説明

電動工具及び電動工具用ファン

【課題】切削時等における振動を抑制し、振動に伴う騒音を抑制することができる電動工具及び電動工具ファンを提供する。
【解決手段】モータ軸に装着されるハブ9と、該ハブ9から半径方向外側へと延びる複数の羽根10と、該複数の羽根10と対向する位置にリング状に連結され一部分が4aで定義される錘部が一体に設けられた連結部4と、錘部4aに設けたリング状の溝に圧入され、錘部4aとは弾性率(ヤング率)が異なるリング状の樹脂21とにより構成される。錘部4aは電機子軸8の回転中心から最も離れた位置にあり、この位置に配置することにより、冷却ファンの慣性モーメントを大きくすることが可能になっている。また、リング状の連結部4においてリング状の一部分の錘部4aに錘部4aとは弾性率の異なるリング状の樹脂21が圧入されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯用電気ルータ等の冷却ファンを有する電動工具及び電動工具用ファンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6に従来の電動工具の一例である携帯用電気ルータを示す。図に示すように携帯用電気ルータは、木材等の被削材20上をスライドする際の案内となるベース11上に上下動可能に支持されたチャックを介して装着された種々の刃物を回転させて被削材20の面取り加工、溝加工等を行うものである。
【0003】
図7はモータ回転子の概略を示すもので、周知のごとく、モータ回転子は、回転子コイル1、回転子コア等から構成される。モータ回転子を貫通するモータ軸を構成する回転子軸2の下方には冷却ファン3が装着され、回転子軸2の更に下方には、チャック5が接続され、チャック5を介して、刃物6が装着される。
【0004】
特許文献1及び特許文献2に参照されるように、冷却ファンの外周端に錘部をリング状に連結することで、回転子、回転子軸、冷却ファン、チャック、刃物等の、回転部位全体の慣性モーメントを大きくすることにより、切削能率を向上させている。
【0005】
従来の携帯用電気ルータにおいての冷却ファン3の断面図を図8に示す。図示せぬモータ軸に装着されたモータ冷却ファン3のハブ9と、該ハブから半径方向外側へと伸びる複数の羽根10と、該複数の羽根と対向する位置にリング状に連結される連結部4が示される。
【0006】
【特許文献1】特開平6−218703号公報
【特許文献2】特開2004−338192号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の電動工具用ファンは、弱い構造体である複数の羽根にリング状の連結部が連結されていた。作業時に回転軸が回転駆動されると、ファンが回転し、刃物にて生じた振動が伝播し、連結部は、振動を起こしていた。
【0008】
また、リング状の連結部に一体に設けられた錘部は、錘部で慣性モーメントを高くしているために、切削時等に軸方向の振動を起こしやすいという欠点があった。錘部が振動した場合は、振動に伴う騒音が大きくなる等の問題が生じていた。
【0009】
本発明の目的は、切削時等における振動を抑制し、振動に伴う騒音を抑制することができる電動工具及び電動工具ファンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、前記モータ冷却ファンの連結部に弾性率の異なる部材を取り付けることにより達成することができる。
【0011】
更に、前記連結部材には、複数の羽根よりも半径方向外側に位置する錘部が一体に設けられることにより作業効率を高めることができる。
【0012】
更に、前記弾性率の異なる部材は、前記錘部に取り付けることにより作業効率を向上させることができる。
【0013】
更に、前記弾性率の異なる部材は、リング状であることにより作業効率を高めることができる。
【0014】
更に、前記錘部は、溝を有し、該溝に前記弾性率の異なる部材を圧入されていることにより作業効率を向上させることができ、または、前記弾性率の異なる部材は、前記錘部に接着によって取り付けられていることにより作業効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、連結部に連結部とは弾性率(ヤング率)の異なる部材を取り付けることにより、振動を効果的に抑制し、振動に伴う騒音の発生を抑制することができる。
【0016】
更に、連結部には複数の羽根よりも半径方向外側に位置する錘部が一体に設けられることにより慣性モーメントを大きくさせることが可能になり、かつ、振動を効率的に抑制し、振動に伴う騒音の発生を抑制することができる。
【0017】
更に、錘部に弾性率の異なる部材が、複数の羽根10よりも径方向外側に位置する錘部4aの溝部に取り付けられているために、錘部4aの直近に樹脂が存在しているので、振動を効果的に抑制し、振動に伴う騒音の発生を抑制することができる。
