説明

難燃熱可塑性樹脂組成物及びその製造方法

【課題】安全、環境の面で問題がなく、それでいて優れた難燃性と機械特性(引張強度、伸び)を有する難燃熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)熱可塑性樹脂(但し、ポリウレタン樹脂を除く。)を主原料とし、(B)難燃剤としてリン及び窒素を含有するノンハロゲン系難燃剤、(C)難燃助剤として多価アルコール又はその誘導体、及び(D)重量平均分子量が150〜10,000、アルコキシ基又はヒドロキシ基の総量が1分子中の10〜85質量%であるオルガノアルコキシシロキサン及びオルガノヒドロキシシロキサンから選ばれるケイ素化合物を含有することを特徴とする難燃性熱可塑性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全、環境の面で問題がなく、それでいて優れた難燃性と機械特性(引張強度、伸び)を有する難燃熱可塑性樹脂組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、安全性や環境に対する関心の高まりから、従来の難燃剤を使用した製品の代替が進められている。
即ち、臭素、塩素等のハロゲン系難燃剤は、難燃性が高く、少量配合で済むため、組成物の機械強度等にも優れる特徴を有するものの、安全性と火災の際に多量にハロゲンガスを発生するため、建物内にいる人が呼吸困難となり、最悪の場合、死に至る問題を有している。リン酸エステル系難燃剤は、樹脂表面より溶出しやすく、自然界に流出した際の毒性や変異原性が懸念されている。また、赤リン系難燃剤は、リン濃度が高いため難燃性も高いが、不完全燃焼の際は毒性の強いホスフィンガスを発生し、また摩擦や衝撃で赤リン自身が発火する危険性を有している。つまり、このような従来のハロゲン系、リン酸エステル系、及び赤リン系難燃剤は、安全性や環境に与える影響から、一般に使用しづらいという認識がある。
【0003】
環境や生命体に対する安全性を考えると、難燃剤は、金属水酸化物、シリコーン系難燃剤、リン及び窒素を含有するノンハロゲン系難燃剤(無機リン系難燃剤)に絞られてくる。
しかし、金属水酸化物は、樹脂に対して多量(樹脂100質量部に対して100〜250質量部)に配合しないと十分な難燃効果は得られないため、引張強度や伸びが低く、硬くてもろい組成物となってしまう。シリコーン系難燃剤は、難燃性は弱く、もともとUL−24 V−2以上の難燃性があるポリカーボネート樹脂以外には適さない。ポリリン酸アンモニウムなどのリン及び窒素を含有するノンハロゲン系難燃剤は、金属水酸化物ほどではないが、ある程度の配合量(樹脂100質量部に対して60〜70質量部)が必要であるため、引張強度や伸び等の機械強度の低下と水の存在下で溶出してくるリン酸による樹脂の劣化が問題である。
このため、相乗効果のある難燃助剤の併用により、少ないポリリン酸アンモニウム配合量で難燃効果を発揮させることが好ましい。代表的な難燃助剤としては、例えば、ペンタエリスリトールのような多価アルコールが知られており、これを併用することにより、樹脂100質量部に対して難燃剤であるポリリン酸アンモニウムの量を25質量部まで減らすことができるが未だ不十分である。
また、ポリリン酸アンモニウムに対する他の難燃助剤として様々なものが提案されているが、いずれも難燃剤の量としては未だ多く不十分である。
【0004】
例えば、特開平05−039394号公報(特許文献1)には、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対し、(A)有機シリコーン化合物0.5〜25質量部、(B)ポリリン酸アンモニウム又はメラミン変性ポリリン酸アンモニウム18質量部以上、及び(C)多価アルコール化合物8質量部以上を含有させた難燃性ポリプロピレン系樹脂組成物が開示されている。この場合、難燃剤が成分(B)、難燃助剤が成分(A)及び(C)となるが、当該実施例を見る限り、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対する成分(B)の量は20質量部以上と多いことが確認される。
また、当該文献中の有機シリコーン化合物には、シリコーンオイル、シリコーン樹脂としてジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、シランカップリング剤としてビニルトリメトキシシラン、及びシリコーン系界面活性剤が挙げられているが、これらのシリコーンではポリリン酸アンモニウムと多価アルコールとの難燃相乗効果はほとんど認められない。
