説明

電力量計器差測定システム

【課題】複数の電力量計について異なる条件で器差の測定を同時に行うことができ、電力量計の器差の調整を効率よく行うことのできる電力量計器差測定システムを提供すること。
【解決手段】本発明の電力量計器差測定システム1は、電力量計100と接続され、交流電圧を供給する交流電圧電源2と、一定の大きさの交流電流を供給する交流電流電源3と、各電力量計100の電力量の器差の測定の基準となる電力量を規定する標準電力量計5と、交流電流電源3から供給される交流定電流を、所望の大きさの交流電流に変換して各電力量計100へ供給する複数の変流器4とを有し、1つの変流器4に対し、1つの電力量計100が接続されるように構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電力量計器差測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力売買において取引電力量の計量に使用される電力量計は、日本工業規格において許容誤差等の性能、機能が規格化されている。また、電力量計の譲渡時においては、予め電力量計が所定の性能、機能を満足しているか否かを検査する検定を受け、その検定結果を電力量計に添付することが計量法において義務付けられている。
【0003】
このため、上記の検定において、電力量計が所定の性能、機能を満足するように、電力量計は、製造後、予め調整が行われる。電力量計の調整は、通常、上記の検定で行われる測定の条件に従って行われる。例えば、定格電流が30Aの普通電力量計の場合、力率1において30、15、1Aの交流電流での電力量、力率0.5において、30、6Aの交流電流での電力量について器差の検定が行われる。したがって、電力量計がこのような普通電力量計である場合、上記の5つの条件について、電力量計の調整が行われる。
【0004】
製造された電力量計を上記の検査(検定)に対応させるための電力量計の調整においては、電力量計に既知の大きさの交流電流および交流電圧を供給して、電力量計の器差(計測誤差)を測定する電力量計器差測定システムが用いられる。
【0005】
従来の電力量計器差測定システムは、一般に、図7に示すような構成をなしている。図7において、電力量計器差測定システム500は、交流電圧電源501と、交流電流電源502と、標準変流器503と、標準電力量計504とを有している。
【0006】
交流電圧電源501には、各電力量計100および標準電力量計504が並列に接続されており、交流電圧電源501は、これらに定格(例えば100V)の交流電圧を印加する。また、交流電流電源502には、各電力量計100、標準変流器503が直列に接続されており、交流電流電源502は、これらに適宜選択された大きさ(例えば、30、15、6、1A)の交流電流を流す。標準変流器503は、標準電力量計504に供給される交流電流の大きさを変換しており、標準電力量計504に、常時一定の大きさの交流電流(例えば5Aの交流電流)を流す。
【0007】
そして、標準電力量計504で計測される電力量を基準として、各電力量計100で計測される電力量の器差(誤差)が測定される。電力量計100の調整においては、最終的に各電力量計100は、得られた器差が所定範囲内となるように調整される。
【0008】
以上のような電力量計器差測定システム500は、同時に複数の電力量計100の器差を測定することができる。
【0009】
しかしながら、電力量計器差測定システム500においては、各電力量計100が直列に接続されており、これに対して一定の選択された交流電流が流されるため、それぞれの電力量計100に対し異なる大きさの電流を流すことができない。すなわち、電力量計の検定は、通常異なる5つの条件について器差の測定を行うが、従来の電力量計器差測定システム500では、複数の電力量計100に対し、1つの条件でしか器差を測定できない。このため、電力量計100の調整において、ある条件で1つの電力量計100が求める器差の許容範囲から外れる場合、当該電力量計100を調整するために、他の電力量計100は他の条件で器差の測定を行うことができない。また、電力量計100で1つの条件に対して調整を行うと、当該電力量計100において他の条件での器差が変わってしまう場合が多いため、この電力量計100について他の条件についての器差の測定、調整を行う必要がある。このため、例えば、5つの条件について電力量計100の器差の調整を行っている場合、5つめの条件で1つの電力量計100が器差の許容範囲から外れる場合、他の電力量計100を接続したまま、1つめの条件に戻って1つの電力量計100の調整を行う必要がある。
【0010】
このような問題を回避するため、電力量計器差測定システム500で器差の測定を行っている複数の電力量計100のうち、求める器差の許容範囲内にない電力量計100を無視して、他の電力量計100について全ての条件について器差の測定を行う方法が考えられる。このような場合、求める器差の許容範囲内にない電力量計100については、例えば、電力量計器差測定システム500を用いて、1台のみで器差の調整を行うことが考えられる。また、例えば、1台のみ接続可能な電力量計器差測定システムを用いて単独で器差の調整を行うことが考えられる。しかしながら、器差の調整を行う必要がある電力量計100が複数同時に発生した場合や、器差の調整中においてさらに、他の電力量計100について器差の調整を行う必要が生じた場合等には、このような方法で素早く対応することは難しい。
【0011】
以上より、従来の電力量計器差測定システム500を用いた場合、迅速な電力量計100の調整ができず、電力量計100の調整の作業効率が低いものとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−327764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、複数の電力量計について異なる条件で器差の測定を同時に行うことができ、電力量計の器差の調整を効率よく行うことのできる電力量計器差測定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような目的は、下記(1)〜(10)の本発明により達成される。
