説明

電子回路ユニット

【課題】振動が加わった際に、ケースの開口部を閉じる蓋がケースから外れるおそれを無くした電子回路ユニットを提供する。
【解決手段】電子部品2が実装された回路基板3を収容したケース1のケース本体101の側壁の開口部側の端部に、該側壁の他の部分よりも肉厚が薄い端部壁110を形成し、この端部壁の内側に該側壁の開口端面に対して段差を有する蓋当接面111を形成する。端部壁110に沿って延びる溝112を蓋当接面に形成しておき、ケースの開口部を閉じる蓋5を端部壁110の内側に嵌合して蓋当接面111に当接させる。ケース本体の端部壁を蓋側に加締めて、蓋の周縁部を蓋当接面の溝112内に押し込んだ状態でケース本体の側壁に固定し、ケース本体101内に樹脂を充填して硬化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関により駆動される乗り物などに取り付けるために、耐候性を持たせる必要がある電子回路ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
耐候性を持たせた電子回路ユニットとして、例えば特許文献1に示されているように、電子部品が実装された回路基板をケース内に収容して、該ケース内に樹脂を充填した構造のものが用いられている。特許文献1に示された電子回路ユニットにおいては、電子部品が実装された回路基板を、一方向に開口した開口部を有するケース内に収容して、該ケース内に絶縁樹脂を充填した後、ケースの開口部を蓋により閉じて樹脂を硬化させることにより、回路基板及び電子部品を樹脂でモールドするとともに、ケース内に充填した樹脂により、蓋を接着してケースに固定するようにしている。
【0003】
ケース内に樹脂を充填して回路基板及び電子部品をモールドする場合には、特にケースの開口部に蓋を取り付ける必要がないが、回路基板に取り付けられる電子部品が発熱量が多いパワー素子である場合には、絶縁樹脂の温度が上昇するため、樹脂が酸化して早期に劣化することがないように、ケースの開口部に金属製の蓋を取り付けて、ケース内の樹脂を外気(酸素)から遮断することが好ましい。
【特許文献1】特開平5−121881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示された電子回路ユニットでは、ケース内に充填した樹脂の接着力のみにより蓋をケースに固定していたため、ユニットに振動が加わると蓋が樹脂から剥離して外れたり、蓋と樹脂との間に隙間が生じて樹脂が外気に触れたりするおそれがあり、わざわざケースに蓋を取り付けた意味が失われるという問題があった。
【0005】
また従来の電子回路ユニットでは、ケース内に充填した樹脂が硬化する際に収縮して(ヒケが生じて)蓋が回路基板側に反ってしまい、蓋の外面が凹んだ状態になることがあった。蓋がこのような状態になると、電子回路ユニットの蓋をヒートシンクに突き当てて取り付けた際に、ユニットの蓋とヒートシンクとの間に広範囲に亘って閉じた隙間が生じ、この隙間が断熱層を形成するため、電子回路ユニットからの放熱が妨げられるという問題があった。
【0006】
またケースの開口部を閉じる蓋を取付面に当接させた状態でユニットを車両などの取り付け箇所に設けられた取付面に取り付けた際に、蓋と取付面との間に閉じた隙間が形成されていると、この隙間内に水が浸入した場合にその水を容易に除去することができないため、蓋が長時間に亘って水に接触した状態に保たれて腐食するおそれがあった。
【0007】
本発明の目的は、振動が加わった際にケース内に充填された樹脂を覆う蓋がケースから外れるおそれを無くすことができるようにした電子回路ユニットを提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、振動が加わった際に蓋がケースから外れるおそれを無くすとともに、ケース本体の開口部を閉じる蓋の外面が凹んだ状態になるのを防いで、ユニットの蓋をヒートシンクまたは取付面に当接させた状態にしたときにユニットとヒートシンクとの間に閉じた隙間が形成されるのを防ぐことができるようにした電子回路ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、電子部品が実装された回路基板と、一方向に開口したケース本体を有して該ケース本体の内部に回路基板を収容したケースと、ケース本体の開口部を閉じる蓋と、蓋に接するようにしてケース本体内に充填された絶縁樹脂とを備えた電子回路ユニットを対象としたものであって、本発明においては、ケース本体の側壁の開口端寄りの部分に、該側壁の他の部分よりも肉厚が薄い端部壁が、該側壁の外側面側に片寄せて形成されると共に、該端部壁の内側に、該側壁の開口端面に対して段差を有する蓋当接面が形成されて、該蓋当接面に前記端部壁に沿って延びる溝が形成される。