説明

電子ユニット及びその製造方法

【課題】モールド用樹脂の量を少なくして質量の軽減を図ることができるようにした電子ユニットの製造方法を提供する。
【解決手段】ケース本体1と蓋板2とからなるケース内にユニットの構成要素3,4を収容して、ケース本体1の開口部を蓋板2で閉じた後、ケースの蓋板2を下方に向けた状態で、ケース本体1の底壁部101に設けた孔110から排気しつつ、蓋板2に設けた孔203からケース内に液状樹脂20を注入して、ケース内を液状樹脂で満たす。その後、蓋板2に設けた孔203からケース内の液状樹脂を外部に排出することによりケース内に収容された構成要素の全表面とケースの内面とを連続的に覆う樹脂モールド層を、該樹脂モールド層に接する空所をケース内に残した状態で形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口部を有するケース本体と該ケース本体の開口部を閉じる蓋板とを備えたケース内にユニットの構成要素を収容してなる電子ユニット、及び該電子ユニットを製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二輪車、ATV、自動車、船外機等には、エンジンを動作させるために必要な点火装置や燃料噴射装置、或いはバッテリの充電を制御するレギュレータ等、多くの電子ユニットが搭載される。またレクリエーション用の車両においては、エンジンに取り付けられた発電機の出力で外部の負荷を駆動することを可能にするために、発電機の交流出力を直流出力に変換するコンバータと、コンバータの直流出力を商用周波数の交流出力に変換するインバータとを備えたパワーモジュールと、インバータを制御するコントローラとを備えたパワーユニットを構成する電子ユニットが搭載されることもある。更に電動二輪車や電気自動車、あるいはハイブリッド車など、モータを駆動源として備えた車両においては、モータの駆動電流を制御するスイッチ素子を有するパワーモジュールと、該パワーモジュールのスイッチ素子を制御するコントローラとを備えた電子ユニット(モータコントローラ)が搭載される。
【0003】
車両や船外機などに搭載される電子ユニットには、雨天走行時や、水没時などにも機能が喪失しないようにするために、耐候性(主として防水性)を持たせる必要がある。電子ユニットに耐候性を持たせる場合には、例えば特許文献1に示されているように、ケース内に構成要素を収容して、ケース内に隙間なく充填した樹脂で構成要素をモールドする構造を採用するのが一般的であった。
【0004】
なお本明細書において、「パワーモジュール」とは、MOSFET、パワートランジスタ、サイリスタ、整流用ダイオードなど、比較的大きい電流が流れる素子(パワー素子)を備えて特定の機能を果たす回路の構成要素を、パッケージ内に収容した構成を有する電子部品を意味する。特定の機能を果たす回路とは、例えば、整流回路、レギュレータ回路、インバータ回路、負荷に与える電流の極性を切り換えるスイッチ回路等である。
【特許文献1】特開2005−294702号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示されているように、構成要素を収容したケース内に樹脂を隙間なく充填する構造を採用した場合には、ケース内に充填される樹脂の量が多くなり、ユニットの質量が増大するのを避けられない。特にパワーモジュールが含まれている場合には、構成要素が大形になるため、ケースの容積が大きくなり、樹脂量の増加に伴う質量の増大が問題になる。
【0006】
また、ケース内でユニットの構成要素相互間が金属接続部材により接続されている場合(例えば、電子部品から導出された接続ピンが回路基板に半田付けされている場合)、金属接続部材(接続ピン)の周囲のモールド樹脂の熱膨張率が大きいのに対して、金属接続部材の熱膨張率は小さいため、構成要素から熱が発生した際に、金属接続部材により機械的に連結されている構成要素相互間(例えば電子部品と基板との間)に介在する樹脂中に、金属接続部材を構成要素から引き抜こうとする向きの応力が発生し、これにより金属接続部材及びその接続部に大きい引っ張り力が作用する。この引っ張り力は、構成要素の温度が低下すると除去され、その温度が再上昇すると再び作用する。そのため、構成要素の冷熱サイクルが繰り返されると、金属接続部材及びその接続部(例えば接続ピン及びその半田付け部)に金属疲労が生じ、やがて金属接続部材またはその接続部が破損して、ユニットの機能が喪失することがある。このような現象は、ケース内に収容されるユニットの構成要素中に発熱量が多いパワーモジュールが含まれている場合に特に顕著に生じ、ユニットの寿命を短くする原因になる。
【0007】
本発明の目的は、ケース内で構成要素をモールドする樹脂の量を少なくして、質量の軽減を図ることができるようにした電子ユニット及びその製造方法を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、ケース内で構成要素をモールドする樹脂の量を少なくして、質量の軽減を図るとともに、構成要素の冷熱サイクルの繰り返しにより、構成要素相互間を接続している金属接続部材等の破損が生じるおそれをなくして、寿命を長くすることができるようにした電子ユニット及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ケース内にユニットの構成要素を収容してなる電子ユニットを対象とする。本発明においては、ケース内に収容された構成要素の全表面とケースの内面とを連続的に覆う樹脂モールド層が形成され、ケース内には、樹脂モールド層に接する空所が残されている。
【0010】
上記のように構成すると、樹脂がケースを満たさないため、モールド樹脂の使用量を少なくすることができ、ユニットの質量の軽減を図ることができる。またケース内に収容された構成要素相互間に樹脂が隙間なく充填されることがないため、構成要素相互間を接続している接続ピン等の金属接続部材と樹脂との間の熱膨張率の差により樹脂中に生じる応力を緩和して、金属接続部材が破損するのを防ぐことができ、ユニットの寿命を長くすることができる。
【0011】
本発明の一態様では、上記ケースが、底部に相対する位置に開口部を有するケース本体と、該ケース本体の開口部を閉じる蓋板とを備えていて、少なくともケース本体が金属からなっている。また上記ユニットの構成要素は、発熱を伴うパワー素子とパワー素子を通して流れる主電流が通電されるバスバーと制御信号を流す接続ピンとを有して、バスバー及び接続ピンが外部に導出されたパワーモジュールと、パワーモジュールを制御する制御部の構成部品を回路基板に実装してなるコントローラとを備えている。上記パワーモジュールは、ケース本体の底部内面に接した状態で配置され、コントローラは回路基板をケースの底部内面と平行させた状態で、パワーモジュールよりもケース本体の開口部寄りに位置させてパワーモジュールに隣接配置される。パワーモジュールから導出された接続ピンがコントローラの回路基板に半田付けされてパワーモジュールとコントローラとの間が接続される。樹脂モールド層は、接続ピンをも覆うように形成されて、該接続ピンを覆う樹脂モールド層の周囲にも空所が形成されている。
【0012】
上記のように、構成要素にパワーモジュールが含まれている場合には、該パワーモジュールから多くの熱が発生するため、接続ピンと樹脂との熱膨張率の差により、樹脂中に応力が生じやすい。本発明は、このような電子ユニットに適用した場合に特に顕著な効果を発揮する。
【0013】
本発明の好ましい態様では、蓋板の周縁部寄りの部分にケース本体の側壁部に沿って閉ループをなして延びる凸条がケース本体内に突出した状態で形成されて、該凸条とケース本体の開口部付近の側壁部内面との間に閉ループをなす溝が形成され、この閉ループをなす溝内に樹脂が充填されて蓋板とケース本体の開口部との接合部のシールが図られてる。
【0014】
上記のように、蓋板の周縁部寄りの部分にケース本体の側壁部に沿って閉ループをなして延びる凸条をケース本体内に突出した状態で形成することにより、該凸条とケース本体の開口部付近の側壁部内面との間に閉ループをなす溝を形成して、この溝内に樹脂を充填すると、該溝内に充填した樹脂により蓋板とケース本体の開口部との接合部のシールを図ることができるため、ケースを密封してユニットの防水性を高めることができる。
【0015】
本発明によればまた、ケース内にユニットの構成要素を収容してなる電子ユニットを製造する方法が提案される。本発明に係わる製造方法においては、ケース内にユニットの構成要素を収容した後、ケース内に液状樹脂を注入して、ケース内の構成要素を液状樹脂中に浸漬する。次いでケース内の液状樹脂を外部に排出させることにより、ケース内に収容された構成要素の全表面とケースの内面とを連続的に覆う樹脂モールド層を、樹脂モールド層に接する空所をケース内に残した状態で形成し、しかる後に樹脂モールド層を構成する樹脂を硬化させる。
