説明

陽圧容器詰飲料および製造方法

【課題】本発明は、容器開封時における内容液の噴出を防止可能な陽圧容器詰飲料を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、ジメチルポリシロキサンを含有し、高圧ホモジナイザー処理を必要とする内容液と、上記内容液を充填する陽圧容器と、を有する陽圧容器詰飲料であって、上記内容液の起泡量が12.5ml未満となることを特徴とする陽圧容器詰飲料を提供することにより、上記目的を達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器開封時における内容液の噴出を防止可能な陽圧容器詰飲料、および陽圧容器詰飲料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、省資源化や低コスト化、また消費者の容器に対する嗜好性の広がり等から、薄肉化された陽圧容器の需要が高まっている。
このような陽圧容器に充填される飲料のうち、ミルクコーヒーやミルクティーに代表されるような起泡性を有する飲料では、消費者が開封前に行う陽圧容器の振盪、または自動販売機からの取り出し時や運搬時の振動等によって内容液が起泡している場合、容器を開封する際に内容液の泡が飛沫となって噴出し、衣服や周辺環境を汚してしまうトラブルが多数報告されている。
【0003】
その対策として、種々の消泡剤の添加が提案されており、このような消泡剤に関して以下の文献が知られている。特許文献1には、ポリグリセリン不飽和脂肪酸エステル、グリセリン不飽和脂肪酸エステルを含有する消泡剤が開示されており、特許文献2には、ヒドロキシプロピルセルロースを含有する消泡剤が開示されている。
さらに、特許文献3には、飲料の全重量に対して、消泡剤としてジメチルポリシロキサンが0.0025重量%〜0.003重量%の範囲内となるように含有された飲料が開示されており、特許文献4には、消泡用乳化剤および極性分散媒を混合した液を膜乳化装置に通して得られるエマルションである飲料用消泡剤であり、上記エマルション粒子の平均粒子径が1μm〜10μmに調整される飲料用消泡剤が添加された陽圧缶入り飲料の製造方法が開示されている。
しかしながら、上述したような消泡剤を用いても、陽圧容器開封時における内容液の噴出を十分に抑制することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−193740号公報
【特許文献2】特開2007−98390号公報
【特許文献3】特開平2−127218号公報
【特許文献4】特許第3780902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、容器開封時における内容液の噴出を防止可能な陽圧容器詰飲料を得ることができる陽圧容器詰飲料の製造方法、および陽圧容器詰飲料を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一般に陽圧容器詰飲料に用いられる飲料が、沈殿や浮遊物を生じる可能性を有する成分を含有する場合、沈殿や浮遊物の発生を防止するといった品質保持の観点から、飲料内に含有される成分の分散、均質化を図ることが必要となる。そのため、このような飲料では、高圧ホモジナイザー処理が施される。
【0007】
このような高圧ホモジナイザー処理が施された飲料は、起泡性を有する場合が多く、陽圧容器詰飲料とされる場合には、ジメチルポリシロキサン等のシリコーン系消泡剤が添加され、内容液の噴出を防止する方策が採られていた。しかしながら、上述した通り、このような方策を採った場合でも、十分な消泡性が得られない場合があるといった問題があった。
本発明者等は、このような問題を鋭意検討した結果、上記ジメチルポリシロキサン等のシリコーン系消泡剤は飲料表面に存在することにより、消泡性を発揮するものであるが、上述したような高圧ホモジナイザー処理が施されることにより、上記ジメチルポリシロキサン等のシリコーン系消泡剤自体も飲料内に均質に分散されてしまい、結果的に消泡効果を十分に発揮することができない状態になっている点を見出し、本発明を完成させるに至ったものである。
【0008】
