説明

難着色性ピロロキノリンキノン類含有製剤

【課題】安心して摂取又は投与することができるピロロキノリンキノン製剤の提供。
【解決手段】以下の一般式(I):
【化1】



(式中R1、R2及びR3は、同一又は異なって、水素原子、フェニル基又は炭素数1〜6のアルキル基、アラルキル基、アルキルアリール基、アルケニル基若しくはアルキニル基を表す)で表されるピロロキノリンキノン類又はそのアルカリ金属塩と、キレート剤とを含有することを特徴とするピロロキノリンキノン類製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞を着色させないピロロキノリンキノン製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ピロロキノリンキノン(以下、PQQと記すことがある。)は、カビ、酵母、さらには哺乳動物等の真核生物に存在する物質であり、酸化還元系の補酵素として機能することが知られている。PQQは、通常、メタノ−ル資化性菌の代謝産物より単離同定することができる。現在のところ、PQQは医薬品、食品としての使用は認可されていないが、細胞の増殖促進作用(特許文献1)、肝臓疾患予防治療作用(特許文献2)、メラニン産生抑制作用(特許文献3)、神経成長因子産生促進作用(特許文献4)などの様々な作用を有することが明らかとなっている。したがって、PQQは医薬品や機能性食品の有効成分として有望である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−058584号公報
【特許文献2】特開昭63−192717号公報
【特許文献3】特開平08−020512号公報
【特許文献4】特開平06−211660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者らがピロロキノリンキノン製剤の研究を行っていたところ、これを口中に含むと、口腔内が黒っぽく変色するという問題が生じること、さらに当該口腔内の変色が数週間にわたって続いてしまうという問題があることが明らかになった。また、栄養強化として金属成分を加えることが多いが、その際にも変色が生じる問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、PQQ製剤の摂取による口腔内の変色は、口腔粘膜細胞や舌の表皮細胞内に取り込まれたPQQが細胞内のアルカリ金属以外の金属陽イオンと結合して黒緑色、褐色や暗褐色、黒色など様々に変色を起こし、その結果、細胞の見た目の色が変化することよって生じることを見出した。さらに本発明者らは、PQQ製剤中にキレート剤を含有させれば、上記細胞の着色を防止することができ、当該課題を解決できることを見出した。
【0006】
すなわち本発明は、以下の一般式(I):
【化1】


(式中R1、R2及びR3は、同一又は異なって、水素原子、フェニル基、又は炭素数1〜6のアルキル基、アラルキル基、アルキルアリール基、アルケニル基若しくはアルキニル基を表す)で表されるピロロキノリンキノン類又はそのアルカリ金属塩と、キレート剤とを含有することを特徴とする、難着色性ピロロキノリンキノン類含有製剤を提供することにより、上記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、摂取又は投与した場合でも細胞内で変色せず細胞を着色させないピロロキノリンキノン類含有製剤を提供することができる。本発明のピロロキノリンキノン類含有製剤は、経口摂取、例えば、錠剤を口に含んだり飲料として飲用したりした場合、あるいは経皮投与した場合であっても、細胞が着色せず、従って口腔内や皮膚の変色が生ずることがないため、安心して摂取又は投与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】PQQによるモデル細胞内溶液の着色に対するEDTAの影響。A:牛胎児血清、B:α−MEM+10%FBS。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のピロロキノリンキノン類含有製剤(以下、本発明製剤)は、摂取又は投与された場合、製剤中のピロロキノリンキノン(PQQ)類と、共存する金属陽イオン、例えば当該製剤中又は当該PQQ類が取り込まれた細胞内に存在する金属陽イオンとの結合が、当該製剤中のキレート剤の作用により解離又は抑止されるため、該金属陽イオンとの結合に起因するPQQ類の変色が起こらず、結果として、PQQ類の取り込まれた細胞の着色が防止される。すなわち、本発明製剤は、細胞を着色させない難着色性、より具体的には難細胞着色性の製剤である。
【0010】
なお、本明細書において、物質の「着色性」とは、当該物質を有する物体の外観の色を変化させる性質をいう。また本明細書において、「難着色性」とは、上述の「着色性」が低いことをいう。
例えば、本明細書におけるPQQ類に関する「着色性」とは、PQQ類が金属陽イオンと結合して有色のPQQ類金属塩を生成することにより、それを含む物質、例えばPQQ類含有液等のPQQ類含有組成物、又はPQQ類含有細胞等に外観的な色の変化をもたらすという、PQQ類の性質をいう。
また本明細書におけるPQQ類に関する「細胞着色性」とは、細胞表面に付着又は細胞内に取り込まれたPQQ類が金属陽イオンと結合して有色のPQQ類金属塩を生成することにより、当該細胞に外観的な色の変化をもたらすPQQ類の性質をいう。
従って、本明細書において、PQQ類に関する「難着色性」及び「難細胞着色性」とは、上述したPQQ類の「着色性」及び「細胞着色性」が低いことを意味する。
例えば、本発明によるピロロキノリンキノン類又はそのアルカリ金属塩と、キレート剤とを含有する難着色性のピロロキノリンキノン類含有製剤は、同量のピロロキノリンキノン類又はそのアルカリ金属塩を含むがキレート剤を含有しない化合物と比較して、経口投与した場合に口腔内の細胞の着色が25%以上抑制される。好ましくは、当該着色は50%以上、より好ましくは75%以上抑制される。なお、細胞の着色の度合いは、細胞標本の直接観察や顕微鏡観察等による肉眼観察、色度計での測定等に基づいて評価することができる。
【0011】
本発明製剤に含有されるピロロキノリンキノン(PQQ)類は、以下の一般式(I):
【化2】


