説明

電力変換装置

【課題】マトリックスコンバータにおける各スイッチを適切に制御することにより、当該スイッチに並列接続されたダイオードに起因するスイッチの不具合を防ぐことが可能な電力変換装置を提供する。
【解決手段】電力変換装置101において、マトリックスコンバータ1は、複数のスイッチSa1〜Sc3と、スイッチに対応して設けられ、対応のスイッチと並列に接続された複数のダイオードとを含む。制御部5は、複数のスイッチSa1〜Sc3を所定の順序に従って択一的にオンし、負荷LA,LB,LCに供給すべき交流電力の目標値に基づいてスイッチのオン時間を算出し、算出したスイッチのオン時間が対応のダイオードの順回復時間未満となる場合には、スイッチのオン時間が順回復時間以上となるように、スイッチのオン時間を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関し、特に、マトリックスコンバータを備えた電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、商用電源からの交流電力を、直流リンクを介さずに任意の電圧および任意の周波数の交流電力に直接変換可能な交流−交流直接形電力変換器であるマトリックスコンバータ(以下、MCとも称する。)が注目されている。
【0003】
MCは、従来の直流リンクを介したコンバータ・インバータシステムと比較すると、サイズ、寿命および効率の点で有利である。また、電源高調波も少なく、回生動作が可能である。
【0004】
このようなMCの制御方法の一例が、石田宗秋・岩崎雅巳・大熊繁・岩田幸二 著、「入力力率可変正弦波入出力PWM制御サイクロコンバータの波形制御法」、電学論D、Vol.107,No.2,pp.239-246、1987(非特許文献1)に開示されている。すなわち、入力電流の位相を制御するX関数と、出力電圧の位相および振幅を制御するY関数とを合成する。この合成により得られた信号波に対してPWM(Pulse Width Modulation)制御を行うことで、MCにおける各スイッチを制御するためのスイッチングパルスを得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】石田宗秋・岩崎雅巳・大熊繁・岩田幸二 著、「入力力率可変正弦波入出力PWM制御サイクロコンバータの波形制御法」、電学論D、Vol.107,No.2,pp.239-246、1987
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1に記載のMCの制御方法等、従来のMCの制御方法では、MCにおけるスイッチのオン時間が非常に短くなるようなスイッチングパルスが生成される場合がある。
【0007】
また、MCにおけるスイッチは、逆耐圧を持たない場合、保護のために当該スイッチと並列にダイオードが接続される。
【0008】
このような構成において、MCにおけるスイッチのオン時間が非常に短くなるようなスイッチングパルスが生成されると、スイッチに並列接続されたダイオードの順回復時間よりもスイッチのオン時間が短い場合には、ダイオードに順バイアスが与えられてから定常オン状態に達しないうちに、ダイオードに逆バイアスが与えられてしまう。ここで、ダイオードの順回復時間とは、ダイオードに順バイアスが与えられてから定常オン状態となるまでの時間である。
【0009】
そして、ダイオードの特性として、順バイアスが与えられてから、定常オン状態に達しないうちに逆バイアスが与えられると、逆バイアス時のサージ電圧が大きくなるという特性が知られている。
【0010】
このため、MCにおけるスイッチのオン時間が非常に短くなるようなスイッチングパルスが生成されると、定常オン状態を経由しないことにより生じる逆バイアス時のサージ電圧により、ダイオードに並列接続されたスイッチに過大な電圧が印加され、最悪の場合にはスイッチの破壊に至るという問題点があった。
【0011】
この発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、マトリックスコンバータにおける各スイッチを適切に制御することにより、当該スイッチに並列接続されたダイオードに起因するスイッチの不具合を防ぐことが可能な電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる電力変換装置は、複数相の電源からそれぞれ供給される交流電力を複数相の交流電力に変換して負荷に供給するためのマトリックスコンバータと、上記マトリックスコンバータを制御するための制御部とを備え、上記マトリックスコンバータは、上記電源ごとに設けられ、対応の上記電源から供給される交流電力を、オンすることにより上記負荷に伝達するための複数のスイッチと、上記スイッチに対応して設けられ、対応の上記スイッチと並列に接続された複数のダイオードとを含み、上記制御部は、上記複数のスイッチを所定の順序に従って択一的にオンし、上記負荷に供給すべき上記交流電力の目標値に基づいて上記スイッチのオン時間を算出し、算出した上記スイッチのオン時間が対応の上記ダイオードの順回復時間未満となる場合には、上記スイッチのオン時間が上記順回復時間以上となるように、上記スイッチのオン時間を補正する。
【0013】