【0005】
また、特開平06−025465号公報(特許文献2)には、(a)1種類以上の熱可塑性ポリマー又はゴム状弾性を有するポリマー90〜50質量部と、(b)シアヌル酸とピペラジンとの反応生成物3〜20質量部と、所望により(c)1種類以上のリン酸アンモニウム又はアミン又はリン酸エステル5〜30質量部を含んでなる自消性組成物が開示されている。この場合、難燃剤が成分(c)、難燃助剤が成分(b)となるが、当該実施例もまた、成分(a)100質量部に対する成分(c)の量は29.1質量部(20.15質量%)以上と多いことが確認される。
【0006】
更に、特開平07−097478号公報(特許文献3)には、熱可塑性樹脂100質量部に対し、(A)多価アルコール・硼酸の金属錯体1〜30質量部、(B)ポリリン酸アンモニウム又はメラミン変性ポリリン酸アンモニウム15〜30質量部、(C)メラミン又はメラミンシアヌレートやメレム等のメラミン誘導体3〜30質量部を含有させた難燃性熱可塑性樹脂組成物が開示されている。この場合、難燃剤が成分(B)、難燃助剤が成分(A)及び(C)となるが、当該実施例もまた、熱可塑性樹脂100質量部に対する成分(B)の量は20質量部以上と多いことが確認される。
【0007】
そして、特開平09−0235407号公報(特許文献4)には、熱可塑性樹脂に、(A)ポリリン酸アンモニウム化合物を組成物に対して1〜30質量%及び(B)特定のリン酸アミン塩を組成物に対して1〜30質量%配合させた難燃性熱可塑性樹脂組成物が開示されている。この場合、難燃剤が成分(A)及び(B)となるが、当該実施例もまた、熱可塑性樹脂100質量部に対する成分(A)及び(B)の量は33.9質量部(25質量%)以上と多いことが確認される。
このように、いずれの場合も熱可塑性樹脂に対する難燃剤の量が多く、安全、環境の面で問題なく、それでいて優れた難燃性と機械特性(引張強度、伸び)を有する難燃熱可塑性樹脂組成物が存在していないのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平05−039394号公報
【特許文献2】特開平06−025465号公報
【特許文献3】特開平07−097478号公報
【特許文献4】特開平09−235407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、安全、環境の面で問題がなく、それでいて優れた難燃性と機械特性(引張強度、伸び)を有する難燃熱可塑性樹脂組成物(但し、ポリウレタン樹脂を除く。)及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成するため、鋭意検討を行なった結果、(A)熱可塑性樹脂(但し、ポリウレタン樹脂を除く。)を主原料とし、(B)難燃剤としてリン及び窒素を含有するノンハロゲン系難燃剤、(C)難燃助剤として多価アルコール又はその誘導体、及び(D)重量平均分子量が150〜10,000、アルコキシ基又はヒドロキシ基の総量が1分子中の10〜85質量%であるオルガノアルコキシシロキサン及びオルガノヒドロキシシロキサンから選ばれるケイ素化合物を含有することを特徴とする難燃性熱可塑性樹脂組成物が、安全、環境の面で問題がなく、それでいて優れた難燃性と機械特性(引張強度、伸び)を有することを見出し、本発明をなすに至った。
【0011】
即ち、本発明は、下記難燃熱可塑性樹脂組成物及びその製造方法を提供する。
請求項1:
下記成分
(A)熱可塑性樹脂(但し、ポリウレタン樹脂を除く。): 100質量部、
(B)リン及び窒素を含有するノンハロゲン系難燃剤: 5〜25質量部、
(C)多価アルコール又はその誘導体: 1〜15質量部、
(D)下記平均組成式(1)で表され、重量平均分子量が150〜10,000、アルコキシ基又はヒドロキシ基の総量が1分子中の10〜85質量%であるオルガノアルコキシシロキサン及びオルガノヒドロキシシロキサンから選ばれるケイ素化合物:
1〜15質量部
1αSi(OX)β(4-α-β)/2 (1)
(式中、R1は置換基を有していてもよいアルキル基、アルケニル基又はアリール基であって、各R1は同一であっても異なっていてもよい。Xは炭素原子数1〜10のアルキル基又は水素原子である。αは0.0〜3.0の実数、βは0.1〜3.0であると共にα+β<4.0を満たす実数である。)
を含有することを特徴とする難燃熱可塑性樹脂組成物。
請求項2:
成分(B)のリン及び窒素を含有するノンハロゲン系難燃剤が、5〜18質量部であることを特徴とする請求項1記載の難燃熱可塑性樹脂組成物。