(式中R1、R2及びR3は、同一又は異なって、水素原子、フェニル基、又は炭素数1〜6のアルキル基、アラルキル基、アルキルアリール基、アルケニル基若しくはアルキニル基を表す)で表される化合物である。上記炭素数1〜6のアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜4である。上記アラルキル基、アルキルアリール基のアルキル部分の炭素数は、1〜6個が好ましく、1〜4個がより好ましい。上記アルケニル基、アルキニル基の炭素数は2〜6が好ましく、2〜4個がより好ましい。
【0012】
好ましくは、上記R1、R2及びR3は、同一又は異なって水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であり、より好ましくは同一又は異なって水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、さらに好ましくは水素原子である。
【0013】
上記PQQ類は、アルカリ金属塩とすると、水溶性が高くなるためより好ましい。該アルカリ金属としては、リチウム、カリウム、ナトリウム等が挙げられ、ナトリウムが好ましい。
【0014】
本発明製剤はまた、キレート剤を含有する。キレート剤としては、以下の金属イオン:マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン、カドミウムイオン、ニッケル(II)イオン、亜鉛イオン、銅(II)イオン、水銀(II)イオン、鉄(II)イオン、コバルト(II)イオン、スズ(II)イオン、鉛(II)イオン、マンガン(II)イオン等の2価金属イオン;アルミニウムイオン、鉄(III)イオン、クロム(III)イオン等の3価金属イオン;スズ(IV)イオン等の4価金属イオン;又は銀イオン、水銀イオン、金イオン等の1価金属イオン、とキレート錯体を形成することのできる化合物であれば特に限定されない。好ましくは、着色しやすく多くの食品に含まれる銅(II)イオン、鉄(II)イオン又は鉄(III)イオンとキレート錯体を形成することのできる化合物である。好ましいキレート剤の例としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、及びグルコン酸、ヘプトグルコン酸、クエン酸、フィチン酸、リン酸、リンゴ酸、酒石酸、ホスホン酸、ヒドロキシ酢酸等の有機酸が挙げられる。これらのうち、EDTA、クエン酸又はリンゴ酸がより好ましい。
本発明製剤は、上記キレート剤のいずれか1種類を単独で含有していてもよく、又はいずれか2種以上を組み合わせて含有していてもよい。
【0015】
本発明製剤におけるPQQ類とキレート剤との含有比率は、所望とする着色防止効果やキレート剤の種類によっても異なるが、上記PQQ類100mgに対して、上記キレート剤が1mg〜10gであればよい。例えば、キレート剤がクエン酸の場合、PQQ類100mgに対してクエン酸が1000mg〜10g含有されているのが好ましく、キレート剤がリンゴ酸の場合、PQQ類100mgに対してリンゴ酸が100mg〜10g、好ましくは600mg〜10g含有されているのが好ましい。
【0016】
本発明製剤は、さらに金属陽イオンを含有していてもよい。金属陽イオンとしては、1価、2価、3価及び4価から選択される価数の金属陽イオンが挙げられる。
1価金属陽イオンの例としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、銀(I)イオン、水銀(I)イオン、金イオン等が挙げられる。
2価金属陽イオンの例としては、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン、カドミウムイオン、ニッケル(II)イオン、亜鉛イオン、銅(II)イオン、水銀(II)イオン、鉄(II)イオン、コバルト(II)イオン、スズ(II)イオン、鉛(II)イオン、マンガン(II)イオン等が挙げられる。