ケース本体の開口部を閉じる蓋は、上記端部壁の内側に嵌合されて蓋当接面に当接された状態で配置され、ケース本体の端部壁が蓋側に加締められることにより、蓋の周縁部が溝内に押し込まれた状態でケース本体の側壁に固定される。
【0010】
上記のように構成すると、ケース本体の開口部を閉じる蓋は、ケース内に充填する樹脂により接着されるとともに、ケース本体の端部壁の加締めによってもケース本体に固定されるため、蓋をケース本体に強固に取り付けることができ、振動が生じる箇所にユニットを取り付けた場合に、振動により蓋がケース本体から外れるおそれを無くすことができる。
【0011】
上記のように、ケース本体の端部壁を蓋側に加締めることにより、蓋の周縁部を蓋当接面の溝内に押し込んだ状態で、蓋をケース本体の側壁に固定するようにすると、ケース本体内に樹脂を充填する前の状態では、蓋が外側に僅かに反った状態にされる。この状態で、ケース本体内に樹脂を充填して硬化させると、樹脂の収縮に伴って、蓋の外側への反りが矯正されていく。樹脂の硬化時の収縮量を考慮して、樹脂が硬化した際に蓋の反りがなくなるように、樹脂を充填する前の状態での蓋の外側への反りの程度を適正に設定しておけば、樹脂が完全に硬化した際に蓋の外面をほぼ平坦な状態にすることができる。従って、ケース本体の開口部を閉じる蓋の外面が凹んだ状態になるのを防ぐことができ、ユニットの蓋をヒートシンクまたは取付面に当接させた状態にしたときにユニットとヒートシンクまたは取り付け面との間に外部に対して閉鎖された隙間が形成されるのを防ぐことができる。
【0012】
本発明の好ましい態様では、蓋当接面に形成された溝内に樹脂が充填されて、該溝内に充填された樹脂により、蓋と蓋当接面との間がシールされる。
【0013】
上記のように構成すると、蓋と蓋当接面との間がシールされるため、ケース内に充填された絶縁樹脂を確実に外気から遮断することができる。またケース内に充填した樹脂及び溝内に充填した樹脂によっても蓋をケース本体に固定することができるため、蓋を強固に取り付けることができる。
【0014】
上記のように、蓋当接面に形成された溝内に樹脂を充填して、該溝内に充填された樹脂により、蓋と蓋当接面との間をシールする場合には、ケース本体の端部壁を周方向に間隔をあけた複数箇所で離散的に加締めるようにするのが好ましい。
【0015】
ケース内に充填した樹脂及び溝内に充填した樹脂により蓋をケース本体に接着する場合には、ケース本体の端部壁を周方向に間隔をあけた複数箇所で離散的に加締めるだけで蓋をケース本体に確実に固定することができる。ケース本体の端部壁の離散的な加締めは、ケース本体の端部壁の内側に蓋を嵌合させた状態で、端部壁の複数の加締め箇所を同時に加締め工具で押圧するだけで、ほぼ瞬時に行うことができるため、加締め作業を行う工程を簡単にして、ユニットの製造コストを低減することができる。
【0016】
本発明の好ましい態様では、ケース本体の側壁の開口端寄りの部分に、該側壁の他の部分よりも肉厚が薄い端部壁が、該側壁の外面側に片寄せて形成されると共に、該端部壁の内側に、該側壁の開口端面に対して段差を有する蓋当接面が形成され、該蓋当接面は、ケース本体の側壁の内側面側から外側面側に向うに従って前記側壁の開口端から離れていくように傾斜した傾斜面とされる。そして、ケース本体の開口部を閉じる蓋は、ケース本体の端部壁の内側に嵌合されて蓋当接面に当接された状態で配置され、蓋の周縁部寄りの部分を蓋側に加締められることにより、蓋の周縁部寄りの部分が傾斜面に添うように変形された状態で、蓋がケース本体の側壁に固定される。
【0017】