請求項3:
成分(B)のリン及び窒素を含有するノンハロゲン系難燃剤が、リン酸グアニジン、リン酸アンモニウム、リン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウム、メラミン表面被覆ポリリン酸アンモニウム及びケイ素化合物表面被覆ポリリン酸アンモニウムから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の難燃熱可塑性樹脂組成物。
請求項4:
成分(C)の多価アルコール又はその誘導体が、ペンタエリスリトール又はペンタエリスリトール誘導体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の難燃熱可塑性樹脂組成物。
請求項5:
成分(C)の多価アルコール又はその誘導体が、成分(B)のリン及び窒素を含有するノンハロゲン系難燃剤に対し等量以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の難燃熱可塑性樹脂組成物。
請求項6:
請求項1〜5のいずれか1項に記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、加熱溶融した成分(A)中に、少なくとも成分(B)、(C)及び(D)を混合するに際し、少なくとも成分(B)及び(D)が1時間以上前に予め混合されていてはならないことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の難燃熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、安全、環境の面で問題がなく、それでいて優れた難燃性と機械特性(引張強度、伸び)を有する難燃熱可塑性樹脂組成物及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
本発明の難燃熱可塑性樹脂組成物は、(A)熱可塑性樹脂(但し、ポリウレタン樹脂を除く。)、(B)リン及び窒素を含有するノンハロゲン系難燃剤、(C)多価アルコール又はその誘導体、及び(D)特定のケイ素化合物を必須成分として含有している。
【0014】
(A)熱可塑性樹脂
成分(A)の熱可塑性樹脂としては、ポリウレタン樹脂を除いた従来より公知のものが使用できる。
このような熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリ乳酸、ポリエチレン、ポリカーボネート、ABS樹脂、スチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等を挙げることができる。このうち、特に、ポリプロピレン、ポリ乳酸樹脂は消費量が多いにもかかわらず易燃であるため、本発明のような難燃熱可塑性樹脂組成物の成分(A)として有用である。
【0015】
(B)リン及び窒素を含有するノンハロゲン系難燃剤
成分(B)のリン及び窒素を含有するノンハロゲン系難燃剤としては、リン酸グアニジン、リン酸アンモニウム、リン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウム、メラミン表面被覆ポリリン酸アンモニウム、ケイ素化合物表面被覆ポリリン酸アンモニウム等の難燃剤が挙げられ、これらの1種又は2種以上が使用される。難燃性の観点から、好ましくはポリリン酸アンモニウム、メラミン表面被覆ポリリン酸アンモニウム、ケイ素化合物表面被覆ポリリン酸アンモニウムが用いられ、より好ましくケイ素化合物表面被覆ポリリン酸アンモニウムが用いられる。
尚、ポリリン酸アンモニウムとしては、市販品を使用することができる。
【0016】
このようなリン及び窒素を含有するノンハロゲン系難燃剤の配合量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して5〜25質量部が好ましく、より好ましくは5〜18質量部、最も好ましくは5〜15質量部である。1質量部未満の場合、十分な難燃効果が得られず、また、25質量部を超える場合、引張強度や伸びが低下してしまうことがある。
【0017】
また、リン及び窒素を含有するノンハロゲン系難燃剤は、平均粒径1〜25μm、特に5〜18μmのものを用いることが好ましい。
尚、平均粒径は、例えばレーザー光回折法による粒度分布測定装置を用いて、重量平均値(又はメジアン径)として求めることができる。
【0018】
更に、このようなリン及び窒素を含有するノンハロゲン系難燃剤は、その表面をケイ素化合物で処理することにより、撥水性、樹脂中への分散性、リン酸の溶出低下といった特性を向上させることができる。