このような構成により、マトリックスコンバータにおいて、入力および出力間に接続された半導体スイッチに逆並列接続されたダイオードを、順バイアス状態から必ず定常オン状態を経由して逆バイアス状態へと移行させることができる。これにより、ダイオードが順バイアス状態から急に逆バイアス状態へ移行することによるサージ電圧の発生を抑制することができる。そして、半導体スイッチの両端に発生するサージ電圧を低減することができるため、半導体スイッチが過電圧により破壊されることを防ぐことができる。したがって、マトリックスコンバータにおける各スイッチを適切に制御することにより、当該スイッチに並列接続されたダイオードに起因するスイッチの不具合を防ぐことができる。
【0014】
また、スイッチのオン時間とダイオードの順回復時間との大小関係に基づいて、必要な場合にのみスイッチのオン時間の補正を行う構成により、スイッチの不具合を防ぎながら、負荷に供給する交流電力を可能な限り目標値に制御することができる。
【0015】
好ましくは、上記制御部は、上記負荷に供給すべき上記交流電力の目標値に基づいて上記複数のスイッチのオン時間およびオンタイミングを算出し、算出した上記オン時間が上記順回復時間未満となる上記スイッチが存在する場合には、上記スイッチのオン時間が上記順回復時間以上となるように、上記複数のスイッチの上記オン時間および上記オンタイミングをそれぞれ補正する。
【0016】
このような構成により、マトリックスコンバータの入力側の短絡および出力側の開放を防ぐことができるため、当該スイッチに並列接続されたダイオードに起因するスイッチの不具合を防ぐとともに、交流−交流直接形電力変換器であるマトリックスコンバータ1を適切に制御することができる。
【0017】
好ましくは、上記制御部は、キャリア波の1周期において上記複数のスイッチがオン状態となる割合を示す制御値をそれぞれ算出し、上記キャリア波と各上記制御値との比較結果に基づいて、オンすべき上記スイッチを選択し、上記キャリア波の周期の最初および最後の両方においてオンする上記スイッチのオン時間が上記順回復時間未満となる場合には、上記キャリア波の周期の最初および最後におけるオン時間の合計値が上記ダイオードの順回復時間以上になるように上記スイッチのオン時間を補正する。
【0018】
このような構成により、マトリックスコンバータにおける各スイッチを適切にPWM制御し、かつキャリア波の周期の最初および最後の両方においてオンするスイッチの不具合を防ぐことができる。また、キャリア周期におけるスイッチのオン回数に応じてオン時間の補正量を適切に算出することができる。
【0019】
好ましくは、上記制御部は、キャリア波の1周期において上記複数のスイッチがオン状態となる割合を示す制御値をそれぞれ算出し、上記キャリア波と各上記制御値との比較結果に基づいて、オンすべき上記スイッチを選択し、上記キャリア波の周期の最初または最後においてオンしない上記スイッチのオン時間が上記順回復時間未満となる場合には、オン時間が上記ダイオードの順回復時間以上になるように上記スイッチのオン時間を補正する。
【0020】
このような構成により、マトリックスコンバータにおける各スイッチを適切にPWM制御し、かつキャリア波の周期の最初または最後においてオンしないスイッチの不具合を防ぐことができる。また、キャリア周期におけるスイッチのオン回数に応じてオン時間の補正量を適切に算出することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、マトリックスコンバータにおける各スイッチを適切に制御することにより、当該スイッチに並列接続されたダイオードに起因するスイッチの不具合を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係る電源システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る電力変換装置における双方向スイッチの構成の一例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る電力変換装置におけるマトリックスコンバータの出力1相分の等価回路を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る電力変換装置におけるマトリックスコンバータの出力1相分の等価回路を示す図である。
【図5】MCにおけるスイッチのオン時間が非常に短くなるようなスイッチングパルスが生成される状況の一例を示す図である。
【図6】最小オンデューティDminの算出方法を説明するための図である。
【図7】延長補正前および延長補正後のスイッチングパルスを比較するための図である。
【図8】延長補正前および延長補正後のスイッチングパルスを比較するための図である。
【図9】延長補正前および延長補正後のスイッチングパルスを比較するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0024】
[構成および基本動作]
図1は、本発明の実施の形態に係る電源システムの構成を示す図である。
【0025】
図1を参照して、電源システム201は、中性線NLに接続された交流電源EU,EV,EWと、電力変換装置101と、負荷LA,LB,LCとを備える。電力変換装置101は、マトリックスコンバータ1と、入力フィルタ2と、出力フィルタ3と、測定部4と、制御部5とを含む。マトリックスコンバータ1は、双方向スイッチSa1,Sa2,Sa3,Sb1,Sb2,Sb3,Sc1,Sc2,Sc3を含む。負荷LA,LB,LCは、たとえばスター結線されている。
【0026】
電力変換装置101は、たとえば三相3線式であり、周波数および振幅が変動する複数相の交流電力から任意の周波数および任意の振幅を有する複数相の交流電圧または交流電流を生成する。すなわち、電力変換装置101は、交流電源EU,EV,EWの各々から供給されるU相,V相,W相の交流電力を任意の周波数および任意の振幅を有するA相,B相,C相の交流電力に変換して負荷LA,LB,LCにそれぞれ供給する。
