説明

集熱レシーバー及び太陽熱発電装置

【課題】 ヘリオスタットを介して照射される太陽光を効率よく吸収し、熱に変換することが可能な集熱レシーバーを提供すること。
【解決手段】 太陽熱発電装置に使用される集熱レシーバーであって、上記集熱レシーバーは、熱媒体を通過させるための複数の流路が形成された1個又は複数個のハニカムユニットからなる熱吸収体と、該熱吸収体を支持するとともに、熱媒体を流通させる支持体からなり、上記ハニカムユニットは、多孔質炭化ケイ素と、多孔質炭化ケイ素中の気孔を充填するシリコンとを含んで構成され、太陽光が照射される面における表面から所定の深さの表面領域は、多孔質層からなり、多孔質層にシリコンが充填されていないことを特徴とする集熱レシーバー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集熱レシーバー及び太陽熱発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽を利用した発電方法として、太陽熱発電が知られている。太陽熱発電は、太陽から照射される光を反射鏡等を介して集光し、得られる太陽熱を利用して蒸気タービンを駆動させ、発電するものである。この太陽熱発電は、発電中に二酸化炭素等の温室効果ガスを発生することがないうえ、蓄熱することが可能であるので、曇天や夜間でも発電が可能である。そのため、太陽熱発電は、将来、有望な発電方法として注目を集めている。
【0003】
太陽熱発電の方式には、大きく分けて、トラフ型、タワー型の2種類がある。タワー型太陽熱発電は、多数のヘリオスタットと呼ばれる平面鏡を用いて、中央部に設置されたタワーにある集熱レシーバーに太陽光を集中させることで集光し、その熱で発電する発電方式である。ヘリオスタットは、数メートル四方の平面鏡であり、タワー型太陽熱発電では、数百枚から数千枚のヘリオスタットを用いて集められた太陽光を一箇所に集中させることが出来るため、集熱レシーバーを1000℃程度まで加熱することが可能であり、タワー型太陽熱発電は、熱効率が良いという特徴を有する。
【0004】
このタワー型太陽熱発電用の集熱レシーバーとして、特許文献1には、熱媒体を通過させるための多数のガス流路を備えた炭化ケイ素製、又は、シリコンと炭化ケイ素からなる熱吸収体が漏斗型の支持体に収納、支持されたものが開示されている。
集熱レシーバーでは、エアーやエアーを含む混合ガスからなる熱媒体を加熱された熱吸収体の流路を通過させ、これにより熱媒体が熱を得ることができる。タワー型太陽熱発電では、得られた熱により水を沸騰させて蒸気とし、蒸気タービンを回して発電を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6003508号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記集熱レシーバーは、ヘリオスタットを介して照射される太陽光を吸収し、効率よく熱に変換する必要があるが、特許文献1等に記載された集熱レシーバーは、太陽光が照射される面が平面であるため、太陽光の反射率が充分に低いとは言えず、吸収効率が高くないという問題があり、さらに吸収効率のよい集熱レシーバーが求められている。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためにされたものであり、ヘリオスタットを介して照射される太陽光を効率よく吸収し、熱に変換することが可能な集熱レシーバー及びそれを用いた太陽熱発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、請求項1に記載の集熱レシーバーは、太陽熱発電装置に使用される集熱レシーバーであって、
上記集熱レシーバーは、熱媒体を通過させるための複数の流路が形成された1個又は複数個のハニカムユニットからなる熱吸収体と、該熱吸収体を収納、支持するとともに、熱媒体を流通させる支持体からなり、上記ハニカムユニットは、多孔質炭化ケイ素と、多孔質炭化ケイ素中の気孔を充填するシリコンとを含んで構成され、太陽光が照射される面における表面から所定の深さの表面領域は、多孔質層からなり、多孔質層の気孔にはシリコンが充填されていないことを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の集熱レシーバーでは、ハニカムユニットは、多孔質炭化ケイ素と、多孔質炭化ケイ素中の気孔を充填するシリコンとを含んで構成されているため、緻密体となり、熱吸収体の蓄熱性が高くなる。また、多孔質炭化ケイ素の気孔をシリコンで充填した緻密体は、熱伝導率が高いので、得られた熱をスムーズに空気等の熱媒体に伝達することができる。
【0010】
また、請求項1に記載の集熱レシーバーでは、ハニカムユニットの太陽光が照射される面における表面から所定の深さの表面領域は、多孔質層からなり、多孔質層の気孔にはシリコンが充填されていないので、シリコンにより太陽光が反射するのを防止することができる。また、請求項1に記載の集熱レシーバーでは、太陽光がハニカムユニット表面の多孔質層の中に入り込み易く、多孔質層内で反射された光は、多孔質層内の別の壁等に当たり、外部に出射されにくくなる。そのため、照射された太陽光を、効率よく熱に変換することができ、効率よく発電を行うことが出来る。
【0011】
請求項2に記載の集熱レシーバーでは、上記ハニカムユニットは、さらに、多孔質カーボンを含んで構成され、上記ハニカムユニットの表面領域は、多孔質カーボン層からなるので、ハニカムユニットの表層領域自体の太陽光の反射率が低下し、熱吸収効率が高くなる。
【0012】
請求項3に記載の集熱レシーバーでは、上記ハニカムユニットの表面領域は、表面から500nm以上の深さを有する。表面領域を上記範囲に設定したのは、表面領域の深さが500nm未満では、表面領域が浅すぎるため、上記ハニカムユニットに含まれるシリコンによる太陽光の反射等が発生し、熱吸収効率が低下してしまうからである。
【0013】
請求項4に記載の集熱レシーバーでは、上記ハニカムユニットには、31.0〜93.0個/cmの流路が形成され、上記ハニカムユニットの流路間の壁部の厚さは、0.1〜0.5mmであり、上記多孔質炭化ケイ素の気孔率は35〜60%、平均気孔径は5〜30μmである。このような気孔率、気孔径であると、上記多孔質炭化ケイ素にシリコンが充填され易くなる。このようにして得られる緻密なハニカムユニットの流路をこのように構成することで、上記流路を熱媒体が流通する際、上記ハニカムユニットからなる熱吸収体から上記熱媒体に効率よく熱が伝達され、その結果、高い効率で発電を行うことができる。
【0014】