【0016】
この場合、樹脂モールド層は、ケースの内面全体を覆うように形成しても良く、ケースの内面のうちユニットの構成要素を樹脂中に浸漬させた際に該樹脂に接する部分のみを覆うように形成しても良い。
【0017】
上記のように、ユニットの構成要素が収容されたケース内に液状樹脂を注入して、ケース内の構成要素を液状樹脂中に浸漬した後、該ケース内の液状樹脂を外部に排出させると、ケース内には、ケース内に収容された構成要素の全表面とケースの内面とを連続的に覆う樹脂モールド層を構成する樹脂のみが構成要素の表面及びケースの内面に付着した状態で残留し、余剰の樹脂はケース外に排出される。従って、ケース内に収容された構成要素の全表面とケースの内面とを連続的に覆う樹脂モールド層が形成され、樹脂モールド層に接する空所がケース内に残された電子ユニットを簡単に得ることができる。
【0018】
ユニットの構成要素の表面とともにケースの内面全体を覆うように樹脂モールド層を形成するには、例えば、ケース内を満たすように液状樹脂をケース内に注入した後、余剰の液状樹脂をケース内から排出して回収するようにすればよい。
【0019】
ケース内から回収した樹脂は、未硬化の状態にあって、その流動性が維持されている状態にあれば、混入した不純物を取り除くろ過処理などを行なうことにより、再使用することができる。このように、回収した樹脂を再使用するようにすると、コストの低減を図ることができる。
【0020】
本発明に係わる製造方法の好ましい態様では、ケースとして、開口部を有するケース本体と該ケース本体の開口部を閉じる蓋板とを備えたものを用いる。そして、ケース本体内にユニットの構成要素を収容して該ケース本体の開口部を蓋板で閉じた後、蓋板またはケース本体に設けた孔からケース内に液状樹脂を流入させて、ケース内を液状樹脂で満たし、次いで該ケース内の液状樹脂を外部に排出させることによりケース内に収容された構成要素の全表面とケースの内面とを連続的に覆う樹脂モールド層を、樹脂モールド層に接する空所を前記ケース内に残した状態で形成し、しかる後に樹脂モールド層を構成する樹脂を硬化させる。
【0021】
上記のように、ユニットの構成要素を収容したケース本体の開口部を蓋板により閉じた後、蓋板またはケース本体に設けた孔からケース内に液状樹脂を流入させて、ケース内を液状樹脂で満たした後、該ケース内の液状樹脂を外部に排出させると、ケース内には、ケース内に収容された構成要素の全表面とケースの内面とを連続的に覆う樹脂モールド層を構成する樹脂のみが残留し、余剰の樹脂はケース外に排出される。従って、ケース内に収容された構成要素の全表面とケースの内面とを連続的に覆う樹脂モールド層が形成され、樹脂モールド層に接する空所がケース内に残された電子ユニットを簡単に得ることができる。
【0022】
本発明の好ましい態様では、ケースの蓋板及び該蓋板と対向するケース本体の底壁部をそれぞれ貫通させて第1の孔及び第2の孔を形成しておき、ケース本体内にユニットの構成要素を収容して該ケース本体の開口部を蓋板で閉じた後、第1の孔及び第2の孔の一方を上方に向け、他方を下方に向けた状態で配置して、上方に向けた孔から排気しつつ下方に向けた孔からケース内に液状樹脂を流入させて、ケース内を液状樹脂で満たす。その後、下方に向けた孔から該ケース内の液状樹脂を外部に排出させることによりケース内に収容された構成要素の全表面とケースの内面とを連続的に覆う樹脂モールド層を、該樹脂モールド層に接する空所をケース内に残した状態で形成し、しかる後に樹脂モールド層を構成する樹脂を硬化させる。
【0023】
上記のように、下方に向けた孔からケース内に液状樹脂を流入させると、ケース内で樹脂の液面レベルを徐々に上昇させて、ケース内の構成要素の全表面及びケースの内面に樹脂を満遍なく付着させることができ、ケース内の構成要素の全表面及びケースの内面を樹脂で被覆することができる。またケース内を液状樹脂で満たした後、下方に配置した孔から該ケース内の液状樹脂を外部に排出させると、ケース内に収容された構成要素の全表面とケースの内面とを連続的に覆う樹脂モールド層を構成する樹脂以外の余分な樹脂をケース外に排出することができる。ケース外に排出した樹脂は回収して再使用することが可能である。また上記のように、下方に向けた孔からケース内に液状樹脂を流入させるようにすると、ケース内に樹脂を注入する工程から樹脂を排出する工程までを、ケースの姿勢を変化させることなく行うことができるため、樹脂モールド層を形成する工程の簡素化を図ることができる。
【0024】
本発明の好ましい態様では、ケースの蓋板及び該蓋板と対向するケース本体の底壁部をそれぞれ貫通させて第1の孔及び第2の孔を形成しておき、ケース本体内にユニットの構成要素を収容して該ケース本体の開口部を蓋板で閉じた後、第1の孔及び第2の孔の一方を上方に向け、他方を下方に向けた状態で配置して、下方に向けた孔を閉じた状態で、上方に向けた孔からケース内に液状樹脂を流入させて、ケース内を液状樹脂で満たし、次いで下方に向けた孔を開いてケース内の液状樹脂を外部に排出させることによりケース内に収容された構成要素の全表面とケースの内面とを連続的に覆う樹脂モールド層を、該樹脂モールド層に接する空所を前記ケース内に残した状態で形成し、しかる後に樹脂モールド層を構成する樹脂を硬化させる。
【0025】
上記のように、蓋板に設けられた第1の孔を下方に向けた状態で配置して、該第1の孔を通してケース内への樹脂の注入とケース内からの樹脂の排出とを行なわせるようにすると、最終的に蓋とケース本体の開口部との合わせ目を覆う樹脂モールド部を形成することができるため、蓋とケース本体の開口部との合わせ目のシールを図ることができる。
【0026】
本発明の他の好ましい態様では、ケースの蓋板及び該蓋板と対向するケース本体の底壁部をそれぞれ貫通させて第1の孔及び第2の孔を形成しておき、ケース本体内にユニットの構成要素を収容して該ケース本体の開口部を蓋板で閉じた後、第1の孔及び第2の孔の一方から排気しつつ他方からケース内に液状樹脂を注入する。その後、第1の孔及び第2の孔を閉じてケースを回転及び(または)反転させることにより、ケース内の構成要素に満遍なく液状樹脂を触れさせる。次いで、第1の孔及び第2の孔を開いて、第1の孔または第2の孔から構成要素の表面に付着しなかった余剰の液状樹脂を排出させることにより、ケース内に収容された構成要素の全表面とケースの内面とを連続的に覆う樹脂モールド層を、該樹脂モールド層に接する空所を前記ケース内に残した状態で形成し、しかる後に樹脂モールド層を構成する樹脂を硬化させる。
【0027】
上記の方法によれば、ケース内に注入する樹脂の量を少なくすることができ、ケース内から回収する樹脂の量を少なくすることができる。従って、ケース内から回収した樹脂を再使用する場合に、再使用する樹脂の量を少なくすることができ、樹脂を再使用する際の浄化処理を簡単にすることができる。
【0028】
本発明の他の好ましい態様では、ケース本体内にユニットの構成要素を収容し、ケース内の構成要素の表面及びケースの内面を連続的に覆う樹脂モールド層を形成するために必要な量の液状樹脂をケース本体内に注入した後、ケース本体の開口部を蓋板で閉じた状態でケースを回転及び(または)反転させることにより、ケース内の構成要素に満遍なく液状樹脂を触れさせて、ケース内に収容された構成要素の全表面とケースの内面とを連続的に覆う樹脂モールド層を、該樹脂モールド層に接する空所をケース内に残した状態で形成し、しかる後に樹脂モールド層を構成する樹脂を硬化させる。
【0029】
上記の方法によれば、ケース内から樹脂を排出する工程を省略することができるため、製造能率を向上させることができる。
【0030】
本発明の他の好ましい態様では、ケースの蓋板及び該蓋板と対向する前記ケース本体の底壁部をそれぞれ貫通させて第1の孔及び第2の孔を形成するとともに、蓋板の周縁部寄りの部分にケース本体の側壁部に沿って閉ループをなして延びる凸条をケース本体内に突出させた状態で形成して、該凸条とケース本体の開口部付近の側壁部内面との間に閉ループをなす溝を形成しておき、ケース本体内にユニットの構成要素を収容して該ケース本体の開口部を蓋板で閉じた後、第1の孔または第2の孔からケース内に液状樹脂を注入してケース内を液状樹脂で満たす。次いで、第1の孔を下方に向けて配置して、該第1の孔から該ケース内の液状樹脂を外部に排出させることによりケース内に収容された構成要素の全表面とケースの内面とを連続的に覆う樹脂モールド層と、溝内を満たす樹脂層とを、該樹脂モールド層に接する空所をケース内に残した状態で形成し、しかる後に樹脂モールド層を構成する樹脂を硬化させる。
