説明

雄スナップ及び雌スナップ

【課題】係合突起に適切かつ十分な弾性変形性能を与えて、連結強度を高めることができる金属製の雄スナップを提供する。
【解決手段】係合突起(20)を雌スナップ(3)の突起受入部(50)に着脱自在に係合させる金属製の雄スナップ(1)において、前記係合突起(20)に、比較的弾性変形し易い大変形部(26a)と、大変形部(26a)に比べ弾性変形し難い小変形部(26b)を円周方向に交互に設ける。また、大変形部(26a)の先端部に、小変形部(26b)の外側膨張部(24b)よりも半径方向外側に突出する高外側膨張部(24a)を設ける。大変形部(26a)は、係合突起(20)の上端から入れられた2本の縦スリット(25)と、これら縦スリットの下端間を連結する横スリット(27)とによって小変形部(26b)と区画される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スナップファスナを構成する雄スナップ及び雌スナップに関する。
【背景技術】
【0002】
スナップファスナは、雄スナップの係合突起を雌スナップの突起受入部に係合及び脱係合させるもので、衣類や袋物等の合わせ目に広く使用されている。一般に、雄スナップの係合突起の先端部には半径方向外側に膨らむ雄側膨張部が、雌スナップの突起受入部の開口端部には半径方向内側に膨らむ雌側膨張部がそれぞれ設けられ、初期状態(非変形状態)において、雄側膨張部の外径が雌側膨張部の内径よりも大きくなるように設定される。そして、係合突起及び/又は突起受入部に半径方向への弾性変形性能(バネ性)を与えることにより、雄スナップと雌スナップの係合及び脱係合時に、雄側膨張部と雌側膨張部が互いにかかわり合って、雄側膨張部が半径方向内側に及び/又は雌側膨張部が半径方向外側に弾性変形して、一時的に雄側膨張部の外径が雌側膨張部の内径と同じになり、雄側膨張部が雌側膨張部を越えると、雄側膨張部及び/又は雌側膨張部が復元(係合時には完全には復元しない場合もある)するようにされる。
【0003】
金属製の雄・雌スナップは、樹脂製のものに比べ上記弾性変形性能を持たせ難いため、例えば実公平2−21929号公報、実公平3−54566号公報等に開示されるように、雌スナップにC字形、M字形等のスプリング等の別部材を付加して、不足するバネ性を補うようにしたものが知られている。しかしながら、この場合、別部材を加える分、製造工程が増え、コストアップを招くといった問題があった。
【0004】
金属スナップにおいて、上記別部材を用いることなく着脱時の弾性変形性能を担持するため、係合突起や突起受入部に円周方向に複数のスリットを入れてバネ性を与えるものが知られている。(例えば、米国特許第1,732,837号明細書、米国特許第1,896,044号明細書等参照)。
【0005】
しかしながら、上記のようなスリットでは、適切なバネ性を得ることが難しく、例えば、スリットを係合突起の上端から根元付近まで入れると、弾性変形量は十分になるが、連結強度(あるいは離脱抵抗)が弱くなり、簡単に外れてしまうという問題があり、他方、スリットの入れ具合を短くすると、弾性変形量が不足し、着脱に要する力が大きくなりすぎる。
【特許文献1】実公平2−21929号公報
【特許文献2】実公平3−54566号公報
【特許文献3】米国特許第1,732,837号明細書
【特許文献4】米国特許第1,896,044号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような点に着目してなされたもので、その目的は、別部材を付加することなく、係合突起に適切かつ十分な弾性変形性能を与え、連結強度を高めることができる金属製の雄スナップを提供することにある。
【0007】
別の本発明の目的は、別部材を付加することなく、突起受入部に適切かつ十分な弾性変形性能を与え、連結強度を高めることができる金属製の雌スナップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明によれば、係合突起を雌スナップの突起受入部に着脱自在に係合させる金属製の雄スナップにおいて、前記係合突起に、係合突起の他の部分(当該大変形部以外の部分)に比べ半径方向に弾性変形し易い大変形部を円周方向所定角度間隔に複数設け、前記大変形部の先端部に、係合突起の前記他の部分の先端部よりも半径方向外側に突出する高外側膨張部を設けたことを特徴とする雄スナップが提供される。