上記のように構成した場合も、ケース本体内に樹脂を充填する前の状態では、蓋が外側に僅かに反った状態にされるため、ケース本体の開口部を閉じる蓋の外面が凹んだ状態になるのを防ぐことができ、ユニットの蓋をヒートシンクまたは取付面に当接させた状態にしたときにユニットとヒートシンクまたは取り付け面との間に閉じた隙間が形成されるのを防ぐことができる。
【0018】
本発明の好ましい態様では、ケース本体の開口方向を高さ方向とした時に、高さ寸法が幅寸法及び奥行き寸法よりも小さい値をもつように形成され、ケース本体の一つの側壁に樹脂充填口が形成されて、該樹脂充填口を通してケース内に樹脂が充填される。
【0019】
上記のように構成すると、ケース内に樹脂を充填するために、ケースの樹脂充填口を上に向けて各ユニットを作業台上に配置した際に、ケース本体の開口部を上に向けた状態で各ユニットを作業台上に配置した場合に比べて、作業台上で各ユニットのケース本体が占有する面積を狭くすることができるため、ケース内に樹脂を充填する際に作業台上に一度に並べるユニットの数を増やして、作業能率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ケース本体の開口部を閉じる蓋を、ケース内に充填する樹脂により接着するとともに、端部壁の加締めによってもケース本体に固定するようにしたため、蓋をケース本体に強固に取り付けることができ、振動が生じる箇所にユニットを取り付けた場合に、振動により蓋がケース本体から外れるおそれを無くすことができる。
【0021】
また本発明では、ケース本体の端部壁を蓋側に加締めることにより、蓋の周縁部を蓋当接面に設けられた溝内に押し込んだ状態で蓋をケース本体の側壁に固定するか、または蓋の周縁部寄りの部分を蓋当接面に添わせた状態で蓋をケース本体の側壁に固定するので、ケース本体内に樹脂を充填する前の状態で、蓋が外側に僅かに反った(膨らんだ)状態にすることができ、この状態で、ケース本体内に樹脂を充填して硬化させることにより、樹脂の収縮に伴って、蓋の外側への反りを矯正して、樹脂が完全に硬化した時点で蓋の外面をほぼ平坦な状態にすることができる。従って、ケース本体の開口部を閉じる蓋の外面が凹んだ状態になって、ユニットの蓋をヒートシンクまたは取付面に当接させた状態にしたときにユニットの蓋とヒートシンクまたは取り付け面との間に閉じた隙間が形成されるのを防ぐことができ、該隙間が断熱層となってユニットからの放熱が妨げられたり、該隙間内に侵入した水により蓋が腐食したりするのを防ぐことができる。
【0022】
本発明において、蓋当接面に形成された溝内に樹脂を充填して、該溝内に充填された樹脂により、蓋と蓋当接面との間をシールするようにした場合には、蓋と蓋当接面との間をシールすることができるため、ケース内に充填された絶縁樹脂を確実に外気から遮断することができる。またケース内に充填した樹脂及び溝内に充填した樹脂によっても蓋をケース本体に固定することができるため、蓋を強固に取り付けることができる。
【0023】
本発明において、蓋当接面に形成された溝内に樹脂を充填して、該溝内に充填された樹脂により、蓋と蓋当接面との間をシールするとともに、ケース本体の端部壁を、該端部壁の周方向に間隔をあけた複数の箇所で蓋側に加締めることにより、蓋をケース本体に固定するようにした場合には、ケース本体の端部壁を加締める工程を簡単に行うことができるため、ユニットの組立を簡単にして製造コストの低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1は本実施形態で用いるケースの平面図、図2は図1のII−II線拡大断面図、図3は図1のケース内に電子部品が実装された回路基板を収容してコネクタを取り付けた状態を示した平面図、図4は図3のケースに取り付ける蓋の平面図、図5は図3のケースに蓋を被せた状態を示した平面図、図6(A)は図5のVI−VI線断面図、(B)は(A)のケースの端部壁に加締め工具を当てた状態を示した断面図、(C)は同ケースの端部壁を加締めて蓋を固定した状態を示した断面図、図7は図6(C)の要部の拡大断面図、図8はケースの端部壁を加締めた状態を示した平面図、図9は図8の背面図、図10は本発明の他の実施形態の要部を示した拡大断面図である。