【0027】
入力フィルタ2は、交流電源EU,EV,EWとマトリックスコンバータ1との間に設けられている。
【0028】
出力フィルタ3は、マトリックスコンバータ1と負荷LA,LB,LCとの間に設けられている。
【0029】
マトリックスコンバータ1では、交流電源ごとに設けられ、対応の交流電源から供給される交流電力を、オンすることにより1相の負荷に伝達するためのスイッチの組が設けられる。このスイッチの組は、負荷の相ごとに設けられる。すなわち、マトリックスコンバータ1は、A相に対応する双方向スイッチSa1,Sa2,Sa3の組と、B相に対応する双方向スイッチSb1,Sb2,Sb3の組と、C相に対応する双方向スイッチSc1,Sc2,Sc3の組とを含む。
【0030】
双方向スイッチSa1は、入力フィルタ2のU相出力と出力フィルタ3のA相入力との間に接続されている。双方向スイッチSa2は、入力フィルタ2のV相出力と出力フィルタ3のA相入力との間に接続されている。双方向スイッチSa3は、入力フィルタ2のW相出力と出力フィルタ3のA相入力との間に接続されている。双方向スイッチSb1は、入力フィルタ2のU相出力と出力フィルタ3のB相入力との間に接続されている。双方向スイッチSb2は、入力フィルタ2のV相出力と出力フィルタ3のB相入力との間に接続されている。双方向スイッチSb3は、入力フィルタ2のW相出力と出力フィルタ3のB相入力との間に接続されている。双方向スイッチSc1は、入力フィルタ2のU相出力と出力フィルタ3のC相入力との間に接続されている。双方向スイッチSc2は、入力フィルタ2のV相出力と出力フィルタ3のC相入力との間に接続されている。双方向スイッチSc3は、入力フィルタ2のW相出力と出力フィルタ3のC相入力との間に接続されている。
【0031】
双方向スイッチSa1,Sa2,Sa3,Sb1,Sb2,Sb3,Sc1,Sc2,Sc3の各々は、通常はIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の半導体スイッチを2つ組み合わせることで構成される。ただし、IGBT等の半導体素子は逆耐圧を持たないため、一般的にはIGBTおよびダイオードを逆並列接続、すなわち互いの導通方向が逆向きになるように並列接続した回路を2つ直列に組み合わせた回路構成が用いられる。なお、逆耐圧を持つ半導体スイッチを用いる場合には、ダイオードは不要であり、2つの半導体スイッチを逆並列接続すればよい。
【0032】
図2は、本発明の実施の形態に係る電力変換装置における双方向スイッチの構成の一例を示す図である。
【0033】
図2を参照して、双方向スイッチは、スイッチ素子S1,S2と、ダイオードD1,D2とを含む。
【0034】
ダイオードD1,D2は、スイッチ素子に対応して設けられ、対応のスイッチ素子と並列に接続されている。ダイオードD1,D2は、導通方向が対応のスイッチ素子の導通方向と逆になるように接続されている。
【0035】
再び図1を参照して、入力フィルタ2は、交流電源EU,EV,EWからそれぞれ受けたU相,V相,W相の交流電力に含まれる所定周波数以上のノイズを減衰させ、減衰後の交流電力をマトリックスコンバータ1へ出力する。
【0036】
マトリックスコンバータ1は、交流電源EU,EV,EWからそれぞれ受けた入力交流電力を複数相の出力交流電力に変換して負荷LA,LB,LCへ出力する。具体的には、マトリックスコンバータ1は、制御部5から受けた制御信号G1〜G9に基づいて双方向スイッチSa1,Sa2,Sa3,Sb1,Sb2,Sb3,Sc1,Sc2,Sc3をそれぞれオン・オフすることにより、入力フィルタ2を通過したU相,V相,W相の交流電力を任意の周波数および任意の電圧振幅を有するA相,B相,C相の交流電力に変換し、出力フィルタ3へ出力する。
【0037】
出力フィルタ3は、マトリックスコンバータ1から受けたA相,B相,C相の交流電力に含まれる所定周波数以上のノイズを減衰させ、減衰後の交流電力を負荷LA,LB,LCへそれぞれ出力する。
【0038】
ここで、出力フィルタ3が減衰させるノイズの周波数は、電源システム201の仕様に応じて適宜変更され、たとえば負荷LA,LB,LCへ供給すべき交流電力の周波数より高い周波数である。
【0039】
測定部4は、図示しない電流検出部を含み、マトリックスコンバータ1が交流電源EU,EV,EWから受ける入力交流電流iu,iv,iw、およびマトリックスコンバータ1が出力する出力交流電流ia,ib,icを検出し、検出結果を示す信号を制御部5へ出力する。
【0040】
また、測定部4は、図示しない電圧検出部を含み、交流電源EU,EV,EWがマトリックスコンバータ1へ出力する電源交流電圧vu0,vv0,vw0、マトリックスコンバータ1が入力フィルタ2を介して交流電源EU,EV,EWから受ける入力交流電圧vu,vv,vw、およびマトリックスコンバータ1の出力交流電圧va,vb,vcを検出し、検出結果を示す信号を制御部5へ出力する。
【0041】
制御部5は、測定部4の検出結果に基づいて制御信号G1〜G9を生成し、マトリックスコンバータ1における双方向スイッチSa1,Sa2,Sa3,Sb1,Sb2,Sb3,Sc1,Sc2,Sc3へそれぞれ出力することにより、マトリックスコンバータ1を制御する。
【0042】
電源交流電圧vu0,vv0,vw0および入力交流電圧vu,vv,vwは、以下の式で表される。
【数1】


