説明

電子内視鏡の映像信号処理装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、内視鏡の挿入部先端に内蔵された固体撮像素子から出力される撮像信号をサンプリングして映像信号を抽出するための電子内視鏡の映像信号処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】図7は、従来の電子内視鏡の映像信号処理装置の信号波形を示すタイムチャートであり、固体撮像素子から出力された撮像信号は、増幅されてAのような波形で入力されてくる。
【0003】そして、Bで示されるようなサンプリングパルスによって、固体撮像素子の各画素から送られてくる一つの撮像信号毎に一回ずつサンプリングが行われ、Cに示されるように、サンプル値が次のサンプリングまでの間保持・出力される。その後、Dで示されるようなA/Dクロックパルスにより、データがデジタル信号化される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、撮像信号に例えばEに示されるような単発のノイズが入ったとき、それがちょうどサンプリングのタイミングにあたっていると、ノイズ成分がそのまま映像信号に現れて、モニタに再生される画像が乱れてしまう。
【0005】しかも内視鏡の場合には、挿入部先端に内蔵されている固体撮像素子から信号処理回路までの経路が長くて、外来ノイズの影響を受けやすいので、このようにちょっとしたノイズによって画像が乱れると、安定して良好な画像を得ることができない。
【0006】そこで、本発明は、ノイズの影響を受けにくく、安定して良好な画像を得ることができる電子内視鏡の映像信号処理装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明の電子内視鏡の映像信号処理装置は、内視鏡の挿入部先端に内蔵された固体撮像素子から出力される撮像信号をサンプリングして映像信号を抽出するための電子内視鏡の映像信号処理装置において、上記固体撮像素子の同一画素から送られてくる一つの撮像信号に対して時間をずらしてサンプリングをしてそのサンプル値を次のサンプリングまで各々保持出力する複数のサンプルホールド回路と、上記複数のサンプルホールド回路から出力された信号を加算・平均して出力する加算回路とを設けたことを特徴とする。
【0008】なお、上記サンプルホールド回路と加算回路との間に、アナログ信号をデジタル信号に変換するためのアナログデジタル変換回路を介挿して、上記加算回路においてはデジタル信号によって演算が行われるようにしてもよい。
【0009】また、内視鏡の挿入部先端に内蔵された固体撮像素子から出力される撮像信号をサンプリングして映像信号を抽出するための電子内視鏡の映像信号処理装置において、上記固体撮像素子の同一画素から送られてくる一つの撮像信号を、その撮像信号と同形で互いの位相のみ異なる複数の信号に分けて出力するための撮像信号遅延手段と、上記撮像信号遅延手段からの複数の出力信号を同時にサンプリングしてそのサンプル値を次のサンプリングまで各々保持出力する複数のサンプルホールド回路と、上記複数のサンプルホールド回路から出力された信号を加算・平均して出力する加算回路とを設けるようにしてもよい。
【0010】
【実施例】図面を参照して実施例を説明する。図1は、電子内視鏡とその映像信号処理回路20を示している。
【0011】1は、内視鏡の挿入部2内に挿通された照明用ライトガイドファイババンドル3に照明光を供給するための光源装置であり、集光レンズ4によって、光源ランプ5からの光がライトガイドファイババンドル3の入射端面に集光される。
【0012】そしてその照明光路の途中には、赤(R)、緑(G)、青(B)の三色のカラーフィルタ8R,8G,8Bが円周方向に並んで取り付けられた回転円盤6が、モータ7によって回転駆動されるように配置されている。
【0013】その結果、赤、緑、青の照明光が順にライトガイドファイババンドル3に入射され、挿入部2の先端に配置された出射端から前方の観察範囲に向けて、照明光が出射される。
【0014】挿入部2の先端内には、例えば電荷結合素子(CCD)からなる固体撮像素子8が、対物光学系9による観察像の結像位置に受像面が位置するように配置されている。
【0015】固体撮像素子8から赤、緑、青の順にくり返し出力されるアナログの撮像信号の出力ラインは、本発明の映像信号処理回路20に接続されていて、増幅器21を経て、映像信号を抽出するための第1ないし第3のサンプルホールド回路22,23,24に並列に接続されている。そして、各サンプルホールド回路22,23,24からの出力ラインは、一つの加算回路25に接続されている。