(1) 複数の電力量計に対し交流電圧と、交流電流とを印加して、各前記電力量計で計測される電力量の器差を測定するための電力量計器差測定システムであって、
前記電力量計と接続され、前記交流電圧を供給する交流電圧電源と、
一定の大きさの交流電流を供給する交流電流電源と、
前記交流電流電源および前記交流電圧電源と接続され、前記各電力量計の電力量の器差の測定の基準となる電力量を規定する標準電力量計と、
前記交流電流電源から供給される前記交流定電流を、所望の大きさの交流電流に変換して前記各電力量計へ供給する複数の変流器とを有し、
1つの前記変流器に対し、1つの前記電力量計が接続されるように構成されていることを特徴とする電力量計器差測定システム。
【0015】
(2) 前記各変流器と前記標準電力量計とは、前記交流電流電源に対し、直列に接続されたものである上記(1)に記載の電力量計器差測定システム。
【0016】
(3) 複数の電力量計に対し、交流電圧および交流電流を印加して、前記各電力量計で計測される電力量の器差を測定するための電力量計器差測定システムであって、
一定の大きさの交流電流を出力する交流電流電源と、
前記交流電流電源が出力する前記交流電流に対する力率がそれぞれ異なる交流電圧を出力する複数の交流電圧電源と、
複数の前記交流電圧電源にそれぞれ対応し、対応する前記交流電圧電源および前記交流電流電源と接続され、前記各電力量計の電力量の器差の測定の基準となる電力量を規定する複数の標準電力量計と、
前記各電力量計に対し、複数の前記交流電圧電源から所望の力率の交流電圧を選択して供給する力率選択手段と、
前記交流電流電源から出力される前記交流定電流を、所望の大きさの交流電流に変換して前記各電力量計へ印加する複数の変流器とを有し、
1つの前記変流器に対し、1つの前記電力量計が接続されるように構成されていることを特徴とする電力量計器差測定システム。
【0017】
(4) 前記力率選択手段は、前記電力量計毎に接続される複数の力率選択スイッチを有し、
前記力率選択スイッチは、複数の前記交流電圧電源から1の交流電圧電源を選択し、選択した当該交流電圧電源から供給された前記交流電圧を、接続された前記電力量計に供給するように構成されている上記(3)に記載の電力量計器差測定システム。
【0018】
(5) 複数の前記変流器と複数の前記標準電力量計とは、前記交流電流電源に対し、直列に接続されたものである上記(3)または(4)に記載の電力量計器差測定システム。
【0019】
(6) 複数の前記交流電圧電源は、当該交流電圧電源から出力される前記交流電圧の力率を調整する力率調整手段を有し、
前記力率調整手段は、前記交流電流電源から送信される前記位相同期信号に従って、出力される前記交流電圧の力率を調整するように構成されている上記(3)ないし(5)のいずれかに記載の電力量計器差測定システム。
【0020】
(7) 前記各変流器は、当該各変流器内において短絡して、当該各変流器と接続した前記電力量計への前記交流電流の供給を停止する短絡手段を有している上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の電力量計器差測定システム。
【0021】
(8) 前記電力量計を取り外す際に、または当該電力量計を他の電力量計と交換する際に、前記短絡手段を作動させて短絡を行うように構成されている上記(6)に記載の電力量計器差測定システム。
【0022】
(9) 前記各変流器は、接続される前記電力量計の定格電流に基づいて、当該電力量計について器差の測定を行うことができるように構成されている上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の電力量計器差測定システム。
【0023】
(10) 前記各変流器のうち少なくとも1つの変流器は、互いに異なる定格電流の複数種の電力量計について器差の測定を行うことができるように構成されている上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の電力量計器差測定システム。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の電力量器差測定システムに用いられる電力量計の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る電力量計器差測定システムを示すブロック回路図である。
【図3】図2に示す電力量計器差測定システムが備える標準変流器の回路図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る電力量計器差測定システムを示すブロック回路図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る電力量計器差測定システムを示すブロック回路図である。
【図6】図5に示す電力量計器差測定システムが備える標準変流器の回路図である。
【図7】従来の電力量計器差測定システムの実施形態の一例を示すブロック回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を、好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の電力量器差測定システムに用いられる電力量計の一例を示す斜視図、図2は、本発明の第1実施形態に係る電力量計器差測定システムを示すブロック回路図、図3は、図2に示す電力量計器差測定システムが備える標準変流器の回路図である。なお、以下では、説明の便宜上、図1〜図3の上側を「上」、下側を「下」、右側を「右」、左側を「左」と言う。
【0026】
まず、電力量計器差測定システムの説明に先立ち、本発明の電力量計器差測定システムによって器差が測定される電力量計の一例について説明する。
【0027】
図1に示すように、電力量計100は、本実施形態において、誘導型電力量計であり、電圧コイル101と、電流コイル102と、回転円板103と、制動磁石104を有している。
【0028】
電圧コイル101は、電圧端子P1、P2を介して外部から交流電圧が印加されることにより磁界を発生させる。電圧コイル101は、インダクタンスが比較的高いコイルであり、電流が比較的流れにくいものとなっている。