【0009】
本発明では、金属製の雄スナップにおける係合突起に、半径方向に弾性変形し易い大変形部を円周方向所定角度間隔に複数設けたため、係合突起は、円周方向において、大変形部と、大変形部に比べ半径方向に弾性変形し難い他の部分(小変形部)とが交互に配置されて構成される。ここで、仮に係合突起全体が大変形部と同じ弾性変形性能を有している場合、雌スナップの突起受入部への着脱は容易であるが連結強度は低くなり、また、仮に係合突起全体が小変形部と同じ弾性変形性能を有している場合、雌スナップの突起受入部への着脱が大きな力を要して面倒になるが連結強度は高まる。本発明では、係合突起において大変形部と小変形部とが円周方向に交互に並ぶことにより、大変形部のみの場合の上記欠点(低連結強度)を小変形部が緩和し、小変形部のみの場合の上記欠点(着脱が面倒)を大変形部が緩和する。
【0010】
本発明では更に、大変形部の先端部に、小変形部の先端部よりも半径方向外側に膨らむ高外側膨張部を設けたことにより、雄スナップと雌スナップの連結時において、係合突起大変形部の高外側膨張部と雌側膨張部の引っ掛かりが大きくなって、上記した大変形部のみの場合の欠点である低連結強度を補い、離脱抵抗を高める。
【0011】
本発明において、円周方向における大変形部の設置数としては、3〜8個程度が望ましいが、それ以上であってもよい。
【0012】
本発明の雄スナップを構成する金属としては、真鍮、銅合金、ステンレス等のばね性を有した金属を好ましく挙げることができる。
【0013】
本発明の一実施形態において、前記係合突起の他の部分(小変形部)は、その先端部に、前記高外側膨張部よりも半径方向外側への突出高が低い低外側膨部を有する。
【0014】
本発明の一実施形態において、前記大変形部は、係合突起の上端から入れられた縦スリットによって前記他の部分(小変形部)と円周方向に区画される。
【0015】
本発明の更に別の実施形態において、前記係合突起は、外側筒部と、内側筒部と、これら外側筒部及び内側筒部の上端間を連結する上端連結部とを含み、前記縦スリットは、上端連結部を通って外側筒部及び内側筒部に対して入れられ、外側筒部において、前記各大変形部の左右両側を規定する2本の縦スリットの下端間を連結する横スリットを含む。
【0016】
別の本発明によれば、雄スナップの係合突起を突起受入部に着脱自在に受け入れる金属製の雌スナップにおいて、前記突起受入部の外周を規定する受入部側部に、受入部側部の他の部分に比べ半径方向に比較的弾性変形し易い大変形部を円周方向所定角度間隔に複数設け、前記大変形部の開口端部(雄スナップ側の端部)に、受入部側部の前記他の部分の開口端部よりも半径方向内側に突出する高内側膨張部を設けたことを特徴とする雌スナップが提供される。
【0017】
本発明では、金属製の雌スナップにおける突起受入部の外周を規定する受入部側部に、半径方向に弾性変形し易い大変形部を円周方向所定間隔に複数設けたため、受入部側部は、円周方向において、大変形部と、大変形部に比べ変形方向に弾性変形し難い他の部分(非変形部もしくは小変形部)とが交互に配置されて構成される。ここで、仮に受入部側部全体が大変形部と同じ弾性変形性能を有している場合、雄スナップの係合突起(係合突起はほとんど弾性変形しないと仮定する)の脱着は容易であるが連結強度は低くなり、また、仮に受入部側部全体が非変形部と同じ弾性変形性能を有している場合、雄スナップの係合突起の着脱が大きな力を要して面倒になるが連結強度は高まる。本発明では、受入部側部において大変形部と非変形部とが円周方向に交互に並ぶことにより、大変形部のみの場合の上記欠点(低連結強度)を非変形部が緩和し、非変形部のみの場合の上記欠点(着脱が面倒)を大変形部が緩和する。
【0018】
本発明では更に、大変形部の開口端部に、非変形部の開口端部よりも半径方向内側に膨らむ高内側膨張部を設けたことにより、雌スナップと雄スナップの連結時において、受入部側部の大変形部の高内側膨張部と雄側膨張部の引っ掛かりが大きくなって、上記した大変形部のみの場合の欠点である低連結強度を補い、離脱抵抗を高める。
【0019】
本発明において、円周方向における大変形部の設置数としては、3〜8個程度が望ましいが、それ以上であってもよい。
【0020】
