説明

雄型スナップ

【課題】一枚の金属板から形成することができ、半径方向の小型化が図りやすく、取付部材の一部を受けさせる部分を別途付加する必要のない雄型スナップを提供する。
【解決手段】雄型スナップ(10、10’)を、ベース上部(11a)及びベース下部(11b)を含む二重構造のベース部(11)と、ベース部(11)から上方に突出する、雌型スナップ(20)側に受け入れさせる一重板構造の突起部(12)と、突起部(12)の先端から延びて半径方向外側に膨出する係止部(13、13’)とを含むように一枚の金属板から絞り加工によって形成する。ベース上部(11a)は、突起部(12)の基端から半径方向内側に延びて、雄型スナップ(10、10’)の生地(1)への取り付け時に取付部材(30)の加締め部分(33)を受け、ベース下部(11b)は、ベース下部(11a)の半径方向内側端から下方に反転して半径方向外側へと延び、取り付け時に生地(1)と接触する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服の合わせ目等に用いるスナップボタンにおける雄型スナップ、特に金属製の雄型スナップに関する。
【背景技術】
【0002】
金属製の雄型スナップとして、従来から、一枚の金属板を絞り加工して形成されるものが知られている。このような雄型スナップは、米国特許第1,896,044号明細書、特開2006−68388号公報等に開示されるように、雌型スナップ側に受け入れさせる円筒状の突起部が、一般に、内側円筒部と外側円筒部とから成る二重構造とされる。そして、内側円筒部の基端(下端)から半径方向内側に延びる部分が、雄型スナップの生地への取り付け時にリベット等の取付部材の加締め部分を受け止める役割を担い、他方、内側円筒部の基端から半径方向外側に延びる部分は、取り付け時に生地反対側の取付部材の円板状ベース部との間で生地を挟み付ける機能を果たす。かかる二重構造の突起部では、その径サイズを小型化しようとする場合に、内外円筒部とその間の間隔を確保する必要があるため、径の縮小に制限があった。
【0003】
別の金属製雄型スナップとしては、米国特許第1,782,164号明細書に、突起部の先端部のみを二重状にして成るものが開示されている。この雄型スナップでは、突起部先端部を半径方向外側に膨出させて、この部分を、雌型スナップとの係合時に雌側のばねリング(12)に係止させるようにしている。この雄型スナップの突起部では、先に述べた二重構造突起部に比べ、半径方向の小型化を図りやすいが、生地への取り付け時に、取付部材の加締め部分を受けさせる部分(及び/又は取付部材ベース部との間で生地を挟み付ける部分)を、別個の金属板を用いて付加する必要があった。
【特許文献1】米国特許第1,896,044号明細書
【特許文献2】特開2006−68388号公報
【特許文献3】米国特許第1,782,164号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、以上の点に着目してなされたもので、その目的は、一枚の金属板から形成することができ、半径方向の小型化が図りやすく、取付部材の一部を受けさせる部分を別途付加する必要のない雄型スナップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、金属製の雄型スナップであって、ベース部と、ベース部から突出する、雌型スナップ側に受け入れさせる突起部にして、円筒状の金属板部が半径方向に単一となる非二重構造の突起部と、ベース部の中央に開口する開口部とを備え、前記ベース部は、突起部の基端から半径方向内側に延びて前記開口部を規定し、雄型スナップの生地への取り付け時に取付部材の一部を受けるベース上部と、ベース上部の半径方向内側端から下方に反転して半径方向外側へと突起部を超えて延びるベース下部とを含む雄型スナップが提供される。
【0006】
本発明では、雄型スナップの突起部が一重板構造のため、二重構造の突起部の場合のように二枚分の板厚や内外筒間の間隔を確保する必要がなく、突起部の径の小型化を容易に実現することができる。
【0007】
本発明ではまた、ベース部が突起部の基端から半径方向内側に延びるベース上部とベース上部の半径方向内側端から下方に反転して半径方向外側へと延びるベース上部とを含み、ベース上部にてスナップの生地への取り付け時に取付部材の変形部分を受け止めさせることができ、また、ベース下部は、雄型スナップの生地への取り付け時に取付部材のベース部との間で生地を挟み付ける役割を果たし、突起部より半径方向内側に入り込んでいる分、生地との接触面積を拡大することができる。
【0008】
本発明の一実施形態は、突起部の先端から延びて半径方向外側に膨出する係止部を更に備える。この係止部は、雄型スナップの突起部が雌型スナップの凹部と係合した際、雌型スナップ側の係止部(例えば、C字形ばね、M字形ばね、上記凹部を規定する面から半径方向内側に膨出する弾性変形可能な部分等)に引っ掛かり、雄雌スナップ間の離脱抵抗を高める役割を果たすことができる。
【0009】
本発明において、雄型スナップは一枚の金属板を絞り成形によって得ることができる。金属の具体例としては、真鍮、銅合金、ステンレス、アルミニウム等を好ましく挙げることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る雄型スナップは、突起部が一重板構造のため半径方向の小型化が図りやすく、ベース部が、生地への固定時に取付部材の一部を受けるベース上部を含むため、取付部材との係合のために別部材を付加する必要はなく、これら突起部及びベース部を含み、一枚の金属板から形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を添付図面に基づいて詳述する。図1は、本発明の一実施形態に係る雄型スナップ10を一部破断した斜視図であり、図2は図1の雄型スナップ10の縦断面である。雄型スナップ10は、一枚の金属板を絞り加工して形成されるもので、ほぼ円板状のベース部11と、ベース部11から上方へと突出する一重板円筒構造の突起部12と、突起部12の上端から半径方向外側次いで下方へと縦断面円弧状に膨らんで終端する係止部13と、ベース部11の中央に配置され、ベース部11を上下方向に貫通し、円形に開口する開口部14とを備えている。ベース部11は、突起部12の下端から半径方向内側に延びて開口部14を規定するベース上部11aと、ベース上部11aの半径方向内側端から下方に縦断面U字状に反転して半径方向外側へと向かい、突起部12を超えて外側へと延びるベース下部11bとを含む。詳しくは後述するが、係止部13は、雄型スナップ10の雌型スナップ20(図3参照)との係合時に雌側係止部(図3においてC字形ばね22)によって係止される部分であり、ベース上部11aは、雄型スナップ10の生地1(図3参照)への取り付け時に取付部材30の加締め部分33を受け止める部分である。