本発明に係るハニカムユニットでは、流路に対して垂直な断面を形成した際、1cm当たりの流路の数は、31.0〜93.0個/cmであることが望ましい。ハニカムユニットの流路の数が31.0個/cm未満である場合には、ハニカムユニットの流路の数が少ないため、ハニカムユニットが熱媒体と効率よく熱交換することが難しくなる。一方、ハニカムユニットの流路の数が93.0個/cmを超えると、ハニカムユニットの1つの流路の断面積が小さくなるため、熱媒体が流通しにくくなる。
【0015】
請求項5に記載の集熱レシーバーでは、上記熱吸収体と上記支持体との間には断熱材が介装されており、上記断熱材により上記熱吸収体をしっかりと保持するとともに、上記断熱材により上記熱吸収体から上記支持体への熱の逃散を効果的に防止することができる。
【0016】
請求項6に記載の集熱レシーバーでは、複数個のハニカムユニットが側面に形成された接着材層を介して接着されて構成されているので、ハニカムユニット同士がしっかりと接着され、熱吸収体に含まれるハニカムユニットの流路を流れる熱媒体の流れの力により、一部のハニカムユニットが抜けるのを防止することができる。
【0017】
請求項7に記載の集熱レシーバーでは、上記熱吸収体は、複数個のハニカムユニットが側面に形成されたシリコン層を介して接着されて構成されているので、ハニカムユニット同士がしっかりと接着され、熱吸収体に含まれるハニカムユニットの流路を流れる熱媒体の流れの力により、一部のハニカムユニットが抜けるのを防止することができる。
【0018】
請求項8に記載の太陽熱発電装置では、請求項1〜7のいずれかに記載の集熱レシーバーが用いられているので、照射された太陽光を、効率よく熱に変換することができ、効率よく発電を行うことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1(a)は、本発明の第一実施形態に係る集熱レシーバーを模式的に示す縦断面図であり、図1(b)は、図1(a)に示した集熱レシーバーのA−A線断面図である。
【図2】図2は、図1(a)に示した集熱レシーバーの表面領域近傍を示す拡大断面図である。
【図3】図3(a)は、本発明の太陽熱発電装置を構成するレシーバーアレイを模式的に示す正面図であり、図3(b)は、図3(a)に示したレシーバーアレイのB−B線断面図である。
【図4】図4は、本願発明に係る太陽熱発電装置を模式的に示す説明図である。
【図5】図5は、本発明の実施例1及び比較例1及び2の評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第一実施形態)
以下、本発明の集熱レシーバーの一実施形態である第一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1(a)は、本発明の第一実施形態に係る集熱レシーバーを模式的に示す縦断面図であり、図1(b)は、図1(a)に示した集熱レシーバーのA−A線断面図である。図1(a)は、集熱レシーバーに収納された熱吸収体を構成するハニカムユニットの流路に平行に切断した縦断面図であり、図1(b)は、上記流路に垂直な断面を示す断面図である。
図2は、本発明の第一実施形態に係わるハニカムユニットの表面領域近傍を示す拡大断面図である。
【0021】
図1(a)、(b)及び図2に示すように、本発明に係わる集熱レシーバー10は、熱媒体14を通過させるための多数の流路13bが並設されたハニカムユニット13が接着材として機能するシリコン15(シリコンからなる接着材層、以下、シリコン層ともいう)を介して複数個接着された熱吸収体11と、熱吸収体11を収納、支持するとともに、熱媒体14を流通させる支持体12とを含んで構成されている。そして、熱吸収体11と支持体12の間には、無機繊維からなる断熱材17が介装され、この断熱材17を介して熱吸収体11が支持体12に支持、固定されている。
【0022】
ハニカムユニット13は、開気孔を有する多孔質炭化ケイ素16と多孔質炭化ケイ素16中の開気孔を充填するシリコン15とからなり、ハニカムユニット13の太陽光18が照射される面における表面から所定の深さの表面領域は、多孔質層13aから構成されている。図2には、ハニカムユニット13の表面領域の多孔質層13aの詳しい構造を示している。多孔質層13a以外の気孔には、シリコン15が充填されて緻密体となっているが、多孔質層13aの部分には、シリコン15が存在せず、開気孔を有する多孔質体となっている。
【0023】
このため、ヘリオスタットにより反射した太陽光18が、直接、シリコン15に当たりにくくなっており、シリコン15により太陽光18が反射するのを防止することができる。また、ハニカムユニット13の表面領域が多孔質層13aとなっているので、太陽光18が多孔質層13aの中に入り込み易く、多孔質層13a内で反射された光は、多孔質層13a内の別の壁等に当たり、外部に出射されにくい。このため、照射された太陽光18を、効率よく熱に変換することができる。
【0024】
多孔質層13aは、多孔質層炭化ケイ素16のみからなるものであってもよい。多孔質層13aが多孔質炭化ケイ素16からなる場合、多孔質炭化ケイ素16の開気孔の全部をシリコン15で充填し、多孔質炭化ケイ素16の表面領域に一旦充填されたシリコン15を何らかの方法で除去した状態のものとすることによりハニカムユニット13を作製することができる。また、多孔質層13aは、シリコン15を取り除くことにより露出した多孔質炭化ケイ素16をさらにカーボンに変換させたものであってもよい。
【0025】
多孔質層13a中の多孔質炭化ケイ素16をカーボンに変換する方法としては、例えば、多孔質炭化ケイ素16の回りの雰囲気を0.8Torr以下の真空にし、1600〜1700℃で96時間以上加熱処理を行う方法が挙げられる。これにより、炭化ケイ素からケイ素が抜け、炭化ケイ素がカーボンに変換される。
【0026】
多孔質層13aが炭化ケイ素からなる場合には、多孔質層13aの表面領域の厚さの下限値は、400nm(0.40μm)が望ましく、40μmがより望ましく、上限値は、2mmが望ましい。多孔質層13aがカーボンからなる場合には、多孔質層13aの厚さの下限値は、400nm(0.40μm)が望ましく、650nm(0.65μm)がより望ましく、上限値は、2mmが望ましい。
この範囲にあると、太陽光を反射し難く、太陽光を良好に吸収することができ、また、収集した熱の熱媒体への熱伝達も良好である。多孔質層13aの表面領域の厚さが下限値より薄いと、太陽光が緻密層まで到達し、一方、多孔質層13aの表面領域の厚さが上限値より厚いと、緻密体領域が相対的に減少し、熱媒体への熱の伝達量が低下し易い。
多孔質層13aがカーボンからなる場合に、カーボンが太陽光18を吸収しやすいので、多孔質層13aの厚さを、薄く設定することが可能である。