すなわち、本発明は、ジメチルポリシロキサンを含有する内容液を有する陽圧容器詰飲料の製造方法であって、5MPa以上20MPa未満の範囲内で高圧ホモジナイザー処理を施す工程を有することを特徴とする陽圧容器詰飲料の製造方法を提供する。
【0009】
本発明によれば、高圧ホモジナイザー処理時の圧力を上記範囲内とすることにより、ジメチルポリシロキサンの消泡効果を発揮可能であり、且つ含有される成分が分散、均質化された内容液とすることができる。これにより、容器開封時に内容液が噴出することを防止可能な陽圧容器詰飲料を製造することができる。また、高圧ホモジナイザー処理を施すことにより、内容液における沈殿および浮遊物の発生を抑制し、品質を維持することが可能な陽圧容器詰飲料とすることができる。
【0010】
また本発明は、ジメチルポリシロキサンを含有し、高圧ホモジナイザー処理を必要とする内容液と、上記内容液を充填する陽圧容器と、を有する陽圧容器詰飲料であって、上記内容液の起泡量が12.5ml未満となることを特徴とする陽圧容器詰飲料を提供する。
【0011】
本発明によれば、内容液にジメチルポリシロキサンを含有させることにより、内容液に消泡効果を付与することが可能となる。また、内容液の起泡量が12.5ml未満となることから、容器開封時に内容液の泡が飛沫となって噴出することを防止することができる。
【0012】
上記発明においては、上記ジメチルポリシロキサンの含有量が、上記内容液全量に対して0.0005重量%〜0.005重量%の範囲内であることが好ましい。上記範囲とすることにより、優れた消泡効果を発揮することが可能となるからである。
【0013】
上記発明においては、上記陽圧容器が陽圧ボトル缶であり、上記陽圧容器の内圧が0.05MPa〜0.12MPaの範囲内であることが好ましい。本発明の効果をより発揮することができるからである。
【0014】
上記発明においては、上記内容液がコーヒー飲料であることが好ましい。起泡性を有する飲料であるため、本発明の効果をより発揮しやすいからである。
【0015】
上記発明においては、上記内容液が、ブリックス値1.0の透過率が40%以上のコーヒー液を含有することが好ましい。消泡効果をより発揮することができるからである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、容器開封時に内容液の泡が飛沫となって噴出することを防止可能な陽圧容器詰飲料とすることができるという作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の陽圧容器詰飲料における起泡量と噴出し量の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、陽圧容器詰飲料の製造方法、および陽圧容器詰飲料に関するものである。
以下、これらの発明について順に説明する。
【0019】
A.陽圧容器詰飲料の製造方法
本発明の陽圧容器詰飲料の製造方法は、ジメチルポリシロキサンを含有する内容液を有する陽圧容器詰飲料の製造方法であって、5MPa以上20MPa未満の範囲内で高圧ホモジナイザー処理を施す工程(以下、高圧ホモジナイザー処理工程として説明する場合がある。)を有することを特徴とする方法である。
【0020】
本発明によれば、高圧ホモジナイザー処理工程を有する、すなわち上記範囲内の処理圧力で高圧ホモジナイザー処理を行うことにより、高圧ホモジナイザー処理工程を施してもジメチルポリシロキサンの消泡効果を発揮させることができる。これにより、容器開封時における内容液の噴出を防止することが可能な陽圧容器詰飲料を製造可能となる。また、内容液における沈殿および浮遊物の発生を抑制し、品質を維持することが可能な陽圧容器詰飲料とすることができる。
【0021】
(1)高圧ホモジナイザー処理工程
まず、本発明における高圧ホモジナイザー処理工程について説明する。本発明に用いられる高圧ホモジナイザー処理工程は、5MPa以上20MPa未満の範囲内で高圧ホモジナイザー処理を施す工程である。
ここで、高圧ホモジナイザー処理とは、高圧ホモジナイザーと呼ばれる装置を用いて、内容液に含有される成分に対して、高圧に加圧してスリット(隙間)を通過させる際のせん断力により、内容液に含有される成分の粒子径を小さく粉砕し、内容液中に分散および均質化させる処理をいう。
【0022】
