説明

電動弁診断方法および装置

電動弁診断方法および装置において、スプリングカートリッジの張込荷重を、安価で簡単に、かつ精度良く、しかも常時計測できるものとし、これによりスプリングカートリッジの弾性特性を簡易に校正することを課題とする。弁体25と、電動力によって回転駆動力が与えられたウォーム12と、ウォーム12の回転駆動力により弁体25を開閉駆動させる連結部と、連結部からウォーム12の軸方向に作用する反力に応じて伸縮する皿バネ15を内蔵したスプリングカートリッジ13とを備えた電動弁を診断する方法及び装置である。スプリングカートリッジ13の特定の圧縮状態に対応する荷重に基づいて、スプリングカートリッジ13の弾性特性を表すトルク曲線を校正し、校正されたトルク曲線に基づいて、電動弁を診断する。電動弁のトルクに係る特性の適否を迅速かつ簡単に診断することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動弁診断方法および電動弁診断装置に関し、詳細には、皿バネを内蔵したスプリングカートリッジの張込荷重の変化を検出し、この検出結果に基づいて、弁体の全開から全閉まで、および全閉から全開までのスプリングカートリッジの弾性特性(トルク曲線)を求め、トルクに係る診断を行う診断方法および診断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば原子力発電所等のプラントでは、各種の配管用に電動弁が多数用いられている。
【0003】
これらの電動弁は、配管内通路を開閉する弁体と、モータ等の電動力によって回転駆動力が与えられたウォームと、このウォームの回転駆動力が伝達されて弁体を開閉駆動させる連結部(ギヤ、ドライブスリーブ、ステムナットおよびステム(弁軸)等)と、連結部からウォームの軸方向に作用する反力に応じて伸縮する皿バネを内蔵したスプリングカートリッジとを備えている。
【0004】
ここで、スプリングカートリッジとは、内部に皿バネを内蔵し、ウォームから連結部に過剰な回転駆動力(トルク)を作用させないようにする目的で設けられたものであり、スプリングパック、トルクスプリングカートリッジ、またはトルクスプリングパックとも称される。
【0005】
そして、このスプリングカートリッジは、ウォームと一体的に軸方向に変位する軸と、中心部にこの軸が貫通するように、軸周囲に配列された複数の皿バネと、これら皿バネを軸方向に両側から挟持するとともに、それぞれが皿バネの圧縮方向にのみ軸とともに摺動可能に設けられた2つの圧縮片とによって構成されており、両圧縮片は皿バネを予め所定量だけ圧縮した状態に保持している。
【0006】
この予め圧縮している予圧をスプリングカートリッジの張込荷重又はプレロードと称している。
【0007】
ここで、開放されている弁体を閉鎖方向に移動するためにモータ等を駆動し、このモータの駆動力によってウォームを回転させると、ウォームと噛み合ったギヤ、ドライブスリーブ、ステムナットおよびステム等からなる連結部が駆動されて、弁体が下降して閉鎖される。
【0008】
また、ウォームを逆回転させることによって、閉鎖されている弁体は上昇して開放される。
【0009】
ところで、ウォームが回転することによって、連結部にはウォームからの駆動力が伝達されるが、弁体が閉鎖されて弁体が弁箱内の弁座にシートタッチすると、弁体はシートタッチした相手から反作用力を受け始める。
【0010】
そして、この反作用力は、連結部を介してウォームに伝達され、ウォームに作用した反作用力は、ウォームをその軸方向に変位させる荷重となる。
【0011】
一方、スプリングカートリッジの軸および一方の圧縮片はウォームと一体的に変位し、この軸の周囲に設けられた皿バネは、圧縮片の変位に応じて圧縮される。
【0012】
ここで、スプリングカートリッジは張込荷重によってウォームを軸方向に付勢しているため、前記反作用力のうちウォームの軸方向に作用する成分が張込荷重を上回るまでは、ウォームは変位することがなく、張込荷重を上回ると、スプリングカートリッジの圧縮力に応じて、ウォームはスプリングカートリッジの皿バネを圧縮する方向に変位する。
【0013】
すなわち、弁体がシートタッチしてから所定の閉鎖状態に達するまでに増大し続ける反作用力が、張込荷重を超えると、ウォームはスプリングカートリッジからの付勢力に抗して変位し始める。
【0014】
そして、弁体が所定の閉鎖状態からさらに強く閉鎖されると、ウォームと連結部との噛合い部分や弁体等の損傷を防止するなどのために、ウォームの回転を停止させる必要がある。
【0015】
そこで、弁体の所定の閉鎖状態に対応したウォームの変位位置に、リミットスイッチ(トルクスイッチ)が設けられて、モータの駆動を停止させている。
【0016】
つまり、ウォームに設けられているトルクスイッチは、ウォームの変位量(圧縮方向)によって、作動ポイントが設定されている。
【0017】
ここで、スプリングカートリッジにフックの法則を適用すると、圧縮量をx、バネ定数をkとすれば、荷重Fと圧縮量xとは、F=k・xなる関係を有する。
【0018】
そして、スプリングカートリッジの張込荷重F0は、スプリングカートリッジが予め圧縮されている圧縮量(予圧縮量)をx0として、
F0=k・x0
となり、この張込荷重F0がウォームへの付勢力として作用している。
【0019】
したがって、トルクスイッチの作動ポイントとして設定されているウォームの変位量をxsとすると、このときウォームに作用する付勢力Fsは、
Fs=F0+k・xs
=k・(x0+xs)
となる。
【0020】
したがって、トルクスイッチの作動ポイントは、実質的には、ウォームに作用する荷重であるFsによって規定されていることになる。
【0021】
ところが、上述したスプリングカートリッジの皿バネは、例えば経時的に摩耗等を生じることがある。
【0022】
この場合、皿バネの予圧縮量x0が摩耗した長さ分Δxだけ減少して、減少後の予圧縮量x1は、
x1=x0−Δx
となり、このときの張込荷重F1′は、
F1=k・x1
=k・(x0−Δx)
=F0−k・Δx
というように、摩耗前の張込荷重F0よりも低下する。
【0023】
この結果、トルクスイッチの作動ポイント(x=xs)における荷重Fs′は、
Fs′=F1+k・xs
=(F0−k・Δx)+k・xs
=Fs−k・Δx
となって、摩耗前の荷重Fsよりも、ΔF(=k・Δx)だけ低下する。
【0024】
したがって、弁体が所定の閉鎖状態に達する以前にトルクスイッチが作動したり、設定された許容強度に対するマージンが過大の状態でトルクスイッチが作動することとなり、電動弁の特性に適切に適合させた運転を行うことができない虞がある。
【0025】
なお、上述した説明は、弁体が開放状態から閉鎖方向に作動する場合についてのものであるが、弁体が閉鎖状態から開放方向に作動する場合についても、同様の作用となり、トルクスイッチの作動荷重が低下する。
【0026】
このため、スプリングカートリッジに作用する荷重(又はトルク)と該スプリングカートリッジの圧縮量(=予圧縮量を除く圧縮量)との関係を表すトルク曲線(圧縮量=0における切片が張込荷重を表す)を求め、このトルク曲線に基づいて、電動弁の適正な作動を診断するなど各種の電動弁診断装置が提案されている。
【0027】
例えば、トルク測定のためのセンサとして、ウォームからスプリングカートリッジの圧縮片に対して作用する応力(又はトルク)を直接計測する歪センサをスプリングカートリッジと一体的に内蔵して電動弁に常設するもの(内蔵型トルクセンサ;例えば、国際公開公報WO95/14186参照。)や、電動弁のケースの外側からアダプタを介して校正したロードセルをスプリングカートリッジの圧縮片に突き当てて設置するとともに、スプリングカートリッジの軸の変位を検出する変位センサを設置したもの(外付けトルクセンサ:例えば、日本国特許第2982090号公報図1等参照。)がある。
【0028】
この外付けトルクセンサは、この軸がロードセルに向かって移動して皿バネが圧縮されるときは、変位センサでこの軸の変位を検出するとともに、圧縮片から受ける応力をロードセルによって測定することによって、張込荷重およびバネ定数を得、軸がこの軸端の圧縮片とともにロードセルから遠ざかる方向に移動してこの皿バネが圧縮されるときは、変位センサでこの軸の変位を検出するとともに、この変位と既に得られたバネ定数とにより応力を検出する。
【0029】
また、スプリングカートリッジを電動弁のケースから外部に取り出し、この外部において、スプリングカートリッジ単体で弾性特性を計測するものや、電動弁自体の診断としてはウォーム変位量のみを検出するに止まるものなども提案されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
しかし、外付けトルクセンサによるものは、ロードセル等の装置自体が大がかりであるため、電動弁に常設することが困難であり、診断の都度、装置を着脱させる必要があり、診断作業の前後の準備工程に長時間を要するという問題がある。
【0031】
また、常設できないため、着脱作業の際は、安全確保のため電動弁の稼働を停止させる必要があり、この電動弁が原子力発電所等大規模なプラントに用いられている場合には、実質的に、プラントを停止して行う定期点検の際にしか診断を行うことができないという問題もある。
【0032】
さらに、外付けトルクセンサを用いた既存の方法では、スプリングカートリッジの軸がロードセルから遠ざかる方向に皿バネが圧縮されるとき、即ち、開作動時にはその応力を直接測定することができないので、便宜的手法として、開作動時のスプリングカートリッジの弾性特性と閉作動時の該弾性特性とが同じであると仮定し、開作動時のウォーム変位量を計測し、その計測量について、対応する閉作動時の応力を求めるようにしていた。
【0033】
しかし既述のように、スプリングカートリッジの皿バネのすわり具合等により、閉作動時と開作動時で弾性特性が異なるヒステリシスを有する電動弁があり、このような電動弁においては、閉作動時の弾性特性を開作動時の弾性特性として適用すると、診断精度の低下につながることになる。
【0034】
一方、内蔵型トルクセンサを用いたものは、これが電動弁毎に必要で且つ非常に高価であるとともに、歪センサの定期的な校正のために、例えばスプリングカートリッジを電動弁から取り外しての作業を要する、という問題がある。さらに、内蔵型トルクセンサを用いた場合、これ単体では、皿バネの磨耗等による張込荷重の低下を直接的に測定することができないため、内蔵型トルクセンサとは別個にスプリングカートリッジの圧縮量を検知するセンサを備えることが必要となる。
【0035】
スプリングカートリッジを外部に取り外して単体計測するものは、電動弁の実運転状態(電動弁のケースに取り付けた状態)でのトルク曲線を校正することはできない。
【0036】
また、電動弁からスプリングカートリッジを取り外すことになるため、スプリングカートリッジおよびウォームとトルクスイッチとの位置関係すなわち噛合いがずれて、トルクスイッチの作動荷重が分解前とは異なる虞がある。
【0037】
この他、バネ定数を事前に計測した後に、電動弁の診断を行う方法として、ウォームの軸方向変位に連動して回転する機構により、所定のトルク曲線(トルクと変位との対応曲線)を参照してトルクに換算するものもあるが、トルク曲線を校正することはできず、また、ウォームの軸方向変位を直接検出するものでないため、測定精度が低い。
【0038】
特に、電動弁は、設定されたトルク値に達した時点で自動的に停止する構造となっているが、電動弁の不具合の多くは、この設定トルク値の低下によるものであり、設定トルク値の変化は、皿バネの摩耗等によるスプリングカートリッジの張込荷重の変化に起因していることが多い。
【0039】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、スプリングカートリッジの張込荷重を少なくとも含む特定の荷重を、安価で簡単に、かつ精度良く、しかも常に計測可能とし、さらに得られた荷重に基づいてトルク曲線を校正し、この校正されたトルク曲線に基づいて電動弁の診断を行う電動弁診断方法および電動弁診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0040】
前記課題を解決するため、本発明に係る電動弁診断方法および電動弁診断装置は、以下のような構成を採用している。
【0041】
すなわち、本発明の請求項1に係る電動弁診断方法は、所定の通路を開閉する弁体と、電動力によって回転駆動力が与えられたウォームと、該ウォームの回転駆動力が伝達されて前記弁体を開閉駆動させる連結部と、該連結部から前記ウォームの軸方向に作用する反力に応じて伸縮する皿バネを内蔵したスプリングカートリッジとを備えた電動弁を診断する電動弁診断方法において、前記スプリングカートリッジの特定の圧縮状態に対応する荷重に基づいて、該スプリングカートリッジの弾性特性を表すトルク曲線を校正し、前記校正されたトルク曲線に基づいて、前記電動弁を診断することを特徴とする。
【0042】
このように構成された本発明の請求項1に係る電動弁診断方法によれば、スプリングカートリッジの特定の圧縮状態に対応する荷重に基づいて、スプリングカートリッジのトルク曲線を校正し、この校正されたトルク曲線に基づいて前記電動弁を診断することで、該電動弁のトルクに係る特性の適否を迅速かつ簡単に診断することができる。
