説明

電力管理システム、電力管理システムの制御方法、および電力管理装置

【課題】発電システムから負荷に供給される電力の不足を抑制することが可能な電力管理システム、電力管理システムの制御方法、および電力管理装置を提供する。
【解決手段】電力管理システム1は、それぞれ設定された温度に温度制御が可能な複数の温度制御機器10を含んで構成される負荷機器に発電システム40が接続され、複数の温度制御機器10にそれぞれ対応する温度検出部20と、発電システム40の発電電力が負荷機器の消費電力に追従できない場合、複数の温度制御機器10においてそれぞれ設定された温度と、各温度制御機器10に対応する温度検出部20により検出された温度とに応じて各温度制御機器10に優先度を設定し、その優先度に基づいて各温度制御機器10の消費電力を抑制するように制御する制御部60と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電システムおよび負荷を備える電力管理システム、電力管理システムの制御方法、および電力管理システムにおける電力管理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、需要家毎に設けられる電力管理装置(例えば、HEMS;Home Energy Management System)によって、需要家に設けられる負荷や需要家に設けられる分散電源などを制御する技術が知られている。
【0003】
分散電源としては、SOFC(Solid Oxide Fuel Cell)などの燃料電池を含む燃料電池ユニットが考えられる。或いは、分散電源としては、太陽光、風力、地熱などのクリーンなエネルギーを利用する発電装置が考えられる。
【0004】
ここで、燃料電池ユニットから出力される電力は、一般的に、需要家に設けられる負荷の消費電力に追従するように制御される(例えば、特許文献1)。しかしながら、需要家に設けられる負荷の消費電力が急激に増大する場合には、燃料電池ユニットから出力される電力が負荷の消費電力に追従することができないケースが存在する。
【0005】
このようなケースに対する対策として、大容量のバッテリやキャパシタを設けることによって、需要家に設けられる負荷の消費電力が急激に増大しても、負荷に供給される電力が不足する事態を回避することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−15783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した技術では、大容量のバッテリやキャパシタを設ける必要があり、燃料電池ユニットを含むシステム全体のコストが上昇する。
【0008】
したがって、かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、発電システムから負荷に供給される電力の不足を抑制することが可能な電力管理システム、電力管理システムの制御方法、および電力管理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する第1の観点に係る発明は、
それぞれ設定された温度に温度制御が可能な複数の温度制御機器を含んで構成される負荷機器に発電システムが接続される電力管理システムであって、
前記複数の温度制御機器にそれぞれ対応する温度検出部と、
前記発電システムの発電電力が前記負荷機器の消費電力に追従できない場合、前記複数の温度制御機器においてそれぞれ設定された温度と、各温度制御機器に対応する温度検出部により検出された温度とに応じて各温度制御機器に優先度を設定し、当該優先度に基づいて前記各温度制御機器の消費電力を抑制するように制御する制御部と、
を備えることを特徴とするものである。
【0010】
また、前記発電システムは、燃料電池によって発電するシステムとすることが好ましい。
【0011】
また、前記制御部は、前記各温度制御機器において前記温度検出部により検出された温度が前記設定された温度を過ぎている場合、前記検出された温度と前記設定された温度との差の大きさに応じて前記優先度を高く設定するように制御するものであることが好ましい。
【0012】
また、前記制御部は、前記各温度制御機器において前記温度検出部により検出された温度が前記設定された温度に達していない場合、前記検出された温度と前記設定された温度との差の大きさに応じて前記優先度を低く設定するように制御するものであることが好ましい。
【0013】
また、前記制御部は、前記発電システムの発電電力が前記負荷機器の消費電力に追従できている場合、前記優先度とは逆の優先度に基づいて、前記各温度制御機器の消費電力の抑制を解除するように制御するものであることが好ましい。
【0014】
また、上記目的を達成する第2の観点に係る発明は、
それぞれ設定された温度に温度制御が可能な複数の温度制御機器を含んで構成される負荷機器に発電システムが接続され、前記複数の温度制御機器にそれぞれ対応する温度検出部を備える電力管理システムにおける電力管理装置であって、