【0029】
電流コイル102は、電圧コイル101と対向して設けられている。電流コイル102は、電流端子1S、1Lを介して外部から交流電流が流されることにより磁界を発生させる。また、電流コイル102は、インダクタンスが比較的低いコイルであり、電流が比較的流れやすく、当該電流コイル102で生じる電圧降下が小さいものとなっている。
【0030】
回転円板103は、電圧コイル101と電流コイル102との間に設けられ、電圧コイル101に印加された交流電圧および電流コイル102に流された交流電流に応じた速度で回転する。そして、回転円板103の回転量によって、電力量が測定される。
【0031】
制動磁石104は、永久磁石であり、回転円板103の面と垂直の方向に、かつ回転円板103を貫通するように、磁界を発生させる。制動磁石104は、回転円板103へ、その回転に対する制動力を与える。これにより、回転円板103が過度に回転することが防止される。
【0032】
次に、本発明の電力量計器差測定システムについて説明する。
図2に示すように、電力量計器差測定システム1は、交流電圧電源2と、交流電流電源3と、n個(複数)の標準変流器(変流器)4と、標準電力量計5とを有している。そして、電力量計器差測定システム1には、上述したような電力量計100が複数接続されることができ、電力量計器差測定システム1は、複数の電力量計100について、各電力量計100が測定する電力量の器差(誤差)を同時に測定することができる。
【0033】
交流電圧電源2は、各電力量計100および標準電力量計5に対して、定格(本実施形態では、100v)の交流電圧(交流定電圧)を印加(供給)する。交流電圧電源2は、電圧端子P1、P2を有しており、交流電圧電源2の電圧端子P1から延びる配線に対して各電力量計100の電圧端子P1および標準電力量計5の電圧端子P1が、交流電圧電源2の電圧端子P2から延びる配線に対して各電力量計100の電圧端子P2および標準電力量計5の電圧端子P2が、それぞれ並列に接続されている。これにより、交流電圧電源2は、各電力量計100および標準電力量計5に対し、等しい定格の交流電圧が印加される。また、各電力量計100のうち1つの電力量計100を取り外す場合であっても、他の電力量計100に印加される交流定電圧には影響を与えないものとなる。
【0034】
また、交流電圧電源2は、交流電流電源3から出力される交流定電流と、交流電圧電源2から出力される交流定電圧との間の力率(以下単に力率ともいう。)を設定するための力率調整手段を有している。力率調整手段は、交流電流電源3が送信する基準位相同期信号を受信し、交流定電圧の力率を調整する。すなわち、交流電流電源3から出力される交流定電流の位相を基準として、交流電流電源3から出力される交流定電流の位相と、交流電圧電源2から出力される交流定電圧の位相とが力率に対応する位相差を保って同期されこれに応じた力率の交流定電圧が交流電圧電源2から出力される。本実施形態では、交流電圧電源2から出力される交流定電圧の力率は、0.5または1.0であり、力率は適宜変更可能である。なお、本実施形態では、各電力量計100に供給される交流定電圧は、全て同一の力率となる。
【0035】
交流電流電源3は、一定(本実施形態では、5A)の交流電流(交流定電流)を供給する。交流電流電源3は、電流端子S、Lを有しており、交流電流電源3の電流端子Sは、図中最も上側にある標準変流器4の1次電流端子S1に、交流電流電源3の電流端子Lは、標準電力量計5の電流端子1Lに接続されている。
【0036】
また、交流電流電源3は、交流電圧電源2に対し、交流定電流の位相情報を含む基準位相同期信号を送信する。
【0037】
標準変流器4は、交流電流電源3から入力される定格の交流電流を所望の大きさの交流電流に変換し、変換された交流電流を電力量計100に流す(供給する)。
【0038】
また、図2に示すように、電力量計器差測定システム1は、複数の標準変流器4を有している。そして、各標準変流器4には、1つの電力量計100が接続される。このように、従来の電力量計器差測定システムとは異なり、測定される各電力量計100に対し1つの標準変流器4を配置することにより、電力量計器差測定システム1は、電力量計100毎に独立して、異なる条件(異なる大きさの交流電流)での器差の測定を行うことができる。このため、例えば、ある条件で複数の電力量計100の調整を行っている場合において、1つの電力量計100のみに調整を行う必要が生じた場合であっても、他の電力量計100については、他の条件での器差の測定および調整を行うことができる。この結果、電力量計器差測定システム1を用いて、複数の電力量計100の器差の測定および調整を効率よく行うことができる。
また、複数の標準変流器4は、交流電流電源3に対して直列で接続されている。
【0039】
図3に示すように、標準変流器4は、変流器本体41と、外部と接続され、外部から交流電流を入力する1次電流端子S1、L1と、変流器本体41から引き出されたタップT1、T2、T3、T4、Iと、タップT1〜T4に接続されたスイッチSW1、SW2、SW3、SW4、SW5と、電力量計100と接続するための2次電流端子S2、L2とを有している。
【0040】
また、変流器本体41は、1次電流端子S1、L1から入力された交流電流(1次電流)を、所定の大きさの交流電流(2次電流)として各タップT1〜T4に出力する。出力される2次電流の大きさは、タップによって選択することができる。すなわち、本実施形態では、タップT1に出力される2次電流は1Aであり、タップT2に出力される2次電流は6Aであり、タップT3に出力される2次電流は15Aであり、タップT4に出力される2次電流は30Aである。これは、一般的な家庭に配備される電力量計(定格電流:30A)について、検定(器差の測定)を行う際に用いる電流の大きさと対応している。
【0041】
スイッチSW1〜SW4は、それぞれ、タップT1〜T4と、2次電流端子S2とを接続する、またはその解除を行うことができる。スイッチSW1〜SW4のうちいずれか1つを選択してタップT1〜T4のうちいずれか1つを2次電流端子S2と接続することにより、選択したタップと電力量計100とタップIとを含んだ閉回路が形成され、選択したタップに出力される2次電流を、2次電流端子S2、L2を介して電力量計100に流すことができる。言い換えると、スイッチSW1〜SW4のうちいずれか1つを選択することにより、電力量計100に供給する交流電流の大きさを選択することができる。