【0043】
また、本発明の請求項2に係る電動弁診断方法は、請求項1に係る電動弁診断方法において、前記スプリングカートリッジの特定の圧縮状態に対応する荷重が、該スプリングカートリッジの張込荷重を少なくとも含む荷重であることを特徴としている。
【0044】
ここで、前記張込荷重が対応する前記特定の圧縮状態とは、前記反力により前記スプリングカートリッジが圧縮されることによる変形開始時(=圧縮開始時)、すなわち前記スプリングカートリッジの圧縮量(=変形量)が正となる直前のゼロの時点の圧縮状態であり、前記ウォームの軸方向への変位開始時として検出することができる。
【0045】
また、張込荷重を少なくとも含む荷重とは、スプリングカートリッジの張込荷重そのもののみならず、該張込荷重に対応する圧縮状態とは異なる特定の圧縮状態に対応する荷重、例えば、トルクスイッチの作動時の圧縮状態に対応する荷重等を包含する概念である。
【0046】
また、本発明の請求項3に係る電動弁診断方法は、請求項1または2に係る電動弁診断方法において、前記反力による前記スプリングカートリッジの圧縮状態を前記ウォームの軸方向への変位として検出するとともに、前記スプリングカートリッジの特定の圧縮状態に対応する荷重に対応した所定の物理量を検出し、該所定の物理量に基づいて、前記スプリングカートリッジの特定の圧縮状態に対応する荷重を検出することを特徴としている。
【0047】
ここで、連結部は例えば、ウォームと噛み合うギヤ、ギヤに連動して回転するドライブスリーブ、ドライブスリーブと一体的に回転し、内面に雌ねじが形成されたステムナット、および一端が弁体に連結され、他端側の外周面にステムナットの雌ねじと係合する雄ねじが形成されてステムナットの回転にしたがって軸方向に移動するステム(弁軸)などによって構成されるが、これらの構成要素に限定されるものではない。
【0048】
また、ウォームの軸方向への変位開始時の検出は、ウォームの軸方向端面や設定された部分、その他ウォームの軸方向端面と実質的に同視しうる部分(例えばスプリングカートリッジの圧縮片や該スプリングカートリッジの軸端に取り付けられたロックナットの端面等)と基準位置(電動弁駆動ケース)との距離を常に監視し、この距離の変化を検出することによって行ってもよいし、変位開始時の瞬間のみを物理的に検出するものであってもよい。
【0049】
なお、距離を常に監視する方法を採用した場合には、距離値を日常的に管理することができる点で、距離値変化の兆候をいち早く把握することができるため、好ましい。
【0050】
スプリングカートリッジの特定の圧縮状態に対応する荷重に対応した所定の物理量とは、当該物理量に基づいてスプリングカートリッジに作用する荷重を算出しうる、他に作用する応力や経過時間等各種の物理的な状態量を意味する。
【0051】
例えば、弁体の閉鎖方向における弁座へのシートタッチによって、または弁体の開放方向における物理的なストッパとの当接(以下、開放方向についてもシートタッチと称するものとする。)によって、連結部には応力が生じ、この応力がウォームを変位させる荷重となるため、スプリングカートリッジのバネ定数が一定であるとの条件の下、連結部に生じる応力は、スプリングカートリッジに作用する荷重と直接的な対応関係を有しており、前記所定の物理量の一例となりうる。
【0052】
さらに、前記連結部に作用する応力は、この連結部のうち弁軸を覆うヨーク等に対して反作用力を及ぼすため、このヨーク等に作用する応力も前記所定の物理量の一例となりうる。
【0053】
また、スプリングカートリッジに作用する荷重(ウォームに作用する負荷荷重=皿バネ負荷荷重)の時間的増加割合vが一定の場合、弁体がシートタッチしてからウォームの軸方向への変位開始時までの経過時間t0は、「t0=F0/v(F0はスプリングカートリッジの張込荷重)」である。
【0054】
したがって、連結部に作用する応力σを検出する代わりに、シートタッチしてからウォームが変位し始めたときまでの経過時間t0も、前記物理量の一例として適用することができる。
【0055】
この場合、弁体がシートタッチした時点を検出する必要があり、このシートタッチした時点は、連結部やこれら連結部を覆うヨークに作用する応力の変化等に基づいて検出してもよいが、弁棒の作動速度が一定である条件下においては、弁棒等の連結部の所定部分が所定の位置を通過してから弁本体がシートタッチするまでの経過時間tkも一定であるから、前記連結部の所定部分が所定の位置を通過してからの経過時間に基づいて、シートタッチした時点を検出してもよい。
【0056】
そして、ウォームの変位が開始されるまでの経過時間tは、
t=tk+t0
となる。そして、皿バネの摩耗前後でtkは不変であり、t0は変化することになるため、摩耗前の経過時間tと摩耗後の経過時間t′(=tk+t1)との差Δt(=t−t′=t0−t1)を検出することによって、摩耗後のシートタッチからウォームの変位開始時までの経過時間t1を求めることができる。
【0057】
このように、本発明の請求項3に係る電動弁診断方法によれば、前記スプリングカートリッジの特定の圧縮状態に対応する荷重に対応した所定の物理量を検出し、この検出された物理量に基づいて、前記スプリングカートリッジの特定の圧縮状態に対応する荷重を求めることができる。
【0058】
したがって、この求められた、前記スプリングカートリッジの特定の圧縮状態に対応する荷重を検出することによって、皿バネの摩耗等の影響が反映されたスプリングカートリッジのトルク曲線を求めることができ、電動弁のトルクに係る特性の適否を迅速かつ簡単に診断することができる。
【0059】
しかも、スプリングカートリッジに作用する荷重を直接計測する必要がないため、スプリングカートリッジに作用する荷重を直接計測するための大掛かりなロードセル等を設置したり、スプリングカートリッジを電動弁から取り外して計測する必要がないため、電動弁に常設することもでき、電動弁の実運転中の状態を安価で精度良く、かつ容易に診断することができる。
【0060】
ここで、例えば、本発明の請求項3の構成に、「前記ウォームの軸方向に作用する反力により前記スプリングカートリッジが圧縮されることによる変形開始時を前記ウォームの軸方向への変位開始時として検出する」構成が存在する場合には、前記ウォームの軸方向への変位開始時を検出するとともに、前記ウォームの変位開始時における前記スプリングカートリッジの張込荷重に対応した所定の物理量を検出し、該所定の物理量に基づいて、前記スプリングカートリッジの張込荷重を検出することができる。従って、係る構成は、特に張込荷重を基準として電動弁の診断を行うような場合には、極めて有用なものとなる。
【0061】
また、本発明の請求項4に係る電動弁診断方法は、請求項3に係る電動弁診断方法において、前記ウォームの変位を、前記ウォームとともに前記軸方向に沿って変位する前記スプリングカートリッジの軸端部又は該軸端部に固定されて移動する周辺部の位置を監視することによって検出することを特徴とする。
【0062】
ここで、スプリングカートリッジの軸端部の位置を監視するとは、ウォームの軸方向の位置と同視しうるスプリングカートリッジの軸端部の位置を監視することによって、ウォームの軸方向の位置を間接的に監視することを意味する。
【0063】
なお、スプリングカートリッジの軸端部とは、このスプリングカートリッジの軸端部と実質的に同視しうる周辺部分も含む。
【0064】
したがって、例えばスプリングカートリッジの軸端部と一体的に変位するロックナットや圧縮片がこの軸に取り付けられている場合には、このロックナット等の端面はスプリングカートリッジの軸端部と実質的に同視しうるため、ロックナットの端面等の位置を監視するようにしてもよい。
【0065】
このように構成された本発明の請求項4に係る電動弁診断方法によれば、前記ウォームの軸方向への変位を前記スプリングカートリッジの軸端部の位置によって検出するものであることから、スプリングカートリッジの軸を覆っているカバーを電動弁のケースから取り外すだけで、この軸の端部を計測することが可能であり、電動弁のケース内の深部に位置するウォームを計測するよりも簡易に、変位開始時またはケース端面等から軸端部までの絶対位置を検出することができる。
【0066】
なお、このカバーに代えて、キャップ付き計測孔を設けたアダプタ(改造型カバー)をケースに取り付けてもよい。
【0067】
また、本発明の請求項5に係る電動弁診断方法は、請求項4に係る電動弁診断方法において、前記ウォームの変位を、前記スプリングカートリッジを覆うカバーに代えて該カバーと略同一挿入代を有するアダプタを介して、電動弁に装着されたウォーム位置センサにより、前記スプリングカートリッジの軸端部又は該軸端部に固定されて移動する周辺部の位置を監視することによって、検出することを特徴とする。
【0068】
ここで、挿入代とは、スプリングカートリッジが挿入されたケースの外表面(端面)からこのスプリングカートリッジが挿入されている挿入穴における、スプリングカートリッジの圧縮片までの深さに相当する。
【0069】
なお、このカバーの挿入部分がスプリングカートリッジの圧縮片に当接して、スプリングカートリッジ全体が動くのを規制している。
【0070】
このように構成された本発明の請求項5に係る電動弁診断方法によれば、カバーに代えて、略同一挿入代のアダプタが取り付けられているため、このアダプタが装着された状態で電動弁を運転しても、カバーが装着されている状態と略同一の条件でスプリングカートリッジが作動し、電動弁の実運転中における診断をより精度良く行うことができる。
【0071】
しかも、アダプタを装着した状態で、電動弁の基準部分に対するスプリングカートリッジの絶対位置によって、ウォームの変位開始位置の管理を行うことができるため、カバーとアダプタとの挿入代に多少の誤差があっても、または、アダプタを他のアダプタに交換し、両アダプタ間で挿入代に多少の差異があっても、絶対位置に基づいて、これら誤差や差異を補正処理することによって、張込荷重を精度良く求めることができる。
【0072】
さらに、前記スプリングカートリッジの圧縮状態を前記ウォームの軸方向への変位として検出するに際し、該ウォームの変位をアダプタを介して前記スプリングカートリッジの軸端部の位置を監視することによって検出するものであることから、前記スプリングカートリッジの軸を覆っているカバーを電動弁のケースから取り外し、これに代えてアダプタを取り付けるだけで、この軸の端部を計測することが可能であり、電動弁のケース内の深部に位置するウォームを計測するよりも簡易に、変位またはケース端面等から軸端部までの絶対位置を検出することができる。
【0073】
また、本発明の請求項6に係る電動弁診断方法は、請求項3から5のうちいずれか1項に係る電動弁診断方法において、
前記所定の物理量を、前記スプリングカートリッジの特定の圧縮状態において前記連結部に対して作用する応力、または前記連結部に対して作用する応力を受ける部位に生じる反作用応力とし、前記応力または反作用応力σと前記スプリングカートリッジに作用する荷重Fとの対応関係F=f(σ)を予め設定しておき、この対応関係を参照することにより、前記応力または反作用応力に基づいて前記スプリングカートリッジの特定の圧縮状態に対応する荷重を検出することを特徴とする。
【0074】
ここで、連結部に作用する応力とは、前述したように、弁本体がシートタッチすることによって生じる応力であるが、この応力はウォームを介して前記スプリングカートリッジに作用する荷重(圧縮力)として伝達される。スプリングカートリッジのバネ定数kが経年的に不変であるとの条件の下、スプリングカートリッジに作用する荷重と該荷重に基づくスプリングカートリッジの圧縮量x(即ち、ウォームの変位量)との対応関係はF=F0+k×x(F0は張込荷重)で示される。さらにこの圧縮力とトルクとの間には「(荷重F)×(弁棒中心からウォーム歯面までの距離d)=トルクT」で表される比例関係がある。
【0075】
一方、ウォームの軸方向への変位開始時において連結部に対して作用する応力σは、スプリングカートリッジの張込荷重に対応する。このため、連結部に作用する応力を検出し、この検出された応力に基づいて、前記対応関係F=f(σ)を参照することにより、スプリングカートリッジの張込荷重F0=f(σ0)を求めることができる。
【0076】
また、連結部に対して作用する応力を受ける部位に生じる反作用応力とは、弁本体がシートタッチして連結部に生じた応力の反作用によるものであるが、この反作用応力は、例えば、前記連結部を覆うヨークに生じるとともに、ウォームを介して前記スプリングカートリッジに作用する荷重(圧縮力)として伝達される。
【0077】
一方、ウォームの軸方向への変位開始時においてヨークに生じる反作用応力は、スプリングカートリッジの張込荷重に対応する。このため、ヨークに生じる反作用応力を検出し、この検出された反作用応力に基づいて、前記対応関係を参照することにより、スプリングカートリッジの張込荷重を求めることができる。
【0078】
したがって、本発明の請求項6に係る電動弁診断方法によれば、上述のようにして求められた荷重、即ち、張込荷重F0に基づいてトルク曲線T=d×F=d×(F0+k×x)を作成することで、皿バネの摩耗等の影響が反映されたトルク曲線(即ち、校正されたトルク曲線)を求めることができ、この校正されたトルク曲線に基づいて電動弁のトルクに係る特性の適否を迅速かつ簡単に診断することができる。
【0079】
