説明

電子レンジ加熱用の卵の皮膜で包まれた食品の冷凍品

【課題】冷凍オムライス等の卵の皮膜で包んだ食品の冷凍品を電子レンジにより加熱した際に卵の皮膜の端部が過加熱により硬くなってしまうことを防ぐこと。
【解決手段】卵の皮膜で包んだ食品の卵の皮膜の端部に過加熱防止用組成物を塗布したことを特徴とする電子レンジ加熱用の卵の皮膜で包んだ食品の冷凍品である。過加熱防止用組成物が少なくとも増粘剤と油脂と水を含有する組成物であり、増粘剤としてカラギーナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアガム、α化澱粉が好ましい。過加熱防止用組成物中の増粘剤の濃度は0.25〜0.5重量%、油脂の濃度は5〜10重量%が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジで解凍、加熱して食するオムライス等の卵の皮膜で包まれた食品の冷凍品に関する。詳細には、電子レンジで加熱する際に、卵の皮膜の端部が過加熱状態になることが防止された卵の皮膜で包まれた食品の冷凍品に関する。
【背景技術】
【0002】
オムライスとは、チキンライスのような味付けした米飯を薄焼き卵で包んだ調理品であるが、これを凍結して冷凍オムライスとして販売されている。冷凍オムライスは、包装のまま、あるいは皿に移して電子レンジで解凍、加熱して食される。このとき、ご飯の詰まっている中心部とご飯が薄くなり卵の皮膜だけになる端部では電子レンジによる加熱程度に差があり、中心のご飯が喫食に適した温度になるように加熱した場合、卵の皮膜の端部では卵が加熱過剰になり、乾燥して硬くなってしまう。極端な場合は卵が縮んでゴム状の食感になったり、凍結乾燥したようなスカスカした質感になったりする。同じワット数の電子レンジでも電子レンジごとに機能にばらつきがあるので、決められた所定の時間を守って加熱を行った場合でも部分的に過加熱になることもある。
【0003】
このような現象を防止するために特許文献1には、「生卵にゲル化剤を混合して薄膜状に延ばし、少なくとも半熟状態の卵の薄膜で調理済みのライス類具剤を覆い、全体を加熱して卵膜に熱凝固処理を施し、冷却することを特徴とする冷凍保存可能なオムライス。」が開示されている。また、特許文献2には、「澱粉、糖アルコール、食用油脂および乳化剤を含有する水中油滴型乳化油脂組成物」が記載され、この組成物を卵に混合することにより冷凍解凍しても、保水性があり、ソフトでなめらかな食感をもつ卵加工食品を製造することができると記載されている。
また、特許文献3には、加熱調理した冷凍食品の周囲に氷を付着した電子レンジ用冷凍食品が記載されており、電子レンジ処理時に過度の乾燥を防止する方法が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開平5−153934号
【特許文献2】特開平8−322515号
【特許文献3】特開平1−196264号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、冷凍オムライスなどの卵の皮膜で包まれた食品の冷凍品を電子レンジにより加熱した際に卵の皮膜の端部が過加熱により硬くなってしまうことを防ぐ方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(1)〜(5)の電子レンジ加熱用の卵の皮膜で包まれた食品の冷凍品を要旨とする。
(1)卵の皮膜で包まれた食品の卵の皮膜の端部に過加熱防止用組成物を塗布したことを特徴とする電子レンジ加熱用の卵の皮膜で包まれた食品の冷凍品。
(2)卵の皮膜で包まれた食品の卵の皮膜の端部に1〜4cmの幅で過加熱防止用組成物を塗布したことを特徴とする(1)の電子レンジ加熱用の卵の皮膜で包まれた食品の冷凍品。
(3)過加熱防止用組成物が少なくとも増粘剤と油脂と水を含有する組成物である(1)又は(2)の電子レンジ加熱用の卵の皮膜で包まれた食品の冷凍品。