本工程における高圧ホモジナイザー処理時の処理圧力としては、上述したように5MPa以上20MPa未満の範囲内である。中でも、5MPa〜17MPaの範囲内であることがより好ましく、5MPa〜15MPaの範囲内であることが特に好ましい。上記処理圧力が上記範囲に満たない場合、沈殿や浮遊物の発生、また経時的な増加により、品質を担保することが困難となる可能性を有するからである。また一方、上記処理圧力が上記範囲を超える場合、ジメチルポリシロキサンの消泡効果が損なわれる可能性を有するからである。
【0023】
本工程における高圧ホモジナイザー処理時の処理温度としては、内容液に含有される成分が効果的に分散され、均質化される程度であれば特に限定されるものではなく、通常、15℃〜80℃の範囲内であることが好ましく、50℃〜70℃の範囲内であることがより好ましい。
【0024】
本工程における高圧ホモジナイザー処理の処理回数としては、内容液を均質化できる程度であれば特に限定されるものではないが、処理回数が増えるにしたがってジメチルポリシロキサンの消泡効果が低減することから、2回以下であることが好ましく、1回であることがより好ましい。
【0025】
(2)その他の工程
本発明は、少なくとも高圧ホモジナイザー処理工程を有するものであれば特に限定されるものではなく、他の工程を有するものであっても良い。
例えば、上記高圧ホモジナイザー処理工程を行う前に、ジメチルポリシロキサン添加工程が行われる。なお、上記高圧ホモジナイザー処理工程後にジメチルポリシロキサン添加工程を行うことにより、その消泡効果を低減させない方法も考えられるが、既存の飲料工場設備では対応が大変難しく、また導入するには多額の設備改良費用を要することから、現実的に非常に困難であるとされている。
またその他の工程としては、本発明によって製造される陽圧容器詰飲料の種類等に応じて適宜設定されるものである。
【0026】
(3)陽圧容器詰飲料
次に、本発明によって製造される陽圧容器詰飲料について説明する。本発明によって製造される陽圧容器詰飲料は、ジメチルポリシロキサンを含有する内容液を有するものである。
【0027】
本発明によって製造される陽圧容器詰飲料における内容液は、ジメチルポリシロキサンを含有するものであれば特に限定されるものではない。
このような内容液については、後述する「B.陽圧容器詰飲料」と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0028】
また本発明によって製造される陽圧容器詰飲料に用いられる陽圧容器は、上述した内容液を充填できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、後述する「B.陽圧容器詰飲料」の項に記載するものを好適に用いることができる。
【0029】
B.陽圧容器詰飲料
次に、本発明の陽圧容器詰飲料について説明する。本発明の陽圧容器詰飲料は、ジメチルポリシロキサンを含有し、高圧ホモジナイザー処理を必要とする内容液と、上記内容液を充填する陽圧容器と、を有する陽圧容器詰飲料であって、上記内容液の起泡量が12.5ml未満となることを特徴とするものである。
【0030】
本発明によれば、内容液にジメチルポリシロキサンを含有させることにより、消泡効果を発揮する、すなわち内容液において発生した泡を効率良く消すことができる。また、内容液の起泡量が12.5ml未満となることから、容器開封時に内容液の泡が飛沫となって噴出することを防止することができる。
以下、内容液および陽圧容器について、各々説明する。
【0031】
1.内容液
本発明に用いられる内容液は、ジメチルポリシロキサンを含有し、高圧ホモジナイザー処理を必要とするものである。また、上記内容液は、起泡量が12.5ml未満となるものである。
【0032】
(1)ジメチルポリシロキサン
本発明における内容液は、ジメチルポリシロキサンを含有するものである。
ここで、本発明に用いられるジメチルポリシロキサンは、食品衛生法において食品添加物として認定される消泡剤であり、内容液に含有されることにより、陽圧容器の振盪や運搬時等の振動によって発生した内容液の泡を消すことが可能となる。
【0033】
上記ジメチルポリシロキサンの含有量としては、内容液全量に対して、0.0005重量%〜0.005重量%の範囲内であることが好ましく、中でも0.0015重量%〜0.004重量%の範囲内であることが好ましい。