しかも、連結部に作用する応力は、スプリングカートリッジに作用する荷重を直接計測するよりも簡易に計測することが可能であるため、診断作業を軽減させることができる。
【0080】
本発明の請求項7に係る電動弁診断方法は、請求項6に係る電動弁診断方法において、前記応力を受ける部位が、前記連結部を覆うヨーク、前記スプリングカートリッジ、又は前記スプリングカートリッジと一体的に応力変化する部位であることを特徴とする。
【0081】
ここで、前記連結部に対して作用する応力は、前記連結部を覆うヨークに生じる反作用応力として直接的に作用すると共に、前記スプリングカートリッジへ、さらに、該スプリングカートリッジと一体的に応力変化する部位、例えば、該スプリングカートリッジの軸端部に当接配置されるカバー等へ伝達される。従って、直接に前記連結部に対して作用する応力を計測せずとも、前記ヨーク等に生じる反作用応力を計測することでこれを知ることができるものである。特に、ヨークに生じる反作用応力は、スプリングカートリッジに生じる反作用応力を直接計測するよりも簡易に計測することが可能であるため、診断作業を軽減させるという点においては最適である。
【0082】
また、本発明の請求項7に係る電動弁診断方法によれば、前記連結部を覆うヨーク、前記スプリングカートリッジ、又は前記スプリングカートリッジと一体的に応力変化する部位に生じる反作用応力は、スプリングカートリッジの特定の圧縮状態に対応したものであるため、予め設定された前記応力または反作用応力と前記スプリングカートリッジに作用する荷重との対応関係を参照することにより、前記反作用応力に基づいて前記スプリングカートリッジの特定の圧縮状態に対応した荷重を検出することができる。
【0083】
そして、この求められた荷重に基づいてスプリングカートリッジのトルク曲線を校正し、この校正されたトルク曲線に基づいて、電動弁のトルクに係る特性の適否を迅速かつ簡単に診断することができる。
【0084】
しかも、前記ヨーク等に生じる反作用応力は、スプリングカートリッジに作用する荷重を直接計測するよりも簡易に計測することが可能であるため、診断作業を軽減させることができる。
【0085】
また、本発明の請求項8に係る電動弁診断方法は、請求項3から5のうちいずれか1項に係る電動弁診断方法において、前記所定の物理量は、所定の基準時から前記ウォームの変位開始時までの経過時間であり、前記経過時間と前記スプリングカートリッジに作用する荷重との対応関係を参照することにより、前記経過時間に基づいて前記スプリングカートリッジの張込荷重を検出することを特徴とする。
【0086】
ここで、所定の基準時とは、例えば請求項3において説明したとおり、最適には弁体が弁座にシートタッチした時点などである。
【0087】
シートタッチした時点の検出は、例えば連結部やヨーク等に作用する応力の変化に基づいてもよい。
【0088】
また、このシートタッチした時点を直接検出できない場合には、シートタッチした時点の代替えとして、弁棒の所定部分が所定の位置を通過した時点等を適用することもできる。
【0089】
そして、弁棒の所定部分が所定の位置を通過した時点を検出する方法を適用する場合には、弁棒の所定部分が所定の位置を通過した時点を検出する位置センサなどを用いればよい。
【0090】
このように構成された本発明の請求項8に係る電動弁診断方法によれば、所定の基準時からウォームの軸方向への変位開始時までの経過時間と、前記スプリングカートリッジに作用する荷重との対応関係を参照することにより、スプリングカートリッジの張込荷重を求めることができる。
【0091】
そして、この求められた張込荷重によって、皿バネの摩耗等の影響が反映されたトルク曲線、即ち、校正されたトルク曲線を求めることができ、この校正されていたトルク曲線に基づいて電動弁のトルクに係る特性の適否を迅速かつ簡単に診断することができる。
【0092】
しかも、連結部やヨークに作用する応力値を検出することなく、応力の変化時点や経過時間のみでシートタッチをも検出する方法では、これらに作用する応力値を検出する必要もないため、連結部等の応力値を検出する診断方法よりもさらに簡易に計測することが可能であり、診断作業の一層の軽減を図ることができる。
【0093】
本発明の請求項9に係る電動弁診断方法は、請求項8に係る電動弁診断方法において、前記所定の基準時は、前記弁体が弁座にシートタッチした時点であることを特徴とする。
【0094】
ここで、シートタッチには、前述したように、弁体が閉鎖したときの本来のシートタッチだけでなく、弁体が開放したときの物理的なストッパとの当接も含む。
【0095】
このように構成された請求項9に係る電動弁診断方法によれば、シートタッチした時点からウォームの変位開始時までの経過時間は、他の基準時を適用する場合よりも、スプリングカートリッジに作用する荷重と精度良く対応するため、スプリングカートリッジの張込荷重を精度良く求めることができる。
【0096】
また、本発明の請求項10に係る電動弁診断方法は、請求項9に係る電動弁診断方法において、弁体が弁座にシートタッチした時点を、前記連結部に対して作用する応力、または前記連結部に対して作用する応力を受ける部位すなわち前記連結部を覆うヨーク、前記スプリングカートリッジ、前記スプリングカートリッジと一体的に応力変化する部位等に生じる反作用応力の変化に基づいて検出することを特徴とする。
【0097】
このように構成された本発明の請求項10に係る電動弁診断方法によれば、応力変化によって、弁体がシートタッチした時点を精度良く検出することができるため、スプリングカートリッジの張込荷重を一層精度良く求めることができる。
【0098】
また、本発明の請求項11に係る電動弁診断方法は、請求項1から10のうちいずれか1項に係る電動弁診断方法において、前記スプリングカートリッジの弾性特性を、外付けトルクセンサ、バネ加圧装置またはスプリングカートリッジキャリブレータによって、さらに求めることを特徴とする。
【0099】
ここで、バネ加圧装置とは、ウォーム位置センサと交換してスプリングカートリッジが挿入された挿入穴の部分に装着され、スプリングカートリッジの圧縮片を、スプリングカートリッジの軸方向に加圧しつつ、その加圧力を検出し、しかも、圧縮片に接触させたまま非接触のストロークセンサによって圧縮片の変位を検出して、圧縮片の変位量と加圧力との対応関係を求め、スプリングカートリッジのバネ定数や張込荷重等の弾性特性を求めるものである。
【0100】
なお、バネ加圧装置を挿入穴に取り付けるアダプタは、ウォーム位置センサを挿入穴に取り付けるアダプタとは異なるものであってもよいし、共通のものであってもよく、共通のものとした場合には、アダプタを共用することによって、部品点数を低減することができる。
【0101】
このように構成された本発明の請求項11に係る電動弁診断方法によれば、外付けトルクセンサ、バネ加圧装置またはスプリングカートリッジキャリブレータを仮設または仮置きして、スプリングカートリッジの弾性特性を確認的に検定することができるため、万一、スプリングカートリッジのバネ定数等の弾性特性が変動した場合にも、この弾性特性の変動に応じてトルク曲線を適切に補正処理することができ、電動弁の定期検査等大がかりな点検の際に確認的に行うことによって、一層精度の高い診断を実現することができる。
【0102】
また、本発明の請求項12に係る電動弁診断方法は、請求項1から11のうちいずれか1項に係る電動弁診断方法において、前記スプリングカートリッジの弾性特性(張込荷重および/またはバネ定数)が、前記弁体の全開から閉方向への経路と該弁体の全閉から開方向への経路とでヒステリシスを有するものであるときは、外付けトルクセンサの機能が付加されたバネ加圧装置を用いて、全閉から開方向への経路における弾性特性は前記バネ加圧装置により求め、全開から閉方向への経路における弾性特性は前記電動弁を作動させつつ前記外付けトルクセンサの機能を用いることにより求めることを特徴とする。
【0103】
ここで、スプリングカートリッジの皿バネは、前記弁体が全開から閉方向へ作動する場合も、全閉から開方向へ作動する場合も、共に圧縮されるので、理論的には、これら何れの作動時においても同じ弾性特性を示すと考えられる。しかし、実際的には、例えば、皿バネの納まり具合の相違等の原因で、閉作動時における弾性特性と開作動時における弾性特性とが同じとはならず、これら両者間にズレ(即ち、ヒステリシス)が生じることもある。この場合、これら各作動毎にそれぞれトルク曲線を把握することが必要となる。
【0104】
また、バネ加圧装置に付加された外付けトルクセンサの機能とは、従来における外付けトルクセンサの機能、すなわちバネ加圧装置に内蔵されたロードセルがスプリングカートリッジ側から押圧される荷重を測定し、ストロークセンサがスプリングカートリッジの軸の変位(軸の変位と同視しうる他部の変位であってもよい。以下、同じ。)を測定する機能をいう。また、バネ加圧装置の押圧方向は、開作動時における前記スプリングカートリッジの圧縮方向と同方向である。これに対して、外付けトルクセンサは、閉作動時にトルク(又はスプリングカートリッジに作用する荷重)とウォーム変位量を検出するように構成されている。
【0105】
したがって、バネ加圧装置に、前記外付けトルクセンサのような、閉作動時にトルクとウォーム変位量を検出できる機能を付加することで、閉作動時におけるスプリングカートリッジの弾性特性は電動弁を駆動させて外付けトルクセンサ機能で、開作動時におけるスプリングカートリッジの弾性特性はバネ加圧装置で、それぞれ計測することができる。尚、バネ加圧装置は、電動弁を駆動させる必要がないので、任意の時期に計測可能である。
【0106】
このように構成された本発明の請求項12に係る電動弁診断方法によれば、弁体の開方向と閉方向とで、スプリングカートリッジの弾性特性がヒステリシスによって異なるものであっても、それぞれの方向ごとの弾性特性を各別に精度良く求めることができる。
【0107】
また、バネ加圧装置に外付けトルクセンサの機能を付加したことにより、バネ加圧装置と外付けトルクセンサとを各別に用いるよりも、着脱回数および部品点数を低減することができるとともに、弁体の閉方向と開方向の作動におけるスプリングカートリッジの弾性特性を効率的に測定することができる。
【0108】
一方、本発明に係る電動弁診断装置は、本発明に係る電動弁診断方法を実施する装置であって、電動弁の作動中に生じるウォームの変位開始時、即ち、スプリングカートリッジの変形開始時における、連結部やヨークに作用する応力を歪センサ等の応力センサによって検出し、または所定の基準時からウォームの変位開始時までの経過時間を計時手段又は経時装置(例えば、タイマやパルスカウンタ等の経時装置)によって検出し、この検出された値に基づいてトルク曲線を校正し、この校正されたトルク曲線に基づいて電動弁の状態を診断するものである。
【0109】
すなわち本発明の請求項13に係る電動弁診断装置は、所定の通路を開閉する弁体と、電動力によって回転駆動力が与えられたウォームと、該ウォームの回転駆動力が伝達されて前記弁体を開閉駆動させる連結部と、該連結部から前記ウォームの軸方向に作用する反力に応じて伸縮する皿バネを内蔵したスプリングカートリッジとを備えた電動弁を診断する電動弁診断装置において、前記スプリングカートリッジの張込荷重を少なくとも含む特定の圧縮状態に対応する荷重に基づいて、前記スプリングカートリッジの弾性特性を表すトルク曲線を校正し、前記校正されたトルク曲線に基づいて前記電動弁を診断する診断手段(又は診断装置)を備えたことを特徴とする。
【0110】
このように構成された本発明の請求項13に係る電動弁診断装置によれば、スプリングカートリッジの張込荷重を少なくとも含む特定の圧縮状態に対応する荷重に基づいて、スプリングカートリッジのトルク曲線を校正し、この校正されたトルク曲線に基づいて電動弁のトルクに係る診断を行うことで、該電動弁のトルクに係る特性の適否を迅速かつ簡単に診断することができる。
【0111】
また、本発明の請求項14に係る電動弁診断装置は、請求項13に係る電動弁診断装置において、前記反力による前記スプリングカートリッジの圧縮状態を前記ウォームの軸方向への変位として検出するウォーム位置センサと、前記連結部に対して作用する応力、または前記連結部に対して作用する応力を受ける部位に生じる反作用応力を検出する応力センサを備えるとともに、前記診断手段(又は診断装置)が、前記ウォーム位置センサによって検出された前記スプリングカートリッジの変形開始時を少なくとも含む圧縮状態における、前記応力センサによって検出された前記応力に基づいて、前記スプリングカートリッジの張込荷重を少なくとも含む特定の圧縮状態に対応する荷重を検出する構成としたことを特徴とする。
【0112】
そして、ウォームの軸方向の絶対位置を検出するものである場合には、検出している絶対位置の値が変化したことを判定することによって変位開始を検出することになるが、このような判定機能は、ウォーム位置センサ自体が備える必要はなく、診断手段(又は診断装置)に機能分担させてもよい。さらに、ケース端面等からスプリングカートリッジの軸端部(例えば、スプリングカートリッジの圧縮片や該スプリングカートリッジの軸端に取り付けられたロックナットの端面等)までの絶対位置を検出し、この絶対位置を診断データとして用いてもよい。
【0113】
