説明

集光素子、集光素子アレイ、露光装置及び画像形成装置

【課題】発光素子から射出された読み出し光をホログラム素子で回折して被露光面に集光する場合に、参照光の拡がり角に拘わらず大きなホログラム素子の形成を可能として、光利用効率を向上させると共に、作動距離を長くすることができる集光素子、集光素子アレイ、露光装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】複数の発光素子が予め定めた方向に並ぶように配列された発光素子アレイと、複数の発光素子の各々から射出された各光の光路を変更する光路変更手段と、変更された前記光路上に配置されたホログラム記録層であって、複数の発光素子に対応して照射された各光を回折して予め定めた作動距離だけ離間された被露光面に集光する複数のホログラム素子が記録され、被露光面に形成される複数の集光点が予め定めた方向に並ぶように複数のホログラム素子が多重記録されたホログラム記録層と、を備えた露光装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集光素子、集光素子アレイ、露光装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、画像を多数の微小な画素に分割し、一つもしくは複数の光源から各画素の濃度に対応した強度の光束を射出し、当該光束による輝点を、閾値以上の光量密度の光が照射されることにより、感光して表面電位変化や化学的変化等の潜像が形成される、又は感光して濃度変化を持つ画像が形成される画像記録媒体の上に走査して、各画素領域を順次感光させることにより画像を書込む光書込み装置において、前記光源と前記画像記録媒体との間であって光源側から順に、光束を集束させる光集束素子部と、光束が集束する位置に設けられた微小な光学的開口部と、該光学的開口部より射出した光束をおおむね平行な光束とするコリメータ部と、光束を複数の方向へ分解して放射すると共に複数の光束をおおむね同一の平面上に集束させるホログラム素子と、を配列された一つのユニットを、主走査方向に画素数と同数のアレイ状に配置したことを特徴とする光書込み装置が記載されている。
【0003】
特許文献2には、光源基板上に配列された複数の発光素子と、透過する光を回折させることにより当該光の光線束を収束させて像を結ぶ複数の回折正レンズを有する第1レンズアレイと、複数のレンズを有し、前記複数の発光素子の各々との間に前記第1レンズアレイを挟む第2レンズアレイとを備え、前記複数の回折正レンズの各々は、前記光源基板に垂直な方向において前記複数の発光素子の各々に重なっていることを特徴とする露光装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−330058号公報
【特許文献2】特開2007−237576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、発光素子から射出された読み出し光をホログラム素子で回折して被露光面に集光する場合に、参照光の拡がり角に拘わらず大きなホログラム素子の形成を可能として、光利用効率を向上させると共に、作動距離を長くすることができる集光素子、集光素子アレイ、露光装置及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、光を射出する発光素子と、前記発光素子から射出された光の光路を変更する光路変更手段と、前記光路変更手段で変更された光路上に配置され、照射された光を回折して予め定めた作動距離だけ離間された被露光面に集光するホログラム素子が記録されたホログラム記録層と、を備えた集光素子である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の集光素子が一次元状又は二次元状に複数配列された集光素子アレイである。
【0008】
請求項3に記載の発明は、複数の発光素子が予め定めた方向に並ぶように配列された発光素子アレイと、複数の発光素子の各々から射出された各光の光路を変更する光路変更手段と、前記光路変更手段で変更された光路上に配置されたホログラム記録層であって、複数の発光素子に対応して照射された各光を回折して予め定めた作動距離だけ離間された被露光面に集光する複数のホログラム素子が記録され、前記被露光面に形成される複数の集光点が前記予め定めた方向に並ぶように前記複数のホログラム素子が多重記録されたホログラム記録層と、を備えた露光装置である。
【0009】
請求項4に記載の発明は、前記複数のホログラム素子の各々が、回折光として再生される信号光と該信号光と交差する参照光との干渉により記録され、前記ホログラム記録層に対する前記信号光の入射角θsと前記ホログラム記録層に対する前記参照光の入射角θrとが下記式(1)を満たす、請求項3に記載の露光装置である。
0°<θr+θs≦90°・・・(1)
【0010】
請求項5に記載の発明は、前記信号光の光軸と前記参照光の光軸とが直交する、請求項4に記載の露光装置である。
【0011】
請求項6に記載の発明は、前記光路変更手段が、前記発光素子から射出された光を反射する平面又は曲面の反射面を備えた反射鏡である、請求項3から請求項5までの何れか1項に記載の露光装置である。
【0012】
請求項7に記載の発明は、前記光路変更手段と前記ホログラム記録層とが一体に形成された、請求項3から請求項6までの何れか1項に記載の露光装置である。