説明

集塵機

【課題】 エアカーテン形成用の付帯設備を削減し、切羽前進に伴う移動を容易にし、また外的要因によるエアカーテンの破壊を軽減して集塵効果を高め、作業環境が向上できる集塵機を提供する。
【解決手段】 集塵機2から得られた集塵処理後のクリーンエアを利用する2つの前・後エアカーテン装置9a,9bが、集塵機本体6の後方側に離間して具備されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削中のトンネル坑内に設置する集塵機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
掘削中のトンネル坑内には、大量の土砂と粉塵が発生する。これらの土砂や粉塵は、作業環境を整える上から取り除く必要がある。土砂は、トラック等を使って外に運び出すことになるが、粉塵の除去は、坑内に備えた適当な施設により行われる。
【0003】
この種の施設は、一般にトンネル坑内に吸気管と排気管をトンネルに沿って配設し、配設された吸気管に送風機と先端ヘッダを備えてエアカーテン装置を設け、また排気管に集塵機本体を備えて集塵機が設けられたもので、そのエアカーテン装置によりエアカーテンを形成して掘削トンネル切羽から発生する粉塵を遮蔽し、集塵機によりエアカーテンの内側にあるダストエアを吸引し浄化している(例えば、特開2004−324072号公報の図6、図7)。
【0004】
しかしながら、かかる浄化施設は、エアカーテン装置と集塵機がそれぞれ個別に設けられており、エアカーテン用,集塵用ファンやダクトなど、付帯設備をそれぞれ備える必要がある。そのため設備費用やランニングコストが高くなる不都合がある。
【0005】
集塵機は、トンネル坑内の作業環境を常時維持するために、切羽の前進に伴って移動する必要がある。しかし、その機械の移動は可能であるが、移動し難い構成になっており、その移動は容易ではない。そのために、工事の施工性及び作業性が低い。
【0006】
また、形成されたエアカーテンは、土砂運搬車両(トラック)の通過等の外的要因によって破壊され易く粉塵がエアカーテン外に漏洩し、そのため集塵効果が低く、作業環境が低下する等の問題が生じ易い。
【特許文献1】特開2004−324072号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような問題点を解決しようとするものであり、エアカーテン形成用の付帯設備を削減し、切羽前進に伴う移動を容易にし、また外的要因によるエアカーテンの破壊を軽減して集塵効果を高め、作業環境が向上できる集塵機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明である集塵機は、集塵処理後のクリーンエアを利用した前・後エアカーテン装置が、集塵機本体の後方側に離間して具備されていることを特徴する。
【0009】
また、前記の手段において、前記集塵機本体が車両と一体に設けられている構成、前記集塵機本体に袖付き吸引口が取付けられている構成、更には、前記前エアカーテン装置が、風速重視のエアカーテンを形成する構成、前記後エアカーテン装置が、風量重視のエアカーテンを形成する構成であると更に好ましい。
【発明の効果】
【0010】
集塵処理後のクリーンエアを利用した前・後エアカーテン装置が、集塵機本体の後方側に離間して具備されているという本発明によれば、集塵機本体に集塵処理後のクリーンエアを利用するエアカーテン装置が備えられている。そのために、エアカーテンを形成するための付属設備を別に設ける必要がなくなる。つまり、エアカーテン形成用の付帯設備(エアカーテン用ファン,ダクト等)が削減され、設備費用の削減が図れる。
【0011】
また、集塵機本体には、2つの前・後エアカーテン装置が離間して備えられているので、離間した前・後エアカーテン装置によって、坑内に2つのエアカーテンと両エアカーテンの間にクッションスペースが形成される。即ち、前・後エアカーテンと間のクッションスペースによってサンドイッチ構造の2重のエアカーテンが形成される。
【0012】