また、出力手段(又は出力装置)を備える場合には、診断結果を視覚的に出力するディスプレイ、モニタ等の表示装置や、プリンタ、プロッタ等の印刷装置、フレキシブルディスク、CD−R等の記憶媒体に出力させる装置等、種々の出力装置を適用することができる。
【0114】
また、本発明の請求項14に係る電動弁診断装置によれば、前記ウォーム位置センサによって検出された前記スプリングカートリッジの変形開始時を少なくとも含む圧縮状態における、前記応力センサによって検出された前記連結部に対して作用する応力、または前記連結部に対して作用する応力を受ける部位に生じる反作用応力は、前記スプリングカートリッジの張込荷重を少なくとも含む特定の圧縮状態に対応する荷重に対応したものであるため、この検出された荷重に基づいて、その状態におけるスプリングカートリッジのトルク曲線を校正し、この校正されたトルク曲線に基づいて電動弁のトルクに係る診断を行うことで、該電動弁のトルクに係る特性の適否を迅速かつ簡単に診断することができる。
【0115】
また、前記連結部に対して作用する応力、または前記連結部に対して作用する応力を受ける部位に生じる反作用応力から、前記スプリングカートリッジの特定の圧縮状態に対応する荷重を検出する構成であることから、スプリングカートリッジに作用する荷重を直接計測するための大掛かりなロードセル等を備える必要がなく、スプリングカートリッジを取り外して計測するものでもないため、簡単な構成でありながら、電動弁に常設することもでき、電動弁の実運転中の状態を、安価で精度良く、かつ容易に診断することができる。
【0116】
尚、前記ウォーム位置センサは、前記スプリングカートリッジの変形開始時または圧縮状態をウォームの軸方向への変位開始時または変位として検出するセンサであり、前記スプリングカートリッジの変形開始時または圧縮状態を検出することができるものであれば、前記ウォーム位置センサに限られない。
【0117】
そして、前記診断手段(又は診断装置)が、前記ウォーム位置センサによって検出された前記スプリングカートリッジの変形開始時を少なくとも含む圧縮状態における、前記応力センサによって検出された前記応力に基づいて、前記スプリングカートリッジの張込荷重を少なくとも含む特定の圧縮状態に対応する荷重を検出する。従って、この検出された荷重に基づいて、スプリングカートリッジのトルク曲線を校正し、この校正されたトルク曲線に基づいて電動弁のトルクに係る診断を行うことで、該電動弁のトルクに係る特性の適否を迅速かつ簡単に診断することができる。
【0118】
しかも、この診断は、プラントの停止期間中は勿論のこと、該プラントの運転中においてもこれを実施することができ、プラント停止期間中に集中する傾向にある点検業務を分散化させることが可能となる。
【0119】
ここで、例えば、本発明の請求項14の構成に、「前記ウォームの軸方向に作用する反力により前記スプリングカートリッジが圧縮されることによる変形開始時を前記ウォームの軸方向への変位開始時として検出する」構成が存在する場合には、前記ウォームの軸方向への変位開始時を検出するとともに、前記ウォームの変位開始時における前記スプリングカートリッジの張込荷重に対応した所定の物理量を検出し、該所定の物理量に基づいて、前記スプリングカートリッジの張込荷重を検出することができる。従って、係る構成は、特に張込荷重を基準として電動弁の診断を行うような場合には、極めて有用なものとなる。
【0120】
また、本発明の請求項15に係る電動弁診断装置は、請求項14に係る電動弁診断装置において、前記応力センサが、前記連結部を覆うヨーク、前記スプリングカートリッジ、又は前記スプリングカートリッジと一体的に応力変化する部位に生じる前記反作用応力を検出する構成であることを特徴とする。
【0121】
ここで、前記スプリングカートリッジと一体的に応力変化する部位とは、例えば、前記スプリングカートリッジの軸端部に当接配置されるカバーとか、該カバーに代えて取り付けられるアダプタ等である。
【0122】
このように構成された本発明の請求項15に係る電動弁診断装置によれば、前記連結部に対して作用する応力を受ける部位に生じる反作用応力を検出する応力センサが、前記連結部を覆うヨーク、前記スプリングカートリッジ、又は前記スプリングカートリッジと一体的に応力変化する部位に生じる前記反作用応力を検出するものであることから、大掛かりなロードセル等を備える必要がなく、またスプリングカートリッジを取り外して計測する必要も無く、このため、簡単な構成でありながら、電動弁に常設することによって、電動弁の実運転中の状態を、安価で精度良く診断することができる。
【0123】
そして、前記ウォーム位置センサによって検出された荷重に基づいて、その状態におけるスプリングカートリッジのトルク曲線を校正し、この校正されたトルク曲線に基づいて電動弁のトルクに係る診断を行うことで、該電動弁のトルクに係る特性の適否を迅速かつ簡単に診断することができる。
【0124】
しかも、この診断は、プラントの停止期間中は勿論のこと、該プラントの運転中においてもこれを実施することができ、プラント停止期間中に集中する傾向にある点検業務を分散化させることが可能となる。
【0125】
また、本発明の請求項16に係る電動弁診断装置は、請求項13に係る電動弁診断装置において、前記反力により前記スプリングカートリッジが圧縮されることによる変形開始時を前記ウォームの軸方向への変位開始時として検出するウォーム位置センサと、所定の基準時から前記スプリングカートリッジの変形開始時までの経過時間を計測する計時手段(又は経時装置)を備え、前記診断手段(又は診断装置)が、前記計時手段(又は経時装置)によって計測された前記経過時間に基づいて前記スプリングカートリッジの張込荷重を検出する構成であることを特徴とする。
【0126】
ここで、計時手段(又は経時装置)は、経過時間すなわち時間間隔(基準時からの相対時間)を計測するものに限るものではなく、絶対時間(時刻)を計時するものであってもよい。
【0127】
そして、絶対時間を計時するものである場合には、基準時の時刻と変位開始時の時刻との時刻差を算出することによって、経過時間を求めることになるが、このような時刻差の算出機能は、計時手段(又は経時装置)自体が備える必要はなく、診断手段(又は診断装置)に機能分担させてもよい。
【0128】
なお、計時手段(又は経時装置)そのものも、物理的に独立した構成として備えたものに限らず、機能的に診断手段(又は診断装置)の一部として備えられたものであってもよい。
【0129】
また、所定の基準時としては、弁体が弁座にシートタッチした時点や弁棒等の連結部の所定部分が所定の位置を通過した時点等であるが、これらの時点を検出するために、シートタッチした時点を検出する応力センサや連結部の所定部分が所定の位置を通過した時点を検出する位置センサ等を用いればよい。
【0130】
このように構成された本発明の請求項16に係る電動弁診断装置によれば、前記計測手段(又は計時装置)によって計測された所定の基準時から前記スプリングカートリッジの変形開始時までの経過時間に基づいて前記スプリングカートリッジの張込荷重を検出する構成であることから、スプリングカートリッジに作用する荷重を直接計測するための大掛かりなロードセル等を備える必要がなく、スプリングカートリッジを取り外して計測するものでもなく、さらに連結部やヨーク等に応力センサを設けて応力値を求める必要もないため、より一層簡単な構成でありながら、電動弁に設置することによって、電動弁の実運転中の状態を、安価で精度良くかつ容易に診断することができる。
【0131】
そして、前記張込荷重に基づいて、スプリングカートリッジのトルク曲線を校正し、この校正されたトルク曲線に基づいて電動弁のトルクに係る診断を行うことで、該電動弁のトルクに係る特性の適否を迅速かつ簡単に診断することができる。
【0132】
しかも、この診断は、プラントの停止期間中は勿論のこと、該プラントの運転中においてもこれを実施することができ、プラント停止期間中に集中する傾向にある点検業務を分散化させることが可能となる。
【0133】
さらに、簡単な構成であるため、電動弁に常設することもできる。
【0134】
また、本発明の請求項17に係る電動弁診断装置は、請求項16に係る電動弁診断装置において、前記所定の基準時は、前記弁体が弁座にシートタッチした時であり、前記連結部に対して作用する応力、または前記連結部に対して作用する応力を受ける部位すなわち前記連結部を覆うヨーク、前記スプリングカートリッジ、前記スプリングカートリッジと一体的に応力変化する部位等に生じる反作用応力の変化に基づいて、前記シートタッチした時を検出する応力センサを備えたことを特徴とする。
【0135】
このように構成された本発明の請求項17に係る電動弁診断装置によれば、応力変化によって、弁体が弁座にシートタッチした時を精度良く検出することができるため、スプリングカートリッジの張込荷重を一層精度良く求めることができる。
【0136】
また、本発明の請求項18に係る電動弁診断装置は、請求項13から17のうちいずれか1項に係る電動弁診断装置において、前記スプリングカートリッジの弾性特性を検出する外付けトルクセンサ、バネ加圧装置またはスプリングカートリッジキャリブレータをさらに備えたことを特徴とする。
【0137】
このように構成された本発明の請求項18に係る電動弁診断装置によれば、外付けトルクセンサ、バネ加圧装置またはスプリングカートリッジキャリブレータを仮設または仮置きして、スプリングカートリッジの弾性特性を確認的に検定することができるため、万一、スプリングカートリッジのバネ定数等の弾性特性が変動した場合にも、この弾性特性の変動に応じてトルク曲線を適切に補正処理することができ、電動弁の定期検査等大がかりな点検の際に確認的に行うことによって、一層精度の高い診断を実現することができる。
【0138】
なお、これら外付けトルクセンサ、バネ加圧装置またはスプリングカートリッジキャリブレータは、電動弁に対して仮設または仮置きするものであるため、簡単に着脱可能であることが好ましい。
【0139】
また、本発明の請求項19に係る電動弁診断装置は、請求項13から18のうちいずれか1項に係る電動弁診断装置において、前記スプリングカートリッジの弾性特性(張込荷重および/またはバネ定数)が、前記弁体の全開から閉方向への経路と、該弁体の全閉から開方向への経路とで、ヒステリシスを有するものであるときは、外付けトルクセンサの機能が付加されたバネ加圧装置を用いて、該バネ加圧装置が、全閉から開方向への経路における弾性特性を求めるとともに、前記バネ加圧装置に付加された外付けトルクセンサの機能が、前記電動弁の作動中において全開から閉方向への経路における弾性特性を求めることを特徴とする。
【0140】
ここで、バネ加圧装置に付加された外付けトルクセンサの機能とは、具体的には、バネ加圧装置に内蔵されたロードセルがスプリングカートリッジ側から押圧される荷重をも測定し、ストロークセンサがスプリングカートリッジの軸の変位を測定する機能をいう。
【0141】
このように構成された本発明の請求項19に係る電動弁診断装置によれば、弁体の開方向と閉方向とで、スプリングカートリッジの弾性特性がヒステリシスによって異なるものであっても、それぞれの方向ごとの弾性特性を各別に精度良く求めることができる。
【0142】
また、バネ加圧装置に外付けトルクセンサの機能を付加したことにより、バネ加圧装置と外付けトルクセンサとを各別に用いるよりも、着脱回数および部品点数を低減することができるとともに、弁体の閉方向と開方向の作動におけるスプリングカートリッジの弾性特性を効率的に測定することができる。
【0143】
また、本発明の請求項20に係る電動弁診断装置は、請求項18または19に係る電動弁診断装置において、前記バネ加圧装置は前記ウォーム位置センサと交換可能に、前記電動弁に設置されることを特徴とする。
【0144】
このように構成された本発明の請求項20に係る電動弁診断装置によれば、スプリングカートリッジの弾性特性を検定する際に、電動弁に設定されているウォーム位置センサをバネ加圧装置に容易に交換することができ、弾性特性の検定作業を軽減することができる。
【0145】
また、本発明の請求項21に係る電動弁診断装置は、請求項14から20のうちいずれか1項に係る電動弁診断装置において、前記ウォーム位置センサは、前記スプリングカートリッジを覆うカバーに代えて、該カバーと略同一挿入代を有するアダプタを介して、前記電動弁に装着されることを特徴とする。
【0146】
このように構成された本発明の請求項21に係る電動弁診断装置によれば、カバーに代えて、略同一挿入代のアダプタが取り付けられているため、このアダプタが装着された状態で電動弁を運転しても、カバーが装着された状態と略同一の条件でスプリングカートリッジを作動させることができ、電動弁の実運転中における診断をより精度良く行うことができる。
【0147】
しかも、アダプタを装着した状態で、電動弁の基準部分に対するスプリングカートリッジの絶対位置によって、ウォームの変位開始位置の管理を行なうことができるため、カバーとアダプタとの挿入代に多少の誤差があっても、またはアダプタを他のアダプタに交換し、これらアダプタ間で挿入代に多少の差異があっても、絶対位置に基づいて、これらの誤差や差異を補正処理することによって、張込荷重を精度良く求めることができる。
【0148】