表面処理に使用されるケイ素化合物としては、各種シランやシリコーンオイル、シリコーンレジン等を挙げることができるが、被覆性が良好なことから、特に、特開2006−111844号公報に記載される共加水分解縮合物が好ましい。
【0019】
(C)多価アルコール又はその誘導体
成分(C)多価アルコール又はその誘導体としては、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ジペンタエリスリトール等の多価アルコールやその誘導体を挙げることができる。上記多価アルコール又はその誘導体は、単独でも2種以上を併用しても構わない。
多価アルコール誘導体としては、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ジトリメチルシリル化ペンタエリスリトール等を例として挙げることができる。なお、本発明においては、ペンタエリスリトール又はペンタエリスリトール誘導体を用いることが好ましい。
【0020】
このような多価アルコール又はその誘導体の配合量は、いずれも熱可塑性樹脂100質量部に対して1〜15質量部であることが好ましい。1質量部未満の場合、難燃性の向上は見られず、また、15質量部を超える場合、難燃性、引張強度が大幅に低下してしまうことがある。
更に、このような多価アルコール又はその誘導体の配合量は、リン及び窒素を含有するノンハロゲン系難燃剤に対し等量以下であることを要する。等量を超える場合、難燃性が低下してしまうことがあるからである。
【0021】
(D)ケイ素化合物
成分(D)のケイ素化合物は、下記平均組成式(1)で表され、重量平均分子量が150〜10,000、アルコキシ基又はヒドロキシ基の総量が1分子中の10〜85質量%であるオルガノアルコキシシロキサン及びオルガノヒドロキシシロキサンから選ばれるケイ素化合物である。
1αSi(OX)β(4-α-β)/2 (1)
(式中、R1は置換基を有していてもよいアルキル基、アルケニル基又はアリール基であって、各R1は同一であっても異なっていてもよい。Xは炭素原子数1〜10のアルキル基又は水素原子である。αは0.0〜3.0の実数、βは0.1〜3.0であると共にα+β<4.0を満たす実数である。)
【0022】
上記平均組成式(1)で表されるケイ素化合物は、重量平均分子量が150〜10,000のものが好ましく、より好ましくは200〜6,000である。重量平均分子量が150未満の場合、十分な難燃性が発揮されず、また、10,000を超える場合、引張強度が低下することがある。
【0023】
上記平均組成式(1)中、OXで示されるアルコキシ基又はヒドロキシ基の総量は、10〜85質量%が好ましく、より好ましくは20〜60質量%である。アルコキシ基又はヒドロキシ基の総量が10質量%未満の場合、難燃性が低下し、85質量%を超える場合、組成物の外観が悪くなることがある。
【0024】
このようなケイ素化合物の配合量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して1〜15質量部であることが好ましい。ケイ素化合物の配合量が1質量部未満の場合、又は15質量部を超える場合、いずれも難燃性が不十分になることがある。
【0025】
尚、このようなケイ素化合物は、次の代表的な2つの合成方法によって得られる。
即ち、1つは、クロルシランを水とアルコールの混合液中に滴下し加水分解反応を行い反応後水槽を捨て脱塩酸したものを中和しろ過後減圧濃縮する方法であり、もう1つは、各種アルコキシシランやアルコキシシロキサンオリゴマーと場合によって4量体や5量体といった環状シロキサンを混合したものにアルカリ触媒や酸触媒を添加し平衡化反応を行った後、水を滴下することにより加水分解反応とそれに続く縮合反応を行い、出来上がった反応物を中和濃縮する方法である。
【0026】
(E)その他の成分
本発明の難燃熱可塑性樹脂組成物には、上記成分(A)〜(D)の他、その特性を阻害しない範囲で、その目的に応じて各種の添加剤を適宜配合することができる。
添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、光安定剤、相溶化剤、他種のノンハロゲン難燃剤、滑剤、充填剤、接着助剤、防錆剤等を挙げることができる。
【0027】