3価金属陽イオンの例としては、アルミニウムイオン、鉄(III)イオン、クロム(III)イオン等が挙げられる。
4価金属陽イオンの例としては、スズ(IV)イオン等が挙げられる。
本発明製剤は、上記金属陽イオンのいずれか1種類を単独で含有していてもよく、又はいずれか2種以上を組み合わせて含有していてもよい。
【0017】
本発明はまた、上記本発明製剤を含有する医薬又は医薬部外品を提供する。当該医薬又は医薬部外品は、任意のPQQ類の生理作用に基づく効果、例えば、細胞増殖促進、肝臓疾患予防治療、メラニン産生抑制、神経成長因子産生促進等の効果を得るための医薬又は医薬部外品であり得る。
【0018】
当該医薬又は医薬部外品には、上記に挙げた本発明製剤の成分の他に、さらに医薬として許容される担体を含有していてもよい。当該担体としては、例えば、賦形剤、被膜剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤、界面活性剤、浸透圧調整剤、pH調整剤、分散剤、乳化剤、防腐剤、安定剤、酸化防止剤、湿潤剤、増粘剤、アルコール、水、水溶性高分子、又は製剤に色や香り、風味を付けるための着色剤、香料、矯味剤、矯臭剤等、が挙げられる。
これらの担体は、医薬又は医薬部外品の剤型に応じて、単独又は任意の組み合わせで適宜使用され得る。
【0019】
上記医薬又は医薬部外品は、上記ピロロキノリンキノン類、キレート剤、及び必要に応じて上記金属陽イオン又は他の有効成分若しくは薬効成分、さらに必要に応じて上記医薬として許容される担体等を配合し、常法に従って製造することができる。
本発明製剤の剤型としては、経口又は経皮投与のための剤型が好ましい。経口製剤の剤型の例としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、ドライシロップ剤、液剤、懸濁剤等が挙げられ、経皮製剤の剤型の例としては、ローション、ゲル、クリーム、スプレー、軟膏、パッチ、貼布剤等が挙げられる。
【0020】
本発明によるピロロキノリンキノン類含有製剤は、摂取や投与の際の皮膚や口腔粘膜の着色を防止する効果を有するものであるため、本発明の医薬又は医薬部外品は、上記に挙げた経口又は経皮投与製剤としてだけでなく、投与時にピロロキノリンキノン類が皮膚や口腔粘膜など着色が好ましくない部位に接触し得る投与形態のための製剤として有用である。そのような投与形態としては、鼻や鼻粘膜を経由する経鼻薬、口腔を経由する吸入薬若しくは経腸薬、点眼薬、坐薬、注射薬、点滴薬等が挙げられる。
【0021】
上記医薬又は医薬部外品における本発明製剤の含有量は、その剤型により異なるが、当該医薬又は医薬部外品に対して1〜100質量%であればよく、好ましくは5〜50質量%である。
【0022】
本発明はまた、上記本発明製剤を含有する飲食品又は飼料を提供する。本発明の飲食品又は飼料は、任意のPQQ類の生理作用に基づく効果、例えば、細胞増殖促進、肝臓疾患予防治療、メラニン産生抑制、神経成長因子産生促進等の効果を企図して、その旨を表示した健康食品、機能性飲食品、特定保健用飲食品、病者用飲食品、家畜、競走馬、鑑賞動物等のための飼料、ペットフード等であり得る。
【0023】
上記飲食品又は飼料は、上記本発明製剤に、飲食品や飼料の製造に用いられる他の飲食品素材、各種栄養素、各種ビタミン、ミネラル、アミノ酸、各種油脂、種々の添加剤(たとえば呈味成分、甘味料、有機酸等の酸味料、界面活性剤、pH調整剤、安定剤、酸化防止剤、色素、フレーバー)等を配合して、常法に従って製造することができる。あるいは、通常食されている飲食品又は飼料に上記本発明製剤を配合することにより、本発明の飲食品又は飼料を製造することができる。