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項3から請求項7までの何れか1項に記載の露光装置と、前記露光装置と予め定めた作動距離だけ離間された被露光面を備え、画像データに応じて前記露光装置により前記予め定めた方向に主走査されて画像が記録される感光性の画像記録媒体と、を含む画像形成装置である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、発光素子から射出された読み出し光をホログラム素子で回折して被露光面に集光する場合に、参照光の拡がり角に拘わらず大きなホログラム素子の形成を可能として、光利用効率を向上させると共に、作動距離を長くすることができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、アレイ化しても、発光素子から射出された読み出し光をホログラム素子で回折して被露光面に集光する場合に、参照光の拡がり角に拘わらず大きなホログラム素子の形成を可能として、光利用効率を向上させると共に、作動距離を長くすることができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、複数の発光素子から射出された読み出し光を対応するホログラム素子で回折して被露光面に集光する場合に、参照光の拡がり角に拘わらず大きなホログラム素子の形成を可能として、光利用効率を向上させると共に、作動距離を長くすることができる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、信号光と参照光との交差角を大きくすることができ、シフト選択性の向上によりクロストークを抑制することができる。また、回折光と透過参照光との交差角を大きくすることができ、背景雑音となる透過参照光の遮断が容易になる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、信号光と参照光との交差角を最大にすることができ、クロストークを更に抑制できると共に、背景雑音となる透過参照光の遮断が更に容易になる。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、簡易な構成で光路を自在に変更することができ、装置の小型化を図ることができる。
【0020】
請求項7に記載の発明によれば、光路変更手段の位置が固定され、事後的な位置合わせが不要となる。
【0021】
請求項8に記載の発明によれば、露光装置の複数の発光素子から射出された読み出し光を対応するホログラム素子で回折して被露光面に集光する場合に、参照光の拡がり角に拘わらず大きなホログラム素子の形成を可能として、光利用効率を向上させると共に、作動距離を長くすることができ、画像形成装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の構成の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るLEDプリントヘッドの構成の一例を示す概略斜視図である。
【図3】(A)はホログラム素子の概略形状を示す斜視図である。(B)はLEDプリントヘッドの副走査方向の断面図である。(C)はLEDプリントヘッドの主走査方向のA-A線での断面図であり、(D)はLEDプリントヘッドの主走査方向のB-B線での断面図である。
【図4】(A)及び(B)は、ホログラム記録層にホログラムが記録される様子を示す図である。
【図5】ホログラムが再生されて回折光が生成される様子を示す図である。
【図6】LEDの発光光をホログラムに直接照射する構成において、ホログラム記録層にホログラムが記録される様子を示す図である。
【図7】(A)は信号光の光軸と参照光の光軸とが直交しない場合にホログラムが記録される様子を示す図である。(B)は信号光の光軸と参照光の光軸とが直交しない場合にホログラムが再生されて回折光が生成する様子を示す図である。
【図8】光路変更手段とホログラム記録層とが一体に形成されたLPHの構成の一例を示す図である。
【図9】(A)は変形例に係るLEDプリントヘッドの構成の一例を示す副走査方向の断面図である。(B)は(A)のLEDプリントヘッドのホログラム記録層にホログラムが記録される様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。
【0024】
<LEDプリントヘッドを搭載した画像形成装置>
まず、本発明の実施の形態に係るLEDプリントヘッドを搭載した画像形成装置について説明する。電子写真方式で画像を形成する複写機、プリンタ等では、感光体ドラムに潜像を書き込む露光装置として、従来の光走査方式の露光装置(即ち、光走査型書き込み装置)に代わり、発光ダイオード(LED)を光源に用いたLED方式の露光装置が主流になりつつある。LED方式の露光装置では、走査光学系は不要であり、光走査方式に比べて大幅な小型化が可能である。また、ポリゴンミラーを駆動する駆動モータも不要であり、機械的なノイズが発生しないという利点もある。
【0025】
LED方式の露光装置は、LEDプリントヘッドと称され、LPHと略称されている。従来のLEDプリントヘッドは、長尺状の基板上に多数のLEDが配列されたLEDアレイと、多数の屈折率分布型のロッドレンズが配列されたレンズアレイと、を備えている。LEDアレイには、例えば1インチ当り1200画素(即ち、1200dpi(dot per inch)と、主走査方向の画素数に対応して多数のLEDが配列されている。ここで「dpi」は、1インチあたりのドット数を意味する。従来、レンズアレイには、セルフォック(登録商標)などのロッドレンズが用いられている。各LEDから射出された光は、ロッドレンズにより集光されて、感光体ドラム上に正立等倍像が結像される。
【0026】
ロッドレンズに代えて「ホログラム素子」を用いたLEDプリントヘッドが検討されている。本実施の形態に係る画像形成装置は、以下に説明する「ホログラム素子アレイ」を備えたLEDプリントヘッドを備えている。ロッドレンズを用いたLPHでは、レンズアレイ端面から結像点までの光路長(作動距離)は数mm程度と短く、感光体ドラムの周囲における露光装置の占有割合が大きくなる。これに対して、ホログラム素子アレイを備えたLPH14は、作動距離が数cm程度と長く、感光体ドラムの周囲が混み合わず、全体として画像形成装置が小型化される。
【0027】
また、一般に、インコヒーレント光(非干渉性の光)を射出するLEDを用いるLPHでは、コヒーレンス性が低下してスポットぼけ(いわゆる色収差)が生じ、微小スポットを形成することは容易ではない。これに対して、ホログラム素子アレイを備えたLPH14は、ホログラム素子の入射角選択性及び波長選択性が高く、感光体ドラム12上には輪郭の鮮明な微小スポットが形成される。
【0028】
