説明

電動機

【課題】
小型化した電動機の固定子端部から飛び出したコイルエンド部の絶縁不良を低減し、品質を向上し、作業性を改善した電動機を提供する。
【解決手段】
外部で巻線を巻回した複数の巻線輪をスロット絶縁の上から巻線挿入装置によりスロットの底部から順に挿入され、少なくとも2層以上に重なるように挿入した固定子において、前記複数の巻線輪のコイルエンド部であって、周方向に隣接する巻線輪と巻線輪との隙間に、前記複数の巻線輪から引き出した引出線の巻線端部を接続した接続点、或いは
前記複数の巻線輪から引き出した引出線の周方向の折り返し部を、少なくとも1カ所位置させた電動機とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型化した電動機の固定子端部から飛び出したコイルエンド部の絶縁不良を低減し、作業性を改善した電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のエアコン、冷蔵庫などに搭載される圧縮機は小型化が進んでいる。それに伴い圧縮機に用いられる電動機も小型、高性能化が進んでいる。これらに用いられる電動機の固定子の構造は、電磁鋼板を打ち抜きプレスなどにより打ち抜かれた鉄板を複数枚積層した積層鉄心で構成され、この固定子に巻線を挿入するためのスロットが形成されている。このスロットには外部の巻線機により所定の形状に巻き付けられた巻線輪を巻線挿入機により固定子のスロットに装着されてフィルム状のスロット絶縁の上から挿入している。
【0003】
巻線輪は、電動機の性能や電動機の極数、相数により異なり、巻線輪自体の大きさや形状は大きく変わる。特に、極数や相数が多くなると巻線輪からの引出線の数が多くなり引出線同士、或いは引出線と口出線との接続点箇所も多くなる。引出線は巻線輪から引出された巻線に絶縁チューブを被せ絶縁している。また、引出線同士、或いは引出線と口出線との接続点部分の結線は半田、溶接、カシメ端子等で行い、この接続点部分をフィルム状の絶縁シートで構成した接続点絶縁により絶縁保護している。
【0004】
一方、固定子のスロットにフィルム状のスロット絶縁を介して挿入された巻線輪は、先に述べたように電動機の小型、高性能化によりスロットに挿入される巻線の量も多なり、固定子端部から飛び出るコイルエンド部の巻線の量も多くなってきている。
【0005】
これらの小型、高性能化された電動機のコイルエンド部には、各巻線輪から引き出された引出線同士、或いは引出線と口出線との接続点を各層間の相間である巻線間に埋め込み、電動機のコイルエンド部を加圧成形機により小さく成形している。
【0006】
このような引出線同士、或いは引出線と口出線との接続点を各層間の相間である巻線間に埋め込んだ電動機としては特許文献1(特開平1−186138号公報)に開示されたものがある。特許文献1の構成を図4に示している。図4は引出線22aと口出線7aとの接続点12aを絶縁シートの両端部が互い重なり合わないように2つ折りに折り畳んだ折り畳み部が設けられた接続点絶縁に挿入し、図5に示しているようにコイルエンド部10aの各層間の相間である巻線2a間に埋め込んでいる。
【0007】
また、別の方法として特許文献2(特開平9−84288号公報)に開示されているものがある。特許文献2の構成を図6に示している。図6は引出線22bと口出線7bとの接続点12bを、横一列に形成した接続点収容部分を設けた接続点絶縁に挿入し、図7に示したコイルエンド部10bの各層間の相間である巻線2b間に埋め込んだものであるが、完全に埋設するのではなく接続点12bを挿入する接続点収容部分をコイルエンド部10bの表面から出るように各層間の相間である巻線2b間に横一列に形成している。これによりコイルエンド部10bを加圧成形しても接続点自体へのストレスが緩和され半田、溶接、カシメ端子等の突起により接続点絶縁を突き破るような絶縁不良を低減することができる。
【0008】
【特許文献1】特開平1−186138号公報