前記発電システムの発電電力が前記負荷機器の消費電力に追従できない場合、前記複数の温度制御機器においてそれぞれ設定された温度と、各温度制御機器に対応する温度検出部により検出された温度とに応じて各温度制御機器に優先度を設定し、当該優先度に基づいて前記各温度制御機器の消費電力を抑制するように制御する制御部を備えることを特徴とするものである。
【0015】
さらに、上記目的を達成する第3の観点に係る発明は、
それぞれ設定された温度に温度制御が可能な複数の温度制御機器を含んで構成される負荷機器に発電システムが接続され、前記複数の温度制御機器にそれぞれ対応する温度検出部を備える電力管理システムの制御方法であって、
前記発電システムの発電電力が前記負荷機器の消費電力に追従できない場合、前記複数の温度制御機器においてそれぞれ設定された温度と、各温度制御機器に対応する温度検出部により検出された温度とに応じて各温度制御機器に優先度を設定し、当該優先度に基づいて前記各温度制御機器の消費電力を抑制するように制御するステップを含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、発電システムから負荷に供給される電力の不足を抑制することが可能な電力管理システム、電力管理システムの制御方法、および電力管理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る電力管理システムの概略構成の例を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る電力管理システムの制御部の処理の例を説明するフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態に係る電力管理システムの処理を説明するシーケンス図である。
【図4】本発明の実施形態に係る電力管理システムの制御部によって設定される優先度の例を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る電力管理システムの処理を説明するシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る電力管理システムについて、図面を参照しながら説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る電力管理システムについて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る電力管理システム1の概略構成の例を示す図である。
【0020】
図1に示すように、電力管理システム1は、温度制御機器10、温度検出部20、負荷機器30、燃料電池システム40、パワーコンディショナ50、および制御部60を含んで構成される。
【0021】
温度制御機器10は、図1においては、一例として、温度制御機器10A、温度制御機器10B、および温度制御機器10Cの3つを示してある。しかしながら、本発明において、温度制御機器は、任意の複数の数とすることができる。ここで、本発明に係る温度制御機器とは、エアーコンディショナ等の冷暖房機器、冷凍冷蔵庫、および給湯機器など、温度を変化させることによってユーザに利便性を与えることができる機器を意味する。また、本発明において、複数の温度制御機器10は、それぞれ設定された温度に温度制御が可能である。例えば、複数の温度制御機器10がそれぞれ異なる部屋に設置された冷暖房機器である場合、複数の温度制御機器10は、それぞれの部屋で別の温度を設定することにより、各部屋の室温を制御することができる。
【0022】
図1に示すように、複数の温度制御機器10A,10B,10Cには、パワーコンディショナ50を介して燃料電池システム40が接続されている。すなわち、電力管理システム1は、燃料電池システム40が発電する電力を、複数の温度制御機器10A,10B,10Cに供給することができる。図1においては、電力の流れを表す電力ラインを実線によって示してある。
【0023】
温度検出部20は、図1においては、一例として、温度制御機器10A、温度制御機器10B、および温度制御機器10Cのそれぞれに対応させて、温度検出部20A、温度検出部20B、温度検出部20Cの3つを示してある。しかしながら、本発明において、温度検出部は、複数の温度制御機器と同数とする任意の複数の数とすることができる。
【0024】
温度検出部20は、例えば温度センサなどにより構成することができ、複数の温度制御機器10にそれぞれ対応して、各温度制御機器10が設定された温度に温度制御する対象の温度を検出する。例えば、温度制御機器10が部屋の室温を制御する冷暖房機器などの場合、当該温度制御機器10に対応する温度検出部20は、その室温を検出する。また、温度制御機器10が所定の冷却庫内を冷却する冷凍冷蔵庫などの場合、当該温度制御機器10に対応する温度検出部20は、その冷却庫内の温度を検出する。さらに、温度制御機器10が温水を供給することができる給湯機器などの場合、当該温度制御機器10に対応する温度検出部20は、その温水の温度を検出する。
