説明

電動工具

【課題】電動機を内包する把持部を有する電動工具において、把持部の拡径を伴わない構成で、電動機の発熱による把持部の温度上昇で操作者に不快感を与えないようにする。
【解決手段】操作者が把持する把持部15の内周面から突出して形成された電動機20を支持する突条部15aに対応する位置の外周面に、外周面から凹んだ凹部15bを形成することで、操作者が把持した際に電動機20の発熱により最も温度が上昇する領域に手が触れないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作時に把持される把持部が電動機を内包している電動工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、操作時に把持される把持部が電動機を内包している電動工具として、グラインダ、ベルトサンダ、トリマ等が知られている。この種の電動工具は、把持部が電動機を内包していることから、運転に伴う電動機の発熱で把持部の温度が上昇し、操作者に不快感を与えていた。
【0003】
上記課題の対策として、電動機と把持部との間に熱絶縁部材を介在させ把持部の温度上昇を低減させる技術が知られている。(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭58−136207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記特許文献1のように電動機と把持部の間に熱絶縁部材を介在させた場合把持部の外径が大きくなるため、操作者にとって扱いにくく作業性を低下させる虞があった。
【0006】
本発明は、上述した課題の存在に鑑みてなされたものであって、その目的は把持部の拡径を伴わない構成で、電動機の発熱による把持部の温度上昇で操作者に不快感を与えることのない新たな電動工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電動工具は、電動機と、前記電動機を内包する把持部と、を備え、前記把持部は、内周面から突出して形成され前記電動機を支持する突条部と、前記突条部に対応する位置の外周面に形成される凹部と、を有していることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る電動工具において、前記凹部は前記突条部の基部より広い領域を持って形成されていることとすることができる。
【0009】
また、本発明に係る電動工具において、前記凹部と前記内周面との距離は、前記外周面と前記内周面との距離より小さいこととすることができる。
【0010】
さらに、本発明に係る電動工具において、前記凹部は前記把持部の把持領域を超えて延設され、前記凹部には前記把持領域において前記電動機を冷却するための冷却風経路に連通する孔が形成されていることとすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、把持部の拡径を伴わない構成で、電動機の発熱による把持部の温度上昇で操作者に不快感を与えない電動工具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態に係るグラインダの正面断面図である。
【図2】第1の実施形態に係るグラインダの左側面図である。
【図3】図1における断面A−Aを示す断面図である。
【図4】図3における断面B−Bを示す断面図である。
【図5】第2の実施形態に係るグラインダの断面図である。
【図6】第3の実施形態に係るグラインダの断面図である。
【図7】第4の実施形態に係るグラインダの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、グラインダの場合について、図1乃至図7を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0014】
本発明の第1の実施形態に係るグラインダについて図1〜4を用いて説明する。図1は第1の実施形態に係るグラインダの正面断面図であり、図2は第1の実施形態に係るグラインダの左側面図である。また、図3は図1における断面A−Aを示す断面図であり、図4は図3における断面B−Bを示す断面図である。なお、図1及び図4においては回転砥石(41)を省略している。
【0015】
図1及び図2に示すように、本発明の第1の実施形態に係るグラインダは、主として、ハウジング10と、駆動源である電動機20と、電動機20の回転を回転砥石41(図2参照)に伝える駆動伝達部30とを備えている。ハウジング10は前側ハウジング11と中央ハウジング12と後側ハウジング13からなり、前側ハウジング11はアルミニウムにより成形されており、中央ハウジング12と後側ハウジング13は樹脂により成形されている。
【0016】
前側ハウジング11には駆動伝達部30が内包されており、中央ハウジング12には電動機20の主要部分が内包されている。また後側ハウジング13の後端部にはスイッチ14が設けられている。また、中央ハウジング12には操作者が把持する把持部15が形成されている。電動機20は電動機軸21と回転子22と固定子23と整流子24とを備えており、電動機軸21の前側には冷却ファン25が固定されている。駆動伝達部30は、電動機20の電動機軸21に固定された駆動傘歯車31と、電動機軸21と直交する従動軸33と、従動軸33に固定され駆動傘歯車31と噛み合う従動傘歯車32とを備えている。また、従動軸33の下端側は回転砥石41を取付けるための工具取付け部34を備えている。
【0017】
後側ハウジング13には不図示の吸気口が形成されるとともに、前側ハウジング11の前面には排気口11aが形成されており、冷却ファン25の回転によりこの吸気口から吸入された外気が冷却風として中央ハウジング12の内部を流れることで、電動機20を冷却するようになっている。電動機20を冷却した後、冷却風は排気口11aから外部に排出されることとなる。なお、吸気口から冷却ファンまでの冷却風が流れる領域を冷却風経路と称する。
【0018】
次に、把持部15について説明する。図3に示すように、把持部15の内周面には電動機20に向かって突出し電動機軸21の軸方向に延びる突条部15aが周方向略等間隔で4箇所形成されており、この突条部15aにより固定子23が支持されている。またこの突条部15a以外の内周面と固定子23の間の空間は冷却風が流れるための冷却風経路となっている。なお、図中の符号Cは、突条部15aの基部すなわち内周面側における幅を示している。
【0019】
4箇所の突条部15aに対応する位置の外周面には略V字形状の凹部15bが電動機軸21の軸方向に延びて形成されており、図中の符号Dで示される凹部15bの外周面における開口幅はCより大きく設定されている。