特には、多孔質層13aが炭化ケイ素からなる場合には、表面領域の厚さは、0.40μm〜78μmが望ましく、47〜78μmがより望ましい。多孔質層13aがカーボンからなる場合には、表面領域の厚さは、0.40〜78μmが望ましく、0.65〜78μmがより望ましい。
【0027】
本発明に係る集熱レシーバー10において、多孔質炭化ケイ素16の気孔率は35〜60%が望ましい。上記気孔率が35%未満であると、上記気孔の一部が閉気孔となり、シリコン15を全部の気孔に充填するのが困難となる。一方、上記気孔率が60%を超えるとハニカムユニット13の強度が低下し、ハニカムユニット13の昇温、降温の繰り返し(熱履歴)により破壊され易くなる。
なお、上記気孔率は、水銀圧入法により測定した。
【0028】
多孔質炭化ケイ素16の平均気孔径は、5〜30μmが望ましい。多孔質炭化ケイ素16の平均気孔径が5μm未満であると、気孔の一部が閉気孔になり易く、シリコン15を充填するのが難しくなる。一方、多孔質炭化ケイ素16の平均気孔径が30μmを超えると、多孔質炭化ケイ素16の機械的強度が低下し、ハニカムユニット13の強度も低下する。
【0029】
シリコン15は、多孔質炭化ケイ素100重量部に対して15〜50重量部含浸されていることが好ましい。この範囲で多孔質炭化ケイ素16にシリコン含浸を行うことにより、シリコン15が多孔質炭化ケイ素16中の開放気孔内に埋まり込んでハニカムユニットは、緻密体となる。
【0030】
本発明に係るハニカムユニット13では、流路13bに対して垂直な断面を形成した際、1cm当たりの流路13bの数は、31.0〜93.0個/cmであることが望ましい。ハニカムユニット13の流路13bの数が31.0個/cm未満である場合には、ハニカムユニット13の流路13bの数が少ないため、ハニカムユニット13が熱媒体14と効率よく熱交換することが難しくなる。一方、ハニカムユニット13の流路13bの数が93.0個/cmを超えると、ハニカムユニット13の1つの流路13bの断面積が小さくなるため、熱媒体14が流通しにくくなる。
【0031】
また、ハニカムユニット13の流路間の壁部の厚さは、0.1〜0.5mmが好ましい。ハニカムユニット13の壁部の厚さが0.1mm未満では、ハニカムユニットの壁部の機械的強度が低下し、破損し易くなる。一方、ハニカムユニット13の壁部の厚さが0.5mmを超えると、ハニカムユニット13の壁部が厚くなりすぎ、ハニカムユニット13の面積に対する熱媒体14の流通量が低下するため、熱効率が低下する。
【0032】
本発明では、多孔質炭化ケイ素16を、シリコン15を充填するための多孔質セラミックとして使用しているが、他の多孔質セラミックを用いることも可能である。他の多孔質セラミックとしては、例えば、窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化ホウ素等の窒化物セラミック、炭化珪素、炭化ジルコニウム、炭化タンタル等の炭化物セラミックを挙げることができる。これらのセラミックは、それ自体が高い熱伝導率を有している。
【0033】
複数のハニカムユニット13を用いて熱吸収体11を作製する場合には、ハニカムユニット13(多孔質炭化ケイ素16)の内部に充填されているシリコン15と同じ材料であるシリコン15を接着材として用い、接着材層を形成してハニカムユニット13同士を接着して熱吸収体11とすることができる。
【0034】
なお、図1(b)において、ハニカムユニット13の流路13bの断面形状を四角形にしているが、ハニカムユニット13の流路13bの断面形状は、特に限定されず、六角形等であってもよい。また、図1(b)に示す支持体12の断面図形も、四角形であるが、支持体12の断面図形は特に四角形に限定されず、六角形等であってもよい。
【0035】
支持体12は、上述のように、図1(b)に示すような正面から見た断面形状は、四角形、六角形等の形状であるが、支持体12の全体的な形状は、漏斗形状である。すなわち、熱吸収体11が収納され、熱媒体14が流入する部分である集熱部12aの断面(熱吸収体11の太陽光18を受ける面に平行な断面)は大面積であるが、断面を熱媒体14の出口方向に平行移動していくと、断面の面積は次第に小さくなり、その後、ガス出口12bでは、断面の面積は略一定面積となる。
【0036】
支持体12の材料は特に限定されるものではないが、熱吸収体11は1000℃前後となるため、支持体12は耐熱性を有する必要があり、金属又はセラミックが好ましい。
金属材料としては、例えば、鉄、ニッケル、クロム、アルミニウム、タングステン、モリブデン、チタン、鉛、銅、亜鉛及びこれら金属の合金等が挙げられる。また、セラミックとしては、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化チタン等の窒化物セラミック、炭化ジルコニウム、炭化チタン、炭化タンタル、炭化タングステン等の炭化物セラミック、シリカ、アルミナ、ムライト、ジルコニア等の酸化物セラミック等が挙げられる。支持体12の材料としては、その他に、例えば、金属と窒化物セラミックの複合体、金属と炭化物セラミックの複合体等も挙げられる。これらのなかでは、耐熱性等の点から、アルミナ、炭化ケイ素等のセラミックが好ましい。
【0037】
本発明の集熱レシーバー10では、熱吸収体11と支持体12との間に断熱材17が介装されている。
断熱材17の材料は特に限定されるものではなく、無機繊維、無機粒子、無機バインダ等、種々の無機材料を含むものであってもよいが、無機繊維からなるマット状のものが好ましい。本実施形態では、断熱材として無機繊維からなる平面視矩形のマットを使用した例について、以下に説明する。
この断熱材17は、無機繊維からなる平面視矩形のマットが1個又は複数積層されて構成されたものであり、この断熱材17を熱吸収体11の側面に巻き付けた状態で、支持体12に収納することにより、熱吸収体11を支持体12の内部に支持、固定することができる。
【0038】
上記マットを構成する無機繊維としては、特に限定されず、アルミナ−シリカ繊維であってもよく、アルミナ繊維、シリカ繊維等であってもよい。無機繊維の材料は、耐熱性や耐風蝕性等、シール材に要求される特性等に応じて変更すればよい。アルミナ−シリカ繊維を無機繊維として用いる場合には、例えば、アルミナとシリカとの組成比が、60:40〜80:20の繊維を用いることが好ましい。
【0039】
上記マットには、ニードルパンチング処理が施されていることが望ましい。マットにニードルパンチング処理が施されることにより、マットを構成する無機繊維のシート等の構成材料がばらばらになりにくく、1つのまとまったマット状となる。また、マットが上記長手方向に垂直な幅方向でニードルパンチング処理されていると、ニードルパンチング処理した部分でマットの幅方向に折り目がついたようになることから、マットを被巻着体へ巻き付ける際に巻き付けやすくなる。