【数2】

【0043】
(1)式および(2)式において、ωは交流電源EU,EV,EWの角周波数であり、VSはフィルタ前の電圧振幅すなわち電源交流電圧vu0,vv0,vw0の振幅であり、Vはフィルタ後の電圧振幅すなわち入力交流電圧vu,vv,vwの振幅である。また、δは入力フィルタ2によって生じる位相遅れ角である。
【0044】
制御部5は、サンプリング周期Tsごとにマトリックスコンバータ1における各スイッチのオンデューティを更新する。
【0045】
ここで、マトリックスコンバータ1における各スイッチの制御法則を定式化するための制御関数a1〜c3を考える。
【0046】
たとえば双方向スイッチSa1のサンプリング周期内のオン割合すなわちオンデューティをa1と定義し、a1を以下の式に示すように定義する。
【数3】

【0047】
電力変換装置101は直接形電力変換器であるため、入力側の短絡および出力側の開放が許されない。このため、以下の拘束条件が必要となる。
【数4】


【数5】

【0048】
制御部5は、制御関数が以下の式で表されるような制御を行う。
【数6】


ただし、Y1+Y2+Y3=0
【0049】
ここで、(6)式における関数X1,X2,X3は以下の式で表され、入力側関数と呼ぶ。
【数7】

【0050】
(7)式において、ψSはマトリックスコンバータ1の入力交流電圧に対する入力交流電流の位相の指令値であり、Aは電圧振幅変調率である。
【0051】
また、(6)式における関数Y1,Y2,Y3を出力側関数と呼び、この出力側関数は、出力電圧の指令波形を表す。また、(6)式におけるhu,hv,hwは(4)式の拘束条件を満足させるために導入した関数である。
【0052】
このとき、期間Tsにおける出力交流電圧va,vb,vcの平均値は、(2)式、(6)式および(7)式から、以下のようになる。
【数8】


