説明

集魚装置

【課題】 本発明の目的は魚類を捕獲可能な領域に効率的に集めることが可能な集魚装置を提供することにある。
【解決手段】 船体18上に設けられ、船体上から船体側面の水面に光を照射して魚類を集めるための集魚装置において、
水面に光を照射するための投光器10と、
該投光器を船体上方に設置するための固定器具12と、を備え、
前記投光器は、ショートアークメタルハライドランプからなる光源14と、該光源14からの光を反射し、その放射範囲を所定範囲に制限するための反射鏡16と、を含み、
該反射板16により、船体側面に垂直な平面内での前記光源からの光放射角度が、前記投光器から船べり付近を通り水面に入射する直線と、前記投光器から水面に入射角70°で入射する直線によって挟まれた角度領域に制限されていることを特徴とする集魚装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源を用いてイカ類、走光性のある水産動物(以下、魚類)を集めるための集魚装置、特に海面への光照射機構の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2kW〜3kWの高圧放電灯ランプを裸点灯するものが船上集魚灯として用いられている。船上集魚灯とは漁船上に設置され、光を海面へ照射して海中に光を導くことによってイカ類、魚類を誘き寄せるためのものである。しかしながら、上記の集魚灯は光の利用効率や光の水中への透過率が低く、電力消費量が大きい。また、集魚灯の点灯のための設備が大型化するなどの問題があった。
そのため特許文献1に記載された集魚灯では、発光ダイオードを基板上に複数配置した面状光源を使用し、また光の波長域を400nmから500nmに制限して水中への透過率を高めている。
【特許文献1】特開2003−134967号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載された集魚灯においても、次のような問題点が考えられる。集魚灯操業の対象となるイカ類(以下、イカ)は集魚灯によって照らされた照射域中に集まるのではなく、やや暗い照射域の周辺領域に集まる。そのため、海中における光の照度分布をも考慮しなければ、イカの集まる領域が捕獲可能な範囲とずれてしまう可能性があり、捕獲可能な範囲に効率的に集魚することができない。また、発光ダイオードでは光量が小さく、十分な効果を発揮し得ない場合がある。
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、その目的はイカ類、魚類を捕獲可能な領域に効率的に集めることが可能な集魚装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、本発明の集魚装置は、船体上に設けられ、船体上から船体側面の水面に光を照射してイカ類、魚類を集めるための集魚装置において、水面に光を照射するための投光器と、該投光器を船体上方に設置するための固定器具と、を備え、前記投光器は、ショートアークメタルハライドランプからなる光源と、該光源からの光を反射し、その放射範囲を所定の範囲に制限するための反射鏡と、を含み、該反射板により、船体側面に垂直な平面内での前記光源からの光放射角度が、前記投光器から船べり付近を通り水面に入射する直線と、前記投光器から水面に入射角70°で入射する直線によって挟まれた角度領域に制限されていることを特徴とする。
さらに上記の集魚装置において、前記反射板で制限される投光器の光放射角が25°から45°であることが好適である。
また、上記の集魚装置において、前記固定器具は、前記投光器の取り付け角度が可変となるよう構成され、前記投光器の船体の大きさ、取り付け高さに応じて、該投光器の照射角度が変更可能であることが好適である。
【発明の効果】
【0005】
本発明の集魚装置によれば、水面に光を照射するための投光器と、該投光器を船体上方に設置するための固定器具と、を備え、前記投光器は、ショートアークメタルハライドランプからなる光源と、該光源からの光を反射し、その放射範囲を所定範囲に制限するための反射鏡と、を含み、該反射板により、船体側面に垂直な平面内での前記光源からの光放射角度が、前記投光器から船べり付近を通り水面に入射する直線と、前記投光器から水面に入射角70°で入射する直線によって挟まれた角度領域に制限されているため、効率的に魚類を捕獲可能な領域に集めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下に図面を参照して本発明にかかる好適な実施形態について説明する。