【0040】
また、断熱材17として、上記マットに、アクリル系樹脂等を含む有機バインダを含浸させ、圧縮乾燥させることにより、その厚さを薄くしたものを用いてもよい。、熱吸収体11に断熱材17を巻き付け、支持体12に押し込んで支持体12に熱吸収体11を取り付けた後、太陽光18の反射光を熱吸収体11に照射すると、熱吸収体11の温度が1000℃近くに上昇する。そのため、有機バインダは分解、消失し、有機バインダによる圧縮状態が開放される。その結果、熱吸収体11は、しっかりと支持体12に保持、固定されることとなる。断熱材17の厚さは、3〜14mmが望ましい。
【0041】
以下、本実施形態に係る集熱レシーバーの製造方法について説明する。
まず、ハニカムユニットを構成する多孔質炭化ケイ素を製造する。
多孔質炭化ケイ素を製造する際には、原料として平均粒子径の異なる炭化ケイ素粉末と、有機バインダ、可塑剤、潤滑剤、水等とを混合して、成形用の湿潤混合物を調製する。
【0042】
続いて、上記湿潤混合物を押出成形機に投入して押出成形する成形工程を行い、長手方向に多数の流路が形成された四角柱形状のハニカムユニットの成形体を作製する。
【0043】
次に、ハニカムユニットの成形体の両端を切断装置を用いて切断する切断工程を行い、ハニカムユニットの成形体を所定の長さに切断し、切断したハニカムユニットの成形体を乾燥機を用いて乾燥する。
【0044】
次に、ハニカムユニットの成形体中の有機物を脱脂炉中で加熱する脱脂工程を行い、焼成炉に搬送し、焼成工程を行ってハニカムユニットの焼成体(多孔質炭化ケイ素)を作製する。なお、ハニカムユニットの焼成体は、単にハニカムユニットともいうこととする。
【0045】
続いて、ハニカムユニットの焼成体に金属を含浸する金属含浸工程を行う。
ハニカムユニットの焼成体にシリコンを含浸する場合、例えば、前もってハニカムユニットの焼成体に炭素質物質を含浸しておくことが好ましい。このような炭素質物質としては、例えば、フルフラール樹脂、フェノール樹脂、リグニンスルホン酸塩、ポリビニルアルコール、コーンスターチ、糖蜜、コールタールピッチ、アルギン酸塩等の各種有機物質を挙げることができる。なお、カーボンブラック、アセチレンブラックのような熱分解炭素も同様に使用することができる。
【0046】
上記炭素質物質をあらかじめハニカムユニットの焼成体に含浸する理由は、ハニカムユニットの焼成体の開放気孔の表面に新たな炭化珪素の膜が形成されるため、これによって溶融シリコンとハニカムユニットの焼成体との結合が強固なものとなるからである。また、炭素質物質の含浸によって、ハニカムユニットの焼成体の強度も強くなるからである。
【0047】
また、シリコンをハニカムユニットの焼成体の開放気孔中へ充填する方法としては、例えば、シリコンを加熱溶融させて開気孔に吸い込ませ、充填する方法を挙げることができる。この場合、ハニカムユニットの焼成体の上面又は下面(端面を除く側面)に塊状、粉末状又は粒子状のシリコンを載置し、真空条件下、1450℃以上でシリコンを溶解させ、ハニカムユニットの焼成体の開気孔中にシリコンを充填させる。上記作業を繰り返し行うこと、又は、載置するシリコンの重量を変化させること等により、ハニカムユニットの焼成体に対するシリコンの含浸率を制御することができる。
【0048】
また、微粉化したシリコンを分散媒液中に分散させ、この分散媒液をハニカムユニットの焼成体に含浸させて乾燥した後、シリコンの溶融温度以上に加熱するという方法も適用することができる。
また、上記した金属含浸工程は、ハニカムユニットの成形体(即ち、焼成工程前のハニカムユニット)に対して行ってもよい。この方法によると、省電力化を図ることができ、製造コストを抑えることができる。
【0049】
上記方法によりシリコンが充填されたハニカムユニットを得ることができる。ハニカムユニットは、そのまま、1つのハニカムユニットで熱吸収体として使用することもできるが、複数のハニカムユニットを接着材で接着して熱吸収体とすることもできる。複数のハニカムユニットが接着材層を介して接着された熱吸収体は、以下の方法により作製することができる。
すなわち、シリコンを接着材として使用し、複数のハニカムユニットをシリコン層を介して接着する際には、多孔質炭化ケイ素(ハニカムユニットの焼成体)に対するシリコンの充填と接着とを同時に行う。この場合には、例えば、微粉状シリコンを含浸させた複数のハニカムユニットの焼成体を所定の固定具等を用いて熱吸収体の形状となるように組み合わせた後、加熱する。また、他の方法として、シリコンを含浸させていないハニカムユニットの焼成体を複数個組み合わせた後、真空下、ハニカム焼成体の上面、下面(端面を除く側面)等にシリコンを載置し、加熱する方法も採用することができる。
さらに、シリコンの粉末をスラリー状にしたものをハニカムユニットの焼成体の側面に塗布し、塗布面を介して二つのハニカム焼成体を接触させた状態で加熱することにより接着し、この作業を繰り返してもよい。
【0050】
上記方法により、ハニカムユニットの焼成体(多孔質炭化ケイ素)の開気孔中にシリコンが充填されるとともに、ハニカムユニットの焼成体の側面の間にもシリコンが広がっていき、接着層を形成し、ハニカム焼成体同士をシリコンを介して接着することができる。
【0051】
シリコンが充填されたハニカムユニット(多孔質炭化ケイ素)に多孔質層を形成する際には、ハニカムユニットの表面から所定の深さの表面領域のシリコンをエッチング等により除去する必要がある。
シリコンをエッチングする方法としては、液を用いたウエットエッチング、ガスを用いたドライエッチング等が挙げられる。ウエットエッチングの方法としては、フッ酸と硝酸とを混合したフッ硝酸、水酸化カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)等を用いてシリコンをエッチングする方法が挙げられる。また、ドライエッチングの方法としては、フロン等を用いたプラズマエッチング等によりシリコンのエッチングを行う方法が挙げられる。
また、シリコンが充填されたハニカムユニットを、真空下、加熱することにより、シリコンを蒸発させる方法をとることもできる。
【0052】
さらに、上記方法によりハニカムユニットの表面領域に多孔質層を形成し、場合によっては、上述した方法により、多孔質層の多孔質炭化ケイ素をさらに炭素(カーボン)に変換してもよい。
【0053】
支持体は、従来から用いられている方法を用いることにより作製することができる。セラミックからなる支持体を作製する際には、セラミック粉末、有機バインダ等を含む混合物の加圧成形、射出成形、鋳込成形等を行った後、脱脂工程、焼成工程を経ることにより、支持体を作製することができる。