(4)増粘剤がカラギーナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアガム、α化澱粉のいずれか一種、又は二種以上の組み合わせである(3)の電子レンジ加熱用の卵の皮膜で包まれた食品の冷凍品。
(5)過加熱防止用組成物中の増粘剤の濃度が0.25〜0.5重量%、油脂の濃度が5〜10重量%である(3)又は(4)の電子レンジ加熱用の卵の皮膜で包まれた食品の冷凍品。
【0007】
本発明は、(6)〜(8)の電子レンジ加熱用の加熱凝固した卵の冷凍品に塗布するための過加熱防止用組成物を要旨とする。
(6)少なくとも増粘剤と油脂と水を含有する組成物からなる、電子レンジ加熱用の加熱凝固した卵の冷凍品に塗布するための過加熱防止用組成物。
(7)増粘剤がカラギーナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアガム、α化澱粉のいずれか一種、又は二種以上の組み合わせである(6)の電子レンジ加熱用の加熱凝固した卵の冷凍品に塗布するための過加熱防止用組成物。
(8)増粘剤の濃度が0.25〜0.5重量%、油脂の濃度が5〜10重量%である(6)又は(7)の電子レンジ加熱用の加熱凝固した卵の冷凍品に塗布するための過加熱防止用組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明の卵用過加熱防止用組成物をオムライス等の卵の皮膜で包まれた食品の卵の皮膜の端部に塗布することにより、この卵の皮膜で包まれた食品の冷凍品を電子レンジで解凍・加熱しても、卵の皮膜の端部が過加熱により硬くなってしまうことがなく、卵の皮膜で包まれたご飯等の中心部が好ましい温度になるまで加熱しても卵のふんわり感が維持される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において、卵の皮膜で包まれた食品とはオムライスに代表されるような、薄焼き卵で包まれた食品である。オムライスの他、寿司飯と具材を薄焼き卵で包んだ茶巾寿司、ご飯の代わりに焼きそばを薄焼き卵で包んだオム焼きそばなども例示される。卵の皮膜で包まれる食品は何でもよい。
本発明をオムライスを例に説明する。オムライスとはチキンライスのような味付けしたご飯を薄焼き卵、あるいは半熟のオムレツのような卵で包み込んだ食品である。オムライスに用いられる米飯は、基本的にはチキンライスであるが、バターライスやエビピラフなどの他の調理済みライス類食品でも良い。上記具材を包む卵の皮膜は、半熟以上に加熱凝固してご飯を覆うことができる状態であれば、薄焼き卵でも、蒸し焼きにしたシート状の卵でも、オムレツ状のボリュームのある卵でも何でもよい。包み方は、円形の薄焼き卵を二つ折りにした間にご飯を挟んだ半円形のタイプと円形の卵の皮膜の中央にご飯をおいて左右の卵の皮膜で包み込みラグビーボールのような形状にしたタイプが主流であるが、単にご飯の上に卵の皮膜を載せるだけのものもある。いずれのタイプの場合でも、中央部は厚みのあるご飯の上に接触しているが、端にいくほどご飯が少なくなり、端は卵だけの部分になる。もともと、電子レンジで加熱する場合、食品の端や角は過加熱になりやすいうえ、オムライスの場合、端が水分の少ない薄い卵だけになるため、その部分の過加熱は過酷なものとなる。
【0010】
本発明の過加熱防止用組成物とは、オムライスの卵の皮膜の端部が電子レンジ加熱により加熱されすぎるのを防ぐために塗布する組成物である。本発明の過加熱防止用組成物はオムライス全体に塗布してもよいが、過加熱となりやすい部分にのみ塗布するのが効果的である。すなわち、半円形のオムライスの場合、半円の弧にあたる部分、すなわち、挟まれているご飯が少なくなる部分に1〜4cmくらいの幅で塗布する。また、ラグビーボール形態のオムライスの場合、2つの先端部分に1〜4cmくらいの幅で塗布する。ご飯の上面に卵の皮膜を載せるだけのタイプの場合では卵の円周部に1〜3cmくらい塗布する。
オムライス以外の例えば、茶巾寿司などの場合は、薄焼き卵の端部で、過加熱になりやすい部分に1〜3cmくらい塗布する。