本発明の雌スナップを構成する金属としては、真鍮、銅合金、ステンレス等のばね性を有した金属を好ましく挙げることができる。
【0021】
本発明の一実施形態において、前記受入部側部の他の部分(非変形部)は、その開口端部に、前記高内側膨張部よりも半径方向内側への突出高が低い低内側膨張部を有する。
【0022】
本発明の一実施形態において、前記大変形部は、受入部側部と受入部側部に隣接する外周部とに入れられた縦スリットによって前記他の部分と区画される。
【0023】
本発明の更に別の実施形態では、前記外周部において、前記各大変形部の左右両側を規定する2本の縦スリットの終端間を連結する横スリットを含む。
【発明の効果】
【0024】
本発明では、金属製の雄スナップにおいて、スプリング等の別部材を付加することなく、係合突起に適切で十分な弾性変形性能を与えて、雌スナップとの連結強度を高くすることができ、特に、雄・雌スナップを互いに水平に引っ張るような力(横引き力)に対して、大変形部の高外側膨張部が雌側膨張部に引っ掛かり、高い離脱抵抗を発揮する。
【0025】
別の本発明では、金属製の雌スナップにおいて、スプリング等の別部材を付加することなく、突起受入部の受入側部に適切で十分な弾性変形性能を与えて、雄スナップとの連結強度を高くすることができ、特に、雌・雄スナップを互いに水平に引っ張るような力(横引き力)に対して、大変形部の高内側膨張部が雄側膨張部に引っ掛かり、高い離脱抵抗を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の好適な実施形態に係る雄スナップと雌スナップを図面に基づいて説明する(なお、上下左右等の方向は参照中の図面に基づく)。図1及び2は、雄スナップ1の斜視図及び平面図であり、図3は図2のA−A線から破断して後方を見る破断説明図である。雄スナップ1は、真鍮製の板部材をプレス加工して形成されるもので、円形状のベース10と、ベース10から上方に突出する円筒状の係合突起20とを有する。係合突起20は、図3から分かるように、外側筒部21と、内側筒部22と、これら外内筒部21、22の上端間を連結する上端連結部23とから成り、上端連結部23は、外側筒部21の外側面よりも半径方向外側に円弧状に突出する外側膨張部24(24a、24b)を形成する。ベース10は、係合突起20の外側筒部21の下端から半径方向外側に延びるフランジ部11と、係合突起20の内側筒部22の下端から半径方向内側に延びる内側ベース部12とから成り、内側ベース部12には、雄スナップ1を生地c(図4参照)へ取り付ける際にアイレット等の取付部材の一部を受け入れるための開口13が設けられる。なお、内側ベース部12がフランジ部11よりも若干低くなっている。
【0027】
係合突起20は、その上端から一例として円周方向45度間隔で八本入れられた縦スリット25によって八つの突起セグメント26(26a、26b)に区分される。各縦スリット25は、上端連結部23及び外内筒部21、22の各厚さを貫通して、ベース10からの係合突起20の高さの約半分の高さまで設けられている。そのため、係合突起20の外側筒部21及び内側筒部22それぞれの下方部分には、縦スリット25が到達しない無スリット部分21’、22’(図3参照)が係合突起20の約1/2高さで存在する。なお、各縦スリット25がベース10付近まで深く入れられると、ベース10の強度が低下し、雄スナップ1の生地c(図4参照)への取り付け時にベース10が変形するおそれが生じるが、上述した無スリット部分21’、22’の存在により、そのようなベース10の強度の低下や変形を防ぐことができる。他方、各縦スリット25の深さが浅く係合突起20の上端付近で止まると、係合突起20に必要な弾性変形性能が得られないおそれがあるが、縦スリット25を係合突起20の約1/2高さまで入れることにより、所要のバネ性を確保することができる。八つの突起セグメント26のうち、円周方向一つおきの四つの突起セグメント26aには更に、これら各セグメント26aを規定する左右二つの縦スリット25、25の外側筒部21における終端間に横スリット27が外側筒部21の厚さを貫通して入れられる。この横スリット27によって、当該四つの突起セグメント26aは、外側筒部21が上下に分断され、ベース10(内側ベース部12)に対し内側筒部22のみで連結する。他方、残りの四つの突起セグメント26bは、外内筒部21、22の両方を介してベース10(フランジ部11及び内側ベース部12)に連結する。そのため、横スリット入りセグメント26aは、同一の力による半径方向内外への弾性変形が横スリットの無いセグメント26bよりも大きくなる。以下、横スリット入り突起セグメント(26a)を「大変形セグメント」、横スリットの無い突起セグメント(26b)を「小変形セグメント」という。大変形セグメント26aはまた、その膨張部(高外側膨張部)24aが、小変形セグメント26bの膨張部(低外側膨張部)24bよりも半径方向外側に若干突出するように形成される。