【0054】
集熱レシーバー10を組み立てる際には、上記方法により作製した熱吸収体11の周囲に断熱材17を巻き付け、断熱材17が巻きつけられた熱吸収体11を支持体12に押し込んで固定することにより、集熱レシーバー10を組み立てることができる。
【0055】
以下、本実施形態の集熱レシーバーの作用効果について列挙する。
(1)本実施形態の集熱レシーバーにおいては、熱吸収体に含まれるハニカムユニットが、多孔質炭化ケイ素と、多孔質炭化ケイ素中の気孔を充填するシリコンとを含んで構成されているため、ハニカムユニットは緻密体となる。ハニカムユニットは、緻密体であるので、その熱容量が大きくなり、ハニカムユニットの蓄熱性が高くなる。また、ハニカムユニットは、多孔質炭化ケイ素とシリコンとで構成される緻密体であるので、熱伝導率が高く、得られた熱をスムーズに空気等の熱媒体に伝達することができる。
【0056】
(2)本実施形態の集熱レシーバーでは、ハニカムユニットの太陽光が照射される面の表面から所定の深さの表面領域は、多孔質層からなるので、シリコンにより太陽光が反射するのを防止することができる。、また、本実施形態の集熱レシーバーは、太陽光がハニカムユニットの多孔質層の中に入り込み易く、ハニカムユニットの多孔質層内で反射された光は、多孔質層内の別の壁等に当たり、外部に出射されにくくなる。そのため、照射された太陽光を、効率よく熱に変換することができ、効率よく発電を行うことが出来る。
【0057】
(3)本実施形態の集熱レシーバーで、ハニカムユニットの表面領域の多孔質層が多孔質のカーボン層からなる場合には、表層領域自体の太陽光の反射率がより低下し、熱吸収効率が高くなる。
【0058】
(4)本実施形態の集熱レシーバーでは、上記熱吸収体に含まれるハニカムユニットには、31.0〜93.0個/cmの流路が形成され、ハニカムユニットの流路間の壁部の厚さは、0.1〜0.4mmであり、上記ハニカムユニットの気孔率は35〜60%、平均気孔径は5〜30μmである。そのため、上記ハニカムユニットの気孔にシリコンが充填され易くなる。また、上記ハニカムユニットの流路を熱媒体が流通することにより、上記熱吸収体から上記熱媒体に効率よく熱が伝達され、その結果、高い効率で発電を行うことができる。
【0059】
(5)本実施形態の集熱レシーバーでは、上記熱吸収体と上記支持体との間には断熱材が介装されており、上記断熱材により上記熱吸収体をしっかりと保持するとともに、上記断熱材により、上記熱吸収体から上記支持体への熱の逃散を効果的に防止することができる。
【0060】
(6)本実施形態の集熱レシーバーでは、上記熱吸収体は、複数個のハニカムユニットが側面に形成されたシリコン層を介して接着されて構成されているので、ハニカムユニット同士がしっかりと接着され、熱吸収体の流路を流れる熱媒体の流れ方向の力が作用することによる、一部のハニカムユニットの抜け落ちを防止することができる。
【実施例】
【0061】
以下、本発明の第一実施形態をより具体的に開示した実施例を示すが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0062】
(実施例1)
(ハニカムユニットの焼成体の作製工程)
平均粒子径22μmを有する炭化ケイ素の粗粉末52.8重量%と、平均粒子径0.5μmの炭化ケイ素の微粉末22.6重量%とを混合し、得られた混合物に対して、アクリル樹脂2.1重量%、有機バインダ(メチルセルロース)4.6重量%、潤滑剤(日油社製 ユニルーブ)2.8重量%、グリセリン1.3重量%、及び、水13.8重量%を加えて混練して湿潤混合物を得る。次に、得られた湿潤混合物を押出成形する押出成形工程を行い、四角柱形状の生のハニカムユニットの成形体を作製した。
【0063】
次いで、マイクロ波乾燥機を用いて上記生のハニカムユニットの成形体を乾燥させ、ハニカムユニットの成形体の乾燥体とした。
【0064】
このハニカムユニットの成形体の乾燥体を400℃で脱脂する脱脂工程を行い、常圧のアルゴン雰囲気下2200℃、3時間の条件で焼成工程を行い、炭化ケイ素からなるハニカムユニットの焼成体を作製した。このハニカムユニットの焼成体の気孔率は42%、平均気孔径は11μm、大きさは34.3mm×34.3mm×45mm、セルの数(セル密度)は50個/cm、セル壁の厚さは0.25mm(10mil)であった。
【0065】
(シリコン充填工程)
次いで、得られた多孔質炭化ケイ素からなるハニカムユニットの焼成体にフェノール樹脂(炭化率30重量%)をあらかじめ常温、常圧で含浸し、続いて乾燥した。
【0066】
次に、ハニカムユニットの焼成体の上面及び下面(端面を除く側面)に粒子状のシリコンを載置し、真空条件下、1650℃で2時間保持してシリコンを溶解させ、ハニカムユニットの焼成体の開気孔中にシリコンを充填させた。
なお、炭化ケイ素100重量部に対する上記シリコンの含浸量は40重量部であった。
【0067】
得られたハニカムユニット13の熱伝導率は、120W/m・K、密度は、2.80g/cm であった。
【0068】
次に、49wt%フッ酸と61wt%硝酸と純水とを1:1:1の体積比で混合したフッ硝酸を用い、ハニカムユニット13の表面領域に存在するシリコンのエッチングを行った。すなわち、上記フッ硝酸の液に、ハニカムユニット13の太陽光18が照射される面を下にして10mmの深さで浸漬させ、1時間後に引き上げた。引き上げた後、ハニカムユニット13の表面領域を観察したところ、表面より47μmの深さまで、シリコンがエッチングされ、ハニカムユニット13(炭化ケイ素)の多孔質層13aのみが残存していた。
【0069】
(結束工程)
次いで、ハニカムユニット13の接着面に耐熱性の両面テープを貼着し、縦4個、横4個の合計16個のハニカムユニット13を耐熱性の両面テープを介して接着し、熱吸収体11とした。
【0070】
(実施例2)
ハニカムユニット13をフッ硝酸に含浸する時間を2時間としたほかは、実施例1と同様にして、ハニカムユニット13の表面より78μmの深さまでシリコンがエッチングされ、ハニカムユニット13(炭化ケイ素)の多孔質層13aのみが残存したハニカムユニット13を得た。得られたハニカムユニット13を用いて実施例1の結束工程と同様にして熱吸収体を作製した。
【0071】
(実施例3)
実施例1と同様にしてハニカムユニット13を作製した。次に、実施例1と同様の組成のフッ硝酸を用い、ハニカムユニット13の太陽光18が照射される面を下にして5mm浸漬し、1時間後に引き上げた。引き上げた後、ハニカムユニット13の表面領域を観察したところ、ハニカムユニットの表面より650nm(0.65μm)の深さまで、シリコンがエッチングされ、ハニカムユニット13(炭化ケイ素)の多孔質層13aのみが残存していた。
