説明

陶磁器用転写紙

【課題】陶磁器の絵付けに関し、初心者が絵付けを行なっても、比較的表現豊かな絵付けを完成させることできるように補助し得る転写紙を提供することを課題とする。
【解決手段】陶磁器に絵柄の輪郭線を転写するための陶磁器用転写紙Xにおいて、前記転写紙20に印刷される前記輪郭線10を、当該輪郭線10内側に接する位置に施される色より低い明度の色により形成し、線幅の変化、色相の変化、彩度の変化、濃淡の変化のうちの少なくとも一つを前記輪郭線10に施すようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陶磁器における上絵付けを補助するために、陶磁器に輪郭線を転写する際に用いる転写紙に関する。
【背景技術】
【0002】
陶磁器に絵付けを施す場合、図6(a)に模式的に示すように陶磁器に鉛筆などによって薄く下書きuをし、これに、彩色cを施し、最後に、仕上げの輪郭線oや影を描くことが一般的である。なお、彩色cを施すことで下書きuは隠れて見えなくなる。
ところで、絵の技術がない初心者は、最初の下書きでうまく絵がかけないという問題がる。これを解決するために、下記特許文献には、下書き用の輪郭線を輪郭内に施される色と同色の絵の具を用いて印刷した転写紙が示されている。この転写紙を用いると、図6(b)に模式的示すように陶磁器に下書き用輪郭線pを転写紙により転写してから、彩色c、仕上げの輪郭線o、陰影の描き込み行なうことができるので、初心者でも比較的上手な絵を描くことができる。なお、この場合も彩色cを施すことで、下書き用輪郭線pは同化して見えなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第29003397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような転写紙を用いた場合絵の形状はうまく陶磁器に写すことができるが、最後に描く仕上げの輪郭線や影の表現は、技術が必要であるので、最終的な作品は、上級者が描くものに比較して稚拙なものとならざるを得なかった。
本発明は、このような問題に鑑み、初心者が上絵付けを行なっても、比較的表現豊かな作品を完成させることできるように補助し得る転写紙を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は次のような構成を有する。
請求項1に記載の発明は、陶磁器に絵柄の輪郭線を転写するための陶磁器用転写紙であり、前記転写紙に印刷される前記輪郭線は、当該輪郭線内側に接する位置に施される色より低い明度の色により形成され、線幅の変化、及び/又は、色の変化が施されたものである。なお、輪郭線は完全に連続する必要はなく、一部が破断しているような場合も含まれる。また、色の変化とは、色相の変化のみを意味するのではなく、色相、明度、彩度の少なくとも一つが変化すれば足りる。そして、明度が変化する場合には、少なくとも、前記輪郭線内側に接する位置に施される色より低い明度の色が含まれ、当該当該輪郭線内側に接する位置に施される色より低い明度の色で表される部分が上記輪郭線を構成するものとする。
請求項2に記載の発明は、前記陶磁器用転写紙において、前記輪郭線の内側に、当該輪郭線内側に接する位置に施される色より低い明度の色からなる陰影を表す線もしくは彩色が施されたものである。
【発明の効果】
【0006】
以上のような構成により、本発明は次のような効果を奏する。
請求項1に記載の発明は、輪郭線が当該輪郭線に接触する色よりも明度が低い色により描かれるので、この輪郭線の内側もしくは輪郭線上に彩色をした場合でも輪郭線は高温で焼成することで隠れることがなく表面に現れ、この輪郭線を線幅の変化や色の変化をつけることで表現豊かに描いておけば、最終的な作品において表現豊かな輪郭線で描かれた絵を得ることができる。
請求項2に記載の発明は、輪郭線の内側に当該輪郭線内側に接する位置に施される色より低い明度の色で陰影が描かれるので、やはり彩色を施しても高温で焼成することで隠れることがなく表面に現れ、陰影を適切に描いておけば初心者では表現が難しい陰影が上手く描かれた作品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施形態1に係る陶磁器用転写紙の平面図である。
【図2】実施形態1に係る陶磁器用転写紙の輪郭線を模式的に示す一部拡大図である。
【図3】実施形態1に係る陶磁器用転写紙を用いた絵付け手順を模式的に表す図である。
【図4】実施形態2に係る陶磁器用転写紙の平面図である。
【図5】実施形態2に係る陶磁器用転写紙を用いた絵付け手順を模式的に表す図である。
【図6】(a)は第一の従来の絵付け手順を模式的に表す図であり、(b)は第二の従来の絵付け手順を模式的に表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図を用いて説明する。
(実施形態1)
図1に実施形態1に係る陶磁器用転写紙Xの平面図を示す。陶磁器用転写紙Xは、台紙20上にゼラチンやデキストリンなどの水溶性の薄い層を形成し、この層上に転写する絵柄10を絵付け用絵の具をインクとして印刷したものである。