【0025】
本実施形態において、温度制御機器10に温度センサが内蔵されている場合、当該温度センサを温度検出部20とすることもできる。この場合には、温度制御機器10の他に別途の温度検出部20を設ける必要はない。例えば、現在、多くのエアコンなどの冷暖房機器には温度センサが内蔵されている。また、給湯機器においても、内蔵の温度センサにより温水の温度を計測している。
【0026】
図1においては、温度制御機器10A,10B,10Cと、温度検出部20A,20B,20Cとの対応関係を、それぞれ一点鎖線で囲むことにより示してある。すなわち、温度制御機器10Aには温度検出部20Aが対応し、温度制御機器10Bには温度検出部20Bが対応し、温度制御機器10Cには温度検出部20Cが対応する。図1において一点鎖線で囲んだ部分は、それぞれが温度制御の対象となる領域であり、例えば上述した部屋の室内、冷凍冷蔵庫の冷却庫内、または給湯機器が水を温める領域内などを示している。
【0027】
図1に示すように、複数の温度制御機器10A,10B,10Cは、それぞれが検出した温度の情報を、制御部60に通知することができる。すなわち、制御部60は、複数の温度制御機器10A,10B,10Cがそれぞれ検出した温度を取得することができる。図1においては、情報信号の流れを表す情報ライン、および制御信号の流れを表す制御ラインを破線によって示してある。このような情報ラインおよび制御ラインは、有線とすることも無線とすることもできる。また、このような情報ラインおよび制御ラインは、電力線を通信回線としても利用電力線搬送通信(PLC;Power Line Communication)により実現することもできる。
【0028】
負荷機器30は、電力管理システム1において電力が供給される機器のうち、上述した複数の温度制御機器10を除いた機器である。負荷機器30は、例えば、一般家庭においては、テレビ受像機、電灯、および音響機器などの機器を想定することができる。図1においては、負荷機器30を1つのブロックとして示してあるが、本実施形態において、負荷機器30は任意の数の機器とすることができる。
【0029】
図1に示すように、負荷機器30は、パワーコンディショナ50を介して燃料電池システム40が接続されている。すなわち、電力管理システム1は、燃料電池システム40が発電する電力を、負荷機器30にも供給する。
【0030】
燃料電池システム40は、上述したように、パワーコンディショナ50を介して、複数の温度制御機器10および負荷機器30に電力を供給する。本発明において、負荷機器とは、複数の温度制御機器10および負荷機器30を意味する。すなわち、本発明に係る電力管理システム1において、負荷機器は、複数の温度制御機器10を含んで構成される。
【0031】
燃料電池システム40は、天然ガスなどから取り出した水素と空気中の酸素との化学反応によって、電力(例えば、DC電力)を出力する装置(セルスタック)を含むシステムである。より詳細には、燃料電池システム40は、セルスタックと、その制御を行うコントローラとを備えている。
【0032】
ここで、燃料電池は、ガスなどから取り出した水素と空気中の酸素との化学反応によって、電力(例えば、DC電力)を発電する装置であって、一例としてはSOFC(Solid Oxide Fuel Cell)が挙げられる。燃料電池の発電量は、燃料電池に供給されるガスおよび空気の量に応じて変化する。燃料電池に供給されるガス及び空気の量は、コントローラによって制御される。
【0033】
コントローラは、負荷追従運転を行うための制御を行う。具体的には、コントローラは、燃料電池から出力される電力が、負荷機器すなわち複数の温度制御機器10および負荷機器30の消費電力に追従するように、燃料電池を制御する。コントローラは、系統(商用電源)70から供給される電力が所定値(例えばゼロ)となるように、燃料電池の目標出力電力値を決定する。コントローラは、燃料電池の出力電力が目標出力電力値となるように、燃料電池を制御する。
【0034】
パワーコンディショナ50には、燃料電池システム40および商用電源70が接続されており、電力を必要とする各機器および各機能部に電力を供給する。パワーコンディショナ50は、燃料電池システム40から出力されるDC電力をAC電力に変換する。そして、パワーコンディショナ50は、電力ラインにAC電力を出力し、当該出力を複数の温度制御機器10および負荷機器30に供給する。
【0035】
制御部60は、複数の温度制御機器10の電源のオン/オフ、および温度設定などの制御を行う。本発明に係る電力管理システム1においては、制御部60が電力管理システム1の全体を制御および管理する。したがって、制御部60は、本発明に係る電力管理装置を構成する。
【0036】