【0025】
図1は、本実施形態で用いるケース1を示したもので、このケースはアルミニウム等の熱伝導性が良好な金属からなっている。ケース1は、一面が開口した直方体状のケース本体101と、ケース本体101の外面に多数形成された放熱フィン102と、ケース本体101の4つの側壁101aないし101dのうち、コの字形に配置された3つの側壁101aないし101cの側面から外側に張り出した鍔板部103とを備えている。相対する側壁101a及び101cに形成された鍔板部103には、このユニットを取り付け箇所に固定するためのボルトを通す長円状のボルト挿通孔104を有するボス部105が一体に形成されている。
【0026】
ケース1は、ケース本体の開口方向を高さ方向としたときに、高さ寸法hが奥行き寸法d及び幅寸法wよりも小さく設定されている。コの字形に配置された3つの側壁101aないし101cの開口端(ケース本体の開口端)寄りの部分には、図2に示されているように、各側壁の他の部分よりも肉厚が薄い端部壁110が、側壁101aないし101cの外側面側に片寄せてそれぞれ形成され、該端部壁110の内側に、ケース本体101の開口端面に対して段差を有する蓋当接面111が形成されている。蓋当接面には、端部壁110に沿って延びる溝112が形成されている。
【0027】
ケース本体101の一つの側壁101dには、ケース本体の開口端に開口した第1のU字形の切り欠き溝115と、該第1の切り欠き溝115の底部とケース本体の底部との間にあって第1の切り欠き溝115の開口部の幅よりも狭い開口幅をもって第1の切り欠き溝115の底部に開口した第2のU字形の切り欠き溝116とが、側壁101dを貫通した状態で設けられている。
【0028】
ケース本体101内には、図3に示したように、電子部品2を実装した回路基板3が収納される。回路基板3の端部寄りの部分に、回路基板3に形成された回路を外部の回路に接続する際に用いるコネクタ4が取り付けられている。図3及び図9に示されているように、コネクタ4は、ほぼ直方体状に形成されて一方向に開口した凹部401aを有する樹脂製のハウジング401の凹部401a内に複数の雄形の接触子402を配置して、該接触子402を凹部401aの底部に埋設して支持した構造を有するものである。コネクタのハウジング401の側壁には、ケース本体101の切り欠き溝116の両側の縁部116aを嵌合させる溝403aを有する取付部403(図3参照)が形成されている。ハウジング402の背面側から雄形接触子402につながる複数のリード端子405が導出されて直角に折り曲げられ、これらのリード端子405の先端が回路基板3の端部に設けられたスルーホールに挿入されて回路基板の所定の端子パターンに半田付けされている。
【0029】
コネクタ4は、回路基板3をケース本体101の開口部からその内部に挿入する際に、ハウジング401の側壁に設けられた取付部403の溝403aにケース本体の切り欠き溝116の縁部116aを嵌合させることにより、ケース1に取り付けられる。ケース本体101の底部には、コネクタ4の取付部403の端部を嵌合させるための凹部117が形成されている。図3は、ケース本体101内に回路基板3を収容し、コネクタ4をケース1に取り付けた状態を示している。
【0030】
このようにして、コネクタ4をケース本体101に取り付けた状態で、コネクタ4のハウジング401の上端の端面がケース本体の開口端面と同一面上に位置するように各部の寸法が定められている。
【0031】
ケース本体101内に回路基板3を収容し、コネクタ4をケース1に取り付けた後、ケース本体101の蓋当接面111に形成された溝112内に光硬化性や熱硬化性の樹脂液を充填し、ケース本体の開口部を閉じる蓋5(図4参照)をケース本体の端部壁110の内側に嵌合させて蓋当接面111に当接させる。蓋5は熱伝導性が良好な金属からなっていて、ケース本体の端部壁111の内側に隙間なく嵌合する大きさを有するように形成されている。図6(A)に示すように、ケース本体の端部壁110の内側に蓋5を嵌合させた後、図6(B)に示したように、加締め工具(ポンチ)6を端部壁110の複数の要加締め箇所に当てがって、これらの各加締め工具で加締め箇所を押圧することにより端部壁110を蓋5側に加締める。