【0020】
図中の符号Eは把持部15の内周面と外周面の間の距離を示しており、符号Fは凹部15bと内周面との距離を示している。本実施形態では、FはEより小さくなるように設定されている。すなわち、突条部15aと外周面との間には肉厚が薄く形成された薄肉部が設けられていることとなる。
【0021】
また、図4に示すように、凹部15bは図中に符号Gで示される操作者が把持する把持領域を超えて後側へ延設されている。さらに、把持領域に位置する凹部15bの前端部には、中央ハウジング12の内部に形成された冷却風経路に連通する孔15cが穿設されている。
【0022】
上記構成のグラインダで加工作業を行う場合、操作者は一方の手で把持部15を把持し、もう一方の手の指でスイッチ14を操作すると電動機20が運転を開始し、電動機軸21に固定された駆動傘歯車31から従動傘歯車32へと動力が伝達され、従動軸33の工具取付け部34に取付けられた回転砥石41が回転する。これにより加工作業を行うことができる。
【0023】
電動機軸21には冷却ファン25が固定されており、冷却ファン25の回転により冷却風が中央ハウジング12の内部の冷却風経路を流れ電動機20を冷却するが、運転に伴う電動機20の発熱により次第に把持部15の温度が上昇することとなる。本実施形態においては、固定子23の熱が突条部15aを介して伝わることで温度上昇が大きくなる突条部15aに対応する位置の外周部に、手が触れないように凹部15bを形成することで操作者に不快感を与えないようにしたので、把持部15の外径が大きくならず、よって作業性の低下を防止することができる。また、凹部15bの表面が外気により冷却されることで凹部15bの周辺での温度上昇も低減できる。
【0024】
さらに、凹部15bの外周面における開口幅Dを突条部15aの基部の幅Cより大きくしたことで、突条部15aに対応する位置の外周部と比して温度上昇が少ないその周辺領域においても操作者の手が触れないため、さらに不快感なく加工作業を続けることができる。
【0025】
さらに、凹部15bと内周面との間にFで示す薄肉部が設けられていることにより、固定子23の発熱により温度が上昇した突条部15aから操作者の手が接する把持部15の外周面への熱量の移動が抑制されるため、外周面の温度上昇が低減でき、より不快感なく加工作業を続けることができる。
【0026】
さらに、凹部15bは把持部15の把持領域を超えて延設され、かつ凹部15bは把持領域において冷却風経路に連通されている孔15Cが形成されていることで、冷却ファン25の回転により、外気が操作者の手で覆われた凹部15bを流れ、孔15Cから冷却風経路内に吸引されるため、凹部15bの表面及び操作者の手が冷却されることとなり、より不快感なく加工作業を続けることができる。
【0027】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態の技術的範囲に限定さない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0028】
そこで本発明の他の実施形態を、図5〜図7を用いて説明する。図5は第2の実施形態に係るグラインダの断面図であり、図6は第3の実施形態に係るグラインダの断面図であり、図7は第4の実施形態に係るグラインダの断面図である。なお、図5〜図7で示す構成以外は第1の実施形態と同様であり説明を省略する。さらに、図5〜図7において第1の実施形態と同じ構成については同じ符号を付し説明を省略する。
【0029】
本発明に係る第2の実施形態は、図5に示すように、第1の実施形態の略V字形状の凹部15bと外周面との接続部に、外側に突出した凸部15e、15eを形成したものである。この構成によると、凸部15eが操作者が把持した際の滑り止めとなり作業性の低下が防止できる。
【0030】
本発明に係る第3の実施形態は、図6に示すように、凹部15bを略コの字形状として形成したものである。この構成によると、凹部15bの表面積を第1の実施形態の場合の略V字形状より大きくできるため、操作者の手で覆われた凹部15bを外気が流れた際の冷却効果をより高くすることができる。
【0031】
本発明に係る第4の実施形態は、図7に示すように、略コの字形状として形成した凹部15bと外周面との接続部に、外側に突出した凸部15e、15eを形成したものである。この構成によると、第3の実施形態の効果に加えて、凸部15eが操作者が把持した際の滑り止めとなり作業性の低下が防止できる。
【0032】
その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0033】
10 ハウジング、11 前側ハウジング、11a 排気口、12 中央ハウジング、13 後側ハウジング、14 スイッチ、15 把持部、15a 突条部、15b 凹部、15c 孔、15e 凸部、20 電動機、21 電動機軸、22 回転子、23 固定子、24 整流子、25 冷却ファン、30 駆動伝達部、31駆動傘歯車、32 従動傘歯車、33 従動軸、34 工具取付け部、41 回転砥石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機と、前記電動機を内包する把持部と、を備える電動工具において、
前記把持部は、内周面から突出して形成され前記電動機を支持する突条部と、
前記突条部に対応する位置の外周面に形成される凹部と、
を有していることを特徴とする電動工具。
【請求項2】
前記凹部は前記突条部の基部より広い領域を持って形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
前記凹部と前記内周面との距離は、前記外周面と前記内周面との距離より小さいことを特徴とする請求項1又2に記載の電動工具。
【請求項4】
前記凹部は前記把持部の把持領域を超えて延設され、
前記凹部には前記把持領域において前記電動機を冷却するための冷却風経路に連通する孔が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電動工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−206176(P2012−206176A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71276(P2011−71276)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000006943)リョービ株式会社 (471)