【0018】
更に、弾性率の異なる部材をリング状としたことにより錘部の円周方向の振動を効率的に抑制し、振動に伴う騒音を抑制することができる。
【0019】
更に、前記錘部は、溝を有し、該溝に前記弾性率の異なる部材を圧入し振動の伝達を小さくしたことにより振動を効率的に抑制し、振動に伴う騒音を抑制することができる。
【0020】
更に、前記弾性率の異なる部材は、前記錘部に接着によって取り付けられていることにより、前記弾性率の異なる部材と前記錘部は同時に振動することが可能であり、振動を効率的に抑制し、振動に伴う騒音を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の電動工具及び電動工具用ファンの一実施形態を、図1〜図3を用いて説明する。
【0022】
図1は、本発明電動具用のモータ冷却ファンの一実施形態を示した斜視図である。本発明電動具用のモータ冷却ファンは、図示しないモータ軸に装着されるハブ9と、該ハブ9から半径方向外側へと延びる複数の羽根10と、該複数の羽根10と対向する位置にリング状に連結され一部分が4aで定義される錘部が一体に設けられた連結部4と、錘部4aに設けたリング状の溝に圧入され、錘部4aとは弾性率(ヤング率)が異なるリング状の樹脂21とにより構成される。
【0023】
錘部4aは電機子軸8の回転中心から最も離れた位置にあり、この位置に配置することにより、冷却ファンの慣性モーメントを大きくすることが可能になっている。また、リング状の連結部4においてリング状の一部分の錘部4aに錘部4aとは弾性率の異なるリング状の樹脂21が圧入されている。
【0024】
モータ冷却ファンは、図示しない回転軸により回転駆動され、17の方向に回転をする。
【0025】
図2は、本発明電動工具の冷却用ファンの一実施形態を示した断面図である。リング状の錘部4aは、Aで定義される複数の羽根の半径方向最外端と錘部4aの径方向最外端との間に存在している。リング状の錘部4aの一部分には、錘部4aとは弾性率の異なる樹脂21が圧入されている。樹脂21は、振動する箇所(本発明では、ファンの錘部4a)に、錘部4aとは弾性率の違う圧入されている。
【0026】
図3は、本発明電動工具用のファンの一実施形態を上方から見た図である。モータ冷却ファンを構成する、ハブと、該ハブから半径方向外側へと延びる複数の羽根と、該複数の羽根と対向する位置にリング状に連結部に一体に設けられる錘部4aにおいて、複数の羽根10のうち、少なくとも一つの羽根の厚さ10aと他の羽根の厚さを異なるように設定している。これを不均一羽根10aとする。
【0027】
本発明の電動工具及び電動工具用ファンにおける他の実施形態について、図4を用いて説明する。
【0028】
図4は、本発明電動工具用のファンにおける他の実施形態を示した断面図である。リング状の錘部4aに金属製部材22が、リング状の錘部4aの少なくとも一部分に、接着剤23等により接着されている。
【0029】
図1及び図2については、錘部4aに設けられたリング状の溝に圧入され、錘部4aとは弾性率(ヤング率)が異なるリング状の樹脂21は、接触減衰により振動が減衰し、また振動する箇所に設けられているので、ファンの振動を抑制することが可能である。また、錘4aが存在することにより慣性モーメントを高くすることが可能になり、作業効率が高くなる。また、樹脂21は、複数の羽根10よりも径方向外側に位置する錘部4aの溝部に取り付けられているために、錘部4aの直近に樹脂21が存在しているので、錘4aで発生した軸方向の振動を効果的に抑制することが可能である。また、リング状に設けられているために、円周方向に樹脂21が干渉し合うことにより、円周方向の振動を効果的に抑制することが可能である。また、樹脂21は錘部4aに圧入されているために、接触減衰の効果が高くなり振動が減衰し、更に振動の伝達が小さいものになる。
【0030】
図3は、図1及び図2の改良実施形態であり、従来のファンでは、複数の羽根10の厚さを均等に設定しており、連結部4の振動時の変形が、図5に示すような単純曲げの変形を起こしやすくなっていたが、不均一羽根10aを設定することにより軸非対称要素となるために、図5に示すような騒音の発生源となりやすい単純曲げの変形を起こしにくくすることができ、振動を抑制し、振動に伴う騒音を抑制することが可能となる。
【0031】
更に、不均一羽根10aの枚数は奇数枚にすることで、軸方向非対称要素であるとともに、直径方向の左右非対称になるために、図5に示すような単純曲げの変形を更に起こしにくくすることができ、振動を抑制し、振動に伴う騒音を抑制することが可能となる。
【0032】
