説明

隧道内の電車線支持装置

【課題】 隧道内の狭小空間に設置でき、吊架線とトロリ線の位置調整を同時に行うことができる隧道内の電車線支持装置を提供する。
【解決手段】 電車線支持装置1は、隧道内に水平に支持される支持パイプ2と、これに軸線方向位置調整可能に取り付けられる支持金具3と、これの一端に取り付けられる曲線引金具4とを具備する。支持金具3は、把持部6、添え板部7、吊架線支持滑車8、張出部9と、アーム部10を具備する。把持部6は支持パイプ2を把持する。添え板部7は、把持部6から支持パイプ2の上部に沿って延出する。張出部9は、把持部6から支持パイプ2に直交する方向に延出する。アーム部10は、張出部9から支持パイプ2と平行に延出する。曲線引金具4は、アーム部10の先端から支持パイプ2と平行に延出し、先端にトロリ線Tを把持する。吊架線支持滑車8は、曲線引金具4の先端の上方に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、隧道内に設置される電車線の支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可動ブラケットと称される電車線の支持装置が知られている(例えば特許文献1参照)。この可動ブラケットを図7に示す。電柱21の上下位置に、絶縁碍子22,23を介して前方に延びるように、水平主管24と上向きに傾斜する斜状主管25とが支持される。斜状主管25の前部は水平状に延長して、水平主管24と平行な水平部26,26を形成する。この水平部26に支持金具27が取り付けられる。支持金具27は、上部に吊架線Mの保持部28を、下部に引手金具29の取付部30を夫々有し、水平部26に対して、水平方向に取付位置を調整可能である。取付部30に、曲線引き金具31を介してトロリ線Tを支持するイヤー32が取り付けられる。しかして、電柱21と電車線(吊架線M,トロリ線T)との距離に相応して取付金具27を水平方向に移動することにより、吊架線MとトロリT線の調整を同時に行うことができる。また電車線の引き留め方向が異なる場合は、その方向に合わせて、引手金具29の向きのみを変更すればよいというものである。
【特許文献1】特許2666164号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の可動ブラケットは、隧道以外の部位において、吊架線MとトロリT線の位置調整を同時に行うことができるように工夫されているが、隧道内では十分な空間が確保できないので、この可動ブラケットを隧道内の電車線支持装置として適用することができない。
したがって、この出願に係る発明は、吊架線とトロリ線の位置調整を同時に行うことができる隧道内の電車線支持装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、この出願に係る発明においては、図1〜図6に示すように、一端と他端において隧道内の上部に水平に支持される支持パイプ2と、この支持パイプ2にその軸線方向に位置調整可能に取り付けられる支持金具3と、この支持金具3の一端に取り付けられる曲線引金具4とを具備する隧道内の電車線支持装置1を提供する。支持金具3は、支持パイプ2を把持する把持部6と、把持部6から支持パイプ2の上部に沿って延出する添え板部7と、添え板部7の先端側上部に固着される吊架線支持滑車8と、把持部6から支持パイプ2に直交する方向に延出する張出部9と、張出部9から支持パイプ2と平行に延出するアーム部10とを具備する。把持部6は、支持パイプ2を把持してボルト止めされる上下一対の把持部材11,12を有する。添え板部7は、断面半円弧状で、基端側において上部の把持部材11に固着され、支持パイプ2の上部に沿って支持パイプ2の一端側へ延出する。吊架線支持滑車8は、添え板部7の先端側上部に固着され、支持パイプに直交する方向に延長する吊架線Mを支持する。張出部9は、基端側が上部の把持部材11の上部に固着され、支持パイプ2に直交する方向に延出する。アーム部10は、基端が張出部9の先端側に固着され、支持パイプ2と平行に支持パイプ2の他端側へ延出する。曲線引金具4は、基端においてアーム部10の先端側に固着され、支持パイプ2と平行にその一端側へ向かって斜め下方へ延出し、先端にトロリ線Tを把持するイヤー5を具備する。吊架線支持滑車8は、曲線引金具4におけるイヤー5の上方位置に配置される。