絵柄10には、元となる絵があり、この絵の輪郭部分のみを表したものである。この輪郭部分は絵付けの上級者が実際に仕上げとして行なうように筆で描いたものが印刷データとして用いられる。また、輪郭線は輪郭線に接する色よりも明度が低い色により表される。なお、輪郭部分が光っているような部分を表現するために輪郭線が描かれないか、輪郭線に接する色と同じ色により描かれる部分も存在してよい。上級者が筆で描くので、輪郭線には太さの変化が表れる。また、図1では表れないが、輪郭線には、図2に示す図1の絵柄10の模式的な部分拡大図に表れるように、明度の変化、色相の変化、彩度の変化などが適宜表現される。これにより、輪郭線が表現豊かに表されることになる。
【0009】
次に、以上のような構成を有する転写紙Xの使用方法について説明する。まず、使用者は絵付けを行なう陶器・磁器の表面に転写紙Xを載せてスポンジなどで水をしみこませることで、台紙20から絵柄10を分離させ、その後、台紙20を取り去ることで絵柄10を陶器等の表面に転写する。その後、焼成を行い、絵柄10を陶器等表面に焼き付ける。これにより図3(a)のように輪郭線が陶器等表面に焼き付けられることになる。次に、この絵柄10の内側に上絵付けを行なっていく。この際、上絵付けは元となる絵を基準に行なわれるので、輪郭線よりも明度が高い色が輪郭線に接触する位置に塗られることになる。このとき、輪郭線上に彩色が上塗りされることもあり、この部分では輪郭線は一旦彩色により隠れるか、薄く透けて見える程度になる。上絵付けが完了したらさらに焼成を行い、上絵付けをした色も焼き付けることで図3(b)のように絵柄10内に絵付けcが施された作品が完成する。そして、最後の焼成で約800度の高温で焼成することで、彩色により上塗りされた明度の低い輪郭線は、表面に浮き出し彩色した色になじんで透けて見えるようになる。
以上に説明したように陶磁器用転写紙Xは、明度の低い色の上に明度の高い色が彩色されても、高温で焼成する事で明度の低い色が表面に浮き上がって見えるという現象を考慮して作られているので、この陶磁器用転写紙Xを用いて陶磁器に上絵付けを行なえば、初心者では難しい仕上げの輪郭線が予め上級者によって線幅の変化、色の変化を持って表現豊かに描かれ、これらが絵付けによっても焼成後に表面に現れるので、初心者であっても上級者に近い質の高い作品を作ることが可能となり、しかも比較的短時間で仕上げることができる。
【0010】
(実施形態2)
図4に実施形態2に係る陶磁器用転写紙Yの平面図を示す。陶磁器用転写紙Yは、実施形態1に係る陶磁器用転写紙Xと同じ構造である。相違点は、絵柄10Aにおいて、輪郭線に加えて陰影を表す部分11が描かれている点である。
この絵柄10Aも絵付けの上級者が実際に仕上げとして行なうように筆で描いたものを印刷データとしたものであり、輪郭は線幅の変化や、色相、明度、彩度の変化が適宜表現されている。そして、この輪郭線とともに、輪郭内に描かれる細かな複数の線と塗りつぶした面により陰影が表現されている。なお、輪郭線と同様に陰影を表す部分も、明度の変化、色相の変化、彩度の変化などが適宜表現される。この陰影は、元の絵において陰影に接触する色よりも明度の低い色により描かれることで、後に彩色を施しても焼成後表面に現れる。なお、陰影は線のみによって描いても、彩色のみによって描いてもよい。
【0011】
陶磁器用転写紙Yの使用方法は、実施形態形態1に係る陶磁器用転写紙Xの使用方法と同じであり、図5(a)のように陶磁器用転写紙Yを用いて絵柄10Aを陶磁器に転写して焼付け、これに図5(b)に示すように彩色cを施して焼き付けることで作品を完成させる。ここで輪郭線のみならず陰影を表す部分も彩色される色よりも明度が低い色で描かれているので、高温で焼き付けることで、完成した作品では輪郭線及び陰影を表す部分が表面に現れることになる。
陶磁器用転写紙Yは、表情のある輪郭線に加えて、陰影があらかじめ描かれているので、初心者でも、単純に彩色を施す作業のみで、表現の難しい陰影の表現がされた作品を比較的短時間で完成させることができる。
【符号の説明】
【0012】
X、Y 陶磁器用転写紙
10、10A 絵柄
11 陰影
20 台紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陶磁器に絵柄の輪郭線を転写するための転写紙であって、
前記転写紙に印刷される前記輪郭線は、当該輪郭線内側に接する位置に施される色より低い明度の色により形成され、線幅の変化、及び/又は、色の変化が施されたものである
陶磁器用転写紙。
【請求項2】
前記輪郭線の内側に、当該輪郭線内側に接する位置に施される色より低い明度の色からなる陰影を表す線もしくは彩色が施された請求項1に記載の陶磁器用転写紙。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−230395(P2011−230395A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103438(P2010−103438)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(510119809)
【Fターム(参考)】