説明

電圧調整装置

【課題】 接点容量が小規模化された電圧調整装置を提供する。
【解決手段】 直列巻線1,1’と、複数のタップをもつ分路巻線2,2’を中性点6を境に対称させて接続した単巻変圧器Aと、単巻変圧器の電圧値を測定するセンサ11,11’と、中性点6と分路巻線の複数のコンタクタ9,9’,10,10’の内の一つとをセンサから受けた電圧値に基づいて接続することで分路巻線の巻回数を変更する制御部12をもつ電圧調整装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、例えば、単相3線式低圧単巻変圧器と電圧センサおよび制御部を有する電圧調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、家庭用の配電系統に、太陽光発電に代表される分散電源が連係されるようになってきているが、この分散電源に起因する配電系統の電圧変動が課題になっている。特に電気事業法では、標準電圧に応じて維持すべき電圧値が定められており、これに対応するため、柱上変圧器の一次側タップを手動または自動で変更して二次側電圧を維持しなければならない。
【0003】
多数の分散電源が同一系統に接続された場合は、高い電圧になることが多く電圧を下げる方向に柱上変圧器のタップを変更することが多い。この場合のタップの切替は、手動の場合は停電を必要とし、自動の場合は高圧側タップ切替時の循環電流対策や、高圧電圧の絶縁ためタップ切替器が大きなものになる等の課題があった。
【0004】
特許文献1(特許第4224309号)は、単巻変圧器の二次側の電圧を検出して線電流(負荷電流)が流れる直列巻線に複数タップを設け、切替器でタップを変える単巻変圧器のタップを自動で変える方法を示している。この場合は、線電流(負荷電流)が流れるところでタップを切り替えるため大きな電流を切り替えることになり、タップ切替器もその線電流に耐えるものが必要であった。
【0005】
特許文献2(特許第3938903号)は、分路変圧器と誘起電圧が等しい2つの直列巻線及び励滋巻線を備えた直列変圧器から構成されている装置を示しており複雑な構造になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4224309号公報
【特許文献2】特許第3938903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1および特許文献2の従来技術が提供している装置によれば、特に接点部分が十分小型化されているとはいえないという問題がある。
【0008】
本発明は、接点容量が小規模化された電圧調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
課題を解決するための一実施形態は、
直列巻線と、複数のタップをもつ分路巻線を、中性点を境に対称させて接続した単巻変圧器と、
前記単巻変圧器の電圧値を測定するセンサと、
前記中性点と、前記分路巻線の前記複数のタップの内の一つとを、前記センサから受けた前記電圧値に基づいて接続することで、前記分路巻線の巻回数を変更する制御部と、を具備することを特徴とする電圧調整装置である。
【発明の効果】
【0010】
電圧調整装置が内蔵するトランスの二次側に分路巻線およびタップを設けることで、タップの接点容量を小規模化することにより、装置全体を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る電圧調整装置の構成の一例を示すブロック図。
【図2】本発明の他の一実施形態に係る電圧調整装置の構成を示すブロック図。
【図3】本発明の他の一実施形態に係る電圧調整装置の構成を示すブロック図。
【図4】本発明の一実施形態に係る電圧調整装置の周辺装置を含めたブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
本発明の一実施形態である電圧調整装置T1は、図1に示されるように、一例として、単相3線式単巻変圧器Aと、単相3線式単巻変圧器Aの二次側の出力電圧をそれぞれ検出する電圧センサ11,11’と、電圧センサ11,11’の検出信号を受けて、タップ接続線8、8’の動作を制御する制御部12を有している。ここで、単相3線式単巻変圧器Aにおいては、直列巻線1、1’と分路巻線2、2’が直列に接続され、直列巻線1、1’と分路巻線2、2’が接続されたところから二次側ライン線3、3’が接続される。そして、分路巻線2、2’の途中からタップ線4、4’、 タップ線5、5’が引き出されており、単相3線式単巻変圧器Aの中性点6から出された中性線7に接続されたタップ接続線8、8’の端子を、コンタクタ9、10、9’、10’を通して接続する。