【0031】
上記の方法によると、ケース本体の開口部付近の側壁部内面に沿って形成された閉ループ状の溝内に樹脂を充填することができるため、蓋板とケース本体の開口部との合わせ目を樹脂により確実にシールすることができ、ユニットの防水性を向上させることができる。
【0032】
上記の各方法において、ケース内への液状樹脂の注入は、ケース内を真空引きしながら行なうのが好ましい。
【0033】
上記のように、ケース内を真空引きしながら樹脂の注入を行なうと、樹脂モールド層内に気泡が生じるのを防ぐことができるため、気泡の存在により、樹脂モールド層の絶縁性能が低下するのを防ぐことができる。
【0034】
本発明の他の好ましい態様では、ケース本体内にユニットの構成要素を収容した後、ケース本体の開口部を上方に向けた状態で該開口部からケース本体内に液状樹脂を注入して該ケース本体内に収容した構成要素を液状樹脂中に浸漬し、次いでケース本体の底壁部に設けた孔からケース本体内の液状樹脂を外部に排出させることによりケース本体内に収容された構成要素の全表面とケース本体の内面とを連続的に覆う樹脂モールド層を、該樹脂モールド層に接する空所をケース内に残した状態で形成する。樹脂を硬化させた後、または硬化させる前にケース本体を蓋板で閉じる。
【発明の効果】
【0035】
以上のように、本発明によれば、樹脂がケース内を満たさないように樹脂モールド層を形成するため、モールド樹脂の使用量を少なくすることができ、ユニットの質量の軽減を図ることができる。
【0036】
また本発明によれば、ケース内に収容された構成要素相互間に樹脂が隙間なく充填されることがないため、構成要素相互間を接続している接続ピン等の金属接続部材と樹脂モールド部を構成する樹脂との間の熱膨張率の差により樹脂中に生じる応力を緩和して、金属接続部材が破損するのを防ぐことができ、ユニットの寿命を長くすることができる。
【0037】
本発明において、蓋板の周縁部寄りの部分にケース本体の側壁部に沿って閉ループをなして延びる凸条をケース本体内に突出した状態で形成することにより、該凸条とケース本体の開口部付近の側壁部内面との間に閉ループをなす溝を形成して、この溝内に樹脂を充填するようにした場合には、該溝内に充填した樹脂により蓋板とケース本体の開口部との合わせ目のシールを図ることができるため、ユニットの防水性を高めることができる。
【0038】
本発明に係わる製造方法において、ユニットの構成要素が収容されたケース内に液状樹脂を注入して、ケース内の構成要素を液状樹脂中に浸漬した後、該ケース内の液状樹脂を外部に排出させるようにした場合には、ケース内に収容された構成要素の全表面とケースの内面とを連続的に覆う樹脂モールド層が形成され、樹脂モールド層に接する空所がケース内に残された電子ユニットを簡単に得ることができる。
【0039】
本発明に係わる製造方法において、ケースとして、開口部を有するケース本体と該ケース本体の開口部を閉じる蓋板とを備えたものを用い、ユニットの構成要素を収容したケース本体の開口部を蓋板により閉じた後、蓋板またはケース本体に設けた孔からケース内に液状樹脂を流入させて、ケース内を液状樹脂で満たした後、該ケース内の液状樹脂を外部に排出させるようにした場合には、ケース内に収容された構成要素の全表面とケースの内面とを連続的に覆う樹脂モールド層を構成する樹脂のみがケース内に残留し、余分な樹脂はケース外に排出されるため、ケース内に収容された構成要素の全表面とケースの内面とを連続的に覆う樹脂モールド層が形成され、樹脂モールド層に接する空所がケース内に残された電子ユニットを簡単に得ることができる。
【0040】
本発明に係わる製造方法において、ケースの蓋板及び該蓋板と対向するケース本体の底壁部をそれぞれ貫通させて第1の孔及び第2の孔を形成するとともに、蓋板の内面のケース本体寄りの位置に該ケース本体の側壁部に沿って閉ループをなすように延びる凸条を形成して、該凸条とケース本体の開口部付近の側壁部内面との間に閉ループをなす溝を形成しておき、蓋板に設けられた第1の孔を下方に向けた状態で、ケース内への樹脂の注入と排出とを行なわせるようにした場合には、ケース本体の開口部付近の側壁部内面に沿って形成された閉ループ状の溝内に樹脂を充填することができるため、蓋板とケース本体の開口部との合わせ目を樹脂により確実にシールすることができ、ユニットの防水性を向上させることができる。
【0041】
本発明に係わる製造方法において、ケース本体内にユニットの構成要素を収容し、ケース内の構成要素の表面及びケースの内面を連続的に覆う樹脂モールド層を形成するために必要な量の液状樹脂をケース本体内に注入した後、ケース本体の開口部を蓋板で閉じた状態でケースを回転及び(または)反転させることにより、ケース内の構成要素に満遍なく液状樹脂を触れさせることにより、ケース内に収容された構成要素の全表面とケースの内面とを連続的に覆う樹脂モールド層を形成するようにした場合には、ケース内から樹脂を排出する工程を省略することができるため、製造能率を向上させることができる。
【0042】
本発明に係わる製造方法において、蓋板の周縁部寄りの部分にケース本体の側壁部に沿って閉ループをなして延びる凸条をケース本体内に突出した状態で形成して、該凸条とケース本体の開口部付近の側壁部内面との間に閉ループをなす溝を形成しておき、ケース本体内にユニットの構成要素を収容してケース本体の開口部を蓋板で閉じ、蓋板に設けた第1の孔またはケース本体の底壁部に設けた第2の孔からケース内に液状樹脂を注入してケース内を液状樹脂で満たした後、第1の孔を下方に向けた状態で、該第1の孔からケース内の液状樹脂を外部に排出させることによりケース内に収容された構成要素の全表面とケースの内面とを連続的に覆う樹脂モールド層と溝内を満たす樹脂層とを形成するようにした場合には、ケース本体の開口部付近の側壁部内面に沿って形成された閉ループ状の溝内に樹脂を充填することができるため、蓋板とケース本体の開口部との合わせ目を樹脂により確実にシールすることができ、ユニットの防水性を向上させることができる。
【0043】
本発明において、ケース内を真空引きしながら樹脂の注入を行なうようにした場合には、樹脂モールド層内に気泡が生じるのを防ぐことができるため、気泡の存在により、樹脂モールド層の絶縁性能が低下するのを防ぐことができる。
【0044】
本発明において、ケース本体内にユニットの構成要素を収容した後、ケース本体の開口部を上方に向けた状態で該開口部からケース本体内に液状樹脂を注入して該ケース本体内に収容した構成要素を液状樹脂中に浸漬し、次いでケース本体の底壁部に設けた孔からケース本体内の液状樹脂を外部に排出させることによりケース本体内に収容された構成要素の全表面とケース本体の内面とを連続的に覆う樹脂モールド層を、該樹脂モールド層に接する空所をケース内に残した状態で形成するようにした場合には、蓋に孔を設ける必要がないため、蓋に設けた孔を封止する工程を省略することができる。また蓋を開いた状態で樹脂を硬化させることができるため、モールド樹脂層を形成する樹脂として、熱硬化性樹脂だけでなく、光硬化型や電子線硬化型の樹脂を用いることができる。
【0045】
本発明に係わる製造方法によれば、ユニットの構成要素がいかなる場合でも、モールド樹脂の量を節約して質量の軽減を図ることができ、また構成要素相互間を接続している接続ピン等の金属接続部材と樹脂との間の熱膨張率の差により樹脂中に生じる応力を緩和して、金属接続部材が破損するのを防ぐことができる。特にユニットの構成要素に、発熱を伴うパワー素子と該パワー素子を通して流れる主電流が通電されるバスバーと制御信号を流す接続ピンとを有して、バスバー及び接続ピンが外部に導出されたパワーモジュールと、パワーモジュールを制御する制御部の構成部品を回路基板に実装してなるコントローラとが含まれていて、パワーモジュールがケース本体の底部内面に接した状態で配置され、コントローラが回路基板をケースの底部内面と平行させた状態で、パワーモジュールよりもケース本体の開口部寄りに位置させてパワーモジュールに隣接配置されて、パワーモジュールから導出された接続ピンがコントローラの回路基板に半田付けされてパワーモジュールとコントローラとの間が接続される場合に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下図面を参照して本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1ないし図7は本発明を電動スタータ等の電動車両の駆動源としてのモータを駆動・制御するモータコントローラを構成する電子ユニットに本発明を適用した第1の実施形態を示したもので、図1は同実施形態に係わる電子ユニットの構造を示す分解斜視図、図2は組み立てたユニットの樹脂注入前の状態を示す縦断面図、図3はケース内に樹脂を注入する際のユニットの状態を示した縦断面図、図4はケース内に樹脂を注入している途中の状態を示した縦断面図、図5は樹脂の注入を完了した状態を示した縦断面図、図6はケース内から樹脂を排出して構成要素の表面及びケースの内面を被覆する樹脂モールド層を形成した状態を示した縦断面図、図7はケースの蓋板に設けられた孔を封止した状態を示した縦断面図である。