【数9】

【0053】
(8)式において、第1項は、求めるマトリックスコンバータ1の出力電圧である。出力電圧には出力側関数Y1,Y2,Y3の波形がそのまま現れる。このため、出力側関数は出力電圧の指令波形となる。また、第2項は、関数hu,hv,hwにより現れる負荷端の中性点電位成分であり、出力の線間電圧には現れない。この関数hu,hv,hwの導出方法は、非特許文献1に記載の方法と同様である。
【0054】
[動作]
次に、本発明の実施の形態に係る電力変換装置の電力変換動作について図面を用いて説明する。
【0055】
制御部5は、マトリックスコンバータ1における各スイッチをPWM制御する。すなわち、制御部5は、上記制御アルゴリズムで求めた制御関数a1〜c3をキャリア波たとえば三角波キャリアまたはノコギリ波キャリアと比較してスイッチングパルスを生成する。そして、制御部5は、生成したスイッチングパルスに基づいてマトリックスコンバータ1における各スイッチをオン・オフする。
【0056】
以下では、マトリックスコンバータ1の入力3相および出力1相についての動作について代表的に説明する。他の出力相についての動作は以下に説明する動作と同様となる。
【0057】
前述の制御アルゴリズムで求めた制御関数a1〜c3は、キャリア波の1周期におけるオン割合を示したものである。制御部5は、制御関数a1〜c3とキャリア波とを比較することにより、スイッチSa1〜Sc3の各々の時間軸上のスイッチングパルスへ変換する。
【0058】
図3は、本発明の実施の形態に係る電力変換装置におけるマトリックスコンバータの出力1相分の等価回路を示す図である。図3は、マトリックスコンバータ1の出力1相すなわちA相と、入力3相すなわちU相,V相,W相との接続関係を示している。
【0059】
キャリア波は、三角波およびノコギリ波など様々なものが考えられるが、ここでは、例として三角波を用いた場合において、図3に示す各スイッチの制御関数をスイッチングパルスへ変換する方法について説明する。
【0060】
なお、スイッチング順序については自由度があるが、ここでは、スイッチSa1、スイッチSa2、スイッチSa3、スイッチSa2、スイッチSa1の順序とする。
【0061】
図4は、本発明の実施の形態に係る電力変換装置における、三角波キャリアを用いたPWM制御の一例を示す図である。図4は、キャリア波と制御関数との関係、および制御関数から導出される各スイッチのスイッチングパルスを示している。
【0062】
図4を参照して、(4)式より、制御関数a1、a2、a3の合計は1であるため、キャリア波形の振幅も1としている。制御関数a1、a2、a3の合計が1以外の値で正規化されている場合には、キャリア波形の振幅もその値と等しく設定することになる。
【0063】
まず、スイッチSa1のスイッチングパルスを生成するためにa1とキャリア波との比較を行う。このとき、キャリア波がa1未満の期間をスイッチSa1のオン時間とする。キャリア波が三角波の場合には、キャリア波の1周期(以下、キャリア周期とも称する。)においてスイッチSa1は2回オンすることになる。
【0064】
ここで、キャリア周期の最初にオンするスイッチSa1は、前回のキャリア周期の最後におけるオン状態をそのまま引き継ぐため、キャリア周期におけるオン回数は1回である、と等価的にみなすことができる。
【0065】
次に、スイッチSa2のスイッチングパルスを生成するために、a1+a2とキャリア波との比較を行う。このとき、キャリア波がa1とa1+a2とに挟まれている期間をスイッチSa2のオン時間とする。キャリア波が三角波の場合には、キャリア周期の2番目および4番目にオンするスイッチは、キャリア周期において2回オンすることになる。
【0066】
最後に、スイッチSa3のスイッチングパルスを求める。この場合、a1+a2+a3とキャリア波との比較を行い、キャリア波がa1+a2とa1+a2+a3とに挟まれている期間をスイッチSa3のオン時間としてもよいし、スイッチSa1およびSa2がオンしている時間以外をスイッチSa3のオン時間としてもよい。いずれにせよ、キャリア周期におけるスイッチング回数は1回となる。
【0067】
このように、通常、交流−交流直接形電力変換器である電力変換装置101のキャリア波として三角波を用いた場合には、1キャリア周期におけるスイッチング回数は5回となる。
【0068】
なお、ここでは、データサンプリングのタイミングをキャリア波のレベルがゼロとなるタイミングとしたが、キャリア波のレベルが1となるタイミングをデータサンプリングのタイミングとしても、キャリア周期におけるスイッチングの順序が変化するだけで、1キャリア周期におけるスイッチング回数は5回となる。
【0069】
図5は、MCにおけるスイッチのオン時間が非常に短くなるようなスイッチングパルスが生成される状況の一例を示す図である。
【0070】
上述した方法でPWM制御を行うことにより、交流−交流直接形電力変換器の制御を行うことが可能である。しかしながら、この方法では、スイッチのオン時間に下限値を設定していないことから、たとえば図5に示すように、スイッチSa2のオン時間が非常に短くなるようなスイッチングパルスが生成されてしまう場合がある。
【0071】
このようなスイッチングパルスが生成されると、前述のように、ダイオードにおいて定常オン状態を経由しないことにより生じる逆バイアス時のサージ電圧により、当該ダイオードに並列接続されたスイッチに過大な電圧が印加され、最悪の場合にはスイッチが破壊されてしまうという問題点があった。
【0072】
そこで、本発明の実施の形態に係る電力変換装置では、以下のようなスイッチング制御を行うことにより、上記問題点を解決する。
【0073】
すなわち、制御部5は、マトリックスコンバータ1のスイッチの組における複数のスイッチを所定の順序に従って択一的にオンする。たとえば、制御部5は、キャリア波の1周期において上記複数のスイッチがオン状態となる割合を示す制御値をそれぞれ算出し、キャリア波と各制御値との比較結果に基づいて、オンすべきスイッチを選択する。
【0074】
そして、制御部5は、負荷に供給すべき交流電力の目標値に基づいてスイッチのオン時間を算出する。たとえば、制御部5は、測定部3によって測定された入力交流電圧のレベルおよび周波数と、出力交流電圧のレベルおよび周波数の目標値とに基づいて、マトリックスコンバータ1における各スイッチのオン時間を算出する。
【0075】
そして、制御部5は、算出したスイッチのオン時間が対応のダイオードの順回復時間未満となる場合には、スイッチのオン時間が順回復時間以上となるように、スイッチのオン時間を補正する。
【0076】
たとえば、制御部5は、負荷に供給すべき交流電力の目標値に基づいて上記複数のスイッチのオン時間およびオンタイミングを算出する。そして、制御部5は、算出したオン時間が順回復時間未満となるスイッチが存在する場合には、スイッチのオン時間が順回復時間以上となるように、上記複数のスイッチのオン時間およびオンタイミングをそれぞれ補正する。
【0077】
具体的には、制御部5は、ダイオードが定常オン状態となるのに必要な最小オンデューティを設定する。そして、制御部5は、(6)式の演算によって導かれた各スイッチのオンデューティが、設定した最小オンデューティよりも小さくなる場合には、当該スイッチに対し、強制的に最小オンデューティとなるようにオン時間の加算処理を行う。以下、この加算処理のことを延長補正と呼び、加算されるデューティを延長補正量と呼ぶ。
【0078】
また、この延長補正により、(4)式の制約が守られなくなる。このため、制御部5は、同一出力相に接続された他の2つのスイッチのオンデューティから延長補正量をたとえば均等に減算することにより、(4)式の制約条件を守る。
【0079】
ここで、上記の最小オンデューティは、これを時間に変換した場合に、スイッチに逆並列接続されたダイオードが定常オン状態となるのに十分なオン時間が得られるような値に設定される。
【0080】
図6は、最小オンデューティDminの算出方法を説明するための図である。
【0081】
図6を参照して、スイッチ素子に逆並列接続されたダイオードが定常オン状態となるのに十分な時間を最小オン時間Tminとすると、最小オンデューティDminは、以下の式で表される。
【数10】