本実施形態では、コの字形をなす端部壁110の互いに平行な2辺のそれぞれに2箇所の加締め箇所を設定して、合計4箇所の加締め箇所を蓋5側に加締めるようにしている。ケース本体の端部壁110を蓋5側に加締めると、蓋5の周縁部が溝112内に押し込まれた状態で、蓋5がケース本体の側壁101aないし101cに固定される。そのため、蓋5は、図6(C)に示すように、ケースの外側に僅かに反った状態で(膨らんだ状態で)端部壁110の加締めと溝112内に充填された樹脂(接着剤)とによりケース本体に固定される。図7において、110′は加締め部を示し、8は溝112内に充填された樹脂を示している。
【0032】
上記のようにして蓋5をケース本体に取り付けた後、ケース本体101のコネクタ4が取り付けられた側壁101dを上に向けて、ケース1を作業台上に配置し、コネクタ4の側面とケース本体の側壁101dに設けられた切り欠き溝115の内側面との間に形成された樹脂充填口7からケース本体101内に熱硬化性の絶縁樹脂を充填し、該樹脂を硬化させる。ケース本体内に樹脂を充填した後、該樹脂を硬化させると、樹脂のヒケにより蓋5の反りが矯正されていく。本発明においては、ケース本体101内に充填した樹脂が完全に硬化した時点で、蓋5の外面がフラットな状態に戻るように、ケース本体の端部壁を加締めた際の蓋5の反り量を、樹脂の収縮量に見合った大きさに設定しておくことが好ましい。このように設定しておくと、蓋5をヒートシンクなどに突き当ててユニットを取り付けた際に、蓋5とヒートシンクなどの間に外部に対して閉鎖された隙間が形成されるのを防ぐことができるため、ユニットからの放熱が妨げられるのを防ぐことができる。
【0033】
なお蓋5の反り量が、ケース本体内に充填した樹脂の収縮量よりも大きかった場合には、ケース本体内に充填した樹脂が完全に硬化した状態でも、蓋5が外側に反った状態になり、蓋5をヒートシンクに突き当てて取り付けた際に蓋5とヒートシンクとの間に隙間が形成されるおそれがあるが、この場合に蓋5とヒートシンクとの間に形成される隙間は外部に開放されているため、外部に対して閉鎖された隙間が蓋5とヒートシンクとの間に形成される場合ほど放熱が妨げられることはない。
【0034】
上記のように構成すると、ケース本体101の開口部を閉じる蓋5は、蓋当接面111に形成された溝112内に充填された樹脂及びケース本体101内に充填された樹脂により接着されるとともに、ケース本体の端部壁110の加締めによってもケース本体に固定されるため、蓋5をケース本体に強固に取り付けることができ、振動が生じる箇所にユニットを取り付けた場合に、振動により蓋がケース本体から外れるおそれを無くすことができる。
【0035】
上記の実施形態では、ケース本体の開口端に設ける端部壁110の内側の蓋当接面111に溝112を設けて、端部壁110を加締めた際に、蓋5の周縁部を溝112内に押し込むことにより、蓋5を外側に反らせるようにしたが、図10に示すように、蓋当接面111を、側壁101aないし101cの内側面側から外側面側に向うに従ってケース本体の開口端から離れていくように傾斜した傾斜面として、ケース本体の端部壁110が蓋5側に加締められた際に、蓋5の周縁部寄りの部分を傾斜した蓋当接面111に添わせるように変形させることにより、蓋5を外側に反らせるようにしても良い。このように構成する場合も、蓋5を端部壁110の内側に嵌合させる前に、蓋当接面111にシール用の樹脂を塗布しておくことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本実施形態で用いるケースの平面図である。
【図2】図1のII−II線拡大断面図である。
【図3】図1のケース内に電子部品が実装された回路基板を収容してコネクタを取り付けた状態を示した平面図である。
【図4】図3のケースに取り付ける蓋の平面図である。
【図5】図3のケースに蓋を被せた状態を示した平面図である。
【図6】(A)は図5のVI−VI線断面図、(B)は(A)のケースの端部壁に加締め工具を当てた状態を示した断面図、(C)は同ケースの端部壁を加締めて蓋を固定した状態を示した断面図である。
【図7】図6(C)の要部の拡大断面図である。