制御部60は、複数の温度制御機器10および負荷機器30の消費電力の情報をパワーコンディショナ50から取得することができ、負荷機器全体の消費電力の増減を監視することができる。また、制御部60は、燃料電池システム40の負荷追従の遅延なども、パワーコンディショナ50から取得する。
【0037】
図1に示すように、制御部60は、複数の温度制御機器10、温度検出部20、およびパワーコンディショナ50と、無線あるいは有線ネットワークによって接続されるようにする。これにより、制御部60は、複数の温度制御機器10の設定値、および温度検出部20の測定値を取得することができる。
【0038】
次に、本発明の実施形態に係る電力管理システム1による処理を説明する。
【0039】
図2は、電力管理システム1の制御部60による処理の例を説明するフローチャートである。図2に示す処理は、例えば負荷機器30の電源がオンになるなど負荷の消費電力が増大したことをトリガとして開始するようにできる。しかしながら、本発明による処理の開始条件は、これに限定されるものではなく、種々の条件をトリガとすることができる。以下、負荷機器30の消費電力が増大したことを、パワーコンディショナ50を介して認識した場合に、制御部60が図2に示す処理を開始する例について説明する。
【0040】
まず、本実施形態において、電力管理システム1における温度制御機器10の消費電力を抑制するまでの処理を説明する。
【0041】
図2に示す処理が開始すると、制御部60は、複数の温度制御機器10および負荷機器30、すなわち電力管理システム1に接続される負荷機器全体の消費電力の情報を取得する(ステップS11)。これにより、制御部60は、現時点における負荷機器全体の消費電力を把握することができる。
【0042】
図3は、電力管理システム1の制御部60による処理において、各機能部間の連携を説明するシーケンス図である。図3においては、図1に示した複数の温度制御機器10および温度検出部20を、例として2つ示してある(温度検出部・温度制御機器1および2)。
【0043】
ステップS11において消費電力の情報を取得したら、制御部60は、燃料電池システム40が出力する電力の負荷追従情報を、パワーコンディショナ50を介して取得する(ステップS12)。ここで、負荷追従情報とは、例えば、燃料電池システム40が所定の時間で現時点の電力からどれだけ電力を増大させることができるか等の情報とすることができる。
【0044】
ステップS12において負荷追従情報を取得したら、制御部60は、燃料電池システム40の電力が、ステップS11で取得した負荷機器の消費電力に追従することができるか否かを判定する(ステップS13)。ステップS13において燃料電池システム40が負荷に追従できると判定されたら、制御部60は、処理を終了する(ステップS21のNo)。
【0045】
例えば、電力管理システム1に接続される負荷機器の全体としての消費電力が増大した場合でも、その変化が微小であったり、または長い時間にわたる緩慢な変化であったりした場合、燃料電池システム40が負荷に追従可能なこともある。しかしながら、消費電力の増大が微小なものではなかったり、または急峻な変化であったりした場合には、一般的に燃料電池システム40は負荷に追従することができない。
【0046】
そこで、ステップS13において燃料電池システム40が負荷に追従できないと判定されたら、制御部60は、複数の温度制御機器10および温度検出部20から、それぞれの温度制御情報を取得する(ステップS14)。ここで、温度制御情報とは、複数の温度制御機器10においてそれぞれ設定された温度の情報、および、各温度制御機器10に対応するそれぞれの温度検出部20により検出された温度の情報である。例えば、温度制御機器10Aが部屋に設置された暖房機器である場合、温度制御機器10Aにおいて設定された温度が25度であるのに対し、温度検出部20Aにおいて検知された実際の室温が20度であれば、「設定25度に対し検出20度」が温度制御情報になる。制御部60は、このようにして取得した温度制御情報を、内蔵の記憶部に記憶する。
【0047】
ここで、温度制御機器10において設定された温度とは、ユーザが設定した温度とすることもできるし、例えば前もって予約された温度などに基づいて制御部60が制御している温度としてもよい。あるいは、温度制御機器10において設定された温度とは、温度検出部20により検出される温度に応じて、制御部60が適温として所定のアルゴリズムに基づいて算出した温度とすることもできる。
【0048】
ステップS14において温度制御情報が取得されたら、制御部60は、当該温度制御情報に応じて、各温度制御機器10に優先度を設定する(ステップS15)。各温度制御機器10に設定される優先度とは、消費電力を抑制する優先度であって、複数の温度制御機器10において、優先的に消費電力を抑制しても影響が少ないと見込まれる度合いである。すなわち、本実施形態において、設定された優先度が高い温度制御機器10は、その温度制御機器10の消費電力を抑制するように制御したとしても、それによる影響が無い、または影響が少ないとみなして、優先的に消費電力を少なくするように制御する。制御部60は、このようにして設定した優先度を、内蔵の記憶部に記憶する。
