説明

電動昇降吊戸棚

【課題】食器乾燥器等の電動昇降吊戸棚において、外形状のコンパクト性、操作性および部品交換性等の向上を図る。
【解決手段】建物上部に電動式昇降機構によって昇降する内箱2を設け、この内箱の前面側に上端を支点として開閉する扉3を配置するとともに、外箱1の下方部位に電動式昇降機構を操作するための操作部を配置した電動昇降吊戸棚であり、操作部を扉の横幅と略同一の長さに設定するとともに、扉の表面と面一とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食器収納庫等として適用される電動昇降吊戸棚に係り、特に操作性の向上、水濡れ等に対する静電対策の強化、設置時の安全性および外観の向上等を図った電動昇降吊戸棚に関する。
【背景技術】
【0002】
電動昇降吊戸棚は、例えばシステムキッチンのシンク上方の天井側空間等に設置し、この空間を有効利用してキャビネットを昇降する構成のものであり、これまで種々の提案がなされている。
【0003】
例えば、キャビネットの前面に開閉扉を設けて上昇時に扉を閉動させ、下降時に扉を開動作させる構成のもの(例えば特許文献1等参照)、あるいはキャビネットの前面を垂直壁として上下方向に昇降する構成のもの(例えば特許文献2等参照)等が知られている。
【0004】
なお、電動昇降吊戸棚としては種々の乾燥用の熱源や温風供給用駆動部等の電源操作用スイッチ類、昇降するキャビネットの移動、停止、方向選択等の動作制御用操作部を必要とする。この場合、キャビネットは調理台やシンクの上方に配置され、キャビネットの下方には種々の道具や機材、食材が置かれたり、水等が使用される環境であるため、キャビネットまたはキャビネットに付属したハンドル等にスイッチ類や操作部が設けられることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−119019号公報
【特許文献2】特開2005−21303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、電動昇降吊戸棚については水等が使用される環境であるため、キャビネットまたはキャビネットに付属したハンドル等にスイッチ類や操作部が設けられることが多い。しかし、ハンドル操作が必ずしも円滑に行えない場合やスイッチ類を操作し難い場合がある。
【0007】
また、電動昇降吊戸棚は建物のキッチン等の室内の天井側に配置されて目に付き易い場所に設置されるものであるため、大きさや形状によっては、動作部分の構成により圧迫感が生じる場合もある。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、棚の昇降動作を行う場合にスイッチのオン、オフ操作等に要する動作が少なくて済み、操作性に優れた電動昇降吊戸棚を提供することを目的とする。
【0009】
また、スイッチ等の操作部をコンパクトな配置にすることができ、利用者の操作が容易に行える操作性に優れた電動昇降吊戸棚を提供することを目的とする。
【0010】
また、設置作業時等の待機時に建物の床面上に載置させるような場合に、部品衝突や過荷重等により破損等を生じる虞がなく、構造部の破損防止機能を向上することができる電動昇降吊戸棚を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記の目的を達成するため、建物上部に電動式昇降機構によって昇降するキャビネットを設け、このキャビネットの前面側に上端を支点として開閉する扉を配置するとともに、この操作部を前記キャビネットの下方部位に前記電動式昇降機構を操作するための操作部を配置した電動昇降吊戸棚において、前記操作部を前記扉の横幅と略同一の長さに設定するとともに、前記扉の表面と面一に構成したことを特徴とする電動昇降吊戸棚を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、操作部を扉の横幅と略同一の長さに設定するとともに、扉の表面と面一に構成したことにより、スイッチ類をコンパクトな配置にすることができるとともに、
キャビネットの昇降動作を行う場合にスイッチ操作等に要する動作が少なくて済み、操作性に優れたものとなる。
【0013】