【0028】
以上の雄スナップ1は、後に述べる本発明に係る雌スナップ2に対しても使用可能であるが、通常は、従来からある雌スナップに対して使用する。図4は、雄スナップ1を従来の雌スナップ3に係合した状態を示す縦断面説明図である(図4において、説明の便宜のため、右方に大変形セグメント26aを、左方に小変形セグメント26bを表している)。なお、雌スナップ3は、雄スナップ1の係合突起10を受け入れる突起受入部50を有し、突起受入部50の開口端部(図4において突起受入部50の上端部)に半径方向内側に膨らむ内側膨張部51が設けられている。また、雄スナップ1及び雌スナップ3は共に、リベット5、5’の軸部6,6’を生地c、c’に貫通させた後、雄・雌スナップ1、3側で加締めることにより、生地c、c’に取り付けられている。
【0029】
図5は、雌スナップ3の突起受入部50に対し雄スナップ1の係合突起10を同心状に突き合わせた係合直前の状態を概略的に示し、係合突起10において内側筒部21、外側筒部22及び上端連結部23の区分を省略している。この図から分かるように、初期状態(非変形状態)において、係合突起10の大変形セグメント26aの高外側膨張部24aは、雌スナップ3の内側膨張部(雌側膨張部)51とのオーバーラップ部分Dが、小変形セグメント26bの低外側膨張部24bの雌側膨張部51とのオーバーラップ部分dよりも大きく、小変形セグメント膨張部24bの外径は雌側膨張部51の内径とほぼ同じである(該内径よりもわずかに大きい)。そのため、雄・雌スナップ1、3の係合時において、まず、係合突起10の外側膨張部24a、24bが雌側膨張部51とかかわり合って、大変形セグメント26aが小変形セグメント26bよりも大きく半径方向内側に撓み、雌側膨張部51を越えると、大変形セグメント26a及び小変形セグメント26bは半径方向外側へと復元し(大変形セグメント26aは完全には復元しない)、係合突起10と突起受入部50の連結が完了する(図4)。
【0030】
雄スナップ1では、大変形セグメント26aと小変形セグメント26bとが円周方向に交互に並ぶことにより、いずれか一方のみの場合に生じ得る低連結強度や着脱の面倒さが緩和され、更に、大変形セグメント26aの高外側膨張部24aと雌側膨張部51の引っ掛かりが大きく、連結強度を高めることができる。また、高外側膨張部24aと低外側膨張部24bが円周方向に交互に来るため、突起受入部50内における係合突起10の回転方向への変位が生じにくくなる。そのため、例えば、雄・雌スナップ1、3に互いを水平に引っ張るような力(横引き力)が働いた場合、大変形セグメント26aの高外側膨張部24aが弾性変形しつつ雌側膨張部51との引っ掛かりを保つ等により、雄・雌スナップ1、3の容易な離脱を阻止する。
【0031】
次に本発明の一実施形態に係る雌スナップ2について説明する。図6及び7は、雌スナップ2の斜視図及び平面図であり、図8及び9は、図7のB−B線及びB’−B’線からそれぞれ破断して後方を見る破断説明図である。雌スナップ2は、真鍮製板をプレス加工して成る雌スナップ本体30の中央に、雄スナップ(上述した本発明に係る雄スナップ1でもよいが一般に従来品)の係合突起を着脱自在に受け入れる凹状の空間である突起受入部40を有する。スナップ本体30は、雌スナップ2の厚さ(高さ)を規定する、突起受入部40から半径方向外側の外周部31と、突起受入部40の外周を規定する内側筒部32と、突起受入部40の底となる内側ベース部33とから成り、内側ベース部33には、雌スナップ2を生地c(図10参照)へ取り付ける際にアイレット等の取付部材の一部を受け入れるための開口34が設けられる。また、外周部31は、半径方向最も外側の外側筒部31aと、外側筒部31aの上端から高さを増しながら半径方向内側へと延びる傾斜部31bと、傾斜部31bの半径方向内側端から更に半径方向内側へと水平に延び、内側筒部32の上端に繋がる平坦上部31cとを含む。更に、内側筒部32の上端部には、半径方向内側に円弧状に突出する内側膨張部35(35a、35b)が形成される。