【0082】
(9)式において、Acrrはキャリア波の振幅であり、Tdはキャリア波の1周期の時間である。
【0083】
再び図5を参照して、制御部5は、延長補正の対象のスイッチがキャリア周期において何番目にオンするのかに応じて延長補正量を変更する。
【0084】
すなわち、制御部5は、キャリア波の周期の最初および最後の両方においてオンするスイッチのオン時間が順回復時間未満となる場合には、キャリア波の周期の最初および最後におけるオン時間の合計値がダイオードの順回復時間以上になるようにスイッチのオン時間を補正する。
【0085】
具体的には、キャリア周期において3番目にオンするスイッチ、すなわちスイッチSa3のキャリア周期におけるスイッチング回数は1回である。
【0086】
また、1番目および5番目にオンするスイッチ、すなわちスイッチSa1のスイッチングパルスは、キャリア周期において2回出力される。しかしながら、最初のスイッチングパルスについては、スイッチSa1は前回のキャリア周期におけるオン状態を引き継ぐため、実際のスイッチング回数は1回とみなすことができる。
【0087】
また、2番目と4番目にオンするスイッチ、すなわちスイッチSa2のキャリア周期におけるスイッチング回数は2回となる。
【0088】
これらから、キャリア周期において1番目および5番目にオンするスイッチ、ならびに3番目にオンするスイッチについては、スイッチング1回分の延長補正量を与えればよく、2番目および4番目にオンするスイッチについては、スイッチング2回分の延長補正量を与える必要があることが分かる。
【0089】
以下では、キャリア周期において1番目および5番目にオンするスイッチが双方向スイッチSa1であり、3番目にオンするスイッチが双方向スイッチSa3であり、2番目および4番目にオンするスイッチが双方向スイッチSa2である場合について説明する。
【0090】
たとえば、延長補正を行う上で、次の(I)および(II)の2つのルールを定める。
(I)(4)式の拘束条件を満たすこと
(II)延長補正量は、同一出力相に接続された他相のスイッチのオンデューティから均等に減算すること
【0091】
まず、キャリア周期において1番目および5番目にオン状態となるスイッチSa1のオンデューティa1が、(9)式より求めた最小オンデューティDminより小さい場合について説明する。
【0092】
前述のように、スイッチSa1については、実質上、1キャリア周期におけるスイッチング回数を1回とみなすことができる。すなわち、前回のキャリア周期および今回のキャリア周期でも同様の延長補正が行われることを考慮すると、スイッチSa1のオンデューティa1は、最小でDmin/2確保すればよいことになる。
【0093】
制御部5は、a1が最小オンデューティを満たし、かつ上記で定めた2つのルールに適合するように、
1、a2、a3に対して、以下の式で表されるような処理を加える。
【数11】

【0094】
図7は、延長補正前および延長補正後のスイッチングパルスを比較するための図である。図7は、延長補正前および延長補正後における、制御関数およびPWM制御により求められる各スイッチのスイッチングパルスを示している。
【0095】
図7において、Aは、延長されたパルス領域であり、Bは、短縮されたパルス領域である。
【0096】
図7を参照して、(10)式に示す延長補正により、キャリア波と比較されるa1が大きくなり、かつa1+a2が大きくなる。
【0097】
そうすると、スイッチSa1のオン時間がTEだけ延長され、これに伴い、スイッチSa2のオン時間がTEだけ短縮されるとともに、TE/2だけ延長される。そして、スイッチSa3のオン時間が、スイッチSa2の延長分であるTE/2だけ短縮される。これにより、キャリア周期におけるスイッチSa1のオン時間が2×(Tmin/2)=Tmin確保される。
【0098】
すなわち、(10)式によって導出された新しい制御関数a1d、a2d、a3dを用いることにより、スイッチSa1のオン時間が非常に短く設定された場合でも、これを補正し、最小オン時間を満たすことが可能となる。
【0099】
制御部5は、キャリア波の周期の最初または最後においてオンしないスイッチのオン時間が順回復時間未満となる場合には、オン時間がダイオードの順回復時間以上になるようにスイッチのオン時間を補正する。
【0100】
この一例として、まず、キャリア周期において2番目および4番目にオン状態となるスイッチSa2のオンデューティa2が、(9)式より求めた最小オンデューティDminより小さい場合について説明する。
【0101】
前述のように、スイッチSa2については、1キャリア周期におけるスイッチング回数が2回であることから、1回のスイッチングごとに最小オンデューティDminを満たす必要がある。
【0102】
制御部5は、a2が最小オンデューティを満たし、かつ上記で定めた2つのルールに適合するように、
1、a2、a3に対して、以下の式で表されるような処理を加える。
【数12】