【0042】
また、スイッチSW5は、短絡手段であり、タップT1をタップIと直接接続することができ、標準変流器4内において、タップT1とタップIとの間で短絡させることができる。このようなスイッチSW5を用いてタップT1とタップIとを短絡させることにより、電力量計100へ2次電流を流すことを停止することができる。これにより、電力量計100を取り外したり、新たな電力量計100と交換したりすることが可能になる。
【0043】
なお、本実施形態では、スイッチSW1〜SW5のうち、いずれか一つを選択した場合、他のスイッチによる回路の接続は解除される。
【0044】
標準電力量計5は、各電力量計100の電力量の器差の測定の基準となる電力量を規定する。このような標準電力量計5は、各電力量計100と同様の構成であるが、正確な電力量を測定できるように予め調整されたものである。そして、標準電力量計5で測定される電力量と、各電力量計100で測定される電力量を比較することにより、各電力量計100の器差が測定される。
【0045】
標準電力量計5は、上述したように、交流電圧電源2に対し、各電力量計100と並列となるように接続されており、各電力量計100と等しい交流定電圧が印加されている。
【0046】
また、標準電力量計5は、電流端子1Lが交流電流電源3の電流端子Lと、電流端子1Sが図中最も下方にある標準変流器4の1次電流端子L1と接続されている。そして、標準電力量計5は、交流電流電源3に対し、各標準変流器4と直列に接続されている。これにより、各標準変流器4を通過する交流電流と、標準電力量計5を通過する交流電流とは同一のものとなり、その大きさが等しいものとなる。このため、各電力量計100の電力量の器差がより精度よく検出される。また、例えば、交流電流電源3から出力される交流定電流の大きさが所望の値から多少ずれた場合であっても、標準電力量計5で測定される電力量を基準にして、各電力量計100で測定される電力量の器差を精度よく測定することができる。
【0047】
標準電力量計5で測定される電力量と、各電力量計100で測定される電力量との比較は、特に限定されず、例えば、特開2007−327764号公報、特開平9−304497等に記載された方法を用いることができる。
【0048】
以上のように構成された電力量計器差測定システム1によれば、電力量計器差測定システム1が複数の標準変流器4を有し、かつ、1つの電力量計100に対して1つの標準変流器4が用いられることにより、接続された電力量計100毎に独立して、異なる大きさの交流電流での器差の測定が可能となる。このため、電力量計器差測定システム1を用いて、ある条件で複数の電力量計100について器差の測定を行っている際に、1つの電力量計100が許容範囲外の器差を有した場合であっても、他の電力量計100については他の条件での器差の測定を行いつつ、許容範囲外の器差を有した電力量計100については、独立して、任意の条件で器差の調整を行うことができる。したがって、電力量計100の器差の調整を効率よく行うことができる。
【0049】
特に、各標準変流器4が短絡手段(スイッチSW5)を有していることにより、器差の測定を終えた電力量計100については、スイッチSW5を用いて当該電力量計100への交流電流の印加を停止し、当該電力量計100を取り外すことができるとともに、新たな器差の測定が必要な電力量計100と交換することができ、電力量計100の器差の調整をより一層効率よく行うことができる。
【0050】
なお、日本工業規格に規定される電力量計の定格電流としては、例えば、250A、200A、120A、60A、30A、5A等が存在する。また、通常、これらの規格の電力量計は、上記の検定において、その定格電流の100%、50%、20%、3.3%(定格電流によっては、2.5%あるいは5%)の電流値について器差の検定が行われる。このため、標準変流器4は、接続される電力量計の定格電流に基づいて、当該電力量計の器差の測定が行うことができるように構成されていることが好ましい。すなわち、標準変流器4のタップとしては、測定される電力量計の検定(器差の測定)の条件に基づいた大きさの交流電流を供給できるタップを備えていることが好ましい。
【0051】
なお、例えば、電力量計の器差の調整において、測定するための力率の条件が複数の場合、力率の条件と対応する台数の電力量計器差測定システム1を用意して、互いに異なる力率の交流定電圧を供給することにより、電力量計100の器差の調整をより一層効率よく行うことができる。
【0052】
<第2実施形態>
図4は、本発明の第1実施形態に係る電力量計器差測定システムを示すブロック回路図である。なお、以下では、説明の便宜上、図4の上側を「上」、下側を「下」、右側を「右」、左側を「左」と言う。
【0053】
以下、本発明の第2実施形態について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。なお、前述した第1実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
【0054】
図4に示すように、電力量計器差測定システム1Aは、第1の交流電圧電源21と、第2の交流電圧電源22と、交流電流電源3と、n個(複数)の標準変流器4と、第1の標準電力量計51と、第2の標準電力量計52と、力率選択手段6とを有している。すなわち、本実施形態では、電力量計器差測定システム1Aは、2つの交流電圧電源と、2つの標準電力量計と、力率選択手段6とを有する点が前述した第1実施形態と異なる。
【0055】
第1の交流電圧電源21および第2の交流電圧電源22は、各電力量計100、第1の標準電力量計51および第2の標準電力量計52に対して、定格(本実施形態では、100V)の交流電圧(交流定電圧)を印加(供給)する。
【0056】
