説明

電子時計

【課題】文字板に形成される情報表記の配置が変更されても、開発コストの増大や開発期間の長期化を招くことのない電子時計を提供する。
【解決手段】複数の指針と、指針により指し示される情報表記が形成された文字板と、指針を運針する時計ムーブメント45と、情報表記の位置情報に基づいて時計ムーブメント45を制御して指針を情報表記の箇所へ運針させる制御部41とを備えた電子時計である。そして、情報表記の位置情報を記憶した記憶部44を備え、記憶部44は前記情報表記の配置の変更に対応する位置情報の書き込みが可能な構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の指針を有し、時刻の他に種々の情報表示を行う電子時計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、文字板上に設けられた小窓と、小窓内で回転する小針とを用いて、曜日の表示や時計機能の状態表示等を行う電子時計が知られている。小窓の周囲には、例えば、各曜日を表わす「“SUN”,“MON”,…“SAT”」などの情報マークや、時計機能の状態を表わす「“CHRONO”,“ALARM”,“TIMER”,“WORLD”」などの情報マークが形成され、小針が回転して該当する情報マークを指し示すことで、曜日や時計の機能状態がユーザに表示されるようになっている。
【0003】
また、同様に秒針などのセンター針を用いて時計機能の設定状態や動作状態の表示を行う電子時計も知られている。
【0004】
このような指針による情報表示は、時計内部に各情報マークの位置情報が記憶され、制御部がこの位置情報に基づいて指針を必要なステップ数だけ回転させて、指針を該当の情報マークの位置で停止させることにより実現している。
【0005】
また、本願発明に関連する従来技術として、特許文献1には、携帯端末を充電器にセットしたときに当該携帯端末に表示データを外部からローディング可能とする技術が開示されている。特許文献2には、マスクROM(Read Only Memory)とEEPROM(電気的消去型プログラマブルROM)を搭載した1チップマイクロコンピュータにおいて、時計動作など低消費電力の動作を実行するためのプログラムをマスクROM側に格納することで消費電力の削減を図る技術が開示されている。特許文献3には、電子腕時計においてROMを有するメモリケースを取り替えることで表示部に出力される表示デザインを変更できるようにした技術が開示されている。
【特許文献1】特開平09−297774号公報
【特許文献2】特開平10−254848号公報
【特許文献3】特開平11−202065号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電子時計の分野では、例えば、文字板の表示デザインの変更に伴って、小窓の周囲に形成される情報マークの配置や、文字板の周縁部に形成される情報マークの配置が変更されることがある。情報マークの配置変更があった場合、従来の電子時計では、情報マークの位置情報が格納されているマスクROMの内容を、新たな情報マークの配置にあわせて変更しなければならないという課題があった。
【0007】
従来の電子時計では、1個の半導体集積回路に、制御プログラムを実行するCPU(中央演算処理装置)や、制御プログラムと制御データを格納したマスクROMが搭載されるのが通常であった。また、このマスクROMをEEPROMなどデータ書き換え可能なものに置き換えることは、消費電力の増大を避けるために行われなかった。消費電力を少しでも減らすことは、特に小型電池で駆動する腕時計の分野においては重要な課題である。
【0008】
そのため、情報マークの配置変更に伴ってその位置情報を変更するには、半導体集積回路内に形成されるマスクROMのパターンを変更しなければならないため、半導体集積回路全体のマスクの設計変更から行わなければならないなど、開発コストの増大および開発期間の長期化といった課題を発生させた。
【0009】
この発明の目的は、文字板に形成される情報マークの配置が変更されても、開発コストの増大や開発期間の長期化を招くことのない電子時計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
複数の指針と、
前記指針により指し示される情報表記が形成された文字板と、
前記指針を運針する時計ムーブメントと、
前記情報表記の位置情報を記憶した記憶部と、
前記位置情報に基づいて前記時計ムーブメントを制御して前記指針を前記情報表記の箇所へ運針させる制御部と、
を備え、
前記記憶部は前記情報表記の配置の変更に対応する位置情報の書き込みが可能な電子時計である。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の電子時計において、