【0013】
このような単相3線式単巻変圧器Aにおいて、タップ線4、4’は、コンタクタ9、9’とタップ接続線8を介して中性線7と接続されている。コンタクタ10、10’はオフの状態である。制御部12は、二次側ラインの電圧を測定する電圧センサ11、11’の出力を取り込み、電圧調整装置T1の二次端子が、接続している太陽光発電装置Sの影響で、当初設定してある電圧(例えば100V)より高い電圧(例えば108V)になった場合に、コンタクタ9、9’をオフにし、コンタクタ10、10’をオンにするよう制御する。これにより、電圧調整装置T1の二次端子の電圧は、例えば108Vから102Vのように電圧を降下させることができる。なお、制御部12は、電圧センサ11および11’をそれぞれ独立して計測しており、従って、コンタクタ9、10とコンタクタ9’、10’を同時に動かす必要はない。このように、電圧調整装置T1の制御部12は、コンタクタ10、10’を介して機能するタップ線を切り替えることにより巻回数を減らして単巻変圧器の出力電圧を下げることができる。
【0014】
すなわち、この実施形態に係る電圧調整装置T1においては、(1次巻線/2次巻線)の値をタップを切換えることで大きくすることにより、二次端子の電圧を降下させることができ、また、(1次巻線/2次巻線)の値をタップを切換えることで小さくすることにより、二次端子の電圧を上昇させることができる。
【0015】
従って、太陽光発電装置S等の分散電源の出力が小さくなり、当初設定してある電圧より低くなった場合は、制御部12は、コンタクタ10をオフにしてコンタクタ9をオンにするよう制御を行うことで、二次端子の電圧を上昇させることができる。なお、制御部12は、分散電源の出力の急激な変化を無視するように、適切な間隔で電圧センサ11、11’のデータを取り込むように設定されている。
【0016】
また、この実施形態に係る電圧調整装置T2は、図2に示すように、図1の電圧調整装置T1よりもさらに多くのタップを設けることで、設定電圧を細かく区切り、それに応じたタップに切り替えることができる。すなわち、図2に示す電圧調整装置T2が有する単相3線式単巻変圧器A’においては、少なくとも6つのタップ線と、6つのコンタクタ19,20,21、19’,20’,21’を準備することで、3段階の細かい電圧調整が可能となる。また、タップ線とコンタクタの組を増やして巻数を細分化することで、さらに細かな電圧調整が可能となることは言うまでも無い。
【0017】
次に、本発明の他の実施形態を、図3および図4を用いて説明する。すなわち、本発明の実施形態である電圧調整装置T1は、図3および図4に示すように、変電所D等からの高圧配電系統である6600V等の電力を受ける柱上変圧器Bと、この柱上変圧器Bに単巻変圧器一次側の端子a,端子b,端子cを介して接続される上述した単巻変圧器Aと、上述した制御部12と、電圧センサ11を有している。また、図3および図4は、さらに、単巻変圧器Aの二次端子に接続される太陽光発電装置Sと、同じく単巻変圧器Aの二次端子に接続される家庭用電源部Hを示している。
【0018】
ここで、柱上変圧器Bには、図3の(b)に示すように5種類のタップが設けられており、変圧比(一次巻回数/二次巻回数)を変えるべくタップを変えることができる。例えば、(1)を結線すれば6900Vの電力を受けることができ、(2)を結線すれば6750Vの電力に対応し、(3)を結線すれば6600Vの電力に対応し、(4)を結線すれば6450Vの電力に対応し、(5)を結線すれば6300Vの電力に対応することができる。
【0019】
これにより、装置全体の電圧調整幅を大きくすることが可能になる。
【0020】
ここで、太陽光発電装置Sの電圧の変化に対する制御部12の制御方法について、以下に説明する。すなわち、ユーザの設定によれば太陽光発電装置Sで発電した電力を買い取ってもらえないことがある。この場合、二次端子の電圧が必要以上に上昇してしまうため、制御部12は、タップ接続線22,22’の接続先のコンタクタ23,23’,24,24’の切り替えを行うことにより、巻数を切り替えて電圧調整を行う。
【0021】