【図8】本実施形態において、ケースの端部壁を加締めた状態を示した平面図である。
【図9】図8の背面図である。
【図10】本発明の他の実施形態の要部を示した拡大断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 ケース
101 ケース本体
101aないし101d ケース本体の側壁
110 端部壁
111 蓋当接面
112 溝
2 電子部品
3 回路基板
4 コネクタ
5 蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が実装された回路基板と、一方向に開口したケース本体を有して該ケース本体の内部に前記回路基板を収容したケースと、前記ケース本体の開口部を閉じる蓋と、前記蓋に接するようにして前記ケース本体内に充填された絶縁樹脂とを備えた電子回路ユニットであって、
前記ケース本体の側壁の開口端寄りの部分に、該側壁の他の部分よりも肉厚が薄い端部壁が、該側壁の外側面側に片寄せて形成されると共に、該端部壁の内側に、前記ケース本体の開口端面に対して段差を有する蓋当接面が形成されて、該蓋当接面に前記端部壁に沿って延びる溝が形成され、
前記蓋は、前記端部壁の内側に嵌合されて前記蓋当接面に当接された状態で配置され、
前記ケース本体の端部壁が前記蓋側に加締められることにより、前記蓋の周縁部が前記溝内に押し込まれた状態で前記ケース本体の側壁に固定されていること、
を特徴とする電子回路ユニット。
【請求項2】
前記蓋当接面に形成された溝内に樹脂が充填されて、該溝内に充填された樹脂により、前記蓋と蓋当接面との間がシールされている請求項1に記載の電子回路ユニット。
【請求項3】
前記ケース本体の端部壁は、該端部壁の周方向に間隔をあけた複数の箇所で前記蓋側に加締められている請求項2に記載の電子回路ユニット。
【請求項4】
電子部品が実装された回路基板と、ケース本体を有して該ケース本体の内部に前記回路基板を収容したケースと、前記ケース本体の開口部を閉じる蓋と、前記蓋に接するようにして前記ケース本体内に充填された絶縁樹脂とを備えた電子回路ユニットであって、
前記ケース本体の側壁の開口端寄りの部分に、該側壁の他の部分よりも肉厚が薄い端部壁が、該側壁の外面側に片寄せて形成されると共に、該端部壁の内側に、該側壁の開口端面に対して段差を有する蓋当接面が形成され、
前記蓋当接面は、前記側壁の内側面側から外側面側に向うに従って前記ケース本体の開口端から離れていくように傾斜した傾斜面とされ、
前記蓋は、前記端部壁の内側に嵌合されて前記蓋当接面に当接された状態で配置され、
前記ケース本体の端部壁が前記蓋側に加締められることにより、前記蓋の周縁部寄りの部分が前記傾斜面に添うように変形された状態で、前記蓋がケース本体の側壁に固定されていること、
を特徴とする電子回路ユニット。
【請求項5】
前記ケースは、前記ケース本体の開口方向を高さ方向とした時に、高さ寸法が幅寸法及び奥行き寸法よりも小さい値を持つように形成され、
前記ケース本体の一つの側壁に樹脂充填口が形成されて、該樹脂充填口を通して前記ケース内に樹脂が充填されている請求項1,2,3または4に記載の電子回路ユニット。
【請求項6】
前記ケースは、前記ケース本体の開口方向を高さ方向とした時に、高さ寸法が幅寸法及び奥行き寸法よりも小さい値を持つように形成され、
前記ケース本体の一つの側壁に形成された切り欠き溝内に前記回路基板に構成された回路を外部の回路に接続するためのコネクタが嵌合されて取り付けられ、
前記コネクタが取り付けられた前記ケース本体の側壁を貫通して樹脂充填口が形成され、該樹脂充填口を通して前記ケース内に樹脂が充填されている請求項1,2,3または4に記載の電子回路ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−231461(P2009−231461A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−73774(P2008−73774)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000001340)国産電機株式会社 (191)
【Fターム(参考)】