前記情報表記の配置の変更に対応する位置情報を記憶した前記記憶部は不揮発性メモリであることを特徴としている。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の電子時計において、
前記制御部が実行する制御プログラムが格納されたROMを備え、
前記制御部および前記ROMは1個の制御用集積回路に搭載され、
前記記憶部は前記制御用集積回路に外付けされる構成であることを特徴としている。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の電子時計において、
前記制御部によりデータの読み書きが可能なRAMを備え、
前記制御部は、
電源投入時に前記位置情報を前記記憶部から前記RAMへ移動させるとともに、前記指針を前記情報表記の箇所へ運針させる際に、前記位置情報を前記RAMから読み出して当該位置情報に基づき前記時計ムーブメントを制御することを特徴としている。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項1記載の電子時計において、
前記文字板には、当該文字板の一部の領域に設定された小窓と、この小窓に付随して形成された複数の情報表記とが設けられ、
前記複数の指針には、前記小窓で回転する小針が含まれ、
前記記憶部に記憶される前記位置情報には、前記小窓に付随して形成された前記複数の情報表記の位置情報が含まれていることを特徴としている。
【0015】
請求項6記載の発明は、請求項1記載の電子時計において、
前記文字板の周縁部には、センター針により指し示される1個又は複数の情報表記が形成され、
前記記憶部に記憶される前記位置情報には、前記センター針により指し示される前記1個又は複数の情報表記の位置情報が含まれていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明に従うと、情報表記の配置の変更があった場合、記憶部に情報表記の配置の変更に対応する位置情報を書き込むことができる。従って、情報表記の配置が変更されるたびに集積回路のマスクの設計変更から行っていた場合と比較して、開発コストの大幅な削減および開発期間の大幅な短縮を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態の電子時計1の文字板構成を示す平面図である。
【0019】
本発明の実施形態の電子時計1は、例えば腕時計の時計本体となるもので、時刻の表示機能に加えて、種々の付加機能を備えたものである。図1に示すように、電子時計1の文字板20には、その周縁部に時刻表示用の目盛り21,21…が形成されるとともに、その12時位置、9時位置、6時位置には円形の小窓31,32,33がそれぞれ形成されている。文字板20上には、文字板20の中央部位に回転軸を有するセンター針(時針2、分針3、秒針4)と、各小窓31〜33の中心部分に回転軸を有し、各小窓31〜33で回転する小針5,6,7,8が設けられている。これらセンター針2〜4と小針5〜8が指針である。
【0020】
上記文字板20のうち、12時側の小窓31の周縁部分や、文字板20の全体の周縁部には、情報表記として各種情報を表わす情報マークが形成されている。例えば、小窓31の周囲には、各曜日を表わす「“SUN”,“MON”,…“SAT”」などの情報マークM1〜M7と、電子時計の機能状態を表わす「“CHR(CHRONO)”,“ALARM”,“TIMER”,“WORLD”」などの情報マークM8〜M11が印刷等により形成されている。また、文字板20の周縁部には、例えば、電波受信の成功/失敗等を表わす「“Y(YES)”,“N(NO)”」の情報マークM12,M13、アラーム設定時にアラームのオン/オフを表わす「“ON”,“OFF”」の情報マークM14,M15、ならびに、電波受信の準備段階や実行中であることを表わす「“R(READY)”,“W(WORK)”」の情報マークM16,M17などが形成されている。
【0021】
その他、文字板2には、日付を表示する日付表示窓35が設けられ、文字板の裏側に配置された日付板が露出されている。
【0022】
図2には、電子時計1の内部構成を示すブロック図を、図3には、各記憶部に記憶される制御データや制御プログラムを説明する図を示す。
【0023】