また、第1の交流電圧電源21から出力される交流定電圧(第1の交流定電圧)と第2の交流電圧電源22から出力される交流定電圧(第2の交流定電圧)とは、交流電流電源3が出力する交流定電流に対する力率(以下単に力率ともいう。)が異なるものである。本実施形態では、各交流電圧電源の力率は固定されており、第1の交流電圧電源21から出力される交流定電圧の力率は、1.0であり、第2の交流電圧電源22から出力される交流定電圧の力率は、0.5である。これは、一般的な家庭に配備される電力量計について、上記の検定を行う際に用いる交流電圧の力率と対応している。なお、第1の交流電圧電源21および第2の交流電圧電源22は、力率調整手段を有しており、当該力率調整手段は、交流電流電源3から基準位相同期信号を受信することにより、出力される交流定電圧の力率を調整している。
【0057】
第1の交流電圧電源21および第2の交流電圧電源22は、それぞれ、電圧端子P1、P2を有している。
【0058】
第1の交流電圧電源21の電圧端子P1から延長される配線には、後述する各力率選択手段6のスイッチSW Aと、第1の標準電力量計51とが並列に接続されている。
【0059】
第2の交流電圧電源22の電圧端子P1から延長される配線には、後述する各力率選択手段6のスイッチSW Bと、第2の標準電力量計52とが並列に接続されている。
【0060】
また、第1の交流電圧電源21および第2の交流電圧電源の電圧端子P2は、1つの配線を共有しており、この第1の交流電圧電源21および第2の交流電圧電源の電圧端子P2から延びる配線に対し、各電力量計100、第1の標準電力量計51および第2の標準電力量計52の電圧端子P2が並列に接続されている。
【0061】
力率選択手段6は、各電力量計100に対し、第1の交流電圧電源21または第2の交流電圧電源22から所望の力率の交流定電圧を選択して供給する。力率選択手段6は、n個の力率選択スイッチ61で構成されている。
【0062】
力率選択スイッチ61は、第1の交流電圧電源21または第2の交流電圧電源22から所望の力率の交流定電圧を出力する1の交流電圧電源を選択するものであり、選択した当該交流電圧電源から供給された前記所望の力率の交流定電圧を接続された電力量計100に印加する。
【0063】
また、本実施形態の電力量計器差測定システム1Aでは、力率選択スイッチ61は、1つの電力量計100に対し、1つ備えられている。このように、従来の電力量計器差測定システムとは異なり、測定される各電力量計100に対し1つの力率選択スイッチ61を配置することにより、電力量計器差測定システム1Aは、電力量計100毎に独立して、異なる条件(異なる力率の交流電圧)での器差の測定を行うことができる。
【0064】
力率選択スイッチ61は、スイッチSW Aと、スイッチSW Bとで構成されている。
【0065】
スイッチSW Aは、第1の交流電圧電源21の電圧端子P1および電力量計100の電圧端子P1と接続されており、第1の交流電圧電源21の電圧端子P1と電力量計100の電圧端子P1との接続およびその解除を行うことができる。
【0066】
スイッチSW Bは、第2の交流電圧電源22の電圧端子P1および電力量計100の電圧端子P1と接続されており、第2の交流電圧電源22の電圧端子P1と電力量計100の電圧端子P1との接続およびその解除を行うことができる。
【0067】
したがって、スイッチSW Aが作動した時には、第1の交流電圧電源21の電圧端子P1、P2と、スイッチSW Aと、電力量計100の電圧端子P1、P2とからなる閉回路が形成され、第1の交流電圧電源21から力率:1.0の交流定電圧が、力率選択スイッチ61が接続されている電力量計100に印加される。また、スイッチSW Bが作動した時には、第2の交流電圧電源22の電圧端子P1、P2と、スイッチSW Bと、電力量計100の電圧端子P1、P2とからなる閉回路が形成され、第2の交流電圧電源22から力率:0.5の交流定電圧が、力率選択スイッチ61が接続されている電力量計100に印加される。すなわち、スイッチSW A、SW Bのうちいずれか一方を選択することにより、電力量計100に印加される交流定電圧の力率を選択することできる。
【0068】
なお、本実施形態では、スイッチSW A、SW Bのうち、いずれか一方を選択した場合、他方のスイッチによる回路の接続は解除される。
【0069】
また、各電力量計100は、第1の交流電圧電源21および第2の交流電圧電源22のいずれに対しても並列で接続されているため、ある電力量計100について力率選択スイッチ61で力率の切り替えが行われた場合や、電力量計100が取り外された場合であっても、他の電力量計100に印加される交流定電圧に影響は与えない。
【0070】
第1の標準電力量計51および第2の標準電力量計52は、各電力量計100の電力量の器差の測定の基準となる電力量を規定する。このような第1の標準電力量計51および第2の標準電力量計52は、各電力量計100と同様の構成であるが、正確な電力量を測定できるように予め調整されたものである。
【0071】
第1の標準電力量計51は、その電圧端子P1、P2が、第1の交流電圧電源21の電圧端子P1、P2とそれぞれ接続されており、力率が1.0の交流定電圧が印加されている。また、第1の標準電力量計51は、その電流端子1Lが第2の標準電力量計52の電流端子1Sと、第1の標準電力量計51の電流端子1Sが図中最も下側にある標準変流器4の1次電流端子L1と接続されている。すなわち、第1の標準電力量計51には、各標準変流器4および第2の標準電力量計52を介して流れる交流電流電源3の5Aの交流定電流と、第1の交流電圧電源21から印加される力率:1.0の交流定電圧とが同時に供給されている。このような第1の標準電力量計51は、第1の交流電圧電源21から力率:1.0の交流定電圧が供給されている電力量計100についての、器差の測定の基準となる電力量を規定する。
【0072】
第2の標準電力量計52は、その電圧端子P1、P2が、第2の交流電圧電源22の電圧端子P1、P2とそれぞれ接続されており、力率が0.5の交流定電圧が印加されている。また、第2の標準電力量計52は、その電流端子1Lが交流電流電源3の電流端子Lと、第2の標準電力量計52の電流端子1Sが第1の標準電力量計51の電流端子1Lと接続されている。すなわち、第2の標準電力量計52には、各標準変流器4および第1の標準電力量計51を介して流れる交流電流電源3の5Aの交流定電流と、第2の交流電圧電源22から印加される力率:0.5の交流定電圧とが同時に供給されている。このような第2の標準電力量計52は、第2の交流電圧電源22から力率:0.5の交流定電圧が供給されている電力量計100についての、器差の測定の基準となる電力量を規定する。