【0032】
雌スナップ2の内側筒部32には、一例として円周方向60度間隔で六つの大変形部36aが形成される。各大変形部36aは、内側筒部32の下端付近から上方の平坦上部31cの途中にまで及ぶ逆U字形のスリット37、すなわち、内側筒部32を経て平坦上部31cの中間付近まで至る一組の平行な縦スリット37aと、縦スリット37aの平坦上部31cにおける終端間を連結する円弧状スリット(横スリット)37bとにより、内側筒部32の残りの部分(以下「非変形部36b」という)から断ち切られて成る。大変形部36aは内側ベース部33とのみ連結し、内側ベース部33との境界からわずかに半径方向内側に倒されていて、非変形部36bに比べ格段に半径方向に弾性変形し易い(非変形部36bもわずかに弾性変形する)。また、大変形部36aの内側膨張部(高内側膨張部)35aは、非変形部36bの内側膨張部(低内側膨張部)35bよりも半径方向内側に若干突出している。
【0033】
以上の雌スナップ2は、上述した本発明に係る雄スナップ1に対しても使用可能であるが、通常は、従来からある雄スナップに対して使用する。図10は、雌スナップ2が従来の雄スナップ4に係合した状態を示す縦断面説明図である(図10において、説明の便宜のため、左方に大変形部36aを、右方に非変形部36bを表している)。なお、雄スナップ4は、雌スナップ2の突起受入部40に係合させる係合突起60を有し、係合突起60の先端部(図10において係合突起60の下端部)に半径方向外側に膨らむ外側膨張部61が設けられている。また、雌スナップ2及び雄スナップ4は共に、リベット5、5’の軸部6,6’を生地c、c’に貫通させた後、雌・雄スナップ2、4側で加締めることにより、生地c、c’に取り付けられている。
【0034】
図11は、雌スナップ2の突起受入部40に対し雄スナップ4の係合突起60を同心状に突き合わせた係合直前の状態を概略的に示し、係合突起60における内外筒部等の区分を省略している。この図から分かるように、初期状態(非変形状態)において、雌スナップ2の大変形部36aの高内側膨張部35aは、雄スナップ4の外側膨張部(雄側膨張部)61とのオーバーラップ部分Dが、非変形部36bの低内側膨張部35bの雄側膨張部61とのオーバーラップ部分dよりも大きく、非変形部36bの内径は雄側膨張部61の外径とほぼ同じである(該外径よりもわずかに大きい)。そのため、雌・雄スナップ2、4の係合時において、まず、雌スナップ2の内側膨張部35a、35bが雄側膨張部61とかかわり合って、大変形部36aが非変形部36bよりも大きく半径方向外側に撓み、雄側膨張部61が内側膨張部35a、35bを越えると、大変形部36aは半径方向内側へと復元し(大変形部36aが完全には復元しない場合もある)、係合突起61と突起受入部40の連結が完了する(図10)。
【0035】
雄スナップ2では、大変形部部36aと非変形部36bとが円周方向に交互に並ぶことにより、いずれか一方のみの場合に生じ得る低連結強度や着脱の面倒さが緩和され、更に、大変形部36aの高内側膨張部35aと雄側膨張部61の引っ掛かりが大きく、連結強度を高めることができる。また、高内側膨張部35aと低内側膨張部35bが円周方向に交互に来るため、雌スナップ2の雄スナップ4に対する相対的回転が生じにくくなる。そのため、例えば、雌・雄スナップ2、4に互いを水平に引っ張るような力(横引き力)が働いた場合、大変形部36aの高内側膨張部35aが弾性変形しつつ雄側膨張部61との引っ掛かりを保つ等により、雌・雄スナップ2、4の容易な離脱を阻止する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態に係る雄スナップの斜視図である。
【図2】図1の雄スナップの平面図である。
【図3】図2のA−A線から破断して後方を見る破断説明図である。
【図4】本発明に係る雄スナップと従来の雌スナップの係合状態を示す縦断面説明図である。