【0049】
以下、各温度制御機器10に設定される、消費電力を抑制する優先度の例について、さらに説明する。
【0050】
例えば、温度制御機器10Aが部屋に設置された暖房機器である場合を想定する。この場合、温度制御機器10Aにおいて設定された温度が20度であるのに対し、温度検出部20Aにおいて検知された実際の室温がたまたま25度であったとすると、この暖房機器は即座にオフにしたとしても、それによる影響はない。また、例えば暖房機器において設定された温度が20度であるのに対し、例えば以前の設定温度が高すぎたなどの原因により、温度検出部20Aにおいて検知された実際の室温が既に20度を過ぎて25度であった場合なども同様である。これらのような場合、温度制御機器10の消費電力を抑制する優先度は高く設定するのが好適である。また、温度制御機器10Aにおいて設定された温度が20度であるのに対し、温度検出部20Aにおいて検知された実際の室温が20.5度であったとすると、この暖房機器をオフにすると、温度が低下してユーザが不快に感じる等の不都合が生じるおそれがある。このような場合、温度制御機器10の消費電力を抑制する優先度は低く設定するのが好適である。
【0051】
また、温度制御機器10Aが部屋に設置された冷房機器である場合を想定する。この場合、温度制御機器10Aにおいて設定された温度が28度であるのに対し、温度検出部20Aにおいて検知された実際の室温がたまたま22度であったとすると、この冷房機器は即座にオフにしたとしても、それによる影響はない。また、例えば冷房機器において設定された温度が28度であるのに対し、例えば以前の設定温度が低すぎたなどの原因により、温度検出部20Aにおいて検知された実際の室温が既に28度を過ぎて22度であった場合なども同様である。これらのような場合、温度制御機器10の消費電力を抑制する優先度は高く設定するのが好適である。また、温度制御機器10Aにおいて設定された温度が26度であるのに対し、温度検出部20Aにおいて検知された実際の室温が25.5度であったとすると、この冷房機器をオフにすると、温度が上昇してユーザが不快に感じる等の不都合が生じるおそれがある。このような場合、温度制御機器10の消費電力を抑制する優先度は低く設定するのが好適である。
【0052】
このように、本実施形態において、各温度制御機器10において温度検出部20により検出された温度が設定された温度を過ぎている場合、検出された温度と設定された温度との差の大きさに応じて優先度を高く設定するのが好適である。
【0053】
さらに、例えば、温度制御機器10Aが部屋に設置された暖房機器である場合を想定する。この場合、温度制御機器10Aにおいて設定された温度が25度であるのに対し、温度検出部20Aにおいて検知された実際の室温が15度であった場合、設定温度まで温められていない上、その温度差は10度もある。一方、温度制御機器10Aにおいて設定された温度が20度であるのに対し、温度検出部20Aにおいて検知された実際の室温が19.5度であった場合、設定温度まで温められてはいないものの、その温度差はわずか0.5度である。ここで、前者(温度差10度)と後者(温度差0.5度)とを比較すると、暖房機器をオフにする場合、前者は設定温度からの乖離の幅が大きくなり不都合が生じやすい。しかしながら、後者の場合は設定温度からの乖離が大きくなるまでにはしばらくの時間を要するため、すぐには不都合は生じにくい。すなわち、前者の場合には暖房機器をオフにすると不都合が生じると考えられ、温度制御機器10の消費電力を抑制する優先度は低く設定するのが好適である。また、後者の場合、暖房機器を一時的にオフにしたとしても、それによる影響は少ないと考えられ、温度制御機器10の消費電力を抑制する優先度は、前者と比べて高く設定するのが好適である。
【0054】
また、温度制御機器10Aが部屋に設置された冷房機器である場合を想定する。この場合、温度制御機器10Aにおいて設定された温度が25度であるのに対し、温度検出部20Aにおいて検知された実際の室温がたまたま26度であったとすると、設定温度まで冷やせてはいないものの、その温度差は1度しかない。このため、この冷房機器を一時的にオフにしたとしても、それによる影響は少ないと考えられる。このような場合、温度制御機器10の消費電力を抑制する優先度は高く設定するのが好適である。また、温度制御機器10Aにおいて設定された温度が25度であるのに対し、温度検出部20Aにおいて検知された実際の室温が32度であったとすると、設定温度まで冷やせてはいないばかりか、その温度差は7度もある。このため、この冷房機器をオフにすると、不都合が生じると考えられる。このような場合、温度制御機器10の消費電力を抑制する優先度は低く設定するのが好適である。