電子時計1の内部には、図2に示すように、制御部としてのCPU41、ROM42およびRAM(Random Access Memory)43を内蔵した制御回路40と、この制御回路40に外付けされてCPU41によりデータの読み出しが可能にされた記憶部としてのEEPROM44と、複数のステップモータや指針と連結された輪列機構を有しセンター針2〜4や小針5〜7を回転駆動する時計ムーブメント45と、輪列機構の回転位置を検出することでセンター針2〜4や小針5〜7の針位置を検出する針位置検出部46と、電池や2次電池などから動作電圧を供給する電源部47と、アンテナ49を介して標準電波を受信してその中に含まれているタイムコードを検波する検波回路48と、時刻計時用に一定周波数のタイミング信号を生成する発振回路50および分周回路51と、電子時計1のケーシング側面部等に設けられた図示略の複数の操作ボタンを含む操作部52と、文字板20を照らす照明部53および照明駆動回路54と、アラーム出力を行うスピーカ55およびブザー回路56等が設けられている。
【0024】
上記構成のうち、少なくともCPU41、ROM42およびRAM43を有する制御回路40は、一つの制御用集積回路に集積されて、電子時計1の統括的な制御を行うものである。ROM42はマスクROMであり、RAM43はスタティックRAM等である。
【0025】
EEPROM44は、制御回路40と接続されて、制御回路40内のCPU41によりデータの読み出しが可能にされている。また、このEEPROM44は、電子時計1の製造工程において、当該EEPROM44が電子時計1の基板上に搭載された状態で、外部のROMライタによってデータの書き込みが可能なように構成されている。また、このEEPROM44は、制御回路40からの制御によって電源オフできるように構成され、電源オフされることで待機電流も通常の待機電流より大幅に低くされる。
【0026】
図3は、各記憶部に記憶される制御データや制御プログラムを説明する図である。
【0027】
ROM42には、CPU41が電源投入時に1回だけ実行するイニシャル処理プログラム42aや、その後、継続的にCPU41により実行される時計制御プログラム42bが格納されている。また、時計のデザイン変更等によって些細な変更が生じることのない制御データ42cが格納されている。
【0028】
EEPROM44には、指針位置情報44aなど、文字板20のデザイン変更などによって些細な変更の生じえる制御データが格納されている。EEPROM44は消費電流が比較的大きいので、容量の小さなものが適用され、変更が生じえる制御データのうち指針位置情報44aなど最低限のデータのみが記憶されるようになっている。これらEEPROM44に記憶される制御データは、電子時計1の製造段階で外部のROMライタによって書き込まれるものである。
【0029】
RAM43は、CPU41に制御プログラムを実行するための作業用のメモリ空間を提供するものである。それに加えて、このRAM43には、電源投入時にEEPROM44の制御データが移動されて格納される記憶領域が設定されている。具体的には、図3(a),(c)に示すように、RAM43には、指針位置情報格納領域43aが設定され、EEPROM44の指針位置情報44aが移動されて、それ以降、継続してこの情報が記憶されるようになっている。
【0030】
図4には、指針位置情報の内容の一例を表わしたデータチャートを示す。
【0031】
EEPROM44に記憶される指針位置情報44a、並びに、RAM43の格納領域43aに移される指針位置情報は、上述した文字板20に形成された複数の情報マークM1〜M17を指し示すための位置情報である。より具体的には、上記複数の情報マークM1〜M17の各々について、文字板20や小窓31の一周を右回りに60ステップとしたときに、基準位置(例えば上端位置)から該当する情報マークの位置までをステップ数で表わしたデータである。例えば、“SUN”の情報マークは小窓31の一周を60分としたとき45分の位置に形成されているので、この情報マークに対応する指針位置情報は“45”となっている。また、“W(WORK)”の情報マークは文字板20の37分の位置に形成されているので、この情報マークに対応する指針位置情報は“37”となっている。
【0032】
また、EEPROM44やRAM43に格納される指針位置情報は、図4のデータテーブルの「指針位置情報」の行に示されるデータ値のみとなっている。これらのデータ値が複数の情報マークM1〜M17の何れに対応するものかは、データ値の格納アドレスによって識別されるようになっている。なお、データ量が少し大きくなってしまうが、EEPROM44やRAM43に記憶する指針位置情報として、図4のデータテーブルのように、情報マークの種別を表わす指標データ(「情報マーク」の行データ)と、その指針位置を表わすデータ値(「指針位置情報」の行データ)とが互いに対応付けられたデータテーブルを採用するようにしても良い。
【0033】
次に、この実施形態の電子時計1の動作について説明する。
【0034】
この実施形態の電子時計1は、通常の時計表示機能に加えて、クロノグラフ(ストップウォッチ)機能、世界各都市の時刻を表示するワールドタイム機能、設定期間のカウントアップやカウントダウンを行うタイマー機能、アラーム時刻の設定を行うアラーム設定機能、タイムコードが含まれる標準電波を受信する電波受信機能などが備わっており、操作部52の操作に基づいて、これらの機能が切り換えられるようになっている。