使用可能な酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4−チオビス−(2−t−ブチル−5−メチルフェノール)、2,2−メチレンビス−(6−t−ブチル−メチルフェノール)、4,4−メチレンビス−(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジ−ホスホナイト、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、2,5,7,8−テトラメチル−2(4,8,12−トリメチルデシル)クロマン−2−オール、5,7−ジ−t−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オン、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジペンチルフェニルアクリレート、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、テトラキス(メチレン)−3−(ドデシルチオプロピオネート)メタン等が挙げられる。
【0028】
使用可能な安定剤としては、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ラウリン酸カルシウム、リシノール酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、リシノール酸バリウム、ステアリン酸バリウム、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛等の各種金属せっけん系安定剤;ラウレート系、マレート系やメルカプト系各種有機錫系安定剤;ステアリン酸鉛、三塩基性硫酸鉛等の各種鉛系安定剤;エポキシ化植物油等のエポキシ化合物、アルキルアリルホスファイト、トリアルキルホスファイト等のホスファイト化合物;ジベンゾイルメタン、デヒドロ酢酸等のβ−ジケトン化合物;ハイドロタルサイト類やゼオライト類等が挙げられる。
【0029】
使用可能な光安定剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。
【0030】
使用可能な相溶化剤としては、アクリルオルガノポリシロキサン共重合体、シリカとオルガノポリシロキサンの部分架橋物、シリコーンパウダー、無水マレイン化グラフト変性ポリオレフィン、カルボン酸化グラフト変性ポリオレフィン、ポリオレフィングラフト変性オルガノポリシロキサン等が挙げられる。
【0031】
使用可能な接着助剤としては、各種アルコキシシラン等が挙げられる。
【0032】
使用可能な他のノンハロゲン難燃剤としては、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛、光酸化チタン等を挙げることができる。
【0033】
また、使用可能な充填剤としては、ケイ酸、炭酸カルシウム、酸化チタン、カーボンブラック、カオリンクレー、焼成クレー、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、バライト等が挙げられる。
【0034】
難燃熱可塑性樹脂組成物の製造方法等
難燃熱可塑性樹脂組成物は、加熱溶融した成分(A)中に、成分(B),(C),(D)(及び必要に応じてその他成分(E))を混合することにより製造することができるが、少なくとも成分(B)と(D)を1時間以上前に予め混合しておくことは好ましくない。これは、成分(B)の表面に微量なリン酸が残存する場合、成分(B)と(D)又は成分(D)同士が反応し樹脂やゲルを形成する場合があるためである。このように、成分(D)が樹脂やゲルを形成すると、難燃性が低下しUL−94でV−0だったものがUL−94で不合格になることがある。
また、得られた難燃熱可塑性樹脂組成物の成形方法は、公知の方法を採用することができる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を調製例及び実施例と比較例によって具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。尚、下記の例において、平均粒径はレーザー回折型粒度分布測定装置(メタノール溶媒)により測定した値を示す。
【0036】
[実施例1〜7、比較例1〜6及び参考例1〜3]
下記表1〜4に記載された各種成分を配合し、ラボプラストミルR−60ミキサー(東洋精機社製)にてポリプロピレン樹脂の場合180℃,30rpm,3分で均一に混練した後、200℃でプレス成型 ポリ乳酸樹脂の場合 の条件で均一に混練した後、200℃でプレス成型にすることにより厚さ2mmの各種試験片を作製した。このようにして得られた試験片を用いて、難燃性UL−94、酸素消費指数、引張強度及び伸びを評価した。得られた結果を表1〜4に併記する。