【0055】
このように、本実施形態において、各温度制御機器10において温度検出部20により検出された温度が設定された温度に達していない場合、検出された温度と設定された温度との差の大きさに応じて優先度を低く設定するのが好適である。
【0056】
図4は、制御部60が、以上説明したようなアルゴリズムにしたがって、図1に示すような3つの温度制御機器10に、消費電力を抑制する優先度を設定した様子を表にして表した図である。例えば、図4において、温度制御機器10Aをエアコン1とし、温度制御機器10Bをエアコン2とし、温度制御機器10Cをエアコン3とすることができる。図4に示した設定温度とは、各温度制御機器10において設定された温度であり、また、環境温度とは、各温度制御機器10において温度検出部20により検出された温度である。このように、本実施の形態においては、図4に示すように、複数の温度制御機器10のそれぞれについて、温度制御情報に応じて、消費電力を抑制する優先度を設定する。
【0057】
ステップS15において優先度が設定されたら、制御部60は、当該優先度に基づいて、各温度制御機器10の消費電力を抑制するように制御する(ステップS16)。すなわち、ステップS16では、制御部60は、消費電力を抑制する優先度が高く設定された温度制御機器10の消費電力を抑制する。
【0058】
この時、制御部60は、検出された温度と設定された温度との差が大きいため優先度が高く設定された温度制御機器10については、検出された温度と設定された温度との差の大きさに応じて、消費電力の抑制の度合いを調整してもよい。すなわち、この場合に、検出された温度と設定された温度との差が比較的大きい場合には、温度制御機器10の消費電力を即座に全部カットしてしまうこともできる。具体的には、制御部60は、例えば冷房機器のスイッチをオフにするように制御することかできる。また、例えば消費電力を抑制する優先度が高く設定されたにもかかわらず、検出された温度と設定された温度との差が比較的大きくない場合には、温度制御機器10の消費電力の一部をカットしてしまうこともできる。具体的には、制御部60は、例えば暖房機器の温度設定を低くしたり、冷房機器の設定温度を高く設定したりすることができる。
【0059】
一方、制御部60は、検出された温度と設定された温度との差が小さいため優先度が高く設定された温度制御機器10については、検出された温度と設定された温度との差の小ささに応じて、消費電力の抑制の度合いを調整してもよい。すなわち、この場合に、検出された温度と設定された温度との差が比較的小さい場合には、温度制御機器10の消費電力を即座に大幅にカットしてしまうこともできる。具体的には、制御部60は、例えば暖房機器の温度設定を大幅に低くしたり、冷房機器の設定温度を大幅に高く設定したりすることができる。また、例えば消費電力を抑制する優先度が高く設定されたにもかかわらず、検出された温度と設定された温度との差が比較的小さくない場合には、温度制御機器10の消費電力の一部をカットしてしまうこともできる。具体的には、制御部60は、例えば暖房機器の温度設定を若干低くしたり、冷房機器の設定温度を若干高く設定したりすることができる。
【0060】
ステップS16において温度制御機器10の消費電力を抑制するように制御されたら、制御部60は、ステップS12に戻って処理を続行する。
【0061】
図3においては、ステップS11からS16までの最初のループにより、温度制御機器1(10A)の消費電力が抑制されている(ステップS16)。その後、次のループ(ステップS12からS16まで)により、温度制御機器2(10B)の消費電力が抑制されている(ステップS16)。
【0062】
このように、本実施形態では、制御部60は、各温度制御機器10設定した優先度に基づいて、各温度制御機器10の消費電力を抑制するように制御する。これにより、本実施形態に係る電力管理システム1においては、燃料電池システム40が負荷機器の消費電力に追従できない場合でも、追従できない電力の差分は、負荷機器の消費電力を抑制することにより解消される。したがって、本実施形態に係る電力管理システム1によれば、発電システムから負荷に供給される電力の不足を抑制することが可能となる。
【0063】
次に、本実施形態において、電力管理システム1における温度制御機器10の消費電力を抑制するまでの処理を説明する。
【0064】
上述した説明においては、ステップS13で燃料電池システム40が負荷に追従できると判定された場合、最初のループにおいては温度制御機器10の消費電力が抑制されていないため、ステップS21のNoに進んで処理は終了した。
【0065】
しかしながら、一度ステップS16を経た後においては、消費電力が抑制されている温度制御機器10が存在する。また、一度ステップS13で燃料電池システム40が負荷に追従できないと判定されても、ある程度の時間が経過した後は、燃料電池システム40の出力が上昇して負荷に追従できる場合も想定される。このような場合、もはや温度制御機器10の消費電力を抑制する必要はないため、当該温度制御機器10の消費電力の抑制を適切に解除するのが好適である。以下、そのための処理を説明する。