【0035】
制御回路40は、分周回路51から送られる信号をカウントすることで現在日時の計時を行っており、通常の時計表示の機能状態においては、制御回路40が計時データに基づいてセンター針2〜4を所定ステップずつ回転制御することにより、これらセンター針2〜4によって現在時刻の表示が行われる。
【0036】
また、この通常の時計表示機能の状態においては、制御回路40は時計ムーブメント45の駆動制御を行って各小針5〜8を回転駆動させることで、12時側の小窓31では小針5により曜日を表わす情報マークM1〜M7のうち該当する曜日の情報マークが指し示され、6時側の小窓33では小針7,8により指定都市のワールド時刻の表示がなされ、9時側の小窓32では小針6により24時間時刻の表示がなされるようになっている。
【0037】
一方、操作部52を介して所定の操作が行われてクロノグラフの機能状態へ移行した場合には、制御回路40は、センターの秒針4はストップウォッチの秒、12時側の小針5はストップウォッチの1/20秒、6時側の小針7,8はストップウォッチの時分、をそれぞれ指し示すように時計ムーブメント45の駆動制御を行うようになっている。また、この機能状態においてストップウォッチの計測開始前の段階には、12時側の小針5は“CHR”の情報マークM8の位置に停止してクロノグラフの機能状態であることを指し示すようになっている。センターの時分針2,3や9時側の小針6に対しては、通常の時計表示機能のときと同様の制御が行われる。
【0038】
また、操作部52を介して所定の操作が行われることで、タイマー機能状態へ移行した場合には、制御回路40は、12時側の小針5がタイマーモードを示す“TIMER”の情報マークM10を指し示し、センターの秒針4がタイマーの秒、6時側の小針7,8がタイマーの時分を指し示すように、時計ムーブメント45の駆動制御を行うようになっている。センターの時分針2,3や9時側の小針6に対しては、通常の時計表示機能のときと同様の制御が行われる。
【0039】
また、操作部52を介して所定の操作が行われることで、ワールドタイムの表示機能状態へ移行した場合には、制御回路40は、12時側の小針5がワールドタイムモードを示す“WORLD”の情報マークM11を指し示し、センターの秒針4が図示略の電子時計1のベゼル等に記載された時刻表示の対象となっている都市を指し示すように、時計ムーブメント45の駆動制御を行うようになっている。センターの時分針2,3や9時側の小針6に対しては、通常の時計表示機能のときと同様の制御が行われる。
【0040】
また、操作部52を介して所定の操作が行われることで、アラーム設定機能へ移行した場合には、制御回路40は、12時側の小針5がアラーム設定モードを示す“ALARM”の情報マークM9を指し示し、センターの秒針4はアラームのオン・オフ設定の内容に応じて“ON”または“OFF”の情報マークM14,M15を指し示すように、時計ムーブメント45を駆動制御するようになっている。また、6時側の小針7,8は操作部52の操作に応じてアラームの設定時刻を表示するように制御され、その他、センターの時分針2,3や9時側の小針6に対しては、通常の時計表示機能のときと同様の制御が行われる。
【0041】
また、操作部52を介して所定の操作が行われたり、或いは、通常の時計表示機能の状態で所定の電波受信時間になったりすることにより、電波受信機能の動作が開始された場合には、制御回路40は、先ず、センターの秒針4が電波受信前の準備段階であることを示す“R(READY)”の情報マークM16を指し示し、次いで、電波受信が実行されたら電波受信中であることを示す“W(WORK)”の情報マークM17を指し示すように、時計ムーブメント45を駆動制御するようになっている。
【0042】
また、操作部52の所定の操作によって、ユーザから電波受信が成功したか否かの問い合わせがなされた場合には、制御回路40は、前回の電波受信の結果に応じて、センター秒針4を、受信成功を表わす“Y(YES)”の情報マークM12、或いは、受信失敗を表わす“N(NO)”の情報マークM13の何れかを指し示すように、時計ムーブメント45を駆動制御するようになっている。
【0043】
次に、上記のような各指針2〜8の駆動制御のうち、センター秒針4と12時側の小針5によって各情報マークM1〜M17を指し示させる制御処理に関して、詳細に説明する。
【0044】
図5には、制御回路40のCPU41によって実行されるイニシャル処理のフローチャートを示す。
【0045】