【0011】
塗布する方法は、過加熱防止用組成物の水溶液が卵の表面に適量付着する方法であれば何でもよい。オムライスの塗布したい部分を過加熱防止用組成物の水溶液に浸漬する方法でも、噴霧する方法でも、あるいは刷毛で塗るような方法でもよい。凍結したオムライスに対して塗布することにより、過加熱防止用組成物の水溶液がしみこんでしまわず、卵の皮膜の表面に凍り付くことになり都合がよい。過加熱防止用組成物の水溶液の粘度を調節することにより適量の過加熱防止用組成物の水溶液を付着させることができる。例えば、凍結したオムライスの端部を過加熱防止用組成物の水溶液に浸漬する方法で塗布する場合には、増粘剤の濃度を0.25〜0.5重量%に調節すると、程よい量の過加熱防止用組成物の水溶液を付着させることができる。他の方法であっても、凍結したオムライスの卵の皮膜の表面に付着させるには同程度の濃度が適当である。
【0012】
本発明の過加熱防止用組成物の水溶液には油脂を添加するのが好ましい。増粘剤だけの水溶液でも目的を達することはできるが、かなり厚く塗布する必要があり、見栄えや効率の点では好ましくない。油脂を5〜10重量%添加することにより、増粘剤の濃度をあまり高くすることなく、同程度以上の効果を得ることができる。
油脂は食用可能な油脂であれば植物性、動物性の油脂どちらでも構わないが、オムライスが冷えたときに食感が悪くならないためには植物油を使用するのが適している。油脂を適量の乳化剤と共に添加して乳化物として用いるのがよい。乳化油脂として販売されているものを増粘剤と共に水に溶解して用いることもできる。上記油脂としては、例えば大豆油、菜種油、綿実油、サフラワー油、ヒマワリ油、米糠油、コーン油、椰子油、パーム油、パーム核油、オリーブ油、ハイオレイック菜種油、ハイオレイックサフラワー油、ハイオレイックコーン油およびハイオレイックヒマワリ油などの植物油脂、牛脂、ラード、魚油および乳脂などの動物油脂などが挙げられ、好ましくは大豆油、菜種油、またはコーン油などの常温(約15〜25℃)で液状の植物油脂である。
【0013】
本発明で用いる増粘剤は、水溶液にほどほどの粘度を与えることができ、味に影響を与えないものであればなんでもよい。例えば、カラギーナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアガム、α化澱粉、ゼラチン、カゼインなどが例示される。これらを一種又は2種以上組み合わせ使用する。例えば、キサンタンガム15%、カラギーナン20%、ローカストビーンガム15%含有する製剤(商品名ゲルメイトBG、大日本製薬株式会社製)などの製剤を用いることもできる。
【0014】
以下に本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0015】
<オムライスの製造方法>
卵に調味料(食塩、砂糖、アミノ酸等)、乳(0.29重量%)、澱粉(0.1重量%)、植物油(1.44重量%)、色素、水(34.3重量%)などを加え、よく攪拌したものを卵液とし、加熱した鉄板にて焼き、卵シートを製造した。油をひいた釜(ニーダー)に具材(玉ねぎ、人参、鶏肉など)に調味料(食塩、砂糖、アミノ酸等)、ケチャップ、ソースを加え、加熱をし、ケチャップソースを製造した。炊飯米に調味料(食塩、砂糖、アミノ酸、コショウ等)、ケチャップソース、油を加え、よく混ぜ、ケチャップライスを製造した。卵シート中央にケチャップライスをのせ、左右の卵シートで包みラグビーボール様の楕円形に成型した。これを−16℃で凍結、保存し、冷凍オムライスとして以下の試験に用いた。1個あたりのオムライスの重量は250g、そのうち、卵シートの重量は約95g、直径は約20cmであった。
【0016】
<各種過加熱防止用組成物の比較試験>