上記含有量が上記範囲に満たない場合、ジメチルポリシロキサンが十分な消泡効果を発揮することができない可能性を有するからである。また一方、上記含有量が上記範囲を超える場合、消泡効果の向上がほとんど見られず、さらに極僅かの油様の浮遊物が発生する恐れを有するからである。なお、食品衛生法によりジメチルポリシロキサンの含有量の上限は0.005重量%と規定されている。
【0034】
(2)起泡量
本発明に用いられる内容液は、起泡量が12.5ml未満となるものである。また、本発明に用いられる内容液は、さらに11.5ml未満となることがより好ましい。
上記起泡量が上記範囲を超える場合、容器開封時において内容液が噴出する量(以下、噴出し量と称して説明する場合がある。)が増加し、衣服や周辺環境を汚す可能性を有するからである。
なお、起泡量は、後述する実施例に記載の測定方法により得ることができる。
【0035】
ここで、本発明における噴出し量とは、上記起泡量の増加に伴い、増加する傾向を示すものである。また、上記噴出し量としては、容器開封に際して、消費者の衣服や周辺環境等を汚さない程度であれば特に限定されるものではないが、通常、0.30g未満であることが好ましく、0.15g未満であることが特に好ましい。上記噴出し量が上記範囲を超える場合、容器開封時に内容液の泡が飛沫となって噴出するからである。これにより、衣服や周辺環境等を汚す可能性が高くなる。
【0036】
(3)内容液
本発明における内容液は、高圧ホモジナイザー処理を必要とするものである。
なお、高圧ホモジナイザー処理については、上記「A.陽圧容器詰飲料の製造方法」の項に記載したものと同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0037】
高圧ホモジナイザー処理を必要とする内容液としては、例えば、乳成分が配合された液等の起泡性を有する液、泡の持続性を有する液等を挙げることができる。具体的には、脂肪分の少ないミルク入りコーヒー、ブラックコーヒー等のコーヒー飲料、ミルクティー、ココア、ミルク入り抹茶等を挙げることができる。
【0038】
このような内容液としては、起泡性を有する液、または泡の持続性を有する液であれば特に限定されるものではないが、中でもコーヒー飲料であることが好ましい。起泡性および泡の持続性に優れることから、本発明の効果を発揮しやすく、また、他の飲料に比べて需要が高いからである。
【0039】
上述したようなコーヒー飲料としては、一般的なコーヒー液を含有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、コーヒー豆の抽出液、コーヒー抽出液を濃縮したコーヒーエキス、コーヒー抽出液を乾燥したインスタントコーヒー等が水や温水等で適量に調整された溶液を含有するものが挙げられる。
【0040】
さらに上述したようなコーヒー飲料としては、中でも、ブリックス値1.0の透過率が40%以上となるコーヒー液を含有するものであることが好ましい。ジメチルポリシロキサンが内容液内に含有される他の成分に吸着されること等による消泡効果の低減を防止できるからである。
ここで、上記ブリックス値とは、コーヒー抽出液の可溶性固形分の濃度を示す値であり、公知の測定方法で測定できる。なお、上記透過率は、波長660nmの光を用いて測定した、光路長10mmの透過率である。
【0041】
上記内容液としては、上述したように、ジメチルポリシロキサンを含有し、高圧ホモジナイザー処理を必要とするものであり、起泡量が12.5ml未満となるものであれば特に限定されるものではなく、内容液の品質向上等の観点から、添加剤を含有するものであっても良い。なお、上記添加剤としては、一般的な陽圧容器詰飲料における内容液に用いられるものであれば特に限定されるものではない。
【0042】
2.陽圧容器
次に、本発明に用いられる陽圧容器について説明する。本発明に用いられる陽圧容器は、上述した内容液を充填するものである。
ここで、上記陽圧容器としては、一般的な陽圧容器と同様に陽圧状態を形成するものであり、ヘッドスペース、すなわち、陽圧容器内の内容液が充填されていない部分に、窒素ガスや炭酸ガス等を封入して密閉することにより、容器内を陽圧状態としている。なお、上記陽圧状態とは、大気圧より高い気圧を有する状態である。