【0073】
そして、第1の標準電力量計51または第2の標準電力量計52で測定される電力量と、各電力量計100で測定される電力量を比較することにより、各電力量計100の器差が測定される。
【0074】
また、第1の標準電力量計51と、第2の標準電力量計52と、各標準変流器4とは、交流電流電源3に対し、直列に接続されている。これにより、各標準変流器4を通過する交流電流と、第1の標準電力量計51と、第2の標準電力量計52とを通過する交流電流とは同一のものとなり、その大きさが等しいものとなっている。
【0075】
以上のように構成された電力量計器差測定システム1Aによれば、上述した第1実施形態の電力量計器差測定システム1のように、異なる大きさの交流電流での器差の測定が可能となるとともに、以下のような効果が得られる。
【0076】
電力量計器差測定システム1Aが複数の力率が異なる交流電圧電源(第1の交流電圧電源21および第2の交流電圧電源)を有し、力率選択手段6によって電力量計100に印加する交流電圧の力率を選択することにより、接続された電力量計100毎に独立して、異なる力率の交流電圧での器差の測定が可能となる。
【0077】
以上より、電力量計器差測定システム1Aを用いることで、接続された電力量計100毎に、独立して、異なる大きさの交流電流、異なる力率の交流電圧を用いて器差の測定を行うことができる。
【0078】
特に、日本工業規格の規格に基づいた電力量計100の検査および調整は、交流電流の大きさ、交流電圧の力率について条件を変更しながら行うものであるが、1つの条件について調整を行った場合、他の条件(力率、交流電流の大きさ)についても調整および器差の測定が必要となる場合が多い。電力量計器差測定システム1Aは、このような検査および調整に特に適したものであるといえる。
【0079】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図5は、本発明の第3実施形態に係る電力量計器差測定システムを示すブロック回路図、図6は、図5に示す電力量計器差測定システムが備える標準変流器の回路図である。なお、以下では、説明の便宜上、図5、図6の上側を「上」、下側を「下」、右側を「右」、左側を「左」と言う。
【0080】
以下、本発明の第3実施形態について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。なお、前述した各実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
【0081】
図5に示すように、電力量計器差測定システム1Bは、第1の交流電圧電源21と、第2の交流電圧電源22と、第3の交流電圧電源23と、交流電流電源3と、n−1個(複数)の標準変流器4と、標準変流器4Aと、第1の標準電力量計51と、第2の標準電力量計52、第3の標準電力量計53と、力率選択手段6Aとを有している。
【0082】
すなわち、本発明の第3実施形態では、電力量計器差測定システム1Bは、交流電圧電源として3つの交流電圧電源を、標準電力量計として3つの標準電力量計を有しており、さらに、力率選択手段6Aの構成が前述した第2実施形態と異なる。また、電力量計器差測定システム1Bは、標準変流器として、1つの異なる構成の標準変流器4Aを有している。以上の点以外は、前述した第2実施形態と同様である。
【0083】
電力量計器差測定システム1Bは、第1の交流電圧電源21、第2の交流電圧電源22に加え、第3の交流電圧電源23を有している。
【0084】
第3の交流電圧電源23は、各電力量計100および第3の標準電力量計53に対して、定格(本実施形態では、100V)の交流電圧(交流定電圧)を印加(供給)する。
【0085】
また、第3の交流電圧電源23から出力される交流定電圧(第3の交流定電圧)は、第1の交流定電圧および第2の交流定電圧とは、交流電流電源3が出力する交流電流に対する力率が異なるものである。本実施形態では、第3の交流電圧電源23から出力される交流定電圧の力率は、0.8である。
【0086】
第3の交流電圧電源23は、電圧端子P1、P2を有している。
第3の交流電圧電源23の電圧端子P1から延長される配線には、後述する力率選択手段6Aが有する力率選択スイッチ61AのスイッチSW Cと、第3の標準電力量計53の電圧端子P1とが並列に接続されている。
【0087】
また、第3の交流電圧電源23の電圧端子P2は、第1の交流電圧電源21および第2の交流電圧電源22の電圧端子P2が共有する1つの配線を共有しており、当該配線に対し、各電力量計100、第1の標準電力量計51、第2の標準電力量計52および第3の標準電力量計53の電圧端子P2が並列に接続されている。
【0088】
力率選択手段6Aは、n個の力率選択スイッチ61Aを有している。
力率選択スイッチ61Aは、スイッチSW Aと、スイッチSW Bに加え、スイッチSW Cを有している。
【0089】
スイッチSW Cは、第3の交流電圧電源23の電圧端子P1および電力量計100の電圧端子P1と接続されており、第3の交流電圧電源23の電圧端子P1と電力量計100の電圧端子P1との接続およびその解除を行うことができる。
【0090】
したがって、スイッチSW Cが作動した時には、第3の交流電圧電源23の電圧端子P1、P2と、スイッチSW Cと、電力量計100の電圧端子P1、P2とからなる閉回路が形成され、第3の交流電圧電源23から力率:0.8の交流定電圧が、力率選択スイッチ61Aが接続されている電力量計100に印加される。
【0091】
また、第2実施形態で述べたように、スイッチSW A、SW Bを選択すると、それぞれ力率:1.0、0.5の交流定電圧が供給される。
【0092】
以上より、スイッチSW A、SW B、SW Cのうちいずれか一方を選択することにより、電力量計100に印加される交流定電圧の力率(1.0、0.5、0.8)を選択することできる。
【0093】
なお、本実施形態では、力率選択スイッチ61Aの各スイッチのうち、いずれか1つを選択した場合、他のスイッチによる回路の接続は解除される。