【図5】本発明に係る雄スナップと従来の雌スナップの係合直前の状態を示す概略部分説明図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る雌スナップの斜視図である。
【図7】図6の雌スナップの平面図である。
【図8】図6のB−B線から破断して後方を見る破断説明図である。
【図9】図6のB’−B’線から破断して後方を見る破断説明図である。
【図10】本発明に係る雄スナップと従来の雌スナップの係合状態を示す縦断面説明図である。
【図11】本発明に係る雌スナップと従来の雄スナップの係合直前の状態を示す概略部分説明図である。
【符号の説明】
【0037】
1 雄スナップ
2 雌スナップ
20 係合突起
24a 高外側膨張部
24b 低外側膨張部
25 縦スリット
26a 大変形セグメント
26b 小変形セグメント
27 横スリット
30 雌スナップ本体
32 内側筒部
40 突起受入部
35a 高内側膨張部
35b 低内側膨張部
36a 大変形部
36b 非変形部
37a 縦スリット
37b 円弧状スリット(横スリット)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
係合突起(20)を雌スナップ(3)の突起受入部(50)に着脱自在に係合させる金属製の雄スナップ(1)において、
前記係合突起(20)に、係合突起(20)の他の部分(26b)に比べ半径方向に弾性変形し易い大変形部(26a)を円周方向所定角度間隔に複数設け、
前記大変形部(26a)の先端部に、係合突起(20)の前記他の部分(26b)の先端部よりも半径方向外側に突出する高外側膨張部(24a)を設けたことを特徴とする雄スナップ。
【請求項2】
前記係合突起(20)の他の部分(26b)は、その先端部に、前記高外側膨張部(24a)よりも半径方向外側への突出高が低い低外側膨張部(24b)を有する請求項1の雄スナップ。
【請求項3】
前記各大変形部(26a)は、係合突起(20)の上端から入れられた縦スリット(25)によって前記他の部分(26b)と円周方向に区画される請求項1又は2の雄スナップ。
【請求項4】
前記係合突起(20)は、外側筒部(21)と、内側筒部(22)と、これら外側筒部(21)及び内側筒部(22)の上端間を連結する上端連結部(23)とを含み、前記縦スリット(25)は、上端連結部(23)を通って外側筒部(21)及び内側筒部(22)に対して入れられ、外側筒部(22)において、前記各大変形部(26a)の左右両側を規定する2本の縦スリット(25)の下端間を連結する横スリット(27)を含む請求項3の雄スナップ。
【請求項5】
雄スナップ(4)の係合突起(60)を突起受入部(40)に着脱自在に受け入れる金属製の雌スナップ(2)において、
前記突起受入部(40)の外周を規定する受入部側部(32)に、受入部側部(32)の他の部分(36b)に比べ半径方向に比較的弾性変形し易い大変形部(36a)を円周方向所定角度間隔に複数設け、
前記大変形部(36a)の開口端部に、受入部側部(32)の前記他の部分(36b)の開口端部よりも半径方向内側に突出する高内側膨張部(35a)を設けたことを特徴とする雌スナップ。
【請求項6】
前記受入部側部(32)の他の部分(36b)は、その開口端部に、前記高内側膨張部(35a)よりも半径方向内側への突出高が低い低内側膨張部(35b)を有する請求項5の雌スナップ。
【請求項7】
前記各大変形部(36a)は、受入部側部(32)と受入部側部(32)に隣接する外周部(31)とに入れられた縦スリット(37a)によって前記他の部分(36b)と円周方向に区画される請求項5又は6の雌スナップ。
【請求項8】
前記外周部(31)において、前記各大変形部(36b)の左右両側を規定する2本の縦スリット(37a)の終端間を連結する横スリット(37b)を含む請求項7の雌スナップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−207525(P2009−207525A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−50579(P2008−50579)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000006828)YKK株式会社 (263)
【Fターム(参考)】