【0047】
図1及び図2において、1は長方形の底壁部101と、底壁部101の四辺からそれぞれ立ち上がった側壁部102ないし105とを有して、底壁部101と反対側に開口した箱形のケース本体、2はケース本体1の開口部を閉じる矩形状の蓋板である。この例では、ケース本体1と蓋板2とにより、電子ユニットの構成要素を収容するケースが構成されている。3はパワーモジュール、4はパワーモジュール3を制御する制御部の構成部品を回路基板に実装してなるコントローラである。また5はバッテリの正極端子に図示しない電気コードを通して接続されるプラス側電源接続用コネクタ、6はバッテリの負極端子に図示しない電気コードを通して接続されるマイナス側電源接続用コネクタ、7は図示しない補機に電力を供給するために用いられる補機用レセプタクル、8は各種のセンサにつながる多数の信号線の端末部に取り付けられたコネクタが接続されるセンサ信号入力用コネクタ、9は車両の駆動源である図示しないモータの電機子コイルにつながるプラグが接続されるレセプタクルである。
【0048】
ケース本体1の底壁部101には、底壁部101の長手方向のほぼ半部に亘る2つの膨出部101a,101bが底壁部101の短辺方向に並べて形成され、これらの膨出部内に形成された凹部101a1、101b1がケース本体1の内側に開口している。凹部101a1は、比較的浅く形成されていて、本実施形態ではこの凹部101a1がパワーモジュール3に設けられたコンデンサ301を収容するために用いられる。また凹部101b1は凹部101a1よりも深く形成されていて、本実施形態では、この凹部101b1がパワーモジュール3に設けられたリレー302を収容するために用いられる。
【0049】
底壁部101の膨出部101a、101bが設けられていない他のほぼ半部の外面には、底壁部101の長手方向に一定の間隔をもって並ぶ多数の放熱フィン101c,101c,…が突設されている。外側に放熱フィン101c,101c,…が形成された部分の底壁部101の内面は平坦な部品突き当て面101Aとなっている。
【0050】
ケース本体の底壁部101の一方の長辺に沿う側壁部102には、バッテリの正極端子に接続されるプラス側電源接続用コネクタ5を取り付けるための切り欠き部102aと,バッテリの負極端子に接続されるマイナス側電源接続用コネクタ6を取り付けるための切り欠き部102bとが形成され、底壁部101の他方の長辺に沿う側壁部103には、補機用レセプタクル7を取り付けるための切り欠き部103aと、センサ信号入力用コネクタ8を取り付けるための切り欠き部103bとが形成されている。また底壁部101の一方の短辺から立ち上がった側壁部104には、図示しないモータの電機子コイルにつながるプラグが接続されるレセプタクル9を取り付けるための切り欠き部104aが形成されている。本実施形態では、モータが三相ブラシレスDCモータであるとする。
【0051】
ケース本体1の四隅の内側にはそれぞれケース本体の高さ方向のほぼ全体に亘る高さ寸法を有するボス部106が形成され、これらのボス部に、蓋板2をケース本体1に締結するネジ10がねじ込まれるねじ穴106aが形成されている。ケース本体1の四隅の底壁部101寄りの部分には、高さが低いボス部107が形成され、これらのボス部には、コントローラ4とパワーモジュール3とをケース本体1に締結するためのネジ11がねじ込まれるネジ穴107aが形成されている。ケース本体1の側壁部104の開口端寄りの部分の外側にはユニットを所定の取り付け箇所に固定する際に用いられる一つのブラケット108が設けられ、側壁部105の開口端寄りの部分の外側にはユニットを所定の取り付け箇所に固定する際に用いられる2つのブラケット109,109がケース本体の幅方向に間隔を隔てて設けられている。
【0052】
蓋板2はケース本体1の開口部を閉じる長方形の金属板からなっていて、その四隅には、取り付け孔201が形成されている。蓋板2のほぼ中央部には、該蓋板を貫通した第1の孔203が設けられている。本実施形態では、ケース本体1の底壁部の部品突き当て面101Aが設けられた部分を貫通させて、第2の孔110が形成されている。本実施形態では、後述のように、ケース内に樹脂を注入する際に、第1の孔203が樹脂注入口として用いられ、第2の孔110は通気孔として用いられるため、第1の孔203の内径が、第2の孔110の内径よりも大きく設定されている。
【0053】
パワーモジュール3は、樹脂の成形品からなる板状の基板300を備えている。基板300はケース本体1の内側に挿入し得る長方形状の形状を呈するように形成され、この基板300の裏面に、複数のコンデンサ301と、過電流が流れたときに電源を遮断するリレー302と、FETモジュール303とが取り付けられている。
【0054】
FETモジュール303は、三相ブラシレスモータを駆動する三相ブリッジ形のインバータ回路を構成するMOSFETをパッケージ内に収容して構成したモジュールである。3相ブラシレスモータを駆動するために用いられるインバータ回路は、各辺がMOSFETにより構成された三相ブリッジ回路からなる周知のものである。FETモジュール3の基板300と反対側の面は、FETの放熱板が熱的に結合された放熱面となっている。
【0055】
FETモジュール303内に構成されたインバータ回路のプラス側及びマイナス側の直流側端子は、基板300により一部がモールドされて該基板に保持された2本のバスバーを通して基板300に固定されたコネクタ5及び6に接続されている。またインバータ回路の三相の交流側端子は、基板300により一部がモールドされて該基板に保持された3本のバスバーを通してレセプタクル9の三相の端子に接続されている。レセプタクル9に接続される図示しないプラグと該プラグに接続された電気コードとを通して、インバータ回路の三相の交流側端子が図示しないモータの三相の電機子コイルに接続される。
【0056】
コンデンサ301は、インバータ回路の直流側端子間に接続されている。またインバータ回路を構成するMOSFETに駆動信号を与えるためにFETモジュール303から導出された多数の接続ピン(信号線)304やその他の接続導体310が基板300を貫通して該基板の表面側に導出されている。
【0057】
パワーモジュール3の基板300の短辺部には、レセプタクル9を嵌合させて位置決めする位置決め部306が設けられている。レセプタクル9は、位置決め部306に嵌合されて位置決めされるとともに、該レセプタクルのハウジングに嵌合されたコの字形の固定具305が位置決め部300aに設けられた係止部に係止されることにより、基板300に固定される。同様にして、バッテリの正極端子及び負極端子が接続されるプラス側電源接続用コネクタ5及びマイナス側電源接続用コネクタ6が基板300に取り付けられている。基板300にはまた、ケース内への樹脂の充填を容易にするための窓部307が形成されている。センサ信号入力用コネクタ8は、ブラシレスモータのロータの位置を検出するホールセンサの出力信号などのモータの制御に必要な信号をコントローラ4に与えるために用いられる。また基板300の四隅を貫通させて、ケース本体1の四隅に設けられたネジ穴107aに整合し得る取り付け孔308が設けられている。
【0058】
上記のパワーモジュール3は、基板300の裏面(コンデンサ301と、リレー302と、FETモジュール303とが取り付けられた面)をケース本体1の底面側に向けて該ケース本体内に収容され、FETモジュール306の放熱面がケース本体1の部品突き当て面101Aに突き当てられて、FETモジュール306の放熱面がケース本体1の底壁部101に熱的に結合されるとともに、コンデンサ301及びリレー302がそれぞれ凹部101a1内及び101b1内に挿入される。またプラス側電源接続用コネクタ5及びマイナス側電源接続用コネクタ6がケース本体の側壁部102の切り欠き102a及び102bに嵌合され、レセプタクル9が側壁部104に設けられた切り欠き部104aに嵌合される。
【0059】