図1は本発明の実施の形態に係る画像形成装置の構成の一例を示す概略図である。この画像形成装置は、所謂タンデム型のデジタルカラープリンタであり、各色の画像データに対応して画像形成を行う画像形成部としての画像形成プロセス部10、画像形成装置の動作を制御する制御部30、及び画像読取装置3と例えばパーソナルコンピュータ(PC)2等の外部装置とに接続され、これらの装置から受信された画像データに対して予め定めた画像処理を施す画像処理部40を備えている。
【0029】
画像形成プロセス部10は、一定の間隔で並列に配置される4つの画像形成ユニット11Y、11M、11C、11Kを備えている。画像形成ユニット11Y、11M、11C、11Kの各々は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)のトナー像を形成する。なお、画像形成ユニット11Y、11M、11C、11Kを、適宜「画像形成ユニット11」と総称する。
【0030】
各画像形成ユニット11は、静電潜像を形成してトナー像を保持する像保持体としての感光体ドラム12、感光体ドラム12の表面を予め定めた電位で一様に帯電する帯電器13、帯電器13によって帯電された感光体ドラム12を露光する露光装置としてのLEDプリントヘッド(LPH)14、LPH14によって得られた静電潜像を現像する現像器15、転写後の感光体ドラム12表面を清掃するクリーナ16を備えている。
【0031】
LPH14は、感光体ドラム12の軸線方向の長さと略同じ長さの長尺状のプリントヘッドである。LPH14は、その長さ方向が感光体ドラム12の軸線方向を向くように、感光体ドラム12の周囲に配置されている。本実施の形態では、LPH14には、長さ方向に沿って複数のLEDがアレイ状(列状)に配列されている。また、LEDアレイ上には、複数のLEDに対応する複数のホログラム素子がアレイ状に配列されている。
【0032】
後述する通り、ホログラム素子アレイを備えたLPH14の作動距離は長く、感光体ドラム12の表面から数cm離間して配置されている。このため、感光体ドラム12の周方向における占有幅が小さく、感光体ドラム12の周囲の混雑が緩和されている。
【0033】
また、画像形成プロセス部10は、各画像形成ユニット11の感光体ドラム12にて形成された各色のトナー像が多重転写される中間転写ベルト21、各画像形成ユニット11の各色トナー像を中間転写ベルト21に順次転写(一次転写)させる一次転写ロール22、中間転写ベルト21上に転写された重畳トナー像を記録媒体である用紙Pに一括転写(二次転写)させる二次転写ロール23、及び二次転写された画像を用紙P上に定着させる定着器25を備えている。
【0034】
次に上記画像形成装置の動作について説明する。
まず、画像形成プロセス部10は、制御部30から供給された同期信号等の制御信号に基づいて画像形成動作を行う。その際に、画像読取装置3やPC2から入力された画像データは、画像処理部40によって画像処理が施され、インターフェースを介して各画像形成ユニット11に供給される。
【0035】
例えば、イエローの画像形成ユニット11Yでは、帯電器13により予め定めた電位で一様に帯電された感光体ドラム12の表面が、画像処理部40から得られた画像データに基づいて発光するLPH14により露光されて、感光体ドラム12上に静電潜像が形成される。即ち、LPH14の各LEDが画像データに基づいて発光することで、感光体ドラム12の表面が主走査されると共に、感光体ドラム12が回転することで副走査されて、感光体ドラム12上に静電潜像が形成される。形成された静電潜像は現像器15により現像され、感光体ドラム12上にはイエローのトナー像が形成される。同様に、画像形成ユニット11M,11C,11Kにおいて、マゼンタ、シアン、黒の各色トナー像が形成される。
【0036】
各画像形成ユニット11で形成された各色トナー像は、図1の矢印A方向に回転する中間転写ベルト21上に、一次転写ロール22により順次静電吸引されて転写される(一次転写)。中間転写ベルト21上には、重畳されたトナー像が形成される。重畳トナー像は、中間転写ベルト21の移動に伴って二次転写ロール23が配設された領域(二次転写部)に搬送される。重畳トナー像が二次転写部に搬送されると、トナー像が二次転写部に搬送されるタイミングに合わせて用紙Pが二次転写部に供給される。
【0037】
そして、二次転写部にて二次転写ロール23により形成される転写電界により、重畳トナー像は搬送されてきた用紙P上に一括して静電転写される(二次転写)。重畳トナー像が静電転写された用紙Pは、中間転写ベルト21から剥離され、搬送ベルト24により定着器25まで搬送される。定着器25に搬送された用紙P上の未定着トナー像は、定着器25によって熱および圧力による定着処理を受けることで用紙P上に定着される。そして定着画像が形成された用紙Pは、画像形成装置の排出部に設けられた排紙トレー(不図示)に排出される。
【0038】
<LEDプリントヘッド(LPH)>
図2は本発明の実施の形態に係るLEDプリントヘッドの構成の一例を示す概略斜視図である。図2に示すように、LEDプリントヘッド(LPH14)は、複数のLED50を備えたLEDアレイ52と、複数のLED50の各々に対応して設けられた複数のホログラム素子54を備えたホログラム素子アレイ56と、を備えている。図2に示す例では、LEDアレイ52は6個のLED50〜50を備え、ホログラム素子アレイ56は6個のホログラム素子54〜54を備えている。なお、各々を区別する必要がない場合には、LED50〜50を「LED50」と総称し、ホログラム素子54〜54を「ホログラム素子54」と総称する。
【0039】
複数のLED50の各々は、LEDチップ53上に配列されている。LEDチップ53は、LED50の各々を駆動する駆動回路(図示せず)と共に、長尺状のLED基板58上に実装されている。LEDチップ53は、複数のLED50が主走査方向に並ぶように位置合わせをして、LED基板58上に配置されている。これにより、LED50の各々は、感光体ドラム12の軸線方向と平行な方向に沿って配列される。
【0040】
LED50の配列方向が「主走査方向」である。また、LED50の各々は、互いに隣接する2つのLED50の主走査方向の間隔(LEDピッチ)が一定間隔となるように配列されている。なお、感光体ドラム12の回転により副走査が行われるが、「主走査方向」と直交する方向を「副走査方向」として図示している。