【特許文献2】特開平9−84288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、先に述べたように電動機が小型、高性能化されてきている関係上、巻線輪の使用量も増え、コイルエンド部の寸法も非常に厳しくなってきている。特許文献1及び特許文献2のような対策でも、接続点の絶縁不良が生じるようになってきた。また、巻線輪から引き出した引出線は、異相間を引き回し結線するためコイルエンド部の成形寸法が厳しいものにおいては、引出線の絶縁チューブが破損し絶縁不良となる場合もでてきている。このため各引出線の長さは極力短くしなければならない。この場合、コイルエンド部上端部において引出線を折り返して固定しなければならない時がありコイルエンド部の成形寸法が非常に厳しい場合においては、この引出線の折り返し部分において絶縁不良が生じ易くなる。また、コイルエンド部に埋め込まれる接続点が複数あることによりコイルエンド部の成形寸法が入らない場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、環状に形成された継鉄部と、継鉄部から径方向に伸びた歯部と、継鉄部と歯部とで構成したスロットと、このスロットを覆う様にスロット絶縁が挿着され、スロットには外部で巻線を巻回した複数の巻線輪をスロット絶縁の上から巻線挿入装置によりスロットの底部から順に挿入し、少なくとも2層以上に重なるように挿入した固定子において、
前記固定子の両端部からは複数の巻線輪が飛び出してコイルエンド部が形成され、前記コイルエンド部の周方向に隣接する巻線輪と巻線輪との隙間に、前記複数の巻線輪から引き出した引出線の巻線端部を接続した接続点を、少なくとも1カ所に埋め込んだ電動機とする。
【0011】
或いは、環状に形成された継鉄部と、継鉄部から径方向に伸びた歯部と、継鉄部と歯部とで構成したスロットと、このスロットを覆う様にスロット絶縁が挿着され、スロットには外部で巻線を巻回した複数の巻線輪をスロット絶縁の上から巻線挿入装置によりスロットの底部から順に挿入し、少なくとも2層以上に重なるように挿入した固定子において、
前記固定子の両端部からは複数の巻線輪が飛び出してコイルエンド部が形成され、前記コイルエンド部の周方向に隣接する巻線輪と巻線輪との隙間に、前記複数の巻線輪から引き出した引出線の周方向の折り返し部を、少なくとも1カ所に位置させた電動機とする。
【0012】
また、前記した電動機において固定子の両端部から飛び出っている複数の巻線輪のコイルエンド部には、外部電源接続部へ接続するための端子を備えた口出線が所望の固定位置で固定され、前記口出線の固定位置からコイルエンド部周方向に延びる反端子側の口出線長さが、全て略同じ長さとした電動機とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明を用いれば、近年の電動機の小型、高性能化に伴い固定子のスロットに挿入する巻線の使用量が増え固定子のコイルエンド部の成形寸法も非常に厳しい電動機において、
固定子の両端部から飛び出っている複数の巻線輪のコイルエンド部の周方向に隣接する巻線輪と巻線輪との隙間に、複数の巻線輪から引き出した引出線同士、或いは引出線と口出線とを接続した接続点を、少なくとも1カ所埋め込むことによりコイルエンド部の加圧成形時に伴うストレスによる、絶縁チューブや接続点絶縁を突き破るような絶縁不良を低減することができる。
【0014】
また、従来のようにコイルエンド部の各層の相間である巻線間に埋め込んだ接続点では、加圧成形をいくら加えても接続点を埋め込んだ箇所では接続点が邪魔をして成形寸法を小さくすることができなかったが、コイルエンド部の周方向に隣接する巻線輪と巻線輪との隙間に埋め込むことにより容易に所望の成形寸法とすることができ、加圧成形時のストレスが少ないことによりコイルエンド部の成形寸法をより小さくすることが可能である。
【0015】
また、同様に前記固定子の両端部から飛び出っている複数の巻線輪のコイルエンド部の周方向に隣接する巻線輪と巻線輪との隙間に、複数の巻線輪から引き出した引出線の周方向の折り返し部を、少なくとも1カ所位置させることによってコイルエンド部の加圧成形時に伴うストレスによる、絶縁チューブを突き破るような絶縁不良を低減することができる。これにより加圧成形時のストレスが少ないためコイルエンド部の成形寸法をより小さくすることが可能である。また、従来のように引出線部分の折り返しを嫌い、コイルエンド部上端部の周方向に引出線を長く引き回すこともなくなるので異相間での絶縁不良も低減することができる。
【0016】