コントローラ4は、パワーモジュール3を制御する制御部の構成部品を回路基板400に実装したものである。回路基板400は絶縁基板に回路パターンを形成したもので、回路基板400の表面に制御部を構成するマイクロプロセッサなどの電子部品401が取り付けられている。回路基板400の裏面側にセンサ信号入力用コネクタ8が配置されて該コネクタ8から導出されたリード端子801が回路基板400の回路パターンに半田付けされている。また回路基板400の四隅には、パワーモジュール3の基板300に設けられた取り付け孔308に整合し得る取り付け孔403が形成されている。回路基板400の四隅にはまた、ケース本体の四隅に設けられたボス部106から基板を逃がすための切り欠き部410が形成されている。
【0060】
コントローラ4は、回路基板400をケース本体1の底部内面と平行させた状態で、パワーモジュール3よりもケース本体1の開口部寄りに位置させて、パワーモジュール3に隣接配置され、パワーモジュール3の基板を貫通した多数の接続ピン304が回路基板400に設けられたスルーホール404に挿入されて、回路基板4の回路パターンに半田付けされる。またパワーモジュール3から引き出された他の接続導体310も、回路基板4の回路パターンに半田付けされる。コネクタ8は、ケース本体1の側壁部103に設けられた切り欠き部103b内に嵌合されて位置決めされ、コの字形の取り付け金具405がコネクタ8に外側から嵌合されて、該取り付け金具405により、切り欠き部103bの開口端縁とコネクタ8との間の隙間が塞がれる。また補機用レセプタクル7がケース本体1の側壁部103の切り欠き部103aに嵌合されて取り付けられる。補機用レセプタクル7は、バッテリの正極端子及び負極端子が接続されるプラス側電源接続用コネクタ5及びマイナス側電源接続用コネクタ6に図示しないスイッチを通して接続されている。このようにしてユニットを組立てた状態を図2に示してある。
【0061】
ケース本体に設けられた各切り欠き部とコネクタやレセプタクルとの嵌合部は、嵌合をきつくしたり、接着したり、パッキンを介在させるなどの手段により、樹脂液に対する液密の保持が図られ、ケース本体内に液状樹脂が注入された際に各切り欠き部とコネクタやレセプタクルとの嵌合部から樹脂が漏れないようになっている。
【0062】
上記のように、ケース本体1内にパワーモジュール3及びコントローラ4を収容した後、ネジ11をコントローラ4の回路基板400の四隅の取り付け孔403とパワーモジュール3の基板300の四隅の取り付け孔308とを通してケース本体1のネジ穴107aにねじ込むことにより、パワーモジュール3とコントローラ4とをケース本体1に締結する。次いで蓋板2をケース本体1の開口端の上に配置して、ネジ10を蓋板2の四隅の取り付け孔201を通してケース本体1のネジ孔106aにねじ込むことにより、蓋板2をケース本体1に締結して、ケース本体の開口部を蓋板2により閉じる。このようにして蓋板2をケース本体1に締結した状態で、ケース本体1の開口部が樹脂液に対して液密に閉じられるように、ケース本体1の開口端と蓋板2との突き合わせ部が構成されている。
【0063】
本発明に係わる電子ユニットにおいては、ケース内に収容された構成要素の全表面とケースの内面とを連続的に覆う樹脂モールド層が形成され、ケース内には、樹脂モールド層に接する空所が残される。
【0064】
本発明に係わる電子ユニットの製造方法においては、ケース本体1内にユニットの構成要素(本実施形態では、パワーモジュール3及びコントローラ4)を収容して,ケース本体1の開口部を蓋板2で閉じた後、蓋板2またはケース本体1に設けた孔からケース内に液状樹脂を流入させて、ケース内を液状樹脂で満たした後、該ケース内の液状樹脂を外部に排出することにより、ケース内に収容された構成要素の全表面とケースの内面とを連続的に覆う樹脂モールド層を、樹脂モールド層に接する空所をケース内に残した状態で形成し、しかる後にケース内の樹脂を硬化させる。
【0065】
本実施形態においては、前述のように、ケースの蓋板2及び該蓋板と対向するケース本体1の底壁部101をそれぞれ貫通させて第1の孔203及び第2の孔110を形成しておいて、ケース本体1内にユニットの構成要素を収容して該ケース本体の開口部を蓋板2で閉じた後、第1の孔203及び第2の孔110の一方を上方に配置し、他方を下方に配置した状態にして、上方に配置した孔から排気しつつ下方に配置した孔からケース内に液状樹脂を流入させて、ケース内を液状樹脂で満たした後、下方に配置した孔から該ケース内の液状樹脂を外部に排出させることによりケース内に収容された構成要素の全表面とケースの内面とを連続的に覆う樹脂モールド層を、該樹脂モールド層に接する空所をケース内に残した状態で形成し、その後樹脂を硬化させる。
【0066】
図示の例では、ケース本体1内にユニットの構成要素を収容して該ケース本体1の開口部を蓋板2で閉じた後、図3に示すように、第2の孔110を上方に向け(開口させ)、第1の孔203を下方に向けた状態にする。この状態で、樹脂供給源に接続された樹脂供給パイプ(図示せず。)を下方に向けた第1の孔203に接続して、上方に向けた第2の孔110から排気しつつ、図4に示すように、第1の孔203からケース内に液状樹脂20を徐々に流入させる。図5に示すように、ケース内を液状樹脂で満たし、第2の孔110が樹脂で満たされたのを確認した後、下方に向けた第1の孔203からケース内の液状樹脂を外部に排出させて回収することにより、図6に示したように、ケース内に収容された構成要素の全表面とケースの内面とを連続的に覆う樹脂モールド層21を、該樹脂モールド層21に接する空所22をケース内に残した状態で形成する。ケース内から樹脂を排出した後に形成される樹脂モールド層21の厚みが必要な厚み(ユニットの構成要素の絶縁と、水に対する保護とを図るために必要な厚み)になるように、液状樹脂の粘度を設定しておく。ケース内から回収した液状樹脂は、未硬化の状態にあって、その粘度(流動性)が維持されている状態にあれば、混入した不純物を取り除くためのろ過処理などを行なうことにより、再使用することができる。
【0067】
上記のようにして、樹脂モールド層21を形成した後、樹脂モールド層21を構成する樹脂を硬化させる。この場合、樹脂モールド層21を構成する樹脂としては、熱硬化性樹脂を用い、ユニットを炉に入れて加熱することにより樹脂を硬化させる。
【0068】
上記のようにして樹脂モールド層を構成する樹脂を硬化させた後、図7に示すように、第1の孔203の開口部周辺に通気性を有するシート23を接着することにより、第1の孔203を液密に塞ぎ、第2の孔110を栓などの封止材24により液密に塞いでユニットを完成する。
【0069】
上記のように、ユニットの構成要素を収容したケース本体1の開口部を蓋板2により閉じ、ケース内に液状樹脂を流入させて、ケース内を液状樹脂で満たした後、該ケース内の液状樹脂を外部に排出させると、ケース内には、ケース内に収容された構成要素の全表面とケースの内面とを連続的に覆う樹脂モールド層を構成する樹脂のみが残留し、余剰の樹脂はケース外に排出される。従って、ケース内に収容された構成要素の全表面とケースの内面とを連続的に覆う樹脂モールド層21が形成され、樹脂モールド層21に接する空所22がケース内に残された電子ユニットを簡単に得ることができる。
【0070】
上記の実施形態のユニットにおいて、図13に示したように、ケース内がモールド樹脂20で満たされたままの状態で樹脂が硬化させられたとする。ケース内でユニットの構成要素相互間が金属接続部材により接続されている場合、例えば、上記の実施形態に示したように、パワーモジュールの電子部品から導出された接続ピン304や接続導体310等の金属接続部材が回路基板(回路基板)400に半田付けされている場合には、金属接続部材(304,310)の周囲のモールド樹脂の熱膨張率が大きいのに対して、金属接続部材の熱膨張率は小さいため、ケース内が樹脂で満たされていると、構成要素から熱が発生した際に、金属接続部材(304,310)により機械的に連結されている構成要素相互間(図示の例では、パワーモジュール3の基板300と回路基板400との間)に介在する樹脂中に、金属接続部材を構成要素から引き抜こうとする向きの応力Pが発生し、これにより金属接続部材及びその接続部(半田付け部)に大きい引っ張り力Fが作用する。この引っ張り力は、構成要素の温度が低下すると除去され、その温度が再上昇すると再び作用する。そのため、構成要素の冷熱サイクルが繰り返されると、金属接続部材及びその接続部に金属疲労が生じ、やがて金属接続部材またはその接続部が破損して、ユニットの機能が喪失することがある。このような現象は、ケース内に収容されるユニットの構成要素中に発熱量が多いパワーモジュールが含まれている場合に特に顕著に生じ、ユニットの寿命を短くする原因になる。