【0041】
LEDアレイ52としては、複数のLEDがチップ単位で基板上に実装されたLEDアレイ等、種々の形態のLEDアレイを用いてもよい。複数のLEDが配列されたLEDチップ53を複数個配列する場合には、複数のLEDチップ53は、直列に配置してもよく、千鳥状に配置してもよい。また、副走査方向に2個以上配置してもよい。図2においては、複数のLED50が1個のLEDチップ53上に一次元状に配列されたLEDアレイ52を概略的に図示しているに過ぎない。
【0042】
LEDアレイ52は、複数のLEDチップ53が千鳥状に配列されていてもよい。即ち、複数のLEDチップ53は、主走査方向に並ぶように一列に配置されると共に、副走査方向に一定間隔ずらして二列に配置されていてもよい。なお、複数のLEDチップ53に分けられていても、複数のLED50の各々は、互いに隣接する2つのLED50の主走査方向の間隔が、一定間隔となるように配列されている。
【0043】
LEDアレイ52としては、複数の自己走査型LED(SLED:Self-scanning LED)が配列されたSLEDチップ(図示せず)が、各LEDが主走査方向に並ぶように、複数個に配列されて構成されたSLEDアレイを用いてもよい。SLEDアレイは、スイッチのオン・オフを二本の信号線によって行い、各SLEDを選択的に発光させて、データ線を共通化する。このSLEDアレイを用いることで、LED基板58上での配線数が少なくて済む。
【0044】
上記のLEDチップ53が配置されたLED基板58上には、光路変更手段32とホログラム記録層60とが配置されている。光路変更手段32は、LEDチップ53の上方に配置されている。ホログラム記録層60は、光路変更手段32の光射出側に配置されている。光路変更手段32は、LEDチップ53の各LED50から射出された光の光路を折り曲げて、ホログラム記録層60に照射する。図2ではLED基板58に接するようにホログラム記録層60が形成されているが、ホログラム記録層60はLED基板58から予め定めた距離だけ離間させて形成されていてもよい。
【0045】
本実施の形態では、光路変更手段32は、主走査方向を長手方向とする長尺状の平面鏡で構成されている。光路変更手段32である平面鏡は、LED基板58の法線方向と約45°を成すように配置されている。これにより、LEDチップ53の各LED50から法線方向に射出された各光は、光路変更手段32により光路が約90°折り曲げられて、側方からホログラム記録層60に照射される。即ち、複数のLED50から射出された各光は平面鏡で反射され、反射光の各々がLED50に対応するホログラム素子54に照射される。
【0046】
ホログラム素子アレイ56は、LED基板58上に形成されたホログラム記録層60内に形成されている。ホログラム記録層60には、複数のLED50〜50の各々に対応して、主走査方向に沿って複数のホログラム素子LED54〜54が形成されている。ホログラム素子54の各々は、互いに隣接する2つのホログラム素子54の主走査方向の間隔が、上記のLED50の主走査方向の間隔と、ほぼ同じ間隔となるように配列されている。即ち、互いに隣接する2つのホログラム素子54が互いに重なり合うように、径の大きいホログラム素子54が形成されている。また、互いに隣接する2つのホログラム素子54が異なる形状を有していてもよい。
【0047】
ホログラム記録層60は、ホログラムを永続的に記録保持することが可能な高分子材料から構成されている。このような高分子材料としては、いわゆるフォトポリマーを用いてもよい。フォトポリマーは、光重合性モノマーのポリマー化による屈折率変化を利用してホログラムを記録する。
【0048】
図2に示すように、LEDアレイ52とホログラム素子アレイ56とを備えたLPH14では、6個のLED50〜50の各々から射出された各光は、光路変更手段32により光路が折り曲げられ、側方からホログラム記録層60に照射され、対応するホログラム素子54〜54のいずれかに入射する。即ち、LED50から射出された光は、ホログラム素子54に直接入射されるのではなく、光路変更手段32を介して入射される。ホログラム素子54〜54は、入射された光を回折して回折光を生成する。本実施の形態では、ホログラム素子54〜54の各々で生成された各回折光は、その光軸がLED基板58の法線方向と一致するように射出され、感光体ドラム12の方向に集光される。
【0049】
射出された各回折光は、感光体ドラム12の方向に収束して、数cm先の焦点面に配置された感光体ドラム12の表面で結像される。即ち、複数のホログラム素子54の各々は、対応するLED50から射出され且つ光路変更手段32により光路が折り曲げられた対応する光を回折して集光し、感光体ドラム12表面に結像させる光学部材として機能する。感光体ドラム12の表面には、各回折光による微小なスポット62〜62が、主走査方向に一列に配列されるように形成される。換言すれば、LPH14により、感光体ドラム12が主走査される。なお、各々を区別する必要がない場合には、スポット62〜62を「スポット62」と総称する。
【0050】
<ホログラム素子の形状と配置>
図3(A)はホログラム素子の概略形状を示す斜視図であり、図3(B)はLEDプリントヘッドの副走査方向の断面図である。図3(C)はLEDプリントヘッドの主走査方向のA-A線での断面図であり、図3(D)はLEDプリントヘッドの主走査方向のB-B線での断面図である。
【0051】
図3(A)に示すように、ホログラム素子54の各々は、一般に厚いホログラムと称される体積ホログラムである。上述した通り、ホログラム素子は、入射角選択性及び波長選択性が高く、回折光の出射角度(回折角)を高精度で制御して、輪郭の鮮明な微小スポットを形成する。回折角の精度はホログラムの厚さが厚いほど高くなる。
【0052】
図3(A)〜(C)に示すように、ホログラム素子54の各々は、ホログラム記録層60のLED50側の表面を一方の底面とし、回折光が射出される表面側に向かって収束する円錐台状に形成されている。この例では円錐台状のホログラム素子について説明するが、ホログラム素子の形状はこれには限定されない。例えば、円錐、楕円錐、楕円錐台等の形状としてもよい。円錐台状のホログラム素子54の直径は、一方の底面で最も大きくなる。この円形の底面の直径を「ホログラム径r」とする。