【0043】
上記陽圧容器としては、上述した内容液を充填することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、薄肉化された2ピース陽圧缶、陽圧ボトル缶等を挙げることができる。上記2ピース陽圧缶の具体例としては、アルミニウム製2ピース陽圧缶やスチール製2ピース陽圧缶を挙げることができ、上記陽圧ボトル缶の具体的な例としては、アルミニウム製陽圧ボトル缶を挙げられる。
上記陽圧容器としては、中でも陽圧ボトル缶がより好ましい。利便性やデザイン性に優れており、需要が高いからである。また、その形状から、特に開封時に噴出する可能性が高いため、本発明の効果を発揮しやすいからである。
【0044】
上記陽圧容器の内圧(以下、容器内圧として説明する場合がある。)としては、陽圧状態となるものであれば特に限定されるものではないが、通常、0.05MPa〜0.12MPaの範囲内であることが好ましく、0.06MPa〜0.08MPaの範囲内であることが特に好ましい。上記容器内圧が上記範囲に満たない場合、薄肉化された容器、例えば陽圧ボトル缶等では、缶胴部の張りが弱まるといった、強度維持が困難となる可能性を有するからである。また一方、上記容器内圧が上記範囲を超える場合、内容液に僅かな泡が発生し、容器開封時に飛沫となって噴出する可能性を有するからである。
【0045】
3.陽圧容器詰飲料
本発明の陽圧容器詰飲料は、少なくとも上述した内容液と、陽圧容器とを有するものであり、必要に応じて他の構成を有していても良い。このような他の構成としては、特に限定されるものではなく、陽圧容器詰飲料の種類等に応じて適宜選択されるものである。
【0046】
本発明の陽圧容器詰飲料の製造方法としては、上述したような陽圧容器詰飲料を製造することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、上記「A.陽圧容器詰飲料の製造方法」の項に記載される製造方法を好適に用いることができる。
【0047】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0048】
以下、実施例および比較例を挙げることにより、本発明について具体的に説明する。
【0049】
[実施例1−1]
(調合液の準備)
ブラジル、グァテマラ産のブレンド焙煎豆(平均L値20)50gを、90℃の温水500gで抽出し、30℃以下に冷却した。その後、遠心分離処理によりブリックス値1.0とし、波長660nmにおける透過率が40%のコーヒー抽出液を得た。
次に、このコーヒー抽出液に砂糖40gを加え、撹拌溶解した。その後、重曹水溶液を添加し、pH6.8となる調整液を得た。
この調整液に、予め65℃の温水で溶解させた乳化製剤(グリセリン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルを主体とした製剤、製品名:ポエムBS−20、製造会社名:理研ビタミン株式会社)を加え、十分に攪拌混和させた後、牛乳を100g加えた。次にジメチルポリシロキサンの含有量が0.015gとなるようにジメチルポリシロキサン含有シリコーン製剤(製品名:KM−72F、製造会社名:信越化学工業株式会社)を加えた後、水を加えた全量が1kgになるように調製して攪拌し、ジメチルポリシロキサン含有量が0.0015重量%となる調合液を得た。
なお、上記L値は、焙煎豆の色から焙煎の程度を示す値であり、色差計により測定されるものである。
【0050】
(試験液の調製)
上記調合液200gを、65℃に加温し、高圧ホモジナイザー(製品名:15MR−8TBA、製造会社名:APV GAULIN)を用いて、5MPa条件下で高圧ホモジナイザー処理を施した後、90℃に加温して缶に充填した。その後、124℃で20分のレトルト殺菌を行い、試験液を得た。
【0051】
[実施例1−2]
10MPa条件下で高圧ホモジナイザー処理を施した以外は、上記実施例1−1と同様にして、試験液を得た。
【0052】
[実施例1−3]
15MPa条件下で高圧ホモジナイザー処理を施した以外は、上記実施例1−1と同様にして、試験液を得た。
【0053】
[実施例1−4]