また、構成がコンパクトで余分な突出部等がなく、設置作業時等の待機時に建物の床面上に載置させるような場合に、部品衝突や過荷重等により破損等を生じる突出部が少なく、構造部の破損防止機能を向上することができる。
【0014】
したがって、本発明によれば、外形のコンパクト性、および操作性の向上等を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る電動昇降吊戸棚の一実施形態を示す全体斜視図。
【図2】本発明に係る電動昇降吊戸棚の内部構成を示す斜視図。
【図3】図1に示した電動昇降吊戸棚のキャビネット上昇状態を示す正面図。
【図4】図3に示した電動昇降吊戸棚の右側面図。
【図5】図4に示した電動昇降吊戸棚のキャビネット下降状態を示す正面図。
【図6】図5に示した電動昇降吊戸棚の右側面図。
【図7】図5に示した電動昇降吊戸棚のスイッチ等を示す拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る電動昇降吊戸棚の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、本実施形態では、一例として、システムキッチンにおける天井設置式の昇降式食器乾燥機として適用する場合について説明する。ただし、その他の電動昇降吊戸棚、例えば乾燥庫、水切り棚等、種々の吊戸棚に適用することができる。
【0017】
まず、図1および図2により、昇降式食器乾燥機の全体構成について説明する。
【0018】
図1および図2に示すように、本実施形態の昇降式食器乾燥機は、家屋等の建物内の天井またはその付近に設置されるキャビネットとして外箱1と、この外箱1に昇降可能に設けられた内箱2とを有しており、外箱1の前面側には扉3が設けられている。
【0019】
外箱1は、水平に配置され前後幅が一定の長方形状天板1aと、一定幅の両側板1c,1cと、背板1d等により構成されている。この構成により、外箱1の前面側と、外箱1の下端側前面とが開口している。
【0020】
外箱1の両側板1c,1cの内面には、内箱2を昇降ガイドするための縦長なガイドレール4がそれぞれ設けてあり、天板1aの内面(下面)には部品支持用のフレーム5が設けられている。
【0021】
外箱1の前垂板1bには、この外箱1の上端縁部に設けたヒンジ6を介して扉3が連結されている。なお、ヒンジ6の数は任意に設定することができる。
【0022】
扉3は、上辺部材3a,下辺部材3bおよび両側部材3c、3cと、これらの部材3a〜3cで囲まれた領域を塞ぐ前面板3eとを有し、全体として四角形板状の構成をなしている。この扉3が、外箱1の前面側の略全域を覆う配置とされている。
【0023】
そして、扉3は外箱1の前面側の上端縁部を支点とし、かつ下端側を開動端として、外箱1の前面側において前後方向に回動し得る構成となっている。
【0024】
すなわち、扉3は外箱1の前面側に配置されており、上端を支点として開動することにより、外箱1の前面側を開閉することができる。
【0025】
また、内箱2は食器乾燥機本体を構成するものであり、天板2a、下板2b、両側板2cおよび背板2dにより前面が開口する箱形容器を構成している。
【0026】
内箱2の内部には、上下2段の食器籠7が設けられている。この内箱2の両側板2cにおける外面間の寸法が、外箱1の両側板1c,1cの内面間の寸法よりも僅かに小さく設定されており、これら各側板1c,2c間にそれぞれ縦長な幅狭い側方空間8が形成されている。なお、内箱2の高さは外箱1より十分小さく構成してあり、これにより外箱1内には内箱2の上方部位に機器スペースが形成されるようになっている。
【0027】
内箱2は外箱1に昇降機構9によって昇降可能に支持されている。この昇降機構9は例えばベルト式昇降機構であり、外箱1のフレーム5に取付けたモータ10と、このモータ10にギア等の動力伝達機構11を介して連結された巻取りドラム12と、このドラムに巻装されるベルト13と、ベルト13を下方に案内するベルトローラ14と、内箱2の天板2aにブラケット15を介して支持された内箱吊上げ用の吊上げローラ16と、ベルト13の端部をフレーム5部位で止着する止着具17とを有している。
【0028】