また、本発明の請求項22に係る電動弁診断装置は、請求項13から21のうちいずれか1項に係る電動弁診断装置において、前記ウォーム位置センサが、対象にレーザ光を照射し、該対象からの反射光を検出することにより該対象の位置を検出するレーザセンサであることを特徴とする。
【0149】
このように構成された本発明の請求項22に係る電動弁診断装置によれば、ウォーム位置センサがレーザセンサであるため、対象に対して非接触で、かつ高速応答、高精度の位置検出を行うことができる。
【0150】
また、本発明の請求項23に係る電動弁診断装置は、請求項13から22のうちいずれか1項に係る電動弁診断装置において、前記診断結果に係る、または前記診断データに対する判定基準を、前記診断結果および/または前記診断データと併せて出力する出力手段(又は出力装置)を備えたことを特徴とする。
【0151】
ここで、診断結果に係る判定基準および診断データに対する判定基準とは、得られたトルク曲線等のデータに基づいてトルクに係る診断の結果を決定するための判定基準(判定理由、解説を含む)であり、このように診断結果と併せて判定基準を出力することによって、あるいは、診断データと併せて判定基準を出力することによって、この電動弁診断装置の使用者に対して、そのような診断結果や診断データが出力された理由や根拠を、容易に認識させることができ、ユーザフレンドリな使い勝手を与えることができる。
【0152】
また、本発明に係る電動弁診断方法および電動弁診断装置は、電動弁の運転中に生じるウォームの変位開始時における所定の物理量を検出し、この検出された所定の物理量に基づいて、スプリングカートリッジの張込荷重を検出して、電動弁の状態を診断するものである。
【0153】
すなわち、本発明の請求項24に係る電動弁診断方法は、所定の通路を開閉する弁体と、電動力によって回転駆動力が与えられたウォームと、該ウォームの回転駆動力が伝達されて前記弁体を開閉駆動させる連結部と、該連結部から前記ウォームの軸方向に作用する反力に応じて伸縮する皿バネを内蔵したスプリングカートリッジとを備えた電動弁を診断する電動弁診断方法において、前記反力による前記ウォームの軸方向への変位開始を検出するとともに、前記ウォームの変位開始時における、前記スプリングカートリッジの張込荷重に対応した所定の物理量を検出し、前記所定の物理量に基づいて、前記スプリングカートリッジの張込荷重を検出することを特徴とする。
【0154】
このように、本発明の請求項24に係る電動弁診断方法によれば、ウォームの軸方向への変位開始時における所定の物理量は、スプリングカートリッジの張込荷重に対応したものであるため、この検出された物理量に基づいて、スプリングカートリッジの張込荷重を求めることができる。
【0155】
したがって、この求められた張込荷重を検出することによって、皿バネの摩耗等の影響が反映されたスプリングカートリッジのトルク曲線を求めることができ、電動弁のトルクに係る特性の適否を迅速かつ簡単に診断することができる。
【0156】
しかも、スプリングカートリッジ自体の作動荷重を直接計測する必要がないため、スプリングカートリッジ自体の作動荷重を直接計測するための大掛かりなロードセル等を設置したり、スプリングカートリッジを電動弁から取り外して計測する必要がないため、電動弁に常設することもでき、電動弁の実運転中の状態を安価で精度良く、かつ容易に診断することができる。
【0157】
また、本発明の請求項25に係る電動弁診断方法は、請求項24に係る電動弁診断方法において、検出されたスプリングカートリッジの張込荷重に基づいて、このスプリングカートリッジの弾性特性を表すトルク曲線を校正し、校正されたトルク曲線に基づいて、電動弁を診断することを特徴とする。
【0158】
このように構成された本発明の請求項2に係る電動弁診断方法によれば、スプリングカートリッジの張込荷重に基づいて、その状態におけるスプリングカートリッジのトルク曲線を求めることができ、求められたトルク曲線により元のトルク曲線を校正することによって、電動弁のトルクに係る特性の適否を迅速かつ簡単に診断することができる。
【0159】
また、本発明に係る電動弁診断装置は、本発明に係る電動弁診断方法を実施する装置であって、電動弁の運転中に生じるウォームの変位開始時における、連結部やヨークに作用する応力を歪センサ等の応力センサによって検出し、または所定の基準時からウォームの変位開始時までの経過時間の変動を計時手段又は経時装置(例えば、タイマやパルスカウンタ等の経時装置)によって検出し、この検出された値に基づいて、診断装置又は診断手段が、皿バネが内蔵されたスプリングカートリッジの張込荷重を検出して、電動弁の状態を診断するものである。
【0160】
すなわち本発明の請求項26に係る電動弁診断装置は、所定の通路を開閉する弁体と、電動力によって回転駆動力が与えられたウォームと、該ウォームの回転駆動力が伝達されて前記弁体を開閉駆動させる連結部と、該連結部から前記ウォームの軸方向に作用する反力に応じて伸縮する皿バネを内蔵したスプリングカートリッジとを備えた電動弁を診断する電動弁診断装置において、前記電動弁に設置されて、前記ウォームの軸方向への変位開始を検出するウォーム位置センサと、前記連結部に装着されて、該連結部に対して作用する応力を検出する応力センサと、前記ウォーム位置センサによって検出された前記変位開始のタイミングにおける、前記応力センサによって検出された前記応力に基づいて、前記スプリングカートリッジの張込荷重を検出し、該張込荷重に基づいて前記電動弁を診断する診断装置又は診断手段と、前記診断装置又は診断手段によって得られた診断結果および/または診断データを出力する出力装置又は出力手段とを備えたことを特徴とする。
【0161】
そして、ウォームの軸方向の絶対位置を検出するものである場合には、検出している絶対位置の値が変化したことを判定することによって変位開始を検出することになるが、このような判定機能は、ウォーム位置センサ自体が備える必要はなく、診断装置又は診断手段に機能分担させてもよい。
【0162】
さらに、ケース端面等からスプリングカートリッジの軸端面までの絶対位置を検出し、この絶対位置を診断データとして用いてもよい。
【0163】
また、出力装置又は出力手段としては、診断結果を視覚的に出力するディスプレイ、モニタ等の表示装置や、プリンタ、プロッタ等の印刷装置、フレキシブルディスク、CD−R等の記憶媒体に出力させる装置等、種々の出力装置を適用することができる。
【0164】
このように構成された本発明の請求項26に係る電動弁診断装置によれば、ウォーム位置センサによって検出されたウォームの変位開始の時点において、応力センサによって検出された連結部の応力は、スプリングカートリッジの張込荷重に対応したものであるため、スプリングカートリッジ自体の作動荷重を直接計測するための大掛かりなロードセル等を備える必要がなく、スプリングカートリッジを取り外して計測するものでもないため、簡単な構成でありながら、電動弁に常設することもでき、電動弁の実運転中の状態を、安価で精度良く、かつ容易に診断することができる。
【0165】
そして、診断装置又は診断手段が、この応力に基づいてスプリングカートリッジの張込荷重を検出し、皿バネの摩耗等の影響が反映されたトルク曲線を求めて、電動弁のトルクに係る特性の適否を診断し、出力装置又は出力手段がこの診断結果や診断データを出力する。
【0166】
この結果、プラント全体の停止期間に拘わらず診断を行うことができ、プラント停止期間中に集中する点検業務を分散化させることも可能となる。
【0167】
また、本発明の請求項27に係る電動弁診断装置は、請求項26に係る電動弁診断装置において、前記診断装置又は診断手段は、前記検出されたスプリングカートリッジの張込荷重に基づいて、前記スプリングカートリッジの弾性特性を表すトルク曲線を校正し、この校正されたトルク曲線に基づいて、電動弁を診断することを特徴とする。
【0168】
このように構成された本発明の請求項27に係る電動弁診断装置によれば、スプリングカートリッジの張込荷重に基づいて、その状態におけるスプリングカートリッジのトルク曲線を求めることができ、求められたトルク曲線により元のトルク曲線を校正することによって、電動弁のトルクに係る特性の適否を迅速かつ簡単に診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0169】
図1は、本発明に係る電動弁診断方法を実施する電動弁診断装置の一実施の形態を表す構成図である。
図2は、図1に示した電動弁診断装置が用いられる電動弁を示す図であり、(a)は要部斜視図、(b)はドライブスリーブ部分の縦断面図である。
図3は、スプリングカートリッジの詳細を示す図であり、(a)はウォーム位置センサを取り付けた状態を示す断面図、(b)は(a)の矢視Aを示す図、(c)はウォーム位置センサを取り付ける前の状態を示す断面図である。
図4(a)は経過時間Tとウォーム位置xとの対応関係を示すグラフ、(b)は経過時間Tとステムの応力σとの対応関係を示すグラフ、(c)は応力σと皿バネの負荷荷重(スプリングカートリッジに作用する荷重)Fとの対応関係を示すグラフである。
図5はトルク曲線の変化を示すグラフである。
図6は電動弁に仮設されるバネ加圧装置を示す断面図である。
図7は本発明に係る電動弁診断方法を実施する電動弁診断装置の他の実施の形態を表す構成図である。
図8(a)は、皿バネの摩耗前の基準経過時間T0と摩耗後の経過時間Tとの時間差ΔTと、皿バネ15の予圧縮量の変化量(摩耗量)Δxとの対応関係を示すグラフであり、(b)は、皿バネの予圧縮量の変化量Δxと、張込荷重Fとの対応関係を示すグラフである。
図9は電動弁の弁体が弁箱内の弁座にシートタッチした状態を示す概略断面図である。
【0170】
また、符号10は電動弁、11はモータ、12はウォーム、13はスプリングカートリッジ、14は軸、15は皿バネ、16はリミットスリーブ、17a、17bはスペーサ、18はロックナット、18aは端面、19はカバー、20はギヤ、20a、22aは突起、21はステムナット、22はドライブスリーブ、23はトルクスイッチ(リミットスイッチ)、24はステム(弁棒)、25 は弁体、30はケース、31はヨーク、50はウォーム位置センサ、51はアダプタ、52はステー、53はレーザセンサ、60は応力センサ、61は応力センサ、62はタイマ(計時手段:経時装置)、70は診断手段、71、72はLUT(参照テーブル)、81はモニタ、82はプリンタ、90はバネ加圧装置、91は接触駒、92はリニアゲージ、93は加圧ハンドル、94はロードセル、95は加圧ネジ、100は電動弁診断装置、200は配管である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0171】
以下、本発明に係る電動弁診断方法および電動弁診断装置についての具体的な実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0172】
(実施形態1)
図1は、本発明に係る電動弁診断方法を実施する電動弁診断装置の一実施の形態を表す構成図、図2は図1に示した電動弁診断装置100が用いられる電動弁10を示す図である。
【0173】
図示の電動弁10は、例えば原子力発電プラントにおける各種配管200に設定され、配管200内通路を開閉する弁体25と、モータ11の電動力によって回転駆動力が与えられるウォーム12と、このウォーム12の回転駆動力が伝達されて弁体25を開閉駆動させる連結部であるギヤ20、ドライブスリーブ22、ドライブスリーブ22内に設けられてドライブスリーブ22とともに回転するステムナット21(図2(b)参照)およびステムナット21と噛み合うステム(弁棒)24と、連結部からウォーム12の軸方向Xに作用する反力に応じて伸縮する皿バネ15(図3参照)を内蔵したスプリングカートリッジ13と、ウォーム12の所定の変位量に対応してモータ11への通電をカットするトルクスイッチ23と、ウォーム12、連結部およびスプリングカートリッジ13を覆うケース30とを備えている。
【0174】
ここで、スプリングカートリッジ13は、図3(c)の断面図に示すように、ウォーム12と一体的に軸方向に変位する軸14と、スプリングカートリッジ13がX方向に圧縮されたときには皿バネ15を圧縮しつつ軸14とともにX方向に変位する内側スペーサ(圧縮片)17aと、中心部にこの軸14が貫通するように、軸14周囲に配列された複数の皿バネ15と、これら皿バネ15を内側スペーサ17aと軸方向に挟持するとともに、スプリングカートリッジ13がX方向と反対向きの−X方向に圧縮されたときには皿バネ15を圧縮しつつ軸14とともに−X方向に変位する外側スペーサ(圧縮片)17bと、内側スペーサ17aと外側スペーサ17bとの間に所定の間隙を有して設けられた筒状のリミットスリーブ16とを備えている。
【0175】
このリミットスリーブ16は、内側スペーサ17aと外側スペーサ17bとの間の距離を物理的に規制することによって、皿バネ15の軸方向への圧縮変位量を規制している。
【0176】
一方、トルクスイッチ23は、ウォーム12の変位が所定量に達すると接点が開いて、モータ11への通電をカットすることによって、ウォーム12の回転を電気的に規制しており、内側スペーサ17aおよび外側スペーサ17bがリミットスリーブ16に当接するよりも先に、かつ、所定のトルク値でトルクスイッチ23が作動するように設定されている。
【0177】
また、皿バネ15はフックの法則にしたがって弾性変形するが、予圧縮量x0だけ予め圧縮されて張込荷重F0(=k・x0)で、内側スペーサ17aと外側スペーサ17bとの間にセットされている。