次に、得られたハニカムユニット13について、雰囲気を0.8Torrの真空にし、1650℃で96時間加熱処理を行い、ハニカムユニット13(多孔質炭化ケイ素16)からシリコンを抜き、カーボンに変換した。上記工程を経て得られたハニカムユニットを用いて実施例1の結束工程と同様にして熱吸収体を作製した。
【0072】
(実施例4)
実施例2と同様にして、ハニカムユニット13の表面より78μmの深さまでシリコンがエッチングされ、ハニカムユニット13(炭化ケイ素)の多孔質層13aのみが残存したハニカムユニット13を得た。次に、得られたハニカムユニット13について、雰囲気を0.8Torrの真空にし、1650℃で96時間加熱処理を行い、ハニカムユニット13(多孔質炭化ケイ素16)からシリコンを抜き、表面領域がカーボンに変換されたハニカムユニットを得た。得られたハニカムユニット13を用いて実施例1の結束工程と同様にして熱吸収体を作製した。
【0073】
(参考例1)
ハニカムユニット13をフッ硝酸に含浸する時間を1時間としたほかは、実施例1と同様にして、表面より400nm(0.40μm)の深さまでシリコンがエッチングされ、ハニカムユニット13(炭化ケイ素)の多孔質層13aのみが残存したハニカムユニット13を得た。得られたハニカムユニット13を用いて実施例1の結束工程と同様にして熱吸収体を作製した。
【0074】
(参考例2)
参考例1と同様にして、ハニカムユニット13の表面より400nm(0.40μm)の深さまでシリコンがエッチングされ、炭化ケイ素の多孔質層13aのみが残存したハニカムユニット13を得た。次に、得られたハニカムユニット13について、雰囲気を0.8Torrの真空にし、1650℃で96時間程度加熱処理を行い、ハニカムユニット13(多孔質炭化ケイ素16)からシリコン15を抜き、表面領域がカーボンに変換されたハニカムユニット13を得た。得られたハニカムユニット13を用いて実施例1の結束工程と同様にして熱吸収体を作製した。
【0075】
(比較例1)
フッ硝酸処理を行わなかったほかは、実施例1同様にして、多孔質層13aが形成されておらず、シリコンがハニカムユニット13の表面領域にも存在するハニカムユニット13を得た。得られたハニカムユニット13を用いて実施例1の結束工程と同様にして熱吸収体を作製した。
【0076】
(比較例2)
実施例1と同様にして、ハニカムユニットの焼成体を作製した後、シリコンの充填は行わず、作製したハニカムユニットの焼成体を用いて実施例1の結束工程と同様にして熱吸収体を作製した。
【0077】
(サンプルの評価)
まず、各実施例、参考例及び比較例で得られた熱吸収体の側面に、組成比がAl:SiO=72:28(重量比)からなる無機繊維のマットで、無機繊維の平均繊維径が5.1μm、平均繊維長60mm、嵩密度が0.15g/cm、目付量が1400g/mの断熱材17を14mmの厚さになるように巻き付け、温度測定用のサンプル(以下、単にサンプルという)とした。
【0078】
次に、パナソニック社製でRPS−500WB、100V、150Wのスポット写真用ランプを用い、サンプルの表面より100mmの距離から写真用ランプを30分間照射し、照射開始から照射終了後30分のサンプルの温度を10秒毎にサンプルに直接取り付けた熱電対により測定した。
図5は、実施例1及び比較例1、2の評価結果を示すグラフであり、縦軸は温度(℃)、横軸は、経過時間(秒)を示している。また、全ての実施例、参考例及び比較例について、評価結果を表1に示した。表1では、各実施例、比較例、参考例に係るサンプルの温度測定結果(最高温度、ランプの照射が終了して30分後の温度)を示した。また、併せてハニカムユニットのシリコン含浸割合(重量部/SiC100重量部)、熱伝導率(W/m・K)、多孔質層の材質及び多孔質層の厚さを示す。なお、熱伝導率の測定は、レーザフラッシュ法により行った。
【0079】
【表1】

【0080】
図5及び表1に示した結果より明らかなように、実施例1〜4に係るサンプルでは、比較例1のようなハニカムユニットの表面に多孔質層が形成されていないサンプルに比べて光の熱を吸収しやすく、温度が上昇し易い。また、実施例1〜4に係るサンプルは、熱容量が大きいので、比較例2のようなシリコンが充填されていないサンプルに比べると、温度の上昇は比較的ゆっくりであるが、ランプを照射を止めた後、サンプル温度の降下速度は小さく、ランプ照射を止めた30分後の温度は、シリコンが充填されたサンプルの温度の方が高くなった。
【0081】
なお、参考例1、2に示すように、多孔質層の厚さが0.40μm(400nm)と薄い場合には、多少、熱吸収体の太陽光の吸収率は低下すると考えられる。実施例1〜4の熱伝導率は120W/m・K、比較例2の熱伝導率は、45W/m・Kであり、シリコンを含浸することで熱伝導率を向上し、ハニカムユニットにシリコンを含浸することが望ましいことがわかる。
【0082】
(第二実施形態)
以下、本発明の集熱レシーバーの他の一実施形態である第二実施形態について説明する。
本実施形態に係る集熱レシーバーでは、複数のハニカムユニット13を接着、結束する接着材として接着材ペーストが使用され、接着材層が形成されているほかは、第一実施形態に係る集熱レシーバーと同様に構成されている。
【0083】
従って、以下においては、主に本実施形態に係る接着材ペーストについて説明する。
すなわち、第一実施形態において、複数のハニカムユニット13を用いて熱吸収体11を作製する場合には、多孔質炭化ケイ素16の内部に充填されているシリコン15と同じ材料であるシリコン15を接着材として用い、ハニカムユニット13同士を接着して熱吸収体11としている。
【0084】
一方、本実施形態においては、少なくとも無機粒子及び無機バインダを含む接着材ペーストを用いてハニカムユニット13を接着し、熱吸収体11とする。上記接着材ペーストは、無機繊維及び/又は有機バインダを含んでいてもよい。
【0085】
上記接着材ペーストに含まれる無機バインダとしては、例えば、シリカゾル、アルミナゾル等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。無機バインダのなかでは、シリカゾルが望ましい。接着材層には、これらの材料の固形分が残ることになる。
【0086】
また、上記無機バインダの含有量の下限は、固形分で、1重量%が望ましく、5重量%がさらに望ましい。一方、上記無機バインダの含有量の上限は、固形分で、30重量%が望ましく、15重量%がより望ましい。上記無機バインダの含有量が1重量%未満では、接着材層の接着強度の低下を招き易くなる。一方、上記無機バインダの含有量が30重量%を超えると、接着材層の熱伝導率の低下を招き易い。