図1は、本発明にかかる実施形態における集魚装置の概略説明図である。なお、ここではイカ釣りの場合を例にとって説明する。
本実施形態の集魚装置は、投光器10と、該投光器10を船体上に設置するための固定器具12とを備える。投光器10は固定器具12によって、船体18の甲板の略中心線に位置する支持柱20で支えられたケーブル等に取り付けられ、甲板の上方に船体側面に沿って複数配置される。図中左側に配置された投光器は船体の左側面の海面を照射し、右側に配置された投光器は右側面の海面を照射する。また、これらの投光器は船体に積み込まれた電源(図示せず)に接続されている。
【0007】
本実施形態の投光器10は、光源としてのショートアークメタルハライドランプ14と、該光源からの光の放射範囲を制限する反射板16とを含む。つまり、光源14からの光を反射板で反射して所定の放射角で前方に放射する。
本実施形態にかかる集魚装置において、投光器10の光放射角度は略35°に制限されている。ただし、この角度に限定されるのではなく、角度領域は好適には25°から45°、さらに好適には30°から40°であればよい。つまり、船体側面に垂直な平面内において、投光器の放射角が前記投光器から船べり付近を通り水面に入射する直線(図中の入射角度30°の線)と、前記投光器から水面に入射角70°で入射する直線によって囲まれた角度領域に制限されるように調整されていればよい。また入射角を70°以内に制限している理由は、入射角が70°を超えると、海面で反射する量が多くなり海中に透過していく光の量が減るためである。
【0008】
また、投光器はその放射角の略中央付近で光量が最大となるようにし、船べり付近を通って水面に入射する光と入射角70
°で水面に入射する光と間の略中央付近で、海面を照射する光の照度が最大値をとるようにする(図4、5参照)。つまり、船べり付近での照度は低く、所定距離だけ離れた海面上で照度が最大値になるようにする。本実施形態ではショートアークメタルハライドランプを装着した投光器を使用しているため、その放射角内の中央付近で照射される光量が最大となり上記の条件が満たされる。
また、本実施形態に係る集魚装置において、固定器具12は投光器10の投光面の角度を調整できることが好適である。すなわち、投光器の設置高さや船の大きさ等に応じて角度を調整することにより、投光器の放射角領域が、投光器から船べり付近を通り水面に入射する直線と投光器から水面に入射角70°で入射する直線とに挟まれた角度領域内に含まれるようにすることができる。
【0009】
以上が本実施形態にかかる集魚装置の概略構成であり、次に従来技術と比較しながら本実施形態の作用および効果を説明する。
図2は従来の集魚装置(2kWの高圧放電灯を72灯設置したもの)で海面を照らしたときの真上から見た照度分布であり、図の中央部分に描かれた黒の楕円形が船体を示している。
同図に示すように、従来の集魚方法では船べり付近において照射強度が最も強い。また、特許文献1に記載されたものも同様に、その光源として発光ダイオードを面状に並べた面状光源を使用しているため、光源の放射角内での光強度分布が一様であり、その結果光源に近い船べり付近の海面で照度が最大となり、そこから離れるにつれて照度が減少していく。
【0010】
そうすると、図3に示すように、海中での照度分布(図中点線および実線で示した部分)が船体側に偏った形となり、イカの捕獲可能な領域(図中一点鎖線で囲まれた部分)とイカの集まる領域とがずれてしまう。つまり、イカの捕獲可能な領域(図中一点鎖線で囲まれた部分)は船べりから釣り糸を垂らした部分である。また、イカは照明された領域内に集まるのではなく、その周辺の比較的暗い場所に集まる。そのため、海中での照度分布が船体寄りに偏った形であると、イカの集まる場所が捕獲可能な場所より船体寄り、もしくは船体から離れた場所になる。そのため、捕獲可能な範囲内にイカを効率良く集めることができない。
【0011】
一方、図4、5は本実施形態にかかる集魚装置(500kWのショートアークメタルハライドランプを62灯設置したもの)で海面を照らしたときの真上から見た照度分布である。また、投光器の反射板として、図4では鏡面、図5ではなし地のものを用いた。
同図に示すように本実施形態にかかる集魚装置では、船べり付近を通って水面に入射する光と入射角70°で水面に入射する光と間の略中央付近で、海面を照射する光の照度が最大値をとるようになる。つまり、船べり付近での照度は低く、所定距離だけ離れた海面上で照度が最大値をとっている。