【0103】
図8は、延長補正前および延長補正後のスイッチングパルスを比較するための図である。図8は、延長補正前および延長補正後における、制御関数およびPWM制御により求められる各スイッチのスイッチングパルスを示している。
【0104】
図8において、Aは、延長されたパルス領域であり、Bは、短縮されたパルス領域である。
【0105】
図8を参照して、(11)式に示す延長補正により、キャリア波と比較されるa1が小さくなり、かつa1+a2が大きくなる。
【0106】
そうすると、スイッチSa2のオン時間が(2×TE)だけ延長され、これに伴い、スイッチSa1の1回のオン時間がTEだけ短縮され、また、スイッチSa3のオン時間が、スイッチSa2の延長分であるTEだけ短縮される。この処理が、キャリア周期における2番目および4番目のスイッチSa2のオン時間に対して行われる。これにより、キャリア周期におけるスイッチSa2のオン時間がTmin確保される。
【0107】
すなわち、(11)式によって導出された新しい制御関数a1d、a2d、a3dを用いることにより、スイッチSa2のオン時間が非常に短く設定された場合でも、これを補正し、最小オン時間を満たすことが可能となる。
【0108】
次に、キャリア周期において3番目にオン状態となるスイッチSa3のオンデューティa3が、(9)式より求めた最小オンデューティDminより小さい場合について説明する。
【0109】
前述のように、スイッチSa3については、1キャリア周期におけるスイッチング回数が1回であることから、スイッチSa3のオンデューティa3は、最小でDmin確保すればよいことになる。
【0110】
制御部5は、a3が最小オンデューティを満たし、かつ上記で定めた2つのルールに適合するように、
1、a2、a3に対して、以下の式で表されるような処理を加える。
【数13】