【発明の効果】
【0005】
この出願に係る発明によれば、隧道内の狭小空間に設置でき、吊架線とトロリ線の位置調整を同時に行うことができる隧道内の電車線支持装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。図1は本発明に係る電車線支持装置の設置状態を示す正面図、図2は本発明に係る電車線支持装置の正面図、図3は本発明に係る電車線支持装置の平面図、図4は本発明に係る電車線支持装置の右側面図、図5は本発明に係る電車線支持装置の左側面図、図6は本発明に係る電車線支持装置の斜視図である。
【0007】
図1において、電車線支持装置1は、支持パイプ2と、支持金具3と、曲線引金具4とを具備する。
【0008】
支持パイプ2は、一端と他端において碍子Iを介して隧道内の上部に水平に支持され、ターンバックル部2aによって長さ調整自在である。支持金具3は、この支持パイプ2に、それの軸線方向に位置調整可能に取り付けられる。曲線引金具4は、基端において支持金具3の一端に取り付けられ、先端にイヤー5を介してトロリ線Tを把持する。
【0009】
図2ないし図6に示すように、支持金具3は、支持パイプ2を把持する把持部6と、把持部6から支持パイプの2上部に沿って延出する添え板部7と、添え板部7の先端側上部に固着される吊架線支持滑車8と、把持部6から支持パイプに直交する方向に延出する張出部9(図3,6)と、張出部9から支持パイプ2と平行に延出するアーム部10とを具備するが、全体がほぼ支持パイプ2の水平投影面内に入るように配置される。従って、支持金具3は、上下方向に大きな設置空間を要しない。
【0010】
把持部6は、支持パイプ2を把持してボルト止めされる上下一対の把持部材11,12を有する。添え板部7は、断面半円弧状で、基端側において上部の把持部材11に固着され、支持パイプ2の上部に沿って支持パイプ2の一端側へ延出する。吊架線支持滑車8は、添え板部7の先端側上部に固着され、支持パイプ2に直交する方向に延長する吊架線Mを支持する。添え板部7が、断面半円弧状で、支持パイプ2を覆うように沿う構成は、支持金具3の上下方向寸法の縮小化に貢献する。
【0011】
張出部9は、基端側が上部の把持部材11の上部に固着され、支持パイプ2に直交する方向に水平に延出する。アーム部10は、基端が張出部9の先端側に固着され、支持パイプ2と平行に支持パイプ2の他端側へ延出する。
【0012】
曲線引金具は、基端においてアーム部10の先端側に固着され、支持パイプ2と平行にその一端側へ向かって斜め下方へ延出し、先端にトロリ線Tを把持するイヤー5を具備する。吊架線支持滑車8は、曲線引金具4におけるイヤー5の上方位置、すなわちトロリ線Tの上方位置に配置される。
【0013】
支持金具の一対の把持部材11,12は、上下に対向して支持パイプ2を包囲する半円弧状板部11a,12aをそれぞれ有し、一端側において互いにピン13でヒンジ結合され、他端側においてボルト14で締め付け可能に構成される。
【0014】
添え板部7は、上部の把持部材11に連続するように、基端側において上部の把持部材11の半円弧状端面11bに固着される。
【0015】
吊架線支持滑車8は、添え板部7の先端側上部に、添え板部7の延長方向に相互間隔を置いて固着された一対のブラケット板15,15間に一対の滑車16と止めボルト17とを取り付けてなる。一対のブラケット板15は、水平片15aと垂直片15bとを有するほぼ転倒T字状板で構成され、水平片15aの中央で添え板部7に固着される。滑車16は、添え板部7の両側に位置して、ブラケット板15の水平片15aの両端部間に軸支される。滑車16は、添え板部の延長方向に対して直交する方向に延長する吊架線Mを乗せ受ける。止めボルト17は、ブラケット板15の垂直片15bの上端部間に挿通され、滑車16上に乗せ受けられた吊架線Mを滑車16との間に挟むように配置される。
【0016】
上下に延線されるトロリ線Tと吊架線Mの位置を左右に調整するために、曲線引金具4と吊架線支持滑車8の位置を調整する場合には、支持金具3を支持パイプ2上で位置調整するだけで済む。
【産業上の利用可能性】
【0017】