【0087】
接着材ペーストに含まれる有機バインダとしては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。有機バインダのなかでは、カルボキシメチルセルロースが望ましい。
【0088】
上記有機バインダの含有量の下限は、固形分で、0.1重量%が望ましく、0.4重量%がより望ましく、一方、上記有機バインダの含有量の上限は、固形分で、5.0重量%が望ましく、1.0重量%がより望ましい。上記有機バインダの含有量が固形分で0.1重量%未満では、接着材層のマイグレーションを抑制するのが難しくなる。一方、上記有機バインダの含有量が固形分で5.0重量%を超えると、接着材層中の分解してガスになる有機分の量が多くなりすぎ、接着材層の接着力の低下を招きやすくなる。
【0089】
接着材ペーストに含まれる無機繊維としては、例えば、シリカ−アルミナ、ムライト、アルミナ、シリカ等のセラミックファイバー等を挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。無機繊維のなかでは、アルミナファイバが望ましい。
【0090】
上記無機繊維の含有量の下限は、10重量%が望ましく、20重量%がより望ましい。一方、上記無機繊維の含有量の上限は、70重量%が望ましく、40重量%がより望ましい。上記無機繊維の含有量が10重量%未満では、接着材層の弾性が低下し易くなる。一方、上記無機繊維の含有量が70重量%を超えると、接着材層の熱伝導性の低下を招き易く、弾性体としての効果が低下し易くなる。
【0091】
接着材ペーストに含まれる無機粒子としては、例えば、炭化物、窒化物等を挙げることができ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素からなる無機粉末等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。無機粒子のなかでは、熱伝導性に優れる炭化ケイ素が望ましい。
【0092】
上記無機粒子の含有量の下限は、3重量%が望ましく、10重量%がより望ましく、20重量%がさらに望ましい。一方、上記無機粒子の含有量の上限は、80重量%が望ましく、40重量%がより望ましい。上記無機粒子の含有量が3重量%未満では、接着材層の熱伝導率の低下を招を招き易くなる。一方、上記無機粒子の含有量が80重量%を超えると、接着材層が高温にさらされた場合に、接着材層の接着強度の低下を招を招き易くなる。
【0093】
上記接着材ペーストに含まれる有機バインダは、ハニカムユニットの温度が上昇することにより、分解、消去されるが、他の無機粒子及び無機バインダの固形分等が含まれているので、充分な接着力を維持することができる。
【0094】
本実施形態では、接着材ペーストは、無機粒子、無機繊維及び無機バインダを含んでいることが望ましく、無機粒子、無機繊維、有機バインダ及び無機バインダを含んでいることがより望ましい。
【0095】
次に、本実施形態に係る集熱レシーバーの製造方法について説明する。
本実施形態に係る集熱レシーバーの製造方法においても、ハニカムユニット同士を接着する接着材ペーストとして、上記した構成の接着材ペーストを使用するほかは、第一実施形態と同様にして、集熱レシーバーを作製する。
【0096】
すなわち、ハニカムユニット同士を接着する際には、上記接着材ペーストをハニカムユニットの側面(流路が形成されていない面)に塗布し、ハニカムユニット同士を接着した後、乾燥させればよい。乾燥条件は、例えば、120℃、3〜10時間が挙げられる。
【0097】
以下、本実施形態に係わる集熱レシーバーの作用効果について列挙する。
本実施形態においては、第一実施形態の(1)〜(5)の作用効果を奏するほか、下記の効果を奏する。
【0098】
(7)本実施形態の集熱レシーバーでは、上記熱吸収体は、複数個のハニカムユニットが側面に形成された接着材層を介して接着されて構成されているので、ハニカムユニット同士がしっかりと接着され、熱吸収体の流路を流れる熱媒体の流れ方向の力が作用することによる、一部のハニカムユニットの抜け落ちを確実に防止することができる。また、接着材が耐熱性を有するので、長期に渡り安定的に使用することができる。
【0099】
(第三実施形態)
以下、本発明の太陽熱発電装置の一実施形態である第三実施形態について説明する。
本実施形態に係る太陽熱発電装置では、本発明の第一実施形態に係る集熱レシーバーが用いられている。
【0100】
図3(a)は、本発明の実施形態に係る太陽熱発電装置を構成するレシーバーアレイを模式的に示す正面図であり、図3(b)は、図3(a)に示すレシーバーアレイのB−B線断面図である。
図4は、本実施形態に係る太陽熱発電装置を模式的に示す説明図である。
【0101】
図3(a)、(b)に示すレシーバーアレイ20では、太陽光照射面が開放された箱型の枠体22に複数の集熱レシーバー10が、熱吸収体11の太陽光18の照射を受ける面を正面に向けて整列した状態で配置されている。
【0102】
すなわち、集熱レシーバー10を構成する支持体12の熱媒体の出口12bは、枠体22の底部22aに結合しており、底部22aは、管22bと繋がっている部分を除いて密閉した空間22cとなっている。従って、空気等の熱媒体14は、ハニカムユニット13に形成された流路13bを通過し、熱吸収体11により加熱された後、支持体12の熱媒体の出口12bを通って枠体22の底部22aに集まり、管22bを通って後述する蒸気発生器33に導かれる。
【0103】
実際には、管22b又は管22bに結合された容器等は、排気ポンプ等の熱媒体14を吸引する装置に結合している。従って、排気ポンプ等を稼動させることにより、集熱レシーバー10の周囲にある空気等の熱媒体14をハニカムユニット13に形成された流路13bを通過させ、熱吸収体11に蓄積された熱を空気等の熱媒体14に伝達することができる。。
【0104】
図3(a)、(b)では、集熱レシーバー10の周囲にある空気等の熱媒体14をハニカムユニット13の流路13bに導くようにしているが、枠体22の底部22aを2つの部屋を有する二重構造としてもよい。この場合、空気等の熱媒体14は、いきなりハニカムユニット13に形成された流路13bに入るのではなく、2つの部屋のうちの1つの部屋に入り、多数の集熱レシーバー10の間に存在する空間22cに入る。続いて、熱媒体14は、集熱部12aの間に形成された隙間から吹き出た後、直ぐに集熱レシーバー10のハニカムユニット13に形成された流路13bに入る。
【0105】
上記のような構成とした場合には、熱媒体14は、最初に、温度の上昇した支持体12と熱交換するため、熱効率はより高くなる。
【0106】