【0094】
また、電力量計器差測定システム1Bは、第1の標準電力量計51および第2の標準電力量計52に加え、第3の標準電力量計53を有している。
【0095】
第3の標準電力量計53は、各電力量計100の電力量の器差の測定の基準となる電力量を規定する。このような第3の標準電力量計53は、各電力量計100と同様の構成であるが、正確な電力量を測定できるように予め調整されたものである。
【0096】
第3の標準電力量計53は、その電圧端子P1、P2が、第3の交流電圧電源23の電圧端子P1、P2とそれぞれ接続されており、力率が0.8の交流定電圧が印加されている。また、第3の標準電力量計53は、その電流端子1Lが交流電流電源3の電流端子Lと、第3の標準電力量計53の電流端子1Sが第2の標準電力量計52の電流端子1Lと接続されている。すなわち、第3の標準電力量計53には、各標準変流器4、標準変流器4A、第1の標準電力量計51および第2の標準電力量計52を介して流れる交流電流電源3の5Aの交流定電流と、第3の交流電圧電源23から印加される力率:0.8の交流定電圧とが同時に供給されている。このような第3の標準電力量計53は、第3の交流電圧電源23から力率:0.8の交流定電圧が供給されている電力量計100についての、器差の測定の基準となる電力量を規定する。
【0097】
また、図6に示すように、標準変流器4Aは、前述した標準変流器4よりも多くのタップおよびスイッチを備えている。
【0098】
図6に示すように、標準変流器4Aは、変流器本体41と、外部と接続され、外部から交流電流を入力する1次電流端子S1、L1と、変流器本体41から引き出されたタップT1’〜T8’、Iと、タップT1’〜T8’に接続されたスイッチSW1’〜SW8’と、電力量計100と接続するための2次電流端子S2、L2とを有している。
【0099】
変流器本体41は、1次電流端子S1、L1から入力された交流電流(1次電流)を、所定の大きさの交流電流(2次電流)として各タップT1’〜T8’に出力する。本実施形態では、タップT1’に出力される2次電流は1Aであり、タップT2’に出力される2次電流は4Aであり、タップT3’に出力される2次電流は6Aであり、タップT4’に出力される2次電流は15Aであり、タップT5’に出力される2次電流は24Aであり、タップT6’に出力される2次電流は30Aであり、タップT7’に出力される2次電流は60Aであり、タップT8’に出力される2次電流は120Aである。これは、一般的な家庭に配備される電力量計(定格電流:30Aおよび120A)について、上記の検定を行う際に用いる電流の大きさと対応している。すなわち、標準変流器4Aは、互いに定格電流が異なる電力量計についての器差の測定条件に対応するように、タップの数を標準変流器4と比較して増加させたものである。言い換えると、標準変流器4Aは、互いに定格電流が異なる複数種の電力量計について器差の測定を行うことができるように構成されている。
【0100】
また、スイッチSW1’〜SW8’は、それぞれ、タップT1’〜T8’と、2次電流端子S2とを接続する、またはその解除を行うことができる。そして、スイッチSW9’は、タップT1’とタップIとを接続することにより、短絡を行う短絡手段である。
【0101】
以上のように構成された電力量計器差測定システム1Bによれば、上述した第2実施形態の電力量計器差測定システム1Aと同様の効果が得られるとともに以下のような効果が得られる。
【0102】
電力量計器差測定システム1Bは、3つの力率が異なる交流電圧電源を有し、力率選択手段6Aにおいて電力量計100に印加する交流電圧の力率が選択されることにより、電力量計100毎に3つの異なる力率についての器差の測定が可能となる。これにより、電力量計100についてより幅広い器差の測定が可能となる。例えば、力率:0.8における交流電圧を必要とするような検定を受ける電力量計が存在した場合には、電力量計器差測定システム1Bを用いることにより、このような電力量計についての器差の測定およびその調整が可能となる。すなわち、電力量計器差測定システム1Bは、用いる電力量計の器差が測定される条件に応じて、適宜交流電圧電源、標準電力量計を追加したものである。当該条件にある力率の交流電圧を供給可能とすることにより、幅広い規格の電力量計に対して電力量計器差測定システム1Bが使用可能となる。
【0103】
また、電力量計器差測定システム1Bは、複数の標準変流器の一部に、標準変流器4Aを備えている。この標準変流器4Aは、定格電流が120A、30Aの普通電力量計の上記検定で用いられる大きさの交流電流を備えている。すなわち、標準変流器4Aには、上記の定格電流が異なる2種類の電力量計に対応することができる。このため、他の標準変流器4が定格電流:30Aの電力量計100を接続していても、独立して、他の定格電流(120A)の電力量計の器差の測定が可能である。これにより、電力量計器差測定システム1Bを用いることで、例えば、製造量の少ない種類の電力量計についても、他の製造量の多い種類の電力量計と同時に、かつ独立して、電力量計の器差の測定および調整を行うことができる。また、これにより、例えば、幅広い規格の電力量計に対して電力量計器差測定システム1Bが使用可能となる。
【0104】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0105】
例えば、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【0106】
また、上述した実施形態では、電力量計は、誘導型電力量計であるとして説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、デジタル電力量計等の交流電流および交流電圧を印加することにより電力量を測定できる任意の電力量計について用いることができる。
【0107】
また、例えば、電力量計器差測定システムは、4以上の、交流定電流に対して異なる力率を有する交流定電圧が出力されるような構成であってもよく、適宜、必要な力率に合わせて、交流電圧電源、標準電力量計等を追加し、これに応じて力率選択手段の構成を変更することができる。
【0108】