【0066】
消費電力が抑制されている温度制御機器10が存在する場合に、ステップS13で燃料電池システム40が負荷に追従できると判定されたら、制御部60は、ステップS21のYesに進み、温度制御情報を取得する(ステップS22)。ステップS22においては、上述したステップS14と同様に、制御部60は、複数の温度制御機器10および温度検出部20から、その時点におけるそれぞれの温度制御情報を取得する。また、この時、制御部60は、ステップS14において取得した記憶した当該温度制御機器10の温度制御情報から、消費電力抑制前の温度制御機器10において設定された温度を読み出す。
【0067】
ステップS22において温度制御情報が取得されたら、制御部60は、当該温度制御情報に応じて、各温度制御機器10に再び優先度を設定する(ステップS23)。ここで、優先度を設定する際には、(ステップS22で読み出した)消費電力抑制前の温度制御機器10において設定された温度と、現在実際に温度検出部20により検出された温度との差に基づいて、優先度を設定するのが好適である。また、ステップS23において設定する優先度は、ステップS15において設定した優先度とは逆に設定したものとするのが好適である。
【0068】
すなわち、ステップS15で高い優先度に設定される条件は、ステップS23においては低い優先度に設定され、ステップS15で低い優先度に設定される条件は、ステップS23においては高い優先度に設定される。優先度の度合いについても、ステップS23において設定する優先度は、ステップS15において設定した優先度とは逆になる。このように、ステップS23においてステップS15とは逆の優先度を設定することにより、現在ユーザに不都合である想定される環境における温度制御機器10から、消費電力の抑制を解除することができる。
【0069】
ステップS23において優先度が設定されたら、制御部60は、当該優先度に基づいて、各温度制御機器10の消費電力の抑制を解除するように制御する(ステップS24)。すなわち、ステップS24では、制御部60は、ステップ23において消費電力の抑制を解除する優先度が高く設定された温度制御機器10の消費電力の抑制を解除する。ここで、温度制御機器10の消費電力の抑制を解除する際には、制御部60は、燃料電池システム40の負荷追従能力を超えない範囲で、抑制を解除するように制御するのが好適である。例えば、温度制御機器10を冷房機器とする場合に、消費電力を抑制する制御をした後の設定温度が25度で、消費電力抑制前の設定温度が20度であるとする。このような場合、制御部60は、最初のステップS24において一気に25度に戻すのではなく、24度、23度、22度のように、各ループにおいて徐々に温度を近づけていくように、消費電力の抑制を解除するのが好適である。
【0070】
このように、本実施形態において、制御部60は、燃料電池システム1の発電電力が複数の温度制御機器10および負荷機器30の消費電力に追従できている場合、各温度制御機器10の消費電力の抑制を解除するように制御するのが好適である。この場合、上述した優先度とは逆の優先度に基づいて、各温度制御機器10の消費電力の抑制を解除するように制御するのが好適である。
【0071】
図5は、電力管理システム1の制御部60によって電力制御を解除する処理において、各機能部間の連携を説明するシーケンス図である。図5においては、図3と同様に、図1に示した複数の温度制御機器10および温度検出部20を、例として2つ示してある(温度検出部・温度制御機器1および2)。
【0072】
図5においては、ステップS12からS13のYesを経て、ステップS21からS24までの最初のループにより、温度制御機器1(10A)の消費電力の抑制を解除している(ステップS24)。その後、次のループ(ステップS12からS13のYesを経てステップS21からS24まで)により、温度制御機器2(10B)の消費電力の抑制を解除している(ステップS24)。
【0073】
上述した実施形態においては、本発明を、電力管理システムおよび電力管理システムにおける電力管理装置として説明してきたが、本発明は、電力管理システムの制御方法とすることもできる。
【0074】
上述した実施形態においては、電力管理システム1における発電システムの典型例として、燃料電池システム40を採用した場合について説明した。しかしながら、本発明に係る電力管理システム1における発電システムは、急峻な負荷に追従することが困難な発電部を有する発電システムであれば、燃料電池システム以外のものとすることもできる。例えば、発電システムを太陽電池システムとして、太陽が雲間に隠れて発電電力が一時的に低下し、その後また発電電力が回復した際に、負荷に対する追従性が鈍い場合にも、本発明を適用することができる。