【0053】
ホログラム素子54の各々は、LED50の主走査方向の間隔よりも大きな「ホログラム径r」を有している。例えば、LED50の主走査方向の間隔は30μmであり、ホログラム径rは2mm、ホログラム厚さhは250μmである。このように大きなホログラム素子54を用いることで、約4cmの作動距離で、約40μm(半値幅で約30μm)のスポットサイズφが実現される。従って、互いに隣接する2つのホログラム素子54は、図示した例に比べて、互いに大幅に重なり合うように形成されている。複数のホログラム素子54は、例えば、球面波シフト多重により多重記録されている。
【0054】
複数のLED50の各々は、上方に配置された光路変更手段32側に光を射出するように、その発光面を光路変更手段32側に向けて、LED基板58上に配置されている。LED50の「発光光軸」は、LED基板58と直交する方向を向いている。図示した通り、発光光軸は、上記の主走査方向及び副走査方向の各々とも直交する。即ち、ここで「発光光軸」とは、LED50の発光領域から射出される拡散光の中心線であり、LED50を発光点(点光源)とみなす場合にはLED基板58の法線方向と一致する。
【0055】
また、図示は省略するが、LPH14は、ホログラム素子54で生成された回折光が感光体ドラム12の方向に射出されるように、ハウジングやホルダー等の保持部材により保持されて、図1に示す画像形成ユニット11内の予め定めた位置に取り付けられている。なお、LPH14は、調整ネジ(図示せず)等の調整手段により、回折光の光軸方向に移動するように構成されていてもよい。ホログラム素子54による結像位置(焦点面)が、感光体ドラム12表面上に位置するように、上記の調整手段により調整する。また、ホログラム記録層60上に、カバーガラスや透明樹脂等で保護層が形成されていてもよい。保護層によりゴミの付着が防止される。
【0056】
<ホログラムの記録方法>
次に、ホログラムの記録方法について説明する。図4(A)及び(B)は、ホログラム記録層60にホログラム素子54が形成される様子、即ち、ホログラム記録層にホログラムが記録される様子を示す図である。感光体ドラム12の図示は省略し、結像面である表面12Aだけを図示する。また、ホログラム記録層60Aは、ホログラム素子54が形成される前の記録層であり、符号Aを付して、ホログラム素子54が形成されたホログラム記録層60と区別する。
【0057】
図4(A)に示すように、表面12Aに結像される回折光の光路を通るコヒーレント光が、信号光としてホログラム記録層60Aに照射される。信号光は、表面12A上の集光点からLED基板58に向って拡がる拡散光の光路を通る光であり、ホログラム記録層60Aを通過する際に所望のホログラム径rまで拡がる。同時に、仮想的に設定される発光点に向けて収束する収束光の光路を通るコヒーレント光が、参照光としてホログラム記録層60Aに照射される。コヒーレント光の照射には、半導体レーザ等のレーザ光源が用いられる。
【0058】
参照光は、ホログラム記録層60A内での信号光との重なりが、最も大きくなる角度で照射される。この例では、信号光の光軸はLED基板58の法線方向と一致し、参照光の光軸は信号光の光軸と直交している。ここで、参照光の収束点である「仮想的に設定される発光点」とは、ホログラムの再生時に、光路変更手段32を介さずLED50の発光光をホログラム素子54に直接照射すると仮定した場合に、点光源とみなされたLED50が配置されるべき位置である。
【0059】
信号光と参照光とは、ホログラム記録層60Aに対し、同じ側(LED基板58が配置される側とは反対側)から照射される。これにより、斜線を付した部分に透過型のホログラム素子54が形成されたホログラム記録層60が得られる。ここで「同じ側」とは、ホログラム記録層60AとLED基板58との位置関係に基づく基準である。実際には、図4(A)に示すように、信号光はホログラム記録層60Aの上側から照射され、参照光はホログラム記録層60Aの側方(図では左側)から照射される。
【0060】
信号光と参照光との干渉により得られる干渉縞(強度分布)が、ホログラム記録層60Aの厚さ方向にわたって記録される。ホログラム素子54は、面方向及び厚さ方向に干渉縞の強度分布が記録された体積ホログラムである。このホログラム記録層60と光路変更手段32とを、LEDアレイ52が実装されたLED基板58上に取り付けることで、LPH14が作製される。
【0061】
また、図4(B)に示すように、信号光と参照光を、ホログラム記録層60Aに対し、同じ側(LED基板58が配置される側)から照射してホログラムを記録してもよい。実際には、信号光はホログラム記録層60Aの下側から照射され、参照光はホログラム記録層60Aの側方(図では右側)から照射される。この場合も同様に、斜線を付した部分に透過型のホログラム素子54が形成されたホログラム記録層60が得られる。
【0062】
<ホログラムの再生方法>
次に、ホログラムの再生方法について説明する。図5は、ホログラム素子から回折光が生成される様子、即ち、ホログラム記録層に記録されたホログラムが再生されて回折光が生成される様子を示す図である。本実施の形態では、点線で図示するように、読み出し光としてLED50から射出された拡散光は、光路変更手段32により光路が折り曲げられて、側方からホログラム記録層60に照射される。光路が折り曲げられた光は、上記の仮想的に設定される発光点に向けて収束する参照光の光路を通る。従って、LED50の発光により、ホログラム素子54に参照光が照射されたのと略同じ状況となる。
【0063】
図5に示すように、点線で図示する拡散光(即ち、再生参照光)の照射により、実線で図示するように、ホログラム素子54から信号光と同じ光が再生され、回折光として射出される。射出された回折光は収束して、数cmの作動距離で感光体ドラム12の表面12Aに結像される。表面12Aにはスポット62が形成される。なお、図5では、表面12Aが概略的に図示されているが、ホログラム径rは数mm、作動距離Lは数cmであるから、表面12Aはかなり離れた位置にある。