上記の方法で製造された冷凍オムライスに表1に示す各種過加熱防止用組成物の水溶液を卵の皮膜の端部に端から約3cmの幅で塗布した。塗布は冷凍オムライスの両端部を過加熱防止用組成物の水溶液に3cm浸す方法によった。冷凍オムライスは凍っているので、浸した部分には、過加熱防止用組成物の水溶液が付着し、すぐに凍りついた。この方法により、オムライス1個あたり、過加熱防止用組成物は10±2g程度付着した。この冷凍オムライスを真空包装し、−16℃で冷凍保存し、試験サンプルとした。
増粘剤等は以下のものを使用した。
キサンタンガム(商品名ビストップD-3000、三栄源エフエフアイ社製)
グアガム(商品名ビストップD-20、三栄源エフエフアイ社製)
α化澱粉(商品名マツノリン、松谷化学工業社製)
ローカストビーンガム(商品名ビストップD-6又はビストップD-2050、三栄源エフエフアイ社製)
カラギーナン(カラギニンCSL-1、三栄源エフエフアイ社製)
製剤1(キサンタンガム15%、カラギーナン20%、ローカストビーンガム15%、糖類50%を含有する製剤)
製剤2(キサンタンガム40%、ローカストビーンガム40%、糖20%を含有する製剤)
乳化油脂(エマテックN-100V、理研ビタミン社製、植物油89.82%、乳化剤10.18%含有)
【0017】
上記試験サンプルを電子レンジにより加熱解凍(1400Wで2分45秒)し、袋から取り出し、室温で5分間放置した後、卵の状態を評価した。
表1に示すように、過加熱防止用組成物として、増粘剤の濃度は合計0.25%〜0.5%が好ましく、油脂を5〜10%添加したものが好ましいことがわかった。
【0018】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明により、電子レンジで加熱した際に、過加熱により卵の皮膜が乾燥して硬くなることが防止された卵の皮膜で包んだ食品の冷凍品を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
卵の皮膜で包まれた食品の卵の皮膜の端部に過加熱防止用組成物を塗布したことを特徴とする電子レンジ加熱用の卵の皮膜で包まれた食品の冷凍品。
【請求項2】
卵の皮膜で包まれた食品の卵の皮膜の端部に1〜4cmの幅で過加熱防止用組成物を塗布したことを特徴とする請求項1の電子レンジ加熱用の卵の皮膜で包まれた食品の冷凍品。
【請求項3】
過加熱防止用組成物が少なくとも増粘剤と油脂と水を含有する組成物である請求項1又は2の電子レンジ加熱用の卵の皮膜で包まれた食品の冷凍品。
【請求項4】
増粘剤がカラギーナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアガム、α化澱粉のいずれか一種、又は二種以上の組み合わせである請求項3の電子レンジ加熱用の卵の皮膜で包まれた食品の冷凍品。
【請求項5】
過加熱防止用組成物中の増粘剤の濃度が0.25〜0.5重量%、油脂の濃度が5〜10重量%である請求項3又は4の電子レンジ加熱用の卵の皮膜で包まれた食品の冷凍品。
【請求項6】
少なくとも増粘剤と油脂と水を含有する組成物からなる、電子レンジ加熱用の加熱凝固した卵の冷凍品に塗布するための過加熱防止用組成物。
【請求項7】
増粘剤がカラギーナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアガム、α化澱粉のいずれか一種、又は二種以上の組み合わせである請求項6の電子レンジ加熱用の加熱凝固した卵の冷凍品に塗布するための過加熱防止用組成物。
【請求項8】
増粘剤の濃度が0.25〜0.5重量%、油脂の濃度が5〜10重量%である請求項6又は7の電子レンジ加熱用の加熱凝固した卵の冷凍品に塗布するための過加熱防止用組成物。


【公開番号】特開2008−188007(P2008−188007A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−181594(P2007−181594)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【出願人】(000004189)日本水産株式会社 (119)
【Fターム(参考)】