使用した材料及び評価方法を以下に示す。
【0037】
[使用した材料]
(1)ポリプロピレン樹脂:PM854X サンアロマー株式会社製
(2)ポリ乳酸樹脂:レイシア H−100J 三井化学株式会社製
(3)シリコーン表面処理ポリリン酸アンモニウム1:次のような操作に従い調製した。
シリコーン系撥水処理剤1の調製
冷却管、温度計及び滴下漏斗を備えた500mlの四つ口フラスコにメチルトリメトキシシランのオリゴマー85g(ダイマー換算で0.37モル)、メタノール154g及び酢酸5.1gを入れ、撹拌しているところに、水6.8g(0.37モル)を投入し、25℃で2時間撹拌した。そこに、3−アミノプロピルトリエトキシシラン17.7g(0.08モル)を滴下した。その後、メタノールの還流温度まで加熱して1時間反応後、エステルアダプターにて、内温が110℃になるまでメタノールを留去し、JIS K2283に基づき測定した粘度71mm2/s(25℃)の薄黄色透明溶液81gを得た(重量平均分子量1,100)。このものの系内のメタノール残存量は5質量%であった(シリコーン系撥水処理剤1)。
表面処理ポリリン酸アンモニウム1の調製
ポリリン酸アンモニウム(クラリアント社製:ペコフレームTC204P、平均粒径8μm)100質量部に、上記のシリコーン系撥水処理剤1を10質量部、エタノールを100質量部加え、これらを30分撹拌した後、減圧下でエタノールを留去し、粉砕器で粉砕して、平均粒径10μmのシリコーン表面処理ポリリン酸アンモニウム1を得た。
(4)ペンタエリスリトール:和光純薬工業株式会社製
(5)ペコフレームTC204P:表面未処理ポリリン酸アンモニウム2、クラリアントジャパン株式会社製、平均粒径8μm
(6)アルコキシシロキサンオリゴマー:次のような操作に従い下記化合物A〜Dを調製した。
(化合物A)
メチルトリクロルシランをメタノール中65℃以下で攪拌し部分エステル化を行なった後、メタノールと水を3:1の比率で混合した溶液中に滴下して加水分解後、塩酸を含有する下層を廃棄し、残る有機層(上層)を炭酸ナトリウムで中和する。中和後ろ過により塩を除去し100℃以上で減圧濃縮することにより合成した。得られた化合物はSi29−NMRにより下記の平均組成式であることが分かった。また、アルコキシ基量は20mlバイアル瓶に試料1.0gを採取し、1N−KOHとIPA混合液を加えゴム栓をしてN2を流し込みながら170℃までオイルバスで加熱する。バイアル瓶につないだテフロン(登録商標)チューブより流出したアルコール分についてGC分析することによりメタノール量から求めた。また重量平均分子量はトルエンGPCより算出した。
平均組成式 (CH3)(OCH31.5SiO0.75
アルコキシ基量46質量% 重量平均分子量406
(化合物B)
化合物A−100質量部に水とスルホン酸型イオン交換樹脂1質量部(樹脂はジビニベンゼン架橋ポリスチレン)と一緒に70℃、5h撹拌後、110℃で減圧濃縮することにより合成した。上記化合物Aと同様の分析により下記、平均組成式、アルコキシ基量、重量平均分子量を求めた。
平均組成式 (CH31.0(OCH31.2SiO0.9
アルコキシ基量28質量% 重量平均分子量950
(化合物C)
化合物A−100質量部、ジメチルジメトキシシランを110質量部に水、メタノールとスルホン酸型イオン交換樹脂1質量部と一緒に70℃、5h撹拌後、110℃で減圧濃縮することにより合成した。上記化合物Aと同様の分析により下記、平均組成式、アルコキシ基量、重量平均分子量を求めた。
平均組成式 (CH31.69(OCH30.31SiO1
アルコキシ基量12質量% 重量平均分子量5,500
(化合物D)
オクタメチルテトラシロキサン76質量部、ジメチルジメトキシシラン 28.6質量部、ジメチルトリメトキシシラン95質量部を混合し、水、メタノールとスルホン酸型イオン交換樹脂1質量部と一緒に70℃、5h撹拌後、110℃で減圧濃縮することにより合成した。上記化合物Aと同様の分析により下記、平均組成式、アルコキシ基量、重量平均分子量を求めた。
平均組成式 (CH32.16(OCH30.17SiO0.835
アルコキシ基量7質量% 重量平均分子量1,950
KF−96L−5CS:信越化学工業株式会社製
平均組成式 (CH32.18SiO0.91
アルコキシ基量0質量% 重量平均分子量830
【0038】
[評価方法]
(1)難燃性UL−94:UL−94垂直燃焼試験に基づき試験を行った。