センター秒針4や小針5によって情報マークM1〜M17を指し示させる駆動制御を実現するため、制御回路40のCPU41は、先ず、電源投入時に、図5のイニシャル処理を実行する。電源投入時とは、例えば、電子時計1の製造工程で電池を初めて接続したとき、商品出荷後に電池を交換したとき、或いは、2次電池を搭載した電子時計1において2次電池の電源が一旦消耗して制御回路40が停止したのち2次電池に充電が行われて制御回路40が再起動する際などである。
【0046】
イニシャル処理が開始されると、先ず、CPU41はEEPROM44から指針位置情報44aを読み出し(ステップS1)、これをRAM43の指針位置情報格納領域43aに書き込む(ステップS2)。なお、この指針位置情報44aのほかにも、些細な変更の生じえる制御データがEEPROM44に記憶されている場合には、ここで同様にEEPROM44から読み出されてRAM43の所定領域に書き込まれる。
【0047】
制御データを移動させたら、次に、EEPROM44の消費電流をほぼゼロにするために、EEPROM44の電源を停止して(ステップS3)、このイニシャル処理を終了する。その後、上述した種々の機能を実現するための時計制御プログラム42bに移行する。
【0048】
このようなイニシャル処理によって、指針位置情報44aがRAM43の格納領域43aに記憶された状態となり、以降、EEPROM44の動作が停止されても、CPU41はこれらの制御データをRAM43から読み出して使用することが可能となる。
【0049】
図6には、制御回路40のCPU41によって実行される第1小針駆動処理のフローチャートを示す。
【0050】
この第1小針駆動処理は、曜日の変わり目、または、操作部52を介した所定の操作によって電子時計1の機能状態が、時計表示機能、クロノグラフ機能、ワールドタイム機能、タイマー機能、或いは、アラーム設定機能へと遷移する際に、小針5を指定の情報マークM1〜M11の箇所まで移動させるサブルーチン処理である。
【0051】
この第1小針駆動処理のサブルーチン処理は、図示は省略するが、その前段の処理で小針5の移動先となる情報マークが指定された状態で開始される。情報マークの指定は、例えば、曜日を表わす情報マークM1〜M7であれば計時カウンタの値から次の曜日を算出することで行われるし、各機能状態を表わす情報マークM8〜M11であれば、操作部52の操作内容に応じて次の機能状態に対応する情報マークが選択されることで行われる。
【0052】
第1小針駆動処理に移行すると、先ず、CPU41は、RAM43の指針位置情報格納領域43aの中から、指定された情報マークに対応する指針位置情報のデータ値を読み出す(ステップS11)。この指針位置情報は、指定された情報マークに予め対応づけられているRAM43のアドレスからデータを読み出すことによって取得することができる。
【0053】
情報マークの指針位置情報を読み出したら、次に、CPU41は小針5の現在の指針位置と目的の指針位置との差分を計算して、小針5の現在の指針位置から目的の指針位置までのステップ数を算出する(ステップS12)。
【0054】
その後、CPU41は、小針5を回転させる時計ムーブメント45の第1小針用モータに、ステップS12で算出したステップ数分のパルス出力を行うようにコマンドを発行する(ステップS13)。そして、この第1小針駆動処理を終了して、元の制御処理の次のステップに戻る。
【0055】
このような第1小針駆動処理によって、EEPROM44からRAM43へ移動させた指針位置情報に基づいて小針5を指定の情報マークM1〜M11の位置まで移動させることができる。
【0056】
図7には、制御回路40のCPU41によって実行されるセンター針情報表示駆動処理のフローチャートを示す。
【0057】
このセンター針情報表示駆動処理は、電波受信が成功したか否かの問い合わせ操作があったときや、アラーム設定機能の実行時、並びに、電波受信処理の実行時において、センターの秒針4を指定の情報マークM12〜M17の箇所まで移動させるサブルーチン処理である。このセンター針情報表示駆動処理は、図示は省略するが、前段の処理においてセンター秒針4の移動先である情報マークが指定された状態で開始される。情報マークの指定は、そのときの電子時計1の設定状態や動作状態に応じて、これらの状態に対応する情報マークが選択されることで行われる。
【0058】
センター針情報表示駆動処理に移行すると、先ず、CPU41は、RAM43の指針位置情報格納領域43aから指定された情報マークに対応する指針位置情報のデータ値を読み出す(ステップS21)。この指針位置情報は、指定された情報マークに予め対応づけられているRAM43のアドレスからデータを読み出すことによって取得することができる。
【0059】
情報マークの指針位置情報を読み出したら、次に、CPU41はセンター秒針4の現在の指針位置と目的の指針位置との差分を計算して、現在の指針位置から目的の指針位置までのステップ数を算出する(ステップS22)。その後、時計ムーブメント45内の秒針4を駆動するためのセンター針用モータに、ステップS22で算出したステップ数分のパルス出力を行うようにコマンドを発行する(ステップS23)。そして、このセンター針情報表示駆動処理を終了して、元の制御処理の次のステップに戻る。