【0064】
図2に示すように、感光体ドラム12上には、LEDアレイ52のLED50〜50に対応して、6個のスポット62〜62が主走査方向に一列に並ぶように形成される。6個のスポット62〜62は、ホログラム素子54〜54の回折光が結像した結像スポットである。体積ホログラムは入射角選択性及び波長選択性が高く、一般に回折効率が高い。このため信号光がより精度よく再生されて、表面12Aには輪郭の鮮明な微小スポット(集光点)が形成される。
【0065】
<読出し光をホログラム素子に直接照射する場合との比較>
次に、読出し光を光路変更手段を介してホログラム素子に照射した場合の利点を、読出し光をホログラム素子に直接照射する場合と比較して説明する。図6は、LEDの発光光をホログラムに直接照射する構成において、ホログラム記録層にホログラムが記録される様子を示す図である。
【0066】
図6に示すように、表面12Aに結像される(表面12A上の集光点に収束する)回折光の光路を通るコヒーレント光が、信号光としてホログラム記録層60Aに照射される。同時に、ホログラム記録層60Aを通過する際に、発光点から所望のホログラム径rまで拡がる拡散光の光路を通るコヒーレント光が、参照光としてホログラム記録層60Aに照射される。この例では、参照光の光軸はLED基板58の法線方向と一致し、信号光の光軸は参照光の光軸と交差している。
【0067】
上述した通り、大きなホログラム素子54を用いると作動距離が長くなる。図5に示す構成で大きなホログラム素子54を記録するためには、参照光の拡がり角(開口数:NA)を大きくすればよい。また、参照光の拡がり角を大きくすると、回折光強度が大きくなり、光量増加により光利用効率が向上する。しかしながら、参照光の拡がり角を大きくすると、副走査方向でのホログラム径が大きくなり、LPHの副走査方向の幅が大きくなる。また、再生時に、読み出し光(LED50の発光光)と回折光とを分離し難くなる。
【0068】
これに対し、図4(A)及び(B)に示すように、本実施の形態のLPH14では、LED50の各々から射出された各光を、光路変更手段32を介して、対応するホログラム素子54に入射する構成としている。この構成に応じて、表面12Aに結像される回折光の光路を通るコヒーレント光(信号光)と、仮想的に設定される発光点に向けて収束する収束光の光路を通るコヒーレント光(参照光)とが、ホログラム記録層60Aに照射されて、透過型のホログラム素子54が記録される。
【0069】
本実施の形態のLPH14は、上記の構成により、参照光の拡がり角に依存してホログラム径が決まる訳ではなくなり、作動距離の設計の自由度が向上する。また、参照光の拡がり角を大きくすることで、上述した通り光利用効率が向上する。また、信号光の光軸と参照光の光軸との交差角度を大きくすることで、再生時に読み出し光と回折光とを分離し易くなる。
【0070】
<信号光と参照光との交差>
次に、信号光と参照光との交差の態様について説明する。上記では、信号光の光軸はLED基板58の法線方向と一致し、参照光の光軸は信号光の光軸と直交している例について説明したが、信号光と参照光との交差の態様はこれに限定される訳ではない。図7(A)は、信号光の光軸と参照光の光軸とが直交しない場合にホログラムが記録される様子を示す図である。図7(B)は信号光の光軸と参照光の光軸とが直交しない場合にホログラムが再生されて回折光が生成する様子を示す図である。
【0071】
図7(A)に示すように、表面12Aに結像される回折光の光路を通るコヒーレント光が、信号光としてホログラム記録層60Aに照射される。同時に、仮想的に設定される発光点に向けて収束する収束光の光路を通るコヒーレント光が、参照光としてホログラム記録層60Aに照射される。信号光と参照光とは、ホログラム記録層60Aに対し、同じ側から照射されて、斜線を付した部分に透過型のホログラム素子54が形成されたホログラム記録層60が得られる。なお、位相共役記録によりホログラム素子54を形成してもよい。
【0072】
本実施の形態では、信号光の光軸は参照光の光軸と90°以外の角度で交差している。また、ここでは透過型ホログラムであるため、ホログラム記録層60Aに対する信号光の入射角θsとホログラム記録層60Aに対する参照光の入射角θrとの間には、0°<θr+θs≦90°の条件を満たす必要がある。この条件を満たす範囲で、信号光と参照光との交差角を変化させてもよい。信号光と参照光との交差角が大きくなるほど、信号光と参照光との干渉縞がより短いピッチで形成されるため、シフト選択性が向上し、結果としてクロストークの減少が達成される。
【0073】
図7(B)に示すように、読み出し光としてLED50から射出された拡散光は、光路変更手段32により光路が折り曲げられて、斜め側方からホログラム記録層60に照射され、ホログラム素子54に再生参照光が照射されたのと略同じ状況となる。点線で図示する拡散光(再生参照光)の照射により、実線で図示するように、ホログラム素子54から信号光と同じ光が再生され、回折光として射出される。射出された回折光は収束して、数cmの作動距離で感光体ドラム12の表面12Aに結像される。表面12Aにはスポット62が形成される。
【0074】
本実施の形態では、信号光と参照光との干渉縞が短いピッチで形成されて、シフト選択性の向上によりクロストークが抑制され、背景雑音となる透過参照光の遮断が容易になる。なお、信号光の光軸と参照光の光軸とが直交する場合に、即ち、信号光と参照光との交差角が最大となる場合に、信号光と参照光との干渉縞が最短ピッチで形成されてシフト選択性が最大となり、クロストークが更に抑制される(図4参照)。
【0075】
<LPHの変形例(1)>
図2、図3を参照して説明した通り、上記の実施の形態では、光路変更手段32とホログラム記録層60とを別々の部材で構成したLPH14としていたが、LPHの構成はこれに限定される訳ではない。図8は、光路変更手段とホログラム記録層とが一体に形成されたLPHの構成の一例を示す図である。光路変更手段とホログラム記録層とが一体に形成されて部品点数が減少している以外は、上記の実施の形態と同様の構成であるため、同じ構成部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0076】