【0024】
上記飲食品又は飼料の形態は特に制限されず、例えば、固形、半固形又は液状であり得、あるいは、錠剤、チュアブル錠、粉剤、カプセル、顆粒、ドリンク、ゲル、シロップ、経管経腸栄養用流動食等の各種形態が挙げられる。
具体的な飲食品の形態の例としては、緑茶、ウーロン茶や紅茶等の茶飲料、コーヒー飲料、清涼飲料、ゼリー飲料、スポーツ飲料、乳飲料、炭酸飲料、果汁飲料、乳酸菌飲料、発酵乳飲料、粉末飲料、ココア飲料、アルコール飲料、精製水等の飲料、バター、ジャム、ふりかけ、マーガリン等のスプレッド類、マヨネーズ、ショートニング、カスタードクリーム、ドレッシング類、パン類、米飯類、麺類、パスタ、味噌汁、豆腐、牛乳、ヨーグルト、スープ又はソース類、菓子(例えばビスケットやクッキー類、チョコレート、キャンディ、ケーキ、アイスクリーム、チューインガム、タブレット)等が挙げられる。
本発明の飼料は飲食品とほぼ同様の組成や形態で利用できることから、本明細書における飲食品に関する記載は、飼料についても同様に当てはめることができる。
【0025】
上記飲食品及び飼料における本発明製剤の含有量は、食品の形態により異なるが、当該飲食品及び飼料に対して1〜100質量%であればよく、好ましくは5〜50質量%である。
【0026】
上記医薬、医薬部外品、飲食品及び飼料は、本発明製剤中に含有されるPQQ類の量に換算して、成人1日当たり5〜100mgの範囲で投与又は摂取される。経口投与又は摂取の場合、一般的な1日当たりの投与量は、10〜20mgが好ましい。上記1日当たりの投与又は摂取量は、1回で投与又は摂取してもよいが、数回に分けて投与又は摂取してもよい。
上記1日当たりの量を適切に投与又は摂取できるよう、本発明の医薬又は医薬部外品の剤型若しくは投与レジメン、あるいは飲食品又は飼料の形態を、1日当たりの投与又は摂取量が管理できる形にすることが望ましい。
【0027】
また本発明によれば、上記本発明製剤は、上記任意のPQQ類の生理作用に基づく効果、例えば、細胞増殖促進、肝臓疾患予防治療、メラニン産生抑制、神経成長因子産生促進等の効果を企図した医薬、医薬部外品、飲食品、又は飼料等の製造のために使用することができる。
【0028】
さらに、本発明によれば、共存するキレート剤の作用により、PQQ類が摂取又は投与されて細胞表面に付着又は細胞内に取り込まれた場合でも、細胞表面又は細胞内に存在する金属陽イオンとPQQ類との結合による有色のPQQ類金属塩の生成が妨げられるため、該細胞のPQQ類金属塩に起因する着色を防止することができる。
すなわち、本発明によれば、細胞内で、上記一般式(I)で表されるピロロキノリンキノン類又はそのアルカリ金属塩をキレート剤と共存させることを特徴とする、ピロロキノリンキノン類による細胞着色の防止方法が提供される。
【0029】
上記方法において、PQQ類の構造、キレート剤の種類、PQQ類とキレート剤との存在比率は上述のとおりである。細胞の種類は、PQQ類と接触し得る細胞であれば特に限定されないが、哺乳動物細胞が好ましく、ヒト細胞がより好ましい。有効な細胞は経口投与の際に接触する唇、口腔内、食道、腸に存在する細胞、皮膚に存在する細胞である。また、生体ではなく、培養細胞においても有効である。
【実施例】
【0030】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0031】
実施例1 PQQ類の着色性の検証
PQQ(4,5−ジオキソ−1H−ピロロ[2,3−f]キノリン−2,7,9−トリカルボン酸ジナトリウム:三菱瓦斯化学製)の2.5mg/mL水溶液を調製し、これを表1に示す各種金属陽イオンの水溶液と等容量混合し、10分間静置した後溶液の色、沈殿の有無及び沈殿の色を目視で観察した。表1にその結果を示す。
【0032】
【表1】