すなわち、制御部12は、二次端子の電圧値を電圧センサ11により検出し、電圧調整装置T1の二次端子が、接続している太陽光発電装置Sの影響で、当初設定してある電圧(例えば100V)より高い電圧(例えば110V)になった場合に、コンタクタ23、23’をオフにし、コンタクタ24、24’をオンにするよう制御する。これにより、電圧調整装置T1の二次端子の電圧は、例えば110Vから103Vのように電圧を降下させることができる。このように、電圧調整装置T1の制御部12は、コンタクタ23、23’、24、24’を介して機能するタップ線を切り替えることにより巻回数を減らして単巻変圧器の出力電圧を下げるようにする。
【0022】
なお、本発明の一実施形態に係る電圧調整装置T1においては、タップを切り替えるためのトランスを、一次端子側のトランスである柱上変圧器Bではなく、二次端子側のトランスである単巻変圧器A,A’としているので、接点容量を非常に小さくすることが可能となる。すなわち、もし、柱上変圧器Bにおいてタップを切り替えるためのコンタクタを設けた場合は、流れる電流が約250A程度となるため、コンタクタのサイズが約30立方cmとなってしまう。
【0023】
しかし、本発明の一実施形態に係る電圧調整装置T1においては、タップを切り替えるためのトランスを二次端子側のトランスである単巻変圧器A,A’としているので、流れる電流が約10A程度に抑えることができるため、コンタクタのサイズも約5立方cmとすることができる。これにより、コンタクタのサイズを約30立方cmから約5立方cmへと、容量において約200分の1以下に抑えることが可能となる。すなわち、ダンボールサイズのコンタクタを手のひらサイズのコンタクタとすることが可能となる。
【0024】
なお、上記の実施形態では、使用するコンタクタは電磁式コンタクタのみならず、GTO(Gate Turnoff Thyristor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などパワー半導体で構成したコンタクタでも同じ効果が得られる。
【0025】
以上のように、本発明にかかる電圧調整装置によれば、コンタクタで直列巻線のタップを切り替えることで、安価で簡易な構造で容易に低圧電圧調整ができる低圧電圧調整装置を提供することができる。また、二次端子側のトランスにおいて、タップを切り替えているため、コンタクタをサイズを飛躍的に小型化することができる。
【0026】
以上記載した様々な実施形態は複数同時に実施することが可能であり、これらの記載により、当業者は本発明を実現することができるが、更にこれらの実施形態の様々な変形例を思いつくことが当業者によって容易であり、発明的な能力をもたなくとも様々な実施形態へと適用することが可能である。従って、本発明は、開示された原理と新規な特徴に矛盾しない広範な範囲に及ぶものであり、上述した実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0027】
T1…電圧調整装置、T2…電圧調整装置、A…単巻変圧器、A’…単巻変圧器、B…柱上変圧器、D…変電所、S…太陽光発電装置、H…家庭用電源、1…直列巻線、2…分路巻線、3…二次側ライン線、4…タップ線、5…タップ線、7…中性線、8…タップ接続線、9…コンタクタ、10…コンタクタ、11…電圧センサ、12…制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列巻線と、複数のタップをもつ分路巻線を、中性点を境に対称させて接続した単巻変圧器と、
前記単巻変圧器の電圧値を測定するセンサと、
前記中性点と、前記分路巻線の前記複数のタップの内の一つとを、前記センサから受けた前記電圧値に基づいて接続することで、前記分路巻線の巻回数を変更する制御部と、
を具備することを特徴とする電圧調整装置。
【請求項2】
変電所からの電源電圧が入力側に印加される第2変圧器を、前記単巻変圧器の入力側に接続して、更に有することを特徴とする請求項1記載の電圧調整装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記単巻変圧器側に設けられることを特徴とする請求項2記載の電圧調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−43209(P2012−43209A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184179(P2010−184179)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(391004920)東北電機製造株式会社 (7)
【Fターム(参考)】