【0178】
このとき、外側スペーサ17bは、ケース30に設けられたカバー19に当接して軸方向外向きXへの変位を規制され、内側スペーサ17aは、ケース30によって、軸方向内向き−Xへの変位を規制されている。
【0179】
ここで、弁本体25を開放状態から閉鎖させるために、モータ11を駆動し、このモータ11の駆動力によってウォーム12を回転させると、ウォーム12と噛み合ったギヤ20が回転し、ギヤ20が所定角度回転すると、ギヤ20に設けられた突起20aが、ドライブスリーブ22に設けられた突起22aに当接してこの突起22aを押圧する。
【0180】
そして、この押圧力(トルク)によってドライブスリーブ22は、ギヤ20とともに回転し、ドライブスリーブ22の内部に設けられたステムナット21も回転する。
【0181】
ステムナット21のネジ条下面と、ステム24(弁棒)のネジ条上面との間には、初期的に間隙を有しているが、ステムナット21の回転に伴ってステムナット21のネジ条下面と、ステム24のネジ条上面とは当接し、以後は、ステムナット21の回転にしたがってステム24は矢印Y方向に下降する。
【0182】
そして、ステム24の下降にしたがって、弁体25が下方に押し下げられて、配管200の通路を閉鎖させる。
【0183】
ここで、基準時刻から弁体25が弁箱内の弁座(図9参照)にシートタッチしたときまでの経過時間をTkとすると、このシートタッチした経過時間Tk以後、ステム24には配管200から反作用応力σが作用する。
【0184】
この経過時間Tkと、ステム24に生じる応力σとの対応関係は、図4(b)に示すように、シートタッチまでの応力σはゼロ一定(実際にはパッキン等の摺動抵抗などに対抗するウォーム12からの応力が作用するが、これらの応力で標準化することにより、経過時間Tkまでは応力σをゼロと見做すことができる。)であり、シートタッチした経過時間Tk以後は、時間Tの経過にしたがって応力σが増大し、トルクスイッチ23が作動する変位位置に対応した弁体25の閉鎖状態になって、最大値一定となる。
【0185】
また、ステム24に生じる応力σは、所定の対応関係を以てウォーム12に伝達され、ウォーム12を軸方向Xに変位させようとするが、ウォーム12には、この軸方向Xと反対向き−Xに、スプリングカートリッジ13の張込荷重F0が作用しているため、ステム24に生じた応力σがこの張込荷重F0と所定の対応関係の値を超えるまでは、ウォーム12は軸方向Xに変位しない。
【0186】
これらの関係を図4を参照して説明すると、同図(b)に示すように、基準時刻から所定時間T0の経過(シートタッチからの経過時間(T0−Tk))によって、ステム24に作用する応力がσ0となり、この応力σ0がスプリングカートリッジ13の張込荷重F0に対応したものであると、このとき(T=T0)からウォーム12はX方向に変位し始める(変位開始)。
【0187】
このウォーム12の変位と時間Tの経過との対応関係を示したものが、同図(a)の実線で示したグラフである。
【0188】
そして、同図(c)は、ステム24に作用する応力σとウォーム12に作用する負荷荷重Fとの対応関係を示したものであり、ステム24に作用する応力σがσ0となって、ウォーム12が変位開始したときの負荷荷重Fが、スプリングカートリッジ13の張込荷重F0に対応している。
【0189】
次に、本実施形態に係る電動弁診断装置100について説明する。
【0190】
この電動弁診断装置100は、図1に構成図が示されている。上述した電動弁10のスプリングカートリッジ13の軸方向外側を覆うカバー19(図3(c)参照)と交換されて設置されてウォーム位置センサ50(図3(a)参照。)が設置されている。また、ウォーム12と一体的に軸方向外向きXに変位する軸14の端部に設けられたロックナット18の端面18aの軸方向位置を検出するウォーム位置センサ50と、連結部のステム24に設けられて、このステム24に生じる軸方向Yの応力σを検出する応力センサ(歪みゲージなど)60と、ウォーム位置センサ50によって監視されているロックナット18の端面18aの位置が変位したときのタイミングにおける、応力センサ60によって検出された応力σに基づいて、スプリングカートリッジ13の張込荷重Fを検出し、この張込荷重Fに基づいて、図5に示すスプリングカートリッジ13のトルク曲線を検定し、電動弁10を診断する診断手段70と、診断手段70によって得られた診断結果や診断データ(張込荷重のデータ、トルク曲線、等)を表示させるモニタ81および印字するプリンタ82とを備えている。
【0191】
ウォーム位置センサ50は、図3(c)に示すカバー19を取り外して、このカバー19の取り付けられていたボルト孔を利用して装着されるアダプタ51と、このアダプタ51から立設されたステー52と、ステー52に固定されて、スプリングカートリッジ13のロックナット18の端面18aまでの軸方向Xにおける距離を検出するレーザセンサ53とを備えている。
【0192】
なお、レーザセンサ53に代えて、LVDT(Linear Variable Differential Transformer;差動式変位計)を用いてもよい。
【0193】
ここで、アダプタ51は、スプリングカートリッジ13が装着されたケース30の孔に嵌入する深さ(挿入代)が、カバー19と略同一に形成されている。なお皿バネ15の初期圧縮長さ(予圧縮量)は、カバー19が装着されている状態(図3(c))と、アダプタ51が装着されている状態(同図(a))とでは、同一に設定されている。
【0194】
そして、レーザセンサ53は、ロックナット18の端面18aまでの距離を、非接触かつ高速サンプリングによって、経時的に連続して検出しており、この検出された距離は診断手段70に入力されている。
【0195】
診断手段70には、図4(c)に示す応力σとスプリングカートリッジ13の弾性特性の一要素(スプリングカートリッジに作用する荷重)である前記負荷荷重Fとの対応関係が、参照テーブル(以下、LUT(ルックアップテーブル)という。)71として備えられており、診断手段70は、ロックナット18の端面18aまでの距離の変化、すなわちウォーム12の変位開始のタイミングにおける応力σに基づき、このLUT71を参照することによって、スプリングカートリッジ13の張込荷重Fを検出し、この張込荷重Fに応じて、図5に示したトルク曲線を求める。
【0196】
そして弁体25の全閉から全開までと、全開から全閉までの連続的な変化に対して、ウォーム位置センサ13等の連続的な信号の変化に基づいて電動弁10のトルクに係る特性の適否を診断する。
【0197】
次に、本実施形態の電動弁診断装置100の作用(電動弁診断方法)について説明する。
【0198】
まず、前述したように、開状態の弁体25を閉鎖するために、モータ11を起動するための電流がモータ11に流される。
【0199】
そして、モータ11が駆動されて、ウォーム12が回転し、ウォーム12に噛み合ったギヤ20が回転し、ギヤ20が所定角度回転すると、ギヤ20の突起20aが、ドライブスリーブ22の突起22aを押圧してドライブスリーブ22が回転する。
【0200】
このギヤ20の回転によって、ドライブスリーブ22の内部に設けられたステムナット21も回転し、ステムナット21のネジ条下面が、ステム24のネジ条上面に当接すると、ステムナット21の回転にしたがってステム24が下降し、弁体25が下方に押し下げられて、配管200の通路を閉鎖させる。
【0201】
この間、診断手段70には、ウォーム位置センサ50によるロックナット18の端面18aまでの距離x、および応力センサ60によるステム24の応力σが入力されており、診断手段70は、スプリングカートリッジ13の変形開始時に対応して距離xが変化したとき、すなわちスプリングカートリッジ13の変形開始時に対応してウォーム12が変位開始したときのタイミングを検出し、この検出されたタイミングにおける応力σを検出し、検出された応力σをLUT71(図4(c))に照らして、スプリングカートリッジ13の現在における張込荷重Fを算出する。
【0202】
ここで、皿バネ15が全く摩耗していない当初の状態では、スプリングカートリッジ13の張込荷重Fは設計通りのF0として算出される。
【0203】
そして、診断手段70は、この張込荷重Fに基づいて、診断手段70に予め記憶されているトルク曲線(図5における実線の曲線)を求め、トルク曲線の校正は必要ない(スプリングカートリッジ13が健全である)と判定し、このトルク曲線に基づいて、電動弁10のトルクに係る特性の適否を診断し、所定の診断項目ごとの診断結果を、モニタ81またはプリンタ82に出力する。
【0204】
なお、弁棒24の所定部分が所定の位置を通過した時点を基準時刻として、ステム24またはヨーク31に応力が発生するまでの経過時間Tkや、ウォーム12の変位開始までの経過時間T0、ウォーム12の変位開始時における応力センサ60の検出応力値σ0、算出された張込荷重F0等の診断データを併せて、モニタ81に表示出力し、プリンタ82に印字出力してもよい。
【0205】
さらに、これら診断結果の根拠や理由となる判定基準値等をさらに出力してもよく、このような判定基準等を併せて出力することによって、使用者に対して、診断結果等を理解させることができ、ユーザフレンドリな使い勝手を与えることができる。
【0206】
なお、レーザセンサ53はロックナット18の端面18aまでの距離を測定するが、ロックナット18の端面18aの絶対位置として、電動弁10のケース30の端面である基準面Z(図3参照)からの距離Lxを適用した場合、この基準面Zに対するアダプタ51の端面Yまでの距離Laと、アダプタ51の端面Yからレーザセンサ53までの距離Lbとの間には、
La+Lb=Lx+L(Lは、レーザセンサ53の実測値)
なる関係があるため、基準面Zに対するロックナット18の端面18aの絶対位置Lxは、
Lx=La+Lb−L
によって求めることができる。
【0207】
ここで、LaおよびLbは、ノギス等によって実測すればよく、このように絶対位置Lxを用いることによって、例えば基準面Zとアダプタ51との間に、アダプタ51の厚さに比べて誤差が生じやすいパッキン等を挟設した場合であっても、このパッキン厚の誤差分も含めてLa値を実測することで、絶対位置Lxを求めることができる。
【0208】
また、従来は、測定の都度、カバー19を外付けのLVDTに交換し、測定後は、元のカバー19に付け替えていたため、必ずしもLVDT装着時は電動弁運転時と同じ条件で測定することができなかったが、本実施形態の電動弁診断装置においては、レーザセンサ53が取り付けられたアダプタ51が、カバー19の代わりに、電動弁10に常設されているため、点検の都度、アダプタ51に対するスプリングカートリッジ13のセット位置は一定となる。
【0209】
そして、レーザセンサ53に対するロックナット18の端面18aの相対位置に基づいて、上述した計算により基準面に対するロックナット18の端面18aの絶対位置を算出することができるため、この絶対位置に基づいて、測定ごとのウォームの変位開始位置の変化を監視することができる。
【0210】
したがって、カバー19とアダプタ51との挿入代が同一でない場合や、アダプタ51を他のアダプタ51に交換してこれらアダプタ51,51間で挿入代に差異があっても、絶対位置基準でこれら挿入代の誤差を補正処理することによって、精度良くスプリングカートリッジ13のトルク曲線を校正することもできる。
【0211】
次に、皿バネ15が摩耗している場合について説明する。
【0212】
皿バネ15が摩耗している場合においても、スプリングカートリッジ13の内側スペーサ17aおよび外側スペーサ17bは、それぞれロックナット18によって規制されているため、無負荷状態における内側スペーサ17aと外側スペーサ17bとの間の距離は、皿バネ15が摩耗していない場合と同一である。
【0213】
しかし、この摩耗している長さ分だけ、皿バネ15は自由長に近づいているため、この状態の皿バネの張込荷重Fは、摩耗前における初期の張込荷重F0よりも小さい値F1(<F0)となっている。
【0214】
この結果、ウォーム12は、ステム24から作用する荷重が、摩耗前における初期の場合の荷重よりも小さい値で、軸方向Xに変位し始める(図4(a)における破線参照)。
【0215】
そして、ウォーム位置センサ50から入力されている距離値が変化したことを検出した診断手段70は、この変位開始のタイミング(T=T1)で、応力センサ60から入力されている応力σ1を検出する。
【0216】
そして、診断手段70はLUT71を参照して、応力σ1に対応する前記負荷荷重F1を算出する。
【0217】
算出された負荷荷重F1は、そのときにおけるスプリングカートリッジ13の張込荷重であるから、診断手段70はこの張込荷重F1に基づいて、図5に示すトルク曲線を、実線(摩耗前)から破線に示すものに校正する。
【0218】
なお、この校正は、皿バネ15のバネ定数が摩耗前のものと同一である(バネ定数不変)として行われる。
【0219】
そして、弁体25の開閉作動によって得られるウォーム位置センサ等の信号と校正されたトルク曲線とにより、電動弁10のトルクに係る特性の適否(健全性)を診断してモニタ81やプリンタ82に、診断結果等を出力する。
【0220】