17MPa条件下で高圧ホモジナイザー処理を施した以外は、上記実施例1−1と同様にして、試験液を得た。
【0054】
[比較例1]
20MPa条件下で高圧ホモジナイザー処理を施した以外は、上記実施例1−1と同様にして、試験液を得た。
【0055】
[評価1]
(起泡量測定)
上述した実施例1−1〜実施例1−4、および比較例1で得られた試験液10mlを25mlの有栓試験管(柴田科学株式会社製)に封入して、上下に30cm程度の振れ幅で、3秒間に10回手動で振盪した。その後、20秒間放置し、泡面の目盛を目視で読み取った。なお、試験液の温度は商品の販売温度を考慮して、5℃、20℃、55℃の3温度帯とした。各温度帯における起泡量を表1に示す。
また、各起泡量について、陽圧容器開封時の内容液の噴出状態や、衣服や周辺環境に対する影響の程度から◎、○、△、×とする判定結果を同表に示した。
上記判定に用いた基準については、下記表2に示すものである。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
上述した表1および表2より、比較例1に対して、実施例1−1〜実施例1−4では起泡量が12.5ml未満となることが確認でき、特に15MPa以下で高圧ホモジナイザー処理を施すことにより、起泡量をより効果的に低減することが可能であることが示された。
【0059】
[実施例2−1]
(調合液の準備)
ジメチルポリシロキサンの含有量が0.005gとなるようにジメチルポリシロキサン含有シリコーン製剤を添加し、調合液全量に対するジメチルポリシロキサンの含有量を、0.0005重量%としたこと以外は、上記実施例1−1と同様にして調合液を作製した。
【0060】
(試験液の調製)
上記調合液200gを、65℃に加温し、15MPa条件下で高圧ホモジナイザー処理を施した後、90℃に加温して缶に充填した。その後、124℃で20分のレトルト殺菌を行い、試験液を得た。
【0061】
[実施例2−2]
(調合液の準備)
ジメチルポリシロキサンの含有量が0.015gとなるようにジメチルポリシロキサン含有シリコーン製剤を添加し、調合液全量に対するジメチルポリシロキサンの含有量を、0.0015重量%としたこと以外は、上記実施例2−1と同様にして調合液を作製した。
【0062】
(試験液の調製)
上記実施例2−1と同様にして試験液を得た。
【0063】
[実施例2−3]
(調合液の準備)
ジメチルポリシロキサンの含有量が0.030gとなるようにジメチルポリシロキサン含有シリコーン製剤を添加し、調合液全量に対するジメチルポリシロキサンの含有量を、0.0030重量%としたこと以外は、上記実施例2−1と同様にして調合液を作製した。
【0064】
(試験液の調製)
上記実施例2−1と同様にして試験液を得た。
【0065】
[実施例2−4]
(調合液の準備)
ジメチルポリシロキサンの含有量が0.040gとなるようにジメチルポリシロキサン含有シリコーン製剤を添加し、調合液全量に対するジメチルポリシロキサンの含有量を、0.0040重量%としたこと以外は、上記実施例2−1と同様にして調合液を作製した。
【0066】
(試験液の調製)
上記実施例2−1と同様にして試験液を得た。
【0067】
[実施例2−5]
(調合液の準備)
ジメチルポリシロキサンの含有量が0.050gとなるようにジメチルポリシロキサン含有シリコーン製剤を添加し、調合液全量に対するジメチルポリシロキサンの含有量を、0.0050重量%としたこと以外は、上記実施例2−1と同様にして調合液を作製した。
【0068】
(試験液の調製)
上記実施例2−1と同様にして試験液を得た。
【0069】
[比較例2]
(調合液の準備)
ジメチルポリシロキサン含有シリコーン製剤を添加しないこと以外は、上記実施例2−1と同様にして調合液を作製した。
【0070】
(試験液の調製)
上記実施例2−1と同様にして試験液を得た。
【0071】
[評価2]
上述した評価1と同様に起泡量測定を行った。その結果を表3に示す。
また、上記表2に示す基準に基づいた実施例2−1〜実施例2−5および比較例2の判定結果についても表3に示す。
【0072】
【表3】

【0073】
表3に示すように、ジメチルポリシロキサンを含有する実施例2−1〜実施例2−5に対して、ジメチルポリシロキサンを含有していない比較例2は、起泡量が著しく多いことが確認できる。