【0016】加算回路25では、第1ないし第3のサンプルホールド回路22,23,24からの入力信号(電圧)が加算されて、その加算平均値が第4のサンプルホールド回路26に対して出力される。
【0017】第4のサンプルホールド回路26からの出力は、ガンマ補正等を行う信号処理回路27を経て、アナログデジタル変換回路28においてアナログ信号からデジタル信号に変換された後、順次、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色に対応したフレームメモリ29R,29G,29Bに格納される。
【0018】フレームメモリ28R,28G,28Bに格納された各信号は、同時に読み出されて、各々デジタルアナログ変換回路30R,30G,30Bでアナログの色信号に変換され、各色信号処理回路31R,31G,31Bなどを経てモニタ32に出力され、モニタ32に観察画像が表示される。
【0019】図2は、上述の第1の実施例の信号処理回路20の動作を示している。A〜Jは、図1のA〜Jで示される各位置の信号波形を示している。Aは、固体撮像素子8から出力されて増幅器21で増幅された撮像信号を示している。Tは、固体撮像素子8の同一画素から送られてきた一つの撮像信号の範囲を示している。
【0020】第1ないし第3のサンプルホールド回路22,23,24が、サンプリングパルスB,C,Dにより、同一画素から送られてきた一つの撮像信号対して、■、■及び■に示されるように、位相をずらしてサンプリングをして、その撮像信号のサンプル値(■、■及び■のアナログ電圧値)をE,F,Gのように、次のサンプリングまで各々保持出力する。
【0021】このようにして、同一画素から送られてきた同じ撮像信号から三つの映像信号が位相を変えて抽出され、その三つの映像信号の平均値が加算回路25から出力される。
【0022】したがって、元の撮像信号に単発的にノイズが乗っていて、それが第1ないし第3のいずれかのサンプルホールド回路22,23,24でサンプリングされても、加算回路25からはノイズの影響が3分の1に弱められた映像信号が出力される。
【0023】そして、第4のサンプルホールド回路26が、その加算回路25からの出力信号に対してサンプリングパルスHによりサンプリングをして、そのサンプル値を、Iに示されるように次のサンプリングまで保持出力し、それに対してアナログデジタル変換回路28が、Jで示されるようなA/Dクロックパルスにより、データをデジタル信号化する。
【0024】図3は本発明の第2の実施例を示しており、映像信号処理回路20において、三つのサンプルホールド回路22,23,24と加算回路25との間に、各サンプルホールド回路22,23,24に対応して信号処理回路271,272,273とアナログデジタル変換回路281,282,283とを接続して、加算回路25においてデジタル信号で演算処理をするようにしたものである。
【0025】図4は、その各部の信号波形を示しており、前述の第1の実施例と同様に、第1ないし第3のサンプルホールド回路22,23,24が、サンプリングパルスB,C,Dにより、同一画素から送られてきた一つの撮像信号に対して、■、■及び■に示されるように、位相をずらしてサンプリングをし、その撮像信号のサンプル値(■、■及び■のアナログ電圧値)を、次のサンプリングまで各々保持出力する。そして、それを信号処理した映像信号E,F,Gをアナログデジタル変換回路281,282,283に送り、そこでHで示されるようなA/Dクロックパルスにより、データをデジタル信号化する。
【0026】この実施例は、加算・平均処理をデジタル領域で行う点が第一の実施例と異なるが、単純に三つのサンプリングデータの平均をとるだけでなく、三つのサンプリングデータのうち最大値と最小値を無視して中間値のみを採用するようにしてもよく、或いは各データに適当な重み付けをして、中間値の依存度を高くしてもよい。
【0027】図5は、本発明の第3の実施例を示しており、映像信号処理回路20において、第2のサンプルホールド回路23への撮像信号入力ラインに第1の遅延回路41を介挿接続し、第3のサンプルホールド回路24への撮像信号入力ラインには、第1の遅延回路41よりさらに遅延量の大きい第2の遅延回路42を介挿接続し、第1ないし第3のサンプルホールド回路22,23,24において同時にサンプリングを行うようにしたものである。ただし遅延量は、第1及び第2の遅延回路41ともに、一つの撮像信号分の時間Tより小さくしなければならない。なお、それ以外は第1の実施例の構成と同じである。