なお、前記実施形態においては、トルクスイッチ23は、皿バネ15の摩耗の有無に拘わらず、すなわち張込荷重Fの変動に拘わらず、ウォーム12の一定の変位量によって作動し、モータ11への作動電流を停止するスイッチとして作用するため、張込荷重F1が所定値を下回ると、弁体25が所定の閉鎖状態に達する以前に、トルクスイッチ23が作動するため、このトルクスイッチ23の作動によってモータ11が自動的に停止されて、弁体25の適正な閉鎖が妨げられる。
【0221】
したがって、張込荷重F1に基づいて電動弁10の健全性を判定するに際しては、校正されたトルク曲線(破線)に基づいて得られるトルクスイッチ23の作動荷重Fsを所定の基準値と比較して、トルクスイッチ23の作動荷重の適否の判定が行われる。
【0222】
このように、本実施形態に係る電動弁診断装置100および電動弁診断方法によれば、スプリングカートリッジ13に作用する荷重を直接計測するための大掛かりなロードセル等を備える必要がなく、また、スプリングカートリッジ13を取り外して計測するものでもないため、ウォーム位置センサ50と応力センサ60という簡単で小さいサイズのセンサを電動弁10に設置することによって、電動弁10の実運転中の状態を、安価で精度良く診断することができる。
【0223】
しかも、この診断は、原子力発電プラントの停止期間中は勿論のこと、該プラントの運転中においてもこれを実施することができ、プラント停止期間中に集中する傾向にある点検業務を分散化させることが可能となる。
【0224】
また、これらのセンサ50,60はサイズが小さく、電動弁10の通常の作動の妨げとならないため、電動弁10に常設することもでき、電動弁10の健全性を常時監視することができる。
【0225】
なお、本実施形態に係る電動弁診断装置100は、応力センサ60をステム24に設けた構成であるが、ステム24に作用する応力は、ステム24を覆うケース30のヨーク31に反作用力を及ぼし、このヨーク31に作用する反作用力は、ステム24に作用する応力と一定の対応関係を有している。
【0226】
したがって、ヨーク31に作用する反作用力とウォーム12に作用する負荷荷重との間にも対応関係が認められ、応力センサ60を、ステム24に設ける代わりにヨーク31に設けて、ステム24に作用する応力を検出する代わりにヨーク31に作用する応力を検出する構成を採用してもよく、上述した実施形態の電動弁診断装置100と同様の作用、効果を得ることができる。
【0227】
なお、ヨーク31に応力センサ60を設けた構成の実施形態においては、LUT71の内容も、ヨーク31に作用する応力とウォーム12に作用する負荷荷重との対応関係のものに変更すればよい。
【0228】
そして、このように、ヨーク31という電動弁10の外表面に応力センサ60を設けることができるため、ステム24に設けるよりも、応力センサ60の設置作業は簡単であって、より好ましい。
【0229】
また、本実施形態においては、レーザセンサ53が、ロックナット18の端面18aにレーザ光を照射して、この端面18aからの反射光を検出することによって、端面18aまでの距離を検出しているが、本発明の電動弁診断装置は、この態様に限定されるものではなく、より簡便な位置センサを用いてもよいし、ウォーム12の軸方向Xへの変位を検出しうる部分であれば、ロックナット18の端面18a以外の部分の位置を検出するものとしてもよい。
【0230】
なお、上述した実施形態に係る電動弁診断装置100および電動弁診断方法は、スプリングカートリッジ13(皿バネ15)のバネ定数が、皿バネ15の摩耗によっても変化しないことを前提としている。
【0231】
すなわち、皿バネ15の軸方向Xについての摩耗量は、バネ定数不変の下に、予圧縮量の変化として扱っている。
【0232】
これは、一般に皿バネ15の摩耗量は微小であって、摩耗が皿バネ15のバネ定数に影響を与えることが少ないためである。
【0233】
しかし、バネ定数は経時的に低下するなど変動する可能性もあり、また極端に大きな摩耗量の場合は、バネ定数に影響を与える虞もある。
【0234】
ただし、そのバネ定数の変動は、摩耗に比べて極めて緩やかであり、プラントを停止しての定期点検実施の間隔の数倍の間隔で検査してもよいと考えられる。
【0235】
そこで、本実施形態の電動弁診断装置100に、図6に示す、スプリングカートリッジ13の弾性特性(張込荷重とバネ定数等)を検定するバネ加圧装置90を付加的に設けてもよい。
【0236】
このバネ加圧装置90は、電動弁10に設置されているカバー19に代えて装着されるアダプタ51′を介して仮設されるものであり、このアダプタ51′と、外側スペーサ17bに当接する接触駒91と、この接触駒91に対してウォーム12の軸方向に当接し、接触駒91の軸方向変位xに追従して接触駒91の変位xを検出するリニアゲージ(ストロークセンサ、変位センサ)92と、皿バネ15を軸方向反対向き−Xに圧縮するように、接触駒91を押圧する加圧ネジ95と、加圧ネジ95を−X方向に変位させるように角度θ(図6(b))だけ回転する加圧ハンドル93と、加圧ネジ95が接触駒91を押圧したときの荷重、すなわち皿バネ15を−X方向に圧縮したときの荷重Fを検出するロードセル94とを備えた構成である。
【0237】
リニアゲージ92によって検出された接触駒91の変位x、およびロードセル94に検出された荷重Fは、それぞれ診断手段70に入力され、診断手段70は、これら入力された変位xと荷重Fに基づいて、スプリングカートリッジ13の張込荷重の検定を行うとともに、バネ定数(圧縮方向)kを、k=F/xの演算式にしたがって算出し、バネ定数kの検定を行う。
【0238】
なお、弁体25の全閉から開方向への経路と全開から閉方向への経路とで、スプリングカートリッジ13の弾性特性がヒステリシスにより異なるものである場合、外付けトルクセンサの機能が付加されたバネ加圧装置90を用い、全閉から開方向(ウォーム12の−X方向変位に対応)への弾性特性については上述した作用によってバネ加圧装置90で求め、全開から閉方向(ウォーム12のX方向変位に対応)への弾性特性については電動弁を作動させつつバネ加圧装置90に付加された外付けトルクセンサの機能を用いて求めることにより、開方向への弾性特性および閉方向への弾性特性をそれぞれ各別に精度良く求めることができる。
【0239】
すなわち、外付けトルクセンサの機能が付加されたバネ加圧装置90では、リニアゲージ92が、圧縮片17bと独立してX方向に変位するロックナット18の端面18aの当該変位を検出し得るものとするとともに、ロードセル94が、このロックナット18のX方向への変位に伴う圧縮片17bのX方向への押圧荷重を検出し得るものとすることにより、弁体25の閉方向についての弾性特性も検出することができ、開方向および閉方向についての弾性特性を各別に、かつ精度良く測定することができる。
【0240】
また、バネ加圧装置90に外付けトルクセンサの機能を付加したことにより、バネ加圧装置90と外付けトルクセンサとを各別に用いるよりも、着脱回数および部品点数を低減することができるとともに、弁体の閉方向と開方向の作動におけるスプリングカートリッジ13の弾性特性を効率的に測定することができる。
【0241】
このように検定された張込荷重およびバネ定数kは、診断手段70に設けられたメモリ(図示せず)等に記憶されて、LUT71の校正等に用いられる。
【0242】
このように、バネ加圧装置90が仮設された電動弁診断装置100によれば、スプリングカートリッジ13の張込荷重およびバネ定数kを確認的に検定することができるため、万一、スプリングカートリッジ13のバネ定数k等の弾性特性が変動した場合にも、この弾性特性の変動に応じて診断手段70がLUT71を校正することによって、トルク曲線を適切に補正処理することができ、電動弁10の定期検査等大がかりな点検の際に確認的に行うことによって、一層精度の高い診断を行うことができる。
【0243】
なお、バネ加圧装置90に代えて、外付けトルクセンサやスプリングカートリッジキャリブレータを採用することもできる。
【0244】
また、皿バネ15が摩耗する以前における初期のスプリングカートリッジ13の張込荷重やバネ定数kも、これらバネ加圧装置90や、外付けトルクセンサ、スプリングカートリッジキャリブレータによって、予め計測しておいてもよい。
【0245】
また、バネ加圧装置90のアダプタ51′を、ウォーム位置センサ50のアダプタ51と共用化してもよく、この場合は、構成部品点数を低減することができ、これに伴って製造コストを低減することもできる。
【0246】
(実施形態2)
図7は、本発明に係る電動弁診断装置および電動弁診断方法の他の実施の形態を示す構成図である。
【0247】
図示の電動弁診断装置100は、図1に示した実施形態1の電動弁診断装置100の応力センサ60に代えて、弁体25が弁座にシートタッチした時点を検出する応力センサ61と、この応力センサ61によって検出された弁体25が弁座にシートタッチした時点Tkからスプリングカートリッジ13の変形開始時に対応したウォーム12のX方向への変位開始時T1までの経過時間t1を計時するタイマ62とを備え、さらに診断手段70が、予め設定された基準経過時間t0とタイマ62によって計時された経過時間t1との時間差ΔT(=t0−t1)に基づいて、スプリングカートリッジ13の張込荷重F1を検出し、この張込荷重F1に基づいて、電動弁10を診断するものである点において、実施形態1の電動弁診断装置100と異なる以外は、同一の構成である。
【0248】
ここで、予め設定された基準経過時間t0は、例えば図4に示した、皿バネ15が摩耗する以前の状態、すなわち張込荷重Fが初期設定値F0である状態におけるシートタッチした時点Tkからウォームの変位開始時T0までの経過時間t0を意味する。
【0249】
また、皿バネ15の摩耗前の基準経過時間T0と、摩耗後の経過時間T1との時間差ΔTは、ウォーム12の駆動エネルギ(回転駆動力)が一定である条件の下においては、皿バネ15の予圧縮量(自由長からの圧縮量)x0の変化量(摩耗量)Δxと、図8(a)に示す対応関係を有する。
【0250】
さらに、皿バネ15の予圧縮量の変化量Δxと、スプリングカートリッジ13の張込荷重Fとは、同図(b)に示す対応関係を有する。
【0251】
したがって、診断手段70が有するLUT72として、これらの対応関係を設定しておくことによって、診断手段70は、時間差ΔTに基づいてLUT72を参照して、スプリングカートリッジ13の弾性特性、例えば、張込荷重を検出することができ、検出された張込荷重F1に基づいて、図5に示すトルク曲線を、実線から破線に示すものに校正する。
【0252】
そして、弁体25の開閉作動によって得られウォーム位置センサ50等の信号と校正されたトルク曲線(破線)とにより、電動弁10のトルクに係る特性の適否(健全性)の判定を行う。この際校正されたトルク曲線(破線)に基づいて得られるトルクスイッチ23の作動荷重Fsを所定の基準値と比較して、トルクスイッチ23の作動荷重の適否の判定が行われる。
【0253】
このように、実施形態2に係る電動弁診断装置100および電動弁診断方法によれば、スプリングカートリッジ13に作用する荷重を直接計測するための大掛かりなロードセル等を備えず、また、スプリングカートリッジ13を取り外して計測するものでもなく、さらに応力値を検出する応力センサ60も備える必要がないため、ウォーム位置センサ50、基準時刻のみを検出する応力センサ61およびタイマ62という、実施形態1の電動弁診断装置100よりもさらに簡単なセンサを電動弁10に設置することによって、電動弁10の実運転中の状態を、安価で精度良く診断することができる。
【0254】
しかも、この診断は、原子力発電プラントの停止期間中は勿論のこと、該プラントの運転中においてもこれを実施することができ、プラント停止期間中に集中する傾向にある点検業務を分散化させることが可能となる。
【0255】
なお、本実施形態においては、応力センサ61によって、弁体25が弁座にシートタッチした時点を検出し、この弁体25が弁座にシートタッチした時点を、所定の基準時として定義づけたが、本発明の電動弁診断装置および電動弁診断方法においては、所定の基準時を弁体25が弁座にシートタッチした時点に限定するものではない。
【0256】
すなわち、所定の基準時は、弁体25が弁座にシートタッチした時点を間接的に検出しうるような、このシートタッチした時点までの経過時間と対応する時点であればよく、例えば、ステム24の下降速度あるいは上昇速度が常に一定である場合には、ステム24の所定の部分がケース30の所定の位置を通過した時点を、前記所定の基準時に設定することもできる。
【0257】
これは、所定の基準時からウォーム12が軸方向に変位を開始するまでの経過時間のうち、所定の基準時から弁体25がシートタッチするまでの経過時間Tkは、皿バネ15の摩耗の有無に拘わらず一定であるため、所定の基準時からウォームの変位開始時までの経過時間における摩耗前の基準経過時間T0(=Tk+t0)と、摩耗後の経過時間T1(=Tk+t1)との差△T(=T0−T1)は、結局は、シートタッチした時点からウォームの変位開始時までの経過時間における摩耗前の基準経過時間t0と摩耗後の経過時間t1との差△T(=t0−t1)と一致するからである。
【0258】
なお、ステム24の所定の部分がケース30の所定の位置を通過したことを検出するには、応力センサ61に代えて、この位置通過を検出する位置センサ等を別途備えた構成とすればよい。