変形例(1)に係るLPH14Aでは、LED基板58上には、ホログラム記録層60Bが配置されている。ホログラム記録層60Bは、LEDチップ53の上方にも配置されている。ホログラム記録層60Bは、LEDチップ53の配置側が(読み出し光の)光入射側であり、その反対側が(回折光の)光出射側である。ホログラム記録層60Bは、LEDチップ53の上方に位置する一方の側面が、LED基板58の法線方向と交差する斜面60Cとされている。斜面60Cは、主走査方向を長手方向とする長尺状の斜面であり、ホログラム記録層60Bの副走査方向の幅が光入射側から光出射側に向って狭くなるように形成されている。
【0077】
ホログラム記録層60Bの斜面60Cには、反射膜32Aが形成されている。反射膜32Aは、例えば、LED50の発光光に対する反射率の高い金属等を、斜面60Cに蒸着する等の方法で形成される。反射膜32をホログラム記録層60Bと一体化したことで、光路変更手段とホログラム記録層とを別々の部材で構成した場合(図2、図3参照)に比べて、界面反射を防止する手段を講じる必要がなくなる。また、予め形成された反射膜32Aは、事後的な位置合わせが不要である。
【0078】
LEDチップ53の各LED50から射出された光は、ホログラム記録層60Bの光入射側の表面から入射する。斜面60Cに形成された反射膜32Aは、入射された各光の光路を折り曲げる。即ち、反射膜32Aは、各LED50から射出された各光の光路を変更する「光路変更手段」として機能する。なお、斜面60Cでの界面反射を利用する場合には、反射膜32Aの形成を省略してもよい。
【0079】
光路が折り曲げられた各光は、ホログラム記録層60B内を導光して、各LED50に対応するホログラム素子54に照射される。複数のホログラム素子54の各々は、対応するLEDから入射された各光を回折して回折光を生成し、各回折光を感光体ドラム12の方向に射出する。感光体ドラム12の表面12Aには、各回折光による微小なスポット62が形成される。
【0080】
本実施の形態では、反射膜32は、LED基板58の法線方向と約45°を成す斜面60Cに形成されている。これにより、複数のLED50から法線方向に射出された各光は、反射膜32Aにより光路が約90°折り曲げられて、ホログラム記録層60B内を右側から左側に向って伝搬し、対応するホログラム素子54に照射される。
【0081】
<LPHの変形例(2)>
図2、図3を参照して説明した通り、上記の実施の形態では、光路変更手段32を平面鏡で構成した例について説明したが、光路変更手段は平面鏡に限定される訳ではない。図9(A)は、変形例(2)に係るLPHの構成の一例を示す副走査方向の断面図である。図9(B)は、図9(A)のLPHのホログラム記録層にホログラムが記録される様子を示す図である。光路変更手段として曲面の反射面を備えた反射鏡を備えている以外は、上記の実施の形態とほぼ同様の構成であるため、同じ構成部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0082】
変形例(2)に係るLPH14Bでは、LED基板58上には、光路変更手段32Bとホログラム記録層60とが配置されている。光路変更手段32Bは、LEDチップ53の上方に配置されている。ホログラム記録層60は、光路変更手段32Bの光射出側(即ち、集光側)に配置されている。光路変更手段32Bからの射出光は、ホログラム記録層60の一方の側面から入射する。ホログラム記録層60の一方の側面に対向する他方の側面には、透過参照光を吸収する光吸収体34が配置されている。なお、変形例(1)に係るLPHと同様に、光路変更手段とホログラム記録層とが一体に形成されていてもよい。
【0083】
本実施の形態では、光路変更手段32Bは、主走査方向を長手方向とする長尺状の反射鏡(例えば、楕円ミラーや放物面ミラー)であり、副走査方向の断面が円弧状とされ、曲面の内側が反射面とされている。光路変更手段32Bは、各LED50から射出された光の光路を折り曲げると共に、該光を変更された光路の方向に集光する。各LED50から射出される光は拡散光であり、集光させて照射することで光利用効率が向上する。
【0084】
光路が折り曲げられ且つ集光された光が、ホログラム記録層60に照射される。即ち、光路変更手段32Bで反射され且つ集光された各光が、各LED50に対応するホログラム素子54に照射される。複数のホログラム素子54の各々は、対応するLEDから入射された各光を回折して回折光を生成し、各回折光を感光体ドラム12の方向に射出する。感光体ドラム12の表面12Aには、各回折光による微小なスポット62が形成される。
【0085】
本実施の形態では、光路変更手段32Bが、曲面の反射面を備えた反射鏡とされている。このように反射鏡を変更することにより、複数のLED50から法線方向に射出された各光は、光路変更手段32Bにより光路が約90°折り曲げられ、変更された光路の方向に集光されて、ホログラム記録層60B内を右側から左側に向って伝搬し、対応するホログラム素子54に照射される。ホログラム素子54で回折されずに透過した光は、光吸収体34により吸収される。
【0086】
次に、変形例(2)に係るLPH14Bにおける、ホログラムの記録方法について説明する。図9(B)に示すように、表面12Aに結像される回折光の光路を通るコヒーレント光が、信号光としてホログラム記録層60Aに照射される。信号光は、表面12A上の集光点からLED基板58に向って拡がる拡散光の光路を通る光であり、ホログラム記録層60Aを通過する際に所望のホログラム径rまで拡がる。同時に、拡散光が光路変更手段32Bで反射され集光されて、LED50が配置されるべき発光点に向けて収束する収束光の光路を通るコヒーレント光が、参照光としてホログラム記録層60Aに照射される。コヒーレント光の照射には、半導体レーザ等のレーザ光源が用いられる。
【0087】