この昇降機構9のベルト13は例えば2本構成であり、その各ベルト13により内箱2の左右2箇所が吊上げられる方式となっている。各ベルト13は、一つの巻取りドラム12に同時に巻上げられ、それにより内箱2が常時一定姿勢で昇降することができる。
【0029】
内箱2の両側板2cの外面部には、それぞれ上下方向に沿うスライダ4aが設けてあり、このスライダ4aが外箱1のガイドレール4に案内されることにより、確実に内箱2の昇降時の姿勢が安定する。
【0030】
また、内箱2の天板2a上には送風機18、ヒータ19およびダクト20が設けられ、送風口21を介して内箱2に温風が供給されるようになっている。
【0031】
本実施形態では、内箱2と扉3とが、外箱1と内箱2との各側板1c,2c間に形成される側方空間8に配設したリンク機構33によって連結されている。各リンク機構33は各2本ずつのアーム34,35により構成され、内箱2の昇降に伴って扉3を開閉させるようになっている。また、扉3の上端側支点近傍位置と外箱1とは、引張りコイルばね36によって接続され、これにより扉3の下端側には内箱2側に向く常閉方向の付勢力が常時付与されている。
【0032】
この構成において、本実施形態では昇降機構9の内箱2の上昇および下降、ならびに扉3の開閉操作を行うための操作部37が設けられている。この操作部37は、内箱2の前面下端部に一体に設けられた横長棒状の操作パネル38と、この操作パネル38に設けられた複数のスイッチ等とを備えている。
【0033】
操作パネル38は例えば縦断面四角形状をなしており、両端側が内箱2の両側板2c,2cの外側方に沿って突出している。そして、操作パネル38の前面(縦表面)は、閉状態における扉3の前面(縦表面)と面一となる設定にしてある。さらに、操作部37である操作パネル38の上端は、閉状態であるキャビネット収納状態の扉3の下端と略同一高さとなる設定とされている。
【0034】
図2には、操作パネル38に設けられた複数のスイッチ等41〜45が示してある。これらのスイッチ等は操作パネル38の長さ方向(左右方向)に沿う一端側、例えば図2の右側端部位置に、横一列に配置されている(なお、左側その他の位置に配置してもよく、また列数等については場合により種々変更してもよい)。
【0035】
これらのスイッチ等は機械式スイッチ(例えばボタンスイッチ)またはタッチスイッチとして構成されており、操作パネル38の右側から順に、電源スイッチ41、電源ランプ42、内箱上昇用スイッチ43、内箱下降用スイッチ44、照明用スイッチ45等となっている。
【0036】
機械式スイッチの場合には、例えば水漏れ等がある場合でも誤動作を防止することができる。一方、タッチスイッチの場合には、操作が容易である反面、水漏れ等がある場合には誤動作する可能性がある。
【0037】
これらのスイッチが配置される部位は、内箱2の外側にある操作パネル38の前面であり、食器を洗った指で、スイッチを押すことでスイッチ部に水の滴が付く可能性はあるが、誤動作の虞は極めて低い。したがって、誤動作に対する欠点が生じることなく、高い操作性を得ることができる。
【0038】
また、図2に示すように、扉3の開く角度θは、キャビネットである内箱2の前面に対し、例えば16度に設定されている。この設定角度により、食器等の収納物を内箱2内に十分に入出することができる。
【0039】
なお、開く角度については、内箱2内の中棚と天板との高さ寸法の他、内箱2が外箱1から下降する高さ、扉3の高さから、内箱2内の中棚と天板との高さ寸法分だけの収納物を入れた場合、その高さ寸法の収納物を取り出せ、且つ前面に突出しすぎて圧迫感を与えることがない角度としている。
【0040】
本実施形態の場合、中棚と内箱2の天板の標準の高さ寸法は165mmで、±50mm(115mm〜215mm)に高さを変えるように構成されており、最大の高さ215mmに合わせて約16°としている。
【0041】
図3はキャビネット上昇状態を示す正面図であり、図4は同状態における電動昇降吊戸棚の右側面図である。
【0042】
図3に示すように、キャビネットである内箱2が上昇して扉3によって電動昇降吊戸棚が閉状態となった場合には、操作パネル38と、これと同等の横幅を有する扉3とが上下に両側縁部を揃えた状態となり、前面から見てコンパクトな構成となる。したがって、キャビネットの昇降動作を行う場合にスイッチ操作等に要する動作が少なくて済み、操作性に優れたものとなる。また、扉にスイッチを別途設けない構成とすることも可能であり、コスト面でもメリットがある。