本発明の太陽熱発電装置30では、中央タワー32の最も高い位置にレシーバーアレイ20が配設されており、その下に順次、蒸気発生器33、蓄熱器34、蒸気タービン35及び冷却器36が配設されている。また、中央タワー32の周囲には、多数のヘリオスタット37が配置されているが、これらヘリオスタット37は、反射角度や鉛直方向を軸とした回転方向を自由に制御することが可能なように設定されており、時事刻々と変化する太陽光18をヘリオスタット37で反射し、中央タワー32のレシーバーアレイ20に集めるように自動的に制御されている。
【0107】
蒸気発生器33は、蒸気タービン35を稼動させるための蒸気を発生させる部署である。蒸気発生器33では、レシーバーアレイ20の熱吸収体11により加熱された熱媒体14がガス管22bを通過した後、蒸気発生器33(ボイラー)中の配管に導かれ、熱媒体14と熱交換することにより加熱された水が水蒸気を発生させる。
【0108】
発生した水蒸気は、蒸気タービン35に導入されて蒸気タービン35を稼動させて回転させ、この蒸気タービン35の回転により発電機が稼動して電気が発生する。
【0109】
蓄熱器34は、熱媒体14が得た熱を一時的に蓄熱する部署であり、蓄熱部材として砂が用いられている。この蓄熱器34では、砂の中に管22bと繋がった蓄熱用配管(図示せず)が通っており、熱吸収体11により加熱された熱媒体14が蓄熱用配管内を通過することにより、蓄熱材料である砂に熱を供給する。蓄熱材は、熱容量が大きいので、多量の熱を吸収して蓄熱することができる。なお、蓄熱器34に収容される蓄熱材料は、上記した砂に限定されるものではなく、その他の熱容量が大きい無機材料であってもよく、種々の塩等であってもよい。
【0110】
蓄熱器34の砂のなかには、蓄熱用配管とは別の蒸気発生用配管(図示せず)も通っており、夜間等、太陽光18を利用できない時間では、この蒸気発生用配管に加熱されていない熱媒体14を流し、温度が上昇した蓄熱材の砂により熱媒体14を加熱する。蓄熱用配管は、蒸気発生用配管を兼ねていてもよい。
【0111】
加熱された熱媒体14は、蒸気発生器33に入って水蒸気を発生させ、上述したように、蒸気タービン35が稼動することにより、電気が発生する。
【0112】
蒸気タービン35を通過した水蒸気は、冷却器36に導かれ、冷却器36で冷却されることにより水となり、所定の処理を行った後、蒸気発生器33に戻される。
この冷却器36に関し、蒸気発生器33を通過することにより冷却された熱媒体14は、冷却器36の冷却管(図示せず)を通るように構成されていることが好ましい。熱媒体14が冷却管を通ることにより加熱されるので、集熱レシーバー10で吸収した熱を効率良く利用することができる。
【0113】
また、上述したように、熱を回収した熱媒体14が、レシーバーアレイ20の多数の集熱レシーバー10の間に形成されている空間22cに入るように配管を構成すれば、さらに、集熱レシーバー10の支持体12の熱も有効に利用することができる。
【0114】
以下、第三実施形態に係る太陽熱発電装置の作用効果について列挙する。
(1)本実施形態の太陽熱発電装置においては、第一実施形態に係る集熱レシーバーが用いられているので、照射された太陽光を、効率よく熱に変換することができ、効率よく発電を行うことが出来る。
【0115】
(2)本実施形態の太陽熱発電装置においては、レシーバーアレイは、多数の集熱レシーバーを備えているので、太陽熱発電装置では、多量の太陽熱を利用することができ、多量の発電を行うことが出来る。
【0116】
(3)本実施形態の太陽熱発電装置では、蓄熱器が用いられ、上記蓄熱器に太陽光により発生した熱を蓄えておくことができるので、太陽光のない夜間や雨の日等においても、発電を行うことができる。
【0117】
以上、本発明の第一実施形態に係る集熱レシーバーを用いた本発明の太陽熱発電装置について説明したが、本発明の第二実施形態に係る集熱レシーバーを用いても同様の太陽熱発電装置とすることができる。
【符号の説明】
【0118】
10 集熱レシーバー
11 熱吸収体
12 支持体
12a 集熱部
12b 熱媒体の出口
13 ハニカムユニット
13a 多孔質層
13b 流路
14 熱媒体
15 シリコン
16 多孔質炭化ケイ素
17 断熱材
18 太陽光
20 レシーバーアレイ
22 枠体
22a 底部
22b 管
22c 空間
32 中央タワー
30 太陽熱発電装置
33 蒸気発生器
34 蓄熱器
35 蒸気タービン
36 冷却器
37 ヘリオスタット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽熱発電装置に使用される集熱レシーバーであって、
前記集熱レシーバーは、熱媒体を通過させるための複数の流路が並設された1個又は複数個のハニカムユニットからなる熱吸収体と、
該熱吸収体を収納、支持するとともに、熱媒体を流通させる支持体からなり、
前記ハニカムユニットは、多孔質炭化ケイ素と、前記多孔質炭化ケイ素中の気孔を充填するシリコンとを含んで構成され、
太陽光が照射される面における表面から所定の深さの表面領域は、多孔質層からなり、多孔質層の気孔にはシリコンが充填されていないことを特徴とする集熱レシーバー。
【請求項2】
前記ハニカムユニットは、さらに、多孔質カーボンを含んで構成され、
前記ハニカムユニットの表面領域は、多孔質カーボン層からなる請求項1に記載の集熱レシーバー。
【請求項3】
前記ハニカムユニットの表面領域は、表面から500nm以上の深さを有する請求項1又は2に記載の集熱レシーバー。
【請求項4】
前記ハニカムユニットには、31.0〜93.0個/cmの流路が形成され、前記ハニカムユニットの流路間の壁部の厚さは、0.1〜0.5mmであり、前記多孔質炭化ケイ素の気孔率は35〜60%、平均気孔径は5〜30μmである請求項1〜3のいずれかに記載の集熱レシーバー。
【請求項5】
前記熱吸収体と前記支持体との間には断熱材が介装されている請求項1〜4のいずれかに記載の集熱レシーバー。
【請求項6】
前記熱吸収体は、複数個のハニカムユニットが接着材層を介して接着されて構成されている請求項1〜5のいずれかに記載の集熱レシーバー。
【請求項7】
前記熱吸収体は、複数個のハニカムユニットが側面に形成されたシリコン層を介して接着されて構成されている請求項6に記載の集熱レシーバー。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の集熱レシーバーが用いられていることを特徴とする太陽熱発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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