このような照度分布になる理由は、本実施形態の集魚装置の投光器は、その光放射角が所定の角度に制限され、また光源としてショートアークメタルハライドランプを使用しているため、その放射角内の中央付近(図1中の入射角52.5°の付近)で照射される光量が最大となるためである。
【0012】
すると、図6に示すように、海中での照度分布が従来のものと比べて船体から離れた方向に傾いている。そのため、捕獲可能な領域(図中一点鎖線で囲んだ部分)に効率的にイカを集めることができる。
このように、本実施形態の集魚装置によれば、魚類を捕獲可能な領域に効率的に集めることが可能である。
また、投光器の放射角をその反射板で制限しているため、必要な範囲を効率的に照明することができ、無駄な光を少なくできる。その結果、ランプのワット数400〜500Wで十分な光量が得られる。例えば、500Wのショートアークメタルハライドランプ、60灯で、2000kWの高圧放電灯、72灯を裸点灯した場合と同じ明るさで海面を照射できる。
【0013】
なお、本実施形態で使用するショートアークメタルハライドランプは、イカの感光ピーク特性、および海中への透過率を考慮して、波長460〜500nmの波長範囲以外の発光ピークが少ないものを選ぶことが好適である。つまり、従来使用されていた集魚灯(2kW)の分光分布は図7のようなものであり、イカの感光ピーク領域(460〜500nm;図中点線で挟まれた部分)以外の発光ピークが多いものであった。このため、必要な光強度を得るにはランプ電力を2〜3kw程度にする必要があり、無駄が多い。また、他の波長が多いことによってイカが錯覚し、480nm付近の波長の光の効果が打ち消される。それに対して、図8に示したようなイカの感光ピーク領域以外の発光ピークの少ないショートアークメタルハライドランプを使用すると、ランプ電力が400〜500w程度でも十分となり、また他の波長域の光によってイカの感光ピーク付近の波長の光の効果が打ち消されることがない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明にかかる実施形態の集魚装置の説明図
【図2】従来の照度分布の例
【図3】従来の海中の照度分布の説明図
【図4】本実施形態における真上から見た照度分布の例
【図5】本実施形態における真上から見た照度分布の例
【図6】本実施形態における海中の照度分布の説明図
【図7】従来のランプの分光分布の例
【図8】本実施形態に好適なランプの分光分布の例
【符号の説明】
【0015】
10 投光器
12 固定器具
14 ショートアークメタルハライドランプ(光源)
16 反射鏡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体上に設けられ、船体上から船体側面の水面に光を照射してイカ類、魚類を集めるための集魚装置において、
水面に光を照射するための投光器と、
該投光器を船体上方に設置するための固定器具と、
を備え、
前記投光器は、ショートアークメタルハライドランプからなる光源と、該光源からの光を反射し、その放射範囲を所定の範囲に制限するための反射鏡と、を含み、
該反射板により、船体側面に垂直な平面内での前記光源からの光放射角度が、前記投光器から船べり付近を通り水面に入射する直線と、前記投光器から水面に入射角70°で入射する直線によって挟まれた角度領域に制限されていることを特徴とする集魚装置。
【請求項2】
請求項1記載の集魚装置において、
前記反射板で制限される投光器の光放射角が25°から45°であることを特徴とする集魚装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の集魚装置において、
前記固定器具は、前記投光器の取り付け角度が可変となるよう構成され、前記投光器の船体の大きさ、取り付け高さに応じて、該投光器の照射角度が変更可能であることを特徴とする集魚装置。

【図1】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−34108(P2006−34108A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−214383(P2004−214383)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000126274)株式会社アイ・ライティング・システム (56)
【Fターム(参考)】