更に、1つのエアカーテンのみの場合には、外的要因(トラック通過等)によりエアカーテンが破壊されて粉塵が漏洩し坑口側への拡散の恐れがある。しかし、前後のエアカーテンが設けられていれば、遮蔽効果は高まり、1つのエアカーテンの破壊が生じても、粉塵がクッションスペースに留まることになり、もう1つのエアカーテンの破壊は少ない。そのために、粉塵漏洩による坑口側への流出が防止され、粉塵遮蔽及び集塵効率を上げることができる。
【0013】
前記集塵機本体が車両と一体に設けられている構成とした場合には切羽前進に伴いその車両を前進させることにより集塵機の移動が容易になって、トンネル工事の施工性及び作業性を向上させることができる。
【0014】
前記集塵機本体に袖付き吸引口が取付けられている構成とした場合には、稼動時、吸引口近傍の広範囲のダストエアを吸引してエア吸引効果が高められ、また袖付き吸引口と坑内径方向壁間に第1のクッションスペースが形成されて、更にエアカーテンの遮蔽効果が高められる。
【0015】
前記前エアカーテン装置が、風速重視のエアカーテンにより形成される構成である場合には、坑内にトラック通過による吸引風に打ち勝つ、流速の速いエアカーテンが形成されるので、トラック等の通過による高流速のエアカーテンの破壊が少ない。
【0016】
前記後エアカーテン装置が、風量重視のエアカーテンにより形成される構成である場合には、坑内に密度の高い、厚いエアカーテンが形成され、坑口側への粉塵の漏洩が減少する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面に示した本発明の実施の形態について、説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施の形態に係る集塵機を備えたトンネル坑内の断面図、図2はその集塵機自体の側面図、図3はトラック通過時の坑内の平面図、図4は噴射ノズル部分を示した断面図,その上・側の外形図及び噴射ノズルの斜視図、図5はエアカーテンが不十分な場合の粉塵が漏洩する状態とエアカーテンが十分な場合の粉塵を遮蔽する状態を示す各斜視図、図6は1つのエアカーテンの場合の粉塵が漏洩する状態を示す平面図及びその断面図、図7は2つのエアカーテンの場合の粉塵を遮蔽する状態を示す平面図、図8は本発明の他の実施の形態に係る集塵機を備えたトンネル坑内の断面図である。
【0019】
この実施形態の掘削中のトンネル坑内1には、送気管3がその坑内1に沿って配設され、送気エアAがトンネル切羽4に向って送られる。トンネル切羽4の近傍には、図示しないが掘削機が設置され、切羽面が掘削される。この掘削によって大量の土砂(図示せず)と粉塵5が発生する。そのため、掘削機の後方には、トンネル坑内1の作業環境を整えるため、粉塵5を収集する集塵機2が設置される。この集塵機2は、トラック等がトンネル坑内1中央部を通る関係上、トンネル坑内1の左右壁面のいずれか側に近づけて設置される。
【0020】
また、集塵機2は、集塵機本体6とコンテナ専用車状の車両7が一体に設けられ、集塵機本体6が車両7上に一体的に搭載されている(図2)。従って、集塵機2は、車両7を操作することにより容易に移動可能になっている。集塵機本体6には、その左右側部にダストエアを吸引する吸込口6aが複数配置され、上後方部にエアカーテンの送風を兼ねたダストエアの吸引用送風機6bが内部に搭載されている。また、集塵機本体6の後方(坑口8側)には、集塵処理後のクリーンエアを利用して作動する2つの前・後エアカーテン装置9a,9bが、離間して備えられている。各前・後エアカーテン装置9a,9bからはそれぞれ提供されたエアが噴射されて、トンネル坑内1の径方向に第1と第2のエアカーテン10a,10bが隔てて形成される。
【0021】
前・後エアカーテン装置9a,9bは、それぞれ噴射ノズル部11が設けられている。各噴射ノズル部11は、3方(上と左右)に配置され、上方の噴射ノズル11aと左右の噴射ノズル11bは、噴射エアがそれぞれ坑内1の径方向に、即ち壁面に向って広がるように先端が拡大したノズル口になっている(図4(a))。
【0022】