この例では、コヒーレント光源36から射出された拡散光は、シリンドリカルレンズ等のレンズ38でリレーされて、側方から(図では左側から)ホログラム記録層60Aに照射される。照射される拡散光は、ホログラム記録層60Aを透過した光が、光路変更手段32Bで反射され且つ集光されて、LED50が配置されるべき発光点に向けて収束するように設計されている。信号光と参照光とは、ホログラム記録層60Aに対し、同じ側から照射されることにより、斜線を付した部分に透過型のホログラム素子54が形成されたホログラム記録層60が得られる。
【0088】
<その他の変形例>
なお、上記では、複数のLEDを備えたLEDプリントヘッドを備える例について説明したが、LEDに代えて電界発光素子(EL)、レーザダイオード(LD)等、他の発光素子を用いてもよい。発光素子の特性に応じてホログラム素子を設計すると共に、インコヒーレント光による不要露光を防止することで、インコヒーレント光を射出するLEDやELを発光素子として用いた場合でも、コヒーレント光を射出するLDを発光素子として用いた場合と同様に、輪郭が鮮明な微小スポットが形成される。
【0089】
また、上記では、球面波シフト多重により複数のホログラム素子を多重記録する例について説明したが、所望の回折光が得られる多重方式であれば、他の多重方式で複数のホログラム素子を多重記録してもよい。また、複数種類の多重方式を併用しても良い。他の多重方式としては、参照光の入射角度を変えながら記録する角度多重記録、参照光の波長を変えながら記録する波長多重記録、参照光の位相を変えながら記録する位相多重記録等が挙げられる。多重記録された複数のホログラムからは、別々の回折光がクロストークなく再生される。
【0090】
また、上記では、画像形成装置がタンデム型のデジタルカラープリンタであり、その各画像形成ユニットの感光体ドラムを露光する露光装置としてのLEDプリントヘッドについて説明したが、露光装置により感光性の画像記録媒体を像様露光することで画像が形成される画像形成装置であればよく、上記の応用例には限定されない。例えば、画像形成装置は、電子写真方式のデジタルカラープリンタには限定されない。銀塩方式の画像形成装置や光書込み型電子ペーパー等の書き込み装置等にも本発明の露光装置を搭載してもよい。また、感光性の画像記録媒体は、感光体ドラムには限定されない。シート状の感光体や写真感光材料、フォトレジスト、フォトポリマー等の露光にも、上記応用例に係る露光装置を適用してもよい。
【0091】
また、上記では、複数のLED(LEDアレイ)と複数のホログラム素子(ホログラム素子アレイ)を備えたLEDプリントヘッドを、露光装置として備える例について説明した。同様のLEDプリントヘッドは、1組のLED、光路変更手段及びホログラム素子を備えた「集光素子」が一次元状又は二次元状に複数配列された集光素子アレイにより構成してもよい。
【符号の説明】
【0092】
2 PC
3 画像読取装置
10 画像形成プロセス部
11 画像形成ユニット
12 感光体ドラム
12A 表面
13 帯電器
14 LEDプリントヘッド(LPH)
14A LPH
14B LPH
15 現像器
16 クリーナ
21 中間転写ベルト
22 一次転写ロール
23 二次転写ロール
24 搬送ベルト
25 定着器
30 制御部
32 光路変更手段
32A 反射膜
32B 光路変更手段
34 光吸収体
36 光源
38 レンズ
40 画像処理部
50 LED
52 LEDアレイ
53 LEDチップ
54 ホログラム素子
56 ホログラム素子アレイ
58 LED基板
60 ホログラム記録層
60A ホログラム記録層
60B ホログラム記録層
60C 斜面
62 スポット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を射出する発光素子と、
前記発光素子から射出された光の光路を変更する光路変更手段と、
前記光路変更手段で変更された光路上に配置され、照射された光を回折して予め定めた作動距離だけ離間された被露光面に集光するホログラム素子が記録されたホログラム記録層と、
を備えた集光素子。
【請求項2】
請求項1に記載の集光素子が一次元状又は二次元状に複数配列された集光素子アレイ。
【請求項3】
複数の発光素子が予め定めた方向に並ぶように配列された発光素子アレイと、
複数の発光素子の各々から射出された各光の光路を変更する光路変更手段と、
前記光路変更手段で変更された光路上に配置されたホログラム記録層であって、複数の発光素子に対応して照射された各光を回折して予め定めた作動距離だけ離間された被露光面に集光する複数のホログラム素子が記録され、前記被露光面に形成される複数の集光点が前記予め定めた方向に並ぶように前記複数のホログラム素子が多重記録されたホログラム記録層と、
を備えた露光装置。
【請求項4】
前記複数のホログラム素子の各々が、回折光として再生される信号光と該信号光と交差する参照光との干渉により記録され、前記ホログラム記録層に対する前記信号光の入射角θsと前記ホログラム記録層に対する前記参照光の入射角θrとが下記式(1)を満たす、請求項3に記載の露光装置。
0°<θr+θs≦90°・・・(1)
【請求項5】
前記信号光の光軸と前記参照光の光軸とが直交する、請求項4に記載の露光装置。
【請求項6】
前記光路変更手段が、前記発光素子から射出された光を反射する平面又は曲面の反射面を備えた反射鏡である、請求項3から請求項5までの何れか1項に記載の露光装置。
【請求項7】
前記光路変更手段と前記ホログラム記録層とが一体に形成された、請求項3から請求項6までの何れか1項に記載の露光装置。
【請求項8】
請求項3から請求項7までの何れか1項に記載の露光装置と、
前記露光装置と予め定めた作動距離だけ離間された被露光面を備え、画像データに応じて前記露光装置により前記予め定めた方向に主走査されて画像が記録される感光性の画像記録媒体と、
を含む画像形成装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−40749(P2012−40749A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183268(P2010−183268)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】