また、例えば、電力量計器差測定システムに用いられる各標準変流器は、これらのうち2以上の標準変流器が、異なる定格電流に設定された複数種の電力量計の器差の測定に適するように構成されていてもよい。
【0109】
また、例えば、電力量計器差測定システムに用いられる各標準変流器は、互いに異なる定格電流に設定された3種類以上の電力量計の器差の測定に適するように(検定の条件に対応するように)構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0110】
1、1A、1B ・・・電力量計器差測定システム
2 ・・・交流電圧電源
21 ・・・第1の交流電圧電源
22 ・・・第2の交流電圧電源
23 ・・・第3の交流電圧電源
3 ・・・交流電流電源
4、4A ・・・標準変流器
41 ・・・変流器本体
5 ・・・標準電力量計
51 ・・・第1の標準電力量計
52 ・・・第2の標準電力量計
53 ・・・第3の標準電力量計
6、6A ・・・力率選択手段
61、61A ・・・力率選択スイッチ
100 ・・・電力量計
101 ・・・電圧コイル
102 ・・・電流コイル
103 ・・・回転円板
104 ・・・制動磁石
500 ・・・電力量計器差測定システム
501 ・・・交流電圧電源
502 ・・・交流電流電源
503 ・・・標準変流器
504 ・・・標準電力量計
P1、P2 ・・・電圧端子
S、L ・・・電流端子
1S、1L ・・・電流端子
S1、L1 ・・・1次電流端子
S2、L2 ・・・2次電流端子
T1、T2、T3、T4、T1’、T2’、T3’、T4’、T5’、T6’、T7’、T8’、I ・・・タップ
SW1、SW2、SW3、SW4、SW1’、SW2’、SW3’、SW4’、SW5’、SW6’、SW7’、SW8’ ・・・スイッチ
SW5、SW9’ ・・・スイッチ(短絡手段)
SW A、SW B、SW C ・・・スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電力量計に対し交流電圧と、交流電流とを印加して、各前記電力量計で計測される電力量の器差を測定するための電力量計器差測定システムであって、
前記電力量計と接続され、前記交流電圧を供給する交流電圧電源と、
一定の大きさの交流電流を供給する交流電流電源と、
前記交流電流電源および前記交流電圧電源と接続され、前記各電力量計の電力量の器差の測定の基準となる電力量を規定する標準電力量計と、
前記交流電流電源から供給される前記交流定電流を、所望の大きさの交流電流に変換して前記各電力量計へ供給する複数の変流器とを有し、
1つの前記変流器に対し、1つの前記電力量計が接続されるように構成されていることを特徴とする電力量計器差測定システム。
【請求項2】
前記各変流器と前記標準電力量計とは、前記交流電流電源に対し、直列に接続されたものである請求項1に記載の電力量計器差測定システム。
【請求項3】
複数の電力量計に対し、交流電圧および交流電流を印加して、前記各電力量計で計測される電力量の器差を測定するための電力量計器差測定システムであって、
一定の大きさの交流電流を出力する交流電流電源と、
前記交流電流電源が出力する前記交流電流に対する力率がそれぞれ異なる交流電圧を出力する複数の交流電圧電源と、
複数の前記交流電圧電源にそれぞれ対応し、対応する前記交流電圧電源および前記交流電流電源と接続され、前記各電力量計の電力量の器差の測定の基準となる電力量を規定する複数の標準電力量計と、
前記各電力量計に対し、複数の前記交流電圧電源から所望の力率の交流電圧を選択して供給する力率選択手段と、
前記交流電流電源から出力される前記交流定電流を、所望の大きさの交流電流に変換して前記各電力量計へ印加する複数の変流器とを有し、
1つの前記変流器に対し、1つの前記電力量計が接続されるように構成されていることを特徴とする電力量計器差測定システム。
【請求項4】
前記力率選択手段は、前記電力量計毎に接続される複数の力率選択スイッチを有し、
前記力率選択スイッチは、複数の前記交流電圧電源から1の交流電圧電源を選択し、選択した当該交流電圧電源から供給された前記交流電圧を、接続された前記電力量計に供給するように構成されている請求項3に記載の電力量計器差測定システム。
【請求項5】
複数の前記変流器と複数の前記標準電力量計とは、前記交流電流電源に対し、直列に接続されたものである請求項3または4に記載の電力量計器差測定システム。
【請求項6】
複数の前記交流電圧電源は、当該交流電圧電源から出力される前記交流電圧の力率を調整する力率調整手段を有し、
前記力率調整手段は、前記交流電流電源から送信される前記位相同期信号に従って、出力される前記交流電圧の力率を調整するように構成されている請求項3ないし5のいずれかに記載の電力量計器差測定システム。
【請求項7】
前記各変流器は、当該各変流器内において短絡して、当該各変流器と接続した前記電力量計への前記交流電流の供給を停止する短絡手段を有している請求項1ないし5のいずれかに記載の電力量計器差測定システム。
【請求項8】
前記電力量計を取り外す際に、または当該電力量計を他の電力量計と交換する際に、前記短絡手段を作動させて短絡を行うように構成されている請求項6に記載の電力量計器差測定システム。
【請求項9】
前記各変流器は、接続される前記電力量計の定格電流に基づいて、当該電力量計について器差の測定を行うことができるように構成されている請求項1ないし7のいずれかに記載の電力量計器差測定システム。
【請求項10】
前記各変流器のうち少なくとも1つの変流器は、互いに異なる定格電流の複数種の電力量計について器差の測定を行うことができるように構成されている請求項1ないし7のいずれかに記載の電力量計器差測定システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−243372(P2010−243372A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93414(P2009−93414)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(591277717)東北計器工業株式会社 (9)
【出願人】(300086388)デンソクテクノ株式会社 (8)