【0071】
これに対し、本発明による場合には、ケース内に収容された構成要素相互間に樹脂が隙間なく充填されることがないため、構成要素相互間を接続している接続ピン等の金属接続部材と樹脂との間の熱膨張率の差により樹脂中に生じる応力を緩和して、金属接続部材が破損するのを防ぐことができ、ユニットの寿命を長くすることができる。
【0072】
上記の実施形態のように、蓋板を下側に配置した状態で、該蓋板に設けた孔からケース内の樹脂を排出させるようにすると、蓋板とケース本体の開口部との突き合わせ部を確実に覆うように樹脂モールド層を形成することができるため、蓋板とケース本体の開口部との突き合わせ部のシールを確実に図って、ユニットの防水性を高めることができる。
【0073】
次に図8ないし図12を参照して、本発明の第2の実施形態を説明する。本実施形態では、ケースの蓋板2及び該蓋板と対向するケース本体1の底壁部101をそれぞれ貫通させて第1の孔203及び第2の孔110を形成するとともに、図8及び図9に示したように、蓋板2の周縁部寄りの位置(ケース本体1の側壁部寄りの位置)に該ケース本体の側壁部に沿って閉ループをなすように延びる凸条210を形成して、該凸条210とケース本体1の開口部付近の側壁部内面との間に閉ループをなす溝Gを形成しておく。ユニットのその他の部分の構成は、図1ないし図7に示した第1の実施形態と同様である。
【0074】
ケース本体1内にユニットの構成要素を収容して該ケース本体の開口部を蓋板2で閉じた後、図9に示すように、第1の孔203を下方に向け、第2の孔110を上方に向けた状態で、第1の孔203からケース内に液状樹脂20を注入して、図10に示すようにケース内を液状樹脂20で満たす。次いで、下方に向けた第1の孔203からケース内の液状樹脂20を外部に排出させることにより、図11に示すように、ケース内に収容された構成要素の全表面と、ケースの内面とを連続的に覆う樹脂モールド層21を、該樹脂モールド層21に接する空所22をケース内に残した状態で形成する。このとき、蓋板の凸条210とケース本体の開口部付近の側壁部内面との間に形成された閉ループ状の溝G内を充填する樹脂21Aはそのままの状態に残される。その後、本実施形態では、図12に示すように、通気性を有する防水栓25で第1の孔203を塞ぎ、第2の孔110を栓などの封止材24により液密に塞いでユニットを完成する。
【0075】
上記のように、蓋板2の内面のケース本体寄りの位置に該ケース本体の側壁部に沿って延びる凸条210を形成することにより、該凸条とケース本体1の開口部付近の側壁部内面との間に閉ループをなす溝Gを形成して、この溝内に充填された樹脂21Aがそのままに残されるようにしておくと、該溝内に充填された樹脂21Aにより蓋板2とケース本体の開口部との接合部のシールを図ることができるため、ケースの密封性を高めてユニットの防水性を高めることができる。
【0076】
上記の各実施形態では、蓋板2を下方に向けた状態で、ケース内への樹脂の注入とケース内からの樹脂の回収とを行なうようにしたが、本発明に係わる製造方法においては、ケース内にユニットの構成要素を収容した後、ケース内に液状樹脂を注入して、ケース内の構成要素を液状樹脂中に浸漬し、次いでケース内の液状樹脂を外部に排出させることにより、ケース内に収容された構成要素の全表面とケースの内面とを連続的に覆う樹脂モールド層を、樹脂モールド層に接する空所をケース内に残した状態で形成すればよく、上記の各実施形態のように、蓋板2を下方に向けた状態で、ケース内への樹脂の注入とケース内からの樹脂の回収とを行なう場合に限定されない。例えば、第2の孔110を樹脂の注入及び排出を行ない得る大きさに形成しておいて、図2に示したように、ケースの蓋板2を上方に向け、ケース本体1の底壁部101を下方に向けた状態で、ケース内への樹脂の注入と、ケース内からの樹脂の回収とを行なうようにしても良い。
【0077】
また、第1の孔203及び第2の孔110の双方を、樹脂の注入と排出とを行ない得る大きさに形成しておいて、図2に示したようにケースの蓋板2を上方に向け、ケース本体の底壁部101を下方に向けた状態で、第1の孔203または第2の孔110からケース内への樹脂の注入を行ない、次いで図3に示したように蓋板2を下に向けた状態にして、第1の孔203を通してケース内からの樹脂の回収を行なうようにしてもよい。
【0078】
上記の各実施形態のように、ケースの下端に配置した孔からケース内に液状樹脂を流入させると、ケース内で樹脂の液面レベルを徐々に上昇させて、ケース内の構成要素の全表面及びケースの内面に樹脂を満遍なく付着させることができ、ケース内の構成要素の全表面及びケースの内面を、気泡を生じさせることなく、樹脂で被覆することができる。またケース内を液状樹脂で満たした後、ケースの下端に配置した孔から該ケース内の液状樹脂を外部に排出させると、ケース内に収容された構成要素の全表面とケースの内面とを連続的に覆う樹脂モールド層を構成する樹脂以外の余分な樹脂をケース外に簡単に排出することができる。
【0079】
上記の各実施形態のように、液状樹脂をケース内に注入する際に、一旦ケース内を樹脂で満たすようにすると、蓋板とケース本体との接合部を覆う樹脂モールド層を形成できるため、蓋板とケース本体との接合部のシール性を高めて、防水効果を高めることができる。しかし本発明は、液状樹脂をケース内に注入する際に、一旦ケース内を樹脂で満たすようにする場合に限定されない。樹脂モールド層は、少なくともケース内に収容されたユニットの構成要素の全表面と該構成要素の周囲のケース内面とを覆うように形成されれば良いので、ケースの上端とケース内に収容されたユニットの構成要素の上端との間に隙間が存在する場合には、ユニットの構成要素が液状樹脂中に完全に浸漬されるまで、液状樹脂をケース本体内に注入した後、ケース本体内の樹脂を外部に排出させて、ユニットの構成要素の全表面と構成要素の周囲のケース内面とを連続的に覆う樹脂モールド層を形成するようにしてもよい。
【0080】
この場合、ケースの蓋板を外した状態で、ケース本体1の開口部から該ケース本体内に樹脂を注入し、ケース本体に設けた孔からケース本体内の樹脂を排出して樹脂モールド部を形成するようにしてもよい。即ち、ケース本体1内にユニットの構成要素を収容した後、ケース本体1の開口部を上方に向けた状態で該開口部からケース本体内に液状樹脂を注入して該ケース本体内に収容した構成要素を液状樹脂中に浸漬し、次いでケース本体1の底壁部に設けた孔110からケース本体内の液状樹脂を外部に排出させることによりケース本体内に収容された構成要素の全表面とケース本体の内面とを連続的に覆う樹脂モールド層を、該樹脂モールド層に接する空所をケース内に残した状態で形成し、樹脂を硬化させた後、または硬化させる前にケース本体を蓋板で閉じるようにしてもよい。
【0081】
上記の方法において、ケース本体を蓋板で閉じる前に樹脂モールド層を構成する樹脂を硬化させる場合には、ケース本体内の樹脂に光や電子線を照射することができるため、樹脂として、光硬化型や電子線硬化型の樹脂を用いることもできる。
【0082】
ユニットの構成要素が液状樹脂中に完全に浸漬されるまで、液状樹脂をケース本体内に注入した後、ケース本体内の樹脂を外部に排出させて、樹脂モールド層を形成する方法をとる場合等、蓋板とケース本体の開口部との突き合わせ部に樹脂モールド層を形成できない場合には、蓋板2とケース本体1との突き合わせ部にパッキンを介在させるか、または、蓋板2をケース本体1の開口端に接着することにより、蓋板2とケース本体1との突き合わせ部の液密性を確保する。
【0083】
本発明に係わる電子ユニットの製造方法においてはまた、ケースの蓋板2及び該蓋板2と対向するケース本体1の底壁部101をそれぞれ貫通させて第1の孔203及び第2の孔110を形成しておき、ケース本体1内にユニットの構成要素を収容して該ケース本体の開口部を蓋板2で閉じた後、第1の孔203及び第2の孔110の一方を上方に向け、他方を下方に向けた状態にして、下方に向けた孔を閉じた状態で、上方に向けた孔からケース内に液状樹脂を流入させて、ケース内を液状樹脂で満たした後、下方に向けた孔を開いてケース内の液状樹脂を外部に排出させることによりケース内に収容された構成要素の全表面とケースの内面とを連続的に覆う樹脂モールド層を、該樹脂モールド層に接する空所をケース内に残した状態で形成し、しかる後に樹脂を硬化させるようにしてもよい。
【0084】