また、外部電源接続部へ接続するための端子を備えた口出線をコイルエンド部上端の所望の固定位置で固定し口出線の固定位置からコイルエンド部周方向に延びる反端子側の口出線長さを全て略同じ長さとすることにより、コイルエンド部上端の表面に引出線と口出線との接続点絶縁を1カ所にまとめて固定している。これにより接続点の埋め込み作業を低減し、1カ所で接続点を固定することができるので作業性を改善することができる。また、各層の相間である巻線間に接続点を埋め込んでいないのでコイルエンド部の寸法を小さくすることができ、尚且つ、接続点と巻線間の絶縁不良を低減することができる。更に、口出線長さも短くできるので材料費が低減できる。よって、絶縁不良を低減し、品質に優れ、材料費を低減し、作業性を向上した電動機とすることができる。
尚、コイルエンド部の成形寸法が厳しく、コイルエンド部の周方向に隣接する巻線輪と巻線輪との隙間に既に接続点絶縁が挿入され、埋め込みスペースが確保されていない様な場合において特に有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を図1を用い説明する。図1は電動機の上から見た正面図である。固定子1は電磁鋼板を打ち抜きプレスなどにより打ち抜かれた鉄板を複数枚積層した積層鉄心である。この積層鉄心には環状に形成された継鉄部と、継鉄部から径方向に伸びた歯部と、継鉄部と歯部とで構成した巻線輪6を挿入するためのスロット3が形成されている。このスロット3には外部の巻線機により所定の形状に巻き付け形成された巻線輪6を、固定子1のスロット3に装着されたフィルム状のスロット絶縁4の上から挿入している。図2には図1に示した電動機の固定子1のスロット3に巻線輪6が挿入される様子を示している。図2に示した巻線輪6のスロット3への挿入方法は、所謂分布巻方式により挿入されている。尚、図1に示した電動機は3相2極を形成している。
【0018】
図2では固定子1のスロット3に挿入する最外周層のV相コイルの巻線輪6のみを一例として示している。図1に示した電動機においては外部で巻かれた巻線輪6を巻線挿入機により、スロット3に装着されたスロット絶縁4の上から外層巻線、中層巻線、内層巻線の順に挿入する。本実施形態では、外層巻線をV相コイルとし、中層巻線をW相コイル、内層巻線をU相コイルとしている。各巻線輪6の層間には、相間を絶縁するための相間絶縁9が装着されている。尚、図1中の相間絶縁9の黒丸は、固定子1の両端から飛び出た巻線輪6のコイルエンド部を絶縁する相間絶縁9を繋ぐ、繋ぎ部分が挿入されている箇所を示している。
【0019】
図1の電動機の固定子1には、巻線挿入機で巻線輪6が挿入され、固定子1の両端部から巻線輪6が飛び出しておりコイルエンド部10を形成している。コイルエンド部10の片方の上端部には、外部電源接続部へ接続するための端子8を備えた口出線7が、コイルエンド部10の上端の所望の口出線固定位置13にてコイルエンド縛り紐により固定されている。図1の実施形態では、各巻線輪6の巻線端部から引き出された引出線22は絶縁チューブが被せられ絶縁されている。尚、図1では各巻線輪6から引き出される引出線22は点線で記載している。
【0020】
これにより引出線22のコイルエンド部10上端の異相間での周方向への引き回しを容易にしている。尚、本実施形態では、コイルエンド部10の巻線輪6と各接続点等を縛り込むコイルエンド縛り紐は、便宜上省略している。但し、口出線7を固定する位置を明確にするために口出線固定位置13のみ図示している。
【0021】
図1の巻線輪6のコイルエンド部10における各層の巻線輪6は、外層巻線のV相コイルの、一方から引き出した引出線Yの巻線端部は、他相から引き出された引出線Z、Xの巻線端部と結線され中性点11を構成し、他方から引き出した引出線Vの巻線端部は口出線7Vの反端子側と結線して接続点12Vを形成している。
また、中層巻線のW相コイルの、一方から引き出した引出線Zの巻線端部は、他相から引き出された引出線Y、Xの巻線端部と結線され中性点11を構成し、他方から引き出した引出線Wの巻線端部は口出線7Wの反端子側と結線して接続点12Wを形成している。
同様に、内層巻線のU相コイルの、一方から引き出した引出線Xの巻線端部は、他相から引き出された引出線Y、Zの巻線端部と結線され中性点11を構成し、他方から引き出した引出線Uの巻線端部は口出線7Uの反端子側と結線して接続点12Uを形成している。