【0259】
また、本実施形態の電動弁診断装置100においては、タイマ62を診断手段70と一体的に構成してもよいことはいうまでもない。
【0260】
なお、上述した各実施形態の電動弁診断装置および電動弁診断方法においては、電動弁10の作動に関し、閉鎖方向についてのみ説明したが、開放方向についても、閉鎖方向と同様の作用をなすものである。
【0261】
すなわち、開放方向については、モータ11、ウォーム12、ドライブスリーブ22およびステムナット21が、閉鎖方向とは反対向きに回動し、ステム24は上昇して、弁体25は開放され、図示しない所定のストッパにシートタッチし、その後、所定の開放状態とされる。
【0262】
そして、この開放方向におけるシートタッチ時点から、連結部に反作用力が作用し始め、反作用力が所定値を超えると、ウォーム12が軸方向の反対向き−Xに変位し始める。
【0263】
このとき、スプリングカートリッジ13の軸14も、ウォーム12と一体的に軸方向反対向き−Xに変位するが、このとき軸14の端部に設けられたロックナット18とともに外側スペーサ17bも向き−Xに変位する。
【0264】
一方、内側スペーサ17aはこの向き−Xへの移動が規制されているため、ウォーム12の向き−Xへの変位は、スプリングカートリッジ13を圧縮する作用をなし、このスプリングカートリッジ13を圧縮する荷重が張込荷重を超えたときに、スプリングカートリッジの変形開始時に対応してウォーム12の変位が開始される。
【発明の効果】
【0265】
以上詳細に説明したように、本発明に係る電動弁診断方法および電動弁診断装置によれば、電動弁のトルクに係る特性の適否を迅速かつ簡単に診断することができ、しかも安価で精度のよい診断を実運転中に行うことができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の通路を開閉する弁体と、電動力によって回転駆動力が与えられたウォームと、該ウォームの回転駆動力が伝達されて前記弁体を開閉駆動させる連結部と、該連結部から前記ウォームの軸方向に作用する反力に応じて伸縮する皿バネを内蔵したスプリングカートリッジとを備えた電動弁を診断する電動弁診断方法において、
前記スプリングカートリッジの特定の圧縮状態に対応する荷重に基づいて、該スプリングカートリッジの弾性特性を表すトルク曲線を校正し、
前記校正されたトルク曲線に基づいて、前記電動弁を診断することを特徴とする電動弁診断方法。
【請求項2】
前記スプリングカートリッジの特定の圧縮状態に対応する荷重が、該スプリングカートリッジの張込荷重を少なくとも含む荷重であることを特徴とする請求項1に記載の電動弁診断方法。
【請求項3】
前記反力による前記スプリングカートリッジの圧縮状態を前記ウォームの軸方向への変位として検出するとともに、前記スプリングカートリッジの特定の圧縮状態に対応する荷重に対応した所定の物理量を検出し、
該所定の物理量に基づいて、前記スプリングカートリッジの特定の圧縮状態に対応する荷重を検出することを特徴とする請求項1または2に記載の電動弁診断方法。
【請求項4】
前記ウォームの変位を、前記ウォームとともに前記軸方向に沿って変位する前記スプリングカートリッジの軸端部又は該軸端部に固定されて移動する周辺部の位置を監視することによって検出することを特徴とする請求項3に記載の電動弁診断方法。
【請求項5】
前記ウォームの変位を、前記スプリングカートリッジを覆うカバーに代えて該カバーと略同一挿入代を有するアダプタを介して、前記電動弁に装着されたウォーム位置センサにより、前記スプリングカートリッジの軸端部又は該軸端部に固定されて移動する周辺部の位置を監視することによって検出することを特徴とする請求項4に記載の電動弁診断方法。
【請求項6】
前記所定の物理量は、前記スプリングカートリッジの特定の圧縮状態において前記連結部に対して作用する応力、または前記連結部に対して作用する応力を受ける部位に生じる反作用応力であり、
予め設定された前記応力または反作用応力と前記スプリングカートリッジに作用する荷重との対応関係を参照することにより、前記応力または反作用応力に基づいて前記スプリングカートリッジの特定の圧縮状態に対応する荷重を検出することを特徴とする請求項3から5のうちいずれか1項に記載の電動弁診断方法。
【請求項7】
前記応力を受ける部位が、前記連結部を覆うヨーク、前記スプリングカートリッジ、又は前記スプリングカートリッジと一体的に応力変化する部位であることを特徴とする請求項6に記載の電動弁診断方法。
【請求項8】
前記所定の物理量は、所定の基準時から前記ウォームの変位開始時までの経過時間であり、
前記経過時間と、前記スプリングカートリッジに作用する荷重との対応関係を参照することにより、前記経過時間に基づいて前記スプリングカートリッジの張込荷重を検出することを特徴とする請求項3から5のうちいずれか1項に記載の電動弁診断方法。
【請求項9】
前記所定の基準時は、前記弁体が弁座にシートタッチした時点であることを特徴とする請求項8に記載の電動弁診断方法。
【請求項10】
前記弁体が弁座にシートタッチした時点を、前記連結部に対して作用する応力、または前記連結部に対して作用する応力を受ける部位すなわち前記連結部を覆うヨーク、前記スプリングカートリッジ、前記スプリングカートリッジと一体的に応力変化する部位等に生じる反作用応力の変化に基づいて検出することを特徴とする請求項9に記載の電動弁診断方法。
【請求項11】
前記スプリングカートリッジの弾性特性を、外付けトルクセンサ、バネ加圧装置またはスプリングカートリッジキャリブレータによって、さらに求めることを特徴とする請求項1から10のうちいずれか1項に記載の電動弁診断方法。
【請求項12】
前記スプリングカートリッジの弾性特性が、前記弁体の全開から閉方向への経路と該弁体の全閉から開方向への経路とでヒステリシスを有するものであるときは、外付けトルクセンサの機能が付加されたバネ加圧装置を用いて、全閉から開方向への経路における弾性特性は前記バネ加圧装置により求め、全開から閉方向への経路における弾性特性は前記電動弁を作動させつつ前記外付けトルクセンサの機能を用いることにより求めることを特徴とする請求項1から11のうちいずれか1項に記載の電動弁診断方法。
【請求項13】
所定の通路を開閉する弁体と、電動力によって回転駆動力が与えられたウォームと、該ウォームの回転駆動力が伝達されて前記弁体を開閉駆動させる連結部と、該連結部から前記ウォームの軸方向に作用する反力に応じて伸縮する皿バネを内蔵したスプリングカートリッジとを備えた電動弁を診断する電動弁診断装置において、
前記スプリングカートリッジの張込荷重を少なくとも含む特定の圧縮状態に対応する荷重に基づいて、前記スプリングカートリッジの弾性特性を表すトルク曲線を校正し、前記校正されたトルク曲線に基づいて、前記電動弁を診断する診断装置を備えたことを特徴とする電動弁診断装置。
【請求項14】
前記反力による前記スプリングカートリッジの圧縮状態を前記ウォームの軸方向への変位として検出するウォーム位置センサと、
前記連結部に対して作用する応力、または前記連結部に対して作用する応力を受ける部位に生じる反作用応力を検出する応力センサを備えるとともに
前記診断装置が、前記ウォーム位置センサによって検出された前記スプリングカートリッジの変形開始時を少なくとも含む圧縮状態における、前記応力センサによって検出された前記応力に基づいて、前記スプリングカートリッジの張込荷重を少なくとも含む特定の圧縮状態に対応する荷重を検出する構成であることを特徴とする請求項13に記載の電動弁診断装置。
【請求項15】
前記応力センサが、前記連結部を覆うヨーク、前記スプリングカートリッジ、又は前記スプリングカートリッジと一体的に応力変化する部位に生じる前記反作用応力を検出する構成であることを特徴とする請求項14に記載の電動弁診断装置。
【請求項16】
前記反力により前記スプリングカートリッジが圧縮されることによる変形開始時を前記ウォームの軸方向への変位開始時として検出するウォーム位置センサと、
所定の基準時から前記スプリングカートリッジの変形開始時までの経過時間を計測する計時装置を備え、
前記診断装置が、前記計時装置によって計測された前記経過時間に基づいて前記スプリングカートリッジの張込荷重を検出する構成であることを特徴とする請求項13に記載の電動弁診断装置。
【請求項17】
前記所定の基準時は、前記弁体が弁座にシートタッチした時であり、前記連結部に対して作用する応力、または前記連結部に対して作用する応力を受ける部位すなわち前記連結部を覆うヨーク、前記スプリングカートリッジ、前記スプリングカートリッジと一体的に応力変化する部位等に生じる反作用応力の変化に基づいて、前記シートタッチした時を検出する応力センサを備えたことを特徴とする請求項16に記載の電動弁診断装置。
【請求項18】
前記スプリングカートリッジの弾性特性を検出する外付けトルクセンサ、バネ加圧装置またはスプリングカートリッジキャリブレータをさらに備えたことを特徴とする請求項13から17のうちいずれか1項に記載の電動弁診断装置。
【請求項19】
前記スプリングカートリッジの弾性特性が、前記弁体の全開から閉方向への経路と該弁体の全閉から開方向への経路とでヒステリシスを有するものであるときは、外付けトルクセンサの機能が付加されたバネ加圧装置を用いて、該バネ加圧装置が、全閉から開方向への経路における弾性特性を求めるとともに、前記バネ加圧装置に付加された外付けトルクセンサの機能が、前記電動弁の作動中において全開から閉方向への経路における弾性特性を求めることを特徴とする請求項13から18のうちいずれか1項に記載の電動弁診断装置。
【請求項20】
前記バネ加圧装置は、前記ウォーム位置センサと交換可能であり、前記電動弁に設置されることを特徴とする請求項18または19に記載の電動弁診断装置。
【請求項21】
前記ウォーム位置センサは、前記スプリングカートリッジを覆うカバーに代えて、該カバーと略同一挿入代を有するアダプタを介して、前記電動弁に装着されていることを特徴とする請求項14から20のうちいずれか1項に記載の電動弁診断装置。
【請求項22】
前記ウォーム位置センサは、対象にレーザ光を照射し、該対象からの反射光を検出することにより該対象の位置を検出するレーザセンサであることを特徴とする請求項13から21のうちいずれか1項に記載の電動弁診断装置。
【請求項23】
前記診断結果に係る、または前記診断データに対する判定基準を、前記診断結果および/または前記診断データと併せて出力する出力装置を備えたことを特徴とする請求項13から22のうちいずれか1項に記載の電動弁診断装置。
【請求項24】
所定の通路を開閉する弁体と、電動力によって回転駆動力が与えられたウォームと、該ウォームの回転駆動力が伝達されて前記弁体を開閉駆動させる連結部と、該連結部から前記ウォームの軸方向に作用する反力に応じて伸縮する皿バネを内蔵したスプリングカートリッジとを備えた電動弁を診断する電動弁診断方法において、
前記反力による前記ウォームの軸方向への変位開始を検出するとともに、前記ウォームの変位開始時における、前記スプリングカートリッジの張込荷重に対応した所定の物理量を検出し、
前記所定の物理量に基づいて、前記スプリングカートリッジの張込荷重を検出することを特徴とする電動弁診断方法。
【請求項25】
前記検出されたスプリングカートリッジの張込荷重に基づいて、該スプリングカートリッジの弾性特性を表すトルク曲線を校正し、
前記校正されたトルク曲線に基づいて、前記電動弁を診断することを特徴とする請求項24に記載の電動弁診断方法。
【請求項26】
所定の通路を開閉する弁体と、電動力によって回転駆動力が与えられたウォームと、該ウォームの回転駆動力が伝達されて前記弁体を開閉駆動させる連結部と、該連結部から前記ウォームの軸方向に作用する反力に応じて伸縮する皿バネを内蔵したスプリングカートリッジとを備えた電動弁を診断する電動弁診断装置において、
前記電動弁に設置されて、前記ウォームの軸方向への変位開始を検出するウォーム位置センサと、
前記連結部に装着されて、該連結部に対して作用する応力を検出する応力センサと、
前記ウォーム位置センサによって検出された前記変位開始のタイミングにおける、前記応力センサによって検出された前記応力に基づいて、前記スプリングカートリッジの張込荷重を検出し、該張込荷重に基づいて前記電動弁を診断する診断装置又は診断手段と、
前記診断装置又は診断手段によって得られた診断結果および/または診断データを出力する出力装置又は出力手段とを備えたことを特徴とする電動弁診断装置。
【請求項27】
前記診断装置又は診断手段は、前記検出されたスプリングカートリッジの張込荷重に基づいて、前記スプリングカートリッジの弾性特性を表すトルク曲線を校正し、前記校正されたトルク曲線に基づいて、前記電動弁を診断することを特徴とする請求項26に記載の電動弁診断装

【国際公開番号】WO2004/081436
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【発行日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−503532(P2005−503532)
【国際出願番号】PCT/JP2004/003072
【国際出願日】平成16年3月10日(2004.3.10)
【出願人】(000144991)株式会社四国総合研究所 (116)
【Fターム(参考)】