【0060】
このようなセンター針情報表示駆動処理によって、EEPROM44からRAM43へ移動させた指針位置情報に基づいてセンター秒針4を指定の情報マークM12〜M17の位置まで移動させることができる。
【0061】
以上のように、この実施形態の電子時計1によれば、情報マークM1〜M17の配置を表わす指針位置情報44aが、制御回路40のROM42に記憶されるのではなく、EEPROM44に記憶させる構成なので、例えば、文字板20のデザイン変更があって情報マークM1〜M17の配置が変更されたり、或いは、文字板20のデザインが異なる複数種の電子時計を製造したりする場合でも、1種類の制御回路(制御用集積回路)40を共通に用いて、これらの電子時計1を製造することができる。
【0062】
すなわち、EEPROM44に書き込む指針位置情報44aを、文字板20の情報マークM1〜M17の配置に合わせたデータ値に修正することで、共通の制御回路40による共通のプログラム制御によって、情報マークM1〜M17の配置に合致した指針の駆動制御を行わせることができる。
【0063】
図8には、EEPROMに書き込む指針位置情報を変更することで対応可能な他の文字板20A,20Bの構成例を表わした平面図を示す。
【0064】
例えば、図8(a)に示す文字板20Aや、図8(b)に示す文字板20Bのように、小窓31A,31Bの周囲にそれぞれ形成されている情報マークM1〜M11や、文字板20A,20Bの周囲にそれぞれ形成されている情報マークM12〜M17の配置が異なっている場合には、小窓31A,31Bや文字板20A,20Bにおける各基準位置(例えば上端位置)から該当する情報マークの位置までのステップ数を、それぞれデータ値とした指針位置情報を作成し、この指針位置情報をEEPROM44に書き込むことで、各情報マークM1〜M17の配置に合致した情報表示の制御を行うことが可能となる。
【0065】
なお、図1の文字板20と、図8(a)の文字板20Aとでは、小窓31,31Aの設定位置が12時側と9時側とで異なるが、この構成の違いは、時計ムーブメント45のステップモータや輪列機構の配置および連結構造を変更することによって対応できるものである。このような構成の違いがあっても、制御回路40ならびにROM42内のプログラム42a,42bや制御データ42cは共通のものを使用することができる。
【0066】
従って、従来の電子時計においては、文字板20の情報マークの配置が変更されただけの場合でも、ROMに記憶させる指針位置情報の内容を変更するため、制御用集積回路(制御回路40)全体のマスクの設計変更から行う必要があったが、それと比較して、本実施形態の電子時計1においては、制御回路40はなんら変更することなく、EEPROM44に書き込むデータを変更するだけで、情報マークの配置の変更に対応することができる。それゆえ、電子時計1の開発コストの大幅な削減および開発期間の大幅な短縮を図ることができる。
【0067】
また、指針位置情報44aを記憶する記憶部としてEEPROM44を用いているので、一旦、データを書きこんだ後の修正も可能になっている。
【0068】
また、制御プログラムや変更の必要のない制御データはROM42に記憶させる一方、変更の生じえる最小限の制御データのみEEPROM44に記憶させる構成なので、比較的消費電力が大きくなるEEPROM44の大きさを最小限に留めて、電子時計1の消費電力の低減が図られている。
【0069】
また、EEPROM44の制御データは電源投入時にRAM43に移動させ、その後は、RAM43に移動させた制御データを使用するようにしたので、比較的消費電力の大きなEEPROM44の動作期間を最小にして、電子時計1の消費電力の低減が図られている。
【0070】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、指針位置情報を記憶する記憶部としてEEPROM44を例示したが、例えば、フラッシュメモリを適用しても良いし、或いは、一度だけ情報を書き込むことのできるPROMを適用することもできる。また、上記実施形態では、EEPROM44を制御回路40に外付けとし、且つ、指針位置情報44aをRAM43に移したらEEPROM44の電源をオフにする構成を示したが、やや電力の削減効果は低減されるが、例えば、制御回路(制御用集積回路)40の内部にEEPROMやPROMを設けて、指針位置情報を外部から書き込むように構成しても良い。
【0071】