【0075】
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各機能部、各手段、各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段やステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。また、上述した本発明の各実施形態は、それぞれ説明した各実施形態に忠実に実施することに限定されるものではなく、適宜、各特徴を組み合わせて実施することもできる。
【0076】
また、上述した実施形態に係る電力管理システム1においては、燃料電池システム40が定格で出力する電力によって、負荷機器全ての消費電力を賄うものとして説明した。
しかしながら、燃料電池システム40が定格で出力する電力によっても賄いきれない負荷が発生した場合には、当該不足する電力を、商用電源70から買電することにより、補うことができる。また、上述した実施形態に係る電力管理システム1において、温度制御機器10の消費電力を抑制する制御を行ってもなお賄いきれない負荷が発生した場合にも、同様の措置により補うようにできる。
【符号の説明】
【0077】
1 電力管理システム
10 温度制御機器
20 温度検出部
30 負荷機器
40 燃料電池システム
50 パワーコンディショナ
60 制御部
70 商用電源


【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ設定された温度に温度制御が可能な複数の温度制御機器を含んで構成される負荷機器に発電システムが接続される電力管理システムであって、
前記複数の温度制御機器にそれぞれ対応する温度検出部と、
前記発電システムの発電電力が前記負荷機器の消費電力に追従できない場合、前記複数の温度制御機器においてそれぞれ設定された温度と、各温度制御機器に対応する温度検出部により検出された温度とに応じて各温度制御機器に優先度を設定し、当該優先度に基づいて前記各温度制御機器の消費電力を抑制するように制御する制御部と、
を備えることを特徴とする電力管理システム。
【請求項2】
前記発電システムは、燃料電池によって発電するシステムである、請求項1に記載の電力管理システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記各温度制御機器において前記温度検出部により検出された温度が前記設定された温度を過ぎている場合、前記検出された温度と前記設定された温度との差の大きさに応じて前記優先度を高く設定するように制御する、請求項1または2に記載の電力管理システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記各温度制御機器において前記温度検出部により検出された温度が前記設定された温度に達していない場合、前記検出された温度と前記設定された温度との差の大きさに応じて前記優先度を低く設定するように制御する、請求項1または2に記載の電力管理システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記発電システムの発電電力が前記負荷機器の消費電力に追従できている場合、前記優先度とは逆の優先度に基づいて、前記各温度制御機器の消費電力の抑制を解除するように制御する、請求項1または2に記載の電力管理システム。
【請求項6】
それぞれ設定された温度に温度制御が可能な複数の温度制御機器を含んで構成される負荷機器に発電システムが接続され、前記複数の温度制御機器にそれぞれ対応する温度検出部を備える電力管理システムにおける電力管理装置であって、
前記発電システムの発電電力が前記負荷機器の消費電力に追従できない場合、前記複数の温度制御機器においてそれぞれ設定された温度と、各温度制御機器に対応する温度検出部により検出された温度とに応じて各温度制御機器に優先度を設定し、当該優先度に基づいて前記各温度制御機器の消費電力を抑制するように制御する制御部を備えることを特徴とする、電力管理装置。
【請求項7】
それぞれ設定された温度に温度制御が可能な複数の温度制御機器を含んで構成される負荷機器に発電システムが接続され、前記複数の温度制御機器にそれぞれ対応する温度検出部を備える電力管理システムの制御方法であって、
前記発電システムの発電電力が前記負荷機器の消費電力に追従できない場合、前記複数の温度制御機器においてそれぞれ設定された温度と、各温度制御機器に対応する温度検出部により検出された温度とに応じて各温度制御機器に優先度を設定し、当該優先度に基づいて前記各温度制御機器の消費電力を抑制するように制御するステップを含むことを特徴とする、電力管理システム制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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