(2)平均燃焼時間:上記UL−94垂直燃焼試験を5反復測定し、5回の燃焼時間(火が消えるまでの時間)の平均値を平均燃焼時間とした。
また、火が消えず試験片が全て燃えてしまった場合は“全焼”とした。
(3)引張強度、伸び:2mm厚のプレス成型シートをダンベルで2号試験片に型抜きし、JIS−K7113に準じて測定を行った。
(4)重量平均分子量:GPC法(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により求めた。尚、分析条件は以下の通りである。
(a)溶媒:トルエン
(b)カラム:TSKgel superH5000+superH4000+superH3000+superH2000
(c)検出器:RI
(d)流量:0.6ml/分
(e)カラム温度:40℃
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
【表3】

【0042】
【表4】

【0043】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分
(A)熱可塑性樹脂(但し、ポリウレタン樹脂を除く。): 100質量部、
(B)リン及び窒素を含有するノンハロゲン系難燃剤: 5〜25質量部、
(C)多価アルコール又はその誘導体: 1〜15質量部、
(D)下記平均組成式(1)で表され、重量平均分子量が150〜10,000、アルコキシ基又はヒドロキシ基の総量が1分子中の10〜85質量%であるオルガノアルコキシシロキサン及びオルガノヒドロキシシロキサンから選ばれるケイ素化合物:
1〜15質量部
1αSi(OX)β(4-α-β)/2 (1)
(式中、R1は置換基を有していてもよいアルキル基、アルケニル基又はアリール基であって、各R1は同一であっても異なっていてもよい。Xは炭素原子数1〜10のアルキル基又は水素原子である。αは0.0〜3.0の実数、βは0.1〜3.0であると共にα+β<4.0を満たす実数である。)
を含有することを特徴とする難燃熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
成分(B)のリン及び窒素を含有するノンハロゲン系難燃剤が、5〜18質量部であることを特徴とする請求項1記載の難燃熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
成分(B)のリン及び窒素を含有するノンハロゲン系難燃剤が、リン酸グアニジン、リン酸アンモニウム、リン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウム、メラミン表面被覆ポリリン酸アンモニウム及びケイ素化合物表面被覆ポリリン酸アンモニウムから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の難燃熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
成分(C)の多価アルコール又はその誘導体が、ペンタエリスリトール又はペンタエリスリトール誘導体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の難燃熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
成分(C)の多価アルコール又はその誘導体が、成分(B)のリン及び窒素を含有するノンハロゲン系難燃剤に対し等量以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の難燃熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の難燃熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、加熱溶融した成分(A)中に、少なくとも成分(B)、(C)及び(D)を混合するに際し、少なくとも成分(B)及び(D)が1時間以上前に予め混合されていてはならないことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の難燃熱可塑性樹脂組成物の製造方法。

【公開番号】特開2011−42721(P2011−42721A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190848(P2009−190848)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】