また、情報表記として、午前と午後を表わす情報マークなど、指針によって指し示されることで情報をユーザに表示し、且つ、文字板や小窓においてその配置角度が一意に決定されていないマークであれば、種々の情報マークまたは文字、記号、数字を含めるようにしても良い。
【0072】
また、上記実施の形態では、小窓31の周囲に形成された情報マークM1〜M11と、文字板20の周囲に形成された情報マークM12〜M17との両方を有する電子時計1を例示したが、小窓がなく文字板20の周囲にのみ情報マークが形成された電子時計や、小窓の周囲にのみ情報マークが形成された電子時計に、本発明を適用することもできる。
【0073】
その他、文字板の構成や内部の回路構成、電子時計に備わる機能構成など、実施の形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。また、本発明は腕時計以外の電子時計にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施形態の電子時計の文字板構成を示す平面図である。
【図2】実施形態の電子時計の内部構成を示すブロック図である。
【図3】各記憶部に記憶される制御データや制御プログラムを表わした図である。
【図4】指針位置情報の詳細な一例を示すデータチャートである。
【図5】オールクリア後にCPUにより実行されるイニシャル処理の手順の流れを示すフローチャートである。
【図6】時計制御処理の途中で実行される第1小針駆動処理の手順の流れを示すフローチャートである。
【図7】時計制御処理の途中で実行されるセンター針情報表示処理の手順の流れを示すフローチャートである。
【図8】EEPROMに書き込む指針位置情報を変更することで対応可能な他の文字板の構成例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0075】
1 電子時計
2 時針
3 分針
4 秒針(センター針)
5〜8 小針
20 文字板
31〜33 小窓
M1〜M7 曜日を表わす情報マーク
M8〜11 機能状態を表わす情報マーク
M12〜M17 動作状態や設定情報を表わす情報マーク
40 制御回路(制御用集積回路)
41 CPU
42 ROM
42 イニシャル処理プログラム
43 RAM
43a 指針位置情報格納領域
44 EEPROM(記憶部)
44a 指針位置情報
20A,20B 文字板
31A,31B 小窓
5A,5B 小針

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の指針と、
前記指針により指し示される情報表記が形成された文字板と、
前記指針を運針する時計ムーブメントと、
前記情報表記の位置情報を記憶した記憶部と、
前記位置情報に基づいて前記時計ムーブメントを制御して前記指針を前記情報表記の箇所へ運針させる制御部と、
を備え、
前記記憶部は前記情報表記の配置の変更に対応する位置情報の書き込みが可能な構成であることを特徴とする電子時計。
【請求項2】
前記情報表記の配置の変更に対応する位置情報を記憶した前記記憶部は不揮発性メモリであることを特徴とする請求項1記載の電子時計。
【請求項3】
前記制御部が実行する制御プログラムを記憶したROMを備え、
前記制御部および前記ROMは1個の制御用集積回路に搭載され、
前記記憶部は前記制御用集積回路に外付けされる構成であることを特徴とする請求項1記載の電子時計。
【請求項4】
前記制御部によりデータの読み書きが可能なRAMを備え、
前記制御部は、
電源投入時に前記位置情報を前記記憶部から前記RAMへ移動させるとともに、前記指針を前記情報表記の箇所へ運針させる際に、前記位置情報を前記RAMから読み出して当該位置情報に基づき前記時計ムーブメントを制御することを特徴とする請求項3記載の電子時計。
【請求項5】
前記文字板には、当該文字板の一部の領域に設定された小窓と、この小窓に付随して形成された複数の情報表記とが設けられ、
前記複数の指針には、前記小窓で回転する小針が含まれ、
前記記憶部に記憶される前記位置情報には、前記小窓に付随して形成された前記複数の情報表記の位置情報が含まれていることを特徴とする請求項1記載の電子時計。
【請求項6】
前記文字板の周縁部には、センター針により指し示される1個又は複数の情報表記が形成され、
前記記憶部に記憶される前記位置情報には、前記センター針により指し示される前記1個又は複数の情報表記の位置情報が含まれていることを特徴とする請求項1記載の電子時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−107333(P2010−107333A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−279280(P2008−279280)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】