【0033】
実施例2 リンゴ酸添加の効果
PQQ(4,5−ジオキソ−1H−ピロロ[2,3−f]キノリン−2,7,9−トリカルボン酸ジナトリウム:三菱瓦斯化学製)の3.75mg/mL水溶液及び硫酸鉄の1.5mg/mL水溶液を調製した。別に5、25、50、100、500mg/mLのリンゴ酸水溶液を調製した。PQQ、硫酸鉄及びリンゴ酸の各水溶液を等容量混合し、10分間静置した後溶液の色を目視で観察し、表2の基準に従って着色をスコア化した。対照としてリンゴ酸無添加のサンプルで同様の観察をおこなった。表3にその結果を示す。
リンゴ酸は、PQQ−硫酸鉄溶液の着色を抑制し、リンゴ酸の濃度が高いほどその効果は顕著であった。
【0034】
【表2】

【0035】
【表3】

【0036】
実施例3 各種キレート剤添加の効果
PQQ(4,5−ジオキソ−1H−ピロロ[2,3−f]キノリン−2,7,9−トリカルボン酸ジナトリウム:三菱瓦斯化学製)の3.75mg/mL水溶液及び硫酸鉄の1.5mg/mL水溶液を調製した。別にリンゴ酸、クエン酸及びアスコルビン酸それぞれの45mg/mL水溶液、EDTAの22.5mg/mL水溶液を調製した。PQQ、硫酸鉄及び各キレート剤の各水溶液を等容量混合し、10分間静置した後溶液の色を目視観察し、表2の基準に従って着色をスコア化した。対照としてキレート剤無添加のサンプルで同様の観察をおこなった。表4にその結果を示す。
【0037】
【表4】

【0038】
実施例4 EDTAによるモデル細胞内溶液の着色性の低下
細胞内組成に近いモデル細胞内溶液として牛胎児血清(FBS)又は動物細胞用培地であるα−MEM+10%FBSを使用して、PQQによる着色に対するキレート剤の影響を測定した。
実験では、キレート剤として、同仁化学製のEDTA3ナトリウムを使用した。96穴プレートに100μLの上記モデル溶液を加え、そこにPQQ:EDTA3ナトリウム=1:6(wt) PQQ2.5mg/mLの混合物を100μL加えた。次いで、これを100μLとり、次のモデル溶液100μLを含む穴に加える操作を繰り返し、モデル溶液中のPQQ濃度を段階的に1/2ずつ希釈した。コントロールとしては、同様の手順で、同濃度のPQQのみを添加したモデル溶液を準備した。これを飽和水蒸気圧下5%二酸化炭素と空気混合状態で37℃1.5時間処理した。その後、プレートリーダーで600nmの吸光度を測定し、モデル溶液の着色を調べた。
【0039】
結果を図1A及びBに示す。細胞内モデル溶液である牛胎児血清中(A)及びα−MEM+10%FBS(B)では、いずれもPQQ濃度依存的に吸光度が増加し、PQQによる着色が起こっていることが示された。なお牛胎児血清では、最終的に着色度に飽和がみられた。一方、いずれの溶液も、EDTAの添加で吸光度は大きく減少し、着色が抑えられたことが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般式(I):
【化1】


(式中R1、R2及びR3は、同一又は異なって、水素原子、フェニル基又は炭素数1〜6のアルキル基、アラルキル基、アルキルアリール基、アルケニル基若しくはアルキニル基を表す)
で表されるピロロキノリンキノン類又はそのアルカリ金属塩と、キレート剤とを含有することを特徴とする、難着色性ピロロキノリンキノン類含有製剤。
【請求項2】
前記アルカリ金属塩がナトリウム塩である請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記キレート剤が有機酸及び/又はEDTAである請求項1又は2に記載の製剤。
【請求項4】
さらに1価、2価、3価及び4価から選択される価数の金属陽イオンを1種又は2種以上含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項5】
経口投与用製剤又は経皮投与用製剤である請求項1〜4のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項6】
以下の一般式(I):
【化2】


(式中R1、R2及びR3は、同一又は異なって、水素原子、フェニル基又は炭素数1〜6のアルキル基、アラルキル基、アルキルアリール基、アルケニル基若しくはアルキニル基を表す)
で表されるピロロキノリンキノン類又はそのアルカリ金属塩をキレート剤と共存させることを特徴とする、ピロロキノリンキノン類による細胞着色の防止方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−103913(P2013−103913A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249500(P2011−249500)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(301049744)日清ファルマ株式会社 (61)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】