【0022】
つまり、V相、W相、U相の各相から引き出された引出線Y、Z、Xの巻線端部の一方は、1カ所で結線され中性点11を構成し絶縁が施された接続点としている。また、V相、W相、U相の各相から引き出された引出線V、W、Uの巻線端部の他方は、各口出線7V、7W、7Uの反端子側と結線し絶縁が施された接続点12V、12W、12Uとしている。尚、各口出線7V、7W、7Uの反端子側と結線し絶縁が施された接続点12V、12W、12Uは、本実施形態ではコイルエンド部10の上端部の表面にコイルエンド縛り紐によって1カ所にまとめて上乗せ固定している。これによりコイルエンド部10を加圧成形機により、成形が厳しい小さな成形寸法の場合においても巻線間に無理やり接続点を埋め込まなくてよいので、接続点部分の半田、溶接、カシメ端子等で仕上げた結線部分が絶縁を突き破り巻線輪6と接触し絶縁不良を起こすこともない。
【0023】
また、コイルエンド部の上端の所望の口出線固定位置13に固定した口出線7のコイルエンド部10の上端の周方向に伸ばしたV相、W相、U相の各相からの引出線V、W、Uと結線する各口出線7V、7W、7Uの口出線固定位置13からの長さを略同じ長さとしている。図3にはコイルエンド部の上端の所望の口出線固定位置13に固定した口出線7のコイルエンド部10の上端の周方向に伸ばしたV相、W相、U相の各相からの引出線V、W、Uと結線する各口出線7V、7W、7Uの長さLが同じであることを解り易くするために口出線7のみ図示している。
【0024】
図3に示しているように口出線7V、7W、7Uの口出線固定位置13からの長さLを略同じ長さとしているので、コイルエンド部10の上端部の表面に接続点を固定する位置を1カ所とすることができ作業性を改善することができる。また、図1に示している様にV相、W相、U相の各相からの引出線V、W、Uと結線する各口出線7V、7W、7Uの接続点12V、12W、12Uのコイルエンド部10の巻線間への埋め込み作業をなくし中性点11の1カ所のみとしているのでコイルエンド部の寸法を小さくすることができ、尚且つ、接続点と巻線間の絶縁不良を低減することができる。また、従来よりも口出線7の口出線固定位置13からの長さLを短くすることができ材料費も低減できる。
【0025】
これによりコイルエンド部10で各相から引き出された引出線V、W、Uと口出線7V、7W、7Uとの接続点12V、12W、12Uの箇所を1カ所にまとめ固定することができ、従来のようにV相、W相、U相の各相から引き出された引出線と口出線の接続点箇所をバラバラに固定することもなく作業性を向上することができる。
【0026】
また、V相、W相、U相の各相から引き出された引出線Y、Z、Xの巻線端部の一方を1カ所にまとめて中性点11とした接続点は、先に説明したようにコイルエンド部10を加圧成形により小さく成形する場合においては、巻線輪6の各層間の相間である巻線間に接続点を埋め込み成形すると接続点自体にストレスが加わり半田、溶接、カシメ端子等で結線された接続点の突起などにより絶縁を突き破り巻線輪6と接触し絶縁不良となってしまう。
【0027】
図1ではコイルエンド部10を加圧成形機により小さく成形した成形率の一番低いところに接続点を埋め込むようにしている。コイルエンド部10での成形率(コイルエンド部断面寸法に対する巻線の線径×巻回数の占める割合)の一番低いところは、各層に挿入した巻線輪6の周方向に隣接する巻線輪6と巻線輪6の隙間となる位置が最も低い箇所となる。図1の実施形態では各層の極間部分となる。
【0028】
図1に示した本実施形態で説明する。図1の固定子1は3相2極で、スロット数が36スロットである。外層巻線はV相コイルで、スロットのNO.1〜NO.18、NO.19〜NO.36に巻線輪6が挿入されている。NO.36、NO.1とNO.18、NO.19との隙間の2カ所が極間となっている。
また、中層巻線はW相コイルで、スロットのNO.13〜NO.30、NO.31〜NO.12に巻線輪6が挿入されている。NO.12、NO.13とNO.30、NO.31との隙間の2カ所が極間となっている。