前エアカーテン装置9aの噴射ノズル11a及び噴射ノズル11bは、それぞれスライドして流量が調節可能になっている(噴射ノズル11bのみでもよい)。また、その噴射ノズル11bは、エアカーテン10aが壁面到達よりもトンネル坑内1の径方向中央部分(トラックが主に通過する該当部分)が最も重点的にカーテン効果(遮蔽効果)が生ずるように設計されている。
【0023】
後エアカーテン装置9bの噴射ノズル11a及び噴射ノズル11bは、噴出エアの風速及び風量を上昇させるため、噴射ノズル部11を収縮管にし、その中間に設けられている(図4(b),(c))。噴射ノズル11a及び噴射ノズル11bは、前記同様にそれぞれスライドして流量が調節可能になっている(噴射ノズル11bのみでもよい)。
【0024】
図5は、後エアカーテン装置9bの噴射ノズル部11の設計にあたって考慮した点について、示したものであり、後エアカーテン装置9bにより形成されたエアカーテン10a,10bが所要仕様を満たしてない場合は、図5(a)のように粉塵の漏洩が発生するが、エアカーテンの吐出方向,所要風量,風速,壁面到達時風速を解析し選定することにより、図5(b)のように粉塵の漏洩がなくなる。特にエアカーテン10bは60Hz 運転時に風速最大等の問題がなく、30〜40Hz 運転時においても壁面到達時風速が確保できる条件で設計した。
【0025】
また、エアカーテン10bを形成するにあたり、次のことを考慮した。エアカーテン10bは、トンネル坑内1を遮蔽する必要性から放射状に噴射する必要がある。しかし、噴射されるエアは、集塵機2の吐出風を利用する関係上、一定ではなく、また集塵機2は、トラック等がトンネル坑内1中央部を通る関係上、左右いずれかの壁面に近づけて設置される。従って、集塵機2の設置場所毎に所要風量が変わる。
【0026】
そこで、集塵機2の風速と壁面までの到達所要風量を考慮して、噴射ノズル11a及び噴射ノズル11bの形状を設定し、噴射ノズル11bを図4(d)のような立体形状に設計した。なお、噴射するクリーンエアの流方向を矢印で示す。
【0027】
そして、第1のエアカーテン10aは、風速重視を目的としたエアカーテンとして構成され、適切な流量,流速,風向に選定されている。また、トラックが通過する坑内1の径方向中央部分が、最も速くなるように配慮してトラック通過時の粉塵拡散を軽減している。
また、第2のエアカーテン10bは、風量重視を目的としたエアカーテンとして構成され、適切な流量,流速,風向に選定されトラック通過時の後方への拡散を防止している。
【0028】
ここで集塵機2を駆動すると、吸引作用が働いてトンネル切羽4の近傍に存在するダストエア12を機内に取り込んで浄化が行われる。ダストエア12は、集塵機2で粉塵処理されて、クリーンエアが集塵機2後方から取り出される。この集塵処理後のクリーンエアを利用して前・後エアカーテン装置9a,9bの運転が行われる。
【0029】
前・後エアカーテン装置9a,9bが駆動すると、供給されたエアが噴射ノズル部11からトンネル坑内1の径方向に異なる角度で壁面に向って放射状に噴射されて、前・後2つの第1と第2のエアカーテン10a,10bが隔てて設けられる。また、両エアカーテン10a,10b間には、エア層からなるクッションスペース13が形成される。これら第1,第2のエアカーテン10a,10bとクッションスペース13によってサンドイッチ構造の2重のエアカーテンが形成される。トンネル切羽4の近傍に存在するダストエア12は2重のエアカーテンに遮蔽され、遮蔽されたダストエア12は集塵機2で吸引されて集塵処理される。
【0030】
図6及び図7は、エアカーテン等による遮蔽状態を示したものであり、例えば、エアカーテン10、即ち1つのエアカーテンのみ存在する場合には、土砂を積載したトラック等(車両)14の通過に伴う吐出風等によって粉塵の拡散が見られ、坑口8側へ漏洩が生じ易い(図6(a)の平面図,図6(b)の断面図)。
【0031】
しかし、本実施形態の如く前・後2つの第1と第2のエアカーテン10a,10bが設けられた場合には、土砂を積載したトラック14の通過に伴う吐出風等によって第1のエアカーテン10aを通る粉塵の拡散があっても、ダストエア12は第1と第2の両エアカーテン10a,10bの間に設けられたクッションスペース13に留められ、第2のエアカーテン10bの流出は殆どなく漏洩は低減される(図7(a)の平面図,図7(b)の断面図)。