上記のように、ケースの蓋板2及びケース本体1の底壁部101にそれぞれ設けた第1の孔203及び第2の孔110うちの一方を上方に向け、他方を下方に向けた状態で配置して、上方に向けた孔からケース内に液状樹脂を流入させて、ケース内を液状樹脂で満たす方法をとる場合、上方に向けた状態で配置する孔を複数設けて、該複数の孔の一つからケース内に液状樹脂を注入し、他の孔を通してケース内の空気を排出させるようにするのが好ましい。例えば、ケースの蓋板に設けた第1の孔203を上方に向け、ケース本体の底壁部に設けた第2の孔110を下方に向けた状態でケースを配置して、第2の孔110を閉じ、第1の孔203からケース内に液状樹脂を注入する方法をとる場合には、蓋板2に第1の孔203を複数個設けて、該複数の第1の孔のうちの一つから樹脂を注入し、他の第1の孔は開口させた状態に保持して、開口させた第1の孔を通してケース内の空気を排出させるようにするのが好ましい。
【0085】
本発明に係わる電子ユニットの製造方法ではまた、ユニットの構成要素が収容されたケース本体の開口部を蓋板で閉じた後、ケース内の構成要素の全表面とケースの内面とを連続的に被覆する樹脂モールド層を形成するために必要にして十分な両の液状樹脂をケース内に注入して、ケースを回転及び(または)反転させることにより、樹脂モールド層を形成するようにしてもよい。
【0086】
例えば、ケースの蓋板2及び該蓋板と対向するケース本体1の底壁部101をそれぞれ貫通させて第1の孔203及び第2の孔110を形成しておき、ケース本体1内にユニットの構成要素を収容して該ケース本体の開口部を蓋板2で閉じた後、第1の孔203及び第2の孔110の一方から排気しつつ他方からケース内に液状樹脂を注入し、その後、第1の孔203及び第2の孔110を閉じてケースを回転及び(または)反転させることにより、ケース内の構成要素及びケースの内面に満遍なく液状樹脂を触れさせて、樹脂モールド部を形成する方法をとってもよい。
【0087】
上記の方法において、ケース内に液状樹脂を多めに注入する場合には、ケースを回転及び(または)反転させた後、第1の孔203及び第2の孔110を開いて、第1の孔203または第2の孔110から構成要素の表面及びケースの内面に付着しなかった余剰の液状樹脂を排出させ、しかる後に樹脂を硬化させる工程を行うようにする。
【0088】
また、上記の方法において、ケース内の構成要素の全表面とケースの内面とを連続的に被覆する樹脂モールド層を形成するために必要なだけの量の液状樹脂をケース内に注入する場合には、ケース内の樹脂を排出する工程を行うことなく、樹脂を硬化させる工程に移行することができる。
【0089】
上記の方法によれば、ケース内に注入する樹脂の量を少なくすることができ、ケース内から余剰の樹脂を回収する場合でも、回収する樹脂の量を少なくすることができるため、コストの低減を図ることができる。
【0090】
特に、上記の方法において、ケース内の構成要素の全表面とケースの内面とを連続的に被覆する樹脂モールド層を形成するために必要なだけの量の液状樹脂をケース内に注入する方法をとる場合には、ケース内から樹脂を排出する工程を省略することができるため、製造能率を向上させることができる。
【0091】
上記の各方法において、ケース内への液状樹脂の注入は、ケース内を真空引きしながら行なうようにするのが好ましい。ケース内を真空引きしながら樹脂の注入を行なうと、樹脂モールド層内に気泡が生じるのを防ぐことができるため、気泡の存在により、樹脂モールド層の絶縁性能が低下するのを防ぐことができる。
【0092】
上記の各実施形態では、パワーモジュールのパワー素子としてMOSFETを用いたが、パワートランジスタやサイリスタ等の他のパワー素子が用いられる場合にも本発明を適用することができるのはもちろんである。
【0093】
上記の各実施形態では、ケース内にパワーモジュールとコントローラとの二つの構成要素が収容されたが、ケース内に更に多くの構成要素が階層構造で(ケースの深さ方向に積み重ねるかまたは並べた状態で)配置される場合にも本発明を適用することができる。
【0094】
上記の各実施形態では、ケース内にパワーモジュールが収容されたが、本発明は、ケース内にパワーモジュールが収容される場合に限定されるものではなく、エンジンを制御するECU(電子制御ユニット)などの他の耐候性を必要とする電子ユニットにも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の第1の実施形態に係わる電子ユニットの構造を示す分解斜視図である。
【図2】同実施形態において、組み立てたユニットの樹脂注入前の状態を示す縦断面図である。
【図3】同実施形態において、ケース内に樹脂を注入する際のユニットの状態を示した縦断面図である。
【図4】同実施形態において、ケース内に樹脂を注入している途中の状態を示した縦断面図である。
【図5】同実施形態において、樹脂の注入を完了した状態を示した縦断面図である。
【図6】同実施形態において、ケース内から樹脂を排出して構成要素の表面及びケースの内面を被覆する樹脂モールド層を形成した状態を示した縦断面図である。
【図7】同実施形態において、ケースの蓋板に設けられた孔を封止した状態を示した縦断面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態の外観を示した斜視図である。
【図9】同実施形態において、ケース内に樹脂を注入する際のユニットの状態を示した縦断面図である。
【図10】同実施形態において、樹脂の注入を完了した状態を示した縦断面図である。
【図11】同実施形態において、ケース内から樹脂を排出して構成要素の表面及びケースの内面を被覆する樹脂モールド層を形成した状態を示した縦断面図である。
【図12】同実施形態において、ケースの蓋板に設けられた孔を封止した状態を示した縦断面図である。
【図13】本発明が対象とする電子ユニットにおいて、ケース内を満たすように樹脂モールド部を形成した場合の不具合を説明するための要部縦断面図である。
【符号の説明】
【0096】
1 ケース本体
101 底壁部
102〜105 側壁部
2 蓋板
3 パワーモジュール
300 基板
301 コンデンサ
303 FETモジュール
304 接続ピン
4 コントローラ
400 回路基板
20 樹脂
21 樹脂モールド部
22 空所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内にユニットの構成要素を収容してなる電子ユニットにおいて、
前記ケース内に収容された構成要素の全表面と前記ケースの内面とを連続的に覆う樹脂モールド層が形成され、前記ケース内には、前記樹脂モールド層に接する空所が残されていることを特徴とする電子ユニット。
【請求項2】
前記ケースは、底部に相対する位置に開口部を有するケース本体と、該ケース本体の開口部を閉じる蓋板とを備えていて、少なくとも前記ケース本体は金属からなり、
前記ユニットの構成要素は、発熱を伴うパワー素子と前記パワー素子を通して流れる主電流が通電されるバスバーと制御信号を流す接続ピンとを有して、前記バスバー及び接続ピンが外部に導出されたパワーモジュールと、前記パワーモジュールを制御する制御部の構成部品を回路基板に実装してなるコントローラとを含み、
前記パワーモジュールは前記ケース本体の底部内面に接した状態で配置され、
前記コントローラは前記回路基板を前記ケース本体の底部内面と平行させた状態で、前記パワーモジュールよりも前記ケース本体の開口部寄りに位置させて前記パワーモジュールに隣接配置され、
前記パワーモジュールから導出された接続ピンが前記コントローラの回路基板に半田付けされて前記パワーモジュールとコントローラとの間が接続され、
前記樹脂モールド層は、前記接続ピンをも覆うように形成されて、該接続ピンを覆う樹脂モールド層の周囲にも前記空所が形成されている請求項2に記載の電子ユニット。
【請求項3】
前記蓋板の周縁部寄りの部分に前記ケース本体の側壁部に沿って閉ループをなして延びる凸条が前記ケース本体内に突出した状態で形成されて、該凸条と前記ケース本体の開口部付近の側壁部内面との間に閉ループをなす溝が形成され、前記閉ループをなす溝内に樹脂が充填されて前記蓋板とケース本体の開口部との接合部のシールが図られている請求項2に記載の電子ユニット。
【請求項4】
ケース内にユニットの構成要素を収容してなる電子ユニットを製造する方法において、
前記ケース内にユニットの構成要素を収容した後、前記ケース内に液状樹脂を注入して、前記ケース内の構成要素を液状樹脂中に浸漬し、次いで該ケース内の液状樹脂を外部に排出することにより、前記ケース内に収容された構成要素の全表面と前記ケースの内面とを連続的に覆う樹脂モールド層を、前記樹脂モールド層に接する空所を前記ケース内に残した状態で形成し、