内層巻線はU相コイルで、スロットのNO.7〜NO.24、NO.25〜NO.6に巻線輪6が挿入されている。NO.6、NO.7とNO.24、NO.25との隙間の2カ所が極間となっている。尚、巻線輪6の各層間には、相間を絶縁するための相間絶縁9が装着されている。
【0029】
従って、図1においては、各極間部である、V相コイルのスロットNO.36、NO.1とNO.18、NO.19の隙間、W相コイルのスロットNO.12、NO.13とNO.30、NO.31の隙間、U相コイルのNO.6、NO.7とNO.24、NO.25との巻線輪6と巻線輪6との隙間に接続点を埋め込むと良いことになる。本実施形態ではV相コイルのスロットNO.36、NO.1の隙間の極間に中性点11を埋め込むことによりコイルエンド部10が非常に小さく厳しい成形寸法であっても接続点自体にかかるストレスを低減でき、半田、溶接、カシメ端子等の突起により接続点絶縁が破損して絶縁不良となることを低減できる。言い換えれば、コイルエンド部10を加圧成形して容易に所望の成形寸法にすることができる。
【0030】
尚、図1の本実施形態では、V相、W相、U相の各相から引き出された引出線V、W、Uの巻線端部の一方は、1カ所で結線され中性点11を構成し絶縁が施された接続点となっており、他方は各口出線7V、7W、7Uの反端子側と結線し絶縁が施された接続点12V、12W、12Uとしてコイルエンド部10の上端部の表面に1カ所にまとめてコイルエンド縛り紐にて上乗せ固定している。
【0031】
図1の実施形態では巻線輪6と巻線輪6との隙間に埋め込む接続点としては中性点11の1カ所であるが、少なくとも各相の口出線7V、7W、7Uの反端子側と結線し絶縁が施された接続点12V、12W、12Uを巻線輪6と巻線輪6との隙間に埋め込んでも同様に、接続点自体にかかるストレスを低減でき半田、溶接、カシメ端子等の突起により接続点絶縁が破損して絶縁不良となることを低減できる。尚、各接続点の埋め込み位置は巻線輪6と巻線輪6の隙間の極間部分に埋め込んだが、巻線輪6と巻線輪6の隙間の近傍に埋め込んでも同様の効果がある。
【0032】
また、V相、W相、U相の各相から引き出された引出線V、W、Uは絶縁チューブが施されているものの、先に説明したようにコイルエンド部10を加圧成形機により小さく成形したコイルエンド部10では、引出線V、W、Uをコイルエンド部周方向へ引き伸ばし、各相の口出線7V、7W、7Uと接続する際、もしくは引出線Y、Z、Xをコイルエンド部周方向へ引き伸ばし中性点11で接続する際に結線作業上どうしても途中において折り返し部分14を設ける必要がある場合がある。各層の相間である巻線間で各引出線22(V、W、U、Y、Z、Xと同じ)を折り返して加圧成形すると、成形寸法が非常に小さくて厳しい場合、各引出線22の折り返し部分にストレスが加わり引出線22の絶縁チューブを突き破り異相間で接触し絶縁不良となってしまう。
【0033】
図1ではコイルエンド部10を加圧成形機により小さく成形した成形率の一番低いところに各引出線22の折り返し部分14が来るように配置している。コイルエンド部10での成形率(コイルエンド部断面寸法に対する巻線の線径×巻回数の占める割合)の一番低いところは、各層に挿入した巻線輪6の周方向に隣接する巻線輪6と巻線輪6との隙間がある位置が最も低い箇所となる。図1の実施形態では各層の極間部分となる。図1の実施形態における各相の極間部は前記に記載の通りである。
【0034】
従って、図1においては、各極間部である、V相コイルのスロットNO.36、NO.1とNO.18、NO.19の隙間、W相コイルのスロットNO.12、NO.13とNO.30、NO.31の隙間、U相コイルのNO.6、NO.7とNO.24、NO.25との巻線輪6と巻線輪6との隙間に各引出線の折り返し部分14が少なくとも1カ所が位置するように配置することによりコイルエンド部10を非常に小さくて厳しい寸法に成形しても各引出線22の折り返し部14に掛るストレスを低減でき、絶縁チューブが破損して絶縁不良となることを低減できる。
【0035】