また、ジメチルポリシロキサンの含有量が0.0005重量%以上となる場合、起泡量が12.5ml未満となり、上記含有量が0.0015重量%以上となる場合、起泡量は11.5ml未満となり、より起泡量が低減されることが確認された。
【0074】
[実施例3−1]
実施例1−3と同様にして試験液を得た。
【0075】
[実施例3−2]
遠心分離処理条件を変更し、ブリックス値1.0の透過率が20%のコーヒー抽出液を用いること以外は、実施例1−1と同様にして試験液を得た。
【0076】
[評価3]
上述した評価1と同様に起泡量測定を行った。その結果、および上記表2に示す基準に基づいた実施例3−1および実施例3−2の判定結果を表4に示す。
【0077】
【表4】

【0078】
表4に示すように、上記ブリックス値1.0のコーヒー抽出液の透過率が40%以上となることで、効果的に起泡量が抑制できることが示唆された。
【0079】
[実施例4−1]
実施例1−1と同様に調合液を作製した。得られた調合液500gを、65℃に加温して、5MPa条件下で高圧ホモジナイザー処理を施した。その後、90℃に加温してアルミニウム製ボトル缶(内容積340ml、口径38mm)に275g充填した。次に、陽圧容器内の内容液のヘッドスペースの窒素ガス置換により、容器内圧を0.08MPaに調節して密封した。その後、124℃で20分間のレトルト殺菌を行い、試験サンプルを得た。
【0080】
[実施例4−2]
10MPa条件下で高圧ホモジナイザー処理を施した以外は、上記実施例4−1と同様にして試験サンプルを得た。
【0081】
[実施例4−3]
15MPa条件下で高圧ホモジナイザー処理を施した以外は、上記実施例4−1と同様にして試験サンプルを得た。
【0082】
[実施例4−4]
17MPa条件下で高圧ホモジナイザー処理を施した以外は、上記実施例4−1と同様にして試験サンプルを得た。
【0083】
[比較例3]
20MPa条件下で高圧ホモジナイザー処理を施した以外は、上記実施例4−1と同様にして試験サンプルを得た。
【0084】
[評価4]
(噴出し量測定)
実施例4−1〜実施例4−4および比較例3において得られた試験サンプルに対して、
振盪器を用いて、振幅3cmの上下振盪を1分間に250回行った。その後、4秒間静置して30°傾けて開缶し、開缶前後の缶重量の変化を測定し、噴出し量とした。
なお、上記噴出し量には、缶内のヘッドスペースに置換された窒素ガス0.1g程度が含まれるものである。また、試験サンプルの温度は、20℃とした。
得られた噴出し量の結果を下記表5に示す。
【0085】
(起泡量測定)
実施例4−1〜実施例4−4および比較例3において得られた試験サンプルに対して、上述した評価1と同様に、起泡量を測定した。その結果、および上記表2に示す基準に基づいた判定結果を下記表5に示す。
また、起泡量および噴出し量の関係について図1に示す。
【0086】
【表5】

【0087】
図1に示されるように、内容液の起泡量と噴出し量とには相関が認められた。起泡量が11.5mlとなる場合、噴出し量は0.15g程度となり、起泡量が12.5mlとなる場合、噴出し量は0.30g程度となる。また、起泡量が13.3mlとなる場合、噴出し量は0.50g程度となることが示された。
ここで、上述した表2の基準と照らし合わせて得られる、噴出し量による陽圧容器開封時の内容液の噴出状態の判定基準を表6に示す。
【0088】
【表6】

【0089】
[実施例5−1]
実施例1−1と同様に調合液を調製した。得られた調合液500gを65℃に加温して15MPaの条件下で高圧ホモジナイザー処理を施した。その後、90℃に加温してアルミニウム製ボトル缶(内容積340ml、口径38mm)に275g充填した。次に、容器内のヘッドスペースの窒素ガス置換により、容器内圧を0.05MPaに調節して密封した。その後、124℃で20分間のレトルト殺菌を行い、試験サンプルを得た。
【0090】
[実施例5−2]
容器内圧を0.06MPaとした以外は、上記実施例5−1と同様にして試験サンプルを得た。
【0091】
[実施例5−3]
容器内圧を0.08MPaとした以外は、上記実施例5−1と同様にして試験サンプルを得た。
【0092】
[実施例5−4]