この発明は、隧道内の狭小空間に設置でき、吊架線とトロリ線の位置調整を同時に行うことができる隧道内の電車線支持装置に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る電車線支持装置の設置状態を示す正面図である。
【図2】本発明に係る電車線支持装置の正面図である。
【図3】本発明に係る電車線支持装置の平面図である。
【図4】本発明に係る電車線支持装置の右側面図である。
【図5】本発明に係る電車線支持装置の左側面図である。
【図6】本発明に係る電車線支持装置の斜視図である。
【図7】従来の電車線支持装置の一例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 電車線支持装置
2 支持パイプ
2a ターンバックル部
3 支持金具
4 曲線引金具
5 イヤー
6 把持部
7 添え板部
8 吊架線支持滑車
9 張出部
10 アーム部
11 把持部材
11a 半円弧状板部
12 把持部材
12a 半円弧状板部
13 ピン
14 ボルト
15 ブラケット板
15a 水平片
15b 垂直片
16 滑車
17 止めボルト
I 碍子
M 吊架線
T トロリ線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端と他端において隧道内の上部に水平に支持される支持パイプと、この支持パイプにその軸線方向に位置調整可能に取り付けられる支持金具と、この支持金具の一端に取り付けられる曲線引金具とを具備し、
前記支持金具は、前記支持パイプを把持してボルト止めされる上下一対の把持部材を有する把持部と、
基端側において前記上部の把持部材に固着され、支持パイプの上部に沿って支持パイプの一端側へ延出する断面半円弧状の添え板部と、
前記支持パイプに直交する方向に延長する吊架線を支持するために、前記添え板部の先端側上部に固着される吊架線支持滑車と、
前記上部の把持部材の上部に基端側が固着され、前記支持パイプに直交する方向に延出する張出部と、
この張出部の先端側に基端が固着され、前記支持パイプと平行に支持パイプの他端側へ延出するアーム部とを具備し、
前記曲線引金具は、基端において前記アーム部の先端側に固着され、前記支持パイプと平行にその一端側へ向かって斜め下方へ延出し、先端にトロリ線を把持するイヤーを具備し、
前記吊架線支持滑車は、前記曲線引金具におけるイヤーの上方位置に配置されることを特徴とする隧道内の電車線支持装置。
【請求項2】
前記支持金具の一対の把持部材は、上下に対向して前記支持パイプを包囲する半円弧状板部をそれぞれ有し、一端側において互いにヒンジ結合され、他端側においてボルトで締め付け可能に構成され、
前記添え板部は、前記上部の把持部材に連続するように、基端側において上部の把持部材の半円弧状端面に固着されることを特徴とする請求項1に記載の隧道内の電車線支持装置。
【請求項3】
前記吊架線支持滑車は、前記添え板部の先端側上部に添え板部の延長方向に相互間隔を置いて固着された一対のブラケット板間に一対の滑車と止めボルトとを取り付けてなり、
前記一対のブラケット板は、水平片と垂直片とを有するほぼ転倒T字状板で構成され、水平片の中央で前記添え板部に固着され、
前記滑車は、前記添え板部の両側に位置して、前記ブラケット板の水平片の両端部間に軸支され、添え板部の延長方向に直交する方向に延長する吊架線を乗せ受け可能に配置され、
前記止めボルトは、前記ブラケット板の垂直片の上端部間に挿通され、前記滑車上に乗せ受けられた吊架線を滑車との間に挟むように配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の隧道内の電車線支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−239029(P2008−239029A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−84516(P2007−84516)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000196587)西日本旅客鉄道株式会社 (202)
【出願人】(591048830)日本電設工業株式会社 (21)
【出願人】(000001890)三和テッキ株式会社 (134)