図1の本実施形態では、各引出線22の折り返し部14の位置は、内層巻線のU相コイルから中性点11に向かい引き出された引出線Xが、中性点11に接続される前に折り返し部14を設けている。この折り返し部14は、先に説明したV相コイルのスロットNO.36、NO.1の巻線輪6と巻線輪6の隙間の極間で折り返されている。また、同様に内層巻線のU相コイルから口出線7Uに向かい引き出された引出線Uが、口出線7Uに接続される前に折り返し部14を設けている。この折り返し部14は、先に説明したV相コイルのスロットNO.18、NO.19の巻線輪6と巻線輪6の隙間の極間で折り返されている。尚、各引出線22の折り返し部14は巻線輪6と巻線輪6の隙間の極間部分で折り返し部分を位置したが、巻線輪6と巻線輪6の隙間の近傍に位置させても同様の効果がある。
【0036】
本実施形態の電動機は、図1及び図2で示したように、3相2極であるが、単相の電動機に用いることもできる。また、多極の電動機や同相の巻線輪同士で接続点箇所が多く、コイルエンド部に接続点を多く埋め込まなければならない場合や、各引出線の折り返し部分が多い電動機において有効であり、コイルエンド部の成形寸法の厳しい種々の電動機において用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本実施形態の電動機の主要構成部品の配置を示した模式図。
【図2】図1に示した巻線輪を固定子のスロットに挿入する図。
【図3】図1に示した口出線の口出線固定位置からの反端子側長さLを示す図。
【図4】従来の実施形態の接続点を示した図。
【図5】図4に示した接続点をコイルエンド部に埋め込んだ図。
【図6】別の従来の実施形態の接続点を示した図。
【図7】図6に示した接続点をコイルエンド部に埋め込んだ図。
【符号の説明】
【0038】
1、1a・・・固定子
2、2a、2b・・・巻線
3・・・スロット
4、4a・・・スロット絶縁
6・・・巻線輪
7、7U、7V、7W、7a、7b・・・口出線
8・・・端子
9・・・相間絶縁
10、10a、10b・・・コイルエンド部
11・・・中性点
12、12U、12V、12W、12a、12b・・・接続点
13・・・口出線固定位置
14・・・引出線折り返し部分
22、22a、22b、U、V、W,X、Y、Z・・・引出線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に形成された継鉄部と、継鉄部から径方向に伸びた歯部と、継鉄部と歯部とで構成したスロットと、前記スロットを覆う様にスロット絶縁が挿着され、前記スロットには外部で巻線を巻回した複数の巻線輪をスロット絶縁の上から巻線挿入装置によりスロットの底部から順に挿入し、少なくとも2層以上に重なるように挿入した固定子において、
前記固定子の両端部からは複数の巻線輪が飛び出してコイルエンド部が形成され、前記コイルエンド部の周方向に隣接する巻線輪と巻線輪との隙間に、前記複数の巻線輪から引き出した引出線の巻線端部を接続した接続点を、少なくとも1カ所に埋め込んだことを特徴とする電動機。
【請求項2】
環状に形成された継鉄部と、継鉄部から径方向に伸びた歯部と、継鉄部と歯部とで構成したスロットと、前記スロットを覆う様にスロット絶縁が挿着され、前記スロットには外部で巻線を巻回した複数の巻線輪をスロット絶縁の上から巻線挿入装置によりスロットの底部から順に挿入し、少なくとも2層以上に重なるように挿入した固定子において、
前記固定子の両端部からは複数の巻線輪が飛び出してコイルエンド部が形成され、前記コイルエンド部の周方向に隣接する巻線輪と巻線輪との隙間に、前記複数の巻線輪から引き出した引出線の周方向の折り返し部を、少なくとも1カ所に位置させたことを特徴とする電動機。
【請求項3】
前記固定子の両端部から飛び出っている複数の巻線輪のコイルエンド部には、外部電源接続部へ接続するための端子を備えた口出線が所望の固定位置で固定され、前記口出線の固定位置からコイルエンド部周方向に延びる反端子側の口出線長さが、全て略同じ長さとしたことを特徴とする請求項1項または請求項2項記載の電動機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−303286(P2009−303286A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−151275(P2008−151275)
【出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【出願人】(000100872)アイチエレック株式会社 (58)
【Fターム(参考)】