【0028】図6は、その各部の信号波形を示しており、遅延されていない撮像信号Aと第1の遅延回路41を通った撮像信号Bと、第2の遅延回路42を通った撮像信号Cを、少しずつ遅れた位相で、同じサンプリングパルスDによって同時にサンプリングする。
【0029】そして、同一画素からの撮像信号に対する位相のずれたサンプル値E,F,G(■、■及び■のアナログ電圧値)を、次のサンプリングまで各々保持出力する。その後、信号処理された信号に対して、アナログデジタル変換回路28が、Hで示されるようなA/Dクロックパルスにより、データをデジタル信号化する。
【0030】なお本発明は上記実施例に限定されるものではなく、例えば位相を変えて撮像信号をサンプリングする数は、三つに限らず複数であれば幾つであってもよい。
【0031】
【発明の効果】本発明によれば、同一画素から送られてきた同じ撮像信号から複数の映像信号が位相を変えて抽出され、その複数の映像信号の平均値が出力されるので、元の撮像信号に単発的にノイズが乗っていて、いずれかのサンプルホールド回路でノイズ成分がサンプリングされても、加算回路からはノイズの影響が弱められた映像信号が出力される。したがって、ノイズの影響を受けにくく、安定して良好な画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例の構成図である。
【図2】本発明の第1の実施例の信号波形を示すタイムチャート図である。
【図3】本発明の第2の実施例の構成図である。
【図4】本発明の第2の実施例の信号波形を示すタイムチャート図である。
【図5】本発明の第3の実施例の構成図である。
【図6】本発明の第4の実施例の信号波形を示すタイムチャート図である。
【図7】従来例の信号波形を示すタイムチャート図である。
【符号の説明】
8 固体撮像素子
22,23,24 サンプルホールド回路
25 加算回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】内視鏡の挿入部先端に内蔵された固体撮像素子から出力される撮像信号をサンプリングして映像信号を抽出するための電子内視鏡の映像信号処理装置において、上記固体撮像素子の同一画素から送られてくる一つの撮像信号に対して時間をずらしてサンプリングをしてそのサンプル値を次のサンプリングまで各々保持出力するなくとも三つのサンプルホールド回路と、上記サンプルホールド回路から出力された信号を、サンプルデータの最大値と最小値に比べ中間値の依存度を大きくして加算・平均して出力する加算回路とを設けたことを特徴とする電子内視鏡の映像信号処理装置。
【請求項2】上記サンプルホールド回路と加算回路との間に、アナログ信号をデジタル信号に変換するためのアナログデジタル変換回路が介挿されていて、上記加算回路においてはデジタル信号によって演算が行われる請求項1記載の電子内視鏡の映像信号処理装置。
【請求項3】内視鏡の挿入部先端に内蔵された固体撮像素子から出力される撮像信号をサンプリングして映像信号を抽出するための電子内視鏡の映像信号処理装置において、上記固体撮像素子の同一画素から送られてくる一つの撮像信号を、その撮像信号と同形で互いの位相のみ異なる複数の信号に分けて出力するための撮像信号遅延手段と、上記撮像信号遅延手段からの複数の出力信号を同時にサンプリングしてそのサンプル値を次のサンプリングまで各々保持出力する少なくとも三つのサンプルホールド回路と、上記サンプルホールド回路から出力された信号を、サンプルデータの最大値と最小値に比べ中間値の依存度を大きくして加算・平均して出力する加算回路とを設けたことを特徴とする電子内視鏡の映像信号処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【特許番号】特許第3435211号(P3435211)
【登録日】平成15年5月30日(2003.5.30)
【発行日】平成15年8月11日(2003.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−88183
【出願日】平成6年4月26日(1994.4.26)
【公開番号】特開平7−289508
【公開日】平成7年11月7日(1995.11.7)
【審査請求日】平成12年12月6日(2000.12.6)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【参考文献】
【文献】特開 平4−156077(JP,A)
【文献】特開 昭63−245181(JP,A)