【0043】
また、構成がコンパクトで余分な突出部等が少なく、設置施工時等における作業時等の待機時において建物の床面上に載置させるような場合、部品衝突や過荷重等により破損等を生じる突出部が少なく、構造部の破損防止機能を向上することができる。
【0044】
また、図4に示すように、電動昇降吊戸棚が閉状態となった場合には、操作パネル38の前面(図示左面)が扉3の前面(同左面)と面一となり、扉3前面側においてもコンパクトな構成となる。
【0045】
これにより、キャビネット全体が前面、両側面および下面についてコンパクトな構成となる。
【0046】
図5は、使用時におけるキャビネット下降状態を示す正面図であり、図6は同状態における電動昇降吊戸棚の右側面図である。
【0047】
図5および図6に示すように、本実施形態の昇降式食器乾燥機では、スイッチ類を設ける操作パネル38の底部が内箱2の底部と同一面に配置してあるため、底面は平坦な構成となり、下方への突出部がない。
【0048】
このため、設置作業時等の待機時に建物の床面上に内箱2を載置させるような場合、部品衝突や過荷重等により破損等を生じる虞がなく、構造部の破損防止機能を向上することができる。
【0049】
そして、設置後におけるキャビネット収納状態では、内箱2の底部と操作パネル38の下端部との高さが一致する構成となる。これにより、建物のキッチン等の室内の天井側に配置されて目に付き易い昇降式食器乾燥機の外観がコンパクトな構成となる。
【0050】
これにより、比較的大型構造物としての違和感がなく、圧迫感等の減少も図れ、外観的にも調和がとれたものとなる。また、扉3の構成材についての好みによる変更等も容易に行うことができる。
【0051】
図7は、スイッチ等の構成部を拡大して示している。この図7に示すように、操作パネル38の右側から順に、電源スイッチ41、電源ランプ42、内箱上昇用スイッチ43、内箱下降用スイッチ44、照明用スイッチ45等となっている。
【0052】
以上で詳述したように、本実施形態によれば、スイッチ類をコンパクトな配置にすることができるとともに、キャビネットの昇降動作を行う場合にスイッチ操作等に要する動作が少なくて済み、操作性に優れたものとなる。また、構成がコンパクトで余分な突出部等がなく、設置作業時等の待機時に建物の床面上に載置させるような場合に、部品衝突や過荷重等により破損等を生じる突出部が少なく、構造部の破損防止機能を向上することができ、外形のコンパクト性、および操作性の向上等を図ることができる。
【符号の説明】
【0053】
1 外箱
2 内箱
3 扉
4 ガイドレール
4a スライダ
5 フレーム
6 ヒンジ
7 受具
8 側方空間
9 昇降機構
10 モータ
11 動力伝達機構
12 巻取りドラム
13 ベルト
14 ベルトローラ
15 ブラケット
16 吊上げローラ
17 止着具
18 送風機
19 ヒータ
20 ダクト
21 送風口
22 ドレン受け
23 排水口
24 ドレン貯め
25 ランプ、入力スイッチ等
26 パネル
27 操作レバー
28 支点ピン
29 アクチュエータ
30 リミットスイッチ
31 リミットスイッチ
32 制御装置
33 リンク
37 操作部
38 操作パネル
41 電源スイッチ
42 電源ランプ
43 内箱上昇用スイッチ
44 内箱下降用スイッチ
45 照明用スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物上部に電動式昇降機構によって昇降するキャビネットを設け、このキャビネットの前面側に上端を支点として開閉する扉を配置するとともに、前記キャビネットの下方部位に前記電動式昇降機構を操作するための操作部を配置した電動昇降吊戸棚において、前記操作部を前記扉の横幅と略同一の長さに設定するとともに、前記扉の表面と面一としたことを特徴とする電動昇降吊戸棚。
【請求項2】
前記操作部の上端を、前記扉の下端と略同一高さに設定した請求項1記載の電動昇降吊戸棚。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate