説明

電子写真感光体、プロセスカートリッジ、画像形成装置

【課題】、振動による鳴きやビビリと感光体の共振音の発生を防止しつつ、画像ムラ、クリーニング不良の発生のない、安定で良好な画像品質を可能にする。
【解決手段】感光体ドラム021の内部に、その軸方向に対して垂直な面でC形状を有する制振材062を挿入して用いる。制振材062の内部には制振材062の凸部062cを保持する保持部材063を配する。制振材062が感光体ドラム021の内部中心から外側方向に反発する力を利用して感光体ドラム021の内壁により密着し、防振、制振効果を高めるとともに、その内部の保持部材063で制振部材062のC型形状の開き具合を制御し、制振部材062が感光体ドラム021の内壁を押しすぎて、感光体ドラム021の外径の不均一化を防止する構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真感光体、及びこれを用いたプロセスカートリッジならびにプリンタ、複写機、ファクシミリ、これらの複合機等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真技術は広く利用されており、ファクシミリやパーソナルコンピューターに接続するプリンタに利用されているが、近年では、デジタル記録技術がプリンタのみならず通常の複写機にも応用され、デジタル複写機の開発が進み、その需要は今後益々高まっていく傾向にある。
【0003】
このようなデジタル複写機では、オフィス環境の効率的な利用の観点から画像形成速度の向上、高画質化、小型化、さらに環境負荷低減の目的から装置の長寿命化が要求されている。
【0004】
今日の電子写真装置では、市場からの要求に伴い、カラー複写機やカラープリンタの等々が多く市販され、カラー化が進んでいる。ところでカラー電子写真装置には、一つの感光体(像担持体)の周りに複数色の現像装置を備え、感光体上にカラー像を形成し、このトナー像を転写してカラー画像を形成する、いわゆるリボルバ型のものと、感光体に個別に現像装置を備え、単色の像を形成しこれらを並べて配置しそれぞれの単色の像を順次重ねて転写していき、カラー像を形成するいわゆるタンデム型のものがそれぞれ広く用いられている。
【0005】
リボルバ型のものは、感光体を一つしか使用しないため、装置の小型化が比較的有利であるが、複数回の画像形成を行わなければならないので、高速化には不利である。逆にタンデム型では装置が大型化するが、高速化には有利であるという特徴がある。近年、カラーの画像形成装置においてもモノクロ機並みのスピードが要求されることからタンデム型の画像形成装置が注目されるにいたっている。
【0006】
タンデム型の画像形成装置の例を図1に示す。この装置では、図中01は回転自在に駆動可能な像担持体(感光体)であり、まず帯電装置02により像担持体01表面を一様に帯電させる。次いで、露光用光学系によりレーザビーム03を照射、像担持体01表面を露光して像担持体上に静電潜像を形成させた後、現像ユニット04内の現像剤05を像担持体01表面に移動させて、像担持体01上に可視画像を形成する。次に、中間転写装置06と像担持体01との当接部において、当接部の中間転写装置06内部に設けられた転写ロ−ラ07により、像担持体01表面の現像剤05を中間転写装置07表面に転写する。転写された現像剤は2次転写部08にて紙上に転写された後、定着装置09に供給され、紙上にトナー像が定着される。一方、像担持体01表面に残留した現像剤05は、次回の画像形成に備えクリーニング装置010内のクリーニングブレード011により清掃除去される。
【0007】
このクリーニング装置10としては、ファーブラシや磁気ブラシ等を使用するものや、クリーニングブレードを使用するものなどがあるが、構成が簡素で安価なことにより、クリーニングブレードで感光体の表面に付着した残留物を掻き落とすタイプのクリーニング装置が広範に使用されている。
【0008】
このタイプのクリーニング装置10で良好な画像品質を得るためには、クリーニングブレード011により転写残トナーを像担持体01から良好に除去する必要がある。そこで、クリーニングブレード011のトナー阻止力を向上させるために、クリーニングブレード011を像担持体01にできるだけ高圧力で押し付け、像担持体01とクリーニングブレード011の密着性を高めるような構成をとることが多い。
【0009】
またクリーニング性の向上のためには、クリーニングブレード011と像担持体01の当接部付近に滞留した転写残トナーを掃き出すため、クリーニングブレード011と像担持体01の間の摩擦力により、クリーニングブレード011の圧縮復元運度(スティックスリップ)を活性化することが知られている。クリーニングブレード011を高圧力で像担持体01に押し付けることにより、スティックスリップは加速し、クリーニング性が向上する。また、クリーニングブレード011にはゴム材が用いられることが多いが、ブレードのゴム材料に高反発弾性のブレードを使用することでスティックスリップは加速し、クリーニング性が向上する。ところが、クリーニングブレード011と像担持体01の当接部における線圧を高くしすぎると、クリーニングブレード011の過剰な振動によるビビリ音が発生したり、クリーニングブレード011の当接点と像担持体01との共振による異音が発生したりしてしまうことがある。すなわち、クリーニング性を維持するため、ある程度のスティックスリップは必要であるが、大きくしすぎるとブレードが鳴いてしまうという相反する作用がある。
【0010】
こうした、異音を低減するため従来から種々の方法が提案されてきた。特許文献1によると、感光ドラムに接触して感光ドラムを帯電するために振動電圧が印加される帯電部材と、感光ドラムをクリーニングするクリーニングブレードを備えるクリーニング装置とを備え、クリーニング装置は振動を吸収する振動吸収部を備え、帯電部材と感光ドラムとの間で発生する帯電音を低減することが提案されている。しかし、クリーニング装置の振動吸収部だけでは、ブレードホルダー自身の振動を抑制することができない。
【0011】
特許文献2によると、材質の異なる複数のクリーニングブレードをクリーニング周辺の温度により使い分ける事を規定しているが、複数のブレードを使用することによるコストアップ、またブレードの切替機構、レイアウト等装置の大型化が避けられない。
【0012】
特許文献3によると、クリーニングブレードの一面に板ばねの制振部材を設置し、鳴きを防止しているが、クリーニングブレードの支点がばね部材であるため像担持体回転時の振動を拾ってしまうため当接状態が安定せず、安定したクリーニング性を確保する事が困難である。
【0013】
このようにブレードに制振効果を付与し、ブレードの振動自体を抑制する試みがなされているが、どれも十分な効果があるとはいえない。そこで、振動を伝達し共振する像担持体に制振効果を付与する方法が提案されてきた。
【0014】
例えば特許文献4によると、画像形成装置のプロセスカートリッジ内に内蔵される感光ドラムにおいて、金属製の円筒部材と、円筒部材の外面の少なくとも一部を包囲する弾性材と、円筒部材の外面に弾性材を密着させたコーティング層とを備える防振材をドラムシリンダ内に配置して、感光ドラムの振動を吸収し感光ドラムの回転時に発生する振動を確実に吸収すると共に、防振材と感光ドラムとの密着性を高めることが提案されている。しかし、円筒部材の外面に弾性材を密着させたコーティング層を備える防振材をドラムシリンダ内に圧入することによりドラムが部分的に変形し、あるいは膨らんでしまい、中間調画像等にムラ、直線曲がり等の不具合が発生してしまう。
【0015】
特許文献5によると、外径50mm以下の導電性円筒状支持体上に感光層を有し、該円筒状支持体内部に振動抑制部材を具備した電子写真感光体において、該電子写真感光体の円筒度を0.03mm以下にし、接触帯電方式で発生する振動音やクリーニングブレードの振動音を低減し、画像ムラのない高画質な画像が得られることが提案されている。しかし、支持体内径より外径の大きい振動抑制部材を縮径して円筒状支持体に挿入後内壁に密着するようにしているため、支持体内径と振動抑制部材の外径差により円筒状支持体に密着しない部分が生じてしまう。また、支持体内径と振動抑制部材の外径バラツキにより振動音の抑制が不十分な場合がある。
【0016】
【特許文献1】特開平5−341701号公報
【特許文献2】特開平5−341699号公報
【特許文献3】特開平4−172486号公報
【特許文献4】特開2001−235971号公報
【特許文献5】特開2002−116661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、このような従来の問題点を踏まえてなしたもので、上記従来のクリーニングブレードおよびこれを用いる画像形成装置における問題に鑑み、振動による鳴きやビビリと感光体の共振音の発生を防止しつつ、画像ムラ、クリーニング不良の発生のない、安定で良好な画像品質を有する電子写真感光体、プロセスカートリッジ、画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の請求項1に係る電子写真感光体は、中空円筒状の感光体の内面に、該感光体の軸線に垂直な断面がC型形状の制振部材を有し、該制振部材のC型端部にはC型形状断面の中心方向に向かう凸部を有し、かつ該制振部材内面には前記凸部を保持する凹部を備えた円筒型の保持部材を有することを特徴とする。
【0019】
請求項2に係るものは、前記制振部材表面が弾性樹脂層であることを特徴とする。
【0020】
請求項3に係るものは、前記制振部材が制振鋼板からなることを特徴とする。
【0021】
請求項4に係るものは、前記制振部材が制振樹脂からなることを特徴とする。
【0022】
請求項5に係るものは、前記制振部材表面がゴム状材料からなることを特徴とする。
【0023】
請求項6に係るものは、前記制振部材の前記感光体の軸線に沿う方向での少なくとも一端が先細のテーパー形状を有することを特徴とする。
【0024】
請求項7に係るものは、前記保持部材が金属材料からなることを特徴とする。
【0025】
請求項8に係るものは、前記保持部材が樹脂材料からなることを特徴とする。
【0026】
請求項9に係るものは、前記保持部材の前記感光体の軸線に沿う方向での少なくとも一端が先細のテーパー形状を有することを特徴とする。
【0027】
請求項10に係るものは、前記制振部材の開口部の円周方向で反対側の位置にくびれた溝部を有することを特徴とする。
【0028】
請求項11に係るものは、前記溝部を複数有することを特徴とする。
【0029】
請求項12に係るものは、前記制振部材及び前記保持部材を長手方向に2個以上有することを特徴とする。
【0030】
請求項13に係る電子写真用プロセスカートリッジは、請求項1から12のいずれかに記載の電子写真感光体を有することを特徴とする。
【0031】
請求項14に係る画像形成装置は、少なくとも帯電手段、レーザー露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段を有する画像形成装置であって、請求項12に記載のプロセスカートリッジを装置本体に着脱自在に有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
本発明により、弾性体ブレードと感光体表面のスティックスリップを加速した場合でも、その副作用として発生する弾性体ブレードと感光体表面の摩擦振動を感光体で振動減衰させ、感光体との共振音の発生を防止することができ得るようになるだけでなく、制振材の直径精度が向上して感光体外径の変動による回転フレが防止され、感光体の回転フレによる画像濃度ムラ、クリーニング不良の発生を防止することが可能になり、そのため、ユーザーに不快な音を発生することなく、長期にわたり高品質な画像を提供することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下本発明を実施するための最良の形態を、図に示す実施例を参照して説明する。
【実施例1】
【0034】
まず、本発明の実施対象とする画像形成装置の概略構造について説明する。図2において、像担持体である感光体ドラム021の周囲には、感光体ドラム021の表面を帯電するための帯電装置022、一様帯電処理面に潜像を形成するためのレーザー光線でなる露光023、感光体ドラム021表面の潜像に帯電トナーを付着することでトナー像を形成する現像装置024、形成された感光体ドラム021上のトナー像を被転写体へ転写するための転写装置025、感光体ドラム021上の残留トナーを除去するためのクリーニング装置026、感光体ドラム021上の残留電位を除去するための除電装置027が順に配置されている。タンデム型の電子写真では、主にブラック、マゼンタ、シアン、イエローといった単色の画像を感光体ドラム021表面に形成する。このような構成において、画像形成がネガポジ方式(露光部電位を低くしトナーを付着させる)で行われる場合、帯電装置022の帯電ローラ022’によって表面を一様に負に帯電された感光体ドラム021は、露光023によって感光体表面に静電潜像を形成され、現像装置024によってトナーを感光体ドラム021表面に付着させ、像を可視化する。トナー像は、転写ベルトなどでなる転写装置025によって、感光体ドラム021表面から転写され、感光体ドラム021から転写ベルトに転写されなかった残トナー成分はクリーニング装置026により感光体ドラム021の表面から除去される。転写ベルト表面に転写されたトナー像は、図示しない2次転写部にて2次転写ローラにバイアスが印加され、給紙トレイから搬送された記録紙へ転写される。転写後の残留トナー成分あるいは、外添材成分はクリーニング部材026によって除去される。そして、未定着の記録紙上のトナー像は定着器によって記録紙に定着される。残留トナーを除去された感光体ドラム021は除電ランプ027で残留電位をキャンセルされ、次回の画像形成プロセスに供される。
【0035】
感光体ドラム021には、有機感光体が使用されるが、この他にセレンテルル感光体、セレン感光体、CdS感光体やアモルファスシリコン感光体などの無機感光体も使用できる。またドラム形状ではなく、ベルト形状のものも使用できる。ただし、公害問題や製造コストが高いなど不具合が多く、省エネルギー、省資源、製造容易性、高感度設計が可能、低コスト、無公害などメリットの大きい有機感光体が望ましい。
【0036】
帯電装置022には、感光体ドラム021に接触配置した帯電ロールの芯金に高電圧を引加し、感光体ドラム021の表面を一様に帯電する接触ロール帯電方式を使用しているが、チャージワイヤーに高電圧を印加することにより放電するコロトロン、スコロトロン方式、この他に帯電ブラシ、帯電シート、針電極などを使用することができる。これらは、感光体に対して非接触で感光体表面を帯電できるため、クリーニング性の影響を受けにくいというメリットはあるが、放電に伴って生成されるオゾンやNOx等の放電生成物の発生量が帯電ロール方式に比較し格段に大きいため、感光体の耐久性の面で課題がある。
【0037】
転写装置025としては、中間転写ベルト方式を用いているが、この他にチャージワイヤー、転写ローラ、針電極、転写ドラムなどを使用することができる。
【0038】
クリーニング装置026としては、ネオプレンゴム、クロロプレンゴム、シリコンゴム、アクリルゴムなどの弾性部材を使用することが可能であるが、感光体に化学的なダメージを与えず、耐久性、耐オゾン性、耐油性等優れた特性を有するポリウレタンゴムでできたクリーニングブレードが一般的に使用されている。
【0039】
クリーニングブレード029は、図3に示すようにクレーニングブレードを支持する支持部材040と板状の弾性体ブレード039によって構成され、弾性体ブレード039の自由端側先端部(以下、単にエッジと言う)039cが、矢印方向に回転する像担持体021表面に所定の接触角で圧接、使用される。弾性体ブレード039により掻き落とされた転写残トナーは、その下部に設置した搬送スクリュー038等の搬送手段により図示しない廃トナー回収容器に搬送される。
【0040】
耐久時、弾性体ブレード039のエッジ039c近傍には弾性体ブレード039により堰き止められたトナーが除々に累積していく。これらのトナーの溜まりにより、弾性体ブレード−39には押す力が作用し、ついには弾性体ブレード039を押し上げ、トナーが弾性体ブレード039のエッジ039cをすり抜け、クリーニング不良を引き起こしてしまうことがある。したがってクリーニング性を向上させるためには、このトナー溜まりを効率的に除去する必要がある。そのため、弾性体ブレード039の反発弾性の高い材料を選択し、弾性体ブレード039のエッジ039c部分が摩擦力により感光体ドラム021の回転方向に歪んだ時の、弾性復元力を増大し、トナー溜まりを解除する振動、いわゆるスティックスリップ運動を加速する構成になっていることが好ましい。
【0041】
しかし、このように弾性体ブレード039のエッジ039cの振動を大きくしていくと、その分エッジ039cが感光体ドラム021の表面にこすりつけられる力、そしてこすりつけられる距離(感光体ドラム021の周方向での距離)も大きくなるため、これが振動音を発生させ、ユーザーに不快な異音として認識されてしまう。弾性体ブレード039のエッジ039cと感光体ドラム021表面の摩擦振動が、感光体ドラム021と共振してしまうと、さらに高周波の異音が発生し、ますます不快な音を発してしまう。この振動音を低減するため、感光体ドラム021の内面に制振部材を挿入し、加震源となる弾性体ブレード039のエッジ039cと感光体ドラム021表面の摩擦振動を減衰させることで異音に対して効果的である。
【0042】
本実施例においては、感光体ドラム021の内部に挿入するC型断面(感光体ドラム021の軸方向に対して垂直な面でC形状をなす)を有する制振材062を用いるとともに、その内部にはC型形状の端部に位置する制振材062の凸部062cを保持する保持部材063を有することを特徴とする。そして、C型の制振材062が感光体ドラム021の内部中心から外側方向に反発する力を利用して感光体ドラム021の内壁により密着し、防振、制振効果を高めるとともに、その内部に設置した凹部063cを有する保持部材063にて制振部材062のC型形状の開き具合を制御し、制振部材062が感光体ドラム021の内壁を押しすぎて、感光体ドラム021の外径の不均一化を防止する構造になっている。
【0043】
すなわち制振材062のみでは、感光体ドラム021の内部にC型形状でかつ弾性変形することを利用して挿入することもあり、断面の真円度を保持しにくく、径のばらつきが大きくなってしまい、感光体ドラム021の内壁を押す力が分散してしまう。その結果、感光体ドラム021の外径変動が大きくなり、濃度ムラ等の原因になる。制振材062のC型の端部に凸部063cを入れて形状を保持する保持部材063を追加することで、制振材062の外径を安定させ、感光体ドラム021の外径の変動を抑制しているのである。
【0044】
制振部材と保持部材有無による感光体外径の分布を図4に示す。また使用した制振材062の一例の断面図、未挿入時の制振材の図を図5、図6に示す。また制振材と保持部材を組み合わせた状態の断面図の一例を図7に示す。
【0045】
本実施例で用いた制振材062には、感光体ドラム021の軸方向に伸びるスリット060を有する構造で、感光体ドラム021に非挿入時にはスリット060は開いた状態で、制振材062の断面に仮想的に真円を当てはめると制振材062の外周は仮想の真円の外側に位置するようになっている(図5参照)。
【0046】
感光体ドラム021へは、スリット060の幅を縮める方向につぶし、上述した仮想の真円よりも径を小さくした状態で保持部材063を挿入し、制振材062と保持部材063を組み合わせた状態で再びスリット幅を縮める方向に潰した状態で感光体021の内側に挿入する。感光体ドラム021の軸方向の所定の位置にてつぶす力を解除すると、制振材062自身の復元力にて感光体ドラム021の内壁に密着固定される。感光体ドラム021は、回転駆動する位置での振動もあるため、制振材062の挿入位置は画像形成装置本体等の使用する機器の装置本体からの駆動伝達をうける位置に寄せて挿入することが好ましい。
【0047】
さらに制振材062のスリット060を形成する先端は制振材062の中心方向に凸状に加工を施し、図7に示すとおり、凸部062cの位置を規制する凹部063cを有する保持部材063によりスリット060の開口幅を規制している。スリット060の開口幅は、感光体ドラム021の内径の0.5%〜3%程度にすることが好ましい。この範囲を超えてしまうと感光体ドラム021の内壁との密着性が悪化し、制振部材062を保持できない場合があることに加え、感光体ドラム021の内壁に何も接触していない領域が増えるため、弾性体ブレード039と感光体ドラム021表面の摩擦振動を減衰する効果が低減してしまう。一方、この範囲より小さい場合は、感光体ドラム021に挿入する場合、弾性変形幅が小さくなってしまうので、作業性の面で課題が発生してしまう。
【0048】
さらに感光体ドラム021の内部への挿入の簡便化を図るため、制振材062あるいは保持部材063の端部は挿入方向に対して制振部材062や保持部材063の半径が次第に小さくなっていく、すなわち感光体ドラム021の軸線方向に沿って挿入方向先端側が先細となるテーパー形状をなす構造としておくことが好ましい。これにより挿入作業の容易性が向上するだけでなく、感光体ドラム021の端部へ制振部材062や保持部材063をぶつけることによる打痕キズの発生等を防止できる。テーパー形状は片方の端部のみでも構わないが、両方をテーパー構造にして制振材062等を左右対称形にすると、感光体ドラム021への挿入方向が規制されず、さらに作業性が簡便化するので好ましい。
【0049】
感光体ドラム021内部に収納する制振材062及び保持部材063は1個に限らず2個以上であっても構わない。制振材062の個数を増やした方が、感光体ドラム021の内面を抑える面積が大きくなるため、振動減衰効果が顕著である。
【0050】
クリーニングブレード029の振動は、感光体ドラム021の潰れ方向の振動として伝達され、感光体ドラム021の固有振動数と共振したときに発生しているため、感光体ドラム021内壁に密着する面積が大きいほど、感光体ドラム021の潰れ方向の振動減衰効果は高まる。そのため、異音を抑制するためには内面に密着する面積と振動伝達を抑制する制振部材を選択することが必要である。
【0051】
すなわち、制振部材062には、弾性材料、例えば合成樹脂または合成ゴム材料からなるものが好ましい。振動低減効果を維持するためには制振部材062の厚さは0.5mm以上必要であり、挿入の簡便化から1mm以上5mm以下であることが好ましい。
【0052】
また制振部材062のスリット060の回転方向の180°位置に軸方向に凹形状にくびれた溝部064を設ける(図7参照)と、挿入時に制振材062をつぶす力が小さくて済むため、より簡便に挿入することが可能となる。なお前記溝部を複数個設けて挿入をより容易にしても構わないが、感光体ドラム021内径の75%以上は制振部材062が接していなければ、振動減衰効果が低減し異音を発生させてしまう点に留意する必要がある。
【0053】
なお制振材062に使用する材料は、上述の他、制振樹脂、制振鋼板、ゴム材料などが好ましい。制振樹脂、ゴム材料は主にベース樹脂、活性成分、無機充填材から構成される。ベース樹脂として、例えばポリ塩化ビニル、ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢ビ共重合体、ポリメタクリル酸メチル、ポリフッ化ビニリデン、ポリイソプレン、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体(ABS樹脂)、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、ポリカーボネート、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)の中から選ばれた1種若しくはそれらの混合物を用いることができる。
【0054】
活性成分としては、例えばN,N−ジシクロヘキシルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(DCHBSA)、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ジベンゾチアジルスルフィド(MBTS)、N−シクロヘキシルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(CBS)、N−tert−ブチルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(BBS)、N−オキシジエチレンベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(OBS)、N,N−ジイソプロピルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(DPBS)などのベンゾチアジル基を含む化硫促進剤の中から選ばれた1種若しくは2種以上を挙げることができる。
【0055】
無機充填材としては、マイカ鱗片、ガラス片、グラスファイバー、カーボンファイバー、炭酸カルシウム、バライト、沈降硫酸バリウムなどを挙げることができる。これら無機充填材は、制振性能をさらに向上させる目的で充填されるものである。当該無機充填材の充填量としては、ベース樹脂100重量部に対し10〜100重量部の割合で含まれているのが好ましい。
【0056】
また制振鋼板としては、厚さ0.02〜1mmの鋼板やステンレス箔、アルミニウム板の間に粘弾性を有する樹脂中間層を挟み込んだ複層構造の複合型制振材料等を挙げることができる。
【0057】
粘弾性樹脂中間層としては、厚さ10〜100μmのポリエステル、ポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール等のガラス転移点が−60〜50℃、分子量5000〜50000の樹脂が用いられる。これら粘弾性樹脂は単独、又は2種以上の混合系を適宜組合せて、希望する樹脂の凝集力、接着性、粘着性さらには制振性能等により選定して使用される。
【0058】
なお制振材の表面に設ける弾性樹脂層は厚さ10〜100μmが好ましい。弾性樹脂層の材質としてはゴム弾性を有するエラストマー、例えばエポフレンド(ダイセル製)等の硬さ30〜90(JISA)が好ましい。
弾性樹脂層は有機溶媒に溶解した樹脂液をスプレー、浸漬塗布等の方法で制振材の表面に設けることができる。保持部材については上記と同様の樹脂材料でも構わないが、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、リン青銅などの金属製であっても構わない。
【0059】
<実験例1>
本発明の実験例として以下のものを製作した。ABS樹脂(商品名:GA−704、スミカA&L社製)75部、マイカ(商品名:60C、クラレ製)20部、および活性成分としてN−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド5部からなる樹脂組成物を用いて、スリット幅1.7mm、最大外径22.6mm、厚さ4mm、長さ90mm、かつ片端部がテーパー状(テーパー長さ8mm)である上述した形状の制振部材を成形した。この制振部材表面に厚さ20μmの熱可塑性エラストマー(商品名:エポフレンド、ダイセル製)性弾性層を設けた。さらに上記形状に加工した厚さ1.5mmSUS製の保持部材を前記制振材に挿入した後、この制振部材及び保持部材1組を上記感光体ドラム内に挿入し、弾性的に支持させた後、感光体ドラムに両端に樹脂製フランジを取り付けた。このように製造した制振材及び保持部材を挿入した感光体ドラムを株式会社リコー製Cx3000に組み付け32℃、54%環境下で印字面積率0.5%、1枚間欠モードにて5000枚の耐久試験を行った1000枚ごとに線速120mm/sec、60mm/secで異音の発生有無、ハーフトーン画像にて濃度ムラを確認した。また帯電ロールの汚染状態からクリーニング性について確認を行った。異音に関しては未発生を○、発生したものを×、濃度ムラに関しては目視上認識できないレベル○、目視上明らかであれば×、クリーニング性については、帯電ロールが汚染されていない○、汚染はあるが画像上に現れない△、汚染され画像上のスジもある×で判断を行った。
<実験例2>
厚さ0.1mmのステンレス箔の間に、厚さ40μmのポリエステル樹脂(ガラス転移点:10℃)中間層を有する制振鋼板を加工し制振部材を作製した以外は実施例1と同様の実験を行った。
<実験例3>
感光体ドラム内に挿入する制振部材及び保持部材を2個とした以外は実施例1と同様の実験を行った。
<比較例1>
制振材及び保持部材を未挿入にした以外は実施例1と同様の実験を行った。
<比較例2>
保持部材を未挿入にした以外は実験例1と同様の実験を行った。
【0060】
以上の実験例、比較例についての5000枚耐刷試験後の確認結果の一覧を図8に示す。すべての点において本発明のもののほうが優れていることが分かる。
【0061】
すなわち、本発明により、クリーニング性を向上させるため弾性体ブレードと感光体ドラム表面のスティックスリップを加速した場合においても、その副作用として発生する弾性体ブレードと感光体ドラム表面の摩擦振動を感光体ドラムで振動減衰し、感光体ドラムとの共振音の発生を防止するだけでなく、制振材の感光体ドラムを押す力を規制する保持部材を設置することで制振材の直径精度が向上すため感光体ドラム外径の変動による回転フレを防止し、感光体ドラムの回転フレによる画像濃度ムラ、クリーニング不良の発生を防止する事が可能になるため、ユーザーに不快な音を発生することなく長期にわたり高品質な画像を提供することができる。
【0062】
また、制振部材を感光体ドラムに簡易的に挿入することが可能になり、挿入時の感光体ドラムへのダメージを軽減でき、生産効率が向上し、保持部材の加工精度が向上するため制振材の直径の変動が小さくなり、したがって感光体ドラム外径の変動は小さくなるので、前記変動がいっそう小さくなる。また、保持部材にも制振効果があるために、振動減衰性が向上する。
【0063】
さらに、制振材の潰れ方向に対して必要な力を軽減できるために、感光体ドラム内部への挿入を簡便に行うことが可能となる。また、制振材の変形をさらに容易に行うことが可能になることや、感光体ドラム内面に密着する制振部材の面積率が向上するため、振動を減衰する効果が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】タンデム型の画像形成装置の例を示す図
【図2】本発明の実施対象とする画像形成装置の概略構造を示す断面図
【図3】図2の装置のクリーニング装置の構造を示す断面図
【図4】制振部材と保持部材有無による感光体外径の分布を図4に示す図
【図5】制振材の一例の断面図
【図6】未挿入時の制振材の斜視図
【図7】制振材と保持部材を組み合わせた状態の断面図
【図8】本発明の実験例と比較例についての5000枚耐刷試験後の確認結果の一覧を示す図
【符号の説明】
【0065】
021:感光体ドラム
022:帯電装置
022’:帯電ローラ
023:露光
024:現像装置
025:転写装置
026:クリーニング装置
027:除電装置
029:クリーニングブレード
038:搬送スクリュー
039:弾性体ブレード
039c:弾性体ブレードの自由端側先端部(エッジ)
040:支持部材
060:制振材のスリット
062:制振材
062c:制振材の凸部
063:保持部材
063c:保持部材の凹部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空円筒状の感光体の内面に、該感光体の軸線に垂直な断面がC型形状の制振部材を有し、該制振部材のC型端部にはC型形状断面の中心方向に向かう凸部を有し、かつ該制振部材内面には前記凸部を保持する凹部を備えた円筒型の保持部材を有することを特徴とする電子写真感光体。
【請求項2】
前記制振部材表面が弾性樹脂層であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記制振部材が制振鋼板からなることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記制振部材が制振樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
前記制振部材表面がゴム状材料からなることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電子写真感光体。
【請求項6】
前記制振部材の前記感光体の軸線に沿う方向での少なくとも一端が先細のテーパー形状を有することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の電子写真感光体。
【請求項7】
前記保持部材が金属材料からなることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の電子写真感光体。
【請求項8】
前記保持部材が樹脂材料からなることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の電子写真感光体。
【請求項9】
前記保持部材の前記感光体の軸線に沿う方向での少なくとも一端が先細のテーパー形状を有することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の電子写真感光体。
【請求項10】
前記制振部材の開口部の円周方向で反対側の位置にくびれた溝部を有することを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の電子写真感光体。
【請求項11】
前記溝部を複数有することを特徴とする請求項9に記載の電子写真感光体。
【請求項12】
前記制振部材及び前記保持部材を長手方向に2個以上有することを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の電子写真感光体。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに記載の電子写真感光体を有することを特徴とする電子写真用プロセスカートリッジ。
【請求項14】
少なくとも帯電手段、レーザー露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段を有する画像形成装置であって、請求項12に記載のプロセスカートリッジを装置本体に着脱自在に有することを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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