【0032】
また、クッションスペース13に侵入した粉塵は、集塵機2の処理風量と換気風量の差により生ずる戻り流C(戻り流C=クリーンエア量B−送気エア量A)によりトータルで切羽4側へ随時移動し、この戻り流Cによっても粉塵の流出が防止され、また集塵効果が高められる。
【0033】
図8は、本発明の他の実施の形態に係る集塵機を備えたトンネル坑内の断面図であり、集塵機15は、前記実施形態と同様に集塵機本体16とコンテナ専用車状の車両17が一体に設けられている。集塵機本体16の後方側(坑口側8)には、集塵処理後のクリーンエアを利用して作動する2つの前・後エアカーテン装置19a,19bが、離間して設けられている。この実施形態の集塵機15には、集塵機本体16にトンネル切羽4に向かって漸次拡大する袖付き吸引口18が取付けられている。
【0034】
そして、トンネル坑内1には、2つの前・後エアカーテン装置19a,19bによって前・後2つの第1と第2のエアカーテン20a,20bが隔てて設けられ、袖付き吸引口18と壁面との間にエア層からなる第1のクッションスペース21が形成され、また両エアカーテン20a,20b間には、第2のクッションスペース22が形成される。
【0035】
これら形成された前・後2つの第1と第2のエアカーテン20a,20bと第1のクッションスペース21及び第2のクッションスペース22によりトンネル切羽4近傍に存在するダストエア12がほぼ確実に遮蔽されて坑口8側への漏洩がより確実に低減される。また、ダストエア12は、袖付き吸引口18に強力に吸引されて、集塵機15でほぼ確実に集塵処理される。
【0036】
本発明はトンネル坑内に設置する集塵機に適用されるが、粉塵が比較的多く発生する工場等やその他の場所で利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施の形態に係る集塵機を備えたトンネル坑内の断面図である。
【図2】その集塵機自体の側面図である。
【図3】トラック通過時のトンネル坑内の平面図である。
【図4】噴射ノズル部分の断面図,その上・側の外形図及び噴射ノズルの斜視図である。
【図5】エアカーテンが不十分な場合の粉塵が漏洩する状態とエアカーテンが十分な場合の粉塵を遮蔽する状態を示す各斜視図である。
【図6】1つのエアカーテンの場合の粉塵が漏洩する状態を示す平面図及びその断面図である。
【図7】2つのエアカーテンの場合の粉塵を遮蔽する状態を示す平面図及びその断面図である。
【図8】本発明の他の実施の形態に係る集塵機を備えたトンネル坑内の断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 トンネル坑内、 2,15 集塵機、 6,16 集塵機本体、 7,17 車両、 8 坑口、 9a,9b、19a,19b エアカーテン装置、 18 袖付き吸引口


【特許請求の範囲】
【請求項1】
集塵処理後のクリーンエアを利用した前・後エアカーテン装置が、集塵機本体の後方側に離間して具備されていることを特徴する集塵機。
【請求項2】
前記集塵機本体は、車両と一体に設けられている請求項1記載の集塵機。
【請求項3】
前記集塵機本体には、袖付き吸引口が取付けられている請求項1又は2記載の集塵機。
【請求項4】
前記前エアカーテン装置は、風速重視のエアカーテンが形成される構成になっている請求項1乃至3のいずれか記載の集塵機。
【請求項5】
前記後エアカーテン装置は、風量重視のエアカーテンが形成される構成になっている請求項1乃至3のいずれか記載の集塵機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−154502(P2007−154502A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−350603(P2005−350603)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【出願人】(000005924)株式会社三井三池製作所 (43)