【0111】
図9は、延長補正前および延長補正後のスイッチングパルスを比較するための図である。図9は、延長補正前および延長補正後における、制御関数およびPWM制御により求められる各スイッチのスイッチングパルスを示している。
【0112】
図9において、Aは、延長されたパルス領域であり、Bは、短縮されたパルス領域である。
【0113】
図9を参照して、(12)式による延長補正により、キャリア波と比較されるa1が小さくなり、かつa1+a2が小さくなる。
【0114】
そうすると、スイッチSa3のオン時間が前後にTEだけそれぞれ延長され、これに伴い、スイッチSa2のオン時間がTEだけ短縮されるとともに、TE/2だけ延長される。そして、スイッチSa1のオン時間が、スイッチSa2の1回の延長分であるTE/2だけ短縮される。これにより、キャリア周期におけるスイッチSa3のオン時間が2×Tmin/2=Tmin確保される。
【0115】
すなわち、(12)式によって導出された新しい制御関数a1d、a2d、a3dを用いることにより、スイッチSa3のオン時間が非常に短く設定された場合でも、これを補正し、最小オン時間を満たすことが可能となる。
【0116】
ところで、MCにおけるスイッチのオン時間が非常に短くなるようなスイッチングパルスが生成されると、定常オン状態を経由しないことにより生じる逆バイアス時のサージ電圧により、ダイオードに並列接続されたスイッチに過大な電圧が印加され、最悪の場合にはスイッチの破壊に至るという問題点があった。
【0117】
これに対して、本発明の実施の形態に係る電力変換装置では、制御部5は、マトリックスコンバータ1における入力相ごとの複数のスイッチを所定の順序に従って択一的にオンする。そして、制御部5は、負荷に供給すべき交流電力の目標値に基づいてスイッチのオン時間を算出し、算出したスイッチのオン時間が対応のダイオードの順回復時間未満となる場合には、スイッチのオン時間が順回復時間以上となるように、スイッチのオン時間を補正する。
【0118】
このような構成により、マトリックスコンバータ1において、入力および出力間に接続された半導体スイッチに逆並列接続されたダイオードを、順バイアス状態から必ず定常オン状態を経由して逆バイアス状態へと移行させることができる。これにより、ダイオードが順バイアス状態から急に逆バイアス状態へ移行することによるサージ電圧の発生を抑制することができる。そして、半導体スイッチの両端に発生するサージ電圧を低減することができるため、半導体スイッチが過電圧により破壊されることを防ぐことができる。したがって、マトリックスコンバータにおける各スイッチを適切に制御することにより、当該スイッチに並列接続されたダイオードに起因するスイッチの不具合を防ぐことができる。
【0119】
また、スイッチのオン時間とダイオードの順回復時間との大小関係に基づいて、必要な場合にのみスイッチのオン時間の補正を行う構成により、スイッチの不具合を防ぎながら、負荷に供給する交流電力を可能な限り目標値に制御することができる。
【0120】
また、本発明の実施の形態に係る電力変換装置では、制御部5は、負荷に供給すべき交流電力の目標値に基づいて入力相ごとの複数のスイッチのオン時間およびオンタイミングを算出する。そして、制御部5は、算出したオン時間が順回復時間未満となるスイッチが存在する場合には、スイッチのオン時間が順回復時間以上となるように、上記複数のスイッチのオン時間およびオンタイミングをそれぞれ補正する。
【0121】
このような構成により、マトリックスコンバータ1の入力側の短絡および出力側の開放を防ぐことができるため、当該スイッチに並列接続されたダイオードに起因するスイッチの不具合を防ぐとともに、交流−交流直接形電力変換器であるマトリックスコンバータ1を適切に制御することができる。
【0122】
また、本発明の実施の形態に係る電力変換装置では、制御部5は、キャリア波の1周期において上記複数のスイッチがオン状態となる割合を示す制御値をそれぞれ算出し、キャリア波と各制御値との比較結果に基づいて、オンすべきスイッチを選択する。そして、制御部5は、キャリア波の周期の最初および最後の両方においてオンするスイッチのオン時間が順回復時間未満となる場合には、キャリア波の周期の最初および最後におけるオン時間の合計値がダイオードの順回復時間以上になるようにスイッチのオン時間を補正する。
【0123】
このような構成により、マトリックスコンバータ1における各スイッチを適切にPWM制御し、かつキャリア波の周期の最初および最後の両方においてオンするスイッチの不具合を防ぐことができる。また、キャリア周期におけるスイッチのオン回数に応じてオン時間の補正量を適切に算出することができる。
【0124】
また、本発明の実施の形態に係る電力変換装置では、制御部5は、キャリア波の1周期において上記複数のスイッチがオン状態となる割合を示す制御値をそれぞれ算出し、キャリア波と各制御値との比較結果に基づいて、オンすべきスイッチを選択する。そして、制御部5は、キャリア波の周期の最初または最後においてオンしないスイッチのオン時間が順回復時間未満となる場合には、オン時間がダイオードの順回復時間以上になるようにスイッチのオン時間を補正する。
【0125】
このような構成により、マトリックスコンバータ1における各スイッチを適切にPWM制御し、かつキャリア波の周期の最初または最後においてオンしないスイッチの不具合を防ぐことができる。また、キャリア周期におけるスイッチのオン回数に応じてオン時間の補正量を適切に算出することができる。
【0126】
なお、本発明の実施の形態に係る電力変換装置では、制御部5は、非特許文献1に記載の方法を用いて制御関数a1〜c3を求める構成であるとしたが、これに限定するものではない。演算等によってキャリア周期における各スイッチのオンデューティを導出する制御法であれば、どのようなものを適用してもよい。
【0127】
また、本発明の実施の形態に係る電力変換装置では、制御部5は、PWM制御におけるサンプリングタイミングをキャリア波のレベルがゼロとなるタイミングとしたが、これに限定するものではない。PWM制御におけるサンプリングタイミングをキャリア波のレベルが1となるタイミングに設定しても、同様の効果を奏することが可能である。
【0128】
また、本発明の実施の形態に係る電力変換装置では、制御部5は、図3に示す回路において、スイッチング順序をスイッチSa1、スイッチSa2、スイッチSa3、スイッチSa2、スイッチSa1の順序としたが、これに限定するものではない。これとは異なるスイッチング順序を採用しても、同様の効果を奏することが可能である。
【0129】
また、本発明の実施の形態に係る電力変換装置は、測定部4を備える構成であるとしたが、これに限定するものではない。測定部4は、電力変換装置101の外部に設けられる構成であってもよい。
【0130】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0131】
1 マトリックスコンバータ
2 入力フィルタ
3 出力フィルタ
4 測定部
5 制御部
101 電力変換装置
201 電源システム
EU,EV,EW 交流電源
LA,LB,LC 負荷
NL 中性線
Sa1,Sa2,Sa3,Sb1,Sb2,Sb3,Sc1,Sc2,Sc3 双方向スイッチ
S1,S2 スイッチ素子
D1,D2 ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数相の電源からそれぞれ供給される交流電力を複数相の交流電力に変換して負荷に供給するためのマトリックスコンバータと、
前記マトリックスコンバータを制御するための制御部とを備え、
前記マトリックスコンバータは、
前記電源ごとに設けられ、対応の前記電源から供給される交流電力を、オンすることにより前記負荷に伝達するための複数のスイッチと、
前記スイッチに対応して設けられ、対応の前記スイッチと並列に接続された複数のダイオードとを含み、
前記制御部は、前記複数のスイッチを所定の順序に従って択一的にオンし、前記負荷に供給すべき前記交流電力の目標値に基づいて前記スイッチのオン時間を算出し、算出した前記スイッチのオン時間が対応の前記ダイオードの順回復時間未満となる場合には、前記スイッチのオン時間が前記順回復時間以上となるように、前記スイッチのオン時間を補正する、電力変換装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記負荷に供給すべき前記交流電力の目標値に基づいて前記複数のスイッチのオン時間およびオンタイミングを算出し、算出した前記オン時間が前記順回復時間未満となる前記スイッチが存在する場合には、前記スイッチのオン時間が前記順回復時間以上となるように、前記複数のスイッチの前記オン時間および前記オンタイミングをそれぞれ補正する、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記制御部は、キャリア波の1周期において前記複数のスイッチがオン状態となる割合を示す制御値をそれぞれ算出し、前記キャリア波と各前記制御値との比較結果に基づいて、オンすべき前記スイッチを選択し、
前記キャリア波の周期の最初および最後の両方においてオンする前記スイッチのオン時間が前記順回復時間未満となる場合には、前記キャリア波の周期の最初および最後におけるオン時間の合計値が前記ダイオードの順回復時間以上になるように前記スイッチのオン時間を補正する、請求項1または請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記制御部は、キャリア波の1周期において前記複数のスイッチがオン状態となる割合を示す制御値をそれぞれ算出し、前記キャリア波と各前記制御値との比較結果に基づいて、オンすべき前記スイッチを選択し、
前記キャリア波の周期の最初または最後においてオンしない前記スイッチのオン時間が前記順回復時間未満となる場合には、オン時間が前記ダイオードの順回復時間以上になるように前記スイッチのオン時間を補正する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−106467(P2013−106467A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249823(P2011−249823)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】