図4においては、錘部4aに設けられたリング状の溝に圧入され、錘部4aとは弾性率(ヤング率)が異なるリング状の金属の部材22は、振動する箇所に設けられているので、接触減衰により振動が減衰し、ファンの振動を抑制することが可能である。また、錘4aが存在することにより慣性モーメントを高くすることが可能になり、作業効率が高くなる。また、金属の部材22は、複数の羽根10よりも径方向外側に位置する錘部4aの溝部に取り付けられているために、錘部4aの直近に金属部材が存在しているので、錘4aで発生した軸方向の振動を効果的に抑制することが可能である。また、リング状に設けられているために、円周方向に樹脂21が干渉し合うことにより、円周方向の振動を効果的に抑制することが可能である。また、金属部材22は錘部4aに接着されているために、接触減衰により振動が減衰し、振動の発生を抑制することができ、振動の発生に伴う騒音を抑制することができる。
【0033】
ここで、樹脂21を充填および金属部材22の接着する以外の方法としては、リング状の4aの少なくとも一部分に、錘部4aとは弾性率の違う金属製の部材等を圧入、充填もしくは接着することによっても上記と同様に、接触減衰により振動が減衰し、振動に伴う騒音を抑制することが可能となる。
【0034】
以上のように、本発明によれば、錘部4aの切削時等における振動を抑制し、振動に伴う騒音を抑制し、作業者に快適な作業環境を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明携帯用電気ルータのファンの一実施形態を示す斜視図
【図2】図1に示す携帯用電気ルータのファンの断面図
【図3】本発明携帯用電気ルータのファンの一実施形態を示す側面図
【図4】本発明携帯用電気ルータのファンの他の実施形態を示す断面図
【図5】従来携帯用電気ルータのファンの単純曲げによる変形状態を示す斜視図
【図6】電気ルータの一例を示す斜視図
【図7】図6内部のモータの主要部をしめす斜視図
【図8】図6内部のファンの構成を示す断面図
【符号の説明】
【0036】
1は回転子、3は冷却ファン、4は錘、5はチャック、6は刃物、10は羽根、21は樹脂である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
該モータの回転駆動によって回転する刃物と、
前記モータの回転駆動によって回転するモータ冷却ファンとを備え、
該モータ冷却ファンは、回転軸に接着されるハブと、該ハブと連結され径方向外側へ延びる複数の羽根と、該複数の羽根を介してハブと対向する位置に位置するリング状の連結部とを有している電動工具において、
前記連結部に、該連結部とは弾性率の異なる部材を取り付けたことを特徴とする電動工具。
【請求項2】
前記連結部には、前記複数の羽根よりも径方向外側に位置する錘部が一体に設けられていることを特徴とする請求項1記載の電動工具。
【請求項3】
前記弾性率の異なる部材は、前記錘部に取り付けられていることを特徴とする請求項2記載の電動工具。
【請求項4】
前記弾性率の異なる部材は、リング状であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項記載の電動工具。
【請求項5】
前記錘部は、溝を有し、該溝には前記錘部と弾性率の異なる部材が圧入されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項記載の電動工具。
【請求項6】
前記弾性率の異なる部材は、前記錘部に接着によって取り付けられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項記載の電動工具。
【請求項7】
モータと、
該モータの回転駆動によって回転する刃物と、
前記モータの回転駆動によって回転するモータ冷却ファンとを備え、
該モータ冷却ファンは、回転軸に接着されるハブと、該ハブと連結され径方向外側へ延びる複数の羽根と、該複数の羽根を介してハブと対向する位置に位置するリング状の連結部とを有している電動工具用ファンにおいて、
前記連結部に、該連結部とは弾性率の異なる部材を取り付けたことを特徴とする電動工具ファン。
【請求項8】
前記連結部には、前記複数の羽根よりも径方向外側に位置する錘部が一体に設けられていることを特徴とする請求項7記載の電動工具用ファン。
【請求項9】
前記弾性率の異なる部材は、前記錘部に取り付けられていることを特徴とする請求項8記載の電動工具用ファン。
【請求項10】
前記弾性率の異なる部材は、リング状であることを特徴とする請求項7から請求項9のいずれか1項記載の電動工具用ファン。
【請求項11】
前記錘部は、溝を有し、弾性率の異なる部材が圧入されていることを特徴とする請求項7から請求項10のいずれか1項記載の電動工具用ファン。
【請求項12】
前記弾性率の異なる部材は、前記錘部に接着によって取り付けられていることを特徴とする請求項7から請求項10のいずれか1項記載の電動工具用ファン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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