しかる後に前記樹脂モールド層を構成する樹脂を硬化させることを特徴とする電子ユニットの製造方法。
【請求項5】
開口部を有するケース本体と該ケース本体の開口部を閉じる蓋板とを備えたケース内にユニットの構成要素を収容してなる電子ユニットを製造する方法において、
前記ケース本体内にユニットの構成要素を収容して該ケース本体の開口部を蓋板で閉じた後、
前記蓋板または前記ケース本体に設けた孔から前記ケース内に液状樹脂を流入させて、前記ケース内を液状樹脂で満たし、
次いで前記ケース内の液状樹脂を外部に排出させることにより前記ケース内に収容された構成要素の全表面と前記ケースの内面とを連続的に覆う樹脂モールド層を、前記樹脂モールド層に接する空所を前記ケース内に残した状態で形成し、
しかる後に前記樹脂モールド層を構成する樹脂を硬化させることを特徴とする電子ユニットの製造方法。
【請求項6】
開口部を有するケース本体と該ケース本体の開口部を閉じる蓋板とを備えたケース内にユニットの構成要素を収容してなる電子ユニットを製造する方法において、
前記ケースの蓋板及び該蓋板と対向する前記ケース本体の底壁部をそれぞれ貫通させて第1の孔及び第2の孔を形成しておき、
前記ケース本体内にユニットの構成要素を収容して該ケース本体の開口部を蓋板で閉じた後、
前記第1の孔及び第2の孔の一方を上方に向け、他方を下方に向けた状態で配置して、上方に向けた孔から排気しつつ下方に向けた孔から前記ケース内に液状樹脂を流入させて、前記ケース内を液状樹脂で満たし、
次いで前記下方に向けた孔から前記ケース内の液状樹脂を外部に排出させることにより前記ケース内に収容された構成要素の全表面と前記ケースの内面とを連続的に覆う樹脂モールド層を、該樹脂モールド層に接する空所を前記ケース内に残した状態で形成し、
しかる後に前記樹脂モールド層を構成する樹脂を硬化させることを特徴とする電子ユニットの製造方法。
【請求項7】
開口部を有するケース本体と該ケース本体の開口部を閉じる蓋板とを備えたケース内にユニットの構成要素を収容してなる電子ユニットを製造する方法において、
前記ケースの蓋板及び該蓋板と対向する前記ケース本体の底壁部をそれぞれ貫通させて第1の孔及び第2の孔を形成しておき、
前記ケース本体内にユニットの構成要素を収容して該ケース本体の開口部を蓋板で閉じた後、
前記第1の孔及び第2の孔の一方を上方に向け、他方を下方に向けた状態に配置して、下方に向けた孔を閉じた状態で、上方に向けた孔から前記ケース内に液状樹脂を流入させて、前記ケース内を液状樹脂で満たし、
次いで前記下方に向けた孔を開いて前記ケース内の液状樹脂を外部に排出させることにより前記ケース内に収容された構成要素の全表面と前記ケースの内面とを連続的に覆う樹脂モールド層を、該樹脂モールド層に接する空所を前記ケース内に残した状態で形成し、
しかる後に前記樹脂モールド層を構成する樹脂を硬化させることを特徴とする電子ユニットの製造方法。
【請求項8】
開口部を有するケース本体と該ケース本体の開口部を閉じる蓋板とを備えたケース内にユニットの構成要素を収容してなる電子ユニットを製造する方法において、
前記ケースの蓋板及び該蓋板と対向する前記ケース本体の底壁部をそれぞれ貫通させて第1の孔及び第2の孔を形成しておき、
前記ケース本体内にユニットの構成要素を収容して該ケース本体の開口部を蓋板で閉じた後、
前記第1の孔及び第2の孔の一方から排気しつつ他方から前記ケース内に液状樹脂を注入した後、前記第1の孔及び第2の孔を閉じて前記ケースを回転及び(または)反転させることにより、前記ケース内の構成要素に満遍なく液状樹脂を触れさせ、
次いで前記第1の孔及び第2の孔を開いて、前記第1の孔または第2の孔から前記構成要素の表面に付着しなかった余剰の液状樹脂を排出させることにより、前記ケース内に収容された構成要素の全表面と前記ケースの内面とを連続的に覆う樹脂モールド層を、該樹脂モールド層に接する空所を前記ケース内に残した状態で形成し、
しかる後に前記樹脂モールド層を構成する樹脂を硬化させることを特徴とする電子ユニットの製造方法。
【請求項9】
開口部を有するケース本体と該ケース本体の開口部を閉じる蓋板とを備えたケース内にユニットの構成要素を収容してなる電子ユニットを製造する方法において、
前記ケース本体内にユニットの構成要素を収容し、前記ケース内の構成要素の表面及びケースの内面を連続的に覆う樹脂モールド層を形成するために必要な量の液状樹脂を前記ケース本体内に注入した後、前記ケース本体の開口部を蓋板で閉じた状態で前記ケースを回転及び(または)反転させることにより、前記ケース内の構成要素に満遍なく液状樹脂を触れさせて前記ケース内に収容された構成要素の全表面と前記ケースの内面とを連続的に覆う樹脂モールド層を、該樹脂モールド層に接する空所を前記ケース内に残した状態で形成し、
しかる後に前記樹脂モールド層を構成する樹脂を硬化させることを特徴とする電子ユニットの製造方法。
【請求項10】
開口部を有するケース本体と該ケース本体の開口部を閉じる蓋板とを備えたケース内にユニットの構成要素を収容してなる電子ユニットを製造する方法において、
前記ケースの蓋板及び該蓋板と対向する前記ケース本体の底壁部をそれぞれ貫通させて第1の孔及び第2の孔を形成するとともに、
前記蓋板の周縁部寄りの部分に前記ケース本体の側壁部に沿って閉ループをなして延びる凸条を前記ケース本体内に突出させた状態で形成して、該凸条と前記ケース本体の開口部付近の側壁部内面との間に閉ループをなす溝を形成しておき、
前記ケース本体内にユニットの構成要素を収容して該ケース本体の開口部を蓋板で閉じた後、
前記第1の孔または第2の孔から前記ケース内に液状樹脂を注入して前記ケース内を液状樹脂で満たし、
次いで前記第1の孔を下方に向けて配置して、該第1の孔から該ケース内の液状樹脂を外部に排出させることにより前記ケース内に収容された構成要素の全表面と前記ケースの内面とを連続的に覆う樹脂モールド層と前記溝内を満たす樹脂層とを、該樹脂モールド層に接する空所を前記ケース内に残した状態で形成し、
しかる後に前記樹脂モールド層を構成する樹脂を硬化させることを特徴とする電子ユニットの製造方法。
【請求項11】
前記ケース内への液状樹脂の注入は、前記ケース内を真空引きしながら行なう請求項4ないし10のいずれか1つに記載の電子ユニットの製造方法。
【請求項12】
開口部を有するケース本体と該ケース本体の開口部を閉じる蓋板とを備えたケース内にユニットの構成要素を収容してなる電子ユニットを製造する方法において、
前記ケース本体内にユニットの構成要素を収容した後、前記ケース本体の開口部を上方に向けた状態で該開口部から前記ケース本体内に液状樹脂を注入して該ケース本体内に収容した構成要素を液状樹脂中に浸漬し、
次いで前記ケース本体の底壁部に設けた孔から該ケース本体内の液状樹脂を外部に排出させることにより前記ケース本体内に収容された構成要素の全表面と前記ケース本体の内面とを連続的に覆う樹脂モールド層を、該樹脂モールド層に接する空所を前記ケース内に残した状態で形成し、
前記樹脂を硬化させた後、または硬化させる前に前記ケース本体を蓋板で閉じることを特徴とする電子ユニットの製造方法。
【請求項13】
前記ユニットの構成要素は、発熱を伴うパワー素子と前記パワー素子を通して流れる主電流が通電されるバスバーと制御信号を流す接続ピンとを有して、前記バスバー及び接続ピンが外部に導出されたパワーモジュールと、前記パワーモジュールを制御する制御部の構成部品を回路基板に実装してなるコントローラとを含み、
前記パワーモジュールは前記ケース本体の底部内面に接した状態で配置され、
前記コントローラは前記回路基板を前記ケースの底部内面と平行させた状態で、前記パワーモジュールよりも前記ケース本体の開口部寄りに位置させて前記パワーモジュールに隣接配置され、
前記パワーモジュールから導出された接続ピンが前記コントローラの回路基板に半田付けされて前記パワーモジュールとコントローラとの間が接続され、
前記樹脂モールド層は、前記接続ピンをも覆うように形成されて、該接続ピンを覆う樹脂モールド層の周囲にも前記空所が形成されている請求項4ないし12のいずれか1つに記載の電子ユニットの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2009−64916(P2009−64916A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−230612(P2007−230612)
【出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【出願人】(000001340)国産電機株式会社 (191)
【Fターム(参考)】