないように両者の設定角を定めて製作した。これにより、地上10cm程度の降雪を効率的に処理できた。その諸特性は、表1のかっこ内の値で示されている。その他の条件は、実施例1の場合と同様である。この場合、実施例1の場合に比べて、同一の動力で、除雪機の重量が増し、投雪距離が短くなっているが、集雪効率があがり、除雪能力が大幅に向上している。なお、主オーガーの回転方向はアップカット方向にとってある。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1実施形態に係る除雪機の側面図である。
【図2】図2に係る除雪機の平面図である。
【図3】図1に係る除雪機の正面図である。
【図4】本発明に係る除雪機の作動機構の説明図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る除雪機の側面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る除雪機の側面図である。
【図7】本発明の第4実施形態に係る除雪機の側面図である。
【符号の説明】
【0040】
10 フレーム
10A 上部フレーム
10B 下部フレーム
11 操作部
12 上部ハンドル
13 下部ハンドル
14 上部ハンドル取手
15 下部ハンドル取手
16 支点
17 連結部材
20 雪上移動手段
21 橇
22 車輪
30 駆動手段
31 電動機
32 減速機
33 駆動軸
34 ウォーム減速機
35A, 35B スイッチ
36 ウォーム減速機
40 除雪塊切削部
41 オーガー
42 オーガーカバー
43 側面カバー
44 背面カバー
46 主オーガー
47 集雪オーガー
50 投雪機構
51 ブロワーケース
52 ブロワー
53 シューター
54 シューターキャップ
60 傾斜調整機構
61 傾斜調整台
62 長穴
63 クランク板
64 回転スライドピン
65 固定回転ピン
66 回転ピン
67スラスト止め軸受け
68 ネジつき棒
69 固定ナット
68 回転ハンドル
70 回転ハンドル
S:除雪塊

【特許請求の範囲】
【請求項1】
除雪機のフレームの前端側に積雪を切削するオーガーを、後端側に操作ハンドルを、また中間部分に円弧状の滑動体又は車輪からなる雪上移動手段を取付けてなり、かつ、前記フレームを前記雪上移動手段の取付け部を支点とする一体の梃子として構成して前記操作ハンドルにより前記オーガーを上下及び前後進可能にするとともに、前記フレームには前記オーガーの駆動手段を設けてなることを特徴とする除雪機。
【請求項2】
除雪機のフレームの前端側に積雪を切削する主オーガー及び該主オーガーの後面側に設けられ該主オーガーと逆方向に回転する集雪オーガーを、後端側に操作ハンドルを、また中間部分に円弧状の滑動体又は車輪からなる雪上移動手段を取付けてなり、かつ、前記フレームを前記雪上移動手段の取付け部を支点とする一体の梃子として構成して前記操作ハンドルにより前記オーガーを上下及び前後進可能にするとともに、前記フレームには前記主オーガー及び集雪オーガーの駆動手段を設けてなることを特徴とする除雪機。
【請求項3】
フレームに対して操作ハンドルが上下二段に取付けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の除雪機。
【請求項4】
オーガーカバーに固定され、かつ、リンク機構によってフレームに対して傾動可能な傾斜調整台上に投雪装置を設置してなることを特徴とする請求項1又は2記載の除雪機。
【請求項5】
フレームに対して操作ハンドルが上下二段に取付けられていることを特徴とする請求項4記載の除雪機。
【請求項6】
積雪を切削するオーガーがアップカット方法に回転することを特徴とする請求項1又は2記載の除雪機

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【国際公開番号】WO2005/075746
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【発行日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517768(P2005−517768)
【国際出願番号】PCT/JP2005/001771
【国際出願日】平成17年2月7日(2005.2.7)
【出願人】(594002495)
【Fターム(参考)】