【0012】
図3は、生地1に取り付けた雄型スナップ10を雌型スナップ20と係合させた状態を示す縦断面図である。雄型スナップ10の生地1への取り付けは、雄型スナップ10を保持させる上方ダイ及び取付部材を載置する下方ダイを有するプレス装置(図示せず)を用いて行われ、生地1に貫通させた取付部材30の軸部32を開口部14から雄型スナップ10の内部に入り込ませ、次いで、軸部32の先端部33を、ベース上部11aに対して加締める。これにより、雄型スナップ10は生地1に固定される。このとき、ベース上部11aは、軸部32の加締め部分すなわち先端部33と接して、加締め部分33からの押圧力を受けているので、生地1は、雄型スナップ1のベース下部11bと取付部材30のベース部31との間に挟み付けられる。なお、ベース部11がベース上下部11a、11bを含む二重構造に形成され、ベース下部11bが突起部12より半径方向内側に延びているため、雄型スナップ10における生地11と接触する部分(ベース下部11b)が従来の雄型スナップに比べて拡張されている。
【0013】
図3において、雌型スナップ20も生地2に取付部材40によって取り付けられた状態であり、雌型スナップ20は、雄型スナップ10の突起部12を受け入れる凹部21と、凹部21内に収容されたC字形のばね(雌側係止部)22とを含む。かかる雌型スナップ20の凹部21に雄型スナップ10の突起部12を挿入する際、まず、係止部13がばね22と接触して半径方向内側に弾性変形し(同時にばね22も半径方向外側に弾性変形し得る)、ばね22を越えると係止部13が半径方向外側に復元して(完全には復元しない場合もある)、雄型スナップ10と雌型スナップ20の係合が完了する。この係合状態において、係止部13は、ばね22に引っ掛かり、雄雌スナップ10、20間の離脱抵抗となる。なお、雌側係止部は、C字ばね22以外に、M字形等のばねや凹部21の側面から半径方向内側に膨出する部分である場合もある。
【0014】
図4は、別の形態の係止部13’を有する本発明の雄型スナップ10’を示し、係止部13’以外は上述した雄型スナップ10と同様であるため、同じ参照番号を付している。先の雄型スナップ10の係止部13(図2参照)が、突起部12の上端から半径方向外側次いで下方へと湾曲して、突起部12より半径方向外側で終端しているのに対し、雄型スナップ10’の係止部13’は、突起部12の上端から上方へと半径方向外側に縦断面円弧状に膨らみ、最上点で突起部12のほぼ延長線上に戻り、最上点から突起部12の半径方向内側次いで下方へと縦断面円弧状に湾曲して、突起部12より半径方向内側で終端する。かかる係止部13’もその半径方向外側に膨らむ部分によって係止部13と同様に、雌型係止部と関わり合うことができる。
【0015】
以上の雄型スナップ10、10’は、いずれも一枚の金属板を絞り加工して得ることができ、一重構造の突起部12の径サイズの縮小が容易で、取付部材30の加締め部分33を、突起部12の下端から半径方向内側に延びるベース上部11aで受けることができるため、加締め部分33を受けさせる別部材を付加する必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る雄型スナップの一部破断斜視図である。
【図2】図1の雄型スナップの縦断面図である。
【図3】生地に取り付けた図1の雄型スナップを雌型スナップに係合させた状態を示す縦断面図である。
【図4】本発明の別の実施形態に係る雄型スナップの縦断面図である。
【符号の説明】
【0017】
10、10’ 雄型スナップ
11 ベース部
11a ベース上部
11b ベース下部
12 突起部
13、13’ 係止部
14 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の雄型スナップ(10、10’)であって、ベース部(11)と、ベース部(11)から突出する、雌型スナップ(20)側に受け入れさせる突起部(12)にして、円筒状の金属板部が半径方向に単一となる非二重構造の突起部(12)と、ベース部(11)の中央に開口する開口部(14)とを備え、
前記ベース部(11)は、突起部(12)の基端から半径方向内側に延びて前記開口部(14)を規定し、雄型スナップ(10、10’)の生地(1)への取り付け時に取付部材(30)の一部(32)を受けるベース上部(11a)と、ベース上部(11a)の半径方向内側端から下方に反転して半径方向外側へと突起部(12)を超えて延びるベース下部(11b)とを含む雄型スナップ。
【請求項2】
突起部(12)の先端から延びて半径方向外側に膨出する係止部(13、13’)を更に備える請求項1の雄型スナップ。
【請求項3】
前記雄型スナップ(10、10’)は一枚の金属板から形成される請求項1又は2の雄型スナップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−57759(P2010−57759A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−227434(P2008−227434)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(000006828)YKK株式会社 (263)
【Fターム(参考)】