容器内圧を0.12MPaとした以外は、上記実施例5−1と同様にして試験サンプルを得た。
【0093】
[実施例5−5]
容器内圧を0.15MPaとした以外は、上記実施例5−1と同様にして試験サンプルを得た。
【0094】
[評価5]
(噴出し量測定)
商品の販売温度を考慮し、試験サンプルの温度を5℃、20℃、55℃として測定した以外は上述した評価4と同様に噴出し量を測定した。
その結果、および表6に示す基準に基づく噴出し量による陽圧容器開封時の内容液の噴出状態の判定結果を表7に示す。
【0095】
【表7】

【0096】
[実施例6−1]
17MPa条件下で高圧ホモジナイザー処理を施す以外は、上記実施例5−1と同様にして試験サンプルを得た。
【0097】
[実施例6−2]
容器内圧を0.06MPaとした以外は、上記実施例6−1と同様にして試験サンプルを得た。
【0098】
[実施例6−3]
容器内圧を0.08MPaとした以外は、上記実施例6−1と同様にして試験サンプルを得た。
【0099】
[実施例6−4]
容器内圧を0.12MPaとした以外は、上記実施例6−1と同様にして試験サンプルを得た。
【0100】
[実施例6−5]
容器内圧を0.15MPaとした以外は、上記実施例6−1と同様にして試験サンプルを得た。
【0101】
[評価6]
(噴出し量測定)
商品の販売温度を考慮し、試験サンプルの温度を5℃、20℃、55℃として測定した以外は上述した評価4と同様に噴出し量を測定した。
その結果、および表6に示す基準に基づく噴出し量による陽圧容器開封時の内容液の噴出状態の判定結果を表8に示す。
【0102】
【表8】

【0103】
上記表7および上記表8に示されるように、容器内圧が高くなるに従って、噴出し量が増加していることが確認できた。また容器内圧を0.12MPa以下とすることで、より噴出し量が減少することが可能となり、0.08MPa以下となることでさらに噴出し量を低減することが可能となることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジメチルポリシロキサンを含有し、高圧ホモジナイザー処理を必要とする内容液と、
前記内容液を充填する陽圧容器と、
を有する陽圧容器詰飲料であって、
前記内容液の起泡量が12.5ml未満となることを特徴とする陽圧容器詰飲料。
【請求項2】
前記ジメチルポリシロキサンの含有量が、前記内容液全量に対して0.0005重量%〜0.005重量%の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の陽圧容器詰飲料。
【請求項3】
前記陽圧容器が陽圧ボトル缶であり、前記陽圧容器の内圧が0.05MPa〜0.12MPaの範囲内であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の陽圧容器詰飲料。
【請求項4】
前記内容液がコーヒー飲料であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の陽圧容器詰飲料。
【請求項5】
上記内容液が、ブリックス値1.0の透過率が40%以上となるコーヒー液を含有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の陽圧容器詰飲料。
【請求項6】
ジメチルポリシロキサンを含有する内容液を有する陽圧容器詰飲料の製造方法であって、
5MPa以上20MPa未満の範囲内で高圧ホモジナイザー処理を施す工程を有することを特徴とする陽圧容器詰飲料の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−9610(P2013−9610A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143131(P2011−143131)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【特許番号】特許第4975178号(P4975178)
【特許公報発行日】平成24年7月11日(2012.7